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2007年8月21日 (火)

S行列とレッジェ理論(1)

今日から当分の間,古臭いけどなつかしい現象論的なレッジェ

軌跡(Regge trajectry),あるいはレッジェ極(Regge poles)の

理論をシリーズ記事として記述したいと思います。

 

Regge理論は,超弦理論(超ひも理論)の前段階の弦理論(ひも理論)

の基になった理論でもあり,主として強い相互作用における散乱

行列,つまりS行列の解析性を中心としてモデル化した有力な仮

説です。

 

以下,Sommerfeld-Watson(ゾンマーフェルト・ワトソン)変換や,

s-チャンネル,t-チャンネルの双対性(duality)などについて

論じてゆきますが,その後にできたらベータ関数から構成され

弦理論の祖である"Venneziano(ヴェネツィアノ)模型

=双対共鳴模型(Dual resonance- model)"などにも言及したい

思っています。

 

 まずは,非相対論的な散乱(衝突)の一般理論から始めます。

 

 (※下図は他のホームページから無断借用した散乱実験

  の模式図です。)

 

 

 

 まず,"始状態の粒子=入射粒子"の波動関数をφ(,t)

 とすると,これは自由粒子のSchroedinger方程式:

 ihc{∂φ(,t)/∂t}={-hc2/(2m)}∇2φ(,t)

 に従います

 

 ただし,hc≡h/(2π)はPlanck定数です。

 

 これを満たすφ(,t)は,事実上波数があるの近傍にある

 平面波の重ね合わせで与えられ,有限範囲ののみに局所化

 された波束であると考えられます。

 

 この"波束=入射ビーム"は標的に当たるまでは,それ自身拡がり

 歪みながら進行します。

 

 そして,標的付近でのこの標的との相互作用を局所化された

 ポテンシャルV()で表わすと,

 

 相互作用を含めた全体のSchroedinger方程式は,

 ihc{∂φ(,t)/∂t}={-hc2/(2m)}∇2φ(,t)

 +V()φ(,t) となります。

 

 長時間の経過の後には,標的付近の粒子数密度はゼロになり,

 φ(,t)は再び自由粒子のSchroedinger方程式を満足する

 ようになりますが,その終状態の波は2つの部分に分割され

 ます。

 

 (※下図は.どなたかのPDF:第22章散乱の量子論 の中の図を

   流用させて頂きました。)

 

 

 

 

 第1の部分は初期波束とほぼ同じ形の波数が初期のの近傍

 の重ね合わせの直進する平面波束です。

 

 これは,ただ,"総確率=ビームの大きさ"が初期の入射波束より

 小さくった入射波と散乱を受けずに素通りしたと見なせる波

 の和です。

 

第2の部分は,エネルギー保存則により波数の絶対値は初期の

k=||と同じですが,もはや真っ直ぐ進む平面波束ではなく,

見掛け上,爆発に伴う雲のように全方向に散乱されて出て行く

外向き球面波から成るものです。

 

そして,第1と第2の部分を総和した波束の総確率は入射波束

の確率に等しくなります。

 

すなわち,この散乱(衝突)は粒子の総存在確率,つまり,総粒子数

が保存される弾性散乱であると仮定します。

 

 衝突時刻がwell-definedなら,その時刻に射出された出て行く波

 の雲は空間に局在化され,その半径は速度=hc/mで拡がる

 でしょう。

 

 そして,この雲の全確率:∫|φcloud|2は放出後も一定に保

 たるので,波動関数φcloudは"標的中心からの距離=半径r"

 の逆数に比例して減少しなければなりません。

 

 こうした波束の挙動の完全な数学的解析を与えることも可能

 ですが,純粋に数学的見地から入射波束を純粋平面波で置き換

 えて理想化する近似を用いた方がより単純で現実に即してい

 ます。

 

 そうした単純化に支払うべき代償は,

 

 その近似では,運動量とエネギーが絶対的に定義されて波は

 無限空間全体に一様に拡がった存在となるので,仮に数学とし

 て文字通りに解釈するなら,もはや時空における散乱プロセス

 に従うことさえも不可能なことです。

 

 以下では,簡単のためにPlanck定数をhc1とし質量をm=1/2

 とした単位を用いることにします。

 

 粒子の定常な全波動関数をΨ()とすると,これが満足する

 Schroedinger方程式は,2Ψ()+[k2-V()]Ψ()=0

 となります。

 

 ここで,ihc(∂/∂t) ~ E=c22/(2m)=2

 用いました。

 

 つまり,φ(,t)≡Ψ()exp(-iEt/c) としました。

 

