ヤングの干渉実験(1)(古典論)
以前の記事2006年5/26の「光子の干渉とコヒーレンス」,および2007年5/11,5/13の「光電効果と光の量子論(1)」,「光電効果と光の量子論(2)」の続きとして「ヤングの干渉実験」について本格的に論じてみたいと思います。
まず,分光(spectroscopy)に用いる光源ですが一般に2つの型があります。
まず,第1の型は普通の実用的な照明器具と同じ統計性を持つ気体放電分光器であり,それは気体の個々の原子が放電によって励起され,それらが相互に無関係に光を輻射するものです。
発光源の形態は原子の運動速度の統計的広がりと不規則に起こる衝突によって決定されます。
こうした気体放電と同じような原理で実用的で広範に使用されているフィラメントランプや,熱空洞などを含め,この種の光源をカオス(chaos)光源と呼びます。
どんな種類のカオス光源から出た光ビ-ムでも,同じような統計的特徴を持っています。ただ統計的分布のパラメータがカオス光のビームごとに異なっているだけです。
第2の型の光源はレーザー(laser)ですが,これはカオス光源とは全く別の非常に規則正しい統計的性質を持っています。
しかし,ここでは第1の型の通常のカオス光源のみを対象として,これによる分光と干渉について考察するので,第2の型の光源であるレーザーの詳細については割愛します。
光ビームが通過する固定した観測点において,電場の時間依存性を測定する実験を考えます。
以下では,主として光源の性質から,ビームの電場とそのゆらぎ(fluctuation)の性質が決定される過程を考えてみます。
また,簡単のために対象としている"光=電磁波"の電場ベクトルは一定の偏りを持つとして,重ね合わせの原理に従ってそのまま代数的に加えることができるとします。
固定観測点における電場の波が複素電場としてE(t)なる関数で与えられるとき,光の周波数スペクトルは,E(ω)≡{1/(2π)}∫-∞∞E(t)exp(iωt)dtで与えられる電場のフーリエ(Fourier)成分E(ω)で決まります。
これのフーリエ逆変換はE(t)=∫-∞∞E(ω)exp(-iωt)dωとなります。
実際の電場は実数(real)であり,それは複素電場の実部,あるいは虚部で与えられます。
複素電場が単一の角周波数ω0によってE=E0exp(-iω0t)と与えられるときには,電場の強さのサイクル平均は周期をT0≡2π/ω0として,<E2>c=(1/T0)∫0T0|ReE|2dtで定義されます。
これは,<E2>c=(E02/T0)∫0T0cos2ω0tdt=E02/2=|E|2/2となります。記号< >cの添字cはサイクル平均を表わしています。
そこで,角周波数ωの単色スペクトルの光のサイクル平均強度は|E(ω)|2=E*(ω)E (ω)={1/(4π2)}∫-∞∞dt1∫-∞∞dt2E*(t1)E(t2)exp{iω(t2-t1)}={1/(4π2)}∫-∞∞dt∫-∞∞dτE*(t)E(t+τ)exp(iωτ)に比例します。
そして,ω~ω+dωの間における光のサイクル平均強度は|E(ω)|2dωに比例します。
これらを全ての周波数について総和すると∫-∞∞|E(ω)|2dω={1/(4π2)}∫-∞∞dω∫-∞∞dt∫-∞∞dτE*(t)E(t+τ)exp(iωτ)={1/(2π)}∫-∞∞dt|E(t)|2となります。
しかし,積分∫-∞∞dt∫-∞∞dτE*(t)E(t+τ)exp(iωτ)がカバーするtの期間は,現実の実験では,-∞<t<∞なる無限大長さでは有り得ないので,無限大区間(-∞,∞)を十分大きいが有限な時間Tで置き換えることにします。
