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2008年1月

2008年1月29日 (火)

水素分子イオンと水素分子(補遺)

せっかく,水素分子イオン(H2)や水素分子(H2)の基底状態のエネルギー準位,結合エネルギー等についての実験値の詳細がわかっているのですから,水素分子のイオン化エネルギーとク-プマンスの定理(Koopmansの定理)との差について若干考察してみましょう。

そもそも,水素分子H2の基底状態でのエネルギーuH2は,uH2=uS=u(R)=2ε1S+e2/(4πε0)+{VC(R)+VEX(R)}/(1+S2)において,R=ReH2としたときの値です。uH2=u(ReH2)です。

 

ここで,R=ReH2は [du(R)/dR]R=Re=0 を満たしていてu(R)が原点の近くで極小になるような核間距離R=Reの値です。

 

このとき明らかにu(∞)=2ε1Sですから結合エネルギーの定義eH2≡u(∞)-u(ReH2)から,基底状態でのエネルギーはuH2=u(ReH2)=2ε1S-DeH2と表現されます。 

一方, 水素分子イオンH2の基底状態でのエネルギーuH2+はuH2+=ub(R)=(α+β)/(1+S)の右辺でR=ReH2+としたときの値です。uH2+=ub(ReH2+)です。

 

b(R)が陽にRの関数の形に書かれていないので,これを評価するには少し工夫が必要ですが,水素分子との比較を考えるだけなら,ub(∞)を考えるだけで十分です。

水素分子イオンのハミルトニアンはH2+=-hc22/(2m)-e2/(4πε0A)-e2/(4πε0B)+e2/(4πε0R)です。

 

一方,水素分子のハミルトニアンH2=-hc212/(2m)-hc222/(2m)-e2/(4πε01A)-e2/(4πε01B)-e2/(4πε02A)-e2/(4πε02B)+e2/(4πε012)+e2/(4πε0)です。

 

これらをR→ ∞ において比較すると,水素分子ではR→ ∞ のときr12→ ∞であると考えられるので,水素分子イオンのエネルギー固有値は水素分子のそれより,丁度電子1個の運動エネルギー分だけ小さいことになると思われます。

ところが,ビリアル定理によれば水素原子の基底状態での電子の運動エネルギーの期待値は,<K>=-<U>/2 を満たしているはずです。

 

しかも原子の基底状態では<K>+<U>=ε1sとなるはずですから,<K>=-ε1sです。

先に考察したように水素分子では,u(∞)=2ε1Sですから,水素分子イオンではub(∞)=u(∞)-<K>=3ε1Sとなるはずですね。

 

水素分子イオンの結合エネルギーの定義;DeH2+≡ub(∞)-ub(ReH2+)から,基底状態でのエネルギーはuH2+=ub(ReH2+)=3ε1S-DeH2+と表現されます。 

以上から,水素分子のイオン化エネルギーは,uH2+-uH2=-ε1S(DeH2-DeH2+)で与えられると結論されます。

 

クープマンスの定理が主張する式:uH2+-uH2=-ε1S が厳密に成立するのは,上のイオン化エネルギーの関係式の右辺において,第2項がゼロ,すなわち,水素分子イオンと水素分子の結合エネルギーDeが全く等しい場合のみです。

今の水素分子の場合は,実験によるとDeH2+=2.78eV,DeH2=4.74eVで両者はわずかに異なっています。

 

そして水素原子の1s状態=基底状態のエネルギーにマイナスをつけたものは,-ε1S13.6eVですから,イオン化エネルギー=uH2+-uH2=15.56eVと予想されます。

 

実験値は15.43eVですから,まだ微妙に誤差があるようです。

参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店),猪木慶治・川合 光 著「量子力学Ⅱ」(岩波書店),高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店)

  

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2008年1月26日 (土)

水素分子イオンと水素分子

 多原子系の方法論(分子軌道;MO)の続きとして,これの応用の最も基本的な例として,陽子2個と電子1個から成る水素分子イオン(H2),および陽子2個と電子2個から成る水素分子(H2)について具体的に計算してみます。

 
 まず,水素分子イオンH2です。
 
 2つの陽子の位置ベクトルをA,Bとし,電子の位置ベクトルをrとします。
 
 簡単のために核間距離RAB|AB|をRと書き,rA|A|,rB|B|とおきます。
      水素分子イオン↓
 
 陽子の運動エネルギーを無視した電子ハミルトニアンは,=-hc22/(2m)-e2/(4πε0A)-e2/(4πε0B)+e2/(4πε0)となります。
 
 水素分子イオンの電子波動関数ψ()を,水素原子の場合の電子の束縛状態の2つの軌道関数χA(),χB()の重ね合わせの形:ψ()=CAχA()+CBχB()で表わしたものを,Ritz(リッツ)の変分法の試行関数とします。
 
 ちなみに,こうした分子軌道(MO)を原子軌道(AO)の線形結合(LC)として表わす近似は,通常LCAO近似と呼ばれています。
 
 そしてχA(),χB()としては共に水素原子の価電子の1s軌道の波動関数φ1s(r)=π-1/2B-3/2exp(-r/aB)を採用します。

  

すなわち,χA()≡φ1s(rA),χB()≡φ1s(rB)とします。

  

そして,∫χi*χjr=α(i=j),β(i≠j),および∫χi*χj=1(i=j),S(i≠j)とおきます。

  

このとき,波動関数ψ()に対する電子のエネルギーの期待値はu≡<ψ||ψ>/<ψ|ψ>=∫ψ*()ψ()d/[∫ψ*()ψ()d]ですが,これはu=[(|CA|2|CB|2)α+(CA*B+CAB*)β]/ [(|CA|2|CB|2)+(CA*B+CAB*)S]となります。

  

S=∫χi*χj(i≠j)は重なり積分とも呼ばれる積分です。

 

ここで変分原理を適用します。uが極小値を取るという条件から,∂u/∂CA*0,かつ∂u/∂CB*0 です。

 

これから,(α-u)CA(β-uS)CB0 ,かつ(β-uS)CA(α-u)CB0 なる未知係数t(CA,CB)に対する連立方程式を得ます。

  

これが自明な解t(CA,CB)=t(0,0)以外の解を持つための条件から,この方程式の係数行列の行列式がゼロになるべきであるとする2次元の永年方程式を得ます。

  

すなわち,方程式(α-u)2(β-uS)20 です。

  

必要な積分を実際に実行すれば,χABは実関数なので積分値α,β,Sは全て実数で,特に,0<S<1 なることがわかります。

  

上記永年方程式は2次方程式なので簡単に解けて,求める極小のuとして2つの根が得られます。それらは,u(α-β)/(1-S),およびu(α+β)/(1+S)です。

  

そして,これらの固有値に属する解の固有ベクトルt(CA,CB)はCA=±CBなる関係で与えられます。固有ベクトルの性質として,その大きさは確定せずただベクトルの向き(ベクトル成分の比)だけが決まります。

  

そこで,解の波動関数に規格化条件∫ψ*()ψ()d=[(|CA|2|CB|2)+(CA*B+CAB*)S]=1を与えて規格化し,それぞれ固有値u,uに属する固有関数としてψを表現するとψA-χB)/{2(1-S)}1/2A+χB)/{2(1+S)}1/2となります。

  

得られた波動関数の定性的性質を概観します。

  

ψではχAとχBの位相が逆で互いに打ち消しあうので,この軌道を反結合性軌道といいます。 

 

この場合には,結合領域の電子密度は小さく,反結合領域の電子密度が相対的に大きいので原子核間の斥力が大きくなります。

   

これに反してψの方ではχAとχBの位相が同じで,互いに強めあうのでこれを結合性軌道と呼びます。

 

この状態関数では,結合領域の電子密度が大きいので原子核を結びつける結合力が生まれると考えられます。

下図に,それぞれ,結合性軌道ψ,または反結合性軌道ψの上にあるケースでの核軸上の電子の存在確率密度の概略を示します。

   

  

 ∫χi*χjr=α(i=j),β(i≠j)であり,電子のエネルギーは束縛状態,結合状態では負の値なので,固有値uやuが極小になるような核間距離Rでは,α<0 ,β<0 と思われます。

  

これらを考慮してuとuを比較すると,同じRでu-u=-2(β-αS)/(1-S2)>0 ,or u>uとなるようです。

  

上記考察のように,定性的にはuの方はrAとrBの交換について対称関数なので,"2つの核の中点=(AB)/2,r-RA=-(r-B)(rA=rB)なる点の近傍=結合領域"での電子密度が大きくなります

   

そのため,uの最小値は,uの最小値より小さくの方がエネルギーが最低のH2の基底状態に対応し,uは励起状態に対応します。

  

さらに,基底状態uのRに対する曲線を調べると,これには極小値があります。この極小値を与えるRが平衡核間距離Reに相当します。

  

 その計算値は,Re1.32Å(オングストローム=1010m)です。

  

 計算された極小値から水素分子イオンの結合エネルギーの計算値としてDe1.77eVが得られます。これにより,理論的には安定な結合を生じることがわかります。

  

 一方,これらの実測値はRe1.06Å,De2.78eVです。

  

 LCAO近似は粗いものですから,かなり誤差があるように見えますがオーダー的には合っています。この単純な方法では,この程度の合致で十分と思われます。

  

 水素分子イオンのように,1個の電子が2個の原子核の間の結合領域に共有されて生じると思われる結合を1電子結合と呼びます。

  

 今の水素分子イオンの場合には,空間反転対称性もあって最適波動関数:ψはrA|A|とrB|B|について,それぞれ反対称関数,対称関数になっています。

  

電子の座標12の2つあるような水素分子など多電子分子に移り,原子核が2つ以上ある系では,もはや角運動量は保存されません。

  

そこで,後述するように,水素分子でもスピン3重項(s=1)に対応する反対称軌道関数とスピン1重項(s=0)に対応する対称軌道関数が求める最適の軌道関数になるとは限りません。

  

しかし,2原子分子を含む直線分子では,その軸のまわりの回転に対して,核による静電場は不変なので,これをz軸とするとz軸方向の角運動量成分Lzihc(∂/∂φ)は保存されます。

  

それ故,この場合,電子の軌道関数は,"Lzの固有値=磁気量子数":mに対応しています。

  

そこで,これら直線分子のmの絶対値|m|=0,1,2,3,..に対応する分子軌道を,それぞれσ軌道,π軌道,δ軌道,φ軌道,..と呼びます。

 

さて,今度は2電子系の水素分子H2について考察します。

  

2つの陽子の位置ベクトルは前と同じくA,Bとし,2つの電子の位置ベクトルを1,2とします。

  

簡単のため,核間距離RAB|AB|をRとし,さらにriA|iA|,riB|iB|(i=1,2),r12|12|とします。

          水素分子↓

  

このとき陽子の運動エネルギーを無視した電子ハミルトニアンは,=-hc212/(2m)-hc222/(2m)-e2/(4πε01A)-e2/(4πε01B)-e2/(4πε02A)-e2/(4πε02B)+e2/(4πε012)+e2/(4πε0)となります。

  

水素分子の2電子系の軌道波動関数ψ(1,2)として,初めからPauliの排他原理を考慮して,2つの電子の合成スピンsが 0 のスピン関数が反対称1重項(反平行スピン)の場合の対称軌道関数のうちの1つ:χS(1,2)≡NS{φA(1B(2)+φB(1A(2)}と,

  

合成スピンsが 1 のスピン関数が対称3重項(平行スピン)の場合の反対称軌道関数:χT(1,2)≡NTA(1B(2)-φB(1A(2)}の2種類の軌道関数χS(1,2),χT(1,2)の重ね合わせとして,ψ(1,2)=CSχS(1,2)+CTχT(1,2)を変分法の試行関数と仮定します。

  

そしてφA(),φB()としては,共に水素原子の価電子の1s軌道の波動関数φ1s(r)=π-1/2B-3/2exp(-r/aB)を採用します。aBはボーア半径です。

  

