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2008年3月28日 (金)

カシミール効果(Casimir effect)

昨年の今頃は丁度入院したばかりで,結局1ヶ月程度ブログを休んで,4月末に退院してから再開したわけです。

 

今年も引越しのドサクサでブログが滞り勝ちになっていましたが,昨日くらいからやっと落ち着いたので以前のように科学的記事中心のブログを再開したいと思い,手始めにこの話題を取り上げたわけです。

昨年のブログ再開時も,まずは過去の記事を顧みてそれを反芻するような話題から入って慣らし運転をしましたが,今回も引越し直前の3月初旬にEMANさんのボードでの「談話室」 において

 

ゼータ関数の素朴な定義における見かけ上の発散の問題についてのごく軽い話題に関連して,カシミール効果(カシミア効果)の零点エネルギーの処理について述べた私のコメントの説明から始めます。

この話題については,ある方がかなりのこだわりを持っておられ,T.NAKAさんの「阿房ブログ」でも未だに頻繁に取り上げられているものでもあります。

まず,私のEMANさんのボードでの発言を再掲します。

 

これは私のホームページの内容ではないものを無断でアップするということになりますが,私自身が発言した部分のみを私のブログに掲載するのですから恐らく問題ないと思っています。

 

ただし,ブログ向きに内容を少し修正しています。

[再掲開始]

 手前みその連続ですがブログ「TOSHIの宇宙」の2006年10/14の記事「零点エネルギーとファン・デル・ワールス力でもカシミール効果とよく似た話になっているので,良かったら参照してください。

 この場合,記事では零点エネルギーはhcω0+ΔU(ただしc≡h/(2π)はプランク定数)で与えられ,ΔUが距離の6乗に反比例するファン・デル・ワールス力となっています。

 

 無限大とは関係ないように見えますが,実はこれは1対の分子のみに着目しているので,全ての分子の寄与を加えると,全体の零点エネルギーはΣ(hcω0+ΔU)です。

 

 通常の巨視的体積(数立法センチメートル)程度では,分子対の個数NはN~1023くらいで,零点エネルギーの大きさのオーダーはΣhcω0 ~ Nhcω0 ~hcω0×1023ですね。

このΣhcω0 ~ Nhcω0は無限大ではないにしても,分子間力としての個々のファン・デル・ワールス力の大きさと比較すると莫大ですね。

 

(ここでは"格子振動=フォノン"を問題にしているのでNは有限ですが,宇宙全体の真空エネルギーなどのように"電磁波=光子"が対象ならNが有限とは限らず,零点エネルギーは無限大になります。)

しかし,ファン・デル・ワールス力の全エネルギーは,Σhcω0を原点としたときの差であるΣΔUの方です。

 

別に各点の近傍での1対の分子に働く力だけを知りたいのであれば,その位置でのΔUのみが問題になるので,敢えてそのΣを取る必要もないくらいですし,ましてや零点エネルギーΣhcω0~Nhcω0は有限であろうが無限大であろうが,ファン・デル・ワールス力の評価には全く無関係な量です。

零点エネルギーが無限大とか莫大な値となるのは通常の量子力学でも場の量子論でも,"不確定性原理"がその根本原因ですから,これは付きものであって量子論ならこれを避けて通ることはできません。

 

しかし,実際の観測にかかる力は全位置エネルギーをUとするとき,=-gradU=-∇Uにより,Uの"空間微分=勾配"として与えられますから,U自身が莫大な値であろうと,力に無関係な単なる定数項なので,零点エネルギーを気にする必要はないと思います。

そして,私の過去の記事での"ファン・デル・ワールス力"を"カシミール力"と読み替えてみると,今の話になると思います。 [再掲終わり]

 と書きました。

 

 まあ,実際に過去の記事を読めばこれ以上の説明は蛇足に思えます。

 