このTを用いて電場の1次相関関数(correlation function)を<E*(t)E(t+τ)>≡(1/T)∫TE*(t)E(t+τ)dtによって定義します。左辺の< >tの添字tは長時間平均を表わしています。
この量は,時刻tでの電場が時刻t+τで取り得る種々の電場の値の確率に影響する様子を記述します。相関関数の形は,光源の作り出すゆらぎの種類によって決まります。
特に,ゆらぎの統計を支配する要因が全て時間的に不変である場合,すなわち光源の性質が定常的でTがゆらぎに固有の時間スケールに比べて十分長い場合には,平均値<E*(t)E(t+τ)>≡(1/T)∫TE*(t)E(t+τ)dtは積分の特定の開始時刻に無関係です。
そして,この時間平均操作によって光源の統計的性質が許容するあらゆる電場の値を,それぞれ適当な相対確率で標本抽出できて,その結果はTの大きさに依存しません。
実験的に,こうした相関関数を決定するには(1/T)∫TE*(t)E(t+τ)dtのような時間平均を取ればいいのですが,統計的性質が定常的な場合なら,これはtとt+Tにおける場のあらゆる値にわたる統計平均(アンサンブル平均)で置き換えることができます。
こうした平均化処理が可能であることを"エルゴード定理(Ergodic theorem)"といいます。そして,このとき相関関数はτだけの関数になります。
そして,|E(ω)|2={T/(4π2)}∫-∞∞<E*(t)E(t+τ)>exp(iωτ)dτですから,∫-∞∞|E(ω)|2dω={T/(2π)}<E*(t)E(t)>となります。
ここで< >は"アンサンブル平均=長時間平均"を表わしています。以下では,話題をこうしたエルゴード定理が成立するカオス光源に関するものに限定します。
ここで,光の電場の周波数スペクトル分布関数として1に規格化されたものをF(ω)とします。すなわち,F(ω)≡|E(ω)|2/[∫-∞∞|E(ω)|2dω]となります。
さらに規格化された1次相関関数g1(τ)をg1(τ)≡<E*(t)E(t+τ)>/<E*(t)E(t)>によって導入すると,F(ω)={1/(2π)}∫-∞∞g1(τ)exp(iωτ)dτと書けます。
g1(τ)で定義される量は,光の1次の時間コヒーレンス度(時間可干渉性)と呼ばれています。
光のスペクトルと1次相関関数を結ぶ式:F(ω)={1/(2π)}∫-∞∞g1(τ)exp(iωτ)dτはウィーナー・ヒンチンの定理(Wiener-Khinchine's theorem)の1つの形です。
(2006年8/26の記事「ホワイトノイズ,1/f ゆらぎ」参照)
これは分光実験の結果と時間に依存する光のゆらぎの特性との間の形式的な関係を与える式になっています。
"この関係=ウィーナー・ヒンチンの定理"F(ω)={1/(2π)}∫-∞∞g1(τ)exp(iωτ)dτは,正の時間間隔τのみの式にできます。
F(ω)={1/(2π)}∫0∞g1(τ)exp(iωτ)dτ+{1/(2π)}∫0∞g1(-τ)exp(-iωτ)dτとなります。g1(-τ)≡<E*(t)E(t-τ)>/<E*(t)E(t)>=<E*(t+τ)E(t)>/<E*(t)E(t)>=g1(τ)*ですから,F(ω)=(1/π)Re[∫0∞g1(τ)exp(iωτ)dτ]と表わすことができます。
ここで,角周波数ω0の光を輻射する1つの特定の気体励起原子が他の気体原子と弾性衝突することによって,周波数スペクトルに見かけの線幅が生じる現象=衝突広がりが起こる現象を考えてみます。
原子が他の原子と衝突するまでの間は光は定常的に輻射されて規則正しい電磁輻射の波列を構成しています。
しかし,衝突の瞬間には光を輻射する原子のエネルギー準位は2つの原子間の相互作用によってずれを生じ,そのために規則正しかった波列は衝突の間は中断することになります。
