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2007年8月24日 (金)

磁気単極子(モノポール)

EMANさんのところで,ちょっと磁気単極子(モノポール)のことが話題

になっていて私自身はその存在については懐疑的ですが,これについ

て少し書いてみようと思います。

 

もしも,"これ=磁気単極子(モノポール)"が存在すればN極やS極

の磁荷が単独で存在することが可能になり,普通の意味でのゲージ

不変性は破れます。

 

しかし,電気と磁気の双対的な対称性はより明確になるし,電磁場

のMaxwellの方程式も少し修正するだけでそのまま成り立つので,

理論的にはこれの存在を否定する根拠はありません。

 

さて,量子論では通常は無視される状態ベクトル,または波動関数の

各時空点における位相の効果を考察することによって,

"磁気単極子=モノポール"の存在を仮定すれば,量子力学が理論と

して矛盾しないためには電荷が離散的でなければならない:つまり

粒子が持つ電荷はある素電荷の整数倍のみが許される。"

 

という"電荷の量子化"が説明できるということをDiracが1931年に

示しました。

 

これは,十分にモノポールの存在の理論的根拠に成り得るもので

あるとして,一時注目されました。

 

私としては,既に2006年5/11の記事「波動関数の位相と電磁場で,

"量子異常(Anomary)"の生じる原因は波動関数の位相(Berryの位相)

がカイラル・カレント(Chiral current)に及ぼす影響である。

という主旨の話を書きました。

 

その際にも,波動関数の位相の効果として上記のDiracの磁気単極子

やアハラノフ・ボーム効果(Aharonov–Bohm effect)があることなど

についても,少し触れています。

 

要するに何が問題かというと,皆さんよくご存知のように,

 

電気の電荷というのは正電荷(+)や負電荷(-)が単独で存在する

ことが可能ですが,磁気における磁荷,つまりN極とかS極とかい

うのは,必ず"対(pair)=双極子(dipole)"でしか存在し得ません。

 

永久棒磁石などは,いくら切り離してバラバラに分けても金太郎

飴とはちょっと違うけれど,必ず両端にN極とS極が対になって

現われて総体として磁気的に中性になり,決してN極またはS極

が単独で現われることはありません。

 

実際の実験や観測においても,いくら微小な粒子であっても"単独

のN極あるいはS極のみを持つもの=磁気単極子(monopole:モノ

ポール)"は未だ発見されたことがありません。

 

現在の電磁気学の基礎方程式であるMaxwell方程式で見ると,電場

では電束密度の湧き出しとして電荷密度ρeが表現されています。

 

すなわち,div=ρeです。

 

これに対し,磁場では磁束密度の湧き出しは必ずゼロになります。

 

div=0 ですね。

 

これは電荷を連続量とみなして,それを電荷密度の積分として表わ

していいほどのオーダー:つまり古典電磁気学のオーダーでは単独

の磁荷は現われない,したがってゼロ以外の磁荷密度は決して現わ

れないという意味で現在の電磁気学の基礎にもなっています。

 

現在の電磁気学では,電荷は単純に実在するスカラー量の1つであ

るとされているのに対して,磁荷というスカラーは現実に実在する

量ではありません。

 

磁荷に相当するものとしては,コイルのような回転電流の上下にN

極とS極という2つの磁荷が対になって双極子として出現する存在

でしかないと考えられています。

 

しかし,電磁気学において磁気単極子(モノポール)が存在しても

矛盾がないことを見るために,まず,真空中の電磁場のMaxwell

方程式を書き下します。

 

すなわち,div=ρe,rot=∂/∂t+e,div=0,

 -rot=∂/∂tです。

  

 そして,もしもモノポールが存在するとした場合に,上の方程系は,

 一般にはゼロでない磁荷密度ρmと磁荷電流密度mの存在を仮

 することによって,一般化されたMaxwellの方程式に修正されます。

 