 標的の外側(ポテンシャルがゼロ)の点に対応するにおいては,

 Ψ()は自由粒子Schroedinger方程式を満足します。

 

 さらに,この標的の外側領域で,衝突前の入射から衝突後の

 散乱までのプロセスが全て時間的に一定で定常的に続いて

 いると見た描像を採用しています。

 

 この描像では粒子の全体の定常波動関数Ψ()は次の3つ

 の部分から成るように見えます。 

 

 a.入射波束に対応する平面波

 b.入射波束と同じ運動量を持ち標的で衝突を受けず

   素通りした平面波

 .散乱された粒子に対応する外向きの波

 

これらのうちa,bの2つの平面波は時間に依らない描像

では分割することができず,例えば規格化定数を無視すれば

単一の:exp(ikx)に結合されます。

 

一方,外向き波については弾性散乱故,運動量の絶対値は,

k=||のままであって,r≡||とすると波の値は(1/r)

に比例して減衰していくことを既に知っています。

 

かくして必然的に外向き波は次の形を取ります。

 

つまり十分大きいrに対して,

f(θ,φ)exp(ikr)/rなる形です。

 

2(1/r2)[(∂/∂r){r2(∂/∂r)}]+(θ,φ関連の部分)

なので,(2+k2){exp(ikr)/r}=0 により,

球面波:exp(ikr)/rはエネルギー 2を持ち,1/r)に比例して

減衰してゆく自由粒子の解になっています。

 

よって,全体の波動関数は,

Ψ()=exp(ikx)+f(θ,φ)exp(ikr)/r+O(1/r2)

と書けます。

 

そして,大抵の場合,ポテンシャルはrにのみ依存する

中心力場()=V(r)であり,衝突した粒子は入射

運動量の方向と同じ角度θをつくる任意の2方向にのみ

散乱されます。

 

そこで(θ,φ)は単にθにのみ依存します。

 

故に,

Ψ()=exp(ikx)+f(θ)exp(ikr)/r+O(1/r2)

となります。

 

散乱波;Ψ()がこの形に書けることを散乱の境界条件と

いいます。

 

そして関数:f(θ)=f(θ,φ)を散乱振幅と呼びます。

 

 

ここで,散乱振幅と散乱断面積σを関連付けておきます。

 

入射波動関数:exp(ikx)は入射粒子の単位密度に対応し

ており,それ故,入射粒子の速度v=2k(=hc/(2m))

に等しい値の流束に対応しています。

 

一方,θのまわりの立体角dΩの中に散乱される単位時間

当たりの粒子数は,

2k|f(θ)/r|22dΩ=2k|f(θ)|2dΩ

です。

 

定義によれば,このプロセスに対する散乱の微分断面積

dσは入射流束によるdΩへの散乱粒子数の比率で定義

されます。

 

そこで,今の弾性散乱では微分断面積は,

dσ/dΩ=|f(θ)|2よって与えられます。 

 

ここで,Schroedinger方程式:

2Ψ()+[k2-V()]Ψ()=0 と,

散乱境界条件:

Ψ()=exp(ikx)+f(θ)exp(ikr)/r+O(1/r2)

と共に,平面波部分によって満足される自由粒子の波動

方程式:(∇2+k2)exp(ikx)=0 を考慮すると,

 

"散乱波動関数=[Ψ()-exp(ikx)]:波動関数の自明

でない部分を決定する方程式が得られます。

 

すなわち,(∇2+k2)[Ψ()-exp(ikx)]

()Ψ()です。

 

ここで,全く形式的に演算子(∇2+k2)の逆演算子:

(∇2+k2)-11/(∇2+k2) が定義できるとします。

 

これを左から両辺に掛けると次式が得られます。

 

すなわち,Ψ()=exp(ikx)+{1/(∇2+k2)}V()Ψ()

です。

 

これが無意味でないためには,(∇2+k2)-11/(∇2+k2)が正しく

定義される必要があります。

 

そのため,Diracの括弧(bracket)による表示を考えます。

 

この表示では,ケット|α>で表示される状態は,空間では,

波動関数:φα()(=<|α>)として実現されることを知

っています。

 

そして,空間においては演算子(-ic∇)は運動量演算子

わしているので,hc1のとき,(∇2+k2)は演算子

(k2-P2)表現しているといえます。 

 

そこで,さっき導入した逆演算子(∇2+k2)-11/(∇2+k2)

は,(k2-P2)-11/(k2-P2)と同等です。

 

そこで,当面の問題は次のようになります。

 

|α>が任意の状態を表わすとき波動関数:φα()に

作用する1つ演算子として,(k2-P2)-1の作用はどの

ように表現されるか?ということです。 

 

