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2007年9月

2007年9月29日 (土)

S行列とレッジェ理論(14)

相対論的レッジェ極(Regge Poles)の続きです。

前記事の最後で言及した部分波散乱振幅間の内挿を行う手法に

ついて,これを具体的に構成する方法を述べることから始めます。

内挿は試行錯誤法で得られ,次のように定義されます。

まず,部分波振幅に対する慣例的な定義を考えます。

すなわち,非相対論的散乱振幅の部分波展開の式を

f(k2,cosθ)

=∑l=0{(2l+1)/k}exp(2iδl)sinδll(cosθ)

=∑l=0(2l+1)al(k2)Pl(cosθ);

 a
l(k2)=(1/2)∫-11(k2,cosθ)Pl(cosθ)d(cosθ)

とA(s,t)=1/2(k2,cosθs)から,

1/2l(k2)=(1/2)∫-11(s,t)Pl(cosθs)d(cosθs)

と書きます。

そして,便宜上,1/2l(k2)を改めて相対論的部分波振幅:

l(s)と再定義します。

 すなわち,al(s)≡(1/2)∫-11(s,t)Pl(cosθs)d(cosθs)

とします。

また,s={(p1212)1/2(p2222)1/2}2ですが,重心系で

2≡p1222とします。

 さらに簡単のために質量は全て1,つまり,m
1=m21とすると,

s=4p24です。 また,t=-Δ2=-2p2(1-cosθs)より,

cosθs1+2t/(s-4) と書けます。

これは,内挿のための条件を満足せず貧弱な内容しか持ちません。

つまり,l→ ∞で,Pl(cosθ)~ sup|exp(ilθ),exp(-ilθ)|

です。

 

いずれにしても,"lが純虚数のとき=虚軸に沿った道の上のl"

の部分波振幅:al(s)が支配的になります。

そして,ここで使用すべきトリックは,不変振幅A(s,t)をtに

ついての分散関係:

A(s,t)=(1/π)∫{At(s,t')/(t'-t)}dt'で表わす

ことです。

これは,例えば,π-π散乱のCauchyの公式:

A(s,t)={1/(2πi)}∫Cdt'{A(s,t')/(t'-t)}

={g2/(t- μ2)}+{g2/(u- μ2)}

+(1/π)∫4μ2dt'{At(s,t')/(t'-t)}

+(1/π)∫4μ2du'{Au(s,u')/(u'-u)}

において,考察の便宜上,uの極の項とuの切断の寄与を無視

するものです。

それを,al(s)=(1/2)∫-11(s,t)Pl(cosθs)d(cosθs)

に代入すると,

l(s)={1/(2π)}∫∫[2At(s,t')Pl(1+2t/(s-4))

/{(t'-t)(s-4)}]dtdt'

なる式を得ます。

整数のlに対しては,tによる積分が遂行できて,

l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

となります。

 

ここに,Qlは第2種のLegendre方程式の解です。

 

この式と前の定義式が同値なのは,lが整数のときだけですが,

このQlを用いた表現がlの非整数値においてもal(s)を与える

ものであるとして新しい内挿の式を定義します。

l(z)は通常のLegendreの微分方程式の解ですが,lは任意の

複素数に取れます。


 
これは,|z|→ ∞で.l!/(2ll+1)なる挙動をします。

 

また,これは対数分岐点z=±1を除くあらゆる領域でzの解析関数

です。

 そこで,-∞<z<-1に1つの切断があると考えられます。

lが負の整数でないならlについて解析的です。

そして,複素l平面のl= ∞では本質的に,

l(z) ~l-1/2[1/{z+(z21)1/2}]l+ 1に従う挙動をします。,

 

これらのことから,積分が収束する限り,

l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

は非常に妥当な内挿を与えると考えられます。

 

実際,物理的なsに対して,今のLegendre関数の引数:

{1+2t'/(s-4)}は,1より大きいままであり,lの関数と

して右辺の積分は非常に良い挙動をします。

 

つまり,Rel について指数関数的に減衰し,Iml について

-1/2 のように減少します。

しかし,収束の問題はすぐに厳しくなります。

それは大きいt'に対してQ
l(1+2t'/(s-4))の挙動があまり

よくないからです。


すなわち,t
'→ ∞で,Ql(1+2t'/(s-4)) ~t'-l-1

となるからです。

ところで,既に以前の記事で相対論的な不変散乱振幅:

A(s,t,u),あるいは不連続性:At(s,t)に対して,s→ ∞

のときに,sのある固定べき:sより急激には増加しない,と

いう仮定を与えました。

 

これは,交叉チャンネルを取れば,t→ ∞でA(s,t)や

t(s,t)はtより急激には増加しないことを意味します。

そこで,

t(s,t')={A(s,t'+iε)-A(s,t'-iε)}/(2i)は,

t'→ ∞で,t'のように増加していくと考えます。

これは,l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

の右辺の積分の収束性を,Rel>nに対して保証しますが,

Rel<nに対してどうなるか?については何の情報も与えません。

しかし,これは予想されたことです。

 

実際,あるlに対しては,そのlがRegge極を与えることを期待

していましたが,al(s)を示す右辺の積分はそれが収束する限り,

如何なるlの極を与えることも不可能ですから,lがRegge極

に到達すると同時にal(s)の表式は発散する必要があります。

それ故,Rel<nなるl対しては推測の入る余地があります。

l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

で定義されるal(s)のlに関する内挿を領域 Rel<nまで

解析接続できない可能性は非常に小さいと考えられます。

最もありそうな可能性は,こうした問題ではよくあることです

が,複素l平面上で Rel=nという直線上に特異点が1つだけ

あることです。

 

これは,そこでal(s)が発散するのに十分な性質を与えます。

 

こうして,特異点の位置と性質についても,あらゆる予測を

行なう準備ができました。

しかし,1つの重要な論点はal(s)の解析接続がl<nなる

整数値に対して明確な物理的解答を与えるか否か?

ということです。

 

これは,決して確かなことではありません。

実際,l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

を導出するのに,余分な引き算項を無視して,

A(s,t)=(1/π)∫{At(s,t')/(t'-t)}dt'

を仮定することから未知のパラメータが入ってきています。

 

そのため,整数l<nに対してさえ,

l(s)=(1/2)∫-11(s,t)Pl(cosθs)d(cosθs)と

l(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

の間の連結性についての情報が曖昧だからです。

これに関してChewは,最も経済的な仮説を採用しました。

 

それは,"こうした解析接続は実際の整数:l<nに対する正しい

物理的振幅を与える"という直接的で単純な仮説です。

これは原理的には余分な引き算定数の導入を避けています。

こうした条件下でwell-definedな解析接続,すなわち,特異性

を迂回する道筋に独立なそれを得ることが必要です。

 

このことは,可能な特異性の型を厳しく制限します。

 

例えば対数型の特異点は都合が悪いことになります。

 

なぜなら,接続の経路が特異点の上方を通るか下方を通る

かによって接続される関数が異なるため,関数値が特異点

に依存するからです。

1価性条件を満たす最も簡単な特異性は極です。


  そこで,結局Chewの仮説の完全な表現を次のように述べること

ができます。

 

"al(s)

=(1/π)∫{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

で定義される内挿は,領域 0≦Rel<nでの1つのlに関する

解析接続を与える。


  それは整数lに対しては物理的部分波振幅の正しい値へと導く。

この解析接続はlの特異性として単純な極のみを持ち,接続

された振幅の1価性を保証する。"


というものです。

ここまで,tの実軸切断以外の特異性であるuの実軸上の切断

を無視してきましたが,これは交換力と結合していたことを

思い出します。

部分波振幅をcosθに関して奇と偶の2つの部分に分けます。


そして各々が角運動量lの奇数値,偶数値の間の内挿を定義する

とします。

 

完全さのため,具体的にこれに言及しておきます。

 

l±(s)

=(1/π)∫4{2At(s,t')Ql(1+2t'/(s-4))/(s-4)}dt'

±(1/π)∫4{2Au(s,u')Ql(1+2u'/(s-4))/(s-4)}du'

と書けます。

関連するゾンマーフェルト・ワトソンの公式

(Sommerfeld-Watson fomula)を書けば,
 A(s,t)

=(i/4)∫Cdl{(2l+1)/sin(πl)}

[al(s){Pl(-1-2t/(s-4))+Pl(1+2t/(s-4))}

+[al(s){Pl(-1-2t/(s-4))-Pl(1+2t/(s-4))}]

です。

 

複素l平面上の積分経路Cは,以前に非相対論で,

Sommerfelt=Watsonの公式を導いたときと同じです。

1つの極:l=αでの留数の典型的な寄与は,α(s)がal(s)

の極の場合は,

A(s,t)=(1/2)[β(s)/sin{πα(s)}{Pα(s)(-1-2t/(s-4))

+Pα(s)(1+2t/(s-4))} であり,


 a
l(s)の極の場合は,

A(s,t)=(1/2)[β(s)/sin{πα(s)}{Pα(s)(-1-2t/(s-4))

-Pα(s)(1+2t/(s-4))} です。

 

そして,al(s)の極とal(s)の極を系統的に区別する必要が

あります。


 我々は,これらの極をa
l±(s)の極の符号±に応じて正の符号,

負の符号を持つと言います。

これらの形によれば,レッジェ極の位置l=α(s)が整数になる

と被積分関数の分母のsin関数がゼロとなり,物理的な不変振幅

の極である束縛状態,または安定粒子が得られると解釈されます。

 このことは,既に何度も見てきたことです。

 

そして,整数l=α(s)が確かに散乱振幅の極になるのは,

分子のPα(s)の項が分母と同時には消えないことが条件

ですから,l=α(s)がal(s)の極ならこれは偶数角運動量

l(s)の極なら奇数角運動量に限られます。

同様に,非相対論的散乱でのSommerfeld-Watsonの公式で見た

ように,Regge軌跡が非物理的シート上でエネルギーの値がわずか

に虚数側に逸れる場合,相当してl平面の内挿の接続経路も実軸

の近傍を通過しますが,この軌跡が経路の近傍で,すぐ上方にある

実軸上のlの整数値まで伸びて行ってこれをRegge極とする場合,

この極は1つの共鳴粒子を表わすと解釈できます。

そして,各Regge極の軌跡は,エネルギーsの増加と共に極が遠方

に去るまでは,偶数や奇数の整数値またはその近傍を通過し,安定

または不安定な粒子の全ファミリーを生起させ続けます。

 

これまでの仮定だけでは,こうした状況をこれ以上厳密に述べる

ことは不可能です。

なお,不安定粒子の概念はエネルギーsがその共鳴の幅の端まで

増加しつつ,Regge軌跡が通過して行き,幅が隣り合う共鳴の幅と

重なるほど大きくなったときには,振幅への極の寄与が消える

という描像です。

 

これは,Imα(s)が2のオーダーまで達すると,Regge極の効果

は減衰して,同時にいくつかの別の部分波に影響するように

なるという描像です。

相対論的理論では,エネルギーが十分大きくなると直ちに

非弾性過程が起きます。

 そこで,これまでの議論を幾つかのチャンネルが同時的に存在

する場合へ一般化する必要があります。

 

こうした場合には,プロセスの記述は単一の振幅だけによるの

ではなく,粒子が2つ以上あるなら,そのプロセスが含む複数の

粒子の相対エネルギーにも依存する幾つかの振幅に依存します。

こうした振幅は,常に異なる総角運動量lの成分に分けること

ができます。

そして,それによって何が生じるか?を推定できます。

 

標的に対して,散乱される粒子が2つ以上ある状態の場合は,

部分波振幅間に角運動量をどのように内挿すべきか?について

誰も知りません。

 

しかし,こうした散乱の散乱振幅についても,これまでの振幅

に対しての知見に類似した解析性を示す関数によって,内挿

を成す手法があると仮定します。

Regge極というのは,特に,同じエネルギーで任意のチャンネル

が開いているときには,対応する全てのチャンネルに崩壊できる

共鳴であると解釈されますから,与えられた1つのRegge極は

角運動量lに内挿されたあらゆる散乱振幅の中に出現すると

仮定できます。

こうした手法で,多数のチャンネルが開いていて列と行が

チャンネルsとt,またはuのみならず,様々なチャンネルの

各々がラベル付けされていて,各々の列チャンネルと行チャンネル

の対に対応する反応の散乱振幅の値を行列要素とする散乱振幅

の行列を定義します。

 

それによって,両方のチャンネルで共有される"lの極

=Regge極α(s)"の寄与を評価することにします。

共鳴が崩壊し得るチャンネルは,もちろんその量子数で

決まります。

 

このことは,Regge極がその量子数のセットと極の符号に

よって特徴付けられることを意味しています。

 

種々の量子数セットを持つあらゆる合成系は,その符号

によって偶数,あるいは奇数の適切な角運動量で,対応する

Regge極の影響を受けて束縛状態や共鳴状態として

存在します。

Fermi粒子の場合,半奇数のスピンの影響については,これまで

一貫して除外してきました。これをどのように考慮するか

についても未だ不確定です。

 

しかし,"軌道+スピン=総角運動量"jの値の間に内挿する

ことによって,これまで得た結果を一般化する方向性があります。

 

こうした場合は符号の効果が次のようになるように取られます。

 

Fermi粒子に対応する極のグループは,ある種類の極は,

j=1/2,5/2,9/2,..にのみ現われ,他の種類の極は,

j=3/2,7/2,11/2,..にのみ現われるように一般化されます。

Regge極は共鳴を表わすと解釈できるので,極自身が共鳴の

性質を有すると考えられます。

 

共鳴が1つではなく幾つかのチャンネルに崩壊できるとき,

例えば,核反応の理論によれば,反応が形成と崩壊から成る

ときの断面積は,それぞれの部分幅の積に依存します。

断面積が,一部が形成チャンネルに依存し,他の一部が崩壊

チャンネルに依存するように因数分解できるという事実は

非常に興味深いです。

 

Regge極のアプローチでもそうした因数分解の手法が可能か

どうか?試してみるのも有効であると思われます。

そのため,当該反応について開いている幾つかのチャンネルを

全てギリシャ文字λ,μ,..etc.でラベル付けして,チャンネル

λからチャンネルμへの反応の実際の振幅を行列要素の形で

{l(s)}λμと書きます。

 

あらゆる行列要素が,l=αにlの極を持つとき,それら行列要素

の最もありそうな形を考えてみます。

l=αにおいては{l(s)}λμは∞であり,要素に小さな摂動を

加えてもほとんど乱されることがないので,ほとんど情報が

得られません。

 

しかし,振幅行列の逆行列の存在を仮定して逆行列の要素

を{l(s)-1}λμとすると,{l(s)}λμl=αで∞

なので,行列l(s)-1∞ の逆数であるゼロを固有値と

して取るはずです。

 