気体粒子の衝突は弾性衝突なので衝突後には再び同じ角周波数ω0の光波動の放出を回復します。衝突後の波はその位相(phase)が衝突前の位相と無関係な値に変わること以外には,特性は全て衝突前のそれと同じです。
衝突の間には,輻射波の周波数はω0からずれてωになりますが,その期間は非常に短いとして,衝突期間中の輻射を無視することにします。
これは,各励起原子は常に周波数ω0で光を輻射するが,衝突のたびに波の位相が不連続に変わるという模型を想定することになります。
1つの衝突から次の衝突までの平均自由飛行時間をτ0と置けば,気体原子について代表的な値はτ0~ 3×10-11secであることがわかっています。
このとき,ω0として可視光の周波数を採用すると,これは大体ω0~ 3×1015Hzなので,ω0τ0~ 9×104となります。これらの数値によれば,1個の原子から輻射された波列は,引き続く衝突の間に平均約15000回の振動を行なう勘定になります。
こうした波の場の振幅は複素形式で,E(t)=E0exp{-iω0t+iφ(t)}と書けます。そして位相φ(t)は自由飛行期間中は一定に保たれ,衝突のたびに不連続に変化します。
カオス光源から出た波全体は各輻射原子において1つずつEi(t)=E0exp{-iω0t+iφi(t)}(i=1,2,..,)なる形に表わされた項の総和で与えられます。
すなわち,励起原子がν個あるとするなら,総和としてのE(t)はE(t)=E1(t)+E2(t)+..Eν(t)=E0exp(-iω0t)[exp{iφ1(t)}+exp{iφ2(t)}+..exp{iφν(t)}]=E0exp(-iω0t)a(t)exp{iΦ(t)}と書けるわけです。
これによって得られる実電場は不規則な振幅変調a(t)と位相変調Φ(t)を受けた周波数ω0の搬送波という構成の形式で表現されます。
ここで真空の誘電率をε0,透磁率をμ0とし,気体放電分光器の気体は比透磁率が1で比誘電率がη2の誘電体から成るとして,光ビームの強さI(r,t)を"光=電磁波"の流れを表わすポインティングベクトル(Poynting vector)Sの大きさで定義します。I(r,t)=|S|です。
光の実電場をE(r,t),実磁場をB(r,t)(=μ0H(r,t))とするとポインティングベクトルSは,S≡E(r,t)×H(r,t)=μ0-1E(r,t)×B(r,t)で与えられます。
電磁波ではEとBは直交しているので,光ビームの強さはI(r,t)=μ0-1|E(r,t)||B(r,t)|と書けます。
"光=電磁波"では,等式μ0-1B(r,t)2=ε0η2E(r,t)2が正確に成り立ちますから,I(r,t)=(ε0/μ0)1/2ηE(r,t)2=ε0cηE(r,t)2です。
ここで,c=1/(ε0μ0)1/2は真空中の光速を表わす定数です。
しかし通常はE(r,t)は実電場ではなく複素電場で表現されていて,しかも我々が実験で検知できるエネルギー密度や電場の強さは瞬時値ではなくサイクル平均で与えられると考えられます。
そこで,光ビームの強さもそのサイクル平均で与えられるとし,それを改めて同じ記号I(r,t)で表わすことにすれば,I(r,t)=(1/2)ε0cη<|E(r,t)|2>cなる表式になります。
それ故,先述の原子の衝突の効果を含めた輻射電場の固定観測点の位置座標の引数rを省略した表現:E(t)=E0exp(-iω0t)a(t)exp{iΦ(t)}に対しては,光ビームの強さはI(t)=(1/2)ε0cηE02<a(t)2>cとなります。
以下では比誘電率η2をη ~1と近似して,I(t)=(1/2)ε0c<|E(t)|2>c=(1/2)ε0cE02<a(t)2>cとします。
