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2007年9月18日 (火)

S行列とレッジェ理論(11)

 前記事の続きです。

 

不変散乱振幅A(s,t,u)において,u=4m2-s-tなので,

(s,t)≡A(s,t, 4m2-s-t)と置き,sを固定してAを

tの複素関数と考えると,複素t平面での物理的領域は,実数t

に関しては,4m2-s<t<0 です。

 

そこで,複素t平面で実軸上の左右の切断:(-∞,-4μ24m2-s),

(4μ2,∞)を避けて,無限遠を反時計回りにまわる閉じた経路で,

途中2つの極t=μ2とu=4m2-s-t=μ2:

t=μ2とt=-μ2(s-4m2)を時計回りにまわるものをCとして,

Cauchyの公式を用います。

 

すると,不変振幅は,

A(s,t)={1/(2πi)}∫Cdt'{A(s,t')/(t'-t)}

と表現できます。

 

 ただし,A(s,t)はt→ ∞ で十分急激にゼロになると仮定します。

 

 こう仮定すれば複素t平面上の無限大半径の円周上での積分部分の

 右辺への寄与は無視できます。

 

 そして,A(s,t)の極:t=μ2とu=4m2-s-t=μ2の留数の

 右辺の積分への寄与は,単にg2/(t-μ2)とg2/(u-μ2)です。

 

 また,積分への右切断からの寄与は,{1/(2πi)}

 ×∫4μ2dt'[{A(s,t'+iε)-A(s,t'-iε)}/(t'-t)]

 です。

 

 そこで,tの切断の上での不連続性を,

 t(s,t)≡{A(s,t+iε)-A(s,t-iε)}/(2i)

 で定義すれば,

 

 この切断の寄与は,

 (1/π)∫4μ2dt'{t(s,t')/(t'-t)} と書けます。

 

 そして左切断からの寄与は,tをuに置き換えるだけで全く同様に

 与えられます。

 

 それ故,結局,A(s,t,u)=A(s,t)

 ={g2/(t-μ2)}+{g2/(u-μ2)}

 +(1/π)∫4μ2dt'{t(s,t')/(t'-t)}

 +(1/π)∫4μ2du'{Au(s,u')/(u'-u)}

 と書くことができます。

 

 こうした積分表示は,最初,S.Mandelstam(マンデルスターム,or

 マンデルシュターム)によって得られたので,Mandelstam表示

 呼ばれます。

 

 これによると,極からの寄与は非相対論での湯川ポテンシャルからの

 第一Born近似に類似していることがわかります。

 

 また,新しい特徴は切断の寄与が不連続性At(s,t')と,Au(s,u')

 比例していて,その寄与はt',またはu'の最小値において最大に

 なると考えられることです。

 

 A(s,t,u)とπ-π散乱振幅の関係を調べることで,不連続性At

 陽に表現することは可能ですが,この方面での理論展開は,G.F.Chew

 らの著書に詳述されており,それらは我々の主題ではないので,こう

 した理論の詳細には入りません。

 

 A(s,t,u)={g2/(t-μ2)}+{g2/(u-μ2)}

 +(1/π)∫4μ2dt'{At(s,t')/(t'-t)}

 +(1/π)∫4μ2du'{u(s,u')/(u'-u)}

 なる表示の興味深い応用としては,

 

 例えば,この表現からρ中間子のような不安定粒子の交換が

 N-N散乱振幅にどのように寄与するかを見ることができる

 ことです。

 

 ρ中間子は質量が5.5μ程度の2つのπの共鳴であることを思い起

 こすと,仮にρがπと同程度に安定な粒子であると想定した場合は,

 それの核子による粒子交換の効果はπ中間子の交換と同じく,

 A(s,t,u)の1つの極を与えるはずです。

 

 そこで,振幅の積分表示にとって,gNNρ2/(t-mρ2)なる寄与をす

 ると予測されます。

 

 しかし,実際にはρは安定ではなく単に不安定な共鳴であるため,

 その質量mρは明確には定義できず,振幅はρがやがて分解する2

 つのπに対して,質量がmの共鳴状態が見出される確率をσ(m2)

