磁気単極子(モノポール)(補遺)
前記事では電場や磁場などの場の強さについて言及していなかった
のが少し気になったので補足しておきます。
まず,磁気単極子(モノポール:monopole)など全く存在しない
普通の電磁気学では,磁場(磁束密度)Bは,常に発散がゼロの
条件:divB=∇B=0 を満たすので,ベクトルポテンシャル
Aが存在して,B=rotA=∇×Aと表現できます。
そして,これを電場Eを含む方程式:-rotE=∂B/∂t に代入
すると,rot(E+∂A/∂t)=0 なので,スカラーポテンシャル
Φが存在して,E+∂A/∂t=-∇Φ=-gradΦと書けます。
そこで,A0=Φとおいて,4元ベクトルとして,
電磁ポテンシャル:Aμ=(A0,A)を定義すれば,
B=rotA=∇×A,かつ,E=-gradA0-∂A/∂t
=-∇A0-∂A/∂tと表わすことができます。
これを用いると,場の強さである電場Eと磁場Bは,
4次元Minkowski空間の反対称テンソル成分として,
Fμν≡∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν
=∂μAν-∂νAμ;Bi=-1/2εijkFik=-εijk∂jAk
=εijk∂jAk,Ei=Fi0=∂iA0-∂0Ai=-∂iA0-∂0Ai
と表現されます。
そして,こうした場の強さの定義から,勝手なスカラー関数:Λ
に対して,電磁ポテンシャルに,Aμ→ Aμ+∂μΛ なる変換
を加えても場の強さ:Fμν=∂μAν-∂νAμは不変である,
というゲージ(gauge)不変性が成立することは明白です。
余談になりますが,
より一般に場の量子論において,生成子(generators):{Ta}の
交換関係が変換群Gの構造定数fabcで,[Ta,Tb]=ifabcTc
(a,b,c=1,2,..,N=dimG)で規定されるような一般の
非可換な局所ゲージ変換群Gの下で,
理論が不変であるとします。
このとき,ゲージ場の4元ポテンシャルを,
Aμ≡∑a=1NAaμTa,共変微分をDμ≡∂μ+igAμ
とすると,
この場合の"場の強さ=曲率テンソル"は一般に,
Fμν≡∂μAν-∂νAμ-(i/g)[Dμ,Dν]
=∂μAν-∂νAμ+ig[Aμ,Aν]
で定義されます。
ただし.Fμν≡∑a=1NFaμνTaであり,
Faμν≡∂μAaν-∂νAaμ-gfabcAbμAcν
(a,b,c=1,2,..,N)です。
そして,この場合のゲージ不変性は"N成分の勝手な関数Λにより,
Aμ=∑a=1NAaμTaから,Aμ→ Aμ+DμΛなる変換:
すなわち,Aaμ→ Aaμ+∂μΛa-gfabcAbμΛcなる変換
を加えても,
場の強さ:
Fμν≡∂μAν-∂νAμ-(i/g)[Dμ,Dν]
=∂μAν-∂νAμ+ig[Aμ,Aν],
あるいは,
Faμν≡∂μAaν-∂νAaμ-gfabcAbμAcνが不変である。"
という法則になります。
そして,物質場:ψがなくゲージ場Aμだけが存在する場合の
自由ゲージ場のLagrangian密度は,
L=-(1/4)N-1tr(FμνFμν)
=-(1/4)FaμνFaμν
で与えられます。
これは,電磁場ならL=-(1/4)FμνFμν=(1/2)(E2-B2)
です。
これを"Haniltonian H=エネルギー"に変換すれば,
H=(1/2)∫(E2+B2)dxとなります。
もちろん,これらはゲージ不変です。
しかし,磁気単極子(モノポール)がある場合の一般化された場
では,divB=ρm≠0 なので,Bがベクトルポテンシャル:Aに
よってB=rotAと書けるということはなく,
より一般に,Bは発散がゼロの部分と,回転がゼロの部分の和として
B=rotA+gradχと表わせます。
また,これと-rotE=∂B/∂t+Jmからは,
rot(E+∂A/∂t)+grad(∂χ/∂t)+Jm=0
となります。
ところで,一般化されたMaxwellの方程式では擬スカラー角ξに
よる双対性変換:
E=E'cosξ+Z0H'sinξ,
Z0D=Z0D'cosξ+B'sinξ,
Z0H=-E'sinξ+Z0H'cosξ,
B=-Z0D'sinξ+B'cosξ,
および,
Z0ρe=Z0ρe'cosξ+ρm'sinξ,
Z0Je=Z0Je'cosξ+Jm'sinξ,
ρm=-Z0ρe'sinξ+ρm'cosξ,
Jm=-Z0Je'sinξ+Jm'cosξ
を施行しても方程式の形が不変なことがわかっています。
そこで,ρm'=Jm'=0 とできる場合には,divB'=0,かつ