ここで,光の電磁場のエネルギー密度W(t)はW(t)=(1/2)ε0η2<|E(t)|2>c=(η/c)I(t)=(1/2)ε0η2E02<a(t)2>cと書けますから,電磁場のエネルギー密度W(t)と光波の強さI(t)は互いに比例関係にあります。
そこで,電磁場のエネルギー密度を光波の強さと定義しても,今までの論旨は定係数を除いて同じです。
前と同様,1つの原子が他の原子と衝突せずに自由に飛行できる平均自由飛行時間をτ0とすると,時間τとτ+dτの間にそれぞれの原子が他の原子と衝突しない確率は明らかに指数分布p(τ)dτ=(1/τ0)exp(-τ/τ0)dτになります。
E(t)=E0exp{-iω0t+iφ(t)}における位相φ(t)はこうした確率法則の反映です。時間τ0の間には強度や位相にかなりの変化が生じることもありますが,期間Δt<<τ0内ではこれらの量はほぼ一定であると見てよいわけです。
こうしたスペクトルの線幅を広げる効果は衝突以外にもありますが,そうしたメカニズムにはどれも衝突広がりの平均自由飛行時間τ0に類似した不規則なゆらぎの時間スケールを定めるある特徴的な時間が存在します。
今の場合には,輻射自身の幅を除き,衝突を含むあらゆる効果を衝突広がりの時間スケールτ0の中に含めています。
τ0の他に輻射自身の幅をも含めた,特徴的な時間をτcと書いてコヒーレンス時間と呼びます。このτcの大きさはビームの周波数の幅の逆数程度です。
以下では,周波数の幅Δω~1/τcが平均周波数ω0に比べて十分小さいケース,つまりω0τc>>1なる光ビームのケースに話を限定します。例えば黒体輻射などは考えません。
コヒーレンス時間τcに関連して,λc≡cτcなる量をコヒーレンス長と呼びます。今考えているケースのビームでは,このコヒーレンス長は光の波長よりもはるかに長いことになります。
光の検知器の分解時間(resolution time)はコヒーレンス時間τcよりずっと短くて,エルゴード定理が成立しているとすると,時間平均は統計平均と同一視されます。
そして相関関数は<E*(t)E(t+τ)>=E02exp(-iω0τ)<[exp{-iφi(t)}+..+exp{-iφν(t)}] [exp{iφi(t+τ)}+..+exp{-iφν(t+τ)}]>で与えられます。
別々の原子から出た波列の位相はそれぞれ全くバラバラの値を取るので,異なる原子の位相φi(t)とφj(t)(i≠j)の交差項の寄与は平均すると消えるはずです。
そしてν個の輻射原子の各々は統計的には全て等価なので,結局<E*(t)E(t+τ)>=E02exp(-iω0τ)Σi=1νexp[i{φi(t+τ)-φi(t)}]>=ν<Ei*(t)Ei(t+τ)>となるはずです。
話を気体原子の衝突の場合に戻すと,個々の原子iについての相関<Ei*(t)Ei(t+τ)>=E02exp(-iω0τ)<exp[i{φi(t+τ)-φi(t)}]>において,各波列の位相角はその原子が衝突した後には勝手な値に飛ぶので,衝突の後で平均を取るとその寄与はゼロです。
そこで,τ>0 とすれば,この相関関数は原子がτより長い自由飛行期間を持つ確率に比例します。
それ故,τ>0 なら<Ei*(t)Ei(t+τ)>=E02exp(-iω0τ)∫τ∞p(τ)dτ=E02exp(-iω0τ)∫τ∞dτ(1/τ0)exp(-τ/τ0)=E02exp{-iω0τ-(τ/τ0)}と書くことができます。
そこで,<E*(t)E(t+τ)>=νE02exp{-iω0τ-(τ/τ0)}となりますから,1次コヒーレンス度はg1(τ)=exp{-iω0τ-(τ/τ0)}です。
以上から,衝突広がりのみを考慮した光のスペクトルF(ω)はF(ω)=(1/π)Re[∫0∞g1(τ)exp(iωτ)dτ]=(1/πτ0)/[(ω0-ω)2+(1/τ0)2]です。
これを規格化されたローレンツ型(Lorentz type)の分布曲線形と呼びます。