 として,これを重みとする質量スペクトルで表現されると思われ

 ます。

 

そして,σ(m2)は共鳴粒子の安定性を示す確率ですから,

Breit-Wigner関数で与えられると考えられます。

 

そこで,現実のρの寄与は,gNNρ2/(t-mρ2)ではなく,

∫dm2(m2)gNNρ2(m2)/(t-m2)}のような形になる

はずです。

 

 実際,A(s,t,u)への2つのπの交換の場合の寄与は,先の

 G.F.Chewらの著書によれば,不連続性At(s,t')の寄与として

 上述の質量スペクトルσ(m2)による形に非常に近いことがわか

 っています。

 

 すなわち,At(s,t')~πσ(t')gNNρ2(t')であり,それ故,dt'

 積分によって確かに∫dm2(m2)gNNρ2(m2)/(t-m2)}なる表現

 に一致します。

 

 次に,こうした不変散乱振幅の積分による表示式の解釈をπ-N散乱に

 適用します。

 

-N散乱では,s-チャンネルでの主要な1次の中間状態はπの

1粒子状態であり,それに双対なグラフは丁度それぞれuチャンネル

とt-チャンネルでのπの交換になり,散乱振幅における1粒子の極

が得られました。

 

これに対して,π-N散乱(π+N→π+N)でのs-チャンネルのグラ

フでは,中間状態はNの1粒子状態です。

 

そして,変数sについてはs=(m+μ)2に始まる弾性切断

s=(m+2μ)2に始まる2π-Nチャンネルの非弾性切断があり

ます。

 

この場合,u-チャンネルでの"交叉反応=双対"も同じになるので,

uの特異性はsのそれと全く同じです。

 

そして,π-N散乱の頂点はN-N散乱と同じなので,反応に伴う対称

性から,極があればその留数はN-N散乱と同じ値g2になります。

 

 一方,t-チャンネルでの交叉反応はN+N~→π+π~ですから,

 強い相互作用での量子数の保存則から,これの中間状態は角運動量

 がゼロ,パリティが偶であることが要求されます。

 

 これに相当するtでの1粒子の中間状態(sでの1粒子の交換)は

 存在しないため,t-チャンネルには1粒子の極は存在しないとい

 えます。

 

 しかし,"sでの2つのπの交換=tでの2-πの中間状態"のチャン

 ネルは存在可能ですから,tの特異性としてt=(2μ)22に始

 まる切断があります。

 

 ところが,強い相互作用で成立すべき,Isotopic-spin(荷電スピン:

 アイソスピン)の保存が成立しないので,3-πに対応する切断はあり

 ません。

 

 次に相対論的特徴を見るため,高エネルギー領域での振幅の性質を

 考察します。

 

 高エネルギーでの最も決定的な事実の1つは,エネルギーが増加す

 るにつれて開いていくチャンネルの数です。

 

 最初に非弾性反応の弾性反応への影響に着目します。

 

 このため,sチャンネルでの表示から,不変振幅が,

 A(s,t)=s1/2(k2,cosθ)

 =s1/2Σl=0(2l+1)al(s)Pl(cosθ)と部分波展開表現できる

 ことを利用します。

 

 既に以前の記事で見たように,al(s)は部分波散乱振幅であり,

 部分波ごとの入射波に対する散乱波の比は,位相のずれδl(s)

 を用いて,exp{2iδl(s)}=Sl(s)=1+2ikal(s)なる表現

 で与えられることを知っています。

 

 そして,このように定義された位相のずれ:δl(s)は非弾性散乱では

 実数ではないと考えてよいので,

 一般に,|exp{2iδl(s)}|=|1+2ikal(s)|<1です。

 

 しかし,散乱のうち弾性散乱部分の微分断面積dσel/dΩは,

 依然としてdσel/dΩ=|f(k2,cosθ)|2|A(s,t)|2/s

 なる式で与えられます。

 

そこで,弾性散乱の総断面積σelはLegendre多項式の直交性により,

σel(4π)Σl=0(2l+1)|al(s)|2と表わすことができます。

 