-rotE'=∂B'/∂t となるので,
B'=rotA',E'=-∇A0'-∂A'/∂tと書けます。
そこで,Aμ'=(A0',A')とすれば電場E',磁場B'は反対称
テンソル:Fμν'≡∂Aν'/∂xμ-∂Aμ'/∂xν
=∂μAν'-∂νAμ' で表わされ,
磁場はBi'=-1/2εijkFjk',電場はEi'=Fi0'
とすることができます。
そこで,このように双対性変換された場では,ゲージ不変性,
つまり"Aμ'→ Aμ'+∂μΛなる変換を加えても,場の強さ:
Fμν'=∂μAν'-∂νAμ'は不変である。"
という法則が成立します。
しかし,このゲージ変換を逆に元の場での変換に翻訳すると,
これに対応するのは同じ形のゲージ変換ではなく,何らかの
かなり複雑な変換であろうと推測されます。
でも,とにかく,この変換で場の強さE,Bが不変になる,
という何らかのゲージ不変モドキの対称性はありますが,
既に素朴な意味でのゲージ不変性とはいえない複雑なもの
になっています。
現実にはモノポールは発見されておらず,もし存在しても僅かで
あるか,特別な条件下でしか存在し得ないでしょうから,
双対性変換の擬スカラー角ξは非常にゼロに近い値であろうと
思われ,実質的なMaxwell方程式からのずれはないに等しい程度
ではないかとは思います。
しかし,とにかくこうした変換性では恐らく複雑すぎて,私には
自然の理論体系として"美しい"とは感じられないので,私自身
は磁気単極子(モノポール)の存在には懐疑的なのです。
しかし,現在がむしろ"対称性の破れの逆行"であるというような
意味で,宇宙初期の高温高密状態で,そうしたものが存在した可能性
を否定することはできませんね。
もちろん,磁気単極子(モノポール)が存在しても,それは電磁的性質
に影響を与えるのみであって他の種類の強い力,弱い力,重力などに
は直接の効果として影響を与えるものではないと思います。
PS:最後の部分ではろくに調べもしないで,知ったかぶりをして,
ややいい加減なことを書いたので,検索して参考にした
PDF:表題「インフレーション」 から,モノポールに関する部分についての
内容を要約しておきます:
(※引用):素粒子の大統一理論が正しい,という前提に立つと,
宇宙初期の高温:T~ 1015GeV(~ 1028K)の時期には,電弱理論
と同じように,強い相互作用と電磁相互作用も統一されて区別で
きないような対称性を持っていたのが,温度が下がると共に,
いわゆる自発的対称性の破れ,または真空の相転移により,
強い相互作用と電磁相互作用に分化したことになります。
この相転移による対称性の破れの方向は一様ではなく,宇宙の
領域によって様々であり,もしもこの"領域の境界面=位相欠陥"
が" 0次元=点状"なら,
それはトフフト・ポリヤコフ(t'Hooft-Polyakov)の
磁気単極子(モノポール)になるとされています。
この磁気単極子(モノポール)の質量:mMPは素粒子としては異常
に大きく,それは1017GeV~ 10-8g程度もあって,非常に重く安定
なはずです。
そして,モノポールができる臨界温度:TCは1015GeV程度であり,
T ~ TCの頃の最初のモノポールの生成数は少ないのですが,
重くて安定なので,宇宙のスケール因子をa=a(t)とすると,
モノポールの密度は膨張と共にa-3で減少するのに対し,輻射
の密度はa-4で減少するので,
aが1012倍に膨張したT~ 10-12TC程度の頃には,宇宙全体で
モノポールが優勢になります。
こうした見積もりから,理論上は現在の宇宙にモノポールが豊富
に存在しなければならないのに,現実には全く発見されていない
という問題があります。
しかし,"宇宙初期の時刻:t~10-37secから10-36sec程度の間
=現在の感覚からはほぼ瞬間と思われる時間"に宇宙が急速に
膨張したとする「インフレーション宇宙の理論」が正しいと
するなら,
"これ=インフレーション"を経過したときにモノポールの
数は宇宙全体で1個くらいに薄められ,観測事実とは矛盾しな
いことになって,上記の問題は解決されるらしいです。
参考文献:Jackson 著(西田 稔 訳)[電磁気学(上)](吉岡書店);
九後汰一郎「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)
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コメント
>http://ja.wikipedia.org/wiki/磁気単極子
ウィキペディアの間違い見っけ!