一方,元々輻射遷移現象には,光ビームの照射に伴う誘導輻射とは別に,蛍光の原因となる量子論特有の全く確率的な現象である自発放出,または自然輻射のプロセスがあります。
時間に依存する摂動論によれば自然輻射に伴なう量子遷移によって,励起状態の波動関数は減衰因子exp(-γt)(t>0)を持ちます。これは確率としては,その平方(square)であるexp(-2γt)(t>0)なる減衰因子として出現します
それ故τRを蛍光寿命とすると2γ=1/τRであり,この輻射の幅:2γが存在する結果として,光のスペクトルFL(ω)はFL(ω)=(γ/π)/[(ω0-ω)2+γ2]なるローレンツ型のブライト・ウィグナーの式(Breit-Wigner's formula)によって表わされます。
そこで衝突広がりの幅:2/τ0に起因する吸収係数をγcoll≡1/τ0と置けば,衝突広がりのみがある場合には,コヒーレンス度,および光のスペクトルは,それぞれg1(τ)=exp(-iω0τ-γcollτ),およびF(ω)=(1/πτ0)/[(ω0-ω)2+(1/τ0)2]=(γcoll/π)/[(ω0-ω)2+γcoll2]です。
もしも,輻射広がりと衝突広がりの両方がある一般的な場合のそれらの寄与をγ'=γ+γcoll,または 2/τc=1/τR+2/τ0で表現すれば,光のスペクトルはF(ω)=(γ'/π)/[(ω0-ω)2+γ'2]となります。
このとき,相関関数は<E*(t)E(t+τ)>=νE02exp{-iω0τ-γ'|τ|},1次コヒーレンス度はg1(τ)=exp(-iω0τ-γ'|τ|)と修正されることになります。
ここで相関関数のτに関する減衰特性を考慮して,一部τの代わりにその絶対値を取りました。
さて,ヤング(Young)の干渉実験は点光源から出たカオス光がレンズによってほぼ平行な平面波にされて右前方に進み,次に2つのスリットを備えた第1スクリーンを通過した後,その右側遠方にある第2スクリーンの上で生じる干渉縞を観測するものです。
以下では光源は完全な点光源であると理想化し,光源が有限な直径を持つとか,ビームが完全には平行ではないなどの複雑さは無視します。
観測スクリーンの位置rにおける時刻tでの輻射の全電場をE(r,t)とします。
この電場は光速cによって定まるtより前の時刻t1,t2におけるスリット,またはピンホ-ルr1,r2での電場の1次の重ねあわせであるはずです。すなわち,形式的にはE(r,t)=u1E(r1,t1)+u2E(r2,t2)と書けます。
ここにt1,t2はそれぞれs1,s2を光が第1スクリーン上のr1,r2から第2スクリーンまで到達するまでの距離としてt1≡t-s1/c,t2≡t-s2/cで指定される時刻です。
そしてu1,u2は球面波(spherical wave)に対応して,それぞれs1,s2に反比例する量です。
ところで,ホイヘンス・フレネルの原理によれば1次球面波ψ(x,t)=(A/r)exp{-i(ωt-2πr/λ)}はキルヒホッフの積分表示から2次波の包絡面として,ψ(x,t)={iπA/(λr)}exp{-i(ωt-2πr'/λ)}∫r-r'r+r'dR(1+cosχ)exp{i(2πR/λ)}と表わされます。
(↑ 2006年10/3の私のブログ記事「ホイヘンスの原理の正当性」)
そこで,ピンホールからの2次波は1次波から"1/4-波長=π/2"だけ位相がずれていて,係数u1,u2は純虚数になります。
したがって,I(r,t)=(1/2)ε0c<|E(r,t)|2>c=(1/2)ε0c[|u1|2<|E(r1,t1)|2>c+|u2|2<|E(r2,t2)|2>c+2u1*u2Re<E*(r1,t1)E(r2,t2)>cと書けます。
