水素分子イオンと水素分子(補遺)
せっかく,水素分子イオン(H2+)や水素分子(H2)の基底状態のエネルギー準位,結合エネルギー等についての実験値の詳細がわかっているのですから,水素分子のイオン化エネルギーとク-プマンスの定理(Koopmansの定理)との差について若干考察してみましょう。
そもそも,水素分子H2の基底状態でのエネルギーuH2は,uH2=uS=u+(R)=2ε1S+e2/(4πε0R)+{VC(R)+VEX(R)}/(1+S2)において,R=ReH2としたときの値です。uH2=u+(ReH2)です。
ここで,R=ReH2は [du+(R)/dR]R=Re=0 を満たしていてu+(R)が原点の近くで極小になるような核間距離R=Reの値です。
このとき明らかにu+(∞)=2ε1Sですから結合エネルギーの定義DeH2≡u+(∞)-u+(ReH2)から,基底状態でのエネルギーはuH2=u+(ReH2)=2ε1S-DeH2と表現されます。
一方, 水素分子イオンH2+の基底状態でのエネルギーuH2+はuH2+=ub(R)=(α+β)/(1+S)の右辺でR=ReH2+としたときの値です。uH2+=ub(ReH2+)です。
ub(R)が陽にRの関数の形に書かれていないので,これを評価するには少し工夫が必要ですが,水素分子との比較を考えるだけなら,ub(∞)を考えるだけで十分です。
水素分子イオンのハミルトニアンはHH2+=-hc2∇2/(2m)-e2/(4πε0rA)-e2/(4πε0rB)+e2/(4πε0R)です。
一方,水素分子のハミルトニアンHH2=-hc2∇12/(2m)-hc2∇22/(2m)-e2/(4πε0r1A)-e2/(4πε0r1B)-e2/(4πε0r2A)-e2/(4πε0r2B)+e2/(4πε0r12)+e2/(4πε0R)です。
これらをR→ ∞ において比較すると,水素分子ではR→ ∞ のときr12→ ∞であると考えられるので,水素分子イオンのエネルギー固有値は水素分子のそれより,丁度電子1個の運動エネルギー分だけ小さいことになると思われます。
ところが,ビリアル定理によれば水素原子の基底状態での電子の運動エネルギーの期待値は,<K>=-<U>/2 を満たしているはずです。
しかも原子の基底状態では<K>+<U>=ε1sとなるはずですから,<K>=-ε1sです。
先に考察したように水素分子では,u+(∞)=2ε1Sですから,水素分子イオンではub(∞)=u+(∞)-<K>=3ε1Sとなるはずですね。
水素分子イオンの結合エネルギーの定義;DeH2+≡ub(∞)-ub(ReH2+)から,基底状態でのエネルギーはuH2+=ub(ReH2+)=3ε1S-DeH2+と表現されます。
以上から,水素分子のイオン化エネルギーは,uH2+-uH2=-ε1S+(DeH2-DeH2+)で与えられると結論されます。
クープマンスの定理が主張する式:uH2+-uH2=-ε1S が厳密に成立するのは,上のイオン化エネルギーの関係式の右辺において,第2項がゼロ,すなわち,水素分子イオンと水素分子の結合エネルギーDeが全く等しい場合のみです。
今の水素分子の場合は,実験によるとDeH2+=2.78eV,DeH2=4.74eVで両者はわずかに異なっています。
そして水素原子の1s状態=基底状態のエネルギーにマイナスをつけたものは,-ε1S=13.6eVですから,イオン化エネルギー=uH2+-uH2=15.56eVと予想されます。
実験値は15.43eVですから,まだ微妙に誤差があるようです。
参考文献:大野公一 著「(化学入門コース)量子化学」(岩波書店),猪木慶治・川合 光 著「量子力学Ⅱ」(岩波書店),高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店)
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