 すなわち,div=ρe,rot=∂/∂t+e,div=ρm,

 -rot=∂/∂t+mです

 

 そして,この一般化されたMaxwellの方程式に対して,

 擬スカラー角ξによる次の双対性変換:

 

   'cosξ+Z0'sinξ,

 Z0=Z0'cosξ+'sinξ,

 Z0=-'sinξ+Z0'cosξ,

   =-Z0'sinξ+'cosξ,

  

 および,

 

 Z0ρe=Z0ρe'cosξ+ρm'sinξ,

 Z0e=Z0e'cosξ+m'sinξ,

  ρm=-Z0ρe'sinξ+ρm'cosξ,

  m=-Z0e'sinξ+m'cosξ

  

 を施しても方程式の形は不変です。

 

さらに,もしも全ての粒子で磁荷と電荷の比が同一なら,

双対性変換の結果,ρm'とm'が共にゼロになるような

擬スカラー角ξを選ぶことが可能となります。

  

したがって,その変換を実行することにより,一般化された

Maxwellの方程式は通常のMaxwellの方程式に帰着されます。

 

次に,Diracの磁気単極子の理論を詳しく説明するために,波動

関数の位相について考察してみます。

  

まず,ある特定のSchroedinger方程式を与えられた境界条件の

下で解いた1つの解ψを考えます。

  

ψは1成分の波動関数で座標と時刻tの関数ですから,これを

ψ(,t)≡A(,t)exp{iβ(,t)}と表現します。

 

ただし,A(,t),β(,t)は実数値関数です。

 

通常の物理的状況を想定し,境界条件は確率として観測可能な量

である|ψ(,t)|2にのみに依存すると仮定します。

  

そして,ψの位相βに定数位相を加えて得られる新しい波動関数

ψ'とします。

 

すなわち,ψ'(,t)≡A(,t)exp{iβ'(,t)},

β'(,t)=β(,t)+(定数) とします。

 

このときψ'はψが満たすのと同じ波動方程式の解であり,実験

との比較における理論的結論においてもψ'とψの間に何の差異

もないことは明らかです。

 

それ故,ある1点での波動関数の位相という量:β(,t),

または,β'(,t)は,それ単独では何の物理的意味も持たない

といえます。

 

しかし,位相β(,t),β'(,t)に共通の性質として重要なの

は,異なる:つまり異なる2点でのそれらの差は常に一定である

ということです。

 

すなわち,位相が意味を持つとすれば,それは異なる2点における

位相差のみであるといえます。

 

このことは,同じ方程式の解となる複数の波動関数についてもいえ

ることです。

 

例えば,ψがψ=ψ1+ψ2と重ね合わせで与えられるとき,

ψに関して実際に観測可能な物理量は,確率密度:

|ψ|21|22|2+ψ1*ψ2+ψ1ψ2* ですから,ある1点に

おけるψ1とψ2の位相に共通の値を加えても結果は同じです。

 

しかし,ψ1とψ2に別々の位相を加えて勝手に位相差を変えると

結果が変わってしまいますから,位相差には明確な意味があると

いえます。

 

ここで,Diracが1931年の論文において考察した1つの一般化を

与えます。

 

すなわち,物理的に意味のある波動関数は任意の2点に対してで

はなく,近傍にある2点に対してのみ,その位相差が確定した値を

取ることを要求された位相を持つ関数であるとします。

 

そこで,遠く離れた2点での位相差はそれらを結ぶ経路に依存して

もよいと仮定します。

 

すると,同一点であっても閉じた経路を周回して戻ったときには,

位相が元の値と異なることがあってもいいことになります。

 

そして,もしもこの意味でも波動関数の1価性は保持されること

要求するなら,経路周回によって生じる位相差は,2πの整数倍

でなければなりません。

 

しかし,ここでは波動関数が必ずしも1価であることは要求しない

ことにします。

 

