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2007年12月17日 (月)

理想気体の圧力と分子運動論

 気体,液体,固体などの物質を莫大な個数の"微視的な粒子=分子"の集まりとみなし,その統計的な平均量を熱力学的な諸量と同定する,いわゆる統計熱物理学の見方では,気体の圧力:Pは次のようにして計算されます。

 分子の位置や運動量,あるいは:速度ごとの分子数密度の比率を与える統計分布に基づいて,まず気体の内部エネルギー:Uを求め,然る後に熱力学第1法則:dU=TdS-PdVを用いて,エントロピー:Sが一定の下での体積VによるUの偏微分:P=-(∂U/∂V)Sによって圧力Pが得られます。 

 ここでTは系の絶対温度,Sはエントロピー,Vは系の体積です。

 

 熱力学第1法則の微分表現dU=TdS-PdV可逆過程を想定した式です。

具体的には,次のようになります。

 

対象とする系の絶対温度がTのときに系がエネルギーEを取る確率は一般にボルツマン(Boltzmann)因子:exp{-E/(kB)}(ただしkBはボルツマン定数)に比例する関数で与えられます。

この分布はカノニカル分布(正準分布),マクスェル・ボルツマン(Maxwell-Boltzmann)分布(M-B分布),あるいはギブス(Gibbs)分布と呼ばれています。

 

これは系の総分子数をN,古典的状態,または量子状態がrのときの系のエネルギーをεr,この状態を占める分子数をnrとするとき,その比率がnr/N=exp(-βεr)/{Σrexp(-βεr)} (ただしβ≡1/(kB))なる関係式で与えられることを意味しています。

 

ただし古典的状態rというのは莫大な個数の全ての分子の各々が占める位置と運動量(速度)の組合せで与えられます。

"状態和=分配関数"をZ≡Σrexp(-βεr)によって定義します。

 

このZを用いて内部エネルギーUはU=Σrrεr(N/Z)Σrεrexp(-βεr)=-N[∂(lnZ)/∂β]なる式で,圧力PはP=-Σrr(∂εr/∂V)=(N/Z)Σrexp(-βεr)(∂εr/∂V)=(N/β)[∂(lnZ)/∂V]なる式で表わされます。

そして,状態和の定義式Z≡Σrexp(-βεr)は各項が体積に無関係にエネルギーεrが与えられれば,全てexp(-βεr)という同じ形をしているので,結局は系の状態の総数に比例する量であると考えられます。

 

状態と位置座標の対応から総状態数は単純に体積に比例すると思われるので理想気体ではZは示量的な量であってZ=cV(cは比例定数)という形として書けるはずです。

 

したがって,∂(lnZ)/∂V=1/Vとなり,P=(N/β)[∂(lnZ)/∂V]=N/βV=NkB/Vとなって,よく知られた理想気体の状態方程式:PV=NkBが得られるわけです。

最近は局所平衡にある散逸構造とかを扱う非平衡統計力学なるものもあるようですが,伝統的な統計物理学は平衡統計力学で,系の確率分布はエントロピーSが最大で停留値を取ること,つまりdS=0 を満たす熱平衡状態,つまり釣り合いの状態にあることを条件として導かれた平衡分布です。

 

そこで,上の圧力の導出手続きにおいては,熱力学でのP=-(∂U/∂V)Sなる表式におけるエントロピーSが一定という条件は当然満足されています。

一方,初歩的な気体分子運動論では,1辺の長さがLの立方体の容器の中に質量がmの総個数がN個の気体分子が閉じ込められている模型を考えます。

  

"気体分子は単に時折互いに弾性衝突をする以外には相互作用をしない"という熱平衡状態での理想気体の仮定の下で多数の分子が容器の壁に衝突して反射するときの"各分子の運動量の変化=壁から受ける力積"の総和=合力の力積の反作用が容器の壁面の受ける力積であるとして壁に対する気体の圧力Pを求めます。

これは,具体的には次のようにして圧力を計算します。

分子の速度をv=(vx,vy,vz)とすると,その運動量は=mですから,1つの分子がx軸に垂直な壁との弾性衝突によって壁に受け渡す運動量は壁に垂直で大きさが 2mxのベクトル量です。

 

この,分子が距離Lだけ隔たった左右の壁を往復するのに要する平均時間は2L/vxなので,十分な時間間隔τの間の衝突回数はvxτ/(2L)であり,その間に壁に及ぼす力積はfxτ=(2mx){xτ/(2L)}=mvx2τ/Lとなります。

