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2008年2月11日 (月)

デデキントの切断(補遺)

 実は,昔の大学入学時の頃のノートを忠実に再現すると,ブログにまとめたものよりもはるかに泥臭いものです。

 かつて,19世紀にラグランジュ(Lagrange)などが,それまでは無批判に使用していた級数などの収束性の論議を見直さざるを得なかったのと同じ,というのはおこがましいのですが,私もそれなりに悩んだようです。

 大学に入って,高校までに勉強していた付け焼刃のような極限や微積分の概念を,コーシー(Cauchy)が創始した,いわゆるε-δ論法に代表される近代無限小解析の手法で見直す,などと関連して,私的理解を助けるための,かなり細かい書き込みがノートのそこかしこにあります。

 当時,それらの見慣れない概念を受容するために,かなり悩んだ後が見られたりします。

例えば,前記事では煩雑になるので省略したα・1*1*・α=αの

証明なども,かなり苦労してやっていたようです。

 

結局は|α|・1*|α|を示せばいいわけですから,p∈|α|・1*

なら,p=s・t;s∈|α|,t<1と書けるので,p=s・t<s

ですからp∈|α|,逆にp∈|α|ならq>p,q∈|α|なるqが存

在してq>0 の場合p=q・(q/p)よりp∈|α|・1*となる

いう簡単明快なものです。

 

この証明の記述1つにしても,元々はスミルノフ著の「高等数学教程」

や高木貞治著の「解析概論」など,比較的古い記述の書物を参照して

いて,最終的に,W.Rudinというテキストに到達したようです。

ところで,前記事では急いでいたせいもあって,肝心の最後の実数の連続性を保証する"デデキントの定理(Dedekind's theorem)"なるものが解析学にとって一体,何の意味を持つのか?ということなどについて書き漏らしていたので,ここに補足しておきます。

そもそも,前述の"Dedekindの定理"は,"Dedekindの切断(連続性)公理"と呼ばれることも多く,何もわざわざ有理数から無理数を含む実数を"有理数の集合=切断"として定義する,という,

 

前記事のような手間をかけるほどのことはなく,単にこれを公理として受容してもよいくらいのものだ,ともいえます。

要するに,

 

実数に対して"Dedekindの定理",または"Dedekindの切断公理"が成立すれば,上に有界な実数集合には"上限",つまり"最小上界"があり,下に有界な実数集合には"下限",つまり"最大下界"があることがいえる,

 

ということが重要なのです。

 

結局,私など高校の数Ⅲでは証明なしでごまかしのような説明付きで無理に記憶させられていた,

 

"変数が有界で単調に変動するなら,それには有限な極限値が存在する。"

 

というような極限の存在についての法則が証明できるようになる,という

くらいの意味しかないのですね。

まあ,Dedekindの切断など知らなくても,

 

"上に有界な実数集合には上限=最小上界があり,下に有界な実数集合には下限=最大下界がある"

 

ことを公理として,出発しても大した差はないのですがね。。。

この定理,または公理の効用について,さらに述べるなら"実数の完備性"くらいですかね。

 

つまり,"実数によるCauchy列は必ず有限な極限値に収束する"という命題が成立するためには,実数の連続性が必要なんですね。

 

そして,結局,n次元Euclid空間:Rnの完備性も実数の連続性に基づいて保証されるわけです。

これらを具体的に述べるには,まず有界という言葉の定義から出発する必要があります。

[定義1]:(有界)

 実数の集合:E⊂Rがあるとする。

 

 実数y∈Rが存在して,∀x∈Eに対してx≦yが成立するとき,

Eは上に有界であるといい,yをEの上界と呼ぶ。

 

 一方,実数z∈Rが存在して,∀x∈Eに対してz≦xが成立するとき,

Eは下に有界であるといい,zをEの下界と呼ぶ。

 

 Eが上にも下にも有界であるときには,Eは有界であるという。

実数から成る数列:{xn}が有界であるとは,全てのxnの集合:

{xn:n=1,2,..}が有界であることをいう。

[定義2]:(上限,下限)

 実数の集合E⊂Rが上に有界であるとき,yがEの1つの上界であり

x<yならxはEの上界とは成り得ないときには,yをEの最小上界

=lubE(lub of E),またはEの上限=supE(sup of E)と呼ぶ。

 

 別の言い方をするなら,yはEの1つの上界であって,任意のε>0 に対してy-ε<x≦yなるx∈Eが存在するとき,yをEの上限と呼び

y=supEと書く。(lub=least upper bound;sup=supremum)