 私自身がカシミール力(Casimir force)(=真空の中で2枚の平面金属板を微小な距離を隔てて平行に設置したとき互いに引き合うという不思議な力)については,Wikipedia程度の予備知識しかないですから,この部分に関する説明を若干詳細に行なって問題をより明確にする必要があると思ったわけです。

 

 一般に学問的,専門的なことに限らず,初等教育においてもそうですが,ある意味で他人に説明するという行為は,説明を試みる本人が得るものの方が,教えられる人の得るものよりもはるかに大きい場合が多い,という側面がありますから,これは自分自身への解説でもあります。

 さて,Wikipediaの“Casimir effect”によれば,

 

 z=0とz=aで与えられるxy面に平行で距離aだけ離れた2枚の金属導体平面上では,自由電磁波の成分であるところの電場の横波成分,および磁場(横波しかない)は消えるという境界条件から,それらの場の成分は定在波:ψm(x,y,z,t)=exp(-iωmt)exp(ikxx+ikyy)sin(kmz);km=mπ/a,ωm=c(kx2+ky2+km2)1/2(m=1,2,..)の重ね合わせとして表現されることがわかります。

 

 ここにcは光速です。

これは電場あるいは磁場の偏り成分を複素電場,あるいは複素磁場で表現した形式ですが,実際の電磁場は実数であり,例えば電場なら複素電場の実部,あるいは虚部で与えられます。

 

そこで,複素電場が単一の角振動数ωによって,(x,y,z,t)0(x,y,z)exp(-iωt)で与えられる場合には,電場の強さはこれのサイクル平均,すなわち,周期をT≡2π/ωとして<2c(1/T)∫0T|Re|2dt=(02/T)∫0Tcos2ωtdt=02/2=||2/2 で与えられると考えられます。

 

ここで< >cの添字cはサイクル平均を表わしています。

特に,先の2枚の平行金属板の間にあると仮定した境界条件を満たす光=電磁波のケースなら電場の横成分ベクトルは(x,y,z,t)0ψm(x,y,z,t)=0exp(-iωmt)exp(ikxx+ikyy)sin(kmz)なる形ですから,サイクル平均強度は2c02sin2(kmz)/2 となるはずです。

振動数がωmの単一モード(単色)の電磁波のエネルギーのサイクル平均は,古典電磁気学では<E>c(1/2)∫dxdydz<ε02+μ0-12c(1/2)ε002A∫0a sin2(kmz)dz=(1/4)ε002aAで与えられます。

 

ここに,Aは平面金属板の面積です。

 

そして,特に真空の場合には(x,y,z,t)0ψm(x,y,z,t)=0 ですから,古典電磁気学で考える限りでは,もちろん,真空での平均エネルギー<E>cはゼロです。

ところが量子論では振動数がωの"単色電磁波=光子"のエネルギーの期待値<E>はその励起準位がnの場合,つまりn個の光子が存在する場合には<E>=(n+1/2)hcωで与えられます。

 

そして特に真空の場合,すなわち光子数がゼロでn=0 の場合でも,その"状態(真空)=基底準位"のエネルギー<E>はゼロではなく,有限値<E>=(1/2)hcωを取ります。これを零点エネルギーと呼びます。

この零点エネルギーの存在は量子論特有の現象であり,一般に電磁場は多くの1次元調和振動子の集まりとして表現できますが,個々の"1次元調和振動子のエネルギー=ハミルトニアン"Hの表現E=H=p2/(2m)+(1/2)mω22では,ハイゼンベルクの不確定性原理ΔxΔp≧hc/2 のせいで量子論的にはバネ振動が完全に静止x=p=0 し,E=0 となるような状態の存在が不可能です。

 

そこで,|xp|≧hc/2 とならざるを得ないため,(相加平均)≧(相乗平均)によりE=p2/(2m)+(1/2)mω222{p2/(2m)×(1/2)mω22}1/2(1/2)cωが成立することに起因しています。