そして,そのように仮定しても,理論を応用する上で曖昧さが生じ

ないための条件を求めます。

 

そのために,波動関数ψを位相が確定した可積分な部分:

の座標によって"定数を除いて位相が一意的に決まる部分

=いわゆる渦無しの部分,あるいは,非回転的な位相部分:ψ1

と,非可積分な位相γを持つ部分の因子に分けて, 

ψ≡ψ1 exp(iγ) と書きます。

 

そして3次元空間の中を運動する1粒子問題を対象として,座標

は直角座標であるとします。

 

位相γは4次元Minkowski空間のあるベクトル:aμ(,t)により

γ(,t)=∫Cx,tμ(yμ)dyμと表現されますが,可積分性:

μν=∂νμ(μ≠ν)は一般に成立しません。

 

ただしxμ=(x0,)であり,x0=t,=(x1,x2,x3)です。

 

まず,波動関数の確率解釈の要請は,γには何の制限も与えないこと

を示します。

 

すなわち,確率,および期待値では,波動関数に対して必ずその複素

共役が対になった積で与えられるので,位相部分の任意性は相殺さ

れます。

 

しかし,この確率解釈では,物理量をOとしてC+Oφ)d

考察の対象になることがあります。

 

O=1の場合は,これは状態ψとφの重なり具合を与えます。

 

そこで,これは確定した値を持つ必要があり,そのためにはこれらの

被積分関数の2点間の位相差が確定値を取る必要があります。

 

これは位相γにある制限を与えるようにみえます。

 

つまり,積分が確定するには任意の波動関数の対:ψとφが閉じた

経路Cの周回については,2πの整数倍を除いて,つまり,mod (2π)

で同じ位相差を持つことが必要十分です。

 

すなわち,ψ≡ψ1exp(iγ);γ(,t)=∫x,tμ(yμ)dyμ,

かつ,φ≡φ1exp(iη);η(,t)=∫x,tμ(yμ)dyμとした

とき,

 

Cを閉じた経路として, 

Cμ(yμ)dyμCμ(yμ)dyμ2nπ (nは整数)

なることが条件です。

 

ところが,ここで,2つの条件:

 

(1)Cが1点にホモトピー(Homotopy)である。

(2)μ,bμCの内部で連続的に定義できる。

 

が満たされているとすると,

 

Cμ(yμ)dyμCμ(yμ)dyμ2nπの左辺は,

Cを1点に縮小するとゼロになりますから,

この等式が成立するためには右辺のnもゼロになるしか

ありません。

 

そして,上の2つの条件が全ての閉路Cと波動関数の対ψ,φに対し

て成立しているとします。

 

n=0 によりCμ(yμ)dyμCμ(yμ)dyμ0 です

から,Stokesの定理によって,

C(a)μdyμS{rot(a)}μνdSμν0

です。

 

これが常に成立するためには,rot(a)=0 となることが必要

十分ですから,あるδが存在してab=gradδと書けるはずです。

 

故に,η(,t)=γ(,t)-δ(,t)でありη,γは非可積分

ですがδは可積分です。

 

そこで,δを可積分位相のみの部分であるφ1の方に含めると,

結局,η(,t)=γ(,t) です。

 

すなわち,非可積分位相は全ての波動関数に共通であるとしてよい

ことになります。

 

かくして,非可積分位相γは全ての波動関数に共通であるとして

よいことがわかったので,このγの存在は力学系自身の性質であ

って,個々の状態とは無関係であるということになります。

 

そこで今考えている1粒子系の場合には非可積分位相γは粒子が

置かれている背景の力の場そのものに関係しているはずです。

 

ところで,

μψ=ihc∂ψ/∂xμ

exp(iγ)[ihc(/∂xμ)-hcμ]ψ1です。

(ただし,hc≡h/(2π);hはPlanck定数)

 

一方,電荷eの粒子と電磁場Aμの相互作用がある場合の

Hamiltonianは,極小相互作用の原理によって,

 

