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2007年11月

2007年11月29日 (木)

ソルジャー・ブルー再び'(映画感想)

 私が,これまで見た映画のうちで一番好きというか印象に残ったもので1970年前後に珍しく封切りで見たアメリカ映画「ソルジャー・ブルー(Soldier  Blue)」があります。 

     

 残念ながら,アニメ「地球(テラ)へ」のソルジャー・ブルーではありません。

  この映画は1864年11月29日のコロラド州で実際にあったアメリカインディアン(当時)の大量虐殺事件を題材にしたものです。

 当時騎兵隊だか民兵だかの青い制服を着た白人兵士達700名によるシャイアン族の女子供達を中心とした600人の人々の大量虐殺の光景をキャンディス・バーゲン演じる白人とシャイアン族の混血の主人公が目撃し,自らに白人の血があることを恥じる,という内容であった,と記憶しています。

 当時は私も若くて,今ほど涙もろい方ではなかったのですが,感情移入して泣けて泣けてしょうがありませんでした。

 それにしてもシャイアン族を急襲し若い女性を強姦する真っ白な尻の兵隊達のリアルな映像,それさえも修正する映倫の所業には少なからず腹が立ちました。いくらなんでもそんな局面で欲情するわけないじゃないか。。。

 丁度1970年当時はベトナム戦争が激化し,結局,その戦争で恐らくアメリカははじめての敗北を味わうわけです。

 それはベトナムに負けたというより戦場で疲弊しきった自国の兵士達の現状などを知った国内の世論に敗れたと云えます。

 そして,それまでの「大七騎兵隊」など主要な西部劇に代表される白人が善でアメリカ・インディアンが悪という構図について,自国が敗戦したおかげで,知識階層を中心にはじめて猛列な反省がなされました。

 (西部劇の善と悪が逆転した?記念碑的映画でもあります。)

 アメリカ・インディアンは差別用語とされ,現在ではネイティブ・アメリカンと呼ばれるようになったというような経緯も聞いています。

 そして,同時に黒人差別など被抑圧階層の歴史も見直され,ニューヨークのハーレムの解放なども進み,表面上では白人至上主義思想も薄まってきたように見えます。

 しかし,ブッシュのアフガンやイラクなどの無辜の民の虐殺など,未だに「ソルジャー・ブルー」の世界は連綿と続いています。

 名誉白人などと呼ばれて喜んでいる日本人も「テロ特措法」などをつっくてアメリカの尻馬に乗るようじゃ同じ穴のムジナです。

 むしろ,「テロ」の側に味方してもよいくらいなのに。。。

 いずれにしろ,戦争を喜ぶのは「死の商人」とその係累だけです。

 アラブ資本やブッシュもそれに属する輩でしょう。我々がそれに協力するなど愚の骨頂です。

 日本がアメリカの属州であることを自負するのであるならば一蓮托生なので一緒にテロられるのも当然ですから,それを甘んじて受けるべき,切腹すべきなのに,テロを恐れてアメリカという母親のスカートの中に隠れるのはとても恥ずべきことです。

 だからといって私自身が自爆か,それに見合うくらいの行動を取ってるわけでもなく,,口だけなのが実は歯がゆいところですね。。。

 You-tubeでなつかしい映画を見つけたのでつい感想を書きました。。。

 

(↑著作権の問題でもあるのか?ドイツ語吹き替え版なのが玉に瑕です。)

 もう1つは。。。

 (↑こちらは英語ですが。。内容は元映画と遊離してます。)

                                   (終わり)

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2007年11月28日 (水)

解析接続の意味

例によって「EMANの物理学」の談話室での話題なのですが,ゼータ関数の定義に関連して,無限級数(の和)によって定義された関数の解析接続とか一致の定理というのは何か?についての議論が進み,ほぼ終局の状態です。

私自身はまだ言い足りないことがあったので,ここでの記事にしますが,実は投稿したものとほぼ同じです。

ダブルポストなので,通常はルール違反なのですが,自分のブログなのでかまわないでしょう。

それに掲示板ではフォントなどが限られているので,ブログでは自分の好きな形式で書けるという意味もあります。

 結局は,2006年4月23日の記事「くりこみ回避のアイデア」で書いた話を少し精密にしただけです。

 私は,複素関数論での通常の解析接続の説明では飽き足らず,物理屋的な解説を目指しました。

 まず,zを任意の複素数とすると,Σk=1nk-11+z+z2+...+zn-1=(1-zn)/(1-z)です。これは有限級数の和なので,|z|<1でも,z=-1でもz=2でも成り立つ等式です。

 そして,|z|<1ならn→ ∞ で|zn|→ 0 なので,Σn=1n-1=1+z+z2+...=1/(1-z)が成り立ちます。

  しかし,z=2ではn→ ∞ で|zn|→ ∞ であり,z=-1ではn→ ∞ でznが確定値を取らないので,Σn=1n-1=1+z+z2+...=1/(1-z) は成立しません。

  そこで,複素関数f(z)を|z|<1で与えられる定義域においてf (z)≡Σn=1n-1=1+z+z2+...(|z|<1)によって定義することにします。

 こう定義すれば,|z|<1の領域では f (z)は関数1/(1-z)に一致します。

 |z|>1やz=-1では等式Σk=1nk-1=1+z+z2+...+zn-1=(1-zn)/(1-z)は成立しますが,Σn=1n-1=1+z+z2+...=1/(1-z)は成立しません。

 しかし,そうした|z|<1の領域以外のzに対しても部分和を表わす右辺の(1-zn)/(1-z)での分子のznを無視して,(1-zn)を1としたものと f (z)を同一視してz=1を除く全複素平面でf (z)=1/(1-z) (z≠1)と定義することにします。

 つまり,f (z)≡limn→∞[{1+z+z2+...+zn-1}+zn/(1-z)]という式を関数f (z)の正しい定義とするわけです。

 |z|<1なら,この後の定義も|z|<1 におけるf(z)に対する前の定義f(z)≡Σn=1n-1=1+z+z2+...(|z|<1)と全く一致します。

 一方,|z|>1やz=-1では差し引くべき項:{-zn/(1-z)}は収束しません。

 特に|z|>1なら|zn/(1-z)|→∞ なので, f (z)≡limn→∞[{1+z+z2+...+zn-1}+zn/(1-z)]は形式的に無限大から無限大を引くという意味に取ることも可能で,これは物理学でのくりこみの処方に似ています。。

 ここまでは,直接には解析接続とは無関係な話です。

 そして複素関数論では f (z)≡Σn=1n-1=1+z+z2+...=1/(1-z) (|z|<1)を特異点z=1を避けて延長した点でも,それが正則関数になるように,|z|≧1,z≠1なる点まで接続すれば,一致の定理によってそうした点でも f (z)は1/(1-z)に一致する場合しか有り得ないことがわかります。

 実際,z=-1+αと置けばΣk=1nk-1=1+z+z2+・・+zn-1=(1-zn)/(1-z)なる等式はc0,c1,..,cn-1をある定数の複素係数としてΣk=1n(α-1)k-1=Σk=1nk-1αk-1={(α-1)n-1}/(α-2)と変形できます。

そして,|z|=|α-1|>1なら右辺は,1/(1-z)=-1/(α-2)にはなりません。

 しかし一方,αの絶対値が十分小さいならz=-1+αの絶対値が1より大きくても,つまり|z|=|-1+α|>1でも f (z)=1/(1-z)=-1/(α-2)=(1/2)/(1-α/2)=(1/2)Σn=1(α/2)n-1=(1/2)[1+(α/2)+(α/2)2+...]=(1/2)Σn=1{(z+1)/2}n-1=(1/2)[1+{(z+1)/2}+{(z+1)/2}2+...]とテイラー展開されます。

 つまり,z=0 のまわりでは|z|=|-1+α|>1なので, f (z)=1/(1-z)はzのべきでは展開できなくても,z=-1のまわりではα=(z+1)の無限べき級数に展開可能ですから,f (z)は確かに|z|>1,z≠1なる領域でも解析的です。

 また,"一致の定理"の内容というのは同じ点を中心としたテイラー級数の展開係数の一意性により,今の f (z)の場合,|z|<1 以外の領域でも,その解析性(ベキ級数への展開可能性)を保持しながら f (z)を|z|<1から連続的に延長していったとき,もしも2通り以上の延長(接続)方法があったとしても,それらは一致するという定理です。

 このことから,解析接続する方法は一意的に決まります。

 今日は,短かいけれどこれで終わりです。

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2007年11月26日 (月)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(5)

続きです。一応,これで本項目についての記事は終わります。

さて,前記事まででファイバー束(fiber bundle)に関する基本的説明も終わったので話をベリーの(Berry)の位相に戻し,ここまでの説明を生かして次のようなファイバー束:(E,π,F,G,M)を考えます。

 前の記事「ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(2)」において,

 

 "系のハミルトニアンH(t)が周期的で時間周期Tを持っていて,その時間依存性はパラメータの集合を一般的なn次元のベクトルで表現した(t)を通してのみ現われるとします。(ただし(0)=(T)です)"

  

 と書きました。

ここで,底空間MはハミルトニアンH(t)の時間依存性を示すパラメータ(t)の構成する空間であり,ファイバーFは,そこで定義した自明な時間発展の位相因子を除去した波動関数|φ((t))>のつくる空間であるとします。

 

そして構造群Gは,その作用が波動関数|φ((t))>にかかる位相因子として現われる1次元ユニタリ群U(1)です。

つまり,そこで書いたように,ハミルトニアンH(t)の表現する物理系が断熱定理の条件を満足するようなごく一般的な場合には,t=0 でH(t)のm番目の固有値Em(0)に属する固有状態:|m((0))>にあった波動関数|ψ(t)>は時刻tでは|ψ(t)>=|m((t))>exp{{(-i/hc)∫0tm(t')dt'}exp{-iγm(t)}なる形に表わされます。

 

これの右辺から因子exp{{(-i/hc)∫0tm(t')dt'}を取り去った残りを|φ((t)>≡|m((t))>exp{-iγm(t)}と定義して,これらの全体で作られる空間をMとするわけです。

既に記述したように,(t)が 0≦t≦Tにおいて閉路を構成し,しかも状態ベクトルの1価性:|m((T))>=|m((0))>が満たされる場合には,波動関数の1周期当たりの全体としての位相のずれはγm()≡γm(T)=-Im∫<m()|∇m()>dR=-∫∫m()d;ただしm()≡Im[Σn≠m{<m()|∇H|n()>×<n()|∇H|m()>/(En-Em)2]で与えられます。

 

この閉路,あるいは1周期T当たりの位相変化量γm()のことをベリーの位相と呼びます。

波動関数の非1価な位相の動きを制限する条件式は<φ((t))|(d/dt)|φ((t))>=0 で与えられます。

 

これはγm(t)の定義γm(t)≡i∫0t<m((t'))|(d/dt')|m((t'))>dt'を考慮して実際に計算をすれば確かめられます。

そして,この条件を満足する位相変化を,このファイバー束(E,π,F,G,M)の中での理論,つまりHのG=U(1)不変性という対称性に対応する平行移動であると定義します。

つまり,平行移動は|φ((t))>の変化d|φ((t))>が|φ((t))>に直交する方向に向かう動きであることを示すとします。

|φ((T)>≡|m((0))>exp{-iγm()}であり,γm()=γm(T)=i∫0T<m((t))|(d/dt)|m((t))>dt=i∫<m((t))|∇R((t))>d(t)です。

 

それ故,()≡i<m()|∇|m()>と置いて,これをベクトルポテンシャルと呼べば,結局,|φ((T)>≡|Φ((0))>exp{-i∫()dですから,このファイバー束Eにおける平行移動に関連した接続Aμはベクトルポテンシャル()≡i<m()|∇|m()>となります。

そして,ベリーの位相:γm()は,このファイバー束のホロノミー群に対応していて,exp{-iγm()}∈Gが,このホロノミー群の個々の要素になっています。

ベクトル束Eの底空間Mが,2次元リーマン多様体で与えられる例として,通常の我々の3次元ユークリッド空間内での,単位球面上の点における長さ1の接ベクトルの平行移動について考察してみます。

接ベクトルの単位球面上での平行移動を次のように定義します。まず,をこの球面が存在する3次元ユークリッド空間内の通常の意味での平行移動を行い,その後にそれから球面に対する垂直成分を切り捨てて球面の接ベクトルとし,残ったベクトルの長さを1にします。

この移動は次のような条件式で表現されます。すなわち,d/dt=×です。ここでは,が接している点の位置ベクトルをとしたとき,×(d/dt)で定義されます。

実際,における接ベクトルなので0 であり,また(d/dt)=0 です。そして(+d)(+d)=1+2=1+2(×)dt=1 ですから確かにd/dt=×なる移動はの長さ:1を保存します。

単位球面上では(d/dt)は垂直であり,と(d/dt)が作る平面に垂直ですから,任意のベクトルは,と(d/dt)の1次結合で表わされますが=0 なのでと(d/dt)だけで=c1(d/dt)+c2と書けます。c1,c2は定数です。 

仮にc10 なら,|d/dt|=rω=ωとすると||=|×(d/dt)|=ωです。そしては長さが1なので=(d/dt)/ωです。

 

そこで(d/dt)-×=(d2/dt2)/ω+(d/dt)2/ωとなりますが,|d/dt|=ωであり,球面運動なのでではd2/dt2=-ω2ですから,(d/dt)-×=0 すなわち,d/dt=×です。