そこで,振動数がωmの光:ψm(x,y,z,t)=exp(-iωmt)exp(ikxx+ikyy)sin(kmz);km=mπ/a,ωm=c(kx2+ky2+km2)1/2(m=1,2,..)に対しm≡hcωmとおけば,その光子に対応する"真空でのエネルギー期待値=零点エネルギー"は,(1/2)Em(1/2)hcωmです。

それ故,x,y方向の運動量成分(x,ky)の各々について許される全ての振動数に対する"真空の全エネルギー期待値=全零点エネルギー"<E(x,ky)>は,<E(x,ky)>=2×(1/2)Σn=1n=hcΣn=1ωn;ωn=c(kx2+ky2+n2π2/a2)1/2,(n=1,2,..)で与えられます。

 

2を掛けたのは光の偏りの2つの自由度を考慮したものです。

そして,(x,ky)の近傍,kx~kx+dkx,ky~ky+dkyでの単位面積当りでの状態密度はdkxdky(2π)-2なので,単位面積当りの零点エネルギーは<E>/A=c∫dkxdky(2π)-2Σn=1ωn (ただしωn=c(kx2+ky2+n2π2/a2)1/2)で与えられることになります。

ところが,2=kx2+ky2とおいて<E>/A=c∫dkxdky(2π)-2Σn=1ωn={c/(4π2)}Σn=102πqdq(q2+n2π2/a2)1/2と書くと,この右辺は明らかに発散します。

 

そこで,これが発散しないための処方として,パラメーターsを導入して級数Σn=1ωn=cΣn=1(kx2+ky2+n2π2/a2)1/2でのωnにかかるベキを1から(1-s)に変えることを考えます。

 

つまり,<E(s)>/A≡cΣn=1∫dkxdky(2π)-2ωn1-sと定義して,求める<E>/Aは上式の右辺が収束するようなsに対する<E(s)>/Aから回り道をして<E>/A=lims→+0<E(s)>/Aにより,<E(s)>/As→ 0 の極限値で与えられると考えるわけです。

 

こうしたテクニックを使って発散を緩和する手法は正則化と呼ばれています。

こうすれば,<E(s)>/Aを表わす右辺の級数の各項の積分は簡単に実行できて<E(s)>/A=cΣn=1∫dkxdky/(2π)2ωn1-s={hc1-s/(4π2)}Σn=102πqdq(q2+n2π2/a2)(1-s)/2=-[c1-sπ2-s/{2(3-s)a3-s}][Σn=1(1/ns-3)]と書けます。

 

もしもRe(s-3)>1であって右辺の無限級数が収束する場合なら,これはゼータ関数を用いて表わすことが可能で,<E(s)>/A=-[c1-sπ2-s/{2(3-s)a3-s}]ζ(s-3)と書くことができます。

この最後の表式が正しいのであれば,ζ(-3)=1/120ですから見かけ上は<E>/A=lims→+0<E(s)>/A=-[ccπ2/(6a3)]ζ(-3)=-[ccπ2/(6a3)](1/120)となって値は有限になります。

 

しかし,現実にはs=0ではRe(s-3)>1は満足されず<E>/A=-[ccπ2/(6a3)][Σn=13]=-∞であって,これは明確な意味を持たない量で無限大ですから,Σn=13有限確定な値を定めるゼータ関数ζ(-3)=1/120に一致するはずはありません。

しかし,現実に実測にかかる量は金属板間にかかる張力,あるいは圧力,つまりT=F/A=-{d<E>/da}/Aで与えられる量であって,位置エネルギー<E>/A=-∞ そのものではありません。しかし,そもそも無限大の値である<E>/Aを有限な距離パラメータaで微分することに明確な意味があるのでしょうか?