 他方,非弾性散乱の断面積の部分波成分は,明らかに,

 {1-|1+2ikal(s)|2}に比例するはずです。

 

 実際,散乱に関する他の典型的なテキストを参照することにより,

 非弾性散乱の総断面積は,

 σinel(π/k2l=0(2l+1){1-|1+2ikal(s)|2}

 となることがわかります。

 

 したがって,全断面積は,σtot=σel+σinel

 (4π/k)Σl=0(2l+1)Im{al(s)}

 なる表式で与えられます。

 

 一方,"散乱角θがゼロの散乱振幅=前方散乱振幅"は,明らかに

 A(s,0)=s1/2Σl=0(2l+1)al(s) と書けます。

 

 これと,σtot=σel+σinel(4π/k)Σl=0(2l+1)Im{al(s)}

 を比較すると,ImA(s,t)|t=0=ks1/2σtot/(4π)が得られます。

 

 これは,Imf(k2,cosθ=1)=kσtot/(4π)と書けば,よく知られた

 "光学定理(Optical Theorem)=Bohr-Peierl-Placzokの関係式"

そのものです。

 

 ところで,p-p,p-p~,π-p,K±-pのような陽子と陽子,

 あるいは陽子と他の素粒子との散乱に対する実際の実験から,

 種々の散乱の全断面積や微分断面積の精密な測定結果が得られ

 ています。

 

 これら2つの量を比較するとA(s,0)の虚部と実部の両方を決める

 ことができます。

 

 実際,虚部ImA(s,0)は光学定理:ImA(s,0)=ks1/2σtot/(4π)

 により,全断面積σtotがわかればわかります。

 

 一方,(dσel/dΩ)|θ=0|A(s,0)|2/s

 =[{ReA(s,0)}2{ImA(s,0)}2]/sなので,

 微分断面積(dσel/dΩ)|θ=0がわかれば,実部 ReA(s,0)も

 わかります。

 

 上述の実験結果によれば,エネルギーsの増加と共にImA(s,0)は

 増加し,比 ReA(s,0)/ImA(s,0)は限りなくゼロに近づくことが

 わかっています。

 

 後者は,ReA(s,0)/ImA(s,0)

 =(4π)[Σl=0(2l+1)Re{al(s)}]/(kσtot)→ 0 as s→ ∞

 と表現できます。

 

 この結果は,s→ ∞のとき,各部分波の振幅al(s)の実部の虚部に

 対する比がゼロに近づくことを示唆しています。

 

 振幅のこの性質は,いわゆる光学模型によって理解可能です。

 

 例えばπ-N散乱なら有限な広がり(半径)Rを持つ核子Nを標的に

 してπがzの向きに高速で,つまり非常に大きい運動量で衝突す

 ると想定します。

 

 のzに垂直な成分の不確定性Δpx,Δpyは入射運動量に関係

 なく小さくできます。

 

 そしてp>>R-1である限り,x,y座標の不確定性は,

 Δx<<R,Δy<<Rで与えられます。

 

 これは波長がRと比較して十分小さいことを意味しています。

 

 そこで核子の"中心からπ-中間子の飛跡までの距離=衝突径数

 "b=(x2+y2)1/2は運動量が十分大きいときには"well-defined"

 であることがわかります。

 

 核子の拡がり半径がRなので,bがRより大きいときにはπはNと

 相互作用しません。

 これはπの軌道角運動量lがpbに等しいことに着目すれば,

 部分波振幅によって表現できます。

 

 すなわち,l>pRならal0 と解釈します。

 

 しかし,b<Rではπは標的を打ち,幾つかの可能なチャンネルが

 開きます。

 

 こうした高エネルギーでは非弾性衝突があるため,こうしたlの

 部分波は|1+2ikal(s)|<1 を満たします。

 

 極端な場合には,{1+2ikal}がゼロになり,

 σinel(π/k2l=0(2l+1){1-|1+2ikal|]

 ~ (π/k2l=0l=pR(2l+1)となって,弾性散乱断面積の

 最大値が実現されます。

 

 この場合は光学の言葉で核子は黒い,つまり黒体であるといいます。

 