ちょっと考えると,この作用を表現するためには任意の

状態:|α>運動量空間での波動関数φα()(=<|α>)

で表わせばいいとわかります。

 

そこで,運動量演算子の固有状態:|>のセットを,

|>=|>によって導入します。

 

|>は空間では波動関数:exp(ipx)(=<|>)

で表わされる状態です。

 

そして,(k2-P2)-1|>に作用させると,

(k2-P2)-1|>=(k2-p2)-1|>となります。

 

そこで演算子:(∇2+k2)-1はp2=k2を満たすに対応する

状態:|に適用される場合を除いてwell-definedであるこ

とがわかります。

 

(k2-P2)-1|>=(k2-p2)-1|>を空間に翻訳する

ため射影演算子による完全性:Σ|><|=(2π)3

用います。

 

(※ただし,ここでは<|>=exp(ipx)と規格化されて

いるので,Σ|><|=1 ではありません。)

 

すなわち,(2π)3(k2-P2)-1|α>

(k2-P2)-1Σ|><|α>

=Σ(k2-p2)-1|α>|> です。

 

それ故,(2π)3|(k2-P2)-1|α>

=Σ(k2-p2)-1|α><|> です。

 

さらに,(2π)3Σ|(k2-P2)-1|><|α>

=ΣΣ(k2-p2)-1|><|α><|

となります。

 

そして,<||>=(-ic)(2π)-3δ3()

なので,c1とすると,<|(k2-P2)-1|

(∇2+k2)-1(2π)-3δ3() ですから,

 

最終的に,(∇2+k2)-1φα()

=(2π)-3∫d[exp(ipx)/(k2-p2)]

∫d[exp(-ipyα()] なる表式が得られます。

 

 

これは,(∇2+k2)-1φα()=∫dG(α()

表現できます。

 

G()はいわゆるGreen関数であり,

G()≡(2π)-3∫d[exp(ipx)/(k2-p2)]

によって定義されます。

 

このGreem関数G()を与える上式の右辺の積分を実行

するのは,被積分関数が2=k2を満たすにおいて

well-definedではないので自明な作業ではありませんが,

 

これは今のところ用いていない散乱の境界条件を考慮する

こと解決されます。

 

完全な波動関数:Ψ()から初期平面波:exp(ikx)を

除いた散乱波動関数:(∇2+k2)-1V()Ψ()は,||

の大きいところでは,純粋に外向き球面波として挙動し

なければなりません。

 

そこで,積分演算子(∇2+k2)-1,つまり,

G()=(2π)-3∫d[exp(ipx)/(k2-p2)]に完全に

明白な意味を与えるためには,そうした物理条件を用いる

ことが必要です。

 

まず,G()=(2π)-3∫dexp(ipx)/(k2-p2)は,

明らかに回転不変なので,これはr=||のみの関数です。

 

そこで,G()をG(r)と書けば,

G(r)=(2π)-3∫dp[p2/(k2-p2)]∫d(cosα)exp(iprcosα) 

となります。

 

さらに,角度αによる積分を実行すると,

G(r)={1/(2π2r)}∫0pdp[sin(pr)/(k2-p2)]

={1/(4π2r)}∫-∞pdp[sin(pr)/(k2-p2)]

なります。

 

さらに,p/(k2-p2)=(-1/2)[1/(p-k)+1/(p+k)],

sin(pr)=[exp(ipr)-exp(-ipr)]/(2i)を用いると,

 

G(r)={-1/(8π2r)}-∞dp[exp(ipr)/(2i)}

[1/(p-k)+1/(p+k)]

+{1/(8π2r)}-∞dp[exp(-ipr)/(2i)}

[1/(p-k)+1/(p+k)]

と変形されます。 

 

これら4つの積分についてwell-definedとなるように

複素p平面上の実軸上の極p=±kを迂回するp平面上

でのさまざまな積分経路を考慮して結果が外向き球面波

exp(ikr)/rとなるような経路を選びます。

 

これは,極p=-kにおいて経路を虚軸の上方に迂回する

こと,つまり実質上,極をp=-k-iεに移動すること,

 

そして極p=kにおいて経路を虚軸の下方に迂回すること,

つまり実質上,極をp=k+iεに移動することで実現され

ます。

 

※つまり,以下の図も留数(Residue)から,

 

{-1/(8π2r)}∫dp[exp(ipr)/(2i)}[1/(p-k)+1/(p+k)]

=-exp(ikr)/(2πr) (外向き球面波)

 

 