一方,20 ならd/dt=×はd/dt=0 を意味します。

 

の球面上の運動では(d/dt)は,に垂直なので,この場合にはに垂直ですから,確かにd/dt=0 です。

 

以上から一般の重ね合わせ:=c1(d/dt)+c2で与えられるについても,d/dt=×が成立するわけです。

 

ついでに×なるベクトルも定義しておきます。

 

そして記号的に,|ψ>≡(1/2)1/2(+i)と置きます。

 

今の場合,|ψ>,|φ>etc.は単なる3次元複素ベクトルであり,<φ|ψ>はそれらの数ベクトルとしての内積を示しているとします。

 

/dt=×と同じく,d/dt=×ですから(d/dt)|ψ>=×|ψ>が成立します。

ところで,<ψ|ψ>=1(時間に依らず一定)なので,Re<ψ|(d/dt)|ψ>=0 です。

 

そして,Im<ψ|(d/dt)|ψ>=(1/2){(/dt)-(/dt)}=(1/2){(×)-(×)}=(×)=0 です。

 

故に球面上の平行移動の条件d/dt=×は条件ψ|(d/dt)|ψ>=0 と同等であることがわかりました。

ベクトル,あるいは|ψ>は単位球面上のあるループに沿って平行移動して元の位置に戻ったとき,出発時とは異なるベクトルになるということは既によく知られている事実です。

 

そして今問題としているファイバー束:(E,π,F,G,M)においては,ファイバーFは波動関数|ψ>(=(1/2)1/2(+i))の空間,Gはユニタリ群U(1)で,これは|ψ>に位相因子exp(iθ)を掛ける作用を示す群です。

 

そして底空間Mは|ψ>=|ψ((t))>のパラメータ(t)の空間ですが,今これを単位球面とします。

単位球面上の点(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)における局所的に1価の基底を次のように選択します。

 

すなわち,|n1(θ,φ)>≡(-sinφ,cosφ,0),|n2(θ,φ)>≡(-cosθcosφ,-cosθsinφ,sinθ)とします。

|ψ>=(1/2)1/2(+i)なる表式で1からへの方向への角度がγであるとすると=cosγ|n1>+sinγ|2,=-sinγ|n1>+cosγ|2>です。

 

そして,|n(θ,φ)>≡(1/2)1/2{|n1(θ,φ)>+i|n2(θ,φ)>}と置くと|ψ>=(1/2)1/2(+i)=|n>exp(-iγ)と書けます。

ここで|ψ>をMの元である(t)の単位球面上のループに沿って平行移動させて1回転させたときの複素数としての偏角のずれγ()≡∫Cdγを計算します。

 

まず,<n|dn>=<ψ|exp(-iγ){idγ|ψ>exp(iγ)+d|ψ>exp(iγ)}=idγ+<ψ|ψ>です。

 

平行移動の条件によって<ψ|ψ>=0 ですから,dγ=-i<n|dn>より,偏角のずれはγ()=∫Cdγ=iC<n|dn>=ImC<n|dn>=Im∫∫<dn|×|dn>と表現されます。

これは,γ()=Im∫∫<dn|×|dn>=∫∫dθdφsinθ=∫∫dΩと書けます。

 

偏角のずれγ()=∫∫dΩは.ループによって囲まれる立体角,つまり単位球面上でループによって囲まれる面積に等しいことがわかります。

 

なお,基底ベクトル:|n(θ,φ)>を変更しても,それはθ,φを変更するのと同等で単に位相因子の変更に過ぎないので,今の結果には影響しません。

 

以上,で一般の状態ベクトルの平行移動<ψ|ψ>=0 が初等幾何学的な平行移動と同等な概念であることの例示による説明を終わります。

次にアハラノフ・アナンダン(Aharonov-Anandan)の位相というものを定義します。 

そのために,以前の記事「ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(2)で系のハミルトニアンとして与えたH=-σ(t)において特にH=-B3σ3の場合を考えます。 

シュレーディンガー方程式:ihcψ(t)/∂t=Hψ(t)(hc≡h/(2π)はプランク定数)の解ψ(t)=(t)で,初期時刻t=0 で(t=0)=t(cos(θ/2),sin(θ/2))を満たすものを考えます。

 

すると,その後の時間発展は(t)=exp(-iHt/hc)(0)=exp(iB3σ3/hc)(0)t(exp(iB3/hc)cos(θ/2),exp(-iB3/hc)sin(θ/2))で与えられます。

(t)はH=-B3σ3の固有状態ではありませんから,エネルギーが一定の定常状態ではありません。

 

この状態でのσ3の期待値は(t)σ3(t)=cos2(θ/2)-sin2(θ/2)=cosθです。

ここで前の記事ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(2)を思い起こします。

 

そこでは"H(t)=-σ(t);(t)≡(B0cosωt,B0sinωt,B3)であり,H(t)の固有値は±B;B≡(B02+B32)1/2であって,それの-B,Bのそれぞれに属する固有ベクトル1(t),2(t)は1(t)=t(exp(iωt)cos(θ/2),sin(θ/2)),2(t)=t(exp(iωt)sin(θ/2),-cos(θ/2))で与えられます。"と書きました。

このうちの1つの固有ベクトル1(t)=t(exp(iωt)cos(θ/2),sin(θ/2))と,H=-B3σ3に対する波動関数(t)=t(exp(iB3/hc)cos(θ/2),exp(-iB3/hc)sin(θ/2))の類似性に着目します。

 

特にB3/hc=ω/2と置けば,(t)=exp(-iωt/2)1(t)です。

したがって,B3/hc=ω/2なら,(t)は1(t)と同様,H(t)=-σ(t);(t)≡(B0cosωt,B0sinωt,B3)のH(t)の固有値-B;B=(B02+B32)1/2に属する固有ベクトルになっていますが,今のH=-B3σ3の場合には固有ベクトルではありません。

 

しかし,(t)はこれの正確な解です。

ここでアハラノフとアナンダンは,次のようなファイバー束:(E,π,F,G,M)を考察しました。

 

まず,ファイバーFは規格化された状態ベクトルの空間をとし,ψの底空間Mへの射影πはπ(ψ)={ψ':ψ'=cψ,c∈U(1)}であるとします。

つまり,底空間Mは長さ1の波動関数からなる空間のベクトルから位相の差異を無視した空間です。

 

すなわち,Mは/U(1)なる商空間,つまり位相を無視するとした同値関係による"同値類=射線(ray)"の空間です。また,構造群GはもちろんU(1)です。

こうした前提の下で,先に述べた波動関数(t)を考察します。

 

この波動関数は時刻tと共にEの中で曲線^を描きますが,この曲線のMへの射影をとします。

 

このときM内の曲線は時間T=ω/(2π)の後に出発点に戻りますからは閉曲線です。

  

しかしEの中での曲線^は一般に閉じていません。

そこで(0)と(T)の位相の差φを求めてみると,明らかに(T)=exp(iπ)(0)です。

 

この全位相差φ=πから,通常の力学的発展部分φd≡-(1/hc)∫0T(t)H(t)dt=πcosθを除いて,φ≡φd+γと書けば,γ=π(1-cosθ)でγ=-π(1+cosθ)(mod 2π)です。 

 これは以前の記事で,"断熱近似の下では,ψ(t)~1(t)exp(-iE/hc);E~ -B+(hcω/2)(1+cosθ)ですからψ(t)の位相因子exp(-iE/hc)の位相(-E/hc)は(Bt/hc)-(ωt/2)(1+cosθ)={(B/hc)-(ω/2)(1+cosθ)}tで近似されます。"と書いたものと一致しています。

こうした結果は位相γがハミルトニアンに依存するというよりもむしろ,波動関数がファイバー束の中でどのように時間発展してゆくかに依存することを示しています。

一般的には,状態ベクトル:|ψ(t)>に対して新しい波動関数|φ(t)>を|φ(t)>≡exp{-iγ(t)}|ψ(t)>;γ(t)≡i0t<ψ(t')(d/dt')|ψ(t')>dt'と定義し,この波動関数|φ(t)>がファイバー束の中を移動する様子を考えます。

 

今の場合には|ψ(t)>は正確なシュレーディンガー方程式に従うのでγ(t)=(1/c)∫0t<ψ(t')|H|ψ(t')>dt'(1/c)∫0t(t')dt'です。

こうして定義した新しい波動関数|φ(t)>は<φ(t)(d/dt)|φ(t)>=0 なる条件を満たします。

 

そこでπ(φ)がファイバー束の底空間Mで閉曲線を描くとき,|φ(t)>自身の描く曲線^は閉じていません。そして^の両端での|φ(t)>の位相差をアハラノフ・アナンダンの位相と呼びます。

これも今考えているファイバー束でのホロノミ-群の要素として捉えることができます。これは断熱定理が成立しない場合にも適用可能であり,Hが周期的でない場合,パラメータ(t)が周期的に元に戻るとは限らない場合にも拡張されたベリーの位相です。

最後にアハラノフ・ボーム効果(AB効果:Aharonov-Bohm effect)について考察します。

1つの荷電粒子が空間のある点Aから遠方のスクリーンに向かって運動してスクリーン上の点Cに到達するとします。

 

そして,その途中のある位置での2つのスリットUとDで挟まれた場所に遮蔽された磁場が存在しているとします。

 

その磁場はスクリーン面に平行で荷電粒子の進行方向,およびUDに垂直な向きを持ち,の大きさと向きは時間的に一定でその全磁束はΦであり,しかも遠方のスクリーン上,特に点Cでは=0 になっているような系を考察します。

 

この物理系を"AB系=アハラノフ・ボーム系"と呼びます。

このとき,ベクトルポテンシャル=∇×で定義されますから,空間内の閉曲線をA→D→C→U→Aに取れば,∫C=∫∫(∇×)d=∫∫=Φです。 

古典電磁気学によれば,荷電粒子に対する電磁場の作用は電場と磁場によって生じるはずでには関係なく,それゆえ全磁束Φにも無関係なはずです。

しかし,上述の実験では点Cではもゼロであるにも関わらず,荷電粒子が作用を受けるという結果が得られ,古典電磁気学での素朴な常識が否定されています。

この場合の荷電粒子のハミルトニアンは以前の2007年11/24の記事解析力学の初歩」で与えたように,H=(-e/c)2/(2m)+eV()です。

 

これはラグランジアンL=(d/dt)-H=m(d/dt)2/2+e/c-eV(),および運動量の定義=∂L/∂(d/dt)=m(d/dt)+e/cから得られるものです。ただし,今の場合のAB系ではV()=0 です。

これによる波動関数の時間発展の結果を簡単に得るために,ファインマンの経路積分の手法に頼れば,ψ(,t)=∫K(,t;0,t0)ψ(0,t0)d0,K(,t;0,t0)≡∫exp(iS()/hc)Dです。

 

ここで,S()は作用積分で,S()≡∫t0t(),dq/dt',t')dt'です。ただし,0(t0),(t),t0<tです。 

離散近似では,S0=S0()を電磁場のない自由粒子の作用として,S()=S0(e/c)Σi=1[(ii-1)/2][(i-qi-1)/(tii-1)](tii-1)と書けます。

 

この式の右辺第2項は細分の個数Nが無限大の極限で,(e/c)∫q()dなる線積分になります。

  

結局,ファインマンの積分核KはK=∫Dexp(iS0()/hc)exp[{ie/(chc)}∫q()d]で与えられます。 

経路積分∫Dというのは点A:0(t0)からスクリーン上の点C:(t)に到達するあらゆる経路を総和するものですから,それは磁場を多数回周回する経路も全て含んでいます。

 

1つの経路とホモトピー同値な経路をホモトピー類として同値類別し,経路A→D→Cを基準として,それとホモトピ-同値な経路をホモトピー類ゼロとし,をn回周回する経路にホモトピーなホモトピー類nの積分核Kへの寄与をKn(n=0,±1,±2,...)と定義してKの1価性を要求すれば,K=Σnnとなります。 

基準となるホモトピー類ゼロの経路0に対してF≡q0()dと定義すれば,経路nに対してはqn()d=F+nΦ(n=0,±1,±2,..,)です。

 

故に,Kn(,t;0,t0)=exp{ie(F+nΦ)/(chc)}∫qnexp(iS0()/hc)≡exp{ie(F+nΦ)/(chc)}Kn0(,t;0,t0)となります。

自由粒子の作用S0()は,経路が古典力学の運動方程式を満足するときに極小値を取ること(最小作用の原理)がわかっています。

 

その経路からずれるほどS0()は大きくなって,急激な振動のためにKnへの寄与は小さくなり,事実上,経路A→D→CによるK0と経路A→U→CによるK1の寄与以外は無視してよいことになります。 

それ故,Cではもゼロであるにも関わらず,がゼロでないためにゼロでないK0とK1位相の効果として荷電粒子が力を受けます。

 

これがアハラノフ・ボーム効果と呼ばれる現象です。

 

これはψ(,t)∝exp{ieF/(chc)}K00exp{ie(F+Φ)/(chc)}K10によって,荷電粒子の存在確率|ψ|2が磁束Φの多寡によって変化する干渉パターンとして出現します。 

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

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2007年11月23日 (金)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(4)

 続きです。今日もまだ終わらず,さらに続きます。

平行移動の変換(t)=(0)Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}を(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}なるより簡明な形に書き換えます。

  