ヤングの干渉実験での記録時間Tはコヒーレンス時間τcよりずっと長いので,この"時間平均=統計平均"をI(r)で表わせば,I(r)=<I(r,t)>=(1/2)ε0c[|u1|2<|E(r1,t1)|2>+|u2|2<|E(r2,t2)|2>+2u1*u2Re<E*(r1,t1)E(r2,t2)>です。
光の波動性に由来する干渉縞は右辺の2つのピンホール位置r1,r2での相関関数を含む第3項から生じます。
電場の相関関数を,これまでの1つの固定点でのそれとは異なる場合に一般化し,形式的な定義を<E*(r1,t1)E(r2,t2)>=(1/T)∫TE*(r1,t1)E(r2,t1+t21)dt1によって与えます。
ただし,t21≡t2-t1と置きました。
ここで,ヤングの干渉実験では,第1スクリーンにおける1次波のE(r1,t1)とE(r2,t2)は,レンズによって第1スクリーンに向かってz方向に直進する平面波とされているので,その区間ではE(r,t)はE(z,t)=E(t-z/c)と表現できます。
故に,<E*(r1,t1)E(r2,t2)>は<E*(z1,t1)E(z2,t2)>=<E*(t1-z1/c)E(t2-z2/c)>となります。
これを見ると,今の場合は相関関数のτが単純な時間差τ=t2-t1ではなくて,τ≡t2-z2/c-(t1-z1/c)に変わっていますが,それを除けば,これまでの議論でのそれと本質的に違いはありません。
そこで,<E*(z1,t1)E(z2,t2)>=νE02exp(-iω0τ-γ'|τ|)と書くことができます。
これを第2スクリーン上での光ビームの強さI(r)を表わす式に代入すると,最終的な表現としてI(r)=<I(r,t)>=(1/2)ε0cνE02[|u1|2+|u2|2+2u1*u2 exp(-γ'|τ|)cos(ω0τ)]を得ます。
実は,スクリーン上ではz座標は等しい:z1=z2ですから,τ=t2-t1=(s1-s2)/cとなります。
慣例に従って,第2スクリーン上での縞の鮮明度を[I(r)max-I(r)min]/[I(r)max+I(r)min]で定義すると,これは,2|u1*u2|exp(-γ'|s1-s2|/c)/[|u1|2+|u2|2]となります。
この式によると,縞の鮮明度はスクーリンの中央では1ですが,そこ以外の軸から離れたところでは,u1≠u2,s1≠s2であるために1より小さくなります。
光源のカオス性は指数因子exp(-γ'|s1-s2|/c)を通して縞の鮮明度に影響します。そのため,s1とs2が十分異なるときには原則的に縞は全く消えてしまいます。
しかし,ω0>>γ'のような幅の狭い光源の場合には,τ=(s1-s2)/cが十分大きいため,指数因子により縞がぼやける前に余弦項cos(ω0τ)により非常に多くの縞が作り出されます。
今日はこのくらいにしておきます。
※追伸:量子力学を用いているのに,なぜタイトルが古典論なのかというと,確かに媒質としての気体原子,つまりその束縛電子については量子論を用いていますが,"光=電磁波"は量子化されていない古典電磁場であるからです。
正確には半古典論(semi-classical theory)と言います。
という意味では,直接関係はないですが,既述したように誘導反応である光電効果も半古典論だけで説明可能です。自発反応(自然輻射)のみが量子論でないと説明できない現象ですね。
そして,後述するように電磁波を量子化して1個,2個,..の光子が干渉するという描像にすれば,それは確かに全てが量子論なので量子論と呼びます。
参考文献:R.Loudon 著(小島忠宣,小島和子 共訳)「光の量子論(第2版)」(内田老鶴圃)
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