「磁気単極子は陽子の10^16倍の質量を持つため、陽子崩壊の触媒となる」
質量のせいじゃないし。
>インフレーションのお陰
大統一理論もアヤシイからインフレーションのお陰かどうか分からないし、磁気単極子があった方がエネルギー源になって都合が良い。
>インフレーション理論を受け入れざるをえないのでしょうか?
>本当に起きていたとすれば
それも古い。(もはや定説)
投稿: hirota | 2007年10月14日 (日) 11時48分
2007年8月26日 (日) 21時30分に私が投稿したコメント中の「実験事実」は「観測事実」に訂正させていただきます。
ところで、インフレーションが宇宙の初期に本当に起きていたとすれば、やはり宇宙はそんなに簡単な代物ではないという事になるのでしょうか?
投稿: 凡人 | 2007年10月13日 (土) 22時27分
TOSHIさん
>大統一理論などでは初期宇宙にモノポールがあることや
というのはこの事でしたでしょうか。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002075398/
hirotaさん
>スーパーカミオカンデの最初の目的が「陽子崩壊の検出」だった事も、とっくに忘れられてるんじゃないかと思うくらい昔だからなー。
カミオカンデとモノポールが関係しているとは知りませんでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/磁気単極子
こんなものが身の回りうようよしていなくて良かったです。
やはり、モノポールが身の回りにないのは、インフレーションのお陰なのでしょうか?
そうだとすると、インフレーション理論を受け入れざるをえないのでしょうか?
投稿: 凡人 | 2007年10月13日 (土) 21時47分
スーパーカミオカンデの最初の目的が「陽子崩壊の検出」だった事も、とっくに忘れられてるんじゃないかと思うくらい昔だからなー。
投稿: hirota | 2007年10月13日 (土) 16時15分
こんばんは。11元人さん。。TOSHIです。
Newtonというのは、そういう雑誌があるというのは知っていますが、おそらく情報としてはかなり遅れている雑誌でしょう。
大統一理論などでは初期宇宙にモノポールがあることや陽子が崩壊するというのはかなり昔からその通りのことを言われています。
私自身はそれを勉強したことがないのでよくわかりません。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年10月13日 (土) 00時31分
TOSHIさん、こんにちは。
雑誌「Newton」の9月号で、磁気の話の
特集があり、初期宇宙では、モノポール
の存在が有力視されているような話があ
るのですが、それについて、TOSHIさんの
見解などをお伺いしたいのですが?
投稿: 11元人 | 2007年10月 8日 (月) 11時19分
ちょいと補足。
>>信用できる(計算可能な)量子重力理論が完成していないので
ニュートン力学以降、電磁気学、特殊相対論、一般相対論、量子力学、場の量子論の標準理論(量子電磁力学、量子色力学、GWS電弱理論)などは、微分方程式や(ラグランジアンやハミルトニアンなどの)変分法などにより計算可能であり、それにより、第3者の実験・観測による検証や応用が可能です(そういう理論こそ、本当の意味での物理理論や科学理論とよべるものです)。
一方、超ひも理論やループ量子重力理論などの量子重力理論は、現時点では、計算可能な理論として完成しておらず、したがって、第3者による検証も応用も出来ない状態です。
ただし、その基礎となる、一般相対論と量子力学や場の量子論(標準理論)は、すでに計算可能な理論であるだけでなく、さまざまな検証テストに耐えてきた意味での信用できる理論であり、この両者の考え・効果を合わせて、可能性のある現象・効果(量子重力効果、量子宇宙論)を、有る程度、考えることは可能だと思われます。
投稿: 11元人 | 2007年8月29日 (水) 17時51分
hirotaさん、こんにちは
>>web でヒドイのばかり読んだら、そう思うのは当然です。
科学技術系、IT系のもので日本語でよめるWebでは、しっかりした情報が少ないですね。
凡人さん、こんにちは
>> 相対論的宇宙論、インフレーション宇宙論、量子宇宙論
以下、ちょっと長くなりますが、予備知識として。。。