すなわち,χS(1,2)≡NS1s(r1A1s(r2B)+φ1s(r1B1s(r2A)},χT(1,2)≡NT1s(r1A1s(r2B)-φ1s(r1B1s(r2A)}とするわけです。

  

水素分子イオンの計算の際にχA()=φ1s(rA),χB()=φ1s(rB)として∫χi*χj=1(i=j),S(i≠j)と置きましたが,ここでも同じ積分の値に対して同じ記号Sを用いることにします。

 

 

そうすると,∫φ*1s(r2B1s*(r1A1s(r1B1s(r2A)d12=S2なのでSTの規格化定数は正の実数に限るとNS1/{2(1+S2)}1/2,T1/{2(1-S2)}1/2となります。

  

ここで,電子のエネルギーの期待値u≡<ψ||ψ>/<ψ|ψ>=∫ψ*(1,2)ψ(1,2)d12/[∫ψ*(1,2)(1,2)d12]を求める計算をやりやすくするため,A(1)+B(2)+1+e2/(4πε0)と分割します。

  

ここでA(1)≡-hc212/(2m)-e2/(4πε01A),B(2)≡-hc222/(2m)-e2/(4πε02B),1=e2/(4πε012)-e2/(4πε01B)-e2/(4πε02A)です。

  

A(1),B(2)は,丁度水素原子のハミルトニアンなので,水素原子の1s軌道のエネルギーをε1Sとすると,χS(1,2),χT(1,2)によるA(1)+B(2)の期待値は明らかに2ε1Sになります。

  

したがって,これのψ(1,2)による期待値も2ε1Sです。

  

C(R)≡∫φA* (1B*(2)1φA(1B(2)d12,VEX(R)≡∫φB*(1A*(2)1φA(1B(2)d12と置くと,

  

の期待値は,χS(1,2)に対してuS1S+e2/(4πε0)+{VC(R)+VEX(R)}/(1+S2),χT(1,2)に対してT1S+e2/(4πε0)+{VC(R)-VEX(R)}/(1-S2)と書けます。

  

S,uTをRの関数としてu±(R)と表記すると,u±(R)=2ε1S+e2/(4πε0)+{VC(R)±VEX(R)}/(1±S2)です。

  

C(R),VEX(R)を,それぞれCoulomb積分(クーロン積分),交換積分と呼びます。

  

水素分子の結合について,恐らく初めて系統的に論じたのはHeitler-Londonの理論(1927年;ハイトラー・ロンドン理論)です。

  

この理論では,上記のように線形結合:ψ(1,2)=CSχS(1,2)+CTχT(1,2)を考察して,係数CS,CTを求めるのではなく,初めからχS(1,2)とχT(1,2)自身が水素分子の最低エネルギーの結合状態に対応するとしています。

   

S,uT,あるいはu±(R)において,Coulomb積分VC(R)は大きいRでは引力,小さいRでは斥力を示しますが,交換積分VEX(R)はR ~ 0 を除いて大きい絶対値の負の値です。

   

結局,水素分子と同じくuS<uTであり,Heitler-London理論ではスピン1重項の対称軌道関数ψ(1,2)=χS(1,2)={φ1s(r1A1s(r2B)+φ1s(r1B1s(r2A)}/{2(1+S2)}1/2の表わす状態が水素分子の基底状態に相当します。

  

この理論での計算ではuS=u(R)=2ε1S+e2/(4πε0)+{VC(R)+VEX(R)}/(1+S2)は,R=Re~0.88Åで最小になり,結合エネルギーの近似値はDe3.17eVです。

  

一方,実験から推定された値はRe~ 0.742Å,De4.74eVです。

  

しかし,水素分子のLCAO近似やHeitler-Londonの理論では,平衡核間距離の付近で<K><0 ,<U>>0 となります。

  

しかも,ビリアル定理(virial theorem)の結論:<K> ~ -<U>/2 なる関係も満足されないので,これらの理論は現在では問題があるとされています。

  

そこで,指数関数exp(-r/aB)部分のrをr → ζrに置き換え,エネルギーが最小になるように変分法で最適のパラメータζを変えるなどの方法を採用すれば,とりあえずビリアル定理は満足されるようになり,計算近似値も実験値にかなり近づきます。

  

この方法は分極軌道の方法といわれます。あるいは,用いる原子軌道関数をs軌道とp軌道の混成軌道にする方法を取れば計算近似値はさらに改善されます。

  

Heitler-London理論で既に求めた対称軌道に分極を加味した共有構造の軌道:ψHL(1,2)≡{φ1s(ζr1A1s(ζr2B)+φ1s(ζr1B1s(ζr2A)}/{2(1+ζ-22)}1/2と,分極を加味したイオン構造の軌道ψION(1,2)≡{φ1s(ζr1A1s(ζr2A)+φ1s(ζr1B1s(ζr2B)}/{2(1+ζ-22)}1/2を考えます。

 

これらの線形結合ψ(1,2)≡C1ψHL(1,2)+C2ψION(1,2)を作って,エネルギー期待値の変分問題を解くと,ζ=1.193でRe0.750Å,De4.12eVなる値まで改善されることがわかっています。

  

そして,この線形結合の軌道は共有構造とイオン構造の共鳴と呼ばれています。

  

以上のように,Heitler-London法を基本として原子軌道関数(AO)に電子を配置するというやり方で分子構造を調べていく方法を原子価結合法といいます。

 

一方,分子軌道法(MO法)では,水素分子イオンH2の基底状態の1電子軌道関数を,ψg()≡ψ1s(rA)+φ1s(rB)}/{2(1+S)}1/2とおいて,水素分子の2電子軌道関数をψMO(1,2)≡ψg(1g(2)と仮定します。

  

軌道部分が対称関数なのでスピン関数は反対称1重項です。これはAOがψg()のLCAO近似の1つです。

 

LCAO近似は,このままではよい近似ではないので,改良としてψu()≡ψ1s(rA)-φ1s(rB)}/{2(1-S)}1/2も用います。

  

ψMO(1,2)≡ψg(1g(2)のψg(1g(2)単独の代わりに,ψg(1u(2),ψu(1g(2),ψu(1u(2)としたもの(それに応じてスピン関数も変えたもの)も加えた線形結合を作って,変分法で,それらの係数を決めるのが普通です。

  

これらの方法や,その他,軌道を考慮しない方法など,さまざまな手法を混合した計算によって,水素分子についての計算では,1960年代までに実験値とほとんど一致する結果が得られています。

 

水素分子では1対の電子が2個の原子核の間の結合領域の軌道に共有されて生じると思われる共有構造がメインなので,こうした結合を共有結合,あるいは電子対結合と呼びます。

 

最後に水素分子イオンのハミルトニアン:水素分子イオン=-hc22/(2m)-e2/(4πε0A)-e2/(4πε0B)+e2/(4πε0),

   

水素分子のハミルトニアン:水素分子=-hc212/(2m)-hc222/(2m)-e2/(4πε01A)-e2/(4πε01B)-e2/(4πε02A)-e2/(4πε02B)+e2/(4πε012)+e2/(4πε0)を比較します。

  

すると,その差Δ水素分子水素分子イオンは大体水素原子のハミルトニアン水素原子≡-hc22/(2m)-e2/(4πε0)で与えられることがわかります。

  

一般に,"中性の分子から電子1個を除いた1価陽イオンの基底状態のエネルギーは中性分子の基底状態のエネルギーから抜き取られた軌道電子の原子軌道のエネルギーを引いたものに等しい"というKoopmansの定理(1934年;クープマンスの定理)が成立します。

  

1価陽イオンのエネルギーレベルは中性分子より高く,定理によれば中性分子から1価陽イオンへのイオン化に必要な(第1)イオン化エネルギーは,原子軌道エネルギー準位にマイナスをつけたものです。

  

ちなみに,水素分子のイオン化エネルギーは実験によれば15.43eVですが,1s軌道の水素原子のエネルギー準位は-13.6eVなのでKoopmansの定理とは少し食い違っています。

  

分子でなく水素原子Hが水素イオンHになるために必要なイオン化エネルギーなら確かに13.6eVなんですがね。。。,

  

また中性分子(原子)から1価陽イオンになるのでなく,1価陰イオンから中性分子(原子)になるために必要なエネルギーの方は電子親和力と呼ばれています。

 

これで終わります。

 

参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店),猪木慶治・川合光 著「量子力学Ⅱ」(岩波書店),高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店)

  

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2008年1月23日 (水)

多原子系の方法論(分子軌道)(3)

分子軌道法(MO法)のさらなる続きです。

多原子系において,u()を断熱ポテンシャルとすると,系を構成する原子核の1つAに働く力Aは,A=-∇A()で与えられるというところまで述べました。

系に存在する電子数密度をρ()=ρ(x,y,z)とすると,微小体積要素:d=dxdydzに存在する電子数はρ()dになります。

 

系の全電子数をNとすれば, ρ()はもちろん∫ρ()d=Nを満たすよう規格化されています。

 

そして,もしも系の電子軌道iを占有する電子の数niがわかっていれば,"軌道iの波動関数=軌道関数"をφi()とすると,ρ()=Σiii()|2と書けます。

 

ただし,Pauliの排他原理(パウリの排他原理:Pauli's exclusion principle) or Pauliの禁制原理によって,i0,1,2 のいずれかの値しか取ることはできません。

運動方程式を解いて,占有数分布niがどのような値を取るかという情報が全て得られれば,それから電子の空間分布ρ()がわかります。

 

そこで,負電荷の密度-eρ()が既知となって,個々の原子核に作用する力の陽な詳細表現式がわかり,その結果が再び運動方程式に反映されることになります。

すなわち「個々の原子核に作用する力は他の原子核から受ける静電的な斥力と,上記電子密度から受ける静電的な引力を全て加え合わせた合力に等しい。」といえます。

 

これをFeynman(ファインマン)の静電定理といいます。これは独立電子近似での自己無撞着な近似を原子核の系に適用して独立原子核近似としたものといえるでしょう。

ところで,原子番号がZAで正電荷QA≡ZAeを持ち,位置Aにある原子核Aが,位置にある電荷Qによって受けるCoulomb力AA{1/(4πε0)}QQA(A)/|A|3で与えられます。

 

A=-QA;A{1/(4πε0)}QA(A)/|A|3と書いて逆に原子核Aによって電荷Qの受ける電場:A(r,RA)による表現式としFeynmanの静電定理をそのまま書き下すと,これはA=∫eρ()A(r,RA)d-ΣB≠AeZBA(B,RA)なる形になります。

以上から,核Aに働く外力について,A=-∇A()=∫eρ()A(r,RA)d-ΣB≠AeZBA(B,RA)なる簡明な表現式を得ることができました。

 

なお,A(r,RA)は原子核Aの感じる電場ではなく,原子核Aが電荷に及ぼす電場を表わしているので,作用反作用の法則によって,通常の引力と斥力を示すベクトルの向きに対して,式の符号が反対になる表現となっています。

原子核の個数が2つのみの場合,"原子核の間に引力の働く領域=結合領域"は2つの原子核が挟む領域の1部であると思われます。

 

この領域の電子密度が非常に大きければ,そこに在る電子が両側の原子核を自分の方に引き付ける結果,その引力が核間斥力を上回り全体として核間に引力が働くと思われます。

 

一方,"核間に斥力の働く領域=反結合領域"は原子核の挟む領域の外側の領域であり,この領域の電子密度が大きいときには,これらの電子は核間のCoulomb斥力を助長して結合を妨げると考えられます。

したがって,多原子系の中に上記のような結合領域が存在してその範囲が大きい場合には,この多原子系の原子核の結合した安定な状態が存在可能なわけで,こうした説明は化学結合の定性的な仕組みを表現していると考えられます。

ここで,唐突ですが原子分子系や天体に関連した物理学において,よく用いられるビリアル定理(virial theorem)について説明します。

 

まず,今の多原子系のケースではビリアル定理とはどういうものか?定理はどのように表現されるのか?ということから説明します。

 

系の全ハミルトニアン(Hamiltonian)をとすると,これは今の場合,=Kn+Ke+Unn+Une+Ueeなるいくつかの項の和として与えられます。

 