ここで,曲線:x(t)は底空間の上でx0=x(0)からx=x(t)まで動く点の軌跡を示しています。

(x)∈Gに対して,群Gの作用は右側に掛かるとして扱ってきていますから,これに座標xに依存しないGの元∈Gを作用させると,(x)(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}です。

 

ここで,この変換に対してAμ(x)がA'μ(x)に変換されるとするとA'μ(x)=-1μ(x)です。

よって,Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}=Pexp{-i∫C-1μ(x)dxμ}Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}です。

 

それ故,両辺の左から(x0)を掛けると,(x)(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}となります。

  

つまり(x)={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}です。

既に,Aμに基づく平行移動を与える微分方程式:(dij/dt)=-iAμ,kjik(dxμ/dt),すなわちd/dt=-i(μ)(dxμ/dt)が解(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}を与えることを見ました。

 

そこで,(x)={(x0)}Pexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}の等式の右辺は(x0)をA'μに基づいて曲線に沿って平行移動したものを表わすと考えられます。つまり,(x0)にを作用させた後に平行移動したものです。

一方,左辺(x)(x)=(x0)Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}によって(x0)を曲線に沿って(x)まで平行移動した後にを作用させたものです。

 

Gの任意の元の作用は垂直方向への移動を表わすので,AμとA'μの違いはあるものの,以上のことから"平行移動作用とGの元による垂直移動の作用は可換である"と言えます。

この可換性は次のようにも読めます。

 

"μとA'μは本質的には同一のものでありexp{-i∫CA'μ(x)dxμ}=Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}の右辺右端に掛かっているを指数関数のP積を通って左側に移動させていくと,左辺のようにAμをA'μに変えながら進んでゆき,最後に左端に到達する"

 

という見方もできます。

つまり,始点x0でのxに依らない垂直移動(x0)に別の垂直移動を作用させて移動した後,平行移動して(x)に対応する点に到達した結果と,曲線全体を(x)で平行移動した後,その曲線^全体に垂直移動を作用させて移動した結果,が同じということを意味します。

主ファイバー束Pの底空間Mの上で曲線が閉じていても,Pの中で(x)に従って平行移動した曲線^が閉じているとは限りません。

曲線上の始点x0に対応する曲線^上のファイバー座標を0とし, 始点と同じx0に対応する終点の座標を1と書くと10exp{-i∫Cμ(x)dxμ}となります。

 

が閉曲線の場合でも,一般にはAμ(x)が非回転的:∫Cμ(x)dxμ≠0 なので,Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}=1(単位元)とはならないため,10となり曲線^は閉曲線ではないのです。

そして,こうして曲線によって一般には0と異なる10に関係付ける上の表現を10()と書くことにします。

 

このとき,H()≡Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}は群Gのある要素Cと同一視できて10Cとも書けることがわかります。

 

実際には,H()はのみの関数ではなく,同じ曲線に対してPexp{-i∫C'μ(x)dxμ}も曲線に関する平行移動ですが,ここではAμとA'μは本質的には同一のものであると同一視しています。

一方,曲線と同じくx0を始点かつ終点とする別の閉曲線'を考えて1'に沿って平行移動した終点を2と書けば21(')と書けます。

 

故に,2{0()}H(')=0(')=0C'Cとなります。ここでH(')はの次に'に沿って動く二重閉曲線'に沿っての平行移動を表わしています。

一方,AμとA'μの同一視によって,群Gの作用と平行移動は完全に可換とみなせるなので,2(0C)H(')={0(')}C(0C')C0(C'C)です。したがって,C'CC'Cです。

 

また,閉曲線の逆向きの閉曲線を-1と書けば,C-1(C)-1ですから逆元も存在します。

 

よって,0を始点かつ終点とする閉曲線全体に対するCの集合:{C}は1つの群(Gの部分群)を成すことがわかります。この群をx0を基点とするホロノミー(holonomy)群と呼びます。

次に,具体的に波動関数ψ(x)の平行移動について考察してみます。

例えばψがクォーク場で構造群GがカラーSU(3)群であるとすると,ψはSU(3)の3次元基本表現に従います。つまり,このときにはψは3次元複素ベクトル空間で与えられる表現空間の要素です。

ここで,一般にベクトル空間Fの上での群Gの表現:ρを考えます。波動関数ψはGのこの表現ρに従うとします。

 

すなわち,関数としてのψ全体はベクトル束(E,π,F,ρ(G),M)の切断面であるとします。ファイバーFはGの表現空間なのでρ(G)はFからFへの同型写像を与えるものです。

このベクトル束と深い関係を持つ主ファイバー束は(P,π,;,G,M)と書けます。

 

ここで混乱は生じないと考えてEとPの底空間Mへの射影に関して同じ記号πを用いています。

 

また底空間Mの多様体としての"座標近傍系=地図帳"はEとPの両者のファイバー束において同一であるとしておきます。

EとPで共通なx∈Mの近傍の地図Uα上での群G,およびファイバーFの座標を示す座標関数をそれぞれΦα,およびφαと書くと,Pの転移関数はTαβ(x)=Φα・Φβ-1(x)∈GでありEの転移関数はtαβ(x)=φα・φβ-1(x)∈ρ(G)ですが,tαβ(x)=ρ(Tαβ(x))を満たしているとします。

このような場合,EとPは構造群Gの作用に関してはほぼ同一の挙動を示します。そこでEはPの同伴ファイバー束と呼ばれています。

そこで,ベクトル束Eの中での平行移動は,対応する主ファイバー束Pの中の平行移動をEの言葉に翻訳して表現したものとします。

 

これまでに定義されている平行移動の概念Pに対するものだけです。

 

底空間M上の曲線:x(t)を考え,その始点をx0,終点をxとします。そして,Mの1つの"近傍=地図"の中に曲線全体が収まっているとします。(これで一般性を失うことはありません。)

 主束Pの中でx0に付随するファイバーの1点0を取り,この0を曲線に沿って平行移動していった終点をとします。

 

 すなわち,π(0)=x0,π()=xとします。

 

 このとき,同伴ベクトル束Eの中で,x0に付随するファイバーの1点0 (π(ψ0)=x0)を始点としたときの曲線に沿った平行移動を定義して終点ψ (π(ψ)=x)を決定したいわけです。

 群Gの表現ρ(G)というのは,GからFの中への準同型写像ですから0の作用を示す0-1∈Gの表現はρ(0-1)です。

 

 それ故,EにおけるGの表現空間Fの上では曲線に沿った平行移動をψ=ρ(0-10 0 ,ψ∈F)によって定義するのが妥当であると思われます。

 この定義がwell-definedであること,つまり地図の選択やGの中の始点0の選択に依存せず,一意的に決まることは直接,計算で確かめることにより簡単に示されるので,ここではそれの証明は省略します。

 次に,これら平行移動概念に基づいて,Mの点x0におけるψ(x)の共変微分(covariant derivative):∇uψ|x0uψ|x0limt→0[{(0←t)ψ(x(t))-ψ0}/t]で定義しておきます。

 ここで,右辺の記号:H(0←t)ψ(x(t))はx(t)における波動関数ψ(x(t))を曲線に沿ってx=x(t)からx0=x(0)へ平行移動した終点のファイバー座標を表わすものです。

 

 したがって,共変微分:∇uはψ(x)が水平方向からずれていく"変化率=傾き"を与えます。

 たった今,求めたように,H(0←t)ψ(x(t))=ρ((0)(t)-1)ψ(x(t))です。

 

 そして,(t)=(0)Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}と陽に表現すればH(0←t)ψ(x(t))=ρ(Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ})-1ψ(x(t))と書けます。

 これを∇uψ|x0limt→0[{(0←t)ψ(x(t))-ψ0}/t]に代入すると,uψ|x0(dxμ/dt)(∂ψ/∂xμ)|t=0iρ(Aμ(x0))(dxμ/dt)|t=0)ψ(x0)です。

 

 すなわち,uμ≡(dxμ/dt)|t=0と置けばuψ|x0=uμ{∂/∂xμ+iρ(Aμ(x))}ψ(x)|x0なる結果を得ます。

 

 通常はゲージ場の表現ρ(Aμ(x))を単にAμ(x)と書きますが,これによって混同は生じません。

 そこで,波動関数に対する共変微分演算子をDμ≡∂μ+Aμ (∂μ≡∂/∂xμ)で定義すれば,∇uμμと書けます。

 そこで,改めて平行移動の条件を考えると,それは水平条件:Dμψ(x)=0 です。これを形式的に解けば,やはり予想通りψ(x)=Pexp{-i∫Cμ(x)dxμ}ψ(x0)なる表式が得られます。

 例として,xy平面に垂直に一様な磁場があって,このxy平面内の1辺の長さが1の正方形領域OABCの中を運動する電荷eを持った荷電粒子の波動関数ψ(x,y)を考察します。

 

 ただし,OAとCB,およびOCとABを同一視してこの領域をトポロジー的にトーラス(torus)に等しいとします。

 一様磁場の磁束密度をΦとして=(0,0,Φ),=∇×によってを与えるベクトルポテンシャル=(0,Φx,0)と選択されている場合を考えると,系を記述するハミルトニアンHはH=-{1/(2m)}{(∂/∂x)2(∂/∂y-ieΦx)2}と書けます。

 

 ただしプランク定数hcを1に取る自然単位を採用しています。

 OC:x=0 とAB:x=1 を同一視するトーラスを想定していますが,ベクトルポテンシャルのゼロでない成分Ayはこの辺の上でゼロとΦなので大きさΦだけのずれが生じます。

 

 そこで,ε>0 を与えてOCの両側に-ε≦x<ε,ABの両側に1-ε<x≦1+εと,それぞれ幅が2εの長方形領域を取り,これらを張り合わせることによって実際に幾何学的なトーラスを作ります。

 この際の,こうした領域での地図の読み替えは次のゲージ変換によるものとします。すなわち,(1+x,y)=(x,y)-∇χ,ψ(1+x,y)=eieχψ(x,y);-ε<x≦εとします。

  

 ここでχ=-Φyです。y方向については元々連続なので単にOA:y=0 とCB:y=1 を同一視するだけで不都合は生じません。

このときトーラスをx方向に1周して元に戻ると,ゲージ変換のために波動関数ψに位相変化eΦyが生じます。したがって波動関数ψはyに関しては1価ですが,x方向には1価ではありません。

 

こうした波動関数の非一価性はベクトルポテンシャルをどう取っても避けられません。ただ,この問題では,特にeΦ=2πの場合には閉じた形で解が得られます。

すなわち,以前に2007年8/24の記事「磁気単極子(モノポール)」の中述べたことですが,

 

条件:"(1)Cが1点にホモトピーである"が満たされない場合,これは今の場合は正方形Cがトーラスなので単連結ではなく多重連結である場合に相当しますが,電磁場が働いているときの波動関数が一価関数になるとは限らないといえます。

今日はここまでにします。

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

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2007年11月20日 (火)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(3)

ベリー(Berry)の位相に関する話の続きです。

ここで,中断して一息入れたのは,ちょっと数学的な話で私的にはむずかしいと思われるファイバー束,あるいはファイバー・バンドル(fiber bundle)の概念を使用する必要があって,これについての説明から始めなければならないからです。

例えば,多様体の接ベクトル空間(接空間)をファイバー(fiber)に持つファイバー束であるなら,これは接ベクトル束,あるいは接束と呼ばれますが,これについては私だけかもしれませんが,多様体を勉強しているとき,いつも躓いていたところです。

 

(ファイバーというのは元々は繊維という意味で,織物とかプラスチックなどを構成する細い繊維状の物質を指すものですが,数学的には空間や集合の個々の構成分子という意味で使用しているようです。)

多様体上の各点に接空間,余接空間なる線形空間(ベクトル空間)がそれぞれ付随しているというベクトル場の概念くらいまでなら,なんとか素直に受け入れられたのですが,その先の接空間,余接空間の集合から成るという接ベクトル束までいくと,何でそんなものまで考える必要があるのか,何の利用価値があるのか,などという疑問が生じ,私的にはここで躓くことが多かったものです。

しかし,計量(metric)の入った多様体であるリーマン多様体,擬リーマン多様体の上での共変微分概念に関連して,局所的な微小平行移動変換に伴う計量の変動としてアフィン接続という概念が出現します。

 

これは,特にレヴィ・チビタ(Levi-Civita)接続なら,クリストッフェルの記号で与えられますが,これがいわゆる物理学での"接触変換=ゲージ変換"に対応するという認識に遭遇し,結局,素粒子論においてベクトル束の接続を考えることの重要性に気付いたため,少しは理解しようという気持ちが湧いたのでした。

前置きが長くなりましたが,今の考察対象では,われわれの3次元,あるいは4次元の空間Mの各点xに対して複素数全体Cというファイバーが付随していて,波動関数ψ(x)はx∈Mの上のファイバーCのうちの1つの複素数値ψ(x)∈Cに対応すると解釈する,という話になるわけです。

 

そして,この場合には直積空間:M×CはMを底空間とするファイバー束である,といいます。

一般には,Eをファイバー束の全空間を示す多様体とするとき,底空間Mも多様体です。そして,∀x∈Mに対してx上のファイバーExがあり,Exの全ての点は射影πによって底空間Mの1点xに写されると考えます。

 

すなわち,式で表わせばπ(Ex)=x,π-1(x)=Exと表現されます。そして,Eは局所的には底空間Mと多様体ファイバーFの直積空間:M×Fになります。

 

すなわち,任意の1点x∈Mに対し,xの適切な近傍Uを取るとπ-1(U)がU×Fと同型になっています。つまり,適切な座標を導入すればπ-1(U)とU×Fの両者は同じものとみなせます。

あるいは,同型写像φ:π-1(U)→U×Fがあって,特にφ(x)をφxと書くとφx:Ex→{x}×FでφxがEx上の各点の座標を与えます。

 

そして底空間Mの極大近傍系に属する異なる近傍系の座標達を対応させる同型写像からなる群,すなわち構造群をGで表わし,これら全てによって,このファイバー束は(E,π,F,G,M)の組として特徴付けられるとするわけです。

特に,ファイバー束であり,かつファイバーFが構造群G自身の場合,このときのファイバー束:EをPと書いて主ファイバー束と呼びます。

 

そして以下では特に,構造群Gはリー群(Lie group)である,つまり,Gは群であって,かつ連続微分可能な多様体であるとします。

 

そして群の作用は,ファイバー上の点を垂直方向にのみ移動させ,これが座標の取り方と整合的であるとし,さらにファイバー上の任意の2点は群Gの作用によって必ず一意的に推移可能であるとします。

ところで底空間Mをわれわれの3次元,あるいは4次元空間とし,複素数体Cを付随するファイバーとするファイバー束M×Cにおいては,波動関数ψ(x)の全体はx∈Mに対する各ファイバーを1点だけで横切る,M×Cの1つの切断面とみなす描像も可能です。

一般にはファイバー束の切断面σというのは,底空間Mからバンドル(束)空間Eへの1つの写像σであって,∀x∈Mについてπ(σ(x))=xを満たすものをいいます。

 

つまり,σは,∀x∈MについてEx上の1点σ(x)を対応させる写像のことです。

そして,各点xを固定して,そのファイバーExに沿う移動方向を垂直と呼ぶわけです。では水平方向とは如何なるものでしょうか?