実数の集合:E⊂Rが下に有界のとき,zはEの1つの下界であって

z<xならxはEの下界とは成り得ないとき,zをEの最大下界

=glbE(glb of E),またはEの下限=infE(inf of E)と呼ぶ。

 

別の言い方をすれば,zはEの1つの下界であって,任意のε>0 に対し

てz≦x<z+εなるx∈Eが存在するとき,zをEの下限と呼び

z=infEと書く。(glb=greatest lower bound;inf=infimum)

[定理1]:(上限,下限)

 実数の集合:E⊂Rが上に有界でE≠φとする。

このときEの上限supEが存在する。

 

 また,実数の集合E⊂Rが下に有界でE≠φとする。

 このときEの下限infEが存在する。

 

(証明)集合AをA≡{α∈R|α<xなるx∈Eが存在する。}と定義し,

 集合BをB≡Ac=R-Aと定義します。

 

 このとき,y∈AならyはEの上界では有り得ず,

 y∈Bなら,∀x∈Eに対してx≦yが成立するので,

 yはEの上界です。

 

 つまり,BはEの上界全部の集合になっています。

そして,明らかにA∪B=R⊂R,A∩B=φです。

 

また,E≠φなので,あるx∈Eが存在します。

 

そして,α∈Rはα<xならα∈AなのでA≠φです。

 

また,E⊂Rが上に有界なのでB≠φです。

 

それ故,"Dedekindの定理"によってAが最大数を含むかBが最小数を含む

かのいずれかです。

 

ところが,∀α∈Aについて,α<xなるx∈Eが存在するので,このxに

対してα'≡(α+x)/2とおけば,α<α'<xですからα<α'なる

α'∈Aが存在するため,Aは最大数を持ちません。

 

したがって,B=(Eの上界の集合)が最小数を持ちます。

この最小数は,Eの最小上界=Eの上限supEです。

後半のEの下限infEの存在についても同様なので,後半の証明に

関しては省略します。(証明終わり)

※よくある解析学や微積分学の初歩的なテキストでは,実数の集合が有界のとき上限,あるいは下限が存在するというこの定理を,公理のように理論の

出発点としているものも多々あるようです。

 

 我々のような物理屋であれば,必ずしもDedekindの切断のような数学的に微妙な論題まで知る必要はないかも知れません。

[定理2]: 実数から成る数列:{xn}が有界で単調に変動するならば,

これはn→ ∞に対して有限な極限値に収束する。

 

(証明) 数列:{xn}が上に有界で単調非減少とすると,E≡{xn:n=1,2,..}は上に有界です。

 

 したがって,上限β≡supEが存在して,xn≦β(n=1,2,..)が

 成立します。

 

 任意のε>0 が与えられたとすると,上限の定義によって,あるNが存在

してβ-ε<xN≦βが成立します。

 

 そして{xn}は単調非減少数列なので,n≧NならxN≦xnです。

したがって,n≧Nならβ-ε<xN≦xn≦βが成立します。

つまり,n≧Nなら常に|β-xn|<εです。

 

これは,β=limn→∞nを意味します。

 

この場合には,極限値は上限に一致します。

 

一方,数列{xn}が下に有界で単調非増加の場合に,{xn}が下限に収束することも,同様にして証明できます。(証明終わり)

[定理3]: 実数の有限区間の列:[a1,b1],[a2,b2],..,[an,bn],..

が与えられ,どの区間も先行する区間に含まれるとする。

 

 つまり,[an,bn]⊂[an-1,bn-1],または

 an≧an-1,かつbn≦bn-1とする。

 

 そしてn→ ∞ に対して区間の長さn≡bn-anがゼロに収束する,

 つまりcn0  as n→ ∞ のとき,数列{an}と{bn}は共通の極限値

 に収束する。(この有限区間の列は縮小区間列と呼ばれる。)

(証明) 仮定により,a1≦a2≦..≦an-1≦an≦bn≦bn-1≦..≦b1

 です。

 

 したがって,数列{an}は上に有界で単調非減少なので,ある極限値α

 が存在してlimn→∞n=α≦b1です。

 

 limn→∞nlimn→∞(bn-an)=0 ですから,limn→∞n

 limn→∞(an+cn)=αも得られます。(証明終わり)

[定理4]:(Cauchyの収束判定条件(Cauchy's criterion))=(完備性)  

 実数から成る数列{xn}が有限な極限値に収束するための

必要十分条件は,

 