これの運動エネルギー部分をK≡Kn+Ke,ポテンシャル部分をU≡Unn+Une+Ueeと書いて,普通の力学系で通常そう表わされるようにK+Uと簡単な2つの部分の和の形に書きます。 

そして,例えばKの期待値を<K>etc.と書くことにすれば,ビリアル定理は,2<K>+<U>-Ru()=0 なる等式が成立することで表現されます。ただし,この等式の左辺第3項のRu()はΣAA(∂()/∂A)を意味します。 

一応,この定理の証明を与えておきます。

まず,一般に系のビリアル(virial):Gとは系を構成する個々の粒子の位置と運動量の内積の総和を意味しますから,今の場合のビリアルはG≡ΣAAA+Σiiiなる量で定義されます。 

ここでGの時間微分を取るとdG/dt=ΣA[(∂G/∂A)(dA/dt)+(∂G/∂A)(dA/dt)]+Σi[(∂G/∂i)(di/dt)+(∂G/∂i)(di/dt)]=ΣA[A(∂/∂A)-A(∂/∂A)]+Σi[i(∂/∂i)-i(∂/∂i)]となります。

 

これはGの時間微分をPoisson括弧式[ ]P.B.で表現した式:dG/dt=[,G]P.B.を陽な形に書き下したものであるともいえます。 

ここで,全ハミルトニアン:K+Uを構成する運動エネルギー部分Kに着目すると,これは運動量の2次の同次式ですからΣAA(∂/∂A)+Σii(∂/∂i)=ΣAA(∂K/∂A)+Σii(∂K/∂i)=2Kとなることがわかります。

 

一方,-ΣAA(∂/∂A)-Σii(∂/∂i)=-ΣAA(∂U/∂A)-Σii(∂U/∂i)ですから,結局,dG/dt=2K-ΣAA(∂U/∂A)-Σii(∂U/∂i) =2K-RU-∇Uなる表式が得られます。 

今の結合した1分子の系のように,系全体の存在領域が有限に制限されている場合,dG/dtの長時間平均<dG/dt>timelimT→∞(1/T)∫0(dG/dt)dt=limT→∞(1/T)[G(T)-G(0)]はゼロになると考えられます。

 

そこで,2<K>time-<ΣAA(∂U/∂A)>time-<Σii(∂U/∂i)>time0 ,つまり,2<K>time-<RU>time-<∇U>time0 と結論されます。

 

これがビリアル定理の古典的表現です。

ところが,通常のCoulombの法則により,位置1,2に電荷q1,q2が有る系ではクーロン力のポテンシャルはU={1/(4πε0)}q12/|12|ですから,実際にこれを微分して積和をとると-Σi=12i(∂U/∂i)=Uが成立します。

 

それ故,一般に系に働く力の場がCoulomb力の場しか存在しない場合には,-ΣAA(∂U/∂A)-Σii(∂U/∂i)=-RU-∇U=Uなる等式が成立します。 

したがって,先に与えたビリアル定理の古典形は今の静電Coulomb力のみの場合には,2<K>time+<U>time0 に帰着します。

古典論から量子論に移行して,長時間平均<dG/dt>time0 をΨ(,)=EΨ(,)なる定常状態の波動関数Ψの期待値の意味:<dG/dt>≡<Ψ|dG/dt|Ψ>=∫Ψ*(,)(dG/dt)Ψ(,)d=0 に解釈します。

 

すると,先の古典的ビリアル定理: 2<K>time+<U>time0 は 2<K>+<U>=0 になります。

ここで,<U>に関してのみ,改めて<U>=-<ΣAA(∂U/∂A)>-<Σii(∂U/∂i)>=-<RU>-<∇U>と,2つの項の和に分割し,より詳しく考察します。

Ψ(,)=EΨ(,)を満たす定常状態の波動関数Ψ(,)はΨ(,)=φ()ψ(,)と分離されて,ψ(,)についてはe(,)ψ(,)=u()ψ(,)が成立しています。

 

ここにe(,)は電子ハミルトニアンであり,e=Ke+Uです。そしてψ(,)は電子のみの波動関数です。

電子のみの波動関数ψ(,)のみならず全波動関数Ψ(,)についてもe(,)Ψ(,)=u()Ψ(,)なる固有値方程式の関係が保持されるので,<e>=u()=<Ke>+<U>となり,∇u()=ΣAA(∂()/∂A)=<RU>が成立するはずです。

 

しかし,期待値の記号< を全波動関数Ψ(,)とdによる期待値を表わすものでなく,電子のみの波動関数ψ(,)とdによる期待値を表わす,という意味に取るなら,

 

期待値<U>は<U>=-<ΣAA(∂U/∂A)>-<Σii(∂U/∂i)>=-<RU>-<∇U>でなく,<U>=-<Σii(∂U/∂i)>=-<∇U>と表わされます。

 

一方<e>=u()=<Ke>+<U>を電子のみの波動関数ψ(,)による期待値の意味に取れば,この期待値の意味でも∇u()=ΣAA(∂()/∂A)=<RU>なる等式は不変です。 

そこで,Born-Oppenheimer(ボルン・オッペンハイマー)近似に準じて核の運動エネルギーは小さくて無視できるとして,<K>~<Ke>と近似します。

  

量子論での,"電子のみの波動関数の期待値"という意味でのビリアル定理の最終形式として, 2<K>+<U>-Ru()=0 なる等式が得られます。

 

こうして,先に述べた形のビリアル定理が成立することの証明は完了しました。

さて,ビリアル定理 2<K>+<U>-Ru()=0 において,2原子分子の場合には,平衡核間距離:R=Reにおいて{du(R)/dR}|R=Re0 が成立します。

  

そこで,原子系が平衡配置R=Reにあるなら左辺第3項のR()はゼロになります。

 

それ故,系が平衡状態の配置にあるときには 2<K>+<U>=0 が成り立ちます。

 

すなわち,-<U>/<K>=2 なる式によって分子などの多原子系が安定平衡であるための1つの必要条件が与えられます。

 

この比はビリアル比と呼ばれ,計算で求めた波動関数が正しいかどうかの検証などに利用できます。

元の論題に戻って,分子軌道(MO)というのは原子における原子軌道(AO)の分子の場合に対応する電子の波動関数のことですが,これを求めて問題を物理化学的に扱う方法が分子軌道法です。

 

先述したように,具体的には独立電子近似と変分原理に基づきHartree-Fock(ハートリー・フォック)方程式をやや簡略化したSCF法(自己無撞着近似;Self-Consistent Field近似)を使用します。

すなわち,予め変分原理に基づいて最適な試行関数として用意したF個の基底関数をχ12,..,χFとします。

 

独立電子の軌道関数i}をこれらの線形結合:φi≡Σp=1Fipχの形に限定して最良の係数{Cip}を数値計算などで求めるわけです。

結局は,Ritz(リッツ)の変分法に類似したF次の永年方程式を基本方程式として,SCF解が得られるまで逐次的に解いて,最適係数{Cip}と個々の独立電子の軌道エネルギー{εi}を獲得します。

 

また,系全体の基底状態のエネルギーEGに対する近似値も得られますが,これをSCFエネルギーと呼びELCと表記します。 

 Hartree-Fock近似で求めた基底状態のエネルギー近似値をEHFと表記すると,一般にEG≦EHF≦ELCなる不等式が成り立つことがわかっています。

 

既に,述べたように不等式の等号が成り立つのは独立電子が近似ではない1電子の系であるときだけで,一般に多電子系では電子相関エネルギーΔE≡EHF-EGは正になります。 

これらHartree-Fock法と電子相関の詳細については,分子ではなく原子についてですが,既に記事「多電子原子の構造」に比較的詳しく書いたのでここで繰り返すことはしません。

 

基本的にこうした計算は分子であっても原子核の運動を除外した近似では原子のそれと同じです。

 

そしてSCF法と呼ばれる方法は現実的な効率性なども考慮しているためにHartree^Fock法よりも悪い近似ですが,電子相関エネルギーについてのΔE≡ELc-EG0 になるという性質は同じです。

具体的に近似として軌道関数i}と軌道エネルギー{εi}が求められたなら,Slator(スレーター)行列式を作ることによって,全体の波動関数Φ=det[φi(j,sj)]と全エネルギーの期待値E=Σiiεiの近次解を構成することができます。

 

ここで,占有数ni0,1,2 は軌道φiの占有電子数のことです。

,スピン変数sは無視してφiは軌道だけの関数を示しているとすると"軌道φiに収容される電子の数=占有数ni"はPauliの原理によって0,1,2のいずれかです。

 

もしもni1 または 2 なら,この軌道を被占軌道と言い,ni0 の軌道を空軌道と言います。被占軌道はni1のとき半占軌道(SOMO)と呼び,この軌道に収容されている電子を不対電子と呼びます。

 

i2のときには,全占軌道,電子対と呼びます。

被占軌道のうちエネルギーが最も高いものを最高被占軌道(HOMO)と言い,空軌道のうち最もエネルギーが低いものを最低空軌道(LUMO)と言います。

 

HOMO,LUMO,SOMOはFrontier軌道(フロンティア軌道)と呼んで他の軌道と区別します。

 

これらの軌道は特に化学反応性と密接に関わっています。

不対電子が全くない電子配置を閉殻といい,不対電子が存在する電子配置を開殻といいます。

 

i}と{εi}による全体の波動関数Φの中で全エネルギー期待値E=Σiiεiが最も小さい電子配置を基底電子配置といいます。この基底電子配置が基底状態に相当しているわけです。

偶数電子系の基底電子配置はエネルギーが低い軌道から順にHOMOまで全て電子対になっています。

 

ただし,HOMOよりエネルギー的に上位のLUMOまでのエネルギー差が小さい場合や,HOMOとLUMOが同じエネルギーで縮退している場合には,原子の場合と同じく,

  

Huntの規則(フントの規則):「①できる限り異なる軌道に入る。②スピンの向きはでき得る限りそろえる。」が成立することから推論されるように,電子が対を作るよりもスピンの向きが平行な2つの不対電子に分かれたほうが安定です。

基底電子配置から,いくつかの電子を別の軌道に移して得られる,よりエネルギーの高い電子配置を励起電子配置といいます。

また,電気的に中性なN-電子系=(多電子原子 or 多原子分子)に対して電子数をいくつか増減してN+z電子系の電子配置を組み立てることができます。

 

z>0 ならz価の陰イオン,z<0 なら陽イオンになります。イオンの電子配置はイオン化電子配置と呼ばれます。

今日はこれで終わります。 

参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店)

  

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2008年1月21日 (月)

多原子系の方法論(分子軌道)(2)

前回,時間がなく最後が尻切れトンボになってしまいました。分子軌道法(MO)の続きです。

前記事においては,

 

[再掲]:特に,系が2原子分子なら核配置による固有値:[電子束縛エネルギー+Unn()]=u()(断熱ポテンシャル)は,対称性を考慮するとき,2つの核A,B間の距離RAB|AB|だけで決まると思われます。

  

そこでu()を単にu(RAB)と書くと,n=Kn+u()=-hc2A2/(2MA)-hc2B2/(2MB)+u(RAB)と書けます。(hc≡h/(2π)はPlanck定数)

これは中心力の2体問題ですから,2つの原子核の質量MA,MBから換算質量M≡MAB/(MA+MB)を求め,相対位置ABを単にと書いて相対運動の1体問題とし扱うことが可能です。

 

この1体系の(相対)ハミルトニアンをnrel≡-hc22/(2M)+u(R)とすれば,断熱ポテンシャルu(R)は原子核間の距離Rだけで決まる核間に働く力場を与えるポテンシャル(位置エネルギー)を示すことがわかります。[再掲終わり]

 

と書きました。

また,同じ記事で,水素分子イオン(H2)の例を挙げて断熱ポテンシャルu(R)のRに対する変動曲線を参照して図示しました。(下図)

 

   

 

この例の基底状態のエネルギー固有値に対応する最小のu(R)曲線は核間距離Rの関数として次のような挙動をします。

 