 逆に|1+2ikal|=1のときには核子は透明であるといい,中間的な

 場合には核子は灰色であるといいます。

 

 そして,黒い核子の場合,l≦pRなるlについてはal=i/(2k),

 つまりalは純虚数であり,そこで散乱振幅A(s,t)も純虚数です。

 

 この場合,σinel(π/k2l=0l=pR(2l+1)=(π/p2)(pR)2

 =πR2tot(4π/k)Σl=0(2l+1)Imal

 =(2π/k2l=0l=pR(2l+1)=2πR2となります。

 

 したがって,全断面積が非弾性のそれの2倍ですから,弾性散乱の

 断面積と非弾性散乱の断面積が等しいことになります。

 

 この結果は,古典光学でよく知られていて黒い球体の半径が光の

 波長よりもはるかに大きくて完全吸収するときの,Babinetの原理

 による帰結ですが,球体は吸収するのと同じくらい多くの光を回折

 散乱します。

 

 このようにして,Sl=1+2ikal=0 でも起こる弾性散乱を影散乱

 と呼びます。

 

 この黒い核子の模型が光学模型であり,先の強い相互作用の実験結果

 から得られた高エネルギーでの散乱振幅の傾向:

   

 ReA(s,0)/ImA(s,0)

 =(4π)[Σl=0(2l+1)Re{al(s)}]/(kσtot)→ 0 as s→ ∞

  

 は,このモデルでうまく説明できます。

 

 こういうわけで,散乱振幅がこうした傾向を持つ散乱は回折散乱

 と呼ばれています。

 

 これらの散乱の特徴としては,全ての弾性散乱が小角度θ~(pR)-1

 の内部に閉じ込められるため,散乱振幅の角度分布曲線が前方散乱

 (θ~ 0)の部分に,回折ピークと呼ばれる散乱振幅の鋭いピークを

 持つことが挙げられます

 

 つまり,吸収されて観測されない非弾性散乱はl<(pR)でのみ生じ,

 弾性散乱(影散乱)はl>(pR)でのみ生じますが,不確定性;

 lθ~ h=1 により,散乱振幅が観測される軌道角運動量

 l>(pR)は角度θ<(pR)-1に対応するわけです。

 

振幅(s,t,u)の高エネルギーでの挙動は,以前に述べた,

"(s,t,u)はs,t,uの解析関数であって,その特異性は

各チャンネルでの中間状態の粒子のエネルギーの閾値に依存する,

というルールで決まる極と切断のみである。"というMandelstamの

仮説よって,どのような制限を受けるのでしょうか?

 

これを明確にするため,再びπ-N散乱を考察します。

 

 Mandelstam仮説は本質的に運動量遷移の切断の位置を固定します。

 

π-N散乱では,切断はt=4μ2から始まります。

 

 そしてこの仮定は与えられたチャンネルでの散乱が,有効レンジ

 が(2μ)-1よりも小さい湯川ポテンシャルの重ね合わせから生じる

 ものと同じである,ことを述べています。

 

 この条件から決まるポテンシャルは一般には複素数であり,

 複雑でエネルギーに依存すると考えられますが,有限なレンジを

 持つという性質は非常に高いエネルギー領域においてさえ保持さ

 れます。

 

 ここで,簡単のために散乱の相互作用ポテンシャルとして,完全な

 湯川ポテンシャルの重ね合わせの代わりに,単一の湯川ポテンシャル

 V(r)=gK2exp(-Kr/r)を想定します。

 

 ただし,gK2はsの複素関数であるとし,Kも定数ではなくエネルギー

 と共に変動して下にK=2なる境界があるとします。

 

 つまり,K>2とします。

 

 高エネルギーでも,衝突径数bには十分意味があると考えられます。

 

 また,をπ中間子の運動量,Eをそのエネルギーとすれば,πの質

 量は無視できるので2=E-Vと書けます。

 

 Vは複素数なので,も虚部を持ち,それ故,πの波動関数:

 ψ~ exp(ipx)は,吸収による減衰を示します。

 