電磁場Aμが存在しないときのにおいて,

μ→ (pμ-eAμ/c)と置き換えればいいことがわかって

います。

  

そこで,上で求めたpμψ=exp(iγ)(pμ-hcμ)ψ1なる式を

考慮し,ψは電磁場と相互作用しないとするときには,

ψ1は見掛け上,Aμ=hccaμ/eなる電磁ポテンシャルを持つ

電磁場と相互作用しているように見えます。

 

さらに,通常の手続きで,その電磁ポテンシャル:

μ=hccaμ/eから,=rot,=-∇A0-∂/∂t

によって電場E,磁場を表現することもできます。

 

あるいは,

逆に電磁ポテンシャルAμと相互作用する波動関数ψ1を求めたい

ときには,μ=hccaμ/eと,γ(xμ)=∫μ(yμ)dyμ

通じて非可積分位相γを計算し,ψ=exp(iγ)ψ1によって新し

い波動関数ψを定義すれば,

 

これは電磁ポテンシャルのない場合の波動方程式の解ですから,

μが既知のときには,ψとψ1は一方が解ければ他方も解ける

という関係になります。

 

結局,Schroedinger波動関数に対する電磁場の効果は非可積分

位相のみに現われると考えることができます。

 

ここで,前述の2つの条件のうちの1つ:

"(1)Cが1点にHomotopyである。"が満たされない場合の例として

円周上(0≦θ≦2π)でのSchroednger方程式を調べてみます。

 

このSchroedinger方程式はPlanckや質量を無視した単位では,

-(1/2)d2ψ(θ)/dθ2=Eψ(θ) です。

 

これの境界条件として,

ψ(2π)=exp(-2πiA)ψ(0)(Aは実定数)を要求して,

全ての実数θの領域での波動関数ψ(θ)を考察します。

  

境界条件によって,この問題はEが離散的固有値:

n(n-A)2/2 (nは整数)を持ち,その固有関数が

ψn(θ)=(2π)-1/2exp{i(n-A)θ}である,

と解かれます。

 

この波動関数では円周を1回転するごとに-2πA(mod 2π)

の位相変化が生じるのでψ(θ)は1価ではなく非積分位相:

γを持ちます。

 

γには定数だけの曖昧さがあるので,

γ(θ)≡-∫0θAdθ'=-Aθ と定義します。

 

位相γをψから分離すると,

ψn(θ)exp(iγ)ψ1n(θ);ψ1n(θ)=(2π)-1/2exp(inθ)

と書けます。

 

よって,ψ1n(θ)は円周上で確定した位相を持ちます。

 

そして,分離によって新しく得られた波動関数ψ1n(θ)の満たす

新しいSchroedinger方程式は,

-(1/2)[(d /dθ)-iA]2ψ(θ)=Eψ(θ)

となります。

 

満たすべき境界条件はψ(2π)=ψ(0)です。

 

固有値は,En(n-A)2/2 (nは整数)で変化しません。

 

これは考えている円周がxy面上にあるとする座標系で,

(-Ay,Ax,0),A00 で与えられる電磁場;

μ=(A0,)が存在する下でのSchroedinger方程式とその解

であると解釈できます。

 

この例は,γ(θ)≡-∫0θAdθ'=-Aθですから,この円周C

は円の内部の1点にHomotopyではありません。

 

つまり,条件(1)"Cが1点にHomotopyである。"が満たされない例

となっていますが,この場合でも"波動関数ψから非積分位相γを

分離した残りの部分ψ1は1価関数であり電磁場の存在下での状態

を記述する。"という結論はそのまま成立しています。

 

ただし,条件(1)が満たされないときは一般に波動関数ψは1価関数

ではありません。

 

一方,条件(2)"μ,bμCの内部で連続的に定義できる。"が満た

されない場合を考察します。

 