まず,2つの原子核が接近密着しているとき:R ~ 0 のときにはu(R)~ ∞です。

 

ここから,ある距離R=Reまでは急激な単調減少曲線となっているので,大きなCoulomb斥力(反発力)が働いていると考えられます。

 

R=Reに到達すると極小になって,そこから先は逆にRの増加と共にu(R)は急激に増加し,その後はある程度までRが大きくなると,(R)=u(∞)なる水平な漸近線に近づくという猫像です。

ここで,F=-du(R)/dRが核の間に働く力を示しており,F>0 なら斥力,F<0 なら引力になります。

 

それ故,R<ReならF>0 の反発力,R>ReならF<0 の引力が働き,R=ReではF=0 です。ここは丁度釣り合いの位置になります。

 

そこで,このeは平衡核間距離と呼ばれます。これは分子の結合の長さを意味しています。

さらに,断熱ポテンシャル(R)はe(,)ψ(,)=u()ψ(,)なる電子ハミルトニアンe=Ke+Unn+Une+Ueeの固有値()の2原子分子のときの値に対応しています。

 

e≡Σi{-hc2i2/(2m)}は電子の運動エネルギー,Unn≡ΣA<B{ZAB2/(4πε0AB)}は核間相互作用,Une≡ΣA<B{-ZA2/(4πε0Ai)}は原子核と電子の相互作用,Uee≡Σi<j{e2/(4πε0ij)}は電子間相互作用です。

そこでR→∞ のときには,明らかに,Unn0であり,またUneは個々の原子核とその周りの電子とのみの相互作用,Ueeもは個々の原子核の周りの電子同士のみの相互作用の寄与しかありません。

 

このときのe=Ke+Une+Uee,分子を構成する個々の原子が離散して独立な単独原子として存在するケースに相当します。

 

したがって,u(∞)は単純に自由な原子の個々の結合エネルギーの総和です。それ故,De≡u(∞)-u(Re)が分子から個々の原子を分離する分子の結合エネルギーに相当すると思われます。

ところが,u(R)は平衡点R=Reにおいて下に凸な曲線なので,そこでの2階微分は正:κ≡{d2(R)/dR2}|R=Re0 です。

 

それ故,u(R)を平衡点の近傍で展開すると,u(R)~u(Re)+(κ/2)(R-Re)2 κ>0 なる調和振動子で近似されます。

 

故に結合エネルギーはRの十分大きい値におけるDe(κ/2)(R-Re)2で近似されます。

ところが調和振動子は固有角振動数ωとすると,量子論的には基底状態でも零点振動のエネルギーEω0=hcω/2を持ちます。

 

今の場合はκ≡{d2(R)/dR2}|R=Re0に対して調和振動子の周期はT=2π(M/κ)1/2であり,よって角振動数はω=2π/T=(κ/M)1/2,です。

 

そこで,(κ/2)(R-Re)2の零点振動のエネルギーはEω0=hcω/2=(hc/2)(κ/M)1/2となります。

したがって実際の2原子分子を解離させるのに必要なエネルギー(解離エネルギー):D0e=u(∞)-u(Re)よりも,Eω0(hc/2)(κ/M)1/2だけ小さいことになります。

 

すなわち,D0e-Eω0=De(hc/2)(κ/M)1/2です。

 

水素分子なら換算質量がM=mH/2 なので,D0e-Eω0=Dec{κ/(2H)}1/2ですね。

今日はこれで終わります。

参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店)

  

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2008年1月19日 (土)

あれから1年

 丁度1年前の2006年12月~2007年1月のブログを読むと思い出しますが,2006年の12月中旬から体が異常に疲れやすく,肺の調子がおかしくて時々呼吸困難で窒息するほどの発作があったので,これはタバコのせいで肺が悪くなったな,と思って喫煙をやめ,体をだましだまししながら仕事してました。

(記事:2006年12/22「肺気腫にかかってしまいました。」,12/25「 引越し参照)

 ,タイミングの悪いことに病気になる以前から予定していた引越しの荷造りをN目ちゃんに手伝ってもらって,クリスマスイブの日に何とか荷物半分と体だけで平成6年5月から約13年間住んでいた豊島区巣鴨1丁目から北区滝野川4丁目に引っ越したのでした。

 そして睡眠薬で無理やり眠らなければ起きている間はセキが止まらないという状況に耐えかねて1月10日(水)に新居の近くの滝野川病院に肺を診てもらいに行ったところ,よくわからないので大病院で検査してもらうようにということで,夕方でしたが帝京大病院の救急外来で診察を受けました。

 そうしたら,肺ではなくて心臓病,それも心不全だということでした。

 超音波(エコー)検査によると,過去に1回心筋梗塞をやった形跡があるとのことです。。。

 なぜ発作に気づかなかったのかというと慢性の糖尿病のおかげで隠れ心筋梗塞のようになって助かったのではないか?とのこと,これはまた妙に運がよかったものです。

 とにかく心臓疾患のせいで肺に水がたまっているので,利尿剤などを含む点滴や薬物で水を全部出すためにすぐ入院しろとのこと,聞けば予定通りなら1週間で水が全部出て,以後はセキも出ず元のように暮らせるとのこと。。

 しかし,引越しの始末が終わってなかったので1週間ほど入院を待ってもらって,何とか残りの荷物を新居に運び込んで転出,転入届けを出し終わったのが1月16日(火)でした。

 新しい部屋は荷物で,一杯で,その整理をする暇もなく,その晩はベッドの上も荷物があって小さなスペースしかない状況でしたが,とにかく眠って,あくる日の昼に帝京大病院内科病棟に入院しました。

 それから1週間後,予定通り1月23日(火)に入院費ももったいないので無理やりにでも退院しましたが,その間におしっこが6リットルも出て,胸水は消えた代わりに体重が7kg程度落ちてガリガリ人間になりました。

(2007年1/10「肺気腫ではなく心不全でした。」1/16「入院のため一週間お休みします。 」1/22「退院しました。」参照)

 退院後は,引越し荷物の整理をゆっくりとやりながら,2007年2月1日から夜勤の肉体労働の仕事に復帰して,何とか3月23日(金)までは普通に暮らしていました。

 しかし,3月のその週は前週末の深酒が体にこたえたのか体調が余りにも変だったので,23日夜の仕事をキャンセルして,夕方帝京大病院の救急外来に診察に行きました。

 またしても2回目の隠れ心筋梗塞の痕跡が見つかりました。

 あと1回やるとさすがに命がないらしいということで翌日の土曜日に入院しました。

 まあ,深酒で体調をくずさなければ,病院に行くこともなく,いつかポックリ逝ってたはずなので,むしろ幸運だったのでしょう。

 そして3月30日に心臓にカテーテルを通したのですが,どうもカテーテル治療で入れる金属のステントなどよりも心臓の冠動脈のほうが細く,今にも切れて終わりになりそうだということで,結局は4月3日に順天堂大病院に転院し,4月10日には名医といわれる心臓血管外科の天野先生のグループの執刀手術を受けて命が助かったのでした。。。

(2007年3/23 「明日朝緊急入院します。」 4/22「無事生還しました。」参照)

 胸の血管や胃などの内臓を切開して血管を取り,それを心臓のまわりの細すぎる動脈7本の代わりになるように移植してバイパスした,ということで予定では5~6時間の手術が退院したあとで聞いたところでは10時間程度の大手術だったそうです。

 普通は高々3~4本をつなぐので,7本というのは珍しいとのことでした。

 しかし,今思えば丁度1年は命を長らえたわけですね。。。

 といっても心臓病はガンのように転移があるわけでもないので,手術が成功すれば外科的には問題ないらしいのですが。。

 しかし心筋梗塞を2回も起こした心不全:虚血性心疾患は内科的には決して直ることはないらしく,今でも月1回くらいは慢性糖尿病も兼ねて検査と投薬治療の薬をもらうために通院しています。

 また2007年8月には東京都から障害者4級の認定も受けました。

 実は,肺の病気ではなくて心臓だったので.一旦やめていた喫煙も月に1箱くらいのペースでは吸っています。

 今はといえば丁度,体の調子が悪くてセキが出ると止まらないので好きな酒を飲みにも行けませんが,別に心臓病のせいではなくて1月初めから風邪を引いているせいです。

 しかし心臓を患ってからはそれまでほぼ7年間患ったことのなかった風邪を世間の気候のままにちょくちょく引くようになり,しかも体力がないせいか?一旦かかるとなかなか直りにくくて,ときには発作のように咳き込んだ余り窒息症状に陥ることもあります。

 あまり咳き込むと未だに手術跡の傷が痛いのは困ったものですね。。

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多原子系の方法論(分子軌道)(1)

前記事からの続きとして,いよいよ分子軌道の話題に入ります。

 

原子が多数ある系で個々の原子核の添字をA,B,..とし,それらの持つ正の電荷をZA,ZB,..;核の質量をMA,MB,..;位置ベクトルをA,B,..とします。

 

そして,原子核AとBの間の距離をRAB|AB|で記述することにします。

  

また,この系を構成する質量mの全ての電子の添字をi,j=1,2,..として,その位置ベクトルを1,2,..とします。

 

そうして電子iとjの間の距離をrij|ij|で表わすことにします。最後に原子核Aと電子iの間の距離をRAi|Ai|と表記します。

  

このとき系全体のハミルトニアン演算子=Kn+Ke+Unn+Une+Ueeと書けます。

  

ここにKnは原子核の運動エネルギー:n≡ΣA{-hc2A2/(2MA)},Keは電子の運動エネルギー:Ke≡Σi{-hc2i2/(2m)},Unnは核間相互作用:nn≡ΣA<B{ZAB2/(4πε0AB)},

  

また,Uneは原子核と電子の相互作用:ne≡ΣA<B{-ZA2/(4πε0Ai)},Ueeは電子間相互作用:ee≡Σi<j{e2/(4πε0ij)}です。

  

ただし,hc≡h/(2π)はPlanck定数です。

 

核間相互作用Unnには,電気力による斥力とは異なる引力としての核力の寄与が含まれていません。

  

これは,分子内原子程度の核間距離のオーダーでは既に核力のレンジ(有効範囲)から,はずれていて事実上核力の寄与はゼロなので,核力のポテンシャルへの寄与は定数としての意味しかないため,無視できるからです。

 

原子核の質量MA,MB,..は電子の質量mに比べてはるかに大きく,上記の電子系のCoulomb相互作用による運動を問題にするときには,1/MA<<1/mにより,原子核系の運動エネルギーは電子系のそれと比較してはるかに小さいものです。

  

そこで,原子核は全て静止しているとして扱ってもいいと考えられるので,原子核の運動エネルギーKn=ΣA{-hc2A2/(2MA)}を,残りのハミルトニアンe≡Ke+Unn+Une+Ueeと比較して,無視する近似が可能です。

  

この近似は,創始した人の名をとってBorn-Oppenheimer近似(ボルン・オッペンハイマー近似),あるいは断熱近似と呼ばれています。

 

この近似では系のハミルトニアン=Kn+Ke+Unn+Une+Ueee=Ke+Unn+Une+Ueeと近似されます。

  

このときの系の近似ハミルトニアンe=Ke+Unn+Une+Ueeは電子ハミルトニアンと呼ばれています。

  

そして,この場合にはA,B,..は空間に固定された原子核の位置を示す単なるパラメータになり,系の運動は電子の位置1,2,..のみで記述されるとされます。

 

この近似で固定された原子核に対する電子系の運動を考えるだけなら,単なる定数の核間Coulomb斥力のエネルギーUnn0 は一見省いてもいいのでは?と思われますが,この項は原子核配置に依存した系のエネルギー的安定性を考察するために必要なので残しておきます。

 

以下では,本質的にはBorn-Oppenheimer近似を参考にしていますが多少異なるアプローチでの近似をめざして定式化しています。

 

まず,原子核の位置A,B,..をで総称し電子の位置1,2,..をで総称します。

  