これについては,既に量子電磁力学の実際の理論計算において,理論に忠実に計算を行なえば物理的観測量の値のほとんどが発散して無限大の値になってしまう,という避けられない現実との不一致が現われるという困難を回避するための"くりこみ理論"という有名な有効理論の先例があります。

 

これは,一見したところ無限大に発散する量から,無限大を差し引くという方法で,この方法によってある種の正則化をしたお釣りの有限項から,物理量の実測値と一致する種々の計算結果を理論的に非常に厳密な精度で得ることに成功しています。

そこで,今の場合も<E>/A=-[ccπ2/(6a3)][Σn=13]=-∞という負の無限大量は-[ccπ2/(6a3)]ζ(-3)-∞とゼータ関数で与えられる有限なお釣りを持つと想定して,項ごとにaで微分したとき,右辺第2項の零点エネルギーの無限大寄与部分は定数項であると考え,その微分{d(-∞)/da}/Aはゼロであると仮定すれば,結局,張力としてT=F/A=-{d<E>/da}/A=-[3ccπ2/(6a4)]ζ(-3)=-ccπ2/(240a4)なる表現式が得られます。

これは,カシミール力として知られている真空中に単に平行に金属板を置いただけで観測される距離の4乗に反比例する張力あるいは引力を正しく表現する式となっています。

 

上述のくりこみは,カシミール力の実験値を再現する有効理論としての意味を持っていることがわかります。この理論で用いた正則化はゼータ関数による正則化と呼ばれているようです。

 

このカシミール力をフォトンの零点振動から導いた方法が以前の記事において結晶のフォノンの零点振動から分子間力であるファン・デル・ワールス力(Van der Waalsの力)を導いた方法と同じであることは,ほぼ明らかであると思われます。

 

こうした量子論の根本原理である本質的な確率的性格に起因する零点エネルギーや紫外発散のように無限大に発散する計算値を除去する種々の正則化の試みはファインマン(Feynman),朝永,シュヴィンガー(Schwinger),ダイソン(Dyson)のくりこみ理論においても,所詮は処方箋というか,実験値を再現するための対症療法,つまり有効理論でしかないわけで原因療法ではあり得ないわけです。

  

2006年4/23の記事「くりこみ回避のアイデア」にも書きましたが,過去には私自身も解析接続にその真の解決の可能性を求めたこともありました。

 

しかし,結局これらの根本的解決は現在では超弦理論などの新理論に委ねられるべきかもしれませんね。

  

参考文献:Wikipedia "Casimir effect"

 

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コメント

「くりこみ」は摂動展開に特有の手法。とか読んだ事がありますから、「超ひも理論」が本質的に有限な計算値になる理論であっても、摂動展開が無理な要素を含む状況を摂動展開で計算しようとすると「くりこみ」みたいなものが必要になったりするんじゃないでしょうか。

投稿: hirota | 2008年3月31日 (月) 19時21分

書いてあれば無視できないのが人間の性。自重された方がいいでしょう。

投稿: T_NAKA | 2008年3月30日 (日) 21時33分

Dear Mr. T_NAKA
Thank you for a good advice.
Well, I'd like you to hear my advice.
If you want not to take a meaningless time, you would rather ignore my comment.

Dear Mr. TOSHI
I'd like you to pardon me.

投稿: Layman | 2008年3月30日 (日) 20時23分

>私が英単語を使っているのは、基本的には、タイピング量とタイピング時間を節約するためですので、ご容赦をお願いいたします。

それは容認できる理由ではありません。ご自分の節約のために、読み手に読み難い気分の悪い文章を押し付けていることになります。それは自分勝手な言い訳で、コミュニケーションを取ろうという人の態度ではありませんね。EMANさんの注意事項はどこでも有効なものです。

投稿: T_NAKA | 2008年3月30日 (日) 16時02分

TOSHIさん
PS有難う御座いました。
この辺のところは、元超ひも理論研究者の竹内薫先生のcommentをお伺いしたいところですが、「物理掲示板」がclosedされ、It's impossible for meなので、very regrettableです。

投稿: 凡人 | 2008年3月30日 (日) 10時48分

 どもTOSHIです。

 凡人さんのコメントに対するPSです。 

>超ひもの質量の計算に、ζ(-1)=-1/12が利用されている事が説明されて事を仰られているのではないでしょうか?