{l(s)-1}λμに少しの摂動を加えると,ゼロ固有値も少し変化

すると思われ,その変化はlの関数で与えられ,またゼロと

異なる固有値もα近傍の異なるlで消える(ゼロになる)と

考えられます。

もしも,振幅行列の逆行列のゼロ固有値が唯1つなら,逆行列

の小さな乱れはRegge極の位置を少しシフトさせるだろうし,

幾つかのゼロ固有値群があるなら逆行列の小さな乱れは初期

の縮退している1つのRegge極を,幾つかのゼロ付近で近接した

Regge極の族に分割シフトさせるであろうと思われます。

そして,最もありそうなのはal(s)の固有値として∞ 固有値

が唯一存在し,これに対応する唯一の固有ベクトルγλが存在

して,行列を対角化した結果,全てのμに対し{l(s)}λμ

γλに比例することです。

 

しかも,時間反転不変性から,{l(s)}λμ{l(s)}μλです。

 

このとき,散乱振幅の行列は,

{l(s)}λμλγμ)/{l-α(s)}+(有限部分)という形

に帰着すると考えられます。

このルールは基本的に単純です。

 

幾つかのチャンネルがあるとき,各極の寄与が行列となり,留数

の寄与β(s)がγλγμなる積の形で与えられるというものです。

 

もしも行列がこれほど単純な形でないとしたら,それは2つ,

あるいはより多くの極の偶然の一致がある場合です。

今日はここまでにします。

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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2007年9月27日 (木)

S行列とレッジェ理論(13)

 相対論的レッジェ極に入ります。

これまで論じてきた相対論的散乱振幅の異なる漸近的挙動の間には明らかに矛盾があるように見えます。

すなわち,要約すればsがエネルギーの平方であるようなチャンネルにおいてt=0 の前方方向へのs→ ∞での漸近的振幅の大きさはs(logs)2を越えない,ことが既に示されました。 

一方,tがエネルギーの平方であるような交叉チャンネルで平方質量がt=M2の束縛状態が存在すれば,M2の十分近傍のtに対して束縛状態の角運動量をlとするとき,例えばπ-N散乱では同じs→ ∞での振幅がl=2 に対応してA(s,t)~(6G22)/{(t-M2)(t-4μ2)2}となることを見ました。

 

つまり,束縛状態の近傍のt>0 では漸近的振幅はslのように挙動します。

これらは,t=0 とt~M2の2つの異なるtの値に対する振幅なので,それ自身では矛盾ではありません。

 

しかしながら,例えば摂動論の項を調べるような場合には,事態はそれほど単純なものではないことがわかります。

 

実際,異なるtの固定値に対するsの関数として,散乱振幅を総体的に見るならば,確かに一見矛盾すると思われるこうした異なるs→ ∞での挙動を同時に採用する必要性があると思われます。

 別の決定的なパラドックスも,Gribovによって発見されています。

 

 ただし,その内容にはとても複雑な計算過程が含まれていて詳細に入る余裕はないのでここでは概略のみを述べておきます。

 出発点は既に論じた半古典的回折模型です。彼は衝突粒子に多少は構造がある灰色模型の仮定で散乱振幅を計算しました。

 そして半古典的回折模型での黒体を仮定した光学模型に対する光学定理ImA(s,0)=ks1/2σtot/(4π)における総断面積σtotが,高エネルギー:s→ ∞で一定になるように見えるように,σtotがsに依存しないと仮定します。これはごく常識的な仮定です。 

 こうすれば,灰色粒子の模型での散乱振幅A(s,t)の高エネルギーでの漸近形はとても簡単になります。すなわちA(s,t)~sg(t)と書けます。ここでg(t)は黒体に対する光学定理と灰色粒子の吸収係数から容易に計算できます。

 

 この漸近形は確かにt=0 での漸近性条件:"s→ ∞でA(s,0)はs(logs)2を越えない。"を破りません。

 しばらくの間,角運動量lが大きい状態のことは忘れ,相互作用の半径がRのとき-R-2<t<0 (物理的領域)に対応する回折散乱領域(すなわち,pR<1でt~ -p2)だけでなく,非物理的な領域,例えば 0<t<R-2なるtに対しても振幅の漸近形としてA(s,t)~sg(t)なる形が保持されると仮定します。

 

 このとき,例えばπ-π散乱を想定するなら相互作用のrangeはR-2 2です。それ故,振幅のs→ ∞での形:A(s,t)~sg(t)はt=4μ2で与えられる切断までのtに対応する,とすべきです。

 そして,この切断は当然skipされなければならない部分ですが,実際Gribovによって,この切断上ではA(s,t)~sg(t)なる形は保持されないことが示されました。

 

 したがって,再びtが変わると振幅のs→ ∞での漸近的振舞いが変わる必要がある,ことがわかります。これをGribovのパラドックスと言います。

そして,もしそうならそれは確かに動力学と非常に直接的な関連を持っています。

 

実際,最も明確な動力学的問題は束縛状態の束縛エネルギーを決定することです。

 

我々は既に角運動量lの束縛状態のエネルギーは漸近的挙動が正確に(cosθ)lとなるようなエネルギーであることを知っています。 

 これらのパラドックスを両方同時に解決する方法としては,単純な考え方から出発したA(s,t)~sg(t)なる漸近形を捨てて,1つの変動する漸近挙動を採用する手法が考えられます。

 

 すなわち,s→ ∞でA(s,t)~g(t)sα(t)と仮定します。ここでα(t)はtのある関数です。

 そして物理域ではt≦0 に対してα(t)<1となること,およびtチャンネルで質量がMの束縛状態の角運動量がlのときにはα(M2)がlに等しいこと,すなわちt>0 でt~ M2なるtに対してα(t)=lを要求すれば,束縛状態のパラドックスの方は解決します。

 

 もちろん,t=M2における極は係数g(t)の方に含まれているとしています。

 Gribovのパラドックスもまたtが切断の上にあるときにはα(t)が複素数であるとすれば,この方法で解決されます。ただしs→ ∞でA(s,t)~sg(t)を導いたときの回折散乱の描像は後述するような手法に変更する必要が生じます。

 形式A(s,t)~g(t)sα(t)は最も簡単な方法でパラドックスを解決するために最初に導入されたものですが,これはポテンシャル散乱で存在する振幅の漸近的な挙動と著しい類似を示しています。

 

 実際,既に見たように,非相対論的振幅ではk2極kl2の近傍での振幅はF(k22)=β(k2)Pα(k2)(-cosθ)/sin{πα(2)}~β(kl2)Pl(cosθ)/[π(∂α/∂2)k2=kl2(2-kl2)]+(正則関数);cosθ=1-Δ2/(2k2)と書けることを見ました。

つまり,Δ2→ ∞での振幅の漸近的挙動はf(k2)=F(k22)~β(k2)Pα(k2)(cosθ)~φ(k22α(k2)です。

 

そしてtがエネルギー変数k2に対応するような交叉チャンネルを考えると,sはΔ2に対応し,tチャンネルではA(s,t)=t1/2(k2)ですから,結局g(t)≡t1/2φ(k2)と定義すれば,確かにA(s,t)~g(t)sα(t)となって先に仮定した形と一致します。 

もちろん.これは偶然の一致かもしれませんが,ある意味で形式:A(s,t)~g(t)sα(t)の導入にとってもっともらしい論旨が得られました。  

非相対論的理論では,こうした漸近的挙動は,部分波間の内挿によって,すなわちレッジェ極を陳列して各極が漸近挙動に寄与するとして解釈する方法があることを見ました。

 

今度はそうした内挿が相対論的問題に対しても可能で有効であるかどうか,また,それに対してレッジェ極の存在を仮定するのが妥当であるかどうか,という疑問が生じます。

部分波間の内挿という問題だけを考えるなら,本来,そうした方法は"well-defined"ではありません。

 

実際,内挿関数として実に多くの関数が想定できて,一意的に内挿を決めることからは程遠い状況だからです。

しかし,我々はゾンマーフェルト・ワトソン公式の形に書けるような内挿法,すなわち複素l平面における積分での外周路が開いていて,しかも虚軸に平行になるように取れるような積分による関係式から漸近的挙動が得られるような内挿が望まれることを知っています。

 

この条件はとても強い拘束を与えるので,一意的な内挿を定めるに十分です。(Carlsonの定理)

途中ですが,今日はこのくらいにします。

 

この項目についてはほぼ終わりに近づいていますが,最近肉体的にも精神的にも忙しくて,この文章も駅前のネット喫茶で書いている状況なのでこれで失礼します。

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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久しぶりに目から汗が。。。

 最近,殺伐としたニュースが多い中,昨日何気にTVを見ていたらある女子大生,といっても高校のときは男子校に通っていたらしい若い女性の話題を取り上げていて,驚いたことに本人がインタビューに答えていました

 たとえ性転換に成功しても,将来,普通に結婚できるのかとか,女性であるといっても子供はできないとかで悩みは多く,定期的にカウンセリングを受けているらしいとのことでした。

 私自身は性同一性障害にかかったことはないので,決して彼女の気持ちがわかるはずはないのに,どうしたわけか,にこやかな彼女の姿を見ているうちに思わず目から汗がこぼれてしまいました。

          

(PS:中村雄一郎(中村有里)または”椿姫彩菜(つばきあやな)"と呼ばれる方らしく,外見は美しい人ですが,内面はその出自のせいでかわいそうな人ですね。。。)

        

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2007年9月22日 (土)

ゲーデルの完全性,不完全性

 ゲーデル(Kurt Gödel)と彼の証明した定理については,以前の2006年8月10日の記事「ゲーデルの不完全性定理」でも紹介しました。

 今日は,ゲーデル数を用いた不完全定理の,概略的ですが一応,具体的な少しは内容のある証明手順について記述してみたいと思います。

去年の暮れまで住んでいた巣鴨の昔の住居のすぐ近くのトランクルームの中に,かつて部屋の中で本の山古墳を形成していた千冊足らずの専門書,啓蒙書や辞書,資料,小説などが,いくらか整理された形で眠っていて,ときどき金に困ると数冊ごとに,現金に化けたりしています。

先日,ある物理の本を探しに入った際に,記号論理学,数学基礎論,あるいはゲーデルに関する本にちょっと目が止まりました。

 

そうした関係の本は啓蒙書,専門書を合わせて10冊以上もありますが,私的には理解しやすい王道的なものは今まで見た中には全くなかったと思います。

 

もっとも,この種の本は軽い啓蒙書以外は一冊通して精読したこともありませんが。。

 

一番最近では,一昨年に「形式論理学」という本を途中まで読んだくらいですかね。

この論題には定期的に興味が湧いて,そのときどきに本屋で思いつきで買ったりするのですが,大抵は途中で挫折することの繰り返しでした。

 

でも門前の小僧というのか,これを10回以上も繰り返していると,少しずつですが理解は深まってきているような気がします。

 

今回もトランクルームから1冊だけ持って帰って読んでみました。

 

それは野崎昭弘著「不完全性定理」(日本評論社)です。

 

ただし啓蒙書の類であって専門書ではありません。

さて,こうした数学の体系の論理的な無矛盾性の論議をする際に特に問題となるのは「排中律」です。 

 すなわち,「"~である。"という命題と,"~ではない。"という命題というのは,両方が同時に成立する」とすれば,これは明らかに論理的に矛盾するわけです。

 

 しかし,ちょっと微妙な表現ですが,そういう明らかな矛盾ではなくて,「"これらのどちらかであって,どちらでもないその中間である。"ということは有り得ない」というのが「排中律」です。

 例えば"ある性質を満たす実数が存在する。"という命題を証明しようとするときに,実際に具体的にこの性質を満たす実数を構成して,この命題の成立を証明する方法が困難なことがあります。

 

 そのとき,こうした正攻法ではなく「"そういう実数が存在しない。"ことを仮定して,その結果として矛盾に導く」といういわゆる背理法で命題が証明できると考えるのは「命題の否定が矛盾に至るならば逆にその命題は成立する。」という論理が正当であることを既に認めています。

 

 つまり"存在と非存在以外にはあり得ない。"という「排中律」の成立を暗黙裡に認めているというわけです。

 しかし,問題としている実数が存在することを証明するのに,それが存在しないことを仮定して矛盾を導くという"背理法=非構成的存在証明の手法"によってこれを行うことは可能でも,具体的にその実数を構成して存在を陽に示すという手法がどうしても不可能な場合があります。

 

 普通の感覚では,非存在の定義そのものが,存在の否定=存在しないことを意味し,逆もまたそうですから,わざわざ「排中律」のようなルールを言明しなくても自明なことで蛇足のように思えます。

 

 しかし,必ずしも存在しないことの否定が存在することを意味するとは言えないのではないか?との疑問が生じることがあります。

 

 特に,非可算集合に属する要素の存在証明などの命題に関しては,そうした疑問が顕在化します。

 すなわち,記号論理学においての証明手順は論理式を与える長さが有限の記号列を順に並べていく,という手続きを連続する行為ですから,普通の三段論法や帰納法など,あらゆる証明の集合の要素全体で,それらの記号の数を全部数えても高々可算無限個しかないと考えられます。

 したがって,証明の対象が非可算集合における存在,非存在に関するものなら,実際問題として「排中律」の成立は疑わしいことになります。

 

 例えば,体系を集合論で自然数全体の集合から始めるとしても,それの"全ての部分集合の集合=ベキ集合"を作ると,それは既に非可算集合です。

 そこで,そうしたものに関連した存在証明であれば,背理法は使えず,存在するという証拠としては具体的にそれを構成してみせる方法しかない,と考えられるわけです。

そして,次のように表わされる命題=ゲーデルの不完全性定理もそうしたデリケートな問題を含んでいると考えられます。 

(不完全性定理):自然数論を含む述語論理の体系Zは,それがもし無矛盾ならば形式的に不完全である。

 

(ここで完全というのは任意の論理式Aについて,Aあるいは¬Aのいずれかが必ず証明できることを言います。)

 

(証明)上述の命題の証明のために,ゲーデル文と呼ばれる次の論理式Gが存在することを具体的に示す,という手法を用います。

ここでゲーデル文とは,"この論理式Gは証明できない。"ことを表現している論理式Gのことを言います。 

もしもこのような論理式Gが存在することが示せたならば,Gが証明されれば,"Gが証明できない。"という命題Gと矛盾します。

 

一方,証明が不可能であるということが判明すれば,"Gが証明できない。"という命題が成立するので,論理式Gの内容である"Gは証明できない。"という命題が証明される,ことになるのでこれも矛盾です。

 