現在の宇宙は、膨張をしているという話は、有名ですが、その宇宙を過去に遡っていくと、分子・原子(10の-10乗・メートル)より小さい時代、そして、プランク・スケール(10の-35乗・メートル)以下の時代が、それぞれあるわけです。
それで、宇宙論では、
・宇宙が分子・原子より大きい時代 ・・・ 古典的な特殊相対論(電磁場理論)と一般相対論(重力理論)にもとづく「相対論的宇宙論」の時代(一般の物理でも、古典的な力学・電磁気学や相対論で十分な領域)
・宇宙がプランク・スケールより小さい最初期の時代 ・・・ 量子重力理論にもとづく「量子宇宙論」の時代(既存の相対論や量子論が適用できない領域)
で、現在の宇宙論では、その中間の時代
・宇宙がプランク・スケールより大きい時代から、分子・原子くらいまでの時代 ・・・ 「インフレーション宇宙論」の時代
を扱うのが主流といえると思います(TOSHIさんに言わせると、あまり正確でない、といわれそうだが)。
この時期は、宇宙が急激に膨張して、現代物理で知られる4つの力や、クォーク、レプトン、原子核、分子・原子など物質が創生された時代です。
この「インフレーション宇宙論」では、基礎理論として、一般相対論と、量子力学や場の量子論(量子電磁力学、量子色力学、GWS電弱理論、大統一理論など)が必要な時代です。
いわゆる、「素粒子的宇宙論」です。
もっと前の宇宙が誕生した頃の「量子宇宙論」の時代をまともに扱うには、信用できる(計算可能な)量子重力理論が完成していないので、もっと先の時代の話になるのでしょう。
一方、一般的な「ビッグバン宇宙論」は、現代では、古典的な相対論に基づく「相対論的宇宙論」の時代のものといえます。
投稿: 11元人 | 2007年8月29日 (水) 11時11分
>興味はないです。
web でヒドイのばかり読んだら、そう思うのは当然です。
(複素関数論では正則関数が境界情報だけで決まるのは常識、といった話すらない)
投稿: hirota | 2007年8月29日 (水) 10時17分
11元人さん
佐藤文隆氏や佐藤勝彦氏などの著書のご紹介、有難うございました。
皆さん
間違っていたら申し訳ありませんが、「ホログラフィック宇宙論」は、超ひも理論かM理論から導き出される「ホログラフィー原理」を元にしているような事を、何処かで見た事があるような気がします。
だから、超ひも理論と理論的に親戚関係があるのではないかと思っています。
参考になるかどうか分かりませんが、以下をご覧下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E5%BC%A6%E7%90%86%E8%AB%96
投稿: 凡人 | 2007年8月28日 (火) 22時07分
こんにちはhirotaさん、TOSHIです。コメントありがとうございます。
>「ホログラフィック仮説」について記憶をほじくってみたんですが、パラメータを減らすとかいう話じゃなかったような・
パラメータを減らすなんて言ってません。多くのパラメータを説明するために超弦理論なんかは次元を増やしているという傾向があるのに、次元を減らす、という方向で全部のパラメータを説明できるのかな?という疑問を述べただけです。
とりあえず全部の仮説を詳しくフォローする気はないし今のところ、これ=「ホログラフィック仮説」には興味はないです。
「もの知り博士」になることを目指しているのではなくて、むしろ「専門バカ」になることを希望しています。これまで蓄積してきた知識はすべて目標のために必要と感じているものだけです。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月28日 (火) 20時27分
凡人さん
>>佐藤文隆氏や佐藤勝彦氏などの著書については、おいおいと読んで行きたいと思います。
いくつか、手ごろで一般向けの著書を紹介しておきます。
佐藤文隆氏の著書については、講談社ブルーバックスで、
・「(新装版)相対論的宇宙論」(B1425・松田卓也氏との共著)
・「量子宇宙をのぞく」(B865)
があります。
「(新装版)相対論的宇宙論」の方は、たいがいの書店で入手できますが、「量子宇宙をのぞく」は、出版社で絶版扱いのようで、古書店や図書館などで探さないと見つからないと思います。
佐藤勝彦氏の著書については、PHP文庫で出ている
・「宇宙はわれわれの宇宙だけでなかった」
が面白いと思います。
以上、ご参考までに。
投稿: 11元人 | 2007年8月28日 (火) 19時17分