および,

{1/(8π2r)}∫dp[exp(-ipr)/(2i)}[1/(p-k)+1/(p+k)]

=-exp(ikr)/(2πr) (外向き球面波) です。

 

 

 

 

もちろん,εは正の微小量で積分後にはε→+0 とします。

 

すなわち,微分演算子:(∇2+k2)の逆演算子:(∇2+k2)-1

与える積分演算子としての散乱境界条件を満たす,

well-definedなGreen関数は,

 

()=G(r)=-exp(ikr)/(4πr)

=(2π)-3∫d[exp(ipx)/{(k+iε)2-p2}]

=-(2π)-3∫d[exp(ipx)/(2-k2iε)2]

 

で与えられることがわかります。

 

kにiεを加えることは.(r)=-exp(ikr)/(4πr)が

r→ ∞ に対しexp(-ε)/(4πr)で減少することのみを

示していますが,

 

これは,いわゆるr=∞ において散乱のスイッチがオフになる

条件を予めGreen関数の内に組み込んだ断熱近似に相当しており,

因子:exp(-εr)を波動関数に掛けてもその本質的な性質には

影響しません。

 

こうして,Ψ()=exp(ikx)+{1/(∇2+k2)}V()Ψ()

という表式の陽な形は,

 

(∇2+k2)-1φα()=∫dG(α(),および.

G()=G(r)=-exp(ikr)/(4πr)なる表現により,

 

Ψ()=exp(ikx)

-{1/(4π)}∫d[exp(ik||)V()Ψ()/||]

となります。

 

得られた積分方程式は,一見したところSchroedinger方程式より

複雑に見えるかも知れませんが,これには重大な利点があります。

 

それは,この積分方程式が単なるSchroedinger方程式と違って

自動的に散乱の境界条件を含んでいることです。

 

そして,このΨ()exp(ikx)+{1/(∇2+k2)}V()Ψ()

exp(ikx)-{1/(4π)}∫d[exp(ik||)

V()Ψ()/||]なる表式を用いて,

 

波動関数Ψ()をBorn級数として知られている1つの展開級数

して陽に表現する形式を与え,散乱が如何に進むかを詳細に

より厳密に導く手法を考えます。

 

そのためには必ずしもその平面波や球面波とかの具体的な形や

Green関数の完全に陽な形などは必要なく,

 

入射平面波:exp(ikx)の代わりに入射波をφiと書いた単純な

積分方程式の表式:Ψ=φi{1/(∇2+k2)}VΨ みが出発点

となります。

 

この出発点となる最初の積分方程式の表式で,右辺の最後のΨ

に右辺全体を代入すると,

Ψ=φi(∇2+k2)-1Vφi(∇2+k2)-1(∇2+k2)-1VΨ

という2番目の形の積分表式を得ます。

 

これを繰り返すことによって最終的なΨの積分級数展開として,

Ψ=φi(∇2+k2)-1Vφi(∇2+k2)-1(∇2+k2)-1Vφi+..

が得られます。

 

この関係の物理的描像は次のように与えられます。

 

つまり全波動関数は散乱の詳細な歴史を記述する項のシリーズ

から成っています。

 

第1項φiは入射波と散乱を受けず素通りして出てゆく粒子に対応

する平面波の両方を示しています。

 

次の項はポテンシャルVと1回だけ相互作用する粒子を示して

いて初期波φiは粒子が相互作用して散乱が生じる頂点において

ポテンシャルVを掛けられ,衝突散乱後には引き続き外向きの球

面波として進行するように,積分核(∇2+k2)-11/(∇2+k2)が

掛けられています。

 

その次の項は初期波φiがある頂点で1回散乱Vを受け,その後,

(∇2+k2)-1{1/(∇2+k2)}の作用で外向き球面波となった後,

再び別の頂点で2回目の散乱Vを受け,さらに,(∇2+k2)-1

1/(∇2+k2)を掛けられたという描像です。

 

以下の項も同様です。

 

これらは入射粒子から散乱が生じる頂点までラインを引き,頂点

での相互作用Vをドットで表現し,さらに1つの頂点から次の頂点

までの"Green関数(伝播関数)=(∇2+k2)-1"をラインで結ぶこと

を繰り返して,

 

最後に"放出(射出)粒子=出てゆく粒子"まで折れ線で結ぶことに

よって,散乱プロセス全体をその"標的との相互作用=摂動"による

級数として展開し,その摂動の各次数の項をグラフ,または,

ダイアグラムとして表現できることを示唆しています。

 

(※下図は本ブログの2010年5/22の過去記事:

散乱の伝播関数の理論(7)」からの引用です。)

