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2008年1月13日 (日)

量子力学の変分原理

量子力学の問題を解くに際して,摂動論などと同じく近似法とされている方法の1つに変分法というものがあります。

 

以下では量子力学における変分法,あるいは変分原理の理論的基礎,および基礎的な定式化について復習してみます。

まず,系のHamiltonianが与えられたとき,その系の自由度がfなら,

それは座標:=(q1,q2,..,qf),および,運動量:

=(-ihc)(∂/∂q1,∂/∂q2,..,∂/∂qf)によって,

H(,)なる演算子関数として表現されます。

 

系を記述する波動関数をΨ(,t)と書けば,それは時間に依存する

一般的なSchrödinger方程式 ihc(∂ψ/∂t)=Hψに従います。

ここにhc≡h/(2π)で,hはPlanck定数です。

さらに,系がエネルギー値Eの定まった安定した状態にある

ための条件は,波動関数Ψの時間発展因子が

Ψ(,t)≡ψ()exp(-iEt/hc)なる形に分離され,

座標依存因子(定常状態波動関数):ψ()が"定常状態の

Schroedinger方程式=Hの固有値方程式":Hψ=Eψを

満足することです。 

そして安定した物理的状態を支配する基本方程式である上記の

定常状態のSchroedinger方程式:Hψ=Eψが成立することは,

波動関数ψの変分に対して変分原理:

δ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

が成立することと同値です。

実際,Hψ=Eψならδ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

が成り立つのは明らかです。

 

逆にδ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0 が成立する場合,

ψは複素数なのでδψとδψ*は独立な変分ですから,この

変分原理によってHψ=Eψ,および,Hψ*=Eψ*の2つの式

が別々に得られます。

 

ところが,Hはエルミート(Hermitian)ですから,後者の等式

Hψ*=Eψ*は単に前者の複素共役であり,結局,前者:

Hψ=Eψと等価です。

そして,この変分原理δ[∫ψ*()(H-E)ψ()d]=0

Eを未定係数とするLagrangeの未定係数法を考えれば,

「∫ψ*()ψ()d=1 なる条件付きで,

δ[∫ψ*()Hψ()d]=0 が成立すべきである。」

という付帯条件付きの変分原理になっています。

付帯条件ψ*()ψ()d=1 の下での積分

ψ*()Hψ()dの最小値は,明らかにHの最小の

エネルギー固有値,つまり基底状態のエネルギー値E0です。

 

そして,この最小値を実現する関数ψは基底状態の波動関数

ψ0です。

 

それに続く定常状態の波動関数:ψn (n>0)は積分の極値を

与えるだけで真の最小値には対応しません。

ψ*()Hψ()dが極値を取るという条件:

δ[∫ψ*()Hψ()d]= 0 から,基底状態ψ0

次に来る波動関数ψ1と対応するエネルギーE1を求める

ためには,規格化条件ψ*()ψ()d=1 の他に,

基底状態ψ0に対する直交条件ψ*(0()d=0

を満たすものだけを許すという条件を課すべきです。

一般に,エネルギー準位が小さい方から最初のn個の状態を想定し,

そのn個の波動関数ψ01,...,ψn-1がわかっているとき,それに

続く状態の波動関数は付帯条件:

ψ*()ψ()d=1,ψ*(m()d=0

(m=0,1,2,..,n-1)の下で積分ψ*()Hψ()d

を最小にしています。

 しかし実際には,Schroedinger方程式に頼らず,変分原理に

基づいてψ*()Hψ()dを最小にする関数ψ()を

発見することは困難です。

 

 なぜなら,具体的には幾つかの規格化された試行関数:

φ1(),φ2(),φ3(),..のそれぞれについて,

∫φj*()Hφj()d(j=1,2,3,..)を計算し,より小さい

積分値を取る関数を検索するわけですが現実問題として全ての

関数を試し尽くすことは不可能だからです。

 また,仮にHψ=Eψを満たすEとψの組が,偶々何組か

見つかったとしても,それらのうちの最小固有値が真に最小

な固有値であるという保証はありません。

 