  

以下ではファイバー束における水平方向を定義し,その方向を維持したままの平行移動という概念を考えます。

まず,主ファイバー束Pの底空間Mの上の"水平"な曲線:xμ(t)(tは時間ではなく曲線を定義するパラメータ)上の各点xμ(t)∈Mに対して,"ファイバーF=G"のある値(t)∈Gを対応させることによって定められた,Pにおけるある曲線^を考えると,これの座標は(xμ(t),(t))と書けます。

 

そして曲線^が"水平"に保たれるという条件を与えて水平を定義し^なる移動を与える(t)∈Gによって平行移動を定義します。

リー群GがSU(N)のような線形ユニタリなN次の行列群なら,(t)はfij(t)(i,j=1,2,..,N)のような添字を持ちます。

 

以下では,このような場合のみを考えますが,添字は必要に応じて表記したり省略したりします。

 

μ(t)のμも,必ずしも4次元ミンコフスキー空間の座標添字ではありません。

主ファイバー束Pの1点(x,)での方向の基準として,ファイバー上を垂直に動く方向単位ベクトルは,多様体ではお馴染みの1次写像を微分演算子として与える表記法,すなわちxμが増加する向きの方向単位ベクトルを(∂/∂xμ)で与えるという表記により,(∂/∂)と書けます。

そう書ける理由は次の通りです。 

つまり,線形リー群G=SU(N)の任意の点における接ベクトルの集合はリー環,あるいはリー代数と呼ばれる多元環となりますが,大雑把にいえばGの無限小変換∈Gは生成元を行列A∈として,ある無限小パラメータtによって,=1+tAと表わされます。

結局,Gの単位元1と連結した部分であれば,tが無限小でなく有限なパラメータの場合にも,=exp(tA)なる形になります。

 

単位元1と連結した部分でなくても,ある0に連結した部分は0exp(tA)ですから,リー群Gの構造自体は基本的にexp(tA)によって特徴付けられます。

 

すなわち,Gはd/dt=0exp(tA)=Aなる線形微分方程式で特徴付けられるわけです。

これの左辺=d/dtは(t)のtの増加するときの接線方向への動きを示しています。

 

そして,"接線の傾き=接ベクトル"というのは,Δ/で定義されますから,右辺のAがパラメータtの微小増分Δtに対するそれ,と同定されます。

そこで,Gの要素を1つ固定して,単位元:1=(t=0)からのあらゆる接線方向への動きを考えると,微分方程式の右辺にはリー代数のあらゆる要素Aがの接線方向として出現すると考えられます。

 

そこでGの接ベクトルのなす空間は,Gのリー代数と同一視されるわけです。 

このとき,(t)∈Gの任意関数h()に対して,{dh()/dt}|t=0(∂h/∂)となりますが,{dh()/dt}|t=0()なる線形演算子が多様体G上の1点における接ベクトルと定義されます。

今の場合には(∂/∂),or =Σkkjik(∂/∂ij)ですから,(∂/∂)が(t)∈Gでの,"主ファイバー束Pに対する変換群Gによる運動=垂直向きを示す単位ベクトル"を示し,一方,A=(A)ij(d/dt)/の方は"多様体=群G"の1つの点における"接ベクトルの大きさ=成分"を示していると考えられます。

以下では,簡単のため,式の中で"同一の添字が2回現われ,それについて和をとる=縮約する",場合には和記号Σを省略します。

 

例えばΣkkjik(∂/∂ij)を単にAkjik(∂/∂ij)と表記するアインシュタインの規約を用いることにします。 

そして,多分に天下り的ですが,主ファイバー束Pの1点(x,);0exp(tA)における水平方向は,1次結合:{∂/∂xμ-Aμ,kjik(∂/∂ij)}なる形で与えられると定義します。

 

リー代数の元:Aμ(x)は通常無限個ありますから,実は水平方向というのは無数にあることになります。

特にGがユニタリ群SU(N)の場合を考えているので,(1+tA)(1+tA)=1より,A=-Aですから,Aは反エルミート行列(anti-Hermitian)です。

 

μ(x)が物理量としてのゲージ場であればエルミート行列であるべきですから,水平方向の定義:{∂/∂xμ-Aμ,kjik(∂/∂ij)}においての(-iA)を改めてAと考えます。

 

そうすれば,A=AとなってAはエルミート行列となり,水平方向は{∂/∂xμ-iAμ,kjik(∂/∂ij)}なる形になります。

さて,主ファイバー束Pのパラメータtによる底空間M上の曲線:x(t)を(t)∈Gによって移動させた曲線^上の点p=(x(t),(t))における接線は,通常の感覚では(dx/dt,d/dt)です。

 

しかし,任意関数h()に対して{dh(x,)/dt}|t=0(x,)によって定義される微分演算子を接ベクトルとする見地では,接ベクトルは=d/dt=(dx/dt)(∂/∂x)+(d/dt)(∂/∂)=(dxμ/dt)(∂/∂xμ)+(dij/dt)(∂/∂ij)です。

この曲線^上の点における接線方向が,底空間上の水平面上の曲線の接線方向(dxμ/dt)(∂/∂xμ)と同じく水平になること,つまり,曲線^が曲線の平行移動になる条件は,

 

d/dt=(dxμ/dt)(∂/∂xμ)+(dij/dt)(∂/∂ij)の右辺が[∂/∂xμ-iAμ,kjik(∂/∂ij)]の1次結合になること,(dxμ/dt)[∂/∂xμ-iAμ,kjik(∂/∂ij)]となることです。

このことから,平行移動の条件として(dij/dt)=-iAμ,kjik(dxμ/dt)が結論されます。

 

これを形式的に解けば,(t)=(0)Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}となります。

 

こうして,(0)から出発して水平な曲線が定義されます。

ここで右辺の記号Pは,行列Aμ(x)は一般に積分が経路に依存する回転的な量であって,非可換な量なので,右辺の指数部分が経路順化されているという意味,つまりP積(P-product)で定義されていることを示しています。

つまり,指数関数因子は,Pexp{-i∫0tμ(x(τ))(dxμ/dτ)dτ}≡Σn[{(-i)n/n!}∫0tdτ1...∫0tdτn{Aμ(x(τ1))...Aμ(x(τn))}{dxμ1)/dτ1}...{dxμn)/dτn}]で定義されているわけです。

ところが,(dij/dt)=-iAμ,kjkj(dxμ/dt)のAμ(x)は一般に座標の取り方に依存します。

 

すなわち,同一のx=x(t)に対しての代わりに'(t)=(t)・∈Gを取って主ファイバー束Pの点pの座標として(x,')を採用したときのpにおける水平方向は,{∂/∂xμ-iA'μ,kj'ik(∂/∂'ij)}={∂/∂xμ-i('A'μ)(∂/∂')}となります。

 

そして,これが{∂/∂xμ-iAμ,kjik(∂/∂ij)}と一致することが要求されます。それ故,'=,∂/∂-1(∂/∂)を代入するとA'μ(x)=-1μ(x)となります。

また,"近傍系=地図(chart)"の選択が違う場合,つまり,xの属する地図Uβが別の地図Uαに代わるとき,もちろん,x∈Uβ∩Uαですが転移関数をφαβ(x)とするとき,すなわち地図Uβ上での点pの座標(x,)が地図Uβ上では(x,')となるとき'=φαβによって転移が表わされるわけですが,一方,このときも,ある∈Gにより,'=と書くこともできます。

したがって,および,'がそれぞれ,Uα,およびUβ上でのxを含む切断面α(x),β(x)であるとし,地図Uβから別の地図Uαへの転移に伴なう変換:βα(x)で表現するなら,β(x)=α(x)βα(x)と書けてφαβ(x)の代わりにβα(x)を転移関数と称してもいいわけです。

ところで水平性の性質は,多様体上の地図(つまり,座標系)の取り方によって変化しては困る概念です。

  

それ故,{∂/∂xμ-iA'μ,kj'ik(∂/∂'ij)}と{∂/∂xμ-iAμ,kjik(∂/∂ij)}を等しいと置けば,先の同じ座標系での異なる座標の話ではA'μ(x)=-1μ(x)になると書きましたが,が転移関数としてxの関数(x)である場合には,'A'μ(∂h/∂')=μ(∂h/∂)となるべきです。

'(x)=(x)(x)より,df'=d・dなので(∂h/∂')-1(∂h/∂)-1(∂h/∂)-1(∂h/∂)-1(∂h/∂)-1(∂/∂x)ですから,上式の両辺に右からこれを掛けて,A'μ=Aμ(∂h/∂)[(∂h/∂)-1(∂h/∂)-1(∂/∂x)]=Aμ-Aμ(∂h/∂)(∂h/∂)-1(∂/∂x)を得ます。

 

それ故,A'μ-1μ-1μ(∂h/∂)(∂h/∂)-1(∂/∂x)となります。

ところが,(dij/dt)=-iAμ,kjik(dxμ/dt)により,d=-i(μ)dxなので,(∂h/∂)=iAμ-1-1(∂h/∂x)と書けますから,結局,'μ-1μi-1(∂/∂x)なる変換性が要求されます。 

αとUβ^上の点の座標が(x,)から(x,')へと変わるだけでなく,(x,)→(x',')に変えられる場合,例えばxが時空座標を表わし,群Gが時空自身の一様性や等方性などの対称性と関わる場合などもありますが,x→x'の変化は容易に扱えるので,上記の論議ではx=x'とした場合,になっていますが,そうした拡張は容易です。

 

そして,物理学ではこの変換はゲージ変換と呼ばれています。

今日こそは終わりまで進もうと思っていましたが,まだまだ長くなりそうなので,切りのいいところということで,ここで,またまた一旦,中断します。

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社),松本幸夫著「多様体の基礎」(東京大学出版会)

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2007年11月17日 (土)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(2)

ベリー(Berry)の位相に関する記事の続きです。

 

前回は断熱定理の証明をしたところまででした。ここでは,まず断熱定理が有効な具体例を1つ挙げます。

ハミルトニアンがH(t)≡-σ(t)で与えられる簡単な物理系を考えます。ここに(t)≡(B0cosωt, B0sinωt,B3)です。また,σ=(σ123)はパウリ(Pauli)のスピン行列です。

 

そして,ベクトル(t)の角度θをtanθ≡B0/B3で定義します。 

つまり,(t)はz軸の正の向きと角度θをなす向きを持つ磁場でありσは定数係数を無視したスピン磁気モーメントμを表わします。

 

一般には,μ={gehc/(2mc)}σです。ただしgは磁気回転比で構造のないフェルミ粒子なら,g=2 です。また,hc≡h/(2π)はプランク定数です。

 

すなわち,μ=eghcσ/(2mc),H=-μという普通の表現においてσμと同一視して,H=-σと簡略化したものです。

そして,このハミルトニアンは,例えば座標原点にあるスピンσ,あるいは磁気モーメントμの"磁石"が磁場の影響を受ける状況を記述していると考えられます。

スピン行列σは2行2列の行列ですから,ハミルトニアンH(t)=-σ(t)も2行2列の行列です。

 

そして具体的にパウリのスピン行列σの成分を代入し線形代数の固有値問題としてHの固有値を求めると,それらは±Bとなります。B≡(B02+B32)1/2です。 

これらの,H(t)=-σ(t)の固有値-B,Bのそれぞれに属する固有ベクトルを2次元の縦ベクトルとして,1(t),2(t)と表わせば,1(t)=t(exp(iωt)cos(θ/2),sin(θ/2)),2(t)=t(exp(iωt)sin(θ/2),-cos(θ/2))と書けます。

 