ただし,条件(1):"Cが1点にHomotopyである。"の方は満たされて

いると仮定します。

 

3次元空間で極座標(r,θ,φ);

rsinθcosφ,yrsinθsinφ,zcosθを用いて,

次の関数を考えてみます。

 

ψ1(,t)=f(r,t)sin(θ/2)exp(inφ)です。

ただし,f(r,t)は1価連続とします。

 

この例では,ψ1はθ0 で連続であるにも関わらず,閉路が

半直線θ0 の周りを1周すると,その閉路が如何に小さくとも

位相の変化は∫φ=0φ=2πφ{∂(nφ)/∂φ}=2πnです。

 

よって,θ0 で位相に不連続な跳躍があるため,

条件(2)"μ,bμCの内部で連続的に定義できる。"

が満足されない例となっています。

 

一般に1価連続の波動関数がゼロとなるところ:ψ10 となる

場所では同様なことが生じる可能性があり,位相が定義できない

ので条件(2)が成立しなくなります。

 

ψ10 はψ1が複素数値なのでψ1(,t)の4つの変数(,t)

に対し2つの独立な制限を与えます。

 

それ故,時刻tを固定するとψ10 はある1次元の曲線を

定めます。

 

この方程式:ψ1=0 を満たす零点を示す曲線を節線と呼びます。

 

1本の節線を指定したとき,これを周回する十分小さい閉路Cに

ついてψ1の位相δの1周の変化量は,

C∇δdn(nは整数)

と表わすことができます。

 

nはこの節線に固有の量ですから,これを指数と呼びます。

 

指数の符号は節線と閉路Cの相対的位置に依存します。

 

ここで,元の波動関数ψ=exp(iγ)ψ1の位相(δ+γ)が有限な

大きさの閉路Cの周回に関してどの程度変化するかを評価します。

  

ただし,Cは多数(k個)の小閉路Cjの合併で,Cjはそれぞれが

高々1本の指数がj節線を囲んでいるとします。

 

jが節線を囲んでいない場合は,nj0 とします。

 

また,閉路Cを境界とする曲面をSとします。

 

このとき,C(δ+γ)d=∑j(∫C j∇δd)-∫C

j2πnj-∫S(∇×)dS です。

 

ここで,=(a1,a2,a3)=-(a1,a2,a3)であり,

γ=∫x,tμdsμ;∫a0ds00 です。

 

さて,電磁ポテンシャルをAμ≡hccaμ/eによって導入し,

上式に,∇×={e/(hcc)}rot={e/(hc)}を代入

すると,

 

総位相変化量は,

C∇(δ+γ)d=∑j2πnj{e/(c)}∫S

2πN{e/(hc)}Φ で与えられます。

 

最後の式では,指数の代数和をN≡jjとし,Sを貫く全磁束

をΦとしています。

 

ところで,もしもSが閉曲面なら,そもそもそれは境界Cを持た

ないので位相変化量はゼロのはずです。

 

したがって,この場合は 2πN{e/(hc)}Φ=0 です。

 

一方,同じくSが閉曲面のとき,指数の総和N=jjにおいて,

節線がS全体を通過している場合,その節線に関する指数j

よる寄与の総和は相殺されてゼロになりますから,

 

Nに寄与する節線の指数jとしては,Sの内部に端点のある節線

によるもののみに帰着します。

 

これは,全磁束Φへの部分小閉路内磁束の寄与についても同じです。

 

つまり,Sの外から入ってきて外へと通過してしまう磁束なら,

その全磁束Φへの寄与はゼロです。

 

それ故,Φにゼロでない寄与を与える磁束は,閉曲面Sの内部に

端点を持ち,そこでの湧き出しのみがΦへの寄与になる,

と考えられます。

 

そもそも,通常の磁場のみでモノポールが全くないなら,磁力線には

端点というものがありませんから,Φ=0 です。

 

