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2007年8月11日 (土)

リーマン予想と素数定理

素数定理:π(x) ~ x/logx は,現在も未解決のリーマン予想

=R.H(Riemann hypothesis)の解決を待つまでもなく,既に証明

されていますが,Riemann予想が元々は精密な素数定理を導くこと

を,その目的としていたことはよく知られています。

 

しかし,ゼータ関数(Zeta)の零点が素数の個数分布π(x)と

具体的に,どのように結びつくのか?の詳細については私は

知らなかったので,ちょっと調べてみました。

 

本ブログでは,2006年10/30に「ベルヌーイ数とゼータ関数」,

10/31には,その続編「ベルヌーイ数とゼータ関数(その2)

という記事を書きました。

 

そこでは,整数のべき乗数列の有限和のBernoulli(ベルヌーイ)数

による表現として,Euler-Maclaulinの和公式を与えました。

 

すなわち,s≠1なら,

n=1N(1/ns)=(1-1/Ns-1)/(s-1)+(1/2)(1+1/Ns)

+∑k=1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k(1-1/Ns+k)

-{(s)M/M!}1NM(x-[x])x-s-Mdx

なる公式です。

 

ただし,Mは任意の自然数,BrはBernoulli数,であり,記号:

(s)kは,(s)k≡s(s+1)...(s+k-1)で定義されます。

 

そして,Riemannのゼータ関数:ζ(s)は,Re(s)>1の複素数s

対して,ζ(s)≡∑n=1(1/ns)で定義されるのですが,上の

Euler-Maclaulinの和公式の右辺は,この範囲では絶対収束します。

 

そこで,両辺のN→ ∞ の極限を取ると,

ζ(s)=∑n=1(1/ns)

=1/(s-1)+1/2+∑1M-1[Bk+1/(k+1)!](s)k

-{(s)M/M!}1M(x-[x])x-s-Mdx;(Re(s)>1)

という表現式が得られます。

 

ところが,右辺の積分式の方は,

Re(s)>(1-M)の範囲で絶対収束するので,この式の右辺に

よって,ゼータ関数ζ(s)は,Re(s)>(1-M)の範囲のsに

自然に解析接続されます。

 

Mは任意の自然数ですから,ζ(s)はs=1に"特異点=1位の極"

を持つだけで,この点を除く全複素s平面に解析接続されます。

 

そこで,今日はまずRiemannの原論文に従ってsと1-sの交換

対して不変な関数:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)を考察することから

始めます。

 

まず,EulerのΓ関数の定義Γ(s)≡∫0s-1exp(-x)dxに

部分積分を繰り返すことによって,等式:

Γ(s)/ns=∫0s-1exp(-nx)dx

が得られます。

 

これから,Γ(s)ζ(s)=∫0[xs-1/{exp(x)-1}]dx

が成立することがわかります。

 

故に,積分:∫0[(-x)s-1/{exp(x)-1}]dxの積分路が囲む

1位の極;x=±2πniの留数の寄与を考えると,

 

2sin(πs)Γ(s)ζ(s)=(2π)sΣ1s-1[is-1+(-i)s-1]

=(2π)sζ(1-s)2sin(πs/2) を得ます。

 

公式:Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(πs)より,

sin(πs)=π/[Γ(s)Γ(1-s)],

sin(πs/2)=π/[Γ(s/2)Γ(1-s/2)]ですから,

 

ζ(s)/Γ(1-s)=(2π)sζ(1-s)/[Γ(s/2)Γ(1-s/2)]

となります。

 

一方,Legendreの関係式:Γ(s)=2s-1π-1/2Γ(s/2)Γ((s+1)/2)

より,Γ(1-s)=2-sπ-1/2Γ((1-s)/2)Γ(1-s/2) です。

 

結局,関数等式:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s) が得られます。

 

よって,確かにπ-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,sと(1-s)の交換に

ついて対称であることがわかりました。

 

 さて,Γ(s)/ns=∫0s-1 exp(-nx)dxと同様に,

 部分積分により,

 π-s/2Γ(s/2)/ns=∫0s/2-1exp(-n2πx)dx

 が得られます。

 