ここで,特に有用な公式としてtan(θ/2)=B0/(B3+B)が成立することにも留意しておきます。

 

念のため再掲しますが,B=(B02+B32)1/2です。

つまり,今の場合には,n(t)(n=1,2)の位相(自由に選択できます)を条件:n(t=2π/ω)=n(t=0)を満たすように取っています。

初期時刻t=0 で,系がHの固有状態1(t=0)にあるとし,その後の任意時刻tでの状態を示すベクトルをψ(t)とすると,ψ(t)=c1(t)1(t)+c2(t)2(t);c1(0)=1,c2(0)=0 と表現されます。

 

そして,ψ(t)の時間発展は,それの運動方程式であるシュレーディンガー方程式:ihcψ(t)/∂t=H(t)ψ(t)に従って決まります。

そこで,ψ(t)=c1(t)1(t)+c2(t)2(t)をこれに代入すると,(dc1(t)/dt)1(t)+c1(t)(∂1(t)/∂t)+(dc2(t)/dt)2(t)+c2(t)(∂2(t)/∂t)≡(-i/hc){-σ(t)}{c1(t)1(t)+c2(t)2(t)}となります。

そして,先述したように,1(t)=t(exp(iωt)cos(θ/2),sin(θ/2)),2(t)=t(exp(iωt)sin(θ/2),-cos(θ/2))なので,∂1(t)/∂t=iωt(exp(iωt)cos(θ/2),0),∂2(t)/∂t=iωt(exp(iωt)sin(θ/2),0)です。

 

また,{-σ(t)}1(t)=-B1(t),{-σ(t)}2(t)=B2(t)です。

そこで,結局,(t)≡t(c1(t),c2(t))と置いて具体的に整理すると,ある2×2の定数行列をKとして,d(t)/dt=(-i/hc)K(t)なる定数係数の線形斉次微分方程式が得られます。

これの解はもちろん,(t)=exp(-iKt/hc)(0)です。

 

特にKの固有値をE±とし,それぞれに属する固有ベクトルを1,2とすると,K(1,2)=(E1,E2)ですからT≡(1,2)と置けば,T-1KTは固有値E±を対角成分とする対角行列になります。

 

そこで,(t)=T(t);(t)≡t(e(t),e(t))と定義すると,先述した解の形(t)=exp(-iKt/hc)(0)はe±(t)=e±(0)exp(-iE±/hc)となり,簡単な定常解の形に帰着します。

 

そしてまた,初期条件(0)=t(1,0)は,(0)=t(e(0),e(0))=T-1t(1,0)と書くことができます。

ここで,断熱近似として,磁場(t)≡(B0cosωt,B0sinωt,B3);B=(B02+B32)1/2において,時間変動を示す角振動数ωが非常に小さい,という近似:hcω/B<<1を適用します。

 

これを用いると,行列T=(1,2)の具体的な形は1t(hcωsinθ/B,1),2t(1,hcωsinθ/B)と近似され,この近似では初期条件は(e(0),e(0))~(hcωsinθ/(4B),1)と書けます。

こうして,断熱近似の下ではψ(t)~1(t)exp(-iE/hc);E~-B+(hcω/2)(1+cosθ)となります。

 

そして(t)の位相因子exp(-iE/hc)の位相=-E/hcの値は,Bt/hc-(ωt/2)(1+cosθ)={(B/hc)-(ω/2)(1+cosθ)}tで近似されます。

 

一方,1(t)はH(t)の固有値-Bに属する固有ベクトルですから,H(t)1(t)={-σ(t)}1(t)=-B1(t)です。

ここで,前回の論議で与えた任意の状態ベクトル|ψ(t)>のH(t)の固有ベクトルによる展開式の表現:|ψ(t)>=Σnn(t)|n(t)>exp{(-i/hc)∫0tn'(t')dt'};En'(t)≡En(t)-hcηn(t),ηn(t)≡i<n(t)|(d/dt)|n(t)>を,今の場合に適用します。

 

ただし,|ψ(t)>→ ψ(t),|n(t)>→ 1(t)と読み換えます。

 

このとき,定義式E1'(t)=E1(t)-hcη1(t)におけるH(t)の固有値E1(t)はE1(t)=Bなる定数で与えられます。

 

一方,∫0tη1(t')dt'=∫0t[i1*(t'){d1(t')/dt'}]dt'=-∫0t[ωcos2(θ/2)]dt'=-(ωt/2)(1+cosθ)です。

 

そこで,ψ(t)の位相-E/hc=Bt/hc-(ωt/2)(1+cosθ)のうちで,E1(t)=Bに由来する(Bt/hc)を除いた-(ωt/2)(1+cosθ)が確かに∫0tη1(t')dt'に一致しています。

この例のように,ハミルトニアンH(t)が時刻tと共にゆっくりと変化する場合,つまり断熱近似が可能であり,その上ある時間Tの後には再び出発時と同一のH(t)に戻る場合を考えます。

 

そしてハミルトニアンH(t)の周期的な時間依存性が,あるパラメータの集合を一般的なn次元ベクトルで表現したもの(t)を通してのみ出現するとします。さらに以下ではn≧2 であると仮定します。

以下では,しばらくの間,上述のパラメータ依存性を強調するために波動関数やハミルトニアン等,系を記述する物理変数を(t)のみの関数として表現し,他の変数に関する依存性については省略します。

  

さらに,こうして表現されたハミルトニアンH((t))は断熱定理が成立するための諸条件を全て満たしていると仮定します。

さらに,H((t))の固有値は全て離散的であるとします。

 

そして,特に出発時:t=0 において,波動関数は,その1つの固有状態:m番目の固有状態にあったとします。すなわち,|ψ(t=0)>=|m((0))>と仮定します。

出発後:t>0 での波動関数は一般に|ψ(t)>=Σnn(t)|n(t)>exp{(-i/hc)∫0tn'(t')dt'};En'(t)≡En(t)-hcηn(t),ηn(t)≡i<n(t)|(d/dt)|n(t)>なる形で与えられます。

 

これに断熱定理の結論:cn(t)=δnm+O(1/T)を考慮して右辺第2項のO(1/T)を無視すると,|ψ(t)>=|m((t))>exp{(-i/hc)∫0tm'(t')dt'}=|m((t))>exp{(-i/hc)∫0tm(t')dt'}exp{-iγm(t)};γm(t)≡∫0tηm(t')dt'=i∫0t<m((t'))|(d/dt')|m((t'))>dt'なる|ψ(t)>の表式を得ます。

(t)の周期Tに対して,0≦t≦Tの間に(t)が描くループ(閉路)をとすると,γm(T)=i∫0T<m((t))|(d/dt)|m((t))>dt=i∫<m((t))|∇R((t))>d(t)=γm()です。

 

先に述べたように,i<m((t))|(d/dt)|m((t))>は実数ですから,γm(T)=γm()は実数です。

さらに,この閉路に対してストークスの定理を適用すると,γm()=-Im∫<m()|∇m()>d=-Im∫∫[∇×<m()|∇m()>]dですが,∇×∇m()=0 ですから,γm()=-Im∫∫[<∇m()×|∇m()>]dと書けます。

 

そして,各における状態ベクトルの完全性Σn|n()><n()|=1 を挿入し,<m()|∇m()>が純虚数ゆえn=mは寄与しないことを考慮すると,γm()=-Im∫∫n≠m<∇m()|n()>×<n()|∇m()>]dが得られます。

前記事では,<k|[(ihcn{(dcn/dt)|n>-(i/hc)En'cn}|n>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}]=<k|[Σnn|n>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}]によって<k|(d/dt)|n>=-<k|∂H/∂t|n>/(Ek-En) (k≠n)が成立することを示しました。

 

これとほぼ同様にして,<n()|∇m()>=-<n()|∇H|m()>/(En-Em)(n≠m)が成立します。ここでも,Enのtへの依存性,つまり(t)への依存性を示す表現:En()を省略した表現Enetc.を用いました。

この表現を代入すれば,γm()=-∫∫m()d,ただしm()≡Im[Σn≠m{<m()|∇H|n()>×<n()|∇H|m()>/(En-Em)2],なる表式が得られます。

 

こうした線積分や面積分等々で表わされる量:γm()は一般にはゼロとは限らない有限値であり,1953年にこれの最終的定式化を与えたベリー(Berry)の名をとってベリーの位相と呼ばれています。

先に述べたように,固有ベクトル|m((t))>の時間tへの依存性は(t)を通してのみ生ずるとしています。

 

閉路,あるいはループでは(T)=(0)であり,上では|m((t))>は(t)について1価であって,特に|m((T))>=|m((0))>であるとしています。

 

しかし,大域的にはの構成する空間全てにおいて,|m()>に連続的に1価性を要求できない場合も有り得ます。

 

ただ,ここでの議論では局所的に1価であれば十分な話です。

  

こうした場合にはの構成する空間は幾つかのシートを持つことになり,この空間の中でシートを変更するときには,|m()>の位相をシートごとに翻訳して変動させることになります。

 

しかし,ベリーの位相γm()については|m()>と<m()|で位相が相殺するので,このγm()には|m()>の位相は関与しないため,別段,困った問題は生じません。

ただし,の空間そのものが多重連結の場合には,どうしても|m()>が,|m((T))>=|m((0))>を満たさないような多価性を持つ場合があり,こうしたときにはベリーの位相とは別の位相も発生します。

 

しかし,以下ではこの後者の場合は例外であるとして考えないことにします。

さて,|ψ(t)>=|m((t))>exp{{(-i/hc)∫0tiEm(t')dt'}exp{-iγm(t)}のうちで因子:exp{{(-i/hc)∫0tiEm(t')dt'}を取り去った残りを,|φ((t)>≡|m((t))>exp{-iγm(t)}と定義します。

 

もしもEm(t)≡0 なら|φ((t)>は|ψ(t)>と一致しますから,そのときには,これはシュレーディンガー方程式の解です。

こう定義したとき,|φ((T)>≡|m((T))>exp{-iγm()}=|m((0))>exp{-iγm()}ですから,|m((t))>が1価であるのに対して|φ((t)>は一般に1価ではなく,"非可積分の位相=ベリーの位相":γm()を伴うことになります。

こうした非1価性を特徴付ける式は<φ((t))|(d/dt)|φ((t))>=0 です。

 

この等式はγm(t)の定義:γm(t)≡i∫0t<m((t'))|(d/dt')|m((t'))>dt'を考慮して,左辺を実際に計算してみれば容易に確かめられます。

途中ですが,この後の論議が思っていたよりかなり遠大な話で,数日考察しながら,続きの記事を書いていましたが簡単には終わらないようなので,ここで一旦中断し,残りについては次回にまわします。

 

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

  

PS:ついでに普通の日記を少し書きます。

 

昨日11/16(金)は,久しぶりに昼頃,帝京大病院で診察を受けた後,都営三田線の志村坂上にある会社に行こうと思いましたが,バスで板橋駅まで行くお金がもったいないと思って,徒歩で三田線板橋本町駅に向かいました。

 

障害者手帳があるため,都営交通の料金は全て無料なので,駅まで歩けば交通費はいらないのですが,ここを通るバスは民営なので半額になるだけなのです。

 

しかし,はじめてで道がよくわからなかったので,病院のそばにあった小学校か中学校かの門のそばで,私より年配のガードマンに道を尋ねたところ「この道をまっすぐ進めば中山道(国道17号)に出る,橋があろうと何があろうととにかく進みなさい。」と教えられました。

 

例によってイタズラ心が湧いてきて「フムフム,まっすぐね。塀があったら乗り越えるとか,ぶち破るとかして,どこかの家の中を通ってね。」と冗談を交えて念を押しました。

 

ひょっとして怒られるかと思ったら,ニコニコと笑って「いや,そんなことはないよ。」と真面目に答えられました。

 

そして,その通りまっすぐ進みましたが,かなり進んだ途中で案の定,道がなくなり,まっすぐ進むと川の中に入るという状況が生じましたが,周りをよく見ると,少し左側に移動すれば,また,まっすぐな道が続いているのが見えて,結局,無事に中仙道にぶつかり,板橋本町駅にも,たどりつきました。

 

ガードマンのじいさん,どうもありがとうございました。。

 

そういえば,病院でも医者から名前を呼ばれているのにノートパソコンで作業中で,パソコンの電源切断中にまた呼ばれたので,少し大声で「ちょっと待ってください。」などと苛立ち気味に答えていたら,待合室にいた他の患者が何事かと驚いていました。

 

そうですね,病院の待合室では患者の方が今か今かと呼ばれるのを待っていて呼ばれると待ってましたとばかりに病室に向かう,という方が普通の光景でしょうから,その逆は少し違和感があったかも。。

 

さらに,病室でもシモネタや「男性の自信回復には黒ウコンがいい」などとネットショップのパンフレットを出して商品の宣伝をしたりして,医者をからかうような話もあったりで,診察受けるにしても,道を尋ねるにしても,どんな場合でも楽しむ,という自分の生き方の指針に忠実な1日でした。

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2007年11月12日 (月)

草薙幸二郎氏逝く

 俳優で最近のTVでは悪役で有名だった草薙幸二郎氏が亡くなったらしい。   

         

 新宿ゴールデン街(高橋征男さん)との関係で,草薙幸二郎の弟さんの草薙良一氏出演の芝居は結構,何作か観ていましたが,その関係から,数年前に確か銀座か新橋のはずれの小さな劇場で,草薙幸二郎,草薙良一,両氏の共演する現代演劇をただ1回見た覚えがあります

     ↓草薙良一氏です。

      

 題名も忘れていて,それほど印象に残っていませんが,私が直接観劇したことのある数少ないメジャーの俳優だということで特別に冥福を祈らせてもらいます。(← PS:ネットで調べたら「おばこ旅館ものがたり」でした。) 

      合掌!!