そこで逆に全磁束Φがゼロでないなら,Sの中には磁束の湧き出し

をもたらす"磁力線の端点=電磁場の特異点"があるはずです。

 

ところが,全磁束Φは問題としている粒子にとっては単に外的な

磁場の効果であり,等式 2πN={e/(hc)}Φでは右辺は磁場

のみに依存して粒子の状態には無関係な量です。

 

そこで,この等式は,左辺のNが全ての波動関数に対して,共通な

値であることを意味します。

 

つまり,"ψ1の零点=節線"のうちSの中で終わっている端点は

電磁場の特異点に対応しているといえます。

 

閉曲面Sを十分小さく取って,その内部に含まれる電磁場の特異

点は1つだけであるようにします。

 

電磁場といっても今問題になるのは磁場だけなので,特に唯一の

特異点が原点にあるとして,

電場,磁場が,それぞれ,=0,=g/r3となる場合

を考えます。

 

このとき,S内の全磁束は,

Φ=∫S=gS/r34πg

と計算されます。

 

磁場の強さを示すgは,磁気単極子(モノポール)の磁荷と

呼ばれる量に対応しており,2πN{e/(hcc)}Φ=0 は,

4πg/(hcc)=2πN,またはg=N{hcc/(2e)}なること

を意味します。

 

これは,磁荷:gが{c/(2e)}の整数倍でなければならないこと

を示しています。

 

あるいは,e=N{hcc/(2g)}と書けば,逆に,

電荷:eが{c/(2g)}の整数倍でなければならないこと

になります。

 

結局,電荷の量子化が得られたことになります。

 

位相に関する話題はこの他にもありますが,一応,Diracの

磁気単極子(モノポール)の理論に関連した話だけをしよう

と思ったので,今日のところはここで完結とします。

 

参考文献:Jackson 著(西田 稔 訳)「電磁気学(上)」(吉岡書店);

矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

 

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コメント

インフレーション時にモノポールが存在したと予測されているようで

インフレーション後にモノポールの存在密度が劇的に低下したと予測されているようで
?

投稿: 凡人 | 2013年5月 3日 (金) 21時01分

11元人様

横から失礼します。
URL先の資料によると統一理論(強い力・弱い力・電磁力)においてインフレーション時にモノポールが存在したと予測されているようで、むしろ理論を補強するようです。
もちろん今後モノポールを完全に否定する理論が表れるかもしれませんが。

投稿: 大絶画 | 2013年5月 3日 (金) 09時11分

↑の修正です。

>>・W[a][0][j]および、F[a][i][0] ・・・ 電場のようなもの
>>・F[a][i][j] (i,jともに0以外) ・・・ 磁場のようなもの

・W[a][0][j]および、W[a][i][0] ・・・ 電場のようなもの
・W[a][i][j] (i,jともに0以外) ・・・ 磁場のようなもの

投稿: 11元人 | 2007年8月24日 (金) 18時31分

TOSHIさん、こんにちは。
ちょっと質問させてください。

電磁場は、電磁場テンソルF[i][j](i,j=0,1,2,3)について、3次元的に、
・F[0][j]および、F[i][0] ・・・ 電場
・F[i][j] (i,jともに0以外) ・・・ 磁場
ですよね。

強い力の場や弱い力の場においては、電磁場テンソルに相当するものが、いわゆるヤンミルズ場テンソルW[a][i][j](i,j=0,1,2,3;a = 1,・・・,N; Nは強い力の場では8まで、弱い力の場では3まで)だと思いますし、3次元的には、
・W[a][0][j]および、F[a][i][0] ・・・ 電場のようなもの
・F[a][i][j] (i,jともに0以外) ・・・ 磁場のようなもの
だと思います。

それで、もし、モノポールが存在すると、電磁場の法則・理論だけでなく、強い力の場や弱い力の場の法則・理論にも、修正・変更が必要になるのでしょうか?

投稿: 11元人 | 2007年8月24日 (金) 18時29分

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