「ホログラフィック仮説」について記憶をほじくってみたんですが、パラメータを減らすとかいう話じゃなかったような・・・
たぶん日経サイエンスで読んだはずですが、なんでもブラックホールのエントロピーが表面積に比例すると言う結果から始まって、同じ体積の空間に含まれてる情報がブラックホール化で消滅する状況を考えると、空間に含まれる情報量の上限は体積じゃなく表面積に比例することになり、本当は物理現象を空間内の現象と見るのは錯覚で、ホログラムのように情報が面内にあるとした方が素直な記述ではないか? という仮説だったはずです。
というわけで、空間で記述しようが面内で記述しようが同等のはずです。(面内で記述した方が簡明になるなら、パラメータも減らせるかも知れませんが)
しかし、確認のためにググッで見ても、オカルトだらけで何の情報も得られないってのは何だろねー。
投稿: hirota | 2007年8月28日 (火) 14時11分
宇宙の初期にインフレーションがあったことの証拠は、WMAPなどの観測結果が示しています。
http://www.scienceweb.co.jp/watch/2006/sw060403.htm
こういう現代の宇宙現象を扱う場合、現在のところ、理論的には一般相対論と場の量子論の標準理論(QCD、GWS)が使われますが、こういう宇宙現象は、一般相対論や場の量子論の検証の場でもあります(場の量子論については、素粒子加速器などもあるが)。
現在のところ、一般相対論やQCD、GWSの限界を示す現象は見つかっていないようですが、将来は、そのような現象も見つかるかも知れません。
そのような現象の検知は、一般相対論やQCD、GWSといった現代の標準理論を超える、大統一理論(GUTs)や量子重力理論(超ひも理論など)といった次代の基礎理論の構築のために必要なものでしょう。
投稿: 11元人 | 2007年8月28日 (火) 10時24分
11元人さん
佐藤文隆氏や佐藤勝彦氏などの著書については、おいおいと読んで行きたいと思います。
アドバイス頂き有難うございました。
投稿: 凡人 | 2007年8月27日 (月) 20時31分
こんにちは、凡人さん
>>「これらのものの必然性が、各種理論間で、物理学的・数学的に整合している事が確認されておらず」という表現ではいかがでしょうか?
その表現も、あまり当たっていないように思います。
というのは、インフレーション理論を含め、現代の宇宙論は、観測的事実と、現代物理学の2つ、あるいは、3つの標準理論である
・一般相対論
・場の量子論の2つの標準理論 ・・・ 量子色力学(QCD)、GWS(グラショウ・ワインバーグ・サラム)の電弱理論
をもとにしているからです。
さらにいえば、これらは、20世紀以来の物理学における2大柱である
・相対論と量子力学
を土台にしているわけです(スケール的に宇宙論と対極的といえる素粒子論などの世界も同様ですが)。
その意味では、たとえば、インフレーション宇宙論も、相対論と量子力学を基礎とする現代物理学の標準理論からの物理的・数学的な帰結ともいえますし、整合性は問題ないものと思います。
さらに、マザー・ユニバース、チャイルド・ユニバース、ベビー・ユニバースなどの多宇宙の概念も、相対論と量子力学からの帰結といえそうです。
このあたりの詳しい話は、現代日本における宇宙論の代表者ともいえる、佐藤文隆氏や佐藤勝彦氏などの著書などを読んでみてください。
投稿: 11元人 | 2007年8月27日 (月) 15時21分
こんにちはhirotaさん、TOSHIです。いつもコメントありがとうございます。
>モノポールは高温状態から低温真空に相転移した時に、氷が出来るときの結晶欠陥みたいに発生するそうですから、相転移前の高温状態では存在しませんよ。(電磁場に関係した相転移というと、弱ボゾンに質量が付いて電弱相互作用から電磁場が分離した相転移かな?)
おお、また知ったかぶりしていい加減なことを書きましたか。。ごめんなさい。
訂正ありがとうございます。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月27日 (月) 11時52分
>宇宙初期の高温高密状態
モノポールは高温状態から低温真空に相転移した時に、氷が出来るときの結晶欠陥みたいに発生するそうですから、相転移前の高温状態では存在しませんよ。(電磁場に関係した相転移というと、弱ボゾンに質量が付いて電弱相互作用から電磁場が分離した相転移かな?)