 そこで,関数ψを関数:ψ(x)≡Σn=1exp(-n2πx)

 (↑ 今日では,Jacobiのテータ関数と呼ばれている)

 によって定義すれば,

 

 π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=∫0s/2-1ψ(x)dx

 となります。

 

 ここでψ(x)の既知の性質:2ψ(x)+1=x-1/2{2ψ(1/x)+1}

 を用いると,

 

 π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

 =1s/2-1ψ(x)dx+∫01(s-3)/2ψ(1/x)dx

 +(1/2)∫01(x(s-3)/2-xs/2-1)dx

 =1/{s(s-1)}+∫1(xs/2-1+x-(1+s)/2)ψ(x)dx

 となります。

 

そして,これの右辺第2項の積分は全てのsについて正則なので

結局,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,s=0,1の1位の極を除いて全s

平面で正則であることがわかります。

 

一方,ガンマ関数の性質から,Γ(s/2)はs=-2,-4,..に1位の極

を持つことが知られていますが,

 

π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,それらのsでは正則で,しかもゼロでは

ないので,ζ(s)がs=-2,-4,..に重複度1の零点を持つこと

がわかります。

 

これをζ(s)の自明な零点といいます。

 

先に述べたEuler-Maclaullinの和公式でも,mを自然数とするとき,

ζ(1-m)

=-1/m+1/2+∑1m-1[Bk+1/(k+1)!](1-m)(2-m)..(k-m)

と書けることから,

  

m=3,5,..ではζ(1-m)=-Bm/m=0

となることがわかります。

 

しかも,ζ(1-m)/(1-m)≠0 ですから,これら自明な零点は

重複度が1であることがわかります。

 

いずれにしても,ζ(s)の自明な零点はΓ(s/2)の極によって

相殺されます。

 

そして,Γ(s/2)は零点を持ちませんから,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

の全ての零点は,ζ(s)の自明でない全ての零点と完全に一致

します。

 

2006年10/24の記事:「素数を分母とする循環小数とその周辺」,

および,10/25の記事;「素数定理への入り口」において,

 

Eulerによるゼータ関数:ζ(s)の素数pによる無限積表示

(=Euler積):ζ(s)=Πp=素数(1-p-s)-1を紹介して,

これによってlog{ζ(s)}=-Σlog(1-p-s)が成立すること

を既に記述しています。

 

そして,s=σ+iτ(σ,τ:実数)とおけば,|p-s|=pであり,

σ>1 のときは,

-Σlog(1-|p-s|)=-Σlog(1-p)≦Σp<∞

です。

 

つまり,

σ=Res>1なら,log{ζ(s)}=-Σlog(1-p-s)は有限なので,

Res>1 には,"ζ(s)の零点=π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点"は

存在しないことがわかります。

 

また,関数等式:π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s)

による,sと(1-s)の交換対称性から,Re(1-s)>1,

はRes<0 と同値ですから,

 

結局,Res<0 にもRes>1にも,π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点

は存在しないことがわかります。

 

つまり,"π-s/2Γ(s/2)ζ(s)の零点=ζ(s)の自明でない零点"

は,存在すれば,0≦Res≦1の領域にしかないことになります。

 

ここで唐突ですが,複素関数論で現われる正則関数の零点に関する

Weierstrassの標準形を考えます。

 

これは,正則関数f(z)が重複度も含めてn個の零点:

1,a2,..,anを持てば,

f(z)の一般形は,g(z)を整関数として,

f(z)=exp{g(z)}(z-a1)(z-a2)...(z-an)

なる形に書けること,を意味します。

 

しかし,このままではn→ ∞ に移行するときに不便なので,

これをak≠0 なる全ての零点について,(-ak)で割ります。

 

mをak=0 なる零点の重複度とすると,Σn|1/an|<∞ ならば,

n→ ∞ では,f(z)=zmexp{g(z)}Πan≠0(1-z/an)という

形に書けるという定理が成立します。

 

