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2007年11月23日 (金)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(4)

 続きです。今日もまだ終わらず,さらに続きます。

平行移動の変換(t)=(0)Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}を(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}なるより簡明な形に書き換えます。

  

ここで,曲線:x(t)は底空間の上でx0=x(0)からx=x(t)まで動く点の軌跡を示しています。

(x)∈Gに対して,群Gの作用は右側に掛かるとして扱ってきていますから,これに座標xに依存しないGの元∈Gを作用させると,(x)(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}です。

 

ここで,この変換に対してAμ(x)がA'μ(x)に変換されるとするとA'μ(x)=-1μ(x)です。

よって,Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}=Pexp{-i∫C-1μ(x)dxμ}Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}です。

 

それ故,両辺の左から(x0)を掛けると,(x)(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}となります。

  

つまり(x)={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}です。

既に,Aμに基づく平行移動を与える微分方程式:(dij/dt)=-iAμ,kjik(dxμ/dt),すなわちd/dt=-i(μ)(dxμ/dt)が解(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}を与えることを見ました。

 

そこで,(x)={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}の等式の右辺は(x0)をA'μに基づいて曲線に沿って平行移動したものを表わすと考えられます。つまり,(x0)にを作用させた後に平行移動したものです。

一方,左辺(x)(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}によって(x0)を曲線に沿って(x)まで平行移動した後にを作用させたものです。

 

Gの任意の元の作用は垂直方向への移動を表わすので,AμとA'μの違いはあるものの,以上のことから"平行移動作用とGの元による垂直移動の作用は可換である"と言えます。

この可換性は次のようにも読めます。

 

"μとA'μは本質的には同一のものでありexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}=Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}の右辺右端に掛かっているを指数関数のP積を通って左側に移動させていくと,左辺のようにAμをA'μに変えながら進んでゆき,最後に左端に到達する"

 

という見方もできます。

つまり,始点x0でのxに依らない垂直移動(x0)に別の垂直移動を作用させて移動した後,平行移動して(x)に対応する点に到達した結果と,曲線全体を(x)で平行移動した後,その曲線^全体に垂直移動を作用させて移動した結果,が同じということを意味します。

主ファイバー束Pの底空間Mの上で曲線が閉じていても,Pの中で(x)に従って平行移動した曲線^が閉じているとは限りません。

曲線上の始点x0に対応する曲線^上のファイバー座標を0とし, 始点と同じx0に対応する終点の座標を1と書くと10exp{-i∫Cμ(x)dxμ}となります。

 

が閉曲線の場合でも,一般にはAμ(x)が非回転的:∫Cμ(x)dxμ≠0 なので,Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}=1(単位元)とはならないため,10となり曲線^は閉曲線ではないのです。

そして,こうして曲線によって一般には0と異なる10に関係付ける上の表現を10()と書くことにします。

 

このとき,H()≡Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}は群Gのある要素Cと同一視できて10Cとも書けることがわかります。

 

実際には,H()はのみの関数ではなく,同じ曲線に対してPexp{-i∫C'μ(x)dxμ}も曲線に関する平行移動ですが,ここではAμとA'μは本質的には同一のものであると同一視しています。

一方,曲線と同じくx0を始点かつ終点とする別の閉曲線'を考えて1'に沿って平行移動した終点を2と書けば21(')と書けます。

 

故に,2{0()}H(')=0(')=0C'Cとなります。ここでH(')はの次に'に沿って動く二重閉曲線'に沿っての平行移動を表わしています。

一方,AμとA'μの同一視によって,群Gの作用と平行移動は完全に可換とみなせるなので,2(0C)H(')={0(')}C(0C')C0(C'C)です。したがって,C'CC'Cです。

 

また,閉曲線の逆向きの閉曲線を-1と書けば,C-1(C)-1ですから逆元も存在します。

 

よって,0を始点かつ終点とする閉曲線全体に対するCの集合:{C}は1つの群(Gの部分群)を成すことがわかります。この群をx0を基点とするホロノミー(holonomy)群と呼びます。

次に,具体的に波動関数ψ(x)の平行移動について考察してみます。

例えばψがクォーク場で構造群GがカラーSU(3)群であるとすると,ψはSU(3)の3次元基本表現に従います。つまり,このときにはψは3次元複素ベクトル空間で与えられる表現空間の要素です。

ここで,一般にベクトル空間Fの上での群Gの表現:ρを考えます。波動関数ψはGのこの表現ρに従うとします。

 

すなわち,関数としてのψ全体はベクトル束(E,π,F,ρ(G),M)の切断面であるとします。ファイバーFはGの表現空間なのでρ(G)はFからFへの同型写像を与えるものです。

このベクトル束と深い関係を持つ主ファイバー束は(P,π,;,G,M)と書けます。

 

ここで混乱は生じないと考えてEとPの底空間Mへの射影に関して同じ記号πを用いています。

 

また底空間Mの多様体としての"座標近傍系=地図帳"はEとPの両者のファイバー束において同一であるとしておきます。

EとPで共通なx∈Mの近傍の地図Uα上での群G,およびファイバーFの座標を示す座標関数をそれぞれΦα,およびφαと書くと,Pの転移関数はTαβ(x)=Φα・Φβ-1(x)∈GでありEの転移関数はtαβ(x)=φα・φβ-1(x)∈ρ(G)ですが,tαβ(x)=ρ(Tαβ(x))を満たしているとします。

このような場合,EとPは構造群Gの作用に関してはほぼ同一の挙動を示します。そこでEはPの同伴ファイバー束と呼ばれています。

そこで,ベクトル束Eの中での平行移動は,対応する主ファイバー束Pの中の平行移動をEの言葉に翻訳して表現したものとします。

 