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2007年11月11日 (日)

ベリーの位相とアハラノフ・ボーム効果(1)

 今日はカシミール効果(Casimir effect)と一見似ているように見えて,実は零点効果とは異なる種類の現象であるアハラノフ・ボーム効果(AB効果)を,量子論におけるベリー(Berry)の位相と関連付けるという話題を取り上げます。

 今日のところは,第1段階として"量子力学における断熱定理"を紹介することにします。

通常の1粒子系の運動を記述する波動方程式がシュレーディンガー方程式:ihc∂ψ(q,t)/∂t=H(q,p,t)ψ(q,t)で与えられるのは既成の事実です。(hc≡h/(2π)はプランク定数)

 もしも,ハミルトニアンHが時間tに陽には依存しない場合に,qとtを変数分離した形の波動関数ψ,ψ(q,t)=exp(-iEt/hc)ψ(q)なる形の場合を仮定すると,ψ(q)は定常型の波動方程式,すなわち,時間に依存しないシュレーディンガー方程式:H(q,p)ψ(q)=Eψ(q)を満足します。

このとき,右辺の定数EはハミルトニアンHの固有値,すなわち,エネルギー固有値です。そして,ψ(q)はこの固有値Eに属するHの固有ベクトルと呼ばれる関数です。

ここで,この時間に依存しないシュレーディンガー方程式:H(q,p)ψ(q)=Eψ(q)を一般化して,Hが時間tに陽に依存するとした"定常型"の方程式:H(q,p,t)φ(q,t)=E(t)φ(q,t)を考えます。

この方程式も,Hの固有値方程式であることには違いありませんが,φ(q,t)が通常の意味の時間に依存する物理的な波動関数かどうかは,不明です。

 

ここでは議論を見易くするためにHの固有値は全て離散的であると仮定し,また当分の間t依存性のみを強調して座標変数qは省略します。

 

さらにディラック括弧(Dirac's bracket)の表記法を採用すると,方程式は,H(t)|n(t)>=En(t)|n(t)>と書けます。

ただし,|n(t)>は固有値の平均値が小さい方から第n番目のエネルギーに対応する時間依存の固有値En(t)に属する固有ベクトルです。

 

さらに,一般に第n番目というnは単なる整数ではなく,多成分の量n(t)≡(n1,n2,...,nN)を意味する拡張された概念とします。

 

つまり,記号は単純に見えるのですが,主量子数以外の量子数により分類した暗に縮退を考慮した表現になっています。

そして,ハミルトニアンH(t)はエルミート作用素なので,異なる固有値に属する固有ベクトルは直交します。

 

さらに,固有ベクトルは規格化されているとして,<k(t)|n(t)>=δkn を満たしているとします。

 

ここに,<k(t)|は|k(t)>のエルミート共役を意味し,<k(t)|n(t)>は状態のヒルベルト空間の2つのベクトル|k(t)>と|n(t)>の内積を意味します。

ディラックの記法では,座標qの固有ベクトル|q>が存在すると想定したとき,状態ベクトル|n(t)>の波動関数:φn(q,t)は規格化定数を適切に指定すればφn(q,t)=<q|t>と表わされます。

ここで,H(t)|n(t)>=En(t)|n(t)>の両辺をtで微分した後,左から<k(t)|を掛けると<k(t)|H(t)(d/dt)|n(t)>+<k(t)|∂H/∂t|n(t)>=<k(t)|En(t)(d/dt)|n(t)>+(∂En/∂t)<k(t)|n(t)>となります。

  

それ故,{-Ek(t)+En(t)}<k(t)|(d/dt)|n(t)>=<k(t)|∂H/∂t|n(t)>となりますから,k≠nなら<k(t)|(d/dt)|n(t)>=-<k(t)|∂H/∂t|n(t)>/[Ek(t)-En(t)]なる等式が得られます。

また,k=nなら<k(t)|n(t)>=<n(t)|n(t)>=1なので(d<n(t)|/dt|n(t)>+<n(t)|(d/dt)|n(t)>=0 も成立します。

 

第1項と第2項は複素共役なので,これは<n(t)|(d/dt)|n(t)>の実部がゼロになることを意味しますから,<n(t)|(d/dt)|n(t)>は純虚数です。

 

以下の論議の準備として,これらの性質を念頭に入れておきます。

ところで,方程式H(t)|n(t)>=En(t)|n(t)>の解|n(t)>はシュレーディンガー方程式:ihc|ψ(t)>/∂t=H(t)|ψ(t)>の解である実際の物理的な状態ベクトル|ψ(t)>とどのような関係にあるのでしょうか?

 

これの意味を理解するために,一般の状態ベクトル|ψ(t)>を次のように|n(t)>で展開した形で表現することにします。

すなわち,展開係数をcn(t)として|ψ(t)>=Σnn(t)|n(t)>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}と表現します。ここにEn'(t)≡En(t)-hcηn(t),ηn(t)≡i<n(t)|(d/dt)|n(t)>と定義しています。

 

この展開において,指数関数因子の部分を単純なエネルギーEn(t)自身の指数関数ではなく,上に定義したようなEn'(t)の積分の指数関数で表現した理由については,後述する文脈から理解できるはずです。

この展開式による|ψ(t)>の表現を,運動方程式 ihc|ψ(t)>/∂t=H(t)|ψ(t)>に代入して,それから<k(t)|を左から掛けます。

  

こうすれば,状態関数におけるtを省略して<k|[(ihcn{(dcn/dt)|n>-(i/hc)En'cn}|n>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}]=<k|[Σnn|n>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}]となります。

したがって,<k|(d/dt)|n>=-<k|∂H/∂t|n>/(Ek-En) (k≠n)により,dck/dt=Σn≠k[{<k|∂H/∂t|n>/(Ek-En)}exp{(i/hc)∫Ekn'(t')dt'}cn]となります。

 

ここで,Ekn'(t)≡Ek'(t)-En'(t)と置いています。

 

ここまではエネルギー固有値が離散的であると仮定しましたが,それ以外の点では,これらのことは大体において一般的に成立する話です。

さて,時刻t=0 で系はm番目の固有状態にあるとします。すなわち,|ψ(t=0)>=|m(0)>とします。

 

ハミルトニアンH(t)はt=0 からt=Tにかけて断熱過程である,つまり,"対象としている系は時間と共に非常にゆっくりと変化する"と仮定します。

これを表現するために,t≡τT,0≦τ≦1なる関係式によって新しく無次元のパラメータτを導入します。またTは非常に大きな数であるとします。

 

今想定している状態の波動関数|ψ(t)>は,固有状態|m(0)>から出発しても,時間発展と共に先に表現した|ψ(t)>=Σnn(t)|n(t)>exp{(-i/hc)∫En'(t')dt'}の形で明らかなように,一般に干渉して初期状態とは異なる固有ベクトル成分|n(t)>を含むようになります。

しかし,以下に示す断熱定理の条件の下では,エネルギー固有値Em(t)に属するベクトル|m(t)>以外の成分の|ψ(t)>への寄与はほとんど無いことがわかります。

 

つまり,|ψ(t)>は,ほぼ確実にエネルギー固有値の準位の番号を変えることなく時間発展していくということを証明できます。

以下では,簡単のためにEn(t)=n(τT)をn(τ)なる簡略化した表記で表現することにします。

 

そして,量子力学における断熱定理は,初期条件cn(0)=δnmに対し,"n(t)=δnm+O(1/T)である"という表現で与えられます。

断熱定理が成立するための条件,"ハミルトニアンH(t)がt=0 からt=Tにかけて断熱過程である,あるいは時間と共に非常にゆっくりと変化する"というのは,厳密には次に与える2つの条件を満足することを意味しています

すなわち,物理系は(1):|<k(τ)|∂H(τ)/∂τ|n(τ)>/[Ek(τ)-En(τ)]|<Mkn (2):|1/[Ek'(τ)-En'(τ)]|<Nなる2条件を満たすとするわけです。

 

ただし,これらの条件式においては,k≠nを仮定しています。そして,Nはある正の定数,Mknはある定数行列の成分です。

 

こうした条件は,エネルギー準位が縮退していないなら大抵の物理系で成立すると予期されるもので,物理系の有する一般的な性質であると考えてよいと思われます。

以下は,上述の条件の下で,"n(0)=δnm⇒ cn(t)=δnm+O(1/T)"なる断熱定理が成立することの証明です。

(証明) まず,係数k(t)に対する時間発展の運動方程式dck/dt=Σn≠k[{<k|∂H/∂t|n>/(Ek-En)}exp{(i/hc)∫Ekn'(t')dt'}cn]をdck(τ)/dτ=Σnkn(τ)cn(τ)と書き換えます。

 

ここで,k=nならUkn(τ)≡0,k≠nならUkn(τ)≡<k(τ)|∂H(τ)/∂τ|n(τ)>/[Ek(τ)-En(τ)]exp{(iT/hc)∫Ekn'(τ')dτ'}です。

そうして,dck(τ)/dτ=Σnkn(τ)cn(τ)は1階線形微分方程式ですから解くのは極めて簡単で,初期条件ck(0)=δkmを満たす解ck(τ)は次のようになります。

 

k(τ)=δkm+Σj=10τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ20τ2dτ1[U(τ)U(τj)..U(τ2)U(τ1)]knと書けます。

ここで,積分Ikn(τ)≡∫0τdτ'Ukn(τ')を考えれば,|Ikn(τ)|<Mkn|∫0τdτ'exp{(iT/hc)∫0τ'kn'(τ")dτ"}|です。

 

この不等式は,Δkn(τ)≡∫0τkn'(τ')dτ'と置けば,|Ikn(τ)|<Mkn|∫0Δkn(τ)dΔkn(τ')[exp{iTΔkn(τ')/hc}/{dΔkn(τ')/dτ'}]|と変形されます。

そして,1/{dΔkn(τ)/dτ}=1/Ekn'(τ)=1/[Ek'(τ)-En'(τ)]により,|Ikn(τ)|<NMkn|∫0Δkn(τ)dΔkn(τ')exp{iTΔkn(τ')/hc}|となります。

ところで,∫0Δ(τ)dΔexp(iTΔ/hc)=[exp(iTΔ/hc)-1]/(iT/hc)=2(hc/T)exp{iTΔ/(2hc)}sin{TΔ/(2hc)}ですから,結局,|Ikn(τ)|<2hcNMkn/T が得られます。

k(τ)=δkm+Σj=10τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ20τ2dτ1[U(τ)U(τj)..U(τ2)U(τ1)]kmにおいて,0τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ20τ2dτ1[U(τ)U(τj)..U(τ2)U(τ1)]km0τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ2[U(τ)U(τj).. U(τ2)]kl0τ2dτ1lm1)と変形できます。

 

そこで,|ck(τ)-δkm|<Σj=1|∫0τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ2[U(τ)U(τj).. U(τ2)]kl|(2hcNMlm/T)と書けます。

したがって,帰納的に,|ck(τ)-δkm|<(2hcNMlm/T)Σj=1(Mj-1)kl0τdτj0τjdτj-1..∫0τ3dτ2|=(2hcNMlm/T)Σj=1{(τM)j-1}kl/(j-1)!です。

 

よって,|ck(τ)-δkm|<(2hc/T)exp(Mτ)kllm(2hc/T){exp(Mτ)M}kmとなります。

  

{exp(Mτ)M}kmは明らかに有限値ですから,これは断熱定理の結論:k(t)=δkm+O(1/T)の成立を意味します。(証明終わり)

今日は切りがいいのでここまでにします。

参考文献:矢吹治一 著「量子論における位相」(日本評論社)

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2007年11月 9日 (金)

今日の雑感

 ちょっと日記らしいことを書こう。

 朝目が覚めて酔いが覚めて少し疲れた気分です。

 もしも"旧居=ワンルーム"が売れて借金が返せたら,親父の31回忌以来会っていない母親に11年ぶりに会うために岡山の田舎に帰ろう。。この前会ったときは75歳だったけど,この11月で87歳になるはずだ。。。

 4人兄弟の上3人は,まともに結婚して子を成し,普通の暮らしをしているのに末っ子の私だけが,どうしようもないグータラで心配かけてるおかげで母親は長生きしてます。。。。

 朝っぱらからバックグラウンドで映画「ブラザー・サン,シスター・ムーン」の唄の場面が流れています。

  

 聖フランチェスコにはなれないけど,昨日は会社の売れ残りの紫芋を1箱,巣鴨駅の最近仲良くなったホームレスの元露天商という方にあげちゃった。。。

 ああ,また自慢話。。まだ酔ってる。。。

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2007年11月 7日 (水)

Re.学問をするという贅沢

 今日も手抜きというかちょっと変わった試みでお茶を濁したいと思います。

 前記事「学問をするという贅沢」というのは,盛り上がっているところには必ず水を差したい,あるいはベストセラーとか人気のあるものに対しては批判したい,という私自身の天邪鬼的な性格ゆえに,最初から皮肉を込めた内容ですが,実は私個人の問題としては,結構重たい話題です。