それ故,N個の気体分子全体が壁に与える力積の総和を求めるとx2の平均値を<x2>と表記して,xτ=Nm<vx2>τ/Lとなります。

 

そこで,壁に受け渡す合力FxはFx=Nm<vx2/Lとなります。

 

ところで,2x2+vy2+vy2であり熱平衡状態では気体分子の速度分布は等方的であると考えられますから,<x2>=<y2>=<y2>=<2/3としてよいはずです。

 

そこで,x(1/3)Nm<2/Lと書けます。

壁に及ぼす圧力Pは単位面積当たりの力で定義されますから,P=Fx/L2(1/3)Nm<2/Vと書けます。

 

ここにV≡L3は立方体容器の体積です。

 

ここで統計力学における常温でのエネルギー等分配の法則によって,(1/2)m<2>=(3/2)kBTなる等式が成立するので,これを代入するとPV=NkBTとなり通常の理想気体の状態方程式であるボイル・シャルルの法則,あるいはボイル・ゲイリュサックの法則が得られます。

次に本日のメイン・テーマですが,気体運動論の1例として伝統的に記述されることの多い上述の容器の壁面における気体の圧力の導出ではなく,同じ気体分子運動論によって,容器内の任意の場所における圧力を計算で求めることを考えます。

容器内の任意の領域1を囲む閉曲面をSとするとき,その領域内の気体に対するニュートンの運動方程式はd[∫V1dV]/dt=-∫SPdで与えられます。

 

右辺は-∫V1∇PdVですから,微分形で書けばd/dt=-∇Pではないかと思います。

 

しかし,莫大な数の気体分子の平均としては,左辺はd<>/dt=0 であり,右辺も容器内では圧力Pは一様なので-∇P=0 です。

 

これは積分形でもd[<>V1]/dt=-∫SPdS=0 なので,気体に対する運動方程式からは圧力Pに関して何の情報も得られないように見えます。

ところが,d[∫V1dV]/dt=-∫SPdなる等式をよく見ると,左辺は単位時間に領域V1を囲む閉曲面Sを通過してV1に流入する運動量の総量-∫Sp・vを示しています。

 

Sがある領域を囲む閉曲面ならこれももちろんゼロですが,Sを閉曲面ではなく単なる断面と考えて左辺を面Sをたたいて通過する運動量の総量と見ることにより,新しい知見が得られます。

 

ただし,は気体分子全体の運動量,は流速で,記号p・vはそのi成分がΣj=13ijdSjで与えられるベクトル量を表わします。

 

そして,微小断面積を通る単位面積当たりの運動量の流れを示すテンソルp・vは流体力学ではおなじみの量ですが,これは運動量流束と呼ばれています。

結局,-∫Sp・v=-∫SPdと書くことができて,面Sの任意の微小断面dSを通って外部から流入する総運動量-p・vはその断面に加わる力-Pdに等しいと考えられます。

 

つまり面を通過する運動量流束をその面での圧力と同一視する新しい見方が得られたわけです。

したがって,Σj=13ijdSj=PdSiですからij=Pδijが成立します。

 

両辺でi=j=1,2,3としたものを全て加え合わせる(縮約する,あるいは対角和(trace)を取る)とpv=3Pが得られます。

 

左辺は単位体積当りの平均分子数=数密度(/V)を用いてpv(N/V)(m2)と書けますが,この面S上の各点における局所的な2値は面全体を考えたときには,それを平均値<2>で置き換えるのが妥当と思われるのでpv(N/V)(m<2>)とします。

したがってP=(1/3)pv(2/3)(N/V){(1/2)m<2>}であり,先に述べたように(1/2)m<2>=(3/2)kBTですから,P=NkBT/V=nRT/V (ただしR=N0Bは気体定数;N0アヴォガドロ数;n=N/N0はモル数)と書けます。

 

やはりP=nRT/VあるいはPV=nRTなる理想気体の状態方程式を得ます。

 

まあ,実際には任意の点における微小断面でその両側からの運動量流束は相殺されてゼロとなり,それゆえ閉曲面で囲まれた任意の領域で運動量の流入量の収支がゼロである,という先述の積分表式があったわけです。

 

これは圧力に関わらず,静止時には各断面の両側での応力は釣り合っていて,各点での合力としてはゼロである,という応力の本質的な性質に根ざすもので,運動量流束が圧力に等しいと同定するのが合理的と考えたのは本質的には直感によるものです。

参考文献: 中村 伝 著「統計力学」(岩波全書)

 

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