 これは,πから見た総ポテンシャルによって定義される総吸収を

 表現するものです。

 

 ここで,πから見た総ポテンシャルとは,U(b)≡∫-∞(r)dz;

 z2+b2=r2によって定義される量のことを意味します。

 

 かくして,|U(b)|<<1なら,πは相互作用をしないし,

 逆に|U(b)|>>1なら十分な相互作用があることになります。

 

 U(b)は,gK2(s)exp(-Kb)程度の大きさの量ですから,U(b)

 がb=Rで1に等しくなるように標的の半径Rを定義すると,

 これは|gK2(s)|exp(-KR)=1,またはR=(1/K)log|gK2(s)|

 を意味します。

 

 一方,光学模型によれば,このポテンシャルによる散乱の全断面積

 σtotはπR2のオーダーです。

 

 そこで散乱の全断面積の可能な値を決めるためには,gK2(s)の挙動,

 すなわちsが大きいときの運動量遷移tの切断の上での散乱振幅の

 不連続性Atの可能な挙動を知る必要があります。

 

 なぜなら,gK2(s)は不連続性Atの切断全体での平均だからです。

 

 通常,全振幅A(s,t,u),あるいは不連続性At(s,t)はs→∞

 のときに,sのある固定ベキ:sよりも急激には増加しない,

 と仮定されています。

 

 この仮定は,後述するような分散関係が成立するために必要とされる

 仮定です。

 

 そして,これが成立するならlog|gK2(s)|は,高々,nlogsの

 オーダーの量ですから,R~(n/K)logsでありσtot~πR2

 によってσtot ~ (定数)×(logs)2と見積もることができます。

 

 そこで,Mandelstamの仮説,および,s→ ∞のとき,At(s,t)が

 sより急激には増加しないという仮定は,散乱断面積の漸近的挙動

 に強い制限を与えます。

 

 これは,散乱の総断面積は入射粒子のエネルギーsの対数の平方より

 急激には増加できないという制限:σtot~ (定数)×(logs)2です。

 

これから,光学定理ImA(s,0)=ks1/2σtot/(4π)を使用して,

ReA(s,0)が常にImA(s,0)より小さいとすれば,s→ ∞のとき,

前方散乱振幅A(s,0)が次のような挙動をすることがわかります。

 

すなわち,A(s,0)~(定数)×s(logs)2です。

 

 この最終形式は,理論に厳密な無矛盾性の要求を突きつけます。

 

 t-チャンネルには1より大きい角運動量l,例えばl=2の束縛

 状態が存在すると考えられます。

 

 そして,Mをこの状態の質量とします。

 

 あらゆる散乱粒子は同じ質量μを持つとすれば,

 A(s,t)={G22(cosθt)/(t-M2)}+(正則項)であり,

 cosθt1+{2s/(t-4μ2)}です。

 

 そして,P2(x)=(3x21)/2ですから,s→ ∞ のとき右辺で

 極を与える項は,(6G22)/{(t-M2)(t-4μ2)2}となります。

 

 そこで,A(s,t)はtがM2に十分近くて,この極の周辺項が

 支配的なとき,s2に比例して増大します。

 

 したがって,s-チャンネルとt-チャンネルの物理的領域が共存

 できて,そこで接続されると想定できる境界領域で,先の漸近的な

 挙動:A(s,0) ~ (定数)×s(logs)2と,たった今,求めた挙動:

 A(s,t)~(6G22)/{(t-M2)(t-4μ2)2}が一致することが

 要求されます。

 

 そして,この無矛盾性の要求が満たされるためには,A(s,t)への

 極の項の寄与と,t切断の寄与との間にある種の相殺が生じる必要

 があります。

 

 そして後述するように,レッジェ極(Regge poles)の仮定はこの相殺

 を自動的に与えることがわかります。

 

 これは,理論的立場から見たRegge極の際立った特徴です。

 

 とりあえず今日はここまでにします。

 

(参考文献):

R.omnes,M.Froissart「Mandelstam Theory and Regge Poles」

W.A.Benjamin,Inc,New York(1963),

砂川重信「散乱の量子論」(岩波書店)

 

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