 しかし,他の当事者にとっては片腹痛いという程度の話に過ぎないと思われるので,この記事にコメントが付くことはあまり期待していませんでした。

 しかし,今日11/7になって,錚々たる面子のお二人にコメントを頂きました。

 ブログ記事へのコメントは,ブログは個人的な日記であって掲示板ではないということもあり,通常はアフィリエイト広告よりも下に申し訳程度に表示欄があって,気付かない人は通り過ぎてしまうような目立たないものですが,個人のブログだからといってコメントを拒否するはずもなく,私の場合は,むしろ歓迎しているつもりです。

 過去にも病気のお見舞いコメントや,結構貴重なご意見とそれに対する興味深いと思われるレスポンスが多々ありますが,私自身がただニフティのココログのテンプレートの形式に従って表示しているだけなので,コメントを目立たせるすべをよく知りません。

 そこで今回に限りブログの宣伝も兼ねて,コメントを本文として表示し,それに対する私の返答を記入してブログ記事にしてみました。要するに面倒臭いからという手抜きの1つです。

 まず,わか様のコメントです。

 ※ 当時のスオペです。

 あの頃からTOSHIさんには色々教えていただいていましたが,フォーラム運営の協力をお願いする気には全くならなかった理由がわかった気がします。

 当時は漠然とTOSHIさんは運営側に立つのが似合わないなぁ;と思っていましたが,そういう考えだったのをなんとなく感じ取っていたのかも知れません。※  

 私=TOSHIの返答をコメント形式で書きます。

 ども,わかさん,というより親しみをこめてBLIZZARDさん,

 こんにちは。TOSHIです。コメントありがとうございます。

 別に個人攻撃をするつもりはなくて単に当時のサロン的雰囲気全体について述べたつもりでしたが,結果的に責任者としてのシスオペへの個人攻撃になったとしたらごめんなさい。

 生意気なことを言えば,当時はBLIZZAEDさんにとっては,いわゆるひよこから脱皮するような時期だったと思いますが,今や趣味ではなく学問することが専門の仕事になっておられるのでそれを攻撃することはできません。

 自分の得意な分野を生かして,それを職業とすることまで批判するならば,スポーツ分野ですがイチロー,松坂,や中村俊輔など得意な才能を生かして活躍する人たちをも贅沢だと批判することになります。

 後のコメントで明男さんが述べておられるように,私の批判の対象になるか否かは例えば傲慢な雰囲気があるかどうか,というような非常にわずかな差の部分です。本人が気がつかないならそれで済むことでもあります。

 上述のような精神的な面とは別の側面ですが,例えばメジャーリーグに入った松坂のように100億前後という法外なと見える報酬を受けているとかの個々のケースの不公平感を批判しようと思ったことはありません。

 そうしたことを批判し否定するつもりなら,むしろ資本主義構造そのものを否定すべきです。

 そういう意味では,確かに私はそうした構造に対して否定的に考える思想の持ち主ではありますが,別に松坂らの個々人はそうしたスポーツのある分野の世界ではほぼ頂点のレベルにいるわけですし,不公平感を感じるとしてもそれは別段彼ら個々人の責任ではないと思います。

 日本のプロ野球人に限るならば2軍選手等も含めて,それで食べている人たちの総数で総収入を等分配すれば,日本人の平均的収入とオーダー的に比較できる程度だと思います。

 BLIZZARDさんも剣道をやっておられるからご存知でしょうが,私も高校時代は履修科目の勉強どころではなく,年間に4日の練習休みを除いては夏休みも日曜祝日も関係なく,当時はマイナーなスポーツでしたが人口だけは多い卓球に本格的に没頭して精進しているつもりでしたが,それでも高校の県大会においてさえトップグループには程遠い存在でした。

 それはそうでしょう。

 卓球部に属する高校生の皆がそうした努力をしていて,才能もバラバラです。

 種類は違ってもスポーツで頂点のレベルに達するには,もちろんそれに没頭できる家庭の金銭的余裕も必要でしょうが,お金では推し量れない才能+努力を必要とするはずです。

 まあ,そうした経験があるからこそ,スポーツの日本代表が国際大会で成績が不甲斐ないと感じても大して批判しようという気にはならず,彼らに対する見方は比較的甘くなってしまうようです。

 そもそも日本代表になることなどは,自分では想像もできないレベルの世界なのですから。。。

 脱線してしまいましたが,学問の世界でも,その道の専門家になるには,それに到るプロセスにおいて教育機関などに支払う費用ともちろん本人の並々ならぬ才能+努力に負うところが大きいわけです。

 それ故,一般的意味ではトップに立つまでの犠牲を考えると,単純に収入が多いことについてやっかむ必要はないと思われます。

 ただ,自分自身の好き嫌いの問題で言うなら,今だから言えることかも知れませんが,はるか遠くに目標を立てて,それに到達するために長い間ストイックな努力をする,という恐らく人間特有の生き方よりも,遠くの目標につながる場合もあって重なる部分もあるでしょうが,今現在を精一杯に生きるという刹那的な生き方の方に共感を覚えます。

 もっとも,これまでの私自身の生き方は,後者ではなく,残念ながら前者=「アリさんの生き方」の比重が大きいものでしたが。。。。

 ずいぶんと脱線して,例によって自己顕示欲だけのために自分の性格分析を書くというイヤらしい部分がそこかしこに出てしまいます。

 まあ,要するに盛り上がっているところには水を差したい,そしてある団体に属したとしても,主流派と反主流派があって双方の性格にあまり差がないようなときには,好んで反主流派に付くという,もって生まれたような反主流意識があるのかもしれません。

 もっとも酒の席では盛り上がる邪魔はしませんし,むしろ静かなら,宴会屋と化してしまいますが。。。

 では,いずれまたお会いしましょう。かつて飲み会で会ったときには面と向かって意見を交わすような機会がなく,こうした場でことさらに批判的なことを申してすみません。

 落ちこぼれの負け惜しみかな? 

                               TOSHI

 次に明男さんのコメントです。 

 ※失礼でなければいいのですが,やはり「孤高の人」だなあと思います。

 誰しも人に嫌われたくない.良く思われたいと思うことは自然で,何も恥じることではないと思うのですが,媚びることとの僅かな差が許せないのだと思います。

 学問に没頭するという事は一面では,学問に逃避することと同じかも知れません。

 昔風に言えば,「女房子どもを質に置いても」自分の信じる道を行く芸人みたいなもので,一方では尊敬され,一方では生活破綻者の烙印です。

 子どもの頃,「末は博士か大臣か」という言葉がありましたよね。

 名誉や地位は無条件に目指す価値のあるものと教えられ,疑問を持つことがなければ,単純であったのかも知れません。しかし,人生はそう容易いものではなかったことは,この年になると分かります。

 結局,この短い人生に何を選択して生きるのかは,自由ではなく,大きな制限(業かも知れない)の中で足掻くしかないのでしょうね。せめて,好きなように「足掻かせてよ」と言いたくなります(笑)。 ※

 そして私=TOSHIの返答のコメントです。

 ども明男さん,TOSHIです。コメントありがとうございます。

 つい夢中になって明男さんに対するコメントまでも,わかさんに対する返答の中にほとんど書いてしまったような気がします。

 確かに「末は博士か大臣か」というのは,TVの水戸黄門や暴れん坊将軍のように完全に善悪の黒白がはっきりしていると思っていたガキのころ=昔の感覚かもしれません。

 いつも思うのですが,私こそ失礼かなとは思いますが,明男さんは結構私と似た性格であるのは事実ではないかと思います。

 だからこそ私の記事の微妙な部分も察してもらえるのだと思っています。

 しかしいつも好意的なご意見ばかりなので,天邪鬼の私は逆に批判的なご意見も期待してしまうのですが,それこそ贅沢なんでしょうか。。

 わかさんと同じくいつかお会いしたいですね。  

                                  TOSHI

 これを書いている最中にもhirotaさんとはっしー帝国さんからコメントを頂きました。

 まず,hirotaさんのコメントです。

 ※私の場合は,科学は SFと同じで「こんな面白いことがある」と言いたいのが興味の理由なので,「おたく」としていやがられるのが大きいだろうと思っています。

 それでも「トンデモ」に行かないのは,トンデモはワンパターンになってツマらない,が理由)

 DHNOネタは特に面白くは感じなかったし,何度も聞くとウザイと思ったりしますが,「水酸化ヒドロニウム(今なら水酸化オキソニウムで,やっぱり水のこと,DHMO より前です)」がどうとか言ってた私には批判する資格がありません。※

 続いて,はっしー帝国さんのコメントです。

 ※TOSHIさんが心臓の病気で入院したとき,私も仕事の過労から頻脈発作と不整脈で苦しんでいて,仕事を辞めたばかりでした。

 原因は自律神経の失調だったので半年近くなろうとしている今は元気ですが,仕事は失業中のままです。

 私は,嘱託の外注のプログラマーなので納期,納期で忙しく深夜まで働いていたので何も考えなくて良かったのですが,現在,家計を切り詰め,不安の精神状態のまま自由人でいると,フィロソフィーも考えるし,物理の知らない計算の分野にも挑戦したり,「あれか,これか」実存主義者になったり鬱になったり躁になったり。。。

 TOSHIさんのこの記事を読んでシンクロしているなぁと思いました。

 あ!TOSHIさんの思ってることとは違っていました。

 でも何か何処かで共感します。 ※

 いつもなら,後のお二人にも個々にコメントするのですが今日はもう書きたいことは十分に尽くしたし,おそらく個人的なあいさつを除いては付け加える必要もないと思うのでこれで終わりにします。

 ただ,hirotaさんは私からみるとSFファンに例えるなら,かなりハードな人ですし,私のような変態オヤジにとってはほめ言葉である「おたく」としてもすごい人だと思います。

 また,はっしー帝国さんんもお体をご自愛ください。

 私も親切な方にネットショップの店長にして頂いていますが事実上は失業中です。                              TOSHI

 hirotaさんじゃないけど共感する意見ばかりだと拍子抜けします。

 たとえば陰口,悪口を平気で言うという文章なんかには,当然反論があることを期待して,予めそれに対しては,例えばあなたは聖人君子か,それとも神様か?と追求するような用意があったのですが,そうした私的な罠(と思っている)には誰もかかりませんね。

 書き忘れていましたが,クイズや試験が嫌いな理由も述べておきます。

 そもそもTV番組などのクイズや試験ならまだ許せますが,考え過ぎかもしれないけど既に正解を知っている誰かがいて,解答者を試して腹の中ではほくそえみながら他人に質問するというクイズとか試験などは私は嫌いです。

 先日もどこかのTV番組で有名なオランダのフェルメールの「牛乳をそそぐ女]という絵画について,どこがポイントか?というようなクイズをやってました。

 こんなのは正解などはないわけで見た人がどこをポイントと感じるかは自由ですからクイズにもならないと思います。これなんかはどうかしてますね。

 まあ,ちょっと見て,子供の頃大原美術館で見たエル・グレコの「受胎告知」のマリアのスカートの赤と同じく,スカートの青,というか色使いには感激しましたが,そんなのは自由ですよね。

 脱線しそうなので本当に終わります。

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2007年11月 6日 (火)

学問するという贅沢

 物理学とか数学とか,あるいは文科系の学問でもいいのですが,こうしたことを面前で論じるのは,私も含めて単なる趣味ではあるのですが,ある意味でインテリ臭がふんぷんと薫ってイヤらしいと感じることが多々あります。

 まあ,これらは小市民(プチブルジョア)的な趣味であり,日々の生活の糧を得るのにも困窮している人民達にとっては,まことに贅沢な趣味ですからイヤらしさを感じるのも無理はないかもしれません。

 要するに,私がかつてや今もサブマネージャーをやっているニフティやfolomyの物理フォーラム,あるいはこの私のブログでさえも,ある意味で知的なことを売り物にしているわけです。

 もしも薀蓄を語るということにのみに意味を見出すなら,質問やコメントに答える際にも,「いかにも俺は知識階級だぞ」とか「何でも知ってるんだぞ」というような感じで,「頭がいいんだとか,知識があるんだ。」とか,というイヤらしくて馬鹿な優越感を感じることに意味を見出していることに通じ,そのためにフォーラムやブログなどを運営しているという自分を感じ恥ずかしくなってしまうことがよくあります。

 かつて,パソコン通信時代のニフティの物理フォーラムで当時のシスオペも含めて「DHMOの恐怖」などというパロディがはやったことがあります。何のことはないDHMOとは"di Hydrogen mono Oxide=2水化酸素",つまり水のことです.。

 これを"もの知り"を標榜するフォーラムの会員の各面々が,例えば「人はDHMO中毒でDHMOが不足すると禁断症状」云々と,サロン的に面白おかしく論じて笑い話として掲示板を賑わしていたわけですが,当時私自身はスタッフではないこともあって傍観していました。

 しかし,さすがに少し不快だったので,私は参加することはしませんでしたが,ごく内輪で内部的に楽しんでいるだけのことですし,快不快も個人の価値観に属することなので別段どうでもいいことではあります。

 また,彼らとはネットの上でしか会ったことがないとはいえ,チャットも含めて既にかなり親密な関係になっていると私自身感じていたので,そのときは批判を述べたい気持ちを我慢していました。

 後年ホームページの時代になってから,というよりつい最近のことですが「物理のかぎしっぽ」なるところをのぞいてみると,同じく,DHMOが話題になっていて,さすがに1回だけ批判のコメントを書いたことがあるのですが,何の反響もありませんでした。