そして全ハミルトニアンから原子核の運動エネルギーのみ除いた電子ハミルトニアンe=Ke+Unn+Une+Ueee(,)とし,これに対応する電子系を記述する定常状態波動関数をψ(,r)と書きます。

  

こうすれば,電子系を支配する固有値方程式はe(,)ψ(,)=u()ψ(,)なる形になります。

 

右辺のエネルギー固有値u()は,この原子核の集団内での個々の核の相対的配置に依存して決まる電子系のエネルギーに核間の斥力エネルギーUnn()を加えたものです。

  

固有値u()をの関数と見て断熱ポテンシャルと言います。

 

全ハミルトニアン=Kn+Ke+Unn+Une+Uee=Kneに戻って,運動方程式をΨ(,)=EΨ(,)と書けば,これはe(,)Ψ(,)=(E-Kn)Ψ(,)を意味します。

  

(E-Kn)はには依存しないので,これがu()に一致するとすれば,e(,)Ψ(,)=u()Ψ(,)ですから,Ψ(,)はψ(,)と同一の固有値u()に属するe(,)の固有関数です。

 

そこでのみに依存する比例係数をφ()と置けば,Ψ(,)=φ()ψ(,)と書けるはずです。

  

それ故,逆に個々のu()に対して,の関数として演算子n≡Kn+u()を定義すれば,結局元の方程式Ψ(,)=EΨ(,)はnφ() =Eφ()なる形の方程式に帰着します。

 

したがって,この定式化では,まず,核配置ごとに,e(,)ψ(,)=u()ψ(,)なる固有値問題を解いて,[電子の最小の束縛エネルギー+Unn()]=u()=(断熱ポテンシャル)と固有関数ψ(,)を求めます。

  

然る後に[Kn+u()]φ()=Eφ()を解いて,原子核のエネルギー+電子系の束縛エネルギー=総エネルギーの固有値E,および原子核の配置のみから決まる固有関数φ()を求めるという2段階の操作が必要です。

  

その結果として全体の波動関数Ψ(,)=φ()ψ(,)が得られることになります。

 

特に,系が2原子分子なら核配置による固有値:[電子束縛エネルギー+Unn()]=u()(=断熱ポテンシャル)は,対称性を考慮するとき,2つの核A,B間の距離RAB|AB|だけで決まると思われます。

  

そこで,u()を単にu(RAB)と書くと,n=Kn+u()=-hc2A2/(2MA)-hc2B2/(2MB)+u(RAB)と書けます。

 

これは中心力の2体問題ですから,2つの原子核の質量MA,MBから換算質量M≡MAB/(MA+MB)を求め,相対位置ABを単にと書いて相対運動の1体問題として扱うことが可能です。

  

この1体系の(相対)ハミルトニアンをnrel≡-hc22/(2M)+u(R)とすれば,断熱ポテンシャル:u(R)は原子核間距離Rだけで決まる核間に働く力場を与えるポテンシャル(位置エネルギー)を示すことがわかります。

 

参考のために水素分子イオン(原子核が2個で電子が1個の系)における具体的なu(R)のグラフを以下のホームページからコピーして掲載させていただきました。http://sparklx.chem.yamaguchi-u.ac.jp/lecture/docs/H_mol_ion.doc

 

結局,分子内で安定した状態として存在し得る原子の配置,すなわち原子核の配置を決める状態関数は,系内を運動する電子系を介して,それが束縛状態として安定な場合の電子と核,および電子同士の相互作用に支配された核間に働く力によって決定される,という基本的な結合構造のシナリオが得られました。

 

具体的に計算する方法は分子軌道法(MO)と呼ばれていますが,実際の計算は2原子分子程度なら割とスムーズなのですが,それ以上の多原子系では大変らしいです。

  

基本的には「多電子原子の構造」でも使用した変分法を多用するのですが,Hartree-Fock近似(ハートリー・フォック近似)を求めるのにも使用したRitz(リッツ)の変分法に頼って自己無撞着場の近似(SCF近似:self-consistent近似)を用います。

  

このとき変分法の出発点となる基底関数としては分子を構成する個々の原子における1s,2s,2p,..などの原子軌道関数の積を用います。

 

今日はこれで終わります。

 

参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店)

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2008年1月15日 (火)

多電子原子の構造

 2個以上の電子を持つ一般の原子を多電子原子と呼びます。

 

今日はヘリウム原子Heを中心として,それら多電子原子の量子状態

の構造の基礎について記述します。

しかし,多電子原子について述べる前に,まず記事:

「水素様原子の波動関数」において得られた種々の固有状態

=電子軌道:ψnlm(r,θ,Φ)=Rnl(r)Ylm(θ,Φ)に関連して,

それらの軌道の呼称について1通りおさらいしておきます。

添字nを主量子数と呼ぶことは既に述べました。

 

また,軌道角運動量をとするとき,

l(l+1)hc2(l=0,1,2,..n-1)が軌道角運動量の絶対値

の2乗:2の固有値を表わし,

mhc(m=-l,-l+1,..,0,1,..,l)が軌道運動から生じる

磁気モーメントの大きさに比例した軌道角運動量の成分の1つ,

例えばLzの固有値を示しています。

 

それ故,lを方位量子数(軌道角運動量量子数),mを磁気量子数

と呼びます。ここにhc≡h/(2π)でhはPlanck定数です。

エネルギー準位に直接関わる主量子数nについては,n=1,2,3,..

に対してそれに属する"状態=軌道"を,それぞれK殻,L殻,M殻,..

と呼ぶ習わしになっています。

 

また,水素様原子ではエネルギー準位が何重にも縮退しています

が,一般の多電子原子では方位量子数l=0,1,2,3,..,n-1に対

するそうした縮退は解けます。

これらのlについては,"固有状態=軌道"はs,p,d,f,..軌道

と呼ばれます。

 

例えば,主量子数n=1のK殻においては,方位量子数lは 0 しか

許されないわけですが,それは1s軌道と呼ばれます。

 

l=0 のs軌道ではm=0 のみが許されるので,K殻の軌道状態

この1sの1つしかありませんが,スピンの自由度sz=↑,↓を

考慮してスピン波動関数σsz(s)をも含めると,1電子の波動関数

ψnlm(r,θ,Φ)σsz(s)=Rnl(r)Ylm(θ,Φ)σsz(s)となります。

 

スピンsz=↑,↓に応じて,1s状態には計2個の電子が入ることが

可能となります。

すなわち,n=1,2,3,4,5,6に対応する軌道をK,L,M,N,O,P殻,

l=0,1,2,3,4,5に対応する軌道をs,p,d,f,g,h軌道と呼び

ます。

 

n=1においては 1sなる表記の軌道のみがあって,それを占有する

2個の電子の存在が可能,n=2には2s,2pと表わされる 1+3

=4個の軌道があってそれを占有する8個の電子の存在が可能です。

 

さらに,n=3では3s,3p,3dで表わされる 1+3+5=9個の

軌道があり,それらを占有する18個の電子が存在可能ということ

になります。

さて,2個以上の電子を持つ多電子原子の系については古典論の

太陽-惑星系の多体問題と同じく,厳密に解くことは不可能です。

 

しかし,水素様原子と同じく原子核の質量は原子内電子よりはるか

に大きく,重心はほぼ原子核の位置にあって重心運動と電子の原子核

に対する相対運動とは分離できると考えられます。

 

原子核は近似的に原点に静止していて,個々の電子の換算質量

mはほぼ電子質量に等しいと考えます。

このときN電子原子の電子にi=1,2,..,Nなる番号をつけて

原子核の位置を原点としたときの個々の電子の位置ベクトルを

iとします。

 

そして,ri|i |,ij|ij |(i≠j)と置きます。

すると,N電子の相対運動の総Hamiltonian

=Σi=1N[-hc2i2/(2m)-Ze2/(4πε0i)]

+Σi<j2/(4πε0ij) で与えられます。 

また,この電子の相対運動の総HamiltonianH  は,

=Σi=1N(i)+Σi<j(i,j),

h(i)≡-hc2i2/(2m)-Ze2/(4πε0i),

g(i,j)≡e2/(4πε0ij)(i,j=1,2,..,N)

なる形の和として表現することもできます。

このとき,h(i)ψ=Eψは水素様原子の定常状態の

Schroedunger方程式ですから,

その解はh(i)ψnlm=ε0nψnlm,

ε0n=-mZ24/{(4πε0)2(2c22)},

ψnlm(r,θ,φ)=Rnl(r)Ylm(θ,φ)

(l=0,1,2,.,n-1,m=-l,-l+1,.,0,1,.,l)

で与えられることは既に述べた通りです。

そこで,0≡Σi=1N(i)とおけば,固有値方程式

0Ψ=EΨの一般解は,固有値E=0n1n2..nNに属する

Ψ=Ψn1n2..nNの形,

つまり,0Ψn1n2..nN=E0n1n2..nNΨn1n2..nN

で与えられるはずです。

 

ただし,0n1n2..nN≡Σi=1Nε0nin1n2..nN≡ψn1ψn2..ψnNです。

 

ここで,ψnはΣl,mlmψnlm(r,θ,φ)(lmは複素定数)なる

h(i)の固有値εnに属する固有関数の線形結合の規格化

された形です。

 

これのアナロジーとして多電子問題を近似的に解く有効な手法

を考えることができます。

既に2007年6/15,6/17,6/18の一連の記事「ハートリー・フォック(Hatree-Fock)近似 (1),(2),(3) で固体金属内の周期的な多体電子

に対して行ないました。

 

ここでも個々の電子が独立に原子核と他の全ての電子の影響を

受けて1粒子のScroedinger方程式に従うとする"独立電子近似"

を採用することができます。

これは以下の手順です。

 

まず,ind(i)≡h(i)+1/2Σj≠i(i,j) (i=1,2,..,N)

とおけば=Σi=1Nind(i)と書けます。

 

これら個々のHamiltonian ind(i)が近似的に独立である

仮定してindφnεnφnなる1電子解が全て得られたな

ら,全体の固有値方程式Φ=EΦの一般解も見出すことが

できます。

 

その一般解はΦn1n2..nN=En1n2..nNΦn1n2..nNを満たす

独立1電子波動関数の積:Φn1n2..nN≡φn1φn2..φnNの全て

で与えられると考えられます。

ここにn1n2..nN≡εn1+εn2+..+εnです。

こうした"独立電子近似"での解を求めるには,次のような

方法が考えられます。

"(ⅰ)ハートリー・フォック近似(Hartree-Fock似)

=自己無撞着場の方程式を拡張して交換として知られる

相互作用を取り入れる。

(ⅱ)遮蔽現象を組み合わせる。"

です。

 

ここでいう遮蔽効果は,電子間相互作用に対して,より正確な

理論を展開する際,他の電子などの荷電粒子に対する電子の

応答を調べる際の重要な効果です。

(ⅰ)独立電子のHamiltonianを,ind≡-hc22/(2m)+V();

V()=-Ze2/(4πε0)+Vel(),

el() ={e2/(4πε0)}∫dj≠ij()|2/|'|]

として1電子方程式を作ります。

 

こうすれば,形式的な方程式系:

{-hc2/(2m)}2φi()-{Ze2/(4πε0)}φi()

+[{e2/(4πε0)}∫djj()|2/|'|]

=εiφi() が得られます。

このように各々の占有された1電子準位φi()にそれぞれ

1電子方程式が存在しているという近似で得られた一連の

方程式はハートリー方程式として知られています。

 

そしてこの方程式を具体的に解くには,まず1電子波動関数

φi()を適当に予測して,他の全ての電子による

有効ポテンシャルVel()=e2∫dj≠ij()|2/|'|

を作ります。

 

そのVel()に対する1電子方程式:

{-hc2/(2m)}2φi()-{Ze2/(4πε0)}φi()

+[{e2/(4πε0)}∫djj()|2/|'|]

=εiφi()を例えば数値計算によって解きます。

 

得られた解φi()をVel()の表式に代入して新たに得られた

1電子方程式を解くという逐次近似法を採用します。

理想的にはこの逐次近似法の繰り返しは,Vel()が繰り返し計算

の前後で不変になるまで続ければよいということになります。

 