 

       

これは,いわゆる Feynman-diagram ですね。

 

 

ただし,上記の方法は相互作用が小さくて右辺の積分級数が

無限級数として収束する場合にのみ有効なもので,実際の強い

相互作用では,途中の有限次数までで区切れば,そこまでは正

しい表式ですが,無限個の項までこれを採用するのは得策で

はないと考えられます。 

 

また,このBorn級数は散乱状態だけで完全系を作ると仮定して

形成されたのですが,実際の中間状態としては,散乱粒子は,

"散乱状態=外向き球面波"になるだけではなく,

 

原子の束縛状態に捕獲されたり,また"共鳴状態=粒子と標的の

準安定束縛状態"を形成して比較的長時間準安定となった後に放

出されたりする非弾性なプロセスも含みます。

 

先に与えた定式化では,こうしたプロセスは含んでいませんから,

これらを含む散乱は単純なBorn級数では記述できないと考えられ

ます。

 

 

さて,散乱状態波動関数を実際に計算して求めるには,

Ψ()=exp(ikx)-{1/(4π)}∫d[exp(ik||)

V()Ψ()/||]~ exp(ikx)+f(θ)exp(ikr)/r

なる表式の第2項を具体的に計算する必要があります。

 

この計算では,相互作用Vが局所化されているとき,つまり,

()が||が大きくなるにつれて十分急速に減少するとき

には次のような近似が有効です。

 

すなわち,分母の1/||は,1/||~ 1/||+O(1/||2)

より,を無視して,これを1/||で近似し,

 

他方,位相因子:exp(ik||)については,

に敏感に依存するので単純にを無視するわけにはいかず,

||を||=[()2]1/2=[2-2xy2]1/2

~ ||-xy/||で近似します。

 

さらに標的からの距離r=||が大きいで散乱粒子を観測した

とき,その粒子に対応する運動量を'≡k(/||)と書きます。

 

もちろん,|'|=kです。

 

そこで,exp(ik||) ~ exp(ikr-i')と近似されます。

 

こうして,Ψ() ~ exp(ikx)

-{1/(4π)}{exp(ikr)/r}∫d[exp(-i')V()Ψ()]

なるBorn近似が得られます。

 

ここで,散乱振幅:(θ)のθは'のなす角なので明白さの

ために,(θ)をf(,')と書きます。

 

そうすると,

f(,')

={-1/(4π)}∫d[exp(-i')V()Ψ()

と書けます。

 

そして,exp(i')を"出て行く平面波=終状態波動関数φ()"

であると考えれば,この表式は次のように散乱振幅スカラー積で

定義できることを意味します。

 

すなわち,ffi≡f(,')={-1/(4π)}<φ|V|Ψ>と表現

できます。

 

そして,Born級数を用いると,

fi<φ|V|φi>+<φ|V(∇2+k2)-1V|φi

+<φ|V(∇2+k2)-1V(2+k2)-1V|φi>+..

と書けます。

 

fのこの表現は以下で散乱振幅の主要な数学的性質を導くために

使用します。

 

これの物理的内容は明らかに,ΨのBorm級数と同一であり,同一の

グラフ的解釈を与えるものです。

 

演算子:(∇2+k2)-1は,その"固有ベクトル:運動量の固有ベクトル"

固有値を用いて展開し,Diracの記法を用いると,

 

(∇2+k2)-1=(2π)-3Σ|(k2-p2)-1|

=(2π)-3∫d|(k2-p2)-1| と表現できます。

 

そこで,4πf(,')

'|V|>+(2π)-3∫d'|V|

[(k+iε)2-p2]-1|V|

+(2π)-6∫d12'|V|1>[(k+iε)2-p12]-1

1|V|2>[(k+iε)2-p22]-12|V|>+..

となります。

 

ここで,さらに,<1|V|2

=Σ,'1|><|V|'><'|2

=∫dexp(i1i2)V()

です。

 

ただし,ここではexp(ikx)をφi()=<|>,exp(i')

をφf()=<|'>と見なす表記を用いており,

 

自由粒子の平面波は<|>=exp(i)で与えられるとして

粒子密度が1であるという規格化を採用しているので,通常の定義

|>=(2π)-3/2exp(i)における規格化因子:(2π)-3/2

ない表現となっています。 

 

今日はここまでにします。

 

現在は「朝に理を知かば夕に死すとも可なり」

(あしたにみちをきかばゆうべにしすともかなり)の心境ですね。

 

参考文献:R.omnes,M.Froissart

「Mandelstam Theory and Regge Poles」

W.A.Benjamin,Inc,New York (1963)

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