しかし,一般にはΣn|1/an|<∞ が成立するとは限りません。

そこで,より一般的な展開式は,mn∀t>0 に対して,

Σn{2/(mn+1)}|t/an|mn+1<∞ なる最小の正の整数とすると、

 

f(z)=zmexp{g(z)}Πan≠0[(1-z/an)

exp{(z/an)+(z/an)2/2+...+(z/an)mn/mn}]

と書けるという式になります。

  

これが"Weierstrassの標準形"です。

  

特に,z= 0 がf(z)の零点ではなく,

Σn|1/an|=∞,Σn|1/an|2<∞ の場合には,

f(z)=Cexp(Bz)Πan≠0[(1-z/an)exp(z/an)]

と表わすことができます。

 

ここでは「Weierstrassの因数分解定理と有理型関数」という

murakさんのホームページのpdf情報を参照しました。

 

これによると,s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)は,s平面で正則

で,その零点=ζ(s)の自明でない零点ρ,は全て単根でρ≠0

であり,Σρ|1/ρ|=∞,Σn|1/ρ|2<∞なので,

 

s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)

=Cexp(Bs)Πρ[(1-s/ρ)exp(s/ρ)]

と表現できます。

 

この両辺でs→ 0 とすると,sΓ(s/2)ζ(s)→ 2ζ(0)=-1

なのでC=-1 です。

 

また,s→ 1 とすると,(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)→ -1

なので,1=exp(B)(1-1/ρ)exp(1/ρ) です。

 

さらに,exp(Bs)Πρ[(1-s/ρ)exp(s/ρ)]の,s→ (1-s)

に対する不変性により,

exp(B)=Πρ[{(1-ρ)/(-ρ)]exp{-1/(1-ρ)}]

と書けます。

 

結局,s(1-s)π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=-Πρ(1-s/ρ)

が得られました。

 

右辺最後の式:Πρ:零点(1-s/ρ)は,Hadamad(アダマール)積

といいます。

 

したがって,ζ(s)=Πp.素数(1-p-s)-1

=[-π-s/2Γ(s/2)/{s(1-s)}]Πρ:零点(1-s/ρ)

という関係式が得られます。

 

Euler積とHadamad積の間には,こうした美しい関係があることが

わかりました。

 

これは素数とゼータの零点の間に成り立つ1つの双対性(Duality)

であると考えられます。

 

Euler積表現:ζ(s)=Πp.素数(1-p-s)-1の両辺をsで対数微分

すると,log(ζ(s))/ds=Σp.素数(1-p-s)-1logp

=Σn=1Λ(n)n-sと表わすことができます。

 

ここで,Λ(n)はvon Mangoldtの関数と呼ばれるnの関数で,

Λ(n)≡logp(n=pm:m≧1のとき),Λ(n)≡0 (それ以外)

です。

Hadamad積表現:ζ(s)

=[-π-s/2Γ(s/2)/{s(1-s)}]Πρ:零点(1-s/ρ)も,

sで対数微分して,Euler積表現の式に等置すれば,

dlog(ζ(s))/ds=Σn=1Λ(n)n-s

=1/s+1/(s-1)-1/2logπ+Γ'(s/2)/{2Γ(s/2)}

-Σρ:零点{1/(s-ρ)}

なる式を得ます。

 

ここで,前に戻り,ζ(s)においてs=1/2+it,または,

t=i(1/2-s)(tは複素数)とおいて,

ξ(t)≡π-s/2Γ(s/2+1)(s-1)ζ(s)

={s(s-1)/2}π-s/2Γ(s/2)ζ(s)と書けば,

 

ξ(t)=1/2-(t2+1/4)∫1dx[x-3/4cos{(tlogx)/2}ψ(x)],

または,

ξ(t)=4∫1dx[x-1/4cos{(tlogx)/2}d{x3/2ψ(x)}/dx]

と書けます。

 

これから,ξ(t)はtの偶関数であり,しかもtが実数ならξ(t)

も実数であることがわかります。

 