後者は,"Gと¬Gが共に証明できる。"ということを示しているのですから,記号論理学的にも明らかに矛盾です。

 

つまり,G∧¬Gは恒偽であるのは明らかですから,これが真であるという証明は矛盾そのものです。

 

それ故,体系が無矛盾であるなら,"Gと¬Gのどちらも証明できない。=体系は不完全である"ということが正当化されるわけです。

したがって,最初に述べたように,こうしたゲーデル文を示す論理式Gの存在が,具体的にそれを構成することによって示されたなら,体系Zが無矛盾ならGと¬Gのどちらも証明できない,ことが証明されたことになりますから体系Zが不完全であることが判明するわけです。

この定理は言い方を変えると,"Zが無矛盾なら,正しいとしても証明できない論理式がある。"ということもできます。

具体的にGの存在を示すため,既に述べたように,あらゆる論理記号とその記号列,あるいは論理式は高々可算個しかないので,それらを暗号化してその各々に自然数の固有の番号を附与し,それをゲーデル数と呼ぶことにします。

そしてゲーデルによれば,次のような性質を持つ論理式:W(n)が具体的に構成できます。

 これは,"W(n)⇔nはある論理式のゲーデル数である。"なる文です。

 

 ここで記号 ⇔ はこれの左辺の記号が右辺と論理的に同値である,ことを示しています。

 この論理式[W(n)の構成が可能であることに関連して,ゲーデルはGの存在証明に必要な以下のような論理式の存在をも具体的に構成可能なことを示すことに成功しました。 

Probable(m) ⇔ mはある論理式のゲーデル数であり,その論理式は

        Zの中で証明できる。

また,証明に必要となる次のような関数を定義しておきます。 

sub(m,n,k) :

 

"mが表わす記号列αの中の,nが表わす記号列βを,kが表わす記号

γで置き換えて得られる記号列"のゲーデル数

(m) :

 

"自然数mを表わす記号列"のゲーデル数

neg(m) :

 

"自然数mを表わす記号列の前に,否定記号¬を付加して得られる記

列"のゲーデル数

とします。

 

以下,証明手順です。

変数xのゲーデル数が仮に17であるとします。

 

そして2変数m,nの関数 sub(m,17,g(n))を考えます。

 

xの関数で与えられるある論理式P(x)のゲーデル数がmの場合,

  

まず,sub(m,17,g(1))は,"mが表わす記号列の中の17が表わす記号列をg(1)が表わす記号列に置き換えて得られる記号列"のゲーデル数を意味します。

 

これは,(mが表わす記号列)=P(x)の中の(17が表わす記号列)=xを(g(1)が表わす記号列)=1に置き換えて得られる記号列はP(1)ですから,結局,"P(1)のゲーデル数"のことです。

同様にして,sub(m,17,g(2))はP(2)のゲーデル数,sub(m,17,g(3))はP(3)のゲーデル数,sub(m,17,g(4))はP(4)のゲーデル数,..となることを示すことができます。

 

故に,一般にsub(m,17,g(n))はP(n)のゲーデル数となります。

  

ここで,今の話では論理式:P(x)のゲーデル数がmのときにはsub(m,17,g(n))はP(n)のゲーデル数ですが,これはP(x)でなくて,Q(x)のゲーデル数がsでもsub(s,17,g(n))がQ(n)のゲーデル数であることを意味します。

 

つまりP(x)とm,Q(x)とsのゲーデル数の対応がありさえすれば,論理式はG(x)でも何でもいいということです。

ここでpmnsub(m,17,g(n))と置いた自然数の2重数列{pmn}の表において対角線を取り,自然数値をとる1変数xの関数 xxsub(x,17,g(x))を作ります。(対角線論法)

そしてG(x)≡¬Probable(sub(x,17,g(x)))と定義すると,このG(x)も体系Zの中の1つの論理式なので,それに付随するゲーデル数があるはずです。

 

そこで仮に論理式G(x)を具体的に表わしたときのゲーデル数が,1117であったとします。(ゲーデル自身は,当然,このゲーデル数も具体的に求めています。)

このとき,論理式:G(1117)が求めるゲーデル文です。

なぜなら,

 

(1117) ⇔ ¬Probable(sub(1117,17,g(1117)))

sub(1117,17,g(1117))が表わす論理式はZの中で証明できない。

⇔ 論理式G(x)のxに1117を代入して得られる論理式は証明できない。

⇔ 論理式G(1117)は証明できない。

となり,G(1117)が先に述べた"存在を証明すべき具体的なゲーデル文G"になっていることがわかります。(証明終わり)

"何だ,簡単じゃないか。"と思われるかもしれませんが,実はゲーデル自身が行なったと仮定して省略した部分の労力は,人間業ではないと思われるほどの凄いものであったらしいです。 

背理法的感覚であれば,上の証明の中で使用したように変数xのゲーデル数が17であるとかG(x)のゲーデル数が1117であるとか,あるいは17,1117でなくても存在しさえすればこれら2つのゲーデル数がどんな勝手な数の組であってもよいわけです。

 

実際,別のどんな2つの数であっても証明に全く支障はなく同じ結論が得られます。

元々,論理記号や論理式であれば,それに付随したゲーデル数は必ず存在するという前提で考察しているわけですから,x,G(x)のゲーデル数も必ず存在すると考えるのは自然な考え方です。

しかし,最初に述べたように存在するから,といってそれを仮想して設定できるとするのは,"背理法=非構成的存在証明の手法"にも似た考え方であり,今は自然数論を含む述語論理の体系Zを考えているのでその部分集合の族が既に非可算集合であることからも許されません。

 

そもそも,今の場合は"存在すること"を証明するのに,"存在すること"を前提にするのは,いかにも馬鹿げています。

 

そうした論法が可能であるなら,ゲーデルの労力は全く不要であったということになります。 

クレタ人のウソつきのパラドックスなど,幾つかの論理パラドックスの存在なら大昔から知られていたわけですから,既に通常の体系は矛盾があるか不完全かのどちらかであることはずっと昔からわかっていた,とする立場を取るなら,ゲーデルの仕事は徒労だったということになってしまいます。 

まあ,他にもゼノンのアキレスと亀などの幾つかの背理(パラドックス)なども,高校の数列や級数の収束程度の論理,あるいは大学で習うコーシー(Cauchy)のε-δ論法などの論理で解決済みとする立場もありますが,

 

人によっては,より突き詰めた考察をしたり,"そうした論旨は解決にはなっていない。"とする立場もあるようですから,これも似たようなものかもしれませんが。。。

参考文献:野崎昭弘 著「不完全性定理」(日本評論社)

 

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2007年9月20日 (木)

S行列とレッジェ理論(12)

前記事の続きです。

今日は不変散乱振幅(s,t,u)において核子のスピンを無視したπ-N散乱(π+N→π+N)を仮定して,いわゆる分散関係を導くことにします。

"(s,t,u)はs,t,uの解析関数であって,その特異性は各チャンネルでの中間状態の粒子のエネルギーの閾値に依存するというルールで決まる極と切断のみである。"という散乱振幅に対するマンデルスターム仮説は,複素変数s,t,uの関数としてのA(s,t,u)の解析性を与えます。

変数tを1つの負の実数値に固定したとき,A(s,t,u)は複素変数sのみの関数と考えられます。あるいは同じことですが,u=2m22-t-sの関数と考えることもできます。

このsあるいはuの関数の特異性は次のように読み取れます。

1. 点B:s=(m+μ)2から始まってs=+∞まで走るsの実軸上の切断がある。(これは実は幾つかの切断の重ね合わせです。しかし,ここではそのことは重要ではありません。)

2. 中間状態として核子1個の状態に対応する極Pがその留数g2を持ってs=m2に存在する。

3. もう1つの核子1個の極P'がu=m2に存在する。

4. 点B':u=(m+μ)2から始まってu=+∞ まで走るもう1つの切断がuの実軸上にある。

以前と同じように,振幅をA(s,t)≡A(s,t,2m22-s-t)=A(s,t,u)と置いて,tを固定するとこれは複素数sだけの関数と見なせます。

 

このとき,複素s平面上での切断は右切断((m+μ)2,∞)と左切断(-∞,-(m+μ)22m22-t)の2つになります。

 

そして左切断の始まりであるB':s=-(m+μ)22m22-tのすぐ右側に極P':s=-m22m22-tがあり,右切断の始まりであるB:s=(m+μ)2のすぐ左側に極P:s=m2があります。 

以前N-N散乱を想定した複素数tに関するマンデルスターム表示を導いたときに考えた複素t平面での特異性と,今のπ-N散乱での複素s平面での特異性はほとんど同じです。

 

実軸上の左右の切断を避けて無限遠を反時計回りにまわる閉じた経路で途中2つの極を時計回りにまわるものをCとして,コーシーの公式を用いると,A(σ,t)={1/(2πi)}∫Cds'{A(s',t)/(s'-σ)}と表現できます。

そして,A(s',t)の無限遠(|s'|=∞)での円周上での積分の右辺への寄与を無視すれば,マンデルスターム表示の導出のときと同様にしてA(σ,t)={g2/(σ-m2)}+{g2/(U-m2)}+{1/(2πi)}∫(m+μ)2ds'[{A(s'+iε,t)-A(s'-iε,t)}/(s'-σ)]+{1/(2πi)}∫(m+μ)2du'[{A(u'+iε,t)-A(u'-iε,t)}/(u'-U)]となります。

 

ここで,U≡2m22-σ-tと置きました。

 さらに,右辺の項:{1/(2πi)}∫(m+μ)2ds'[{A(s'+iε,t)-A(s'-iε,t)}/(s'-σ)]において,被積分関数の分子に見られる切断上での不連続性:As(s,t)≡{A(s+iε,t)-A(s-iε,t)}/(2i)を考えます。

 

 tが負の実数値のときには物理的領域:(m-μ)2-t<s<(m+μ)2に対しては,振幅A(s,t)は実数ですから,As(s,t)=ImA(s,t)です。

 

 それ故,この項は(1/π)∫(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-σ)}と書けます。

なぜなら,一般に実軸上で実数値をとる複素数zの関数f(z)は実軸上ではf(z*)={f(z)}*であり,これを解析接続したときの全領域でもこの関係が保持されるので,f(x-iε)={f(x+iε)}*となり(x+iε)-f(x-iε)=2iImf(x+iε)が成立すると考えられるからです。

そして,一般に散乱振幅A(s,t)においては,既に非相対論での考察から,t<0,かつ Res>(m+μ)2ではエネルギーsの虚部が正の領域が物理的シートであることを知っています。

それ故,s>(m+μ)2の物理的領域ではA(s-iε,t)ではなくA(s+iε,t)の方が散乱振幅A(s,t)と同定されると考えられるからです。

したがって,A(σ,t)={g2/(σ-m2)}+{g2/(U-m2)}+(1/π)∫(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-σ)}+(1/π)∫(m+μ)2du'{ImA(u',t)/(u'-U)}が得られます。

 

そして,σ=s+iεのときにε→+0 の極限をとる場合,つまりsが実数のときは振幅A(s+iε,t)の極限値:limε→+0(s+iε,t)が,現実の振幅A(s,t)を与えると考えられます。

右辺の積分項は被積分関数が適切な連続性を持つならε→+0 で有限な極限値を持つと思われます。

 

このとき,一般的に成立する等式A(s,t)={g2/(s-m2)}+{g2/(u-m2)}+(1/π)∫(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-s-iε)}+(1/π)∫(m+μ)2du'{ImA(u',t)/(u'-u+iε)}の両辺で実部をとる操作をしてみます。

 

ここでは,右切断の近傍を考えているので,左切断の寄与を与える項では(1/π)∫(m+μ)2du'{ImA(u',t)/(u'-u+iε)}=(1/π)∫(m+μ)2du'{ImA(u',t)/(u'-u)}と書いていいです。

Re(1/π)∫(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-s-iε)}=(1/π)∫(m+μ)2ds'[ImA(s',t)(s'-s)/{(s'-s)2+ε2}]=(1/π)(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-s)}です。

 

最右辺のはコーシーの主値を示しています。この主値は|ImA(s1,t)-ImA(s2,t)|≦C|s1-s2|αのような非常に弱い連続性条件の下で存在します。

 したがって最終的な積分関係式 ReA(s,t)={g2/(s-m2)}+{g2/(u-m2)}+(1/π)(m+μ)2ds'{ImA(s',t)/(s'-s)}+(1/π)∫(m+μ)2du'{ImA(u',t)/(u'-u)}が得られます。これは分散関係として知られています。

 この分散関係式は運動量遷移tがゼロのときに特に興味深い形になります。例えばπ-p散乱を考えてみます。

 

 光学定理によれば,σ-(s)をπ-p散乱の全断面積とするとき,ImA(s,0)=ks1/2σ-(s)/(4π)です。

 

 同様にuチャンネルの交叉反応であるπ+p散乱からはImA(u,0)=qu1/2σ+(u)/(4π)が得られます。ここにs,uです。

 一方,前方散乱の微分断面積(dσ-el/dΩ)|θ=0|A(s,0)|2/s=[ReA(s,0)}2/s+{ImA(s,0)}2/sから,ReA(s,0)が導出されます。そこで分散関係は測定可能な量のみで表現できます。

 

 ReA(s,0)={g2/(s-m2)}+{g2/(u-m2)}+{1/(4π2)}(m+μ)2ds'{k's'1/2σ-(s')/(s'-s)}+{1/(4π2)}∫(m+μ)2du'{q'u'1/2σ+(u')/(u'-u)}なる表式を得ます。

 ところが,σ±の実験による測定値はエネルギーの大きい極限で定数に収束することを示しているように見えるため,このケースには右辺の積分は収束しません。

 

 しかし,分散関係の公式を,A(s,0)に対して書く代わりにある定数値をs0としてA(s,0)/(s-s0)に対してコーシーの公式を書くことにより,この困難は容易に解消できます。

 この公式を実際に求める手続きを行う代わりに,先の積分式が収束すると仮定して単に引き算を行うだけで,この手法による結果が推定されます。

ReA(s,0)-ReA(s0,0)=[g2(s0-s)/{(s-m2)(s0-m2)}]+[g2(u0-u)/{(u-m2)(u0-m2)}]+{(s-s0)/(4π2)}(m+μ)2ds'[k's'1/2σ-(s')/{(s'-s)(s'-s0)}]+{(s0-s)/(4π2)}∫(m+μ)2du'[q'u'1/2σ+(u')/{(u'-u)(u'-u0)}]です。

 上の手法は引き算法として知られています。そして最終関係式はこれも分散関係と呼ばれますが,この式を陽子pにスピン1/2があることを考慮して補正したものは,実際の実験結果と比較してかなり精度の良い一致を示しています。

