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2007年8月15日 (水)

揚力とベルヌーイの定理

 2007年8月2日の記事「ダランベールの背理(D'Alembert's paradox)」において,

 

 完全流体では流速がUの一様流の中に置かれた物体に働く揚力Fyの値を,物体のまわりを反時計回りにまわる流れの循環Γによって,Fy=-ρUΓと評価できることを述べました。

 

 F(Fx,Fy)は物体に働く力でFxは抗力,Fyは揚力です。 

そこではf(z)=Φ+iΨ(Φは速度ポテンシャル,Ψは流れ関数)とし,複素関数論を利用して,ベルヌーイの定理:∂Φ/∂t+p/ρ+v2/2+Ω=A(t)(空間的に一定)とブラウジウスの(第一)公式:FxiFyiρ∫C[(df/dz)2/2]dzを導出するプロセスを記述しました。

 

それによって,物体に働く力=-∫C dsを考察し,そして,クッタ・ジューコフスキーの定理を証明した後,この定理の一部分に従って上述の命題を得るという手続きを行ないました。

 しかし,このような扱いは,私には少々大げさだと感じられたので,今日は物体部分からは全く湧き出しがない:div=0 という前提の下で,簡略化されたベルヌーイの定理p+ρv2/2=A(一定)から直接的に揚力と循環の関係Fy=-ρUΓを導いてみたいと思います。 

 まず,ベルヌーイの定理からp=A-ρv2/2なので,物体に働く力は=-∫C ds=-∫Cds+(ρ/2)∫C2ds=(ρ/2)∫C2dsです。

 

 Cの線素ベクトルをd(dx,dy)とすると,=0 ですから,ds=(dy,-dx)となるので,結局,揚力はFy(-ρ/2)∫C2dx=(-ρ/2)∫C(vx2+vy2)dxなる式で与えられます。

ところで,物体の外では当然,連続の方程式が成立しており,また仮定によって物体内部に湧き出しがありませんから,空間のいたるところで div=0 が成立します。

 

すなわち,閉曲線Cで囲まれる任意の領域Sにおいて∫S divdS=∫S(∂vx /∂x+∂vy /∂y)dx∧dy=0 です。

 

これは任意の閉曲線Cの上で∫Cxdy-∫Cydx=0 が成立することを意味しています。それ故,y=f(x)なる任意の曲線上の点で常にvxdy=vydxです。

 

つまり,この曲線の傾きy'=dy/dx=f'(x)に対し常にy=y'vxが成立しています。

また,閉曲線Cの上での流れの循環ΓはΓ≡∫C=∫C(vxdx+vydy)で定義されます。

 

(これはΓ=∫S rotdS=∫S(∂vy /∂x-∂vx /∂y)dx∧dyと書き直すこともできます。)

 

故に,Γ=∫Cxdx+∫Cydy=∫Cx(1+y'2)dxです。一方,揚力FyもFy=(-ρ/2)∫C2dx=(-ρ/2)∫C(vx2+vy 2)dx=(-ρ/2)∫Cx2(1+y'2)dxと表わすことができます。

ここで,流れ(vx,vy)が,一様流=(U,0)に微小な流れ=(ux,uy)を重ね合わせたもの:で与えられるとします。

 

x=U+ux,vy=uyですから,これを上の循環と揚力の表式に代入して,Γ=∫C(U+ux)(1+y'2)dx=∫Cx(1+y'2)dx,およびFy=(-ρ/2)∫C(U+ux)2(1+y'2)dx=-ρU∫Cx(1+y'2)dx-(ρ/2)∫Cx2(1+y'2)dxを得ます。

ここで,∫C(1+y'2)dx=∫Cdx+∫Cy'dy=0 を用いました。さらに,∫Cx2(1+y'2)dx=∫C(ux2+uy2)dx=C2dx=CxdΓなのでy=-ρUΓ-(ρ/2)∫CxdΓです。

 

最後の表式で∫CxdΓがゼロになるための条件はdW=xdΓなるWが存在することです。

 

ポアンカレの補題によって,それはd(uxdΓ)=dux∧dΓ=[-ux(∂ux /∂y)+uy(∂ux /∂x)]dx∧dy=0 すなわち,-ux(∂ux /∂y)+uy(∂ux /∂x)=0 が成り立つことと同値です。

 

これ以上は,適切なモデルで考えないと無理です。

 

まず,線素を極座標で書くとd(dx,dy)=r(d(cosθ),d(sinθ))=rdθ(-sinθ,cosθ)となります。

 

湧き出しがない条件はS divdS=∫C(vxdy-ydx)=0 ですから,Cxdy=Cydx →C(U+ux)dy=Cydx,故にCxdy=Cydxです。

 

つまり,0ruxcosθdθ=-0ruysinθdθなので,rux≡-Bsinθ,ruy≡Bcosθ(Bはrだけの関数)というモデルを想定すると,これにより上述の湧き出しゼロ条件は自動的に満たされます。

 

また,循環はΓ≡C(xdx+vydy)=C(xdx+uydx)で与えられますから,Γ=0(-ruxsinθ+ruycosθ)dθ=2πB:つまりB=Γ/(2π)です。

 

そこでBは定数なので,∫Cx2(1+y'2)dx=CxdΓ=∫C(ux2+uy2)dx=-0(B2/r)sinθdθ=0 が得られます。

 

したがって,∫Cx2(1+y'2)dx=CxdΓ=0 となり,求める揚力と循環の関係y=-ρUΓが得られました。

 したがって,以上の私の試みによって流れが上の面に沿って速く下の面に沿って遅いときに,ベルヌーイの定理から上向きの力=揚力が生じるというメカニズムを考えれば,このとき負の循環Γ<0 つまり時計回りの循環があることに相当することがわかります。
 
 そこで,クッタ・ジュ-コフスキーの定理により上向きの力=揚力が生じる,という命題と同等である,ということを直接的に示せたのではないかと思います。
 
 逆に,循環がなくて(rot=0)湧き出しQがあるとき抗力Fxと湧き出しQの関係Fx=-ρUQが得られることも上とほぼ同様にして示すことができます。

 

そして循環も湧き出しも共に存在するときは,例えば電気回路の重ねの理と同じように,この場合を上記の2つの場合の重ね合わせと考えることによって,Fx=-ρUQとFy=-ρUΓが同時に成り立つことも言えます。

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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