ヤングの干渉実験(6)(量子論)
光の干渉関連(Young's experiment)の続きです。
前記事の最後で原子と電磁場との極小相互作用(minimal coupling)を含むクーロンゲージでの全体系のハミルトニアンがH'={1/(2m)}Σj=1Z{pj+eA(rj(t),t)}2+(1/2)∫ρ(r,t)φ(r,t)dr+(1/2)∫(ε0ET(r,t)2+μ0-1B(r,t)2)drと表わされると書きました。
これの右辺の第2項:(1/2)∫ρ(r,t)φ(r,t)dr=(-1/2)ε0∫φ(r,t)∇2φ(r,t)dr=(1/2)ε0∫{∇φ(r,t)}2dr=(1/2)ε0∫EL2(r,t)dr={1/(2ε0)}∫PL2(r,t)drは,形の上では電荷による静電エネルギー,ρ(r,t)=-Σj=1Zeδ(r-rj(t))+Zeδ(r),およびφ(r,t)={1/(4πε0)}{-Σj=1Z(e/|r-rj(t)|)+Ze/r}を代入すればクーロン相互作用エネルギーを全て含んでいることがわかります。
この第2項は輻射場を含んでいないので,第2量子化されていても量子場の演算子を含んでいません。一方,第3項は原子の運動に関わるエネルギーを含まない"輻射場=横波光子"単独のエネルギーです。
結局,第1項のみが相互作用に関わる極小結合部分で,原子と輻射場の相互作用はHint={e/(2m)}Σj=1Z{pjA(rj(t),t)+A(rj(t),t)pj}+{e2/(2m)}Σj=1ZA(rj(t),t)2で与えられます。
これ自身を用いた厳密な計算結果はゲージの選択によらないはずですが,実際の多くの計算はほとんど近似計算なのでベクトルポテンシャルによる表式ではゲージ依存になります。
そこで基本的には理論を不変に保つユニタリ変換を用いてハミルトニアンを便利な形に変えることを試みます。
すなわち,ユニタリ演算子:U^(t)≡exp[{i/(chc)}∫PT(r,t)A(r,t)dr](ただし,hc≡h/(2π)はプランク定数)を定義します。
∇A(r,t)=0 なので,∫PT(r,t)A(r,t)dr=∫P(r,t)A(r,t)drが成立します。P(r,t)=-eΣj=1Zrj(t)∫01dλδ(r-λrj(t))を代入すると,U^(t)≡exp[(-ie/hc)Σj=1Z∫01dλ{rj(t)A(λrj(t),t)}]となります。
このU^(t)によって変換されたハミルトニアンH はH =U^-1(t)H'U^(t)と書けます。
一方,H',H に対応する波動関数を,それぞれψ',ψと書くとψ=U^(t)ψ'です。
pj=-ihc∇jなる陽な表示によって,U^-1(t){pj+eA(rj(t),t)}U^(t)=pj-e∇j∫01dλ{rj(t)A(λrj(t),t)}+eA(rj(t),t)となります。
A(rj(t),t)=∫01dλ[{1+rj(t)∇j}A(λrj(t),t)],
故にU^-1(t){pj+eA(rj(t),t)}U^(t)=pj-e∫01dλ[∇j{rj(t)A(λrj(t),t)}-{1+rj(t)∇j}A(λrj(t),t)]です。
ところで,[∇{rA(r,t)}-{1+r∇}A(r,t)]i=rk∂iAk-rk∂kAi=rk(∂iAk-∂kAi)=εikjrkεjlm∂lAm={r×B(r,t)}i;(ただし,B(r,t)=∇×A(r,t))と書けます。
結局,U^-1(t){pj+eA(rj(t),t)}U^(t)=pj-e∫01dλ{λrj(t)×B(λrj(t),t)}です。
同様に,U^-1(t)ET(r,t)U^(t)=ET(r,t)-(1/ε0)PT(r,t) etc.から,H=U^-1(t)H'U^(t)={1/(2m)}Σj=1Z(pj-e∫01dλ{λrj(t)×B(λrj(t),t)})2+(1/2)∫ρ(r,t)φ(r,t)dr+(1/2)∫(ε0ET(r,t)2+μ0-1B(r,t)2)dr+eΣj=1Z∫01dλ{rj(t)ET(λrj(t),t)}+{1/(2ε0)}∫PT(r,t)2drです。
結局,変換前のハミルトニアンの中からゲージ依存のベクトルポテンシャルを追い出すことに成功しました。
電子の座標軌道rj(t)はボーア半径aB=4πε0hc2/(me2)程度の大きさを持っていると思われます。また,勾配演算子∇がETやBに作用するとき,それは輻射の波動ベクトルk程度の大きさです。
