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2007年7月26日 (木)

Priestleyの実験とCoulombの法則

 コーヒー・ブレイクとして,今日は1982年2月の私の覚書きノートから,ごく軽い話題を1つ取り上げます。

 すなわち,プリーストリーの実験(Priestleyの実験)の結果からクーロンの法則(Coulombの法則)を説明することを考えます。

問題提起としては次のようになります。

 

"一様に帯電した金属球殻の内部には電気力が存在しないとする。

 

または,球内の任意の位置に(球殻と絶縁された中空に)帯電体を入れたとき,球殻の電荷分布はそれによって影響を受けないとする。

 

こうした事実=内部の帯電体が如何なる電気力も受けないという事実,あるいは,Priestleyの実験結果だけに基づいて,

 

2つの電荷の間に働く電気力があるとすれば,その力の方向は2つの電荷を結ぶ向きであり,力の大きさはそれらの間の距離rの2乗に反比例する,という法則を証明できるか?" です。

 

まず,金属球殻についてのこの問題とは全く関係なく周りに全く何もない空間内に,2つの単位電荷1,2がそれぞれ位置ベクトル1,2で表わされる位置にあるとします。

 

このとき,2が1によって受ける力21は作用反作用の法則から,21に平行,または反平行な向きを持ち,力の大きさはそれらの間の距離|21|のみに依存すると考えられます。

 

つまり,fをある関数として21=f(|21|)(21)となるはずです。

そこで,単位電荷1を固定して,その位置を原点にとると,21にある単位電荷2が1によって受ける力=f(r)と表わすことができます。

 

このとき,力の回転を取ると,(∇×)i=εijkj(f(r)xk)=εijkjkf+(xjk)df/dr}=0 となりますから,rot=∇×=0 です。つまり,は保存力です。

したがって,ポテンシャルU(r)が存在して=-gradU(r)=-∇U(r)と書くことができます。

 

(今だったらポアンカレの補題によって"閉形式は完全形式である。"などと,少しは気のきいたことを書いたかもしれないですね。(2006年10/21の記事「ポアンカレの補題」参照))

次に,面電荷密度σを有する半径aの一様球殻がある場合の電気力を与えるポテンシャルをφ(r)とすれば,φ(r)はU(r)により,φ(r)=σ∫r'=adS'U(|'|)と表わされるはずです。dS'は球殻の面積要素です。

 

これは,謂ゆるポテンシャルの重ね合わせの原理ですね。

ここで,この球殻の球の中心を原点とし極角θを'のに対する偏角とすれば,φ(r)=2πa2σ∫-11(cosθ)U({r2+a22racosθ}1/2)=(2πaσ/r)∫-r+ar+aRU(R)dRとなります。

 

最初から,rだけの関数であろうと予想してポテンシャルをφ(r)と書いた通り,右辺はrのみの関数になっています。

そして,"仮定=Priestleyの実験結果"によれば, 0=-gradφ=-∇φ=-(dφ/dr)(/r)(r<a),よってdφ/dr=0 です。

 

したがって,d2(rφ)/dr2=d(rdφ/dr+φ)/dr=dφ/dr=0 となることが必要であるとわかりました。

そこで,V(R)≡RU(R)と置くとrφ(r)=2πaσ∫-r+ar+a(R)dRより,V'(r+a)-V'(-r+a)=0 が成立します。ただしV'(r)≡dV/drです。

 

よって,dV/dr=(定数)です。そこでC0,C1を積分定数としてV(r)=rU(r)=C0r+C1,つまりU(r)=C0+C1/rと書くことができます。

 

V(r)=rU(r)=C0r+C1を,rφ(r)=2πaσ∫-r+ar+a(R)dRに代入すると,φ(r)=(定数)になりますから確かに恒等的にdφ/dr=0 です。

 

したがって,()=-gradU(r)=-∇U(r)=(C1/r2)・(/r)∝ /r2 (ただし/r)が得られました。

 

すなわち,電気力()の方向はと同じで大きさは距離rの2乗に反比例します。

 

ただし,()が引力か斥力か?は,これだけからはまだ不明です。

 

PS:クーロンの法則を実験的に発見したのは名称の通りクーロン(Coulomb)であるとされています。

 

しかし,プリーストリ-(Priestley)が"静電気力は距離の二乗に反比例する"という性質を予測して本記事のような実験をしたのは彼よりも前のことです。

 

また,プリーストリーより後ですがクーロンより前に独立に精密な定量的実験をしてこの法則を検証したのはキャベンディッシュ(Chavendish)でした。

 

時代が時代ならプリーストリー・キャベンディッシュ(Priestry-Chavendish)の法則となっていたかも知れませんね。

 

キャベンディッシュ(Chavendish)は万有引力(重力)の法則においても逆二乗則が成り立つことを実験的に検証しました。

 

実験の詳細については,例えば「FNの高校物理(キャベンディッシュの重力実験)」を参照してください。

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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