 しかし,一般に分散関係をゼロ(=前方散乱)とは異なるtの値に対して実用的に用いるというのはとても難しい問題です。

 

 実際,その際にはImA(s,t)を測定から決定する必要がありますが測定可能なのは物理的領域のみであり,非物理的領域での値は直接的方法ではわかりません。

そこでA(s,t)のルジャンドル多項式による展開を用いて位相のずれδl(s)に対して物理的領域からの外挿がなされ,それによって非物理的領域でのImA(s,t)が表現されるような工夫がなされましたが,これは実験的測定でのかなりの大きさの不確実性を含んでいます。

最後に,tがゼロの近傍についてのπ-N散乱の分散関係は場の量子論の厳密な意味では,いわゆる因果性原理を用いた公理論的場理論から証明されています。

 

そこで上で導出した分散関係式は仮説に過ぎないマンデルスターム理論よりも堅固な理論的基礎に基づいているといえます。

当面の目的が達せられたので,今日はこれくらいにします。

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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2007年9月18日 (火)

S行列とレッジェ理論(11)

 前記事の続きです。

 

不変散乱振幅A(s,t,u)において,u=4m2-s-tなので,

(s,t)≡A(s,t, 4m2-s-t)と置き,sを固定してAを

tの複素関数と考えると,複素t平面での物理的領域は,実数t

に関しては,4m2-s<t<0 です。

 

そこで,複素t平面で実軸上の左右の切断:(-∞,-4μ24m2-s),

(4μ2,∞)を避けて,無限遠を反時計回りにまわる閉じた経路で,

途中2つの極t=μ2とu=4m2-s-t=μ2:

t=μ2とt=-μ2(s-4m2)を時計回りにまわるものをCとして,

Cauchyの公式を用います。

 

すると,不変振幅は,

A(s,t)={1/(2πi)}∫Cdt'{A(s,t')/(t'-t)}

と表現できます。

 

 ただし,A(s,t)はt→ ∞ で十分急激にゼロになると仮定します。

 

 こう仮定すれば複素t平面上の無限大半径の円周上での積分部分の

 右辺への寄与は無視できます。

 

 そして,A(s,t)の極:t=μ2とu=4m2-s-t=μ2の留数の

 右辺の積分への寄与は,単にg2/(t-μ2)とg2/(u-μ2)です。

 

 また,積分への右切断からの寄与は,{1/(2πi)}

 ×∫4μ2dt'[{A(s,t'+iε)-A(s,t'-iε)}/(t'-t)]

 です。

 

 そこで,tの切断の上での不連続性を,

 t(s,t)≡{A(s,t+iε)-A(s,t-iε)}/(2i)

 で定義すれば,

 

 この切断の寄与は,

 (1/π)∫4μ2dt'{t(s,t')/(t'-t)} と書けます。

 

 そして左切断からの寄与は,tをuに置き換えるだけで全く同様に

 与えられます。

 

 それ故,結局,A(s,t,u)=A(s,t)

 ={g2/(t-μ2)}+{g2/(u-μ2)}

 +(1/π)∫4μ2dt'{t(s,t')/(t'-t)}

 +(1/π)∫4μ2du'{Au(s,u')/(u'-u)}

 と書くことができます。

 

 こうした積分表示は,最初,S.Mandelstam(マンデルスターム,or

 マンデルシュターム)によって得られたので,Mandelstam表示

 呼ばれます。

 

 これによると,極からの寄与は非相対論での湯川ポテンシャルからの

 第一Born近似に類似していることがわかります。

 

 また,新しい特徴は切断の寄与が不連続性At(s,t')と,Au(s,u')

 比例していて,その寄与はt',またはu'の最小値において最大に

 なると考えられることです。

 

 A(s,t,u)とπ-π散乱振幅の関係を調べることで,不連続性At

 陽に表現することは可能ですが,この方面での理論展開は,G.F.Chew

 らの著書に詳述されており,それらは我々の主題ではないので,こう

 した理論の詳細には入りません。

 

 A(s,t,u)={g2/(t-μ2)}+{g2/(u-μ2)}

 +(1/π)∫4μ2dt'{At(s,t')/(t'-t)}

 +(1/π)∫4μ2du'{u(s,u')/(u'-u)}

 なる表示の興味深い応用としては,

 

 例えば,この表現からρ中間子のような不安定粒子の交換が

 N-N散乱振幅にどのように寄与するかを見ることができる

 ことです。

 

 ρ中間子は質量が5.5μ程度の2つのπの共鳴であることを思い起

 こすと,仮にρがπと同程度に安定な粒子であると想定した場合は,

 それの核子による粒子交換の効果はπ中間子の交換と同じく,

 A(s,t,u)の1つの極を与えるはずです。

 

 そこで,振幅の積分表示にとって,gNNρ2/(t-mρ2)なる寄与をす

 ると予測されます。

 

 しかし,実際にはρは安定ではなく単に不安定な共鳴であるため,

 その質量mρは明確には定義できず,振幅はρがやがて分解する2

 つのπに対して,質量がmの共鳴状態が見出される確率をσ(m2)

 として,これを重みとする質量スペクトルで表現されると思われ

 ます。

 

そして,σ(m2)は共鳴粒子の安定性を示す確率ですから,

Breit-Wigner関数で与えられると考えられます。

 

そこで,現実のρの寄与は,gNNρ2/(t-mρ2)ではなく,

∫dm2(m2)gNNρ2(m2)/(t-m2)}のような形になる

はずです。

 

 実際,A(s,t,u)への2つのπの交換の場合の寄与は,先の

 G.F.Chewらの著書によれば,不連続性At(s,t')の寄与として

 上述の質量スペクトルσ(m2)による形に非常に近いことがわか

 っています。

 

 すなわち,At(s,t')~πσ(t')gNNρ2(t')であり,それ故,dt'

 積分によって確かに∫dm2(m2)gNNρ2(m2)/(t-m2)}なる表現

 に一致します。

 

 次に,こうした不変散乱振幅の積分による表示式の解釈をπ-N散乱に

 適用します。

 

-N散乱では,s-チャンネルでの主要な1次の中間状態はπの

1粒子状態であり,それに双対なグラフは丁度それぞれuチャンネル

とt-チャンネルでのπの交換になり,散乱振幅における1粒子の極

が得られました。

 

これに対して,π-N散乱(π+N→π+N)でのs-チャンネルのグラ

フでは,中間状態はNの1粒子状態です。

 

そして,変数sについてはs=(m+μ)2に始まる弾性切断

s=(m+2μ)2に始まる2π-Nチャンネルの非弾性切断があり

ます。

 

この場合,u-チャンネルでの"交叉反応=双対"も同じになるので,

uの特異性はsのそれと全く同じです。

 

そして,π-N散乱の頂点はN-N散乱と同じなので,反応に伴う対称

性から,極があればその留数はN-N散乱と同じ値g2になります。

 

 一方,t-チャンネルでの交叉反応はN+N~→π+π~ですから,

 強い相互作用での量子数の保存則から,これの中間状態は角運動量

 がゼロ,パリティが偶であることが要求されます。

 

 これに相当するtでの1粒子の中間状態(sでの1粒子の交換)は

 存在しないため,t-チャンネルには1粒子の極は存在しないとい

 えます。

 

 しかし,"sでの2つのπの交換=tでの2-πの中間状態"のチャン

 ネルは存在可能ですから,tの特異性としてt=(2μ)22に始

 まる切断があります。

 

 ところが,強い相互作用で成立すべき,Isotopic-spin(荷電スピン:

 アイソスピン)の保存が成立しないので,3-πに対応する切断はあり

 ません。

 

 次に相対論的特徴を見るため,高エネルギー領域での振幅の性質を

 考察します。

 

 高エネルギーでの最も決定的な事実の1つは,エネルギーが増加す

 るにつれて開いていくチャンネルの数です。

 

 最初に非弾性反応の弾性反応への影響に着目します。

 

 このため,sチャンネルでの表示から,不変振幅が,

 A(s,t)=s1/2(k2,cosθ)

 =s1/2Σl=0(2l+1)al(s)Pl(cosθ)と部分波展開表現できる

 ことを利用します。

 

 既に以前の記事で見たように,al(s)は部分波散乱振幅であり,

 部分波ごとの入射波に対する散乱波の比は,位相のずれδl(s)

 を用いて,exp{2iδl(s)}=Sl(s)=1+2ikal(s)なる表現

 で与えられることを知っています。

 

 そして,このように定義された位相のずれ:δl(s)は非弾性散乱では

 実数ではないと考えてよいので,

 一般に,|exp{2iδl(s)}|=|1+2ikal(s)|<1です。

 

 しかし,散乱のうち弾性散乱部分の微分断面積dσel/dΩは,

 依然としてdσel/dΩ=|f(k2,cosθ)|2|A(s,t)|2/s

 なる式で与えられます。

 

そこで,弾性散乱の総断面積σelはLegendre多項式の直交性により,

σel(4π)Σl=0(2l+1)|al(s)|2と表わすことができます。

 

 他方,非弾性散乱の断面積の部分波成分は,明らかに,

 {1-|1+2ikal(s)|2}に比例するはずです。

 

 実際,散乱に関する他の典型的なテキストを参照することにより,

 非弾性散乱の総断面積は,

 σinel(π/k2l=0(2l+1){1-|1+2ikal(s)|2}

 となることがわかります。

 

 したがって,全断面積は,σtot=σel+σinel

 (4π/k)Σl=0(2l+1)Im{al(s)}

 なる表式で与えられます。

 

 一方,"散乱角θがゼロの散乱振幅=前方散乱振幅"は,明らかに

 A(s,0)=s1/2Σl=0(2l+1)al(s) と書けます。

 

 これと,σtot=σel+σinel(4π/k)Σl=0(2l+1)Im{al(s)}

 を比較すると,ImA(s,t)|t=0=ks1/2σtot/(4π)が得られます。

 

 これは,Imf(k2,cosθ=1)=kσtot/(4π)と書けば,よく知られた

 "光学定理(Optical Theorem)=Bohr-Peierl-Placzokの関係式"

そのものです。

 

 ところで,p-p,p-p~,π-p,K±-pのような陽子と陽子,

 あるいは陽子と他の素粒子との散乱に対する実際の実験から,

 種々の散乱の全断面積や微分断面積の精密な測定結果が得られ

 ています。

 

 これら2つの量を比較するとA(s,0)の虚部と実部の両方を決める

 ことができます。

 

 実際,虚部ImA(s,0)は光学定理:ImA(s,0)=ks1/2σtot/(4π)

 により,全断面積σtotがわかればわかります。

 

 一方,(dσel/dΩ)|θ=0|A(s,0)|2/s

 =[{ReA(s,0)}2{ImA(s,0)}2]/sなので,

 微分断面積(dσel/dΩ)|θ=0がわかれば,実部 ReA(s,0)も

 わかります。

 

 上述の実験結果によれば,エネルギーsの増加と共にImA(s,0)は

 増加し,比 ReA(s,0)/ImA(s,0)は限りなくゼロに近づくことが

 わかっています。

 

 後者は,ReA(s,0)/ImA(s,0)

 =(4π)[Σl=0(2l+1)Re{al(s)}]/(kσtot)→ 0 as s→ ∞

 と表現できます。

 

 この結果は,s→ ∞のとき,各部分波の振幅al(s)の実部の虚部に

 対する比がゼロに近づくことを示唆しています。

 

 振幅のこの性質は,いわゆる光学模型によって理解可能です。

 

 例えばπ-N散乱なら有限な広がり(半径)Rを持つ核子Nを標的に

 してπがzの向きに高速で,つまり非常に大きい運動量で衝突す

 ると想定します。

 

 のzに垂直な成分の不確定性Δpx,Δpyは入射運動量に関係

 なく小さくできます。

 

 そしてp>>R-1である限り,x,y座標の不確定性は,

 Δx<<R,Δy<<Rで与えられます。

 

 これは波長がRと比較して十分小さいことを意味しています。

 

 そこで核子の"中心からπ-中間子の飛跡までの距離=衝突径数

 "b=(x2+y2)1/2は運動量が十分大きいときには"well-defined"

 であることがわかります。

 

 核子の拡がり半径がRなので,bがRより大きいときにはπはNと

 相互作用しません。

 これはπの軌道角運動量lがpbに等しいことに着目すれば,

 部分波振幅によって表現できます。

 

 すなわち,l>pRならal0 と解釈します。

 

 しかし,b<Rではπは標的を打ち,幾つかの可能なチャンネルが

 開きます。

 

 こうした高エネルギーでは非弾性衝突があるため,こうしたlの

 部分波は|1+2ikal(s)|<1 を満たします。

 

 極端な場合には,{1+2ikal}がゼロになり,

 σinel(π/k2l=0(2l+1){1-|1+2ikal|]

 ~ (π/k2l=0l=pR(2l+1)となって,弾性散乱断面積の

 最大値が実現されます。

 

 この場合は光学の言葉で核子は黒い,つまり黒体であるといいます。

 

 逆に|1+2ikal|=1のときには核子は透明であるといい,中間的な

 場合には核子は灰色であるといいます。

 

 そして,黒い核子の場合,l≦pRなるlについてはal=i/(2k),

 つまりalは純虚数であり,そこで散乱振幅A(s,t)も純虚数です。

 

 この場合,σinel(π/k2l=0l=pR(2l+1)=(π/p2)(pR)2

 =πR2tot(4π/k)Σl=0(2l+1)Imal

 =(2π/k2l=0l=pR(2l+1)=2πR2となります。

 

 したがって,全断面積が非弾性のそれの2倍ですから,弾性散乱の

 断面積と非弾性散乱の断面積が等しいことになります。

 

 この結果は,古典光学でよく知られていて黒い球体の半径が光の

 波長よりもはるかに大きくて完全吸収するときの,Babinetの原理

 による帰結ですが,球体は吸収するのと同じくらい多くの光を回折

 散乱します。

 

 このようにして,Sl=1+2ikal=0 でも起こる弾性散乱を影散乱

 と呼びます。

 

 この黒い核子の模型が光学模型であり,先の強い相互作用の実験結果

 から得られた高エネルギーでの散乱振幅の傾向:

   

 ReA(s,0)/ImA(s,0)

 =(4π)[Σl=0(2l+1)Re{al(s)}]/(kσtot)→ 0 as s→ ∞

  

 は,このモデルでうまく説明できます。

 

 こういうわけで,散乱振幅がこうした傾向を持つ散乱は回折散乱

 と呼ばれています。

 

 これらの散乱の特徴としては,全ての弾性散乱が小角度θ~(pR)-1

 の内部に閉じ込められるため,散乱振幅の角度分布曲線が前方散乱

 (θ~ 0)の部分に,回折ピークと呼ばれる散乱振幅の鋭いピークを

 持つことが挙げられます

 

 つまり,吸収されて観測されない非弾性散乱はl<(pR)でのみ生じ,

 弾性散乱(影散乱)はl>(pR)でのみ生じますが,不確定性;

 lθ~ h=1 により,散乱振幅が観測される軌道角運動量

 l>(pR)は角度θ<(pR)-1に対応するわけです。

 

振幅(s,t,u)の高エネルギーでの挙動は,以前に述べた,

"(s,t,u)はs,t,uの解析関数であって,その特異性は

各チャンネルでの中間状態の粒子のエネルギーの閾値に依存する,

というルールで決まる極と切断のみである。"というMandelstamの

仮説よって,どのような制限を受けるのでしょうか?