そこで,前にVE(t)=eΣj=1Z[∫01dλrj(t)(1+λrj(t)∇+(1/2!){λrj(t)∇}2+...)ET(0,t)]=eΣj=1Zrj(t)[1+(1/2!)rj(t)∇+(1/3!){rj(t)∇}2+...]ET(0,t),
VM(t)=eΣj=1Z∫01dλ[{rj(t)×(drj/dt)}(1+λrj(t)∇+(1/2!){λrj(t)∇}2+..)B(0,t)]=(e/m)Σj=1Z[lj(t)((1/2!)+(2/3!)rj(t)∇+(3/4!){rj(t)∇}2+..)B(0,t)]と表現しました。
そこで見たような,ET(λrj(t),t)やB(λrj(t),t)の多極展開において,λの高次のベキの項は急激に減衰するはずです。
したがって,-e∫01dλ{λrj(t)×B(λrj(t),t)}は第1項の磁気双極子項だけ残して-{e/(2m)}{mrj(t)×B(0,t)}で近似し,e∫01dλ{rj(t)ET(λrj(t),t)}は第1項の電気双極子項erj(t)ET(0,t)と第2項の4重極子項(e/2)rj(t){rj(t)∇}ET(0,t)をとって近似することにします。
このとき,近似ハミルトニアンを改めてHと書き,H≡HE+HR+HIと分解します。
HE は孤立原子のハミルトニアンでHE=Σj=1Z{pj2/(2m)}+(1/2)∫ρ(r,t)φ(r,t)dr,HRは輻射場のハミルトニアンでHR=(1/2)∫(ε0ET(r,t)2+μ0-1B(r,t)2)drです。
そして,輻射場と原子の相互作用ハミルトニアンHIをさらに4つに分けます。HI≡HED+HEQ+HMD+HNLです。
ここでHEDとHEQ は電場との相互作用項で,HED=eΣj=1ZrjET(0,t)=eDET(0,t)であり,eD=Σj=1Zerjは電気双極子モーメントです。
また,HEQ=(e/2)Σj=1Zrj(t){rj(t)∇}ET(0,t)=-(∇Q)ET(0,t)です。ここで,Q=-(1/2)Σj=1Zerjrjは電気4重極子モーメントです。
HMDとHNLは磁場との相互作用項です。すなわち,HMD =-{e/(4m)}Σj=1Z[pj{rj(t)×B(0,t)}+{rj(t)×B(0,t)}pj]={e/(2m)}MB(0,t)です。ただし,Mは角運動量の総和でM≡Σj=1Zlj=Σj=1Z{rj(t)×pj}です。
最後にHNLは反磁性項と呼ばれ,HNL={e2/(8m)}Σj=1Z{rj(t)×B(0,t)}2と表現されます。
rj ~ aB=4πε0hc2/(me2),ω ~ ω0=(3/4)ωB=(3me4)/(128π2ε02hc3),k~ω/cとして,各項のオーダーを評価します。
まず,HED ~ET(0,t){4πε0hc2/(me)}です。次に∇ET(0,t)~kET(0,t)=(ω/c)ET(0,t)により,HEQ ~ET(0,t){3ehc/(16mc)}です。
一方,M≡Σj=1Zlj=Σj=1Z{rj(t)×pj}~hcと考えてHMD ~ B(0,t){ehc/(2m)}~ET(0,t){ehc/(2mc)}です。
そこで,電磁相互作用の結合の大きさを特徴付ける無次元定数である微細構造定数α≡e2/(4πε0hcc)~ 1/137を用いると,HEQ ~ (3α/16)HED,HMD ~(α/2)HEDとなりますから,電気4重極子項HEQと磁気双極子項HMDは電気双極子項HEDに比べてαの1次程度のオーダーになります。
以下では,電気双極子項HEDに比べて電気4重極子項HEQ,磁気双極子項HMD,および非線形項の反磁性項HNLを無視する電気双極子近似を採用してHI~HEDとします。
というのも後述の摂動論で述べるように状態ψi,ψf間の原子遷移に伴なって光子が放出,吸収される遷移速度は行列要素<ψf|HI|ψi>の絶対値の2乗に比例するからです。
電気双極子近似ではその対称性のために行列要素<ψf|HI|ψi>がゼロになるような遷移の寄与が無視され,そうした遷移は禁止されることになります。
例えばrj は空間反転に対して符号を変えるので電気双極子相互作用eD (ただしD=Σjrj)は奇のパリティ(偶奇性)を持つため,状態ψiとψfが互いに異なるパリティを持つ場合にみ,それらの間の遷移が許容されるわけです。
今日はこれで終わります。
参考文献:R.Loudon 著(小島忠宣,小島和子 共訳)「光の量子論(第2版)」(内田老鶴圃)
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