こうした理由で,"ハートリー方程式を用いた近似=ハートリー近似"

は自己無撞着場の近似,あるいはSCFの近似と呼ばれます。

さらなる近似を加えるために,再びN電子系全体の正確な

Schroedinger方程式:HΦ=EΦに戻ります。

 

量子論の変分原理によれば,これの解:Φは等価な変分形式,

すなわち,エネルギー期待値:

<H>Φ=∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

を停留値にする状態:Φ()として与えられるはずです。

 

特に基底状態の波動関数は

<H>Φ=∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

を最小にする関数Φです。

ここで一般座標を具体的に位置iとスピンsiの全体で表現し,

φi(ii)(i=1,2,..,N)を直交規格化された1電子波動関数

のN個の組の1つとします。

 

近似解はΦ(11,22,..,NN)

=φ1(112(22)..φN(NN) なる形の全ての

Φ()にわたって期待値:

<H>Φ=∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

を最小にするものを検索すれば得られるはずです。

しかし,波動関数Φ=φ1φ2..φNの単純な形式のままでは

"2つの任意の電子変数の入れ換えに対して反対称であるべき

である。"というPauliの原理とは相容れません。

 

したがって最も簡単には,このハートリー近似を一般化して

波動関数Φを反対称化するために,いわゆるスレーター行列式

(Slater's determinant)を用います。

すなわち,Φ(11,22,..,NN)

=(1/N!)1/2det{φi(jj)}なる形式を採用します。

 

これを用いてエネルギーの期待値:

<H>Φ=∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

を計算します。

ただし,スピン波動関数をσsz(s)としてφi(,s)≡φi(sz(s)

と書きます。

すると,<H>Φ

=Σi∫dφi*()[{-hc2/(2m)}2-Ze2/(4πε0)]φi()

+{2/(8πε0)}Σi,j∫d'[1/|'|]|φi()|2

j(')|2±{2/(8πε0)}Σi≠jδsisj

∫di*(i(')[1/|'|]φj*('j()です。

 

右辺の最後の項の先頭の符号(±)はスピンsiとsjの交換に対する

符号の変化に(-)符号を掛けたもの,を示しており,通常の1電子

の組み合わせの電子数密度の因子:|φi()|2の代わりに積

φi*(i(')を含んでいます。

このエネルギー期待値に対してφi*の変分に対する変分原理を

適用すると,

{-hc2/(2m)}2φi()-{Ze2/(4πε0)}φi()

+{2/(4πε0)}Σj≠i∫d'[j(')|2]/|'|]φi()

±{2/(8πε0)}Σj≠iδsisj∫d'[1/|'|]×

φj*('i(')φj()=εiφi()

なる方程式を得ます。

 

これは,ハートリー・フォック(Hartree^Fock)方程式と呼ばれ,

この近似はハートリー・フォック近似といわれます。

 

そしてこの方程式は,左辺第3項の分だけ,ハートリー方程式

と異なっています。この異なる分の項は交換項と呼ばれています。

 

つまり,ハートリー方程式が

[{-hc2/(2m)}2+V()]φi()=εiφi()

であるのに対して,

ハートリー・フォック方程式は

[{-hc2/(2m)}2+V()]φi()±{2/(8πε0)}

Σj≠iδsisj∫d'[1/|'|]φj*('i(')φj()

=εiφi() と修正されます。

このハートリー・フォック方程式やハートリー方程式は

非線形の方程式で,その上交換項は∫U(,')d'のような

積分演算子の形ですから,実際の扱いはさらにむずかしいもの

であるといえます。

さらに,(ⅱ)電子間相互作用Vel()を原子内のCoulomb

ポテンシシャルにおいて,単純ですが重要な現象である

遮蔽効果として取り入れることを考えます。

一般に,正電荷を持つ重い粒子が,電子気体の中の与えられた

位置に固定されている場合,その粒子は電子を引き付け近く

余分の負電荷の分布を伴なうため,正電荷の正味の量に

対応する場を減少させます。

これを電子による遮蔽効果と呼びます。

通常の多電子原子で,この遮蔽効果を扱うのには2つの異なる

意味を持つ静電ポテンシャルを考察します。

第1のポテンシャルは通常のCoulombポテンシャル:

n()=-Ze2/(4πε0)です。

 

これは"原子核=正電荷そのもの"から生じるものであり,原子核

の電荷密度をρn()=Zeδ()と書けば,Vn()はPoisson

方程式:∇2n()=-4πeρn()を満足します。

一方, 第2のポテンシャルは電荷が実際に感じる全ポテンシャル

V()で,正電荷の原子核とそのまわりの遮蔽電子雲によって

作られるものです。

 

遮蔽も含めた全電荷密度をρ()とすると,ポアソン方程式∇2()=-4πeρ()を満足します。

 

ここにρ()=ρn()+ρel()であり,ρel()は外郭電子の電荷

密度を示しています。こ

の全ポテンシャルV()を遮蔽ポテンシャルと呼びます。

トーマス・フェルミ(Thomas-Fermi)の遮蔽理論では,

全ポテンシャル:V()=Vn()+Vel()

=-Ze2/(4πε0)+Vel()があるときの電荷密度

を見出すためにハートリー近似を用います。

 

基本的には独立な1電子Schroedinger方程式:

{-hc2/(2m)}2φi()-V(i()=εiφi()

を解き,ρel()=-eΣii()|2なる表式を用いて

1電子波動関数φi()の組から電子の電荷密度を近似

する必要があります。

手順は,(ⅰ)の自己無撞着場の方法での独立電子の固有値方程式

であるハートリーの方程式:indφi=εiφ;

ind≡-hc22/(2m)+V()における有効ポテンシャルを

V()=-Ze2/(4πε0)+Vel()として

トーマス・フェルミの遮蔽ポテンシャルを採用します。

 

この結果,例えば有効ポテンシャルが

V()=-Zeff2/(4πε0) (0<Zeff<Z)なる

遮蔽ポテンシャルで近似される場合もあります。

 

近似ポテンシャルV()=-Zeff2/(4πε0)を代入した

ind=-hc22/(2m)+V()に対する方程式indφi=εiφ

を解くのを繰り返す逐次近似法で基底状態の1電子波動関数

φiを求めます。 

そして,得られた近似解のスレーター行列式によって最適解:

Φ(11,22,..,NN)=(1/N!)1/2det{φi(jj)}

を求めます。

 

これを出発点としたエネルギー期待値の一般的な変分原理

から独立電子Hamiltonianにさらに交換項を加えたものと

してハートリー・フォック方程式

{-hc2/(2m)}2φi()-{Ze2/(4πε0)}φi()]

+{2/(4πε0)}Σj≠i∫d'[j(')|2]/|'|]φi()

±{2/(8πε0)}Σj≠iδsisj∫d’[1/|'|]

φj*('i(')φj()=εiφi()を得ます。

 

これを満たす解Φで,基底状態のエネルギーの期待値の近似値

を計算すると,E(Φ)≡<H>Φ=Σi=1Nε01i+Σi<j[Jij±Kij]

0(Φ)+Σi<j[Jij±Kij] となります。

 

ここにJij{2/(4πε0)}∫d'[1/|'|]

i()|2j(')|2,

ij{2/(4πε0)}∫di*(i(')[1/|'|]

φj*('j()です。

 

Jはクーロン積分,Kは交換積分と呼ばれる積分です。

ここで,(Φ)≡<H>Φ=E0(Φ)+Σi<j[Jij±Kij]の

右辺第2項[ ]内の(±)符号の(+)符号は電子の交換に

対して,波動関数のスピン部分が反対称で軌道部分が対称

なもの,(-)符号はスピン部分が対称で軌道部分が反対称

なものに対応しています。

 

そして,一般にJij≧0,Kij≧0 なのでもしも両者の軌道部分

の寄与が同一ならスピン波動関数が対称な方,両者のスピン

が同じ向きであるような場合の方がエネルギー準位が低く

安定になることがわかります。

また,一般にΔE=E(Φ)-E0(Φ)=Σi<j[Jij±Kij]0,

すなわち,E(Φ)≧E0(Φ)でありN電子原子の基底状態は

各1電子の基底状態のエネルギーレベルの総和のレベル

0(Φ)<0 よりも電子間の斥力効果の分だけ高くなります。

 

そして,この差ΔEを電子相関エネルギーといいます。

例として,特にZ=2のヘリウム原子(Helium)を考えると,

これは2つの電子を持っています。すなわち,N=2です。

2つの電子のスピンs1,s2は共に1/2(or hc/2)ですが,

これらから合成されるスピンs=s1+s2の固有状態波動関数

はs=0:(1/21/2)[|↑>|↓>-|↓>|↑>](反対称1重項)と

s=1:|↑>|↑>,|↓>|↓>,(1/21/2)[|↑>|↓>+|↓>|↑>]

(対称3重項)の2種類しかありません。

そこで,Pauliの原理により軌道部分も含んだ全体の波動関数は電子

の交換に対して反対称でなければなりません。

 

この原理は同種粒子の判別不可能性に起因するもので波動関数は

同種粒子の2回の交換で元に戻るため,波動関数は粒子の交換に

対して対称か反対称しか有り得ず,特にBose粒子は対称,Fermi

粒子は反対称という性質を持ちます。

それ故,2電子波動関数の軌道部分が共にn=1,l=0 の1粒子

基底状態の波動関数:ψ100()=R10(r)

={Z3/(πa03))1/2exp(-Zr/a0)(a0はボーア半径)の積:

ψ100(1100(2)で近似される2電子エネルギーが最低の

基底状態は軌道部分が対称でスピン部分が反対称なものに

限られるわけです。

 

こうした基底状態では同一の軌道に1s状態の2つの電子が

入るのでこれを,(1s)2と表現します。

このときの2電子波動関数はゼロ次の近似で

Φ(1,s1,2,s2)=(1/21/2100(1100(2)

[|↑>|↓>-|↓>|↑>]=(1/21/2)[ψ100(1)|↑>ψ100(2)|↓>

-ψ100(2)|↑>ψ100(1)|↓>]

=(1/21/2)[φ1(1,s12(2,s2)-φ1(2,s22(1,s1)]

=(1/2!)1/2det{φi(jj)}(i,j=1,2) です。

そして,水素様原子では電子1個の束縛状態のエネルギー準位

n=-mZ24/{(4πε0)2(2c22)}であるということと

水素原子の基底状態の結合エネルギーが

1=-me4/{(4πε0)2(2c2)}=-e2/(8πε00),あるいは

具体的にE1=-13.6eVであることから,

ヘリウムの結合エネルギーE(Φ)の近似値を求めてみます。

電気的に中性のヘリウムではZ=2であると同時に束縛電子の数

もN=2ですから,非摂動時には2電子の総エネルギーは

0(Φ)=2Z21=-13.6eV×8=-108.8eVです。

 

電子相関エネルギーの摂動はΔE=E(Φ)-E0(Φ)=J12+K12

であり,J1212{2/(4πε0)}∫d'[1/|'|]|

ψ100()|2100(')|2です。

 

このヘリウムの例ではクーロン積分Jと交換積分Kは一致します。

結局,具体的計算からΔE=-(5Z1/8)×2>0となり,

E(Φ)=E0(Φ)+ΔE=(-2Z28Z+5/4)

=(8-5/2)×13.6eV=-74.8eVなる近似値

が得られます。

 

これは摂動論の1次の摂動による計算値と一致しています。

 

Z=2を有効電荷Zeffに変更しそれに伴なって試行関数も

ψ100()=R10(r)={Zeff3/(πa03)}1/2exp(-Zeff/a0)より

Φ(1,2)={Zeff3/(πa03)}exp{-Zeff(r1+r2))/a0}に

変更します。

 

すると,E(Φ)=E0(Φ)+ΔE

=(Zeff24Zeff5eff/8){e2/(4πε00)}

=2(Zeff24Zeff5eff/8)E1 となります。

 