これまでに定義されている平行移動の概念Pに対するものだけです。

 

底空間M上の曲線:x(t)を考え,その始点をx0,終点をxとします。そして,Mの1つの"近傍=地図"の中に曲線全体が収まっているとします。(これで一般性を失うことはありません。)

 主束Pの中でx0に付随するファイバーの1点0を取り,この0を曲線に沿って平行移動していった終点をとします。

 

 すなわち,π(0)=x0,π()=xとします。

 

 このとき,同伴ベクトル束Eの中で,x0に付随するファイバーの1点0 (π(ψ0)=x0)を始点としたときの曲線に沿った平行移動を定義して終点ψ (π(ψ)=x)を決定したいわけです。

 群Gの表現ρ(G)というのは,GからFの中への準同型写像ですから0の作用を示す0-1∈Gの表現はρ(0-1)です。

 

 それ故,EにおけるGの表現空間Fの上では曲線に沿った平行移動をψ=ρ(0-10 0 ,ψ∈F)によって定義するのが妥当であると思われます。

 この定義がwell-definedであること,つまり地図の選択やGの中の始点0の選択に依存せず,一意的に決まることは直接,計算で確かめることにより簡単に示されるので,ここではそれの証明は省略します。

 次に,これら平行移動概念に基づいて,Mの点x0におけるψ(x)の共変微分(covariant derivative):∇uψ|x0uψ|x0limt→0[{(0←t)ψ(x(t))-ψ0}/t]で定義しておきます。

 ここで,右辺の記号:H(0←t)ψ(x(t))はx(t)における波動関数ψ(x(t))を曲線に沿ってx=x(t)からx0=x(0)へ平行移動した終点のファイバー座標を表わすものです。

 

 したがって,共変微分:∇uはψ(x)が水平方向からずれていく"変化率=傾き"を与えます。

 たった今,求めたように,H(0←t)ψ(x(t))=ρ((0)(t)-1)ψ(x(t))です。

 

 そして,(t)=(0)Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}と陽に表現すればH(0←t)ψ(x(t))=ρ(Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ})-1ψ(x(t))と書けます。

 これを∇uψ|x0limt→0[{(0←t)ψ(x(t))-ψ0}/t]に代入すると,uψ|x0(dxμ/dt)(∂ψ/∂xμ)|t=0iρ(Aμ(x0))(dxμ/dt)|t=0)ψ(x0)です。

 

 すなわち,uμ≡(dxμ/dt)|t=0と置けばuψ|x0=uμ{∂/∂xμ+iρ(Aμ(x))}ψ(x)|x0なる結果を得ます。

 

 通常はゲージ場の表現ρ(Aμ(x))を単にAμ(x)と書きますが,これによって混同は生じません。

 そこで,波動関数に対する共変微分演算子をDμ≡∂μ+Aμ (∂μ≡∂/∂xμ)で定義すれば,∇uμμと書けます。

 そこで,改めて平行移動の条件を考えると,それは水平条件:Dμψ(x)=0 です。これを形式的に解けば,やはり予想通りψ(x)=Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}ψ(x0)なる表式が得られます。

 例として,xy平面に垂直に一様な磁場があって,このxy平面内の1辺の長さが1の正方形領域OABCの中を運動する電荷eを持った荷電粒子の波動関数ψ(x,y)を考察します。

 

 ただし,OAとCB,およびOCとABを同一視してこの領域をトポロジー的にトーラス(torus)に等しいとします。

 一様磁場の磁束密度をΦとして=(0,0,Φ),=∇×によってを与えるベクトルポテンシャル=(0,Φx,0)と選択されている場合を考えると,系を記述するハミルトニアンHはH=-{1/(2m)}{(∂/∂x)2(∂/∂y-ieΦx)2}と書けます。

 

 ただしプランク定数hcを1に取る自然単位を採用しています。

 OC:x=0 とAB:x=1 を同一視するトーラスを想定していますが,ベクトルポテンシャルのゼロでない成分Ayはこの辺の上でゼロとΦなので大きさΦだけのずれが生じます。

 

 そこで,ε>0 を与えてOCの両側に-ε≦x<ε,ABの両側に1-ε<x≦1+εと,それぞれ幅が2εの長方形領域を取り,これらを張り合わせることによって実際に幾何学的なトーラスを作ります。

 この際の,こうした領域での地図の読み替えは次のゲージ変換によるものとします。すなわち,(1+x,y)=(x,y)-∇χ,ψ(1+x,y)=eieχψ(x,y);-ε<x≦εとします。

  

 ここでχ=-Φyです。y方向については元々連続なので単にOA:y=0 とCB:y=1 を同一視するだけで不都合は生じません。

このときトーラスをx方向に1周して元に戻ると,ゲージ変換のために波動関数ψに位相変化eΦyが生じます。したがって波動関数ψはyに関しては1価ですが,x方向には1価ではありません。

 

こうした波動関数の非一価性はベクトルポテンシャルをどう取っても避けられません。ただ,この問題では,特にeΦ=2πの場合には閉じた形で解が得られます。

すなわち,以前に2007年8/24の記事「磁気単極子(モノポール)」の中述べたことですが,

 

条件:"(1)Cが1点にホモトピーである"が満たされない場合,これは今の場合は正方形Cがトーラスなので単連結ではなく多重連結である場合に相当しますが,電磁場が働いているときの波動関数が一価関数になるとは限らないといえます。

今日はここまでにします。

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

http://www.rakuten.co.jp/trs-kenko-land/「TRS健康ランド」-- 黒ウコン,SCS(洗浄剤)専売などの店:  私が店長 です。

http://www.mediator.co.jp/category/pages.php?id=115「中古パソコン!メディエーター巣鴨店」

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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