 まあ,私憤の部類に入ることであり,何を怒っているのか理解できないかもしれないので,自分でもどうでもいいかな,とは思いますが。。。

 かつてのフォーラムでは,ときどき物理学に関連した問題を出して模範的な解答を求めるということで,掲示板を盛り立てるという試行もありましたが,それにもめったに参加しませんでした。

 昨今のTV番組でも出演者を試す,試験のようなものがはやっているようですが,私はどうも好きになれません。

 クイズとか試験のようなものは,それを誰かから受けることも,そして教師のバイトをしていたときにも誰かを試験することも大嫌いですから。。。。

 どうも,この種のフォーラムのスタッフとしてはフォーラムの存在理由自体にも疑問を持ち,何の活動もしない私のような者は適任ではないかも知れないとは常々思っています。

 自慢だけど,私は自分には厳しいけど他人には甘すぎるくらい甘い人間です。とはいっても,もちろん他人の陰口,悪口を言うのは本能的に好きですが,面と向かった批判はめったに口にしません。

 特に,いわゆる「近頃の若い者は。。」と自分より若い世代を批判するのは,亀田親子は極端な例ですが,子供のやったことの半分くらいは親に責任があると思っているので,実は半分以上自分を批判していることになると思うこともあって,実はやりたいのですが普通はやりません。

 今日は少しイライラした気分だったので,自分の好きな趣味を楽しむことでさえ自分の思想的側面との矛盾を感じるストレスがあること,自己の「実存(生きがい)」と自己が人類という種族保存の本能を持った生き物に属するという「社会性に根ざした思想的背景」とのギャップについて,常日頃感じている個人的な愚痴などを書きました。

 まあ,「思想的には平和主義者だけれど,軍人が生きがいで戦争や武器が趣味だ。」というほどのギャップはないのですから,まだましでしょうかね。。。

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2007年11月 2日 (金)

解析力学の初歩

 今日は,最初はBerryの位相とAharanov-Bohm効果(AB効果)の関係などを論じることを計画していたのですが。。

 その前に,必要な「断熱定理」と関連してHamiltonianが時間tに陽に依存する場合の解析力学の定式化が私は気になりました。

 

 それを考えているうちに,我ながら解析力学の基本的なことの理解が完全ではないことに気付いて,復習してみようという気になったので記事=日記にします。

 

 イヤ,ここで記事に書いていることのほとんどは,私は既に何度も勉強したり考えたりしたことがあることばかりなんですよ。

 

 でも,そうした論題が出てくるたびに,もちろん,文章や数式の一言一句まで内容を全部記憶しているわけじゃないし,新たな疑問や過去にはヒョットして勘違いしていたのじゃないか?という疑いが出てきます。

 

 特に物理学や数学に限らず,モノを知るのには必要な知見を全部記憶する必要はなく(そもそもコンピュータでも不可能でしょう),

 

 どういうときに,どこのどういうモノを調べればいいか?ということがわかり,そういう参考文献を探して読んだときに,小時間のうちに疑問を解決できる能力を体得するのが,過去に学校で学んだ意味だと思っています。

 

 ですから,気になったらその都度調べたり考えたりするだけです。

 

 以下は,主として自分のためのおさらいなので,ここで論じている定式化の手順は,必ずしも標準的な教科書の順番ではなく私の思い付きの順になっています。

 通常のNoether(ネーター)の定理で時間の一様性によって,"エネルギー=Hamiltonian"Hが保存されるという描像は,r(r=1,2,...,N)を自由度がNの一般化座標,pr(r=1,2,...,N)を一般化運動量とするとき,

 

 系のHamiltonian:H(p,q,t)がtを陽に含まないこと:

 H(p,q,t)=H(p,q)と書けることと同定されます。

 しかし,一般的な力学系においては力学的エネルギーが保存しない場合が存在することも事実です。

 

 これは,純粋な力学的エネルギーをHとするとき,その他に熱エネルギーとか,電気的エネルギーなどが存在して摩擦などの散逸により力学的エネルギーの一部が熱に転化して消散していく場合などが,それに相当します。

 もっとも素粒子のレベルまでの微視的な見方では,もはやエネルギーを力学的云々とか,種類ごとに分類する必要もなく,時間の一様性は常に確実に成立していて,Hamiltonian:Hは確かに時間tを陽に含むこともないので,全体としても微視的過程でもエネルギーの保存は常に正確に成立します。

一般に保存力場の場合には,一般化速度をqdr≡dqr/dtで定義すると,系のLagrangianL(,d,t)はL=T-Uで与えられます。

 

Tは運動エネルギーでT=(1/2)Σr,s=1Nrs()qdrdsなる2次形式で与えられ,Uは保存力場のポテンシャルで位置座標=(q1,q2,...,qN)の関数U=U()です。

そして,pr≡∂L/∂qdrであり,Hamiltonianは,

H=Σr=1Nrdr-L=Σr,s=1Nrs(q) qdrds(T-U)

=2T-(T-U)=T+Uとなります。

 

この場合にはHは系全体のエネルギーと一致します。

そして,Hがtを陽に含まないなら,∂H/∂t=0 ですから,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr

です。

 

pとqの微小変分に対するHの変分δHは,

δH=δ(Σr=1Nrdr-L)

=Σr=1N{δprdr +prδqdr}-δL 

です。

 

Lの変分δLは,

δL=Σr=1N{(∂L/∂qr)pδqr(∂L/∂pr)qδpr}

=Σr=1N{(∂L/∂qr)δqr(∂L/∂qdr)}δqdr

=Σr=1N(pdrδqr+prδqdr)で与えられます。

ただし,この式の導出仮定で,Euler-Lagrange方程式:

(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr0 ,つまり,

∂L/∂qr=dpr/dt=pdrを用いました。 

したがって,δH=

Σr=1N[{δprdr +prδqdr}-{(∂L/∂qr)pδqr

(∂L/∂pr)qδpr}=Σr=1N(qdr δpr-pdrδqr)

となります。

 

それ故,これから直ちに,∂H/∂pr=qdr,∂H/∂qr=-pdr

というHamiltonの正準方程式が得られます。

以上から,∂H/∂t=0 のときには,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr0 ,

つまり"エネルギー=Hamiltonian"Hが時間tに依らない保存量であるというよく知られた性質が導かれるわけです。

ところが,運動方程式がEuler-Lagrange方程式:

(d/dt){∂L/∂(dqr/dt)}-∂L/∂qr0 で与えられるのは,

必ずしもLがL=T-U,U=U()と書ける場合に限定する必要は

ありません。

 

LagrangianLを一般のtを陽に含むL=T-V,V=V(,d,t)

なる形であると考えてもよく,この場合,Hamiltonian:

H=Σr=1Nrdr-L,r≡∂L/∂qdrもtを陽に含みます。 

例えば,電荷がeの荷電粒子1個の自由運動のHamiltonianを

0(,)とすると,それが電磁場の中にあるときには,

極小相互作用変換により

 

HamiltonianはH(,,t)=H0(-e,)+eφとなること

が知られています。

 

一般に電磁場は静的な場ではないので,電磁場のスカラーポテンシャルをφ,ベクトルポテンシャルをとすると,これらφ,は時間tを陽に含んでいます。

 

L=(d/dt)-H=(d/dt)-(-e)2/(2m)-eφ

となります。

 

これと=∂L/∂(d/dt)を用いると,

=m+e,≡d/dt,かつ

L=m2/2-eφ+eAvとなるはずです。

 

ここに,(,t),φ=φ(,t)であり,どちらもtを陽に含んでいると想定します。

これから導かれる荷電粒子の運動方程式は,と書き直した

Euler-Lagrange方程式:(d/dt)(∂L/∂)-∂L/∂=0

です。

 

これは,

d(m)/dt+ed/dt+e∇φ-e∇()=0

いう形になります。

 

ここで,

/dt=(∂/∂t)+(∇),=-∇φ-∂/∂t,

=∇Xであり,

××(∇X)=∇()-(∇)ですから,

結局,これはd(m)/dt=e+e(×)

です。

 

したがって,確かに通常の1荷電粒子が従うべき非相対論的なNewtonの運動方程式が得られました。

しかし,HからLを逆算するのは本末転倒で,運動方程式からLagrangian:Lを求め,然る後にH=(d/dt)-LによってHamiltonian:Hを導くというのが当然の道筋ですね。

 

実は,単に私自身が電磁場の中での荷電粒子の運動に対する

LagrangianLの形を忘れていたので,上のプロセスは,これを安易

に求める道を取ったに過ぎません。

とにかく,古典的電磁場の中では,

L=m2/2-eφ+eAv=T-eφ(,t)+e(,t)

となり,L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)

となることがわかります。

 

そして,Hamiltonian:Hがtに陽に依存するので,このHは保存量

ではないことがわかります。

 

これは,今考えているHamiltonian:Hでは,

"全体系=粒子+電磁場"の中で,単に荷電粒子のエネルギーだけに

着目して,相互作用部分を除いては電磁場のエネルギーを全く考慮

していないためです。

実際,Hを系全体のHamiltonianとするには,電磁場のエネルギー

を表わす(1/2)∫(ε2+μ-12)dという項も含む必要が

あります。

 

ただ,=m+e,≡d/dtなる表式には,既に系の

運動量が粒子の運動量mと電磁場の運動量eの代数和で

与えられることを示してはいます。

さて,より基本的な定式化を行なうために,改めて一般のn個

の質点系から成る物理系に対するNewtonの運動方程式から

始めます。

Newtonの運動方程式はi番目の粒子の質量をmi,位置ベクトル

i,その質点iに働く力=(外力+内力)をiとすると,

 

i(d2i /dt2)=i (i=1,2,...n)なる式系で表現

されます。

 

そして,一般的な状況を考え,これが

fj(1,2,...,n)=0 (j=1,2,...,m)なる形で与えられる

m個の拘束(束縛)条件を満たすべきケースを想定します。

静力学では各作用点での力の釣り合い:i0 に対しては

仮想仕事の原理が成立します。

 

これは,釣り合いを保つためには,Σi=1niδi0 を満たす変位

のみが許される,という原理です。

 

これを直接に動力学に拡張すると,いわゆるD'Alembertの

原理としてΣi=1n{i-mi(d2i /dt2)}δi=0 なる式

が得られます。

 

さらに,ある時刻tにおけるm個の拘束条件:

fj(1,2,...,n,t)=0 (j=1,2,...,m)を,微小変位δi

に対してΣi=1n(∂fj/∂ii=0 が成立するという式で置き

換えてよい場合,

 

Lagrangeの未定係数法を利用すると,未定係数をλjとして,

上記,D'Alembertの原理は,

Σi=1n{i-mi(d2i /dt2)+Σj=1miλj(∂fj/∂i)}δi=0

なる形に帰着します。

 

すなわち,

 

Σi=1n{iΣj=1mλj(∂fj/∂i)-(d/dt)(∂T/∂i)}δi=0

 

と書けるわけです。

 

そして,i(x3i-2,x3i-1,x3i)と成分表示すると,

上式はδi=(δx3i-2,δx3i-1,δx3i)なる変分:

δxk(k=1,2,...,3n),の各々に対して独立に成立します。

 

m個のパラメータλjは,最後のm個のkであるk=3n-m+1,

3n-m+2,..,3nに対するm個の連立方程式:

kΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)=0

の解として得られるとします。

 

こうして,N=3n-mとして,Nを対象の力学系の"自由度"

と呼べば,自由度の数Nだけの個数の独立な方程式:

Σk=1N{FkΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)}δxk=0

が得られます。

ここで,改めて独立なN個の座標:qr(r=1,2,...,N)を用いて,

δqrを各時刻tのqrの変分としたときの,時間tに陽には依存しない

iの変分をδiΣr=1N(∂i/∂qr)δqrと表現すれば,

 

上の変分方程式は,

Σr=1N(rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)-(d/dt)(∂T/∂qdr)

+∂T/∂qr)δqr=0 と変形されます。

 

ここに,rΣi=1ni(∂i/∂qr)で定義されるN個の量:r

一般化力と呼びます。

そして先に決定されたパラメータλjに対して,

rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)を拘束力と呼び,いわゆる滑らかな

拘束:Σr=1Nrδqr=0 つまり,拘束力は仕事をしないと

考えると,

Σr=1N(r(d/dt)(∂T/∂qdr)+∂T/∂qr)δqr=0

と書けます。

 

この等式では,N個のδqrは全て独立なので,

(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrなる

Lagrangeの方程式の系が得られます。 

ここで,特にrΣi=1ni(∂i/∂qr)=(d/dt)(∂V/∂qdr)

-∂V/∂qrとなるようなV=V(q,qd,t)が存在する場合なら,

 

L=T-Vとおけば,(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrは,

Euler-Lagrangeの方程式(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr=0

に一致します。

 

先の,電磁場の中での荷電粒子の運動についての考察から得られた

L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)では,

 

電磁力:=e+e(×)が,上述のVに対する条件式:

=(d/dt)(∂V/∂)-∂V/∂を確かに満足しています。

 

今日は,取り合えず,私的には納得できたのでこれで終わります。

 

http://www.rakuten.co.jp/trs-kenko-land/「TRS健康ランド」-- 黒ウコン,SCS(洗浄剤)専売などの店:  私が店長 です。

http://www.mediator.co.jp/category/pages.php?id=115「中古パソコン!メディエーター巣鴨店」

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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