これの右辺をZeffで微分してゼロとおくと

dE(Φ)/dZeff2(2Zeff4+5/8)E10 です。

 

結局,Zeffに関する変分原理をも含めたあらゆる変分原理を

満たすような遮蔽ポテンシャルの有効電荷は

eff2-5/16=(27/16)で与えられることがわかります。

 

そこで,Zeff(27/16)と置いたとき,

Φ(1,2)={Zeff3/(πa03)}exp{-Zeff(r1+r2))/a0}

が最適な近似解になります。

 

この方法でのエネルギー期待値の最適近似値として

E(Φ)=E0(Φ)+ΔE=2(Zeff24Zeff5eff/8)E1

=-77.4eVが得られます。

これは摂動論による計算値-74.8eVよりもさらに実測値

-78.8eVに近い値です。

 

そして先述したように,軌道部分の寄与が同一ならスピン波動関数

が対称な方,つまり両者のスピンが同じ向きであるような場合の方

がエネルギー準位が低くて安定になります。

 

基底状態のすぐ次のレベルの(1s)(2s)の励起準位では軌道部分

が反対称の(1/21/2)[ψ100(1200(2)-ψ100(1200(1)>]

で,スピン部分が,s=1の対称3重項:

|↑>|↑>,|↓>|↓>,(1/21/2)[|↑>|↓>+|↓>|↑>]の状態

になると思われます。

 

 

まだ,原子軌道の分類の端緒に付いたに過ぎませんが,2007年5/23

の記事「対称操作の群とメタンのSP混成軌道」で記述している

ように,分子軌道に入る前段階の多電子原子の軌道においてさえ

各電子は必ずしも厳密に1s,2s,2p,3s,3p,3d,..の独立な

1電子の軌道上にあるというわけではなく,

また,エネルギー準位がこの順番で規則正しく単調に上昇するわけ

でもないことを強調しておきます。

 

もっとも「元素の周期律表」の方はそうした分類による順番と一致し

ています。

今日はこれで終わります。

 

って,これじゃ今年も1記事のページ数が全然減ってないじゃん。

参考文献:猪木慶治・川合 光 著「量子力学Ⅱ」(岩波書店),

アシュクロフト・マーミン著「固体物理の基礎上Ⅱ」(吉岡書店),

大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店),

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2008年1月14日 (月)

BODY(増谷キートン,椿鬼奴)

 しかし,お笑いの世界で未だメジャーになれないけど,この増谷キートン(ますやきーとん)と椿鬼奴(つばきおにやっこ)のコンビのBODYは1回見たら決して忘れられない傑作ですねえ。。。

              

 You-Tube 動画 BODYです。↓

,

この「きゅっきゅきゅきゅー」という曲もぴったりです。。いやー,何度でも見たいーーー

 

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2008年1月13日 (日)

量子力学の変分原理

量子力学の問題を解くに際して,摂動論などと同じく近似法とされている方法の1つに変分法というものがあります。

 

以下では量子力学における変分法,あるいは変分原理の理論的基礎,および基礎的な定式化について復習してみます。

まず,系のHamiltonianが与えられたとき,その系の自由度がfなら,

それは座標:=(q1,q2,..,qf),および,運動量:

=(-ihc)(∂/∂q1,∂/∂q2,..,∂/∂qf)によって,

H(,)なる演算子関数として表現されます。

 

系を記述する波動関数をΨ(,t)と書けば,それは時間に依存する

一般的なSchrödinger方程式 ihc(∂ψ/∂t)=Hψに従います。

ここにhc≡h/(2π)で,hはPlanck定数です。

さらに,系がエネルギー値Eの定まった安定した状態にある

ための条件は,波動関数Ψの時間発展因子が

Ψ(,t)≡ψ()exp(-iEt/hc)なる形に分離され,

座標依存因子(定常状態波動関数):ψ()が"定常状態の

Schroedinger方程式=Hの固有値方程式":Hψ=Eψを

満足することです。 

そして安定した物理的状態を支配する基本方程式である上記の

定常状態のSchroedinger方程式:Hψ=Eψが成立することは,

波動関数ψの変分に対して変分原理:

δ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

が成立することと同値です。

実際,Hψ=Eψならδ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

が成り立つのは明らかです。

 

逆にδ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0 が成立する場合,

ψは複素数なのでδψとδψ*は独立な変分ですから,この

変分原理によってHψ=Eψ,および,Hψ*=Eψ*の2つの式

が別々に得られます。

 

ところが,Hはエルミート(Hermitian)ですから,後者の等式

Hψ*=Eψ*は単に前者の複素共役であり,結局,前者:

Hψ=Eψと等価です。

そして,この変分原理δ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

Eを未定係数とするLagrangeの未定係数法を考えれば,

「∫ψ*()ψ()d=1 なる条件付きで,

δ[∫ψ*()Hψ()d]=0 が成立すべきである。」

という付帯条件付きの変分原理になっています。

付帯条件ψ*()ψ()d=1 の下での積分

ψ*()Hψ()dの最小値は,明らかにHの最小の

エネルギー固有値,つまり基底状態のエネルギー値E0です。

 

そして,この最小値を実現する関数ψは基底状態の波動関数

ψ0です。

 

それに続く定常状態の波動関数:ψn (n>0)は積分の極値を

与えるだけで真の最小値には対応しません。

ψ*()Hψ()dが極値を取るという条件:

δ[∫ψ*()Hψ()d]= 0 から,基底状態ψ0

次に来る波動関数ψ1と対応するエネルギーE1を求める

ためには,規格化条件ψ*()ψ()d=1 の他に,

基底状態ψ0に対する直交条件ψ*(0()d=0

を満たすものだけを許すという条件を課すべきです。

一般に,エネルギー準位が小さい方から最初のn個の状態を想定し,

そのn個の波動関数ψ01,...,ψn-1がわかっているとき,それに

続く状態の波動関数は付帯条件:

ψ*()ψ()d=1,ψ*(m()d=0

(m=0,1,2,..,n-1)の下で積分ψ*()Hψ()d

を最小にしています。

 しかし実際には,Schroedinger方程式に頼らず,変分原理に

基づいてψ*()Hψ()dを最小にする関数ψ()を

発見することは困難です。

 

 なぜなら,具体的には幾つかの規格化された試行関数:

φ1(),φ2(),φ3(),..のそれぞれについて,

∫φj*()Hφj()d(j=1,2,3,..)を計算し,より小さい

積分値を取る関数を検索するわけですが現実問題として全ての

関数を試し尽くすことは不可能だからです。

 また,仮にHψ=Eψを満たすEとψの組が,偶々何組か

見つかったとしても,それらのうちの最小固有値が真に最小

な固有値であるという保証はありません。

 

 したがって,有限個の試行で中断して妥協するしかない

のですが,よほどの幸運に恵まれぬ限り,所期の結果を期待

することはできません。

 そこで試行関数の範囲を広げてさらに効率よく試行を実行する

ことを考えます。

 

 すなわち,予めn個のもっともらしい試行関数;

φ1(),φ2(),..,φn()を与え,その任意の線形結合:

Φ≡c1φ1+c2φ2+..+cnφnにおいて係数の組{cj}j=1,n

を実数の範囲で連続的に変化させてエネルギーの期待値

E[Φ]≡∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

が最小値を取る条件を求めるわけです。

 

 一般に,そうした条件を与える式はn個の未知数{cj}j=1,n

対する連立方程式になります。

 すなわち,重なり積分をHij≡∫φi*()Hφj(),

ij≡∫φi*(j()とおけば,期待値は

E[Φ]=ΣiΣji*ijj/{ΣiΣji*ijj}

と表現されます。

 

 故に,E[Φ]{ΣiΣji*ijj}-ΣiΣji*ijj 0 です。

これをci*で偏微分すると,

{∂E/∂ci*}{ΣiΣji*ijj}+E[Φ]{Σjijj}

-Σjijj 0  となります。

 

 E[Φ]が最小になる条件は,∂E/∂ci* 0 ですから,

これからΣj{Hij-ESij}cj 0(i=1,2,..,n)なる

未知数{cj}j=1,nに対するn元1次の斉次連立方程式

得られるわけです。

 

 (もしも,Schimdtの直交化法などによって,予め

φi()(i=1,2,..,n)が直交規格化されているなら,

ij=δijです。ここでδijはKroneckerのデルタ記号です。)

 そして,このn元1次斉次連立方程式が物理的に意味のある

自明でない解を持つためには,(H-ES)ij{Hij-ESij}

(i,j=1,2,..,n)で定義されるn次の正方行列(H-ES)

について,その行列式がゼロになること:det(H-ES)=0

が必要十分です。

 

このEに関するn次代数方程式は永年方程式とも呼ばれ,これの

n個の解E=ε01,..,εn-1i≦εi+1)は,それぞれ,

det(H-εi)=0 を満足していてこれはHψ=Eψなる

エネルギー固有値の近似値を与えるものです。

 このうちの最小の値ε0は,Φ=c1φ1+c2φ2+..+cnφnなる

線形結合で与えられるあらゆる可能なΦの範囲の中で基底状態の

エネルギーE0に最も近いものです。

 

 もちろん,近似値ですからE0≦ε0です。

 

 同様にして真のエネルギー固有値を下からE0,E1,E2,..

とするとEk≦εk (k=1,2,..,n-1)が成立しています。

そして,エネルギー固有値の近似値{εk}k=0,n-1に対応する

波動関数の近次解k}k=0,n-1は,連立方程式

Σj{Hij-ESij}cj0 (i=1,2,..,n)の左辺に,

それぞれE=εkを代入して,方程式の解ベクトルと

しての係数の組{cj}j=1,n{c(k)j}j=1,nを求め,

Φk≡c(k)1φ1+c(k)2φ2+..+c(k)nφnと定義する

ことで定めるわけです。

 

しかし,係数行列の非正則性によって,解{cj}j=1,n{c(k)j}j=1,n

には定数倍だけの不定性があるので,

∫Φ*k(k()d=ΣiΣji*ijj =1を満たす

ように{c(k)j}j=1,nを調整します。

この方法は,線形結合近似の変分法,あるいはリッツ(Ritz)

の変分法と呼ばれています。

今日はこれで終わります。 

参考文献:ランダウ=リフシッツ(Landau & Lifshitz) 著

「量子力学1」(東京図書),

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2008年1月11日 (金)

水素様原子の波動関数

冬場と夏場は若干心臓の動きが悪いと言われているし,自身そんな気もするので,自分の体調を考えてブログの1つの記事の量も半分程度にしようと思います。

 

別の場所で"せいたかのっぽ"さんのコメントも頂きましたが,私は皮肉ではなく物性を定性的に捉えて説明できるような化学屋さんを尊敬しています。

 

私などは本質的に他人より馬鹿な(認識の閾値が低い?)ので,本来は定性的なものでさえ,なんとか定量的に捉えて数式の助けを借りなければほとんど理解できず,物理的意味を問われても数式を使用しないと答えられない人間です。

 

数式にでも頼ってなんとかうまく咀嚼できた後に,他人に説明できるほどの物理的イメージと語彙が整って初めて定性的説明が可能だと思うので,定性的に説明できたり,定性的に理解するのは大変な能力だと思って若干尊敬してしまいます。

 

さて,前記事の水,氷,水蒸気と関わる話の続きとして化学結合に関して書こうと思いましたが,まず分子以前の原子の理論まで戻り,そこから始めます。

 

e>0 を素電荷とするとき,中心にZe(Zは正の整数)の電荷を

持つ質量がm1の原子核があり,周りに質量がm2,電荷が(-e)の

電子が1個だけあるような系の1個の原子を想定します。

 

こうした原子を水素様原子と呼びますが,Z=1なら,これは水素

原子に他なりません。

 

さて,原子核の位置ベクトル1,運動量を1,電子の位置ベクトル

2,その運動量を2とすると,系の全Hamiltonian:totは,

tot12/(2m1)+22/(2m2)+V(|12|)となります。

 

ここで,V(r)=-Ze2/(4πε0)は静電Coulombポテンシャル

による位置エネルギーです。

 