 したがって,有限個の試行で中断して妥協するしかない

のですが,よほどの幸運に恵まれぬ限り,所期の結果を期待

することはできません。

 そこで試行関数の範囲を広げてさらに効率よく試行を実行する

ことを考えます。

 

 すなわち,予めn個のもっともらしい試行関数;

φ1(),φ2(),..,φn()を与え,その任意の線形結合:

Φ≡c1φ1+c2φ2+..+cnφnにおいて係数の組{cj}j=1,n

を実数の範囲で連続的に変化させてエネルギーの期待値

E[Φ]≡∫Φ*()HΦ()d/{∫Φ*()Φ()d}

が最小値を取る条件を求めるわけです。

 

 一般に,そうした条件を与える式はn個の未知数{cj}j=1,n

対する連立方程式になります。

 すなわち,重なり積分をHij≡∫φi*()Hφj(),

ij≡∫φi*(j()とおけば,期待値は

E[Φ]=ΣiΣji*ijj/{ΣiΣji*ijj}

と表現されます。

 

 故に,E[Φ]{ΣiΣji*ijj}-ΣiΣji*ijj 0 です。

これをci*で偏微分すると,

{∂E/∂ci*}{ΣiΣji*ijj}+E[Φ]{Σjijj}

-Σjijj 0  となります。

 

 E[Φ]が最小になる条件は,∂E/∂ci* 0 ですから,

これからΣj{Hij-ESij}cj 0(i=1,2,..,n)なる

未知数{cj}j=1,nに対するn元1次の斉次連立方程式

得られるわけです。

 

 (もしも,Schimdtの直交化法などによって,予め

φi()(i=1,2,..,n)が直交規格化されているなら,

ij=δijです。ここでδijはKroneckerのデルタ記号です。)

 そして,このn元1次斉次連立方程式が物理的に意味のある

自明でない解を持つためには,(H-ES)ij{Hij-ESij}

(i,j=1,2,..,n)で定義されるn次の正方行列(H-ES)

について,その行列式がゼロになること:det(H-ES)=0

が必要十分です。

 

このEに関するn次代数方程式は永年方程式とも呼ばれ,これの

n個の解E=ε01,..,εn-1i≦εi+1)は,それぞれ,

det(H-εi)=0 を満足していてこれはHψ=Eψなる

エネルギー固有値の近似値を与えるものです。

 このうちの最小の値ε0は,Φ=c1φ1+c2φ2+..+cnφnなる

線形結合で与えられるあらゆる可能なΦの範囲の中で基底状態の

エネルギーE0に最も近いものです。

 

 もちろん,近似値ですからE0≦ε0です。

 

 同様にして真のエネルギー固有値を下からE0,E1,E2,..

とするとEk≦εk (k=1,2,..,n-1)が成立しています。

そして,エネルギー固有値の近似値{εk}k=0,n-1に対応する

波動関数の近次解k}k=0,n-1は,連立方程式

Σj{Hij-ESij}cj0 (i=1,2,..,n)の左辺に,

それぞれE=εkを代入して,方程式の解ベクトルと

しての係数の組{cj}j=1,n{c(k)j}j=1,nを求め,

Φk≡c(k)1φ1+c(k)2φ2+..+c(k)nφnと定義する

ことで定めるわけです。

 

しかし,係数行列の非正則性によって,解{cj}j=1,n{c(k)j}j=1,n

には定数倍だけの不定性があるので,

∫Φ*k(k()d=ΣiΣji*ijj =1を満たす

ように{c(k)j}j=1,nを調整します。

この方法は,線形結合近似の変分法,あるいはリッツ(Ritz)

の変分法と呼ばれています。

今日はこれで終わります。 

参考文献:ランダウ=リフシッツ(Landau & Lifshitz) 著

「量子力学1」(東京図書),

大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店)

 

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