普通に相転移を考えるとモノポールが大量にできてしまって、観測と合わなくなるんで苦労してるらしいです。(モノポールだけじゃなく、宇宙ストリングとかドメイン・ウォールとかいう困ったものも出来るらしい。ある程度はインフレーション膨張で薄まるらしいが)
モノポールが見つかると、陽子崩壊を触媒するそうだから、反物質なしで質量完全消滅エネルギーが手に入るんだけどねー。(便利だけど、怖いかもしれない)
投稿: hirota | 2007年8月27日 (月) 11時23分
こんにちは凡人さん、TOSHIです。コメントありがとうございます。
>「説明すべき未知の物理定数=パラメータが多すぎるという現状」があるという事を知りませんでした。
たぶん、誤解されていると思いますが、説明すべき未知の物理定数=パラメータというのは必ずしも未知ではない素電荷e(あるいは微細構造定数α),光速c,プランク定数h,万有引力定数G,素粒子の質量,強い相互作用や弱い相互作用の結合定数などのことを指していて理論が物理学の基礎理論であるという資格を持つにはこれらのパラメータがなぜその値をとるかについて論及し最小数1個か2個で全てを決定する必要があるという意味です。
現状では次元を11次元などに増やしてそれを行なう努力がなされているので次元を減らす理論は逆だろうと考えたに過ぎません。
だから「説明すべきパラメータが多すぎるという現状がある」ということはたぶんご存知だと思います。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月27日 (月) 08時46分
「ホログラフィック宇宙論」について、お調べいただいて、大変申し訳ありませんでした。
「説明すべき未知の物理定数=パラメータが多すぎるという現状」があるという事を知りませんでした。
現状では、理論的に単純とは言いがたいと思いました。
有難うございました。
投稿: 凡人 | 2007年8月27日 (月) 07時24分
こんばんは凡人さん、TOSHIです。コメントありがとうございます。
「ホログラフィック宇宙論」については内容を知らないのでググッて見た感じだけですがどうも説明すべき未知の物理定数=パラメータが多すぎるという現状に対して次元を減らすというのは私は反対のような気がします。
デカルトに代表される考え方と思われるのですが、もしも自分あるいは自分の意識がなければ世界は存在しないあるいは存在しないに等しいという哲学に似ている気がします。
見えるものあるいは感じるものが全てであり、自然現象も意識による表象に過ぎないというのも否定はできませんし、そうであればある意味でうれしいのですが不可知論あるいは形而上学に属するようで深入りすると焼けどしそうです。
観測の理論では唯心論で説明するという本も買って読みましたがしっくり来ませんでした。最近、物理ではやりの脳の理論なども私は今のところ関心をもっていません。
というわけで内容がわからないのでお答えできません。お役に立てなくてすみません。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月27日 (月) 04時06分
こんばんは11元人さん、TOSHIです。いつもコメントありがとうございます。
>重力にも、引力のほか、斥力がある、と考える方が、私には綺麗に思えます。
これについては2006年4月10日,12日,13日の記事「重力場(ファインマン)」,「重力場(ファインマン)つづき」,「重力場(ファインマン),つづき2」で電磁場の力の場合は媒介ゲージ粒子が光子という奇数スピン1のベクトル粒子なのに対し重力場の場合は重力子という偶数スピン2のテンソル粒子で、媒介するゲージ粒子のスピンが0とか2などの偶数の場合は引力だけで斥力はない、という内容のことを理論的根拠も含めて論じています。
また7月24日の記事「負の質量」では質量が負でもいいけど、作用反作用の法則が成り立つなら普通の物体を押すとその反作用で普通は押し返されますが、それを負の質量で割るので加速度が逆符号になって引っ張られるという「ロバ電子」のような非常識な性質となるということを書いています。
よかったら参考にしてください。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月27日 (月) 02時06分
11元人さん
「これらのものの必然性が物理的・数学的に完全に解明されておらず」という表現は、確かに誤りでした。
「これらのものの必然性が、各種理論間で、物理学的・数学的に整合している事が確認されておらず」という表現ではいかがでしょうか?