 

これを明確にするため,再びπ-N散乱を考察します。

 

 Mandelstam仮説は本質的に運動量遷移の切断の位置を固定します。

 

π-N散乱では,切断はt=4μ2から始まります。

 

 そしてこの仮定は与えられたチャンネルでの散乱が,有効レンジ

 が(2μ)-1よりも小さい湯川ポテンシャルの重ね合わせから生じる

 ものと同じである,ことを述べています。

 

 この条件から決まるポテンシャルは一般には複素数であり,

 複雑でエネルギーに依存すると考えられますが,有限なレンジを

 持つという性質は非常に高いエネルギー領域においてさえ保持さ

 れます。

 

 ここで,簡単のために散乱の相互作用ポテンシャルとして,完全な

 湯川ポテンシャルの重ね合わせの代わりに,単一の湯川ポテンシャル

 V(r)=gK2exp(-Kr/r)を想定します。

 

 ただし,gK2はsの複素関数であるとし,Kも定数ではなくエネルギー

 と共に変動して下にK=2なる境界があるとします。

 

 つまり,K>2とします。

 

 高エネルギーでも,衝突径数bには十分意味があると考えられます。

 

 また,をπ中間子の運動量,Eをそのエネルギーとすれば,πの質

 量は無視できるので2=E-Vと書けます。

 

 Vは複素数なので,も虚部を持ち,それ故,πの波動関数:

 ψ~ exp(ipx)は,吸収による減衰を示します。

 

 これは,πから見た総ポテンシャルによって定義される総吸収を

 表現するものです。

 

 ここで,πから見た総ポテンシャルとは,U(b)≡∫-∞(r)dz;

 z2+b2=r2によって定義される量のことを意味します。

 

 かくして,|U(b)|<<1なら,πは相互作用をしないし,

 逆に|U(b)|>>1なら十分な相互作用があることになります。

 

 U(b)は,gK2(s)exp(-Kb)程度の大きさの量ですから,U(b)

 がb=Rで1に等しくなるように標的の半径Rを定義すると,

 これは|gK2(s)|exp(-KR)=1,またはR=(1/K)log|gK2(s)|

 を意味します。

 

 一方,光学模型によれば,このポテンシャルによる散乱の全断面積

 σtotはπR2のオーダーです。

 

 そこで散乱の全断面積の可能な値を決めるためには,gK2(s)の挙動,

 すなわちsが大きいときの運動量遷移tの切断の上での散乱振幅の

 不連続性Atの可能な挙動を知る必要があります。

 

 なぜなら,gK2(s)は不連続性Atの切断全体での平均だからです。

 

 通常,全振幅A(s,t,u),あるいは不連続性At(s,t)はs→∞

 のときに,sのある固定ベキ:sよりも急激には増加しない,

 と仮定されています。

 

 この仮定は,後述するような分散関係が成立するために必要とされる

 仮定です。

 

 そして,これが成立するならlog|gK2(s)|は,高々,nlogsの

 オーダーの量ですから,R~(n/K)logsでありσtot~πR2

 によってσtot ~ (定数)×(logs)2と見積もることができます。

 

 そこで,Mandelstamの仮説,および,s→ ∞のとき,At(s,t)が

 sより急激には増加しないという仮定は,散乱断面積の漸近的挙動

 に強い制限を与えます。

 

 これは,散乱の総断面積は入射粒子のエネルギーsの対数の平方より

 急激には増加できないという制限:σtot~ (定数)×(logs)2です。

 

これから,光学定理ImA(s,0)=ks1/2σtot/(4π)を使用して,

ReA(s,0)が常にImA(s,0)より小さいとすれば,s→ ∞のとき,

前方散乱振幅A(s,0)が次のような挙動をすることがわかります。

 

すなわち,A(s,0)~(定数)×s(logs)2です。

 

 この最終形式は,理論に厳密な無矛盾性の要求を突きつけます。

 

 t-チャンネルには1より大きい角運動量l,例えばl=2の束縛

 状態が存在すると考えられます。

 

 そして,Mをこの状態の質量とします。

 

 あらゆる散乱粒子は同じ質量μを持つとすれば,

 A(s,t)={G22(cosθt)/(t-M2)}+(正則項)であり,

 cosθt1+{2s/(t-4μ2)}です。

 

 そして,P2(x)=(3x21)/2ですから,s→ ∞ のとき右辺で

 極を与える項は,(6G22)/{(t-M2)(t-4μ2)2}となります。

 

 そこで,A(s,t)はtがM2に十分近くて,この極の周辺項が

 支配的なとき,s2に比例して増大します。

 

 したがって,s-チャンネルとt-チャンネルの物理的領域が共存

 できて,そこで接続されると想定できる境界領域で,先の漸近的な

 挙動:A(s,0) ~ (定数)×s(logs)2と,たった今,求めた挙動:

 A(s,t)~(6G22)/{(t-M2)(t-4μ2)2}が一致することが

 要求されます。

 

 そして,この無矛盾性の要求が満たされるためには,A(s,t)への

 極の項の寄与と,t切断の寄与との間にある種の相殺が生じる必要

 があります。

 

 そして後述するように,レッジェ極(Regge poles)の仮定はこの相殺

 を自動的に与えることがわかります。

 

 これは,理論的立場から見たRegge極の際立った特徴です。

 

 とりあえず今日はここまでにします。

 

(参考文献):

R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」

W.A.Benjamin,Inc,New York(1963),

砂川重信「散乱の量子論」(岩波書店)

 

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2007年9月15日 (土)

S行列とレッジェ理論(10)

 ポテンシャル散乱の理論では弾性散乱のプロセスのみを対象としていました。しかし,実際の散乱では,高エネルギーの領域で非弾性過程が出現します。

  

まず,第一にはp-n散乱によるπ-中間子の生成が考えられます。

 

すなわち,p+n → p+n+π0,p+n → n+n+π,

p+n → p+n+πのような非弾性反応が考えられます。

 

これらの反応は,核子の質量をm,πの質量をμとするとき,1/22m+μなら直ちに起こると思われます。

 

理論に新たに出現したこの過程は,振幅A(s,t,u)の解析性にどのような影響を与えるでしょうか?

 

ユニタリ性によって,非弾性散乱の閾値より下(この反応なら,

<(2m+μ)2では,あらゆる入射粒子は散乱されるか素通りして

必ず終状態に見出されなければなりません。

 

μが強い相互作用をする粒子の最小質量なら,4m2≦s<(2m+μ)2

あらゆる実数sに対してこれは真です。

 

もしも,s=(2m+μ)2を越えて,振幅が解析的であれば,既述の弾性散乱の性質はs=(2m+μ)2より大きいsでも保持され,そこにおいて如何なる非弾性散乱も起こり得ないといえます。

 

 それ故,s=(2m+μ)2に振幅A(s,t,u)の特異点が存在して,それが 2N+πのチャンネルの始まりに関連していると考えられます。

 

同様なことは,別の新しいチャンネルの各々に対応する各エネルギーの閾値においても成立すると思われ,したがって不変散乱振幅は各閾値に特異点を持つと仮定することができます。

 

このルールを拡張すれば重水素核の極も2つの核子による'仮想反応'の閾値である,ということで説明できます。

 

こうしたやり方で,エネルギーが考えている粒子質量の和より大きかろうと小さかろうと,上述のルールをあらゆる実反応や仮想反応の閾値に当てはめていくことができます。

 

したがって,エネルギーの各閾値はsに関する特異点の位置を与えると考えられます。

 

このルールの特殊な場合は,通常の弾性反応の閾値での特異点の存在に対応しています。

 

すなわち,核子散乱については,s=4m2の極です。これは既にポテンシャル散乱で出会ったものです。

 

このルールは陽子-反中性子散乱p+n~→ p+n~の場合にはどうなるでしょうか?

 

我々はあらゆる可能な1エネルギー状態と,あらゆる可能な終状態のチャンネルを検討する必要があります。

 

以前やったように,p-nをs-チャンネルとしてp-n~のプロセスをu-チャンネルとします。

 

p-n~系は電荷が+1で,s軌道ではスピンは 0 か1のBose粒子(Boson)であり,バリオン数はゼロですから,核子-反核子対として同じ量子数を持つ唯一の1粒子状態はπ+-mesonです。

 

そこで,A(s,t,u)は,u=μ2に極を持つと予想されます。

 

そして,また強い相互作用の量子数が全て保存される反応としては,

p+n~ →π++π0も想定できるので, 

u=(2μ)22を閾値としてπ+0チャンネルも開きます。

 

それ故,ルールに従うなら,A(s,t,u)はu=4μ2にも極を持つ

はずです。

 

しかし,既に示したように,u-チャンネルでの物理的領域は,

u>4m2,s<0,t<0 ですから,u=4μ2はu-チャンネルでの

物理的過程ではなく仮想過程です。

 

しかし,A(s,t,u)がu=4μ2に極を持つことは交叉対称性と

先のルールから間違いないと思われます。

 

そこで,A(s,t,u)は一般にu=4μ2に孤立した単独の特異点ではなく,そこを分岐点とした切断を持ちます。

 

それは,一般に反応がその点だけで起こるわけではなく,その点がチャンネルの開始点となっているからです。

 

同様に,この切断上のu=(3μ)22にもπが3つあるというチャンネルが開くため,(s,t,u)の"特異点=分岐点"があります。

 

そこで,πについてはu=(nμ)2=n2μ2に無数の特異性があることがわかりました。

 

そして,π以外にもK-K~,K-K~-π,..などのチャンネルの開始によって,u=4m2に達するまでに無数の特異点があると思われます。

 

さらに,u=4m2ではp-n~の物理的チャンネルが参入し,弾性特異点という特別な特異性が生じます。

 

それから後には,N-N~-π, N-N~-π-π,..に対するuの特異点が続きます。

 

以上において,特に重要な特異性はπの極μ22πの切断,およびN-N~の切断です。

 

-チャンネルp+p~ → n+n~についても,同様な考察ができます。そこでもやはり1つの極はπ0であり,もちろん,2π,3π,etc.の切断もあります。

 

そして,Mandelstam(マンデルスターム)は,

 

"(s,t,u)はs,t,uの解析関数であって,その特異性は上述のルールで決まる極と切断のみである。"

 

という非常に簡単な仮説を提案しました。

 

これは,特にs,t,uの全てが複素数である(実数ではない)ような特異点,すなわち複素特異点は存在しないことを意味しています。

 

この仮説は摂動論の最初の2~3項まででは真であることが証明されています。

 

このMandelstamの仮説はA(s,t,u)のtとuにおける特異点の位置を与えますが,我々は既にこれらの特異性が非相対論的理論のポテンシャル散乱振幅からも決まることを知っています。

 

逆に,ポテンシャルの特性は交叉反応における可能な中間状態に関連したt,uの特異性によって決まるとも考えられます。

 

Mandelstamの仮説によれば物理的領域に最も近いA(s,t,u)のt特異性は,πが1個の極t=μ2です。

 

この極がsチャンネルのp-nポテンシャルに如何なる寄与を与えるかを見るためには,この極の留数となるものを知る必要があります。

 

 ところが量子論の摂動論は直ちにその答を与えてくれます。

 

 すなわち,以前に部分波振幅の分析で見たように,

 t~μ2(s,t,u)={g2/(t-μ2)}+(正則部分)

 と書けます。

 

 これは非相対論でのf(k2,cosθ)

 ={(2l+1)NPl(cosθ)/(k2+B)}+(正則部分)

 に対応しています。

 

 そしてπのスピンがゼロなので,B=-μ2の状態の角運動量lは

 ゼロです。すなわち,0次のLegendre多項式P0(cosθ)=1 に対応

 するので,留数はg2で定数です。

 

 こうして,A(s,t,u)へのt-チャンネルでのπの極の寄与は

 g2/(t-μ2)であることがわかります。

 

 これは既に見た有効レンジが,πのCompton波長:μ-1に等しい

 湯川ポテンシャル:2(exp(-μr)/rによる散乱の散乱振幅

 の1次のBorn近似に一致しています。

 

 すなわち,以前の記事で,ポテンシャル散乱の散乱振幅:

 f(k2,cosθ)=F(k22)が,F(k22)=-Σn=1n(k22)

 と展開され,-F1(k22)=-g2/(Δ2+μ2)なるBorn近似を

 得ました。

 

 これに重心系での等式t=-Δ2を代入すると,確かに,

 -F1(k22)=g2/(t-μ2)となるからですね。

 

 この結果の慣例的解釈はpとnが質量μのπ中間子を交換することができるということです。

 

 簡単な近似計算によれば,そうしたπの交換が実際に有効距離μ-1

 相互作用を引き起こすことがわかります。

 

 中性子はπを放出するとエネルギーが総量ΔE=μだけ変化しますが,このπ-nの状態は不安定でHeisenbergの不確定性関係で示唆されるように時間τ~ 1/ΔE=μ-1の間しか維持されません。

 

 この時間τの間,πが最大可能な光速c=1で運動すると仮定すると距離r=τ=μ-1だけ進み,そこで陽子に捕獲されます。

 

 それ故,p-n相互作用が到達可能な有効レンジはμ-1のオーダーであるといえるわけです。

 

 A(s,t,u)へのt-チャンネルでの次の特異性は,t=4μ2における切断です。

 

 上の論旨と同様,これは質量μの2つのπ中間子の交換によるものと考えられます。

 

 これが単独の孤立した極でない理由は,単独粒子では重心系でのエネルギーが一意的に粒子質量に一致するのに対し,複数粒子では交換粒子の質量和に閾値を持った連続的な範囲を持つことであると思われます。

 

 以上の考察から,A(s,t,u)はt=μ2に極を持ちtの正の実軸上にt=2から始まるt>2の切断を持つと考えられます。

 

 また,u=2から始まるu>2の切断は,s-t座標では,

 4m2-s-t=2から始まる4m2-s-t>μ2の切断に

 なります。

 

 今日はここまでにします。

 

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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2007年9月12日 (水)

安倍退陣

 安倍が退陣表明した。

 "死者にムチ打つ"ことはしたくないが,とにかくこんなに"腰の高い奴"は見たことがない。平身低頭で軽々しく土下座までする奴は逆に信用できないが,この人は"お坊ちゃん"だとi言われているらしいが,最後まで「ごめんなさい。」の一言がなかったのは,逆の意味で一貫徹底していて大したものだと感じた。

 ↑(当然皮肉です。)

PS:知り合いの夜間高校の教師に聞いたのですが,どうも「腰が高い」というのは「腰が低い」の反対の意味ではないらしいです。

 ただ,私はそういう意味合いで使用しています。

 そう言えば,「あなた口がかたい?」と聞かれると,つい「いいえ,口はやわらかいです。」と答えるのが癖になっていますね。

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S行列とレッジェ理論(9)

 運動学についての論議に続いて,今回から動力学理論としての相対論的散乱理論に入ります。

既に見たように,交叉する幾つかの反応の物理的散乱振幅は,ある単一の関数A(s,t,u)によって共通に定められると考えられます。しかし,この関数の厳密に意味するところは何でしょうか?