系の重心の位置を≡(m11+m22)/M (M≡m1+m2)とし,

全運動量を,12とします。

 

そして,電子の原子核に対する相対運動を重心運動から分離して

考察するために,原子核を原点と想定したときの位置ベクトルを

21で定義します。

 

さらに,電子の換算質量mを1/m≡1/m11/m2で定義します。

 

(1/2)m(d/dt)22/(2m)が成立するように,

相対運動量:を,

 

≡m(d/dt)=(1/m11/m2)-1{d(21)/dt}

=(1/m11/m2)-1(2/m21/m1)=(m12-m21)/M

で定義すれば,

 

2-m2/Mです。

 

そして,このとき,tot2/(2M)+2/(2m)+V(r)

G と書けます。

 

ここに,G2/(2M)は系の重心運動のHamiltonianです。

 

他方,2/(2m)+V(r)は,原子核を原点とした電子の相対

運動のHamiltoniaと考えられます。

 

これに対するHamiltonの正準方程式は,

 

/dt=∂tot/∂=∂G/∂/M=(12)/M,

/dt=-∂tot/∂=-∂G/∂=0,

  

および,

 

/dt=∂tot/∂=∂/∂/m=1/m12/m2,

/dt=-∂tot/∂=-∂/∂=-∂V(r)/∂

 

です。

 

これらを見ると,系の重心運動と電子の相対運動は完全に分離され

ることがわかります。

 

特に,電子の質量は,m2=me 0.51MeV,核子1個の質量は,

N ~938 ~939Mev~1840meですから,

1=ZmN~1840Zme です。

 

これは,先の水素様原子の原子核と電子の質量の定義では,

1>>m2を意味するので,

 

この場合は,近似的に,

  

全質量:M=1+m2 ~ m1(原子核の質量),  

重心の位置:≡(m11+m22)/M~ 1(原子核の位置), 

換算質量:m≡m12/(m1+m2) 2=me (電子質量), 

相対運動量:2-m2/(m1+m2)~2(電子の運動量)

 

が成立しています。

 

結局,原子核を不動の原点とした電子の1体問題を考察しているの

と,ほぼ同等です。

 

こうした一連の手続きを見ると,以前2007年10/26の記事:

ケプラー問題(Kepler問題)」で古典力学の2体問題に関して,

次のような相対運動の定式化を与えたことを思い出します。

 

※"太陽,および惑星の質量をそれぞれm1,およびm2とし,位置ベク

トルをそれぞれ1,および2 とします。

 

そして,それらの間に働く力を12(1が2に及ぼす力),および,

21(2が1に及ぼす力)とします。

 

すると,作用反作用の法則(Newtonの第3法則)によって,

21=-12, かつ, (12120 

が成立します。

 

太陽と惑星の描く軌道のorderと比較して,太陽,惑星を質点で近似

すれば,この問題の運動方程式は,

1(d21/dt2)=21,および,

2(d22/dt2)=12

となります。

 

「物体2=惑星」の「物体1=太陽」に対する相対運動を考察する

ために,太陽を原点と想定したときの位置ベクトルを21

によって定義します。

 

このとき,系の運動方程式は,唯1つの式:

2/dt2=d2(21)/dt212/m121/m2

となります。

  

すなわち,運動は方程式:2/dt2(1/m11/m2)12 

だけで記述されます。

 

惑星の換算質量:mを1/m≡1/m11/m2で定義し,太陽1が

惑星2に及ぼす力を,改めて12で定義すると,

(d2/dt2)=となり,結局,2体問題は1体問題に

帰着します。

 

そして,当面の問題では,太陽の質量1が惑星の質量2より,

はるかに大きい(1>>m2)ため,1/m=1/m11/m21/m2

ですから,事実上m=2として換算質量を惑星質量と同一視

してよいことになります。

 

さらに,後の便宜上,太陽の質量1をMで表わすことにします。

 

さて,特に相対位置だけに依存する力場,しかも保存力場:

つまり,渦なしの場(rot=∇×0 )であるとすると,

 

謂わゆるPoincare'の補題により,あるポテンシャルV()が存在

して,=-gradV()=-∇V()と書くことができます。

 

特に,Vがの絶対値r≡||,または太陽と惑星の間の距離:

|21|だけの関数()=V(r)=V(|21)なら,

 

12-∇V=(-dV/dr)(/r)

(-dV/dr){(21)/r} です。

 

保存力場の内力は,12-∇2,21-∇1Vで与えられるので,

内力のポテンシャルが2質点間の距離だけの関数で与えられる場合

には作用・反作用の法則は自動的に満たされます。"※

 

(再掲記事終わり)

 

しかし,太陽と惑星の場合と似ているようでも,水素様原子の場合は

古典力学で考えるよりも,量子力学の問題として捉えるのが適切で

あると思われます。

 

そこで,運動量を=-ihcR,=-ihc なる座標表示の

演算子で置き換えることにより,問題を量子化ます。

(hc≡h/(2π)でhはPlanck定数)

 

すると,系の全Hamiltonianは,

tot=-hc2R2/(2M)-hc22/(2m)+V(r)

G ;

G{-hc2/(2M)}∇R 2,≡{-hc2/(2m)}∇ 2+V(r)

で与えられます。

 

そして系の波動関数をΨ(,,t)とすると,系の状態を支配

するSchrödingerの波動方程式は.

ihc{∂Ψ(,,t)/∂t}=totΨ(,,t)

となります。

 

特に,Ψ(,,t)が原子として閉じた1つの自由粒子の系:

つまり水素様原子として重心運動エネルギーが保存され,一定値EG

を取るGの固有状態を表わす状態関数であるとするなら,

GΨ(,,t)=EGΨ(,,t)です。

 

これは,[{-hc2/(2M)}∇R2]Ψ(,,t)=EGΨ(,,t)

と書けます。

 

そして,系全体:原子自体の波動関数は自由粒子としての境界条件

満たしていて,運動方向も一定のはずですから,対応する波動ベ

クトルをc22/(2M)=EGを満たすとすれば,

 

Ψ(,,t)=Φ(,t)exp(iKR-iEGt/hc)

と書けます。

 

このとき,波動方程式は,結局,

ihc{∂Φ(,t)/∂t}=Φ(,t)

に帰着します。

 

こうして,今問題としている原子内電子の2体問題は,Φ(,t)

原子核に束縛された電子の波動関数と考えれば,通常の1粒子の

量子力学の問題に帰着します。

 

特に,Φ(,t)が電子のエネルギーEを持つ定常状態:

つまり固有値Eに属するの固有状態なら,

Φ(,t)=EΦ(,t)なので,

Φ(,t)=ψ()exp(-iEt/hc) と書けます。

 

そして,Φ(,t)の時間に依存しない部分ψ()は

定常状態のSchrödinger方程式: 

[{-hc2/(2m)}∇2+V(r)]ψ()=Eψ(),or  

[{-hc2/(2m)}∇2-Ze2/(4πε0)]ψ()=Eψ()

を満たします。

 

右辺のLaplace演算子(Laplacian):∇2を極座標表示すると,

 

2=∂2/∂r2(2/r)(∂/∂r)

+(1/r2)[(1/sinθ)(∂/∂θ){sinθ(∂/∂θ)}

+(1/sin2θ)(∂2/∂φ2)]です。

 

ψ()を変数分離してψ()≡R(r)Y(θ,φ)とし,

α=(-2mE/hc2)1/20,λ≡mZe2/(4πε0c2α)

とおけば,

  

2/dr2(2/r)(dR/dr)-βR/r2

(-α22λα/r)R=0,および,

 

(1/sinθ)(∂/∂θ){sinθ(∂Y/∂θ)}

+(1/sin2θ)(∂2/∂φ2)=-βY 

となります。

 

Y(θ,φ)をさらに変数分離しY(θ,φ)≡Θ(θ)Φ(φ)とおくと,  

(1/sinθ)(d/dθ){sinθ(dΘ/dθ)}-(γ/sin2θ

=-βΘ,

2Φ/dφ2=-γΦ  

となります。

 

波動関数の1価性の要請から,関数Φ(φ)はφについて周期

が2πの周期関数であることが必要なので,解:Φ(φ)は,

Φm(φ)=(1/2π)1/2exp(imφ),Φ-m(φ)=(1/2π)1/2exp(-imφ)

(mは整数)の1次結合で与えられます。

 

それ故,適当な整数mについてγ=m2となって, 

(1/sinθ)(d/dθ){sinθ(dΘ/dθ)}-(m2/sin2θ

=-βΘ 

と書けます。

 

ここで,z=cosθと変数変換すれば, 

(d/dz){(1-z2)(dΘ/dz)}+{β-m2/(1-z2)}Θ

0 , または,

   

2Θ/dz2{2z/(1-z2)}(dΘ/dz)+{β/(1-z2)

-m2/(1-z2)2 0 です。

 

これは,z=±1,∞ に確定特異点を持つFuchs型の2階線形

常微分方程式です。

 

そして,この場合にFrobeniusの方法に基づいて決定方程式を解いて

得られる形式的べき級数解が収束するのは,ベキ級数が途中で有限

項で途切れて多項式の場合に限られることがわかります。

 

(↑ ※2007年4/28の記事「2階線形常微分方程式と確定特異点」)

 

つまり,β=l(l+1) (l=|m|,|m|+1,..)なる形である必要

があるため,

 

上の微分方程式は, 

2Θ/dz2{2z/(1-z2)}(dΘ/dz)

+{(l+1)/(1-z2)-m2/(1-z2)2 0

(l=0,1,2,..,;m=-l,-l+1,..,0,1,..,l)

となります。

 

この方程式は,Legendreの微分方程式と呼ばれ,(l,m)に対応

する解は,Legendreの陪多項式:Plm(z)であることがわかって

います。

 

したがって,cを任意定数としてΘ(z)=cPlm(z)と書けます。

 

特に,m=0 のときのLegendreの微分方程式:

2Θ/dz2{2z/(1-z2)}(dΘ/dz)

+{(l+1)/(1-z2)}Θ0 の解に対応する多項式を,

Legendreの多項式と呼び,Pl(z)と書きます。

  

これは,Pl(z)≡{1/(2ll!)}{dl(z2-1)l/dzl}

で定義されます。

 

これから,m≠0 の陪多項式:Plm(z)は,

lm(z)≡(1-2)|m|/2ml(z)/dzm

で定義されます。

  

結局,(l,m)に対応する規格化された波動関数は,

Θ(θ)Θlm(θ)

=[(2l+1)(l-|m|)!/{2(l+|m|)!}]1/2lm(cosθ)

となり,

 

(θ,φ)=Ylm(θ,φ)=Θlm(θ)Φm(φ)

=[(2l+1)(l-|m|)!/{4π(l+|m|)!}]1/2

lm(cosθ)exp(imφ) と書けます。

 

このlm(θ,φ)は球関数,or 球面調和関数と呼ばれています。

 

実は,軌道角運動量を×=(-ihc)(×∇)と書くと,

 

(-hc2)[(1/sinθ)(∂/∂θ){sinθ(∂/∂θ)}

+(1/sin2θ)(∂2/∂φ2)]2 となるので,

 

2=∂2/∂r2(2/r)(∂/∂r)-2/(hc22) 

とも表現できます。

 

それ故,2lm(θ,φ)=(l+1)hc2lm(θ,φ) です。

 

また,Lzic(∂/∂φ)なので,

zlm(θ,φ)=mclm(θ,φ)

とも書けます。

 

以上から,残る因子:動径関数の満たす動径方程式は, 

2/dr2(2/r)(dR/dr)-(l+1)/r2

(-α22λα/r)R=0 となります。

 

ここで,改めてこの1次元の動径方程式の物理的意味を見るため,

両辺に{-hc2/(2m)}を掛けて単位を取り戻すと,

 

[{-hc2/(2m)}(d2/dr2)-{2hc2/(2mr)}(d/dr)

(l+1)hc2/(2mr2)-2λαhc2/(2mr)]R

=-{h