このとき,ξ(t)=0 となる根tで 0≦Ret≦Tなるものの個数:

すなわち 0≦Res≦1(-1/2≦Imt≦1/2),かつ,

0≦Ims≦T(0≦Ret≦T)を満たすζ(s)の自明でない零点;

ρ=sの個数をN(T)と書けば,

"N(T)={T/(2π)}log{T/(2π)}-{T/(2π)}+o(logT)

である。"という命題が成立することに関する,Riemannの幾分

不十分な説明が与えられていますが,

これは1905年に von Mangoldt によって,厳密な証明が与えら

れています。

 

そしてξ(α)=0 を満たす任意の根をαとします。

 

ρ=1/2+iαですからα=i(1/2-ρ)ですが.このときRiemann

によれば,上に求めた,

N(T)={T/(2π)}log{T/(2π)}-{T/(2π)}+o(logT)

という表式を考慮することで,

積公式:ξ(t)=ξ(0)ΠReα>0(1-t22):つまり,

logξ(t)=ΣReα>0log(1-t22)+logξ(0)が得られるという

ことです。

 

これも,Riemannの説明は私にははっきり言ってよく理解できません。

 

実際これも不十分な説明で,厳密な証明はHadamardによって,1896年

に与えられたらしいです。

 

しかし,むしろ先に求めた等式;

log(ζ(s))/ds=Σn=1Λ(n)n-s

=1/s+1/(s-1)-1/2logπ+Γ'(s/2)/{2Γ(s/2)}

-Σρ:零点{1/(s-ρ)}と,

 

ξ(t)={s(s-1)/2}π-s/2Γ(s/2)ζ(s)という表式,

および,ξ(t)の偶関数性から,

dlog(ξ(t))/dt=iΣρ{1/(s-ρ)}

=ΣReα>0{1/(t-α)+1/1/(t+α)} を得ます。

 

この両辺を,0からtまで定積分すると,

log(ξ(t))-log(ξ(0))=ΣReα>0[log(t±α)-log(±α)]

=ΣReα>0log(1-t22) が,直接得られるので,

先のRiemannの説明は不要ですね。

 

そして,このξ(t)の表式をζ(s)の表式に翻訳すると,

log(ζ(s))=(s/2)logπ-log(s-1)-log{Γ(s/2+1)}

+ΣReα>0log{1+(s-1/2)22}+log(ξ(0))

なる式が得られます。

 

次に任意の正の実数xより小さい素数の個数を,慣例によって,

π(x)で表わし,xの関数F(x)を,

xが素数でないならF(x)≡π(x),

xが素数ならF(x)≡limε→0[π(x+ε)+π(x-ε)]/2

=π(x-0)+1/2

によって定義します。

 

さらに,関数f(x)を

f(x)≡F(x)+F(x1/2)/2+F(x1/3)/3+...

=Σm=1[F(x1/m)/m]

で定義します。

 

log(ζ(s))=-Σplog(1-p-s)

=Σp-s+Σp-2s/2+Σp-3s/3+...

=Σm=1p-ms/m]であり,-ms=s∫pm-s-1dxなので

log(ζ(s))/s=∫1-s-1f(x)dx

が得られます。

 

そして,Fourierの反転公式によれば,

f(x)={1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xslog(ζ(s))/s]

です。

 

ただし,右辺が収束しない場合を考慮して,1回引き算した形

にすると,f(x)=[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

[xsd{log(ζ(s))/s]/ds] となります。

 

これに,log(ζ(s))

=(s/2)logπ-log(s-1)-log{Γ(s/2+1)}

+ΣReα>0log{1+(s-1/2)22}+log(ξ(0))

を代入します。

 

例えば,

-log{Γ(s/2+1)}

=limm→∞Σn=1n-mlog{1+s/(2n)}-(s/2)logm}ですから,

d[log{Γ(s/2+1)}/s]/ds

=Σn=1(d[log{1+s/(2n)}/s]/ds)

です。

 

よって,log(ξ(0))を別にすれば,f(x)を示す右辺の積分の全て

の項が,

[{±1/(2πi)}/logx]

a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s}/ds]

という形をしています。

 

{log(1-s/β)/s]/dβ=1/{β(β-s)}ですから,

{1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s]/dβ]

なる積分を計算すると,

 

{1/(2πi)}∫a-i∞a+i∞ds[xs/{β(β-s)}]=xβ

です。

 

そして,これはResが Reβより大きいとき,Reβが負であるか?