投稿: 凡人 | 2007年8月27日 (月) 00時19分
>>私がこの宇宙項やインフレーション理論を嫌う所以は、これらのものの必然性が物理的・数学的に完全に解明されておらず、単に実験事実を説明する為にのみ導入されていると思える為です
それで言えば、ニュートン力学における慣性の法則、あるいは、相対論における光速不変原理や等価原理、量子力学における不確定性原理なども、少なくとも、それぞれの時代における必然性が物理的・数学的に解明されておらず、単に実験事実を説明するためにのみ導入されています(それらは、現在でも、解明されているとは思えませんが)。
物理や自然科学とは、そういうもの、といえると思います。
投稿: 11元人 | 2007年8月26日 (日) 22時37分
「宙項」は「宇宙項」の誤りです。申し訳ありません。
投稿: 凡人 | 2007年8月26日 (日) 21時32分
11元人さん、コメント有難うございます。
宇宙論の事は良く分かっていないのですが、近年の宇宙観測で明らかになった、宇宙の加速膨張を説明するために、一度アインシュタインが放棄した、宙項は再び脚光を浴びたのだと思います。
念のために、以下のページを紹介します。
http://www12.plala.or.jp/ksp/astronomy/cosmologicTerm/
私がこの宇宙項やインフレーション理論を嫌う所以は、これらのものの必然性が物理的・数学的に完全に解明されておらず、単に実験事実を説明する為にのみ導入されていると思える為です。
投稿: 凡人 | 2007年8月26日 (日) 21時30分
凡人さん、こんにちは。
アインシュタイン方程式の宇宙項は、重力の斥力を意味します。
現代物理で知られる4つの力のうち、他の3つ力(電磁力、強い力、弱い力)には、引力と斥力とがあります。
重力にも、引力のほか、斥力がある、と考える方が、私には綺麗に思えます。
ただ、重力の斥力は、あるとしても一般の物質には作用せず、宇宙の空間そのものに作用するのでしょう(宇宙項は、宇宙の膨張や収縮に関わるものです)。
投稿: 11元人 | 2007年8月26日 (日) 20時54分
TOSHIさん、いつも大変お世話になっております。
私は、ディラックが提唱したモノポールや物理定数の変化の話しについては良く分かりませんが、この宇宙は本質的には、アインシュタイン方程式中の宇宙項やインフレーション理論が無くても済むような単純な宇宙であって欲しいと願っています。
ところで、以下のホログラフィック宇宙論でも、宇宙項やインフレーションは必要なのでしょうか?
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0602/gravity.html
もし、お分かりでしたらどうかお教えください。
投稿: 凡人 | 2007年8月26日 (日) 19時47分
どもこんにちは11元人さん、TOSHIです。Kコメントありがとうございます。
>前回の記事に対する、私の質問に対する回答を、このような詳しい記事にして頂いて、ありがとうございます。
そう、確かに11元人さんの質問の回答となることを意識して書きましたが、私自身もこうした内容を書き漏らしていたという感覚があったし、回答としてコメントで書くだけの内容としてはもったいないと思って記事にしました。
>全般的に、ここでの数学や物理学に関する記事は、保存したいですね。
保存して参考にしていただくのは私の本望ですからありがたいです。
>モノポールは、結局、重力に対する(アインシュタイン方程式の宇宙項が意味する)斥力や、万有引力定数Gの変化、(超高エネルギーにおける)光速cの変化などと同様に、もし、それらが存在しても、通常・従来の物理理論では、あまり意識しなくても良い、ということですね。
モノポ-ルの存在やG,cの変化の可能性についてはその通りでしょうが、宇宙項の存在は宇宙論にとっては現在の膨張に関わっているかもしれないので意識する必要があるでしょう。
もっとも宇宙論などわれわれの日常の生活には関係ないという意識で考えるならやはりそうでしょうが。。。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2007年8月26日 (日) 18時29分
モノポールは、結局、重力に対する(アインシュタイン方程式の宇宙項が意味する)斥力や、万有引力定数Gの変化、(超高エネルギーにおける)光速cの変化などと同様に、もし、それらが存在しても、通常・従来の物理理論では、あまり意識しなくても良い、ということですね。
ただ、宇宙初期とか、多宇宙などを考える際には、意識する必要がありそうですね(宇宙初期や別の宇宙では、万有引力定数Gや光速cなどの物理定数の値が変わる可能性はあるでしょう)。
投稿: 11元人 | 2007年8月26日 (日) 11時46分
TOSHIさん、こんにちは。
前回の記事に対する、私の質問に対する回答を、このような詳しい記事にして頂いて、ありがとうございます。
全般的に、ここでの数学や物理学に関する記事は、保存したいですね。
投稿: 11元人 | 2007年8月26日 (日) 10時47分