 ”予め与えられた任意の正の数εに対して,あるNが存在してm≧N,

 かつn≧Nなら|xm-xn|<εが成立する”

 

 ことである。

 

(証明) 必要性:{xn}が有限な極限値に収束するならば,

 "予め与えられた任意の正の数εに対して,あるNが存在してm≧N,

 かつn≧Nなら|xm-xn|<εが成立する"のは明らかです。

十分性を証明するため,"予め与えられた任意の正の数εに対して,

あるNが存在してm≧N,かつn≧Nなら|xm-xn|<εが成立する"

と仮定します。

 

仮定によって,あるN1が存在してm≧N1,かつn≧N1なら

|xm-xn|<1ですから,k≧N1なら|xk-xN1|<1が成立

します。

 

すなわち,k≧N1ならxN11<xk<xN11,あるいは

k[xN11,xN11]です。

 

同様にN2≧N1なるN2が存在して,k≧N2なら

N2(1/2)<xk<xN2(1/2),または

k[xN2(1/2),xN2(1/2)]です。

そこで,これを繰り返して,m=1,2,..,,m-1,m,..について,

m≧Nm-1≧..≧N2≧N1なるNmの列が存在して,k≧Nmなら

Nm(1/m)<xk<xNm(1/m),または

k[xNm(1/m),xNm(1/m)]

 

と書くことができます。

 

そこで,am≡xNm(1/m),bm≡xNm(1/m)とおけば,

k[an,bn] (n=1,2,..)であり,区間列{[an,bn]}は前定理3

の仮定である実数の縮小区間列:[a1,b1],[a2,b2],..,[an,bn]..

に他なりませんから,数列{an}と{bn}は共通の極限値に収束します。

その共通の極限値をαとすれば,limn→∞nlimn→∞n=α,

かつxk[an,bn]ですから,limn→∞n=αも成立します。

 

(証明終わり)

ここで,これらの実数空間Rにおける定理をn次元Euclid空間Rnに,一般化してみます。

 

Euclid空間は1種の距離空間ですから,差し支えない場合には距離空間

の言葉を用います。

[定義3]:(距離空間;metric space)

  

 のことを点と呼ぶ集合Xが距離空間であるとは, 

 "∀,∈Xに対して,これらの距離と呼ばれる実数;d(,)≧0

が定まっていて,次の3つの性質を満たすことをいう。

 

 3つの性質とは, 

(a)ならd(,)>0;特にd(,)=0 

(b)d(,)=d(,)

(c)∀∈Xに対し,d(,)≦d(,)+d(,) 

である。

  

厳密にはXだけではなく,(X,d)の組を距離空間と呼ぶ。

 

※ 例えば,n次元Euclid空間:Rnなら,

 x(x1,x2,..,xn),≡(y1,y2,..,yn)∈Rnに対して,距離を

絶対値で定義します。

 

 すなわち,d(,)≡||≡{Σk=1n(xk-yk)2}1/2定義すれば,

(Rn,| |)の組は距離空間になります。

以下,集合といえば距離空間Xの部分集合であることを暗黙の了解事と

します。

[定義4]:(有界)

 集合E⊂Xが有界であるとは,実数Mとある点∈Xがあって,∀∈X

 に対してd(,)<Mが成立することをいう。

[定義5];(収束点列) 距離空間Xの点列{n}が収束するとは,ある点α∈Xが存在して,任意のε>0 に対して整数Nが存在してn≧Nならばd(n,α)<εが成立することをいう。

[定義6](Cauchy列と完備性)

 距離空間Xの点列{n}がCauchy列であるとは,任意のε>0 に対し

整数Nが存在してm≧N,かつn≧Nならd(m,n)<εが成立する

ことをいう。

 そして距離空間Xの任意のCauchy列が収束するとき,Xは完備(complete)である,という。

定理4から実数の空間Rは完備であることがわかります。

 

 これを少し拡張すればn次元Euclid空間Rnも完備である,ことが

  わかります。

 

 一般の距離空間は必ずしも完備ではありませんが,あるCauchy列に関する同値類を作ることによって完備化することが常に可能です。

 

参考文献:Walter.Rudin「Principles of Mathematical Analyss」second Edition(McGrawHill) 

 

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コメント

実用的には、「無限小数を追加するだけで完備化される」ってのが重要ですね。(第一可算たからだっけ?)
ヒルベルト空間でも当然のように「完備」条件が付いてて、量子力学に使うのは「分離可能=可算基底」てのも、実用のためですね。

投稿: hirota | 2008年2月12日 (火) 13時24分

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