 

まず,この相対論的に不変な4元スカラーとしての散乱振幅A(s,t,u)を明確に定義して複素数s,t,uの複素数値関数としてのAの解析的性質を調べることにします。

ただし,ここでの話は相対論的散乱の一般論ではなく,強い相互作用を分析することが主題なので,核子やπ中間子の散乱を中心とした話題に限定したいと思います。

 

簡単のため,既に物理的領域がⅠ:s>4m2,t<0,u<0 ,Ⅱ:s<0,t<0,u>4m2,Ⅲ:s<0,t>4m2,u<0 の3つで与えられることがよくわかっていて,s-チャンネルでの表示では陽子-中性子散乱:p+n → p+n (p1+p2 → p3+p4)となる核子の2体散乱の反応から始めます。

既にs-チャンネルでの物理的領域Ⅰの反応に対し,非相対論における散乱振幅f(k2,cosθ)=f(k22)を導入しました。

 

これを改めてf(s,t,u)と書くことにします。

 

この反応の微分断面積はdσ/dΩ|f|2で与えられます。

 

同様に,u-チャンネルでの交叉反応:p+n~ → p+n~に対して別の振幅f(s,t,u)を定義します。もちろん,ここでもdσ/dΩ|f|2です。

 

同じくt-チャンネルでの交叉反応:p+p~ → n+n~に対して,f(s,t,u)が定義されて,dσ/dΩ|f|2も成立します。 

しかし,fの代わりに,これに比例した別の量を散乱振幅として採用できる可能性もあります。

 

例えば,g≡f/(2k2)1/2とすれば,t=-2k2(1-cosθ)なので,|g|2|f|2/(2k2)=(dσ/dΩ)/(2k2)={dσ/d(cosθ)}/(4πk2)=(dσ/dt)/(2π)となります。

ところが,同様にして,g≡f/(2ku2)1/2と定義しても,交叉関係として(s,t,u)=f(s,t,u)とg(s,t,u)=g(s,t,u)が同時に成立することは不可能です。

 

何故なら,f=fなる等式は,(s-4m2)1/2(u-4m2)1/2なる等式の成立を意味しますから,s=uでない限り,f=f,かつg=gというのは矛盾となるからです。

 

結局,場の理論においてローレンツ不変な規格化での状態間の散乱を示すS行列要素を取る考察から,散乱の不変振幅A(s,t,u)として,s-チャンネルでA(s,t,u)≡s1/2(k22)で与えられる量を採用すべきであることがわかります。

そこで,交叉対称性:(s,t,u)=A(u,t,s)はs1/2(k22)=u1/2(k22)を意味します。

 

結局,交叉対称性は,非相対論近似ではA(s,t,u)=s1/2(k22)=u1/2(k22)=t1/2(k22)なる等式で表現されます。

-チャンネルでのp-n散乱に話を戻し,特にエネルギー1/2が十分小さくて,非相対論的なシュレーディンガー方程式に湯川型の局所的ポテンシャルを仮定して散乱境界条件を満たす波動関数を用いて散乱が記述可能な場合を考えます。

 

これにより,これまで非相対論的散乱理論で得られた知見を相対論的理論,特に不変散乱振幅A(s,t,u)に利用することを考えます。  

ここで,ポテンシャルV(r)はあまり特異ではなく,次のように湯川型の重ね合わせで一般的な積分形で書けるものとします。

 

すなわち,スペクトルμに対する展開係数をπ(μ)として,ポテンシャルV(r)は,V(r)≡∫aπ(μ){exp(-μr)/r}dμなる形で与えられるとします。

シュレーディンガー方程式から確立された-チャンネルでの散乱振幅f(k22)のあらゆる性質は,慣性中心系での運動エネルギーk2運動量遷移t=-Δ2が共に,2よりはるかに小さくて非相対論的近似が有効な場合には,A(s,t,u)≡s1/2(k22)で与えられる不変散乱振幅においても満足される必要があります。

 

つまり,非相対論的振幅:f(k22)の性質は,フルな不変振幅A(s,t,u)に反映されるべきであると考えられます。 

そして,s=4(k2+m2),t=-Δ2なので,不変散乱振幅:A(s,t,u)は,-t平面の3つの物理的領域やある円の内部で示される領域では,sとtの解析関数となり,以下のような特異性を持つと考えられます。 

1.    (s,t,u)は陽子-中性子(p-n)の1つの束縛状態,または共鳴

である重水素核(deuteron)の存在に対応して,sに1つの極を持つ。

   

 この(s,t,u)のsの極は,非相対論の散乱振幅f(k22)にお

ける2の極に対応します。すなわち,B>0 を重水素核の束縛エネル

ーとすると,非相対論でのsの極に対応する2の極は2=-Bで与

えられます。

 

 ところが,核子の質量をmとすると,-n散乱という2体問題を1体

ポテンシャル散乱と見たとき1体の換算質量はm/2です。

 

 一方,我々は非相対論では,hc2m=1,E=c22/(2m)=k2なる

位を採用していたので,2体散乱の相対論的な量としては,この2

はk2=-mBとなります。

 

 つまり,対論で用いていた単位では,cm=(m/2)×2=1,

c22/m=2により,束縛状のエネルー準位E=-Bに対する極

2=-Bでした。

 

 しかし,核子質量mに対してのp-n散乱では,その換算質量がm/2な

ので,cそのままで,質量が1/2ではなく通常のm/2となる単位

に戻せば,極2=-Bは2=mE=-mとすべきです。

 

 それ故,これは変数sの極としてはs=4(k2+m2)=4(m2-mB)=

4m(m-B)となりますが,非相対論的極限を取るなら,B/m<<1とし

ていいので,これをs=4m(m-B)~(2m-B)2=M2と見なせます。

 

 ただし,M≡2m-Bは重水素核の質量です。(Bは結合エネルギー)

 

 そこで,このsの極は系のエネルギーs1/2が重水素の質量Mによる

質量エネルギーM(=M2)に非常に近い値であることを示すものであ

るといえます。

 束縛状態,または共鳴状態が散乱振幅の極として出現するというこの性質は,相対論的散乱振幅でも確かに保持されなければなりません。

 

 それ故,この極は正確に陽子-中性子系の慣性中心系でのs1/2が重水素核の質量Mに等しいとき,つまりs=M2において生じるものと考えることができます。 

2. (s,t,u)は20 ,つまりs=4m2に始まる切断を持つ

 

 この切断は散乱が可能な十分大きいエネルギーにおいて出現するも

のです。

3. (s,t,u)はt=-Δ2について実,正の切断を持つ。

 

 実際,ポンシャルV(r)が有効レンジr0の孤立した湯川ポテンシ

ャルを持つとき,すなわち(r)=exp(-r/0)/r+∫bσ'(μ)

{exp(-μr)/r}dμのときでさえ,A(s,t,u)にはtの極と切断が

あります。

 

 t≧0-1ら,0-2 に極を持ちます。また,切断t=b2から

始まります。

そして,t=-Δ2より,この領域の近傍での(s,t,u)のtについての特異性は,(k22)におけるΔ2の特異性であり,既述したように極の位置は湯川ポテンシャルの有効レンジ 1/μに関係します。

4. A(s,t,u)はuにおいてtの特異性に双対な場所uの正の実軸

上の切断と恐らくは極を持つと考えられる。これらの特異性は(r)

に双対なポテンシャル(r)の有効レンジに関係する。

今日はここまでにします。 

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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2007年9月 9日 (日)

無限次元ヒルベルト空間

 ちょっと前にEMANさんのボードで話題になっていて,私のブログ

 でも数人がコメントを寄せて論じ合っている量子論の状態空間

 に関する話題では,私自身に説明が求められているようです。

 

 しかし私自身がそうした話について.完全にスッキリしていると

 いうわけではないし,かなり本質的な話題なので現時点での認識

 を覚書き程度に書いておきます。 

 

 量子論では,物理系の状態は,Hilbert(ヒルベルト)空間:の,

 ある規格化可能なベクトルとして記述されます。

  

 そして一般に量子力学では,は可分(separable)な空間である

 とされています。

 

 可分とは,一般に位相空間が与えられているとき,それが可算で稠密

 な部分空間を含むことをいいます。

  

 例えば,実数集合:Rは,可算稠密な部分集合として有理数集合:Qを

 含むので距離空間として可分です。

 

 状態ベクトルの空間が,可分ということは,その空間には高々可算個

 の基底ベクトルが存在して,任意の状態は,必ずそれらの高々可算個

 の重ね合わせ(1次結合)で,いくらでも精密に近似できることを意味

 します。

 

 これは,事実上,任意のベクトルが可算基底で展開できるという意味

 に取れます。

 

 一方,2006年8/19の記事;スペクトル展開と超関数(量子力学)

 や,2006年12/14の過去記事:

 「演算子のスペククトル展開の例(空洞光子の量子場)」,

 

 そして,最近の2007年8/8の「量子力学の基礎(表示の話)(1)

 で書いたように,

 

 関数解析の,"Riesz(リース)の表現定理"や,演算子(作用素)の

 "スペクトル展開定理"というものがあります。

 

 それらは,物理量を表わす演算子の固有ベクトル全体が完全系を

 作っていて,その固有ベクトル全体を直交基底として任意の状態

 ベクトルを展開できるという定理です。

 

 しかし位置座標や運動量・エネルギーを表示対象の物理量とした

 場合,それらの固有値は一般に連続的な値を取り,基底をなすと見

 える固有ベクトルの個数は一般に可算個ではなく非可算個である

 ということになります。

 

 しかし,こうした連続固有値に属する"ベクトル"は,固有ベクトル

 とは呼んでいるものの,これらの"線スペクトル"は,

 

 先に,"物理系の状態はヒルベルト空間のある規格化可能な

 ベクトルとして記述されます。"と書いた条件,

 を満足していません。

 

 これらは,規格化可能ではなく,ノルムとして無限大の大きさを

 持ちますから,に属するべクトルでさえないので,物理的状態

 とは云えない,ということになります。 

 

 そして,2007年5/24の記事:
 「有限な1次元空間に限定された運動量演算子」では,私自身が
 "物理的状態としての境界条件を満たさないような固有ベクトル
 で展開できたとしても,それに何の意味があるのか?"と書いて
 言及しています。
 
 要するに,
 連続スペクトルによる積分展開形式というのは,必ずしも物理
 的状態よる展開ではなく,状態空間が可分なヒルベルト空間
 であるなら,もしも本質的な意味で物理的状態のみで展開しよ
 うとするなら,基底は可算個で十分である,ということになる
 はずです。
 
 つまり,台のLebesgue測度がゼロの超関数のような存在を認めない
 なら,そもそも位置座標や運動量・エネルギーというような
 "連続固有値を持つ"と見える物理量は,実は,
 "Hilbert空間:においては全く固有値を持たない。"
 とさえ云えるわけです。
 
 EMANさんのボードで,hirotaさんもその証明を書かれておられる
 ように,
  
 "連続(非可算)固有ベクトルによる積分スペクトル展開が存在する
 ことは,可分であるということと矛盾するものではない。"
 ということがわかっています。
 
 つまり,任意の状態を示す波は,形式上は"ある点で大きさ無限大
 の確率密度を持つ波,あるいはノルムが無限大の波の積分として
 連続個,非可算個のスペクトルに展開されているように見えます。
 
 しかし,これらのスペクトルを有限な大きさの波束とし,正しい
 Hilbert空間:の物理的ベクトルの集まりとして構成すれば,
 状態は高々可算個の基底ベクトルの和の形で,正しく展開され,
 表現される,と考えられます。
 

2007年8/12の記事:「真空のゆらぎ,エネルギーや,

2007年8/14の記事:「プランクの法則と零点エネルギー

でも書きましたが,

 

物理的に許されない無限大のノルムの固有基底のようなものが

出現するのは,

無限大の零点エネルギーや,"紫外発散部分=くりこみ部分"が

存在するのと同じく,そもそも量子論自体の確率波という性格,

あるいは不確定性原理に根本の原因があると考えられます。

 

そこで,量子論では,それらを注意深く考察することは避けて通

れない問題だと思われます。

 

場の理論では時空点における物理量の密度演算子は局所的場の

1次形式で与えられ,それらが局所的な1点での場の積で与え

られる限り超関数としてしか定義できません。

 

ゆらぎの期待値が無限大になるということは,連続固有値の

1点での固有ベクトルのノルムが無限大になることと無縁

ではありません。

 

ただ,デルタ関数のように,空間の点の関数として見たとき

1点では無限大ですが,総和すると有限というような性格

を持っています。

 

(ただし,2乗して積分すると無限大になるので,

2-空間のベクトルのノルムというような意味では,

有限ではありませんが。。。)

 

もっとも,通常の量子力学の状態空間は可分とされていますが,

 

場の量子論での状態空間(フォック空間)は,そうした連続

スペクトルの物理的状態としての存在をも許していると

いう面もあるように見えるので,その空間は可分でさえない

と思っています。

 

 まあ,ここらへんの量子論の本質的問題を考えることで,ときどき

 夢の中でもうなされることがあります。

 

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2007年9月 7日 (金)

S行列とレッジェ理論(8)

前回の相対論的運動学の続きです。 

 一般反応をa1+a2 → a3+a4とし,粒子a1,a2,a3,a4の質量を,それぞれm1,m2,m3,m4,そして4元運動量を,それぞれp1,p2,-p3,-p4とします。 

 このとき,保存則はp1+p2+p3+p40 となります。

 