正であるか?によって,

 

β/β=∫xβ-1dx=(d/dβ)∫x[xβ-1/logx]β-1dx,

または,

β/β=∫0xβ-1dx=(d/dβ)∫0x[xβ-1/logx]β-1dx

となります。

 

それ故,

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(1-s/β)/s}/ds]

=∫x[xβ-1/logx]dx+(定数),または,

0x[xβ-1/logx]dx+(定数)です。

 

具体的には,

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

(xsd[log{Γ(s/2+1)}/s]/ds)

=∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx,

 

[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds

[xsd{log(s-1)/s}/ds]=Li(x)

を得ます。

 

ただし,Li(x)は対数積分と呼ばれる関数で,

Li(x)≡∫0x(du/logu)

=limε→0[∫01-ε(du/logu)+∫1+εx(du/logu)]

で定義されます。

 

そして,f(x)

=[{1/(2πi)}/logx]∫a-i∞a+i∞ds[xsd{log(ζ(s))/s]/ds]

=Li(x)―Σα[Li(x1/2+αi)+Li(x1/2-αi)]

+∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx-log2

となることがわかります。

 

これは,「Riemannの素数式」と呼ばれます。

 

一方,f(x)=Σm=1[F(x1/m)/m]の反転公式は,

F(x)=π(x)=Σm=1[μ(m)f(x1/m)/m]

で与えられます。

 

ここで,μ(m)は,数論でよく知られたMobius関数で,

μ(m)≡(-1)(mの素因数分解:m=p12...pk;k個の

素数p1,p2,...,pkが全て相異なる素数のとき),

μ(m)≡1(m=1のとき),μ(m)≡0 (それ以外のとき)で

定義されるものです。

  

結局,F(x)=π(x)=Σm=1[μ(m)f(x1/m)/m],

f(x)=Li(x)―Σα[Li(x1/2+αi)+Li(x1/2-αi)]

+∫x[1/{x(x2-1)logx}]dx-log2 なる式が,

素数定理の表現を与えることがわかりました。

 

素数定理:π(x)~ Li(x)はRiemann予想とは別に,

1896年にHadamardや,de la Vallee-Poussinによって

証明されましたが,

 

π(x)~ Σm=1[μ(m)Li(x1/m)/m]という近似式の方が

より優れていることが,かなり大きいxまで検証されています。

 

ここまでは,ζ(s)の自明でない零点が全て 0≦Res≦1 の領域

にあれば成立することであり,特にRiemann予想が成立することを

必要としません。

 

しかし,特に,

"ζ(s)の自明でない零点が全てRes=1/2の上にある。"

というRiemann予想が成立するなら,

 

素数定理"π(x) ~ Li(x)"はより精密に,Riemann予想と同値な

命題であることが,1901年にvon Kochによって証明されている定理

として,

 

"F(x)=π(x)=Li(x)+o(x1/2+ε) (εは任意の正の数)"

に置き換わることになります。

 

最後に挙げた命題が,Riemasnn予想と同値な命題であることの

理由については,まだ把握していませんが,もしも詳細が理解

できたなら,そのときにはまた紹介したいと思います。

  

参考文献:鹿野 腱 編著「リーマン予想」(日本評論社);

梅田 亨,黒川信重,若山正人,中島さち子 著

「ゼータの世界」(日本評論社),

 

荒川恒男,伊吹山知義,金子昌信 著

「ベルヌーイ数とゼータ関数」(牧野書店) ;

E.Artin著(上野建爾 訳・解説)

「ガンマ関数入門」(日本評論社)

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