 また,運動学の不変式,不変量はp12=m12,p22=m22,p32=m32,p42=m42,およびs=(p1+p2)2(p3+p4)2,t=(p1+p3)2(p2+p4)2,u=(p1+p4)2(p2+p3)2と表現されます。

 

 s,t,uに対する拘束条件は,s+t+u=m12+m22+m32+m42となります。 

こうした反応で,4つの質量m1,m2,m3,m4が全く任意の場合には,物理的領域の境界を見ることは,かなり複雑になります。

 

しかし,先に見たように3つの物理的領域が,ある3次の代数曲線Cの分枝で境界されていることは確かなことです。この曲線Cは近似的には次のとても簡単なルールに従って描くことができます。 

1. 3つの軸s=0,t=0,u= 0 を引く。これらの軸は少なくとも1点でCを切る漸近線である。そして,この3直線で作られる三角形の高さはm12+m22+m32+m42である。 

2. 次の12個の直線を引く。これはs=(m1±m2)2,s=(m3±m4)2,t=(m1±m3)2,t=(m2±m4)2,u(m1±m4)2,u=(m2±m3)212本である。

これらの全てはCの勾配であり,それらが一致しない場合には交叉しない。一致するのは,C自身と∀m≠0 で交叉するときで,2重交点を通ってのみ通過する場合である。 

 各2重交点によって3つの一致するラインのペアが存在する。

3. この曲線は3つの無限分枝と中心blobを有する。最低閾値を持った分枝は,その漸近線やより高い閾値の分枝,第3の分枝を切る。

4. 2つの2重交点があればCは双曲線と直線とに分解される。 

5. 3つの2重交点があればCは3つの直線に分離する。 

6. 2重交点が3つより多い場合,どんな直線も中心blobを含まない。

第1の例として,陽子-中性子散乱を考えて物理的領域を再決定します。ここでも両者の質量差を無視します。

 

このときは,12個の直線は2つずつ一致して,3つの2重交点があります。そして,"5. 3つの2重点があればCは3つの直線に分離する"の通りに,Cは3つの直線s=0,t=0,u=0 に分解されます。

 

以下,陽子-中性子散乱の3つの物理敵領域については,既に考察済みなので割愛します。

第2の例として,π中間子-核子散乱の物理的領域を決定します。

 

π,核子Nのそれぞれの質量をμ,mとし,まずルール通りに高さが,2m22の三角形を描きます。そして,核子を1と3に,πを2と4に取ります。

s=0 に平行な勾配はs=(m±μ)2の2本です。そこで,少なくとも2つの2重交点があります。uの交叉反応は2と4の交換で,u=(m±μ)2の2本も交叉チャンネルと同じです。 

もう1種類の反応は,N+N~→π+π (1+3→2+4)です。これに関する平行勾配はt=0,t=4μ2,t=4m2で2重交点はt=0 上でs=(m+μ)2,u=(m-μ)2,およびs=(m-μ)2,u=(m+μ)2にあります。 

曲線Cは境界直線t=0 を2つの物理的領域の境界に分割し,s=0,u=0 を漸近線とする双曲線であり,各々の分枝はそれぞれ,t=4μ2とt=4m212直線との2重交点を通ります。

 

中心blobというのは,t=4μ2を通る分枝がt=0 を切って,0<t<2の部分です。 

第3の例は,K中間子の3体崩壊K → π+μ+ν~(p1 → p3+p4+p2)です。ただし,強い相互作用ではなく弱い相互作用の例です。

 

しかし,ここでは運動学にのみ興味があり,相互作用の種類という動力学にこだわる理由はありません。

K+μ~ → π+ν~(入射エネルギー√u),K+ν → π+μ(入射エネルギー√s),K+π~ → μ+ν~(入射エネルギー√t)の3つの交叉反応が考えられます。

今度は物理域を与える曲線Cは真の3次曲線です。ただしニュートリノν~の質量はゼロです。

 

K,π,μの質量を同じ記号K,π,μで表わす標的直線は,u=(K±μ)2=π2,u=(π±μ)2=K2,t=(K±π)2=μ2です。 

この場合は,2重交点にタッチするループがあります。

 

これは,Dalitz Plotと呼ばれるループです。

 

こうしたループは1つの粒子が物理的に他の3つに崩壊可能な場合にのみ現れるもので,別にν=0 に起因するものではなく,もっと一般的な運動学に関係しています。

今日はここまでにします。(実は,この具体的計算の部分は直訳して掲載しただけで,私自身,必ずしも内容を全て理解して書いたわけではありません。サラッと流し読みしてください。) 

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

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2007年9月 5日 (水)

S行列とレッジェ理論(7)

前回の続きです。

 

今日は相対論的な散乱理論に入るための準備段階として相対論的運動学,特に散乱のs,t,uチャンネルの定義とそれらの交叉対称性などを中心に述べてゆきたいと思います。

まず,相対論的散乱の運動学を解説するための題材として典型的な2体反応a1+a2 → a1'+a2'の運動学について解析します。

 質量も変わる一般的な場合を考えて粒子a1,a2,a1',a2'の質量を,それぞれ,m1,m2,m1',m2'とします。

 

 そして,これらの粒子は全てスピンゼロと仮定して,反応は完全に運動エネルギーと散乱角のみに依存する散乱振幅で記述されるとします。

 

 ところが,実はこのすぐ後でこの一般的解析で得た知見を具体的な中性子-陽子散乱に適用する予定なのですが,その場合は既にスピンゼロという仮定が成立していません。

 

 しかし,要するに,ここでのスピンゼロという仮定は,それほど厳密な意味ではなく,エネルギー・運動量のみを考察の対象と考えて,スピン変数の効果が問題になるケースまで考えると煩雑なので,取り合えずは考えないでおこう,という程度の意味です。

 さて,これらの粒子a1,a2,a1',a2'の4元運動量を,それぞれp1,p2,p1',p2'とします。

 

 このとき,エネルギー・運動量の保存は,p1+p2=p1'+p2'で与えられます。

 

 この反応を記述するには任意の準拠系を選ぶことができますが,よく用いられるのは,a1 or a2が静止している実験室系か,あるいは質量中心系(重心系)です。

 一般に運動エネルギーや散乱角の値は準拠系の選択に依存します。

 

 そこで相対論的不変性を完全に用いるためには,これまで用いていた運動量遷移や散乱角というような系に依存する変数を,系によらない不変変数に置き換えるのが有用です。

 ではどのようにすれば準拠系の選択に依らない不変変数を定義できるのでしょうか?

 

 まず,p1+p2=p1'+p2'ですから,4つの4元ベクトルp1,p2,p1',p2'のうちで独立なのは3つだけです。したがって,例えばp1,p2,p1'のみを考えれば十分であり,残るp2'は保存則から決まります。

 

 保存則を示す等式p1+p2=p1'+p2'は簡単な幾何学的描像で表現できます。

 

 すなわち,4次元ベクトル空間を想定し,そこでp1に等しくベクトルABを描き,p2に等しくBCを描きます。

 

 そして,AB=p1と始点を一致させて,p1'に等しくADを描けば,上記保存則は,ベクトルDCがp2'に等しくなることを意味します。

 

 任意のローレンツ変換は4次元スカラーである空間の2点の間の4次元距離を常に不変に保つので,そうした変換は上記の4面体ABCDの形を保ったままの移動,すなわち平行移動を除く合同変換に対応しています。

 そして,この4面体は全ての辺の長さの平方を与えれば完全に決定されます。(4面体は6つの辺を持ちます。)

  

 そこで,4つの質量を示す不変式p12=m12,p22=m22,p1'2=m1'2,p2'2=m2'2,および2つのスカラー量s≡AC2(p1+p2)2(p1'+p2')2,t≡BD2(p1-p1')2(p2-p2')2を与えれば完全に決まります。

 質量は明らかに固定された不変量ですから,散乱振幅を示すためのk2cosθに代わる変数としては,準拠系の選択に依存しない独立な不変変数sとtを採用するのは妥当であると思われます。

 また,AD=p1'としてDからDC=p2'を得る代わりに,AD'=p2'としてD'からD'C=p1'を得るという,もう1つの選択で4面体ABCD'を作り,これを基準にして定式化することも可能です。

 

 そして,ABCDとABCD'のどちらを優先すべきという先験的理由はないので,t=BD2の代わりにu≡BD'2(p1-p2')2(p2-p1')2を不変変数として採用しても,この反応を記述する変数として対等な資格を持つはずです。

 しかし,独立な不変量は4つの質量とs,t,uの7つのうち,6つだけなので,uは残りの6つの関数で表わせるはずです。

 

 実際,s+t+u=m12+m22+m1'2+m2'22p1(p1+p2-p1'-p2')=m12+m22+m1'2+m2'2なる拘束条件があります。

 

 以上をまとめます。

 

 準拠系の選択によらないローレンツ不変な変数として,s=(p1+p2)2(p1'+p2')2,t=(p1-p1')2(p2-p2')2,u=(p1-p2')2(p2-p1')2の3つを取ることが可能です。

 

 しかし,これらのうち独立なのは2つだけです。実際,s+t+u=m12+m22+m1'2+m2'2という関係式が成立します。

 これらの変数には,簡単な物理的解釈を与えることができます。

 

 質量中心系では,121'+2'=0 ですから,s=(p1+p2)2(p10+p20)2(p10'+p20')2;p10(12+m12)1/2,20(22+m22)1/2,10'=(1'2+m1'2)1/2,20'=(2'2+m2'2)1/21222,1'22'2です。

 

 それ故,sには入射2粒子,または散乱2粒子の全エネルギーの平方という意味があります。

 次に弾性散乱のケースを仮定して,1=m1',m2=m2'とすれば,質量中心系では,p10=p10',p20=p20'であり,それ故t=-Δ2=-(1'-1)2=-(2'-2)2となります。

 

 なぜなら,t(p1-p1')2 =(10-p10')2(11')2で,かつ10=p10'であるからです。

 さらに,中性子-陽子散乱のように,1とm2が等しいとみなしてよい場合には,質量中心系で,p10=p10'=p20=p20'なので,u≡BD'(p1-p2')2=-(2'-1)2=-(1'-2)2となります。

 

 そこで,tもuも,運動量遷移の平方にマイナス符号を付けたものと解釈されます。

 ここで,しばらくの間,問題としている2体散乱を具体的な中性子-陽子散乱と考え,中性子と陽子の共通質量をmとします。またを入射時の重心運動量,θを散乱角とします。

 

 このケースでは,s=4(k2+m2),t=-2k2(1-cosθ),u=-2k2(1+cosθ)と書けます。

 既に,これまで論じてきた非相対論的ポテンシャル散乱の理論において散乱振幅:F(k22)=f(k2,cosθ)に対する物理的領域はk20,かつ1<cosθ<1 に対応して,2-Δ2平面で 0<Δ24k2,かつ20 なる領域で与えられることを見ました。

 

 今の場合,新変数s,tによるこの同じ物理的領域の表現はs>4m2,かつ-4k2<t<0 となります。そして-4k24m2-sなので,結局s-t平面での物理的領域は4m2-s<t<0 ,かつs>4m2で与えられることがわかります。

 ところでs+t+u=4m2なので,4m2-s<tはu<0 に対応しています。つまり,今の場合の物理的領域はs=4m2,t=0,u=0 の3つの直線で囲まれた三角形の領域:s>4m2,t<0 ,u<0 で与えられることになります。

 次に非相対論のポテンシャル散乱の場合とは異なり,相対論的散乱においては反粒子の存在があります。このことに関連して相対論的な散乱振幅には粒子と反粒子の交換に対してある対称性があります。

 

 これを交叉対称性(crossing symmetry)といいます。

この交叉対称性を説明するために,ディラック(Dirac)の相対論的量子力学で展開されたパウリの排他原理に基づく空孔理論で保証されたフェルミ粒子(Fermion)の反粒子の因果的表現の1つであるスティッケルベルグ表示を採用し,陽子や中性子の反粒子の表示としてはそうした取り扱いをします。

すなわち,物理的な正エネルギーを持つ反粒子を因果的に逆行する負エネルギーを持ち運動量の向きも反対の非物理的な粒子と同一視する描像を採用します。

 

つまり,4元運動量がqの反粒子を4元運動量が-qの粒子であると見なすわけです。

 陽子-中性子散乱の2体反応を陽にp+n → p+nと書きます。

  

 これらの重心系での4元運動量ベクトルを,改めてp1,p2,p1',p2'と書き,対応する散乱振幅をA(p1,p2,p1',p2')とします。

 

 次に,この2体反応:p+n → p+nの左辺(始状態)に運動量がp2'中性子nと運動量が-p2'の仮想的粒子に対応する反中性子n~を加え,一方,右辺(終状態)には運動量がp2中性子nと運動量が-p2の仮想的粒子に対応する反中性子n~を加えます。

 

すると,4体反応の反応式p+n+n+n~ → p+n+n+n~が得られます。

 

そして,これらの操作が実質的に元の反応p+n → p+nには何の影響も及ぼさないと考えます。

 

p+n+n+n~ → p+n+n+n~の両辺で,全く同じ運動量を持つ共通な真ん中の2つの中性子(n+n)を両辺から取り除くと,この4体反応は2体反応:p+n~ → p+n~に帰着します。

   

この2体反応での粒子の4元運動量は順にp1,-p2',p1',-p2となっています。

一方,これとは別に4元運動量ベクトルがそれぞれq1,q2,q1',q2'の一般的な2体反応:p+n~ → p+n~の散乱振幅をA(q1,q2,q1',q2')と定義します。

 

交叉対称性というのは,元の2体反応p+n → p+nから上述の"同値変形"によって得られる2体反応p+n~ → p+n~の散乱振幅が,実質的に元の反応のそれと同じものと見なせるという性質のことです。

 

すなわち,交叉対称性は,散乱振幅に関して等式A(p1,p2,p1',p2')=(p1,-p2',p1',-p2)が成立することと定義されます。

しかし,同値変形で得られた交叉反応p+n~ → p+n~の方の物理的領域は,一般に元の反応p+n → p+nの物理的領域とは異なっています。

 

物理的領域というのは,反応が物理的,つまり現実に可能であるための条件ですが,p+n~ → p+n~では(q1,q2,q1',q2')≡(p1,-p2',p1',-p2)で定義された変数(q1,q2,q1',q2')の満たすべき条件として与えられるはずです。

そして,これを元の反応に対する不変変数s,t,uの満たすべき条件として表わすために,逆に(p1,p2,p1',p2')=(q1,-q2',q1',-q2)と書けば,s=(p1+p2)2(q1-q2')2,t=(p1-p1')2(q1-q1')2,u=(p1-p2')2(q1+q2)2となります。

 

そこで,p+n → p+nのuチャンネルがp+n~ → p+n~のsチャンネルになっていて,sとuが逆転しています。

 それ故,p+n~ → p+n~でのpの質量中心系での運動量遷移をu,散乱角をθuと書けば,u=(p1-p2')2(q1+q2)24(ku2+m2),t=(p1-p1')2(q1-q1')2=-2ku2(1-cosθu),s=-2ku2(1+cosθu)となります。

 

 したがって,p+n → p+nの物理的領域Ⅰ:s>4m2,t<0,u<0 を得たときと同様に考えると,p+n~ → p+n~の物理的領域Ⅱ:u>4m2,t<0,s<0 が得られます。

 そして,s,t,uは不変変数として完全に対称ですから,もう1つtチャネルを中心とした物理的領域も存在して,それは物理的領域Ⅲ:t>4m2,s<0,u<0 で与えられます。

 

 結局,元のp+n → p+nも含め,これと散乱振幅が同じの交叉対称性を持った反応の完全なセットをリストアップすることができます。

 

 これは,p+n → p+n;p+n~ → p+n~;p~+n → p~+n;p~+n~ → p~+n~;p+p~ → n+n~;n+n~ → p+p~の6つの反応です。

 一般の反応では,1つの反応は交叉対称性だけでなく,時間反転対称性も有するので,合計12の異なる反応と連接しています。後者の時間反転とは,例えばπ+p → Λ+KとΛ+K → π+pのような逆反応の関係です。

 

 粒子-反粒子の交換という荷電共役()反応と関わる交叉対称性と同じく,"逆反応=時間反転()"の対称性も同じ物理的領域を持ちますが,これ(詳細釣り合いの原理)については深入りしないことにします。

 そして,以下では交叉対称性によって共通な値となる散乱振幅A=A=Aを1つの共通記号A(s,t,u)で表現することにします。

今日はここまでにします。

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963)

 

ところで思うところあって,2006年5月11日の記事「波動関数の位相と電磁場」を昨日ほぼ1日がかりで大幅に修正というよりも加筆しました。

 

まあ,この部分は私自身が最も専門としているQEDの量子異常(アノマリー)に関わるもので,今回は具体的にくりこみを行う手順を明示して,結果として量子異常項が得られるところまで言及しておきました。

 

ただし,肝心のその昔参考にした論文が部屋の中にあるはずですがどこにあるのか不明なので,まだ参考文献を明記していません。

   

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2007年9月 2日 (日)

最近の私の心境

 最近,ちょっと体調というか精神状態が何か変なのです。

 パソコン依存症とでもいうのでしょうか?

 ときには特に休日など新規のブログ記事を書いたり,過去のブログ記事の体裁を整える修正などに10時間近くも時間を取られて寝食を忘れることさえあります。

 まるでブログに追われてせかされているような精神状態になったりします。

 というわけでちょっと頭がおかしくなっています。

 心臓手術後5ヶ月近くも経っていて,もう心配ないとはいえ,病み上がりなので酒やタバコは控えるべきなのに,どうしてもアルコールに依存してしまうことも多いです。

 私の場合自宅で飲むわけではなくお店に一人で行きハシゴします。お酒というより人恋しいのでしょうね。

 そういえば金曜日の夜に巣鴨の花曜日というスナックで隣に座った人はコロナ社という出版社の人でした。

 コロナ社とかオーム社とかいうのは理科系専門,それも受験参考書じゃなくて本格的な専門書を扱う出版社なので普通の人はコロナ社といってもまず縁がないのですが,私は応用数学講座の本など数冊持っていて,ある意味でお世話になっているという感じだったので初めて会った人ですが何か親しみを感じました。

 物理学関係の話でも夜中にうなされて急にすごい誇大妄想的アイデアが浮かんで目が覚めるというようなこともチョクチョクあります。

 最近,零点エネルギーとくりこみ,あるいは不確定性原理と局所場,非局所場,そして超関数などに関わるアイデアが何とはなしに頭をかけめぐっています。

 まあ,精神がおかしいのと関係あるかもしれませんが,そのうち消えるアイデアとは思います。

 ときどき,無駄に長生きしてもしょうがない,などとと考えますけど自殺するほどの勇気はありません。

 どうせ死ぬなら将来のあるどこかの可愛い子供の盾になってこの無駄なオヤジの命でも何かの役に立てたいという感じですかね。

 まあ,すこしうつ病気味なのかもしれないので精神的にリラックスして元気を出したいと思います。

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2007年9月 1日 (土)

S行列とレッジェ理論(6)

前回の続きです。具体的な形のポテンシャルに対するレッジェ極を調べます。 

まず,ポテンシャルとしてクーロンポテンシャルV(r)=Z122/rを考え,既に正確に解かれているこの問題について考察します。

 

上記のクーロンポテンシャルV(r)による散乱の散乱振幅の角運動量lの部分波に対する位相のずれδl(k2)は,exp{2iδl(k2)}=S(l,k2)=1+2ikal(k2)=[Γ(l+1+iγ)/Γ(l+1-iγ)]で与えられることがわかっています。

 

ここにΓはオイラーのガンマ関数で,γ≡-λ/k;λ≡-(Z122/hc2)です。ただしc≡h/(2π);hはプランク定数です。 

特に,引力の場合,すなわちZ120 でλ>0 の場合を考えます。

 

ガンマ関数Γ(z)はゼロと負の整数に1位の極を持ちますから,l(k2)の極の位置はl+1-iγ=-nr(nr0,1,2,..)によって与えられます。

 

このことから,l=-1-nri(λ/k)がレッジェ極の軌跡:l=α(k2)を表わすl-k2曲線であることがわかります。

 

そして,k=iλ/(l+1+nr)により,k2=-λ2/(l+1+nr)2=-λ2/n20;n≡nr+l+1 (nr0,1,2,..)と書けます。

 

これらは,水素様原子の束縛状態のエネルギー準位:En=hc22/(2m)=-hc2λ2/(2mn2)=-Z1222me4/(2n2c2)に,丁度対応しています。 

※(注)非相対論的なクーロンポテンシャル:V(r)=Z122/r=(hc2kγ/m)/rによる散乱(古典的にはラザフォード散乱,あるいは相対論的扱いをすればモット散乱)を記述する正確な波動関数解φCoul()は,φCoul()=exp(ikz)F(-iγ,1;ik(r-z))で与えられます。

 

 ただしF(a,b;x)は合流型超幾何関数です。

 

 そこで,これのr→∞ での漸近形はφCoul()~ exp(ikz+iγlnk(r-z)[1-γ2/{ik(r-z)}+..]+f(k2,cosθ)exp[ikr-iγln(2kr)]/r;f(k2,cosθ)=exp[-iγln{sin2(θ/2)}Γ(1+iγ)]/{2iksin2(θ/2)Γ(-iγ)}となることがわかります。

したがって,非相対論でのクーロン散乱の微分断面積として,dσ/dΩ=|f(k2,cosθ)|2|Γ(1+iγ)]/Γ(-iγ)|2/{4k2sin4(θ/2)}=Z12224/{16E2sin4(θ/2)}なる表式が得られます。

クーロンポテンシャルは湯川ポテンシャルのμ=0 のケースであり,有効レンジ1/μが∞ の特別な場合ですが,ポテンシャルがr→ ∞ で指数的に急減少するという条件を満たしていません。

 

その結果,散乱解には対数的歪みがあって,通常の散乱境界条件を満たしていませんが.対数的歪みはr→ ∞では他の項と比較して消えるので,これまで通りの解析の適用可能範囲内にぎりぎりで入っています。

ところで,一般に散乱境界条件が満たされる場合の散乱振幅はf(k2,cosθ)=∑l=0(2l+1)al(k2)Pl(cosθ);al(k2)≡{exp(iδl)sinδl}/k,al(k2)=[exp{2iδl(k2)}-1]/(2ik)={S(l,k2)-1}/(2ik)と展開されます。

 

クーロン散乱の場合には上に示した正確な解によって,この展開はf(k2,cosθ)={1/(2ik)}∑l=0[(2l+1)Γ(l+1+iγ)/Γ(l+1-iγ)]Pl(cosθ)となることがわかります。

 

しかも,∑l=0l(cosθ)=0 ですから,S(l,k2)=[Γ(l+1+iγ)/Γ(l+1-iγ)]なる表式が得られます。(注終わり)※

クーロンポテンシャルは無限個の束縛状態を持ち,そのためレッジェ極は∞まで続いていますが,これは特異過ぎて強い相互作用にとってあまり現実的ではありません。しかし,他に正確に解ける例がないので,ここで例示したわけです。

より現実的な湯川型のポテンシャルに対するレッジェ極の挙動を調べるには通常は数値計算に頼る他ありません。

 

これらの数値計算例としては,Ahmadzadeh,Burke,Tateらによるものがありますが,これらの結果紹介については省略します。

さて,レッジェ極の符号概念を導入するため,交換力が存在する場合に言及します。

 

既に見たように,散乱振幅F(k22)は異なる有効ポテンシャルV+とV-に対する解に対応して,それを偶部分F+と奇部分-に分割することによって得られます。

 

すなわち,F(k22)={F+(k22)+F+(k2,4k2-Δ2)+F-(k22)-F-(k2,4k2-Δ2)}/2,あるいはf(k2,cosθ)={f+(k2,cosθ)+f+(k2,-cosθ)+f-(k2,cosθ)-f-(k2,-cosθ)}/2 です。

そして,F+とF-のレッジェ極は一般に完全に異なるものです。そこで,ゾンマーフェルト・ワトソン変換の結果は次のようになります。

すなわち,f(k2,cosθ)=(i/4)∫-1/2-i∞-1/2+i∞dl{(2l+1)/sin(πl)}[al+(k2){Pl(-cosθ)+Pl(cosθ)}+al-(k2){Pl(-cosθ)-Pl(cosθ)}]+(1/2)∑jj+(k2){Pαj+(k2)(-cosθ)+Pαj+(k2)(cosθ)/sin{παj+(2)}(1/2)∑jj-(k2){Pαj-(k2)(-cosθ)-Pαj-(k2)(cosθ)/sin{παj-(k2)}]]です。

 

ただし,βj±(2)≡{(2αj±(2)1)}Res{l±(k2)}|l=αj±(k2)でRes()は()の中の関数の留数をです。

ところが,l=α+(2)が奇数を通るとき,そこでsin(πl)=sin{πα+(2)}は消えますが,同時に{Pl(-cosθ)+Pl(cosθ)}も消えます。

 

同じように,l=α-(2)が偶数を通るとき,そこでsin(πl)=sin{πα-(2)}は消えますが,同時に{Pl(-cosθ)-Pl(cosθ)}も消えます。

 

そこで,こうした極は存在しても,そこでは分子も分母もゼロで共に1位の零点なので相殺して振幅は正則になるため,これらは見かけの特異点で実質的には散乱振幅の極ではありません。

そこで,α+(2)の物理的領域は偶数のみ,α-(2)の物理的領域は奇数のみであると考えられます。そしてα±(2)の上添字±をレッジェ極の符号と呼びます。 

話を元に戻して,ゾンマーフェルト・ワトソンの公式:F(k22)=f(k2,cosθ)=(i/2)∫-1/2-i∞-1/2+i∞[(2l+1)al(k2)Pl(-cosθ)/sin(πl)]dl+∑jj(k2)Pαj(k2)(-cosθ)/sin{παj(2)}]が成立すること,

 

および,極α(2)}の近傍ではβ(k2)Pα(k2)(-cosθ)/sin{πα(2)}~β(kl2)Pl(cosθ)/[π(∂α/∂2)k2=kl2(2-kl2)]+(正則関数)と近似できることに着目します。

 

これから,非物理的領域での大きいcosθ=1-Δ2/(2k2),つまり固定したkに対してΔ2の大きい値に対する散乱振幅F(k22)の漸近的な挙動がわかります。

ルジャンドル関数Pν(z)=F(ν+1,-ν,1-z)の形を調べると,これはReν=-1/2のときには,|Pν(z)|~|Γ(-2ν-1)/[2ν{Γ(-ν)}2]+Γ(2ν+1)/[2ν{Γ(ν+1)}2]||z|-1/2と近似できます。

 

そこで,ゾンマーフェルト・ワトソンの公式の右辺第1項のRel=-1/2上での積分項は,|z|→ ∞ では消えます。

 

一方,Reν>0 の場合,|z|→∞ でるジャンドル関数の漸近形はPν(z)~ Γ(2ν+1)zν/[2ν{Γ(ν+1)}2]となります。 

そして,複素数角運動量lに対し,|cosθl|=|cosθ|Relexp{-ang(cosθ)Iml}ですが,もしも複素cosθ平面のある方向で,cosθ→ ∞ とするなら,cosθの偏角:ang(cosθ)は固定されており,|cosθl|の漸近的挙動は本質的には|cosθ|Relにのみ依存します。

 

そこで,|cosθ|→ ∞,つまり|Δ2|→ ∞ での散乱振幅F(k22)では,最大の実部Relを有するレッジェ極l=α(k2)に対応する項の寄与が支配的になります。

したがって,Re{α(k2)}が最大のレッジェ極が存在する場合には,それをα1(k2)と書いて散乱振幅の極における留数などの比例定数を無視すると,|cosθ|→∞ (|Δ2|→ ∞)では散乱振幅の漸近的な形式として,f(k2,cosθ)~(cosθ)α1(k2),または(k22)~(Δ2)α1(k2)が得られます。 

この結果を評価する際には2つの注意が必要です。

 

第1には,これをΔ2が負で絶対値が大きいときの挙動と考えたときには,既に論じたように振幅F(k22)はΔ20 の領域に非常に多くの特異点を持ちますから,上の結果は,そうした無数の特異点があっても結局Δ2→-∞では滑らかな挙動になるということを示しています。

 

これはとても奇妙に感じられることです。

第2には,上記の結果は非相対論的ポテンシャル散乱に関する限り,あまり興味深い事実であるとは言えず,相対論的S行列の問題を扱うときにのみ,これの十分な意味と物理的な示唆を受けるということです。

 

これは,Δ2の大きい値は非相対論的ポテンシャル散乱では物理的領域からはるかに離れていて,そうした領域での挙動に意味がなさそうに思えるのに対し,後に見るように,相対論での扱いでは,これが物理的領域と無関係ではないと考えられる側面があるからです。 

今日はこのくらいにします。 

参考文献:R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」W.A.Benjamin,Inc,New York(1963),猪木慶治,川合 光 著「量子力学Ⅰ,Ⅱ」(講談社),岩波講座「現代物理学の基礎(第2版)3:量子力学Ⅰ」(岩波書店)

 

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