 という話ですが,ここら辺くらいの超対称性と関係ない超のつかない単なる「ひも理論」の話なら私も既にGreen,Schwartz,Wittennらのテキストで詳細に勉強したことがありますが,ζ(-1)=-1/12が利用されているというのは,1+1+..=-1/12というゼータ関数のウソの表現式と同じく一種のパロディで,あってひもの質量の計算にゼータ関数を利用する必要はなく,質量は普通に計算しても無限大に発散することはないのでここで「くりこみ」の必要はありません。

 このヴィラソロ代数の計算が,1+1+..=-1/12に似ているように見えるというだけで,質量計算にζ(-1)=-1/12を利用したのではなく,質量計算結果を見たらたまたま,そういうゼータの表現式に似ていたという後付けですね。

 関連記事としては2006年10月13日の「超弦理論テキストにおける計算ミス」があります。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2008年3月30日 (日) 10時10分

TOSHIさん
「次元正則化」についてご教示頂き、大変有難う御座いました。
因みに、以下の文書をglanceして、「次元正則化」のfeelingをgraspする事が出来ました。
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~hamanaka/summer_school.pdf
T_NAKAさん
>それは思想=物語(フィクション)であって、それだけでは科学・物理学ではないでしょう。
As you know,the above pdf file内に、「7 カイラルなゲージ理論の格子上での定式化について」というchapterがありましたが、いかがでしょうか?
PS:
私が英単語を使っているのは、基本的には、タイピング量とタイピング時間を節約するためですので、ご容赦をお願いいたします。

投稿: 凡人 | 2008年3月30日 (日) 10時06分

>なお私は、自然を整数論に「マッチ」させるためには、時空の離散化が必要となるのではないかと思っております。

それは思想=物語(フィクション)であって、それだけでは科学・物理学ではないでしょう。
それ相応の根拠がないと説得力がありませんね。「自然は整数論とマッチすると美しい」などというのは形而上学であって科学的根拠には成り得ません。よってそういう議論には絡みませんので悪しからず。

投稿: T_NAKA | 2008年3月29日 (土) 23時32分

 ども凡人さん,コメントありがとうございます。TOSHIです。

>したがって、超ひも理論やカシミール効果の計算で使われている繰り込みと、量子電磁力学で使われている繰り込みは、差し当たり似て非なる繰り込みではないかと理解しているのですが、如何でしょうか?

 イヤ,似て非なる繰り込みなどはありません。正則化の方法が違うだけです。正則化には大きく分けて「cutoff=切断を用いる方法」と「次元正則化」の2種類があって「ゼータ関数による正則化」は後者の「次元正則化」の一種ですね。

 「切断正則化」はΛを非常に大きい正の実数として積分の上限の∞を切断Λで置き換える方法とregulatorによる方法,つまり伝播関数(propagator)を例えばボソンなら1/(p^2-m^2+iε)の代わりに[1/(p^2-m^2+iε)-1/(p^2-Λ+iε)]に変更してとりあえず発散を抑える方法です。

 一方,次元正則化はわれわれの時空次元をd次元とし,d=4+εとしてε>0に取り,とりあえず積分が発散しないようにするもので,本質的に切断によるものと同じ内容です。

 ただ,計算結果だけでなく理論計算の途中段階でも相対論的共変性やゲージ不変性が破れないように考慮するなら「次元正則化」のほうがベターなので,啓蒙書レベルでは説明の簡単な「切断正則化」で説明するでしょうが若干複雑だけど今では「次元正則化」が主流でしょう。

 カシミール効果では次元1を1-sにしてΣn^3をΣn^(3-s)として(3-s)<-1なら,とりあえず収束するので発散が抑えられているという方法なので次元正則化の一種だと思います。
                TOSHI

投稿: TOSHI | 2008年3月29日 (土) 22時35分

T_NAKAさんが仰られた、
>現在の「超ひも理論」でもこの手の繰り込みを使っているので、本質的な繰り込みの回避は何かもう一つのレベルアップが必要かも知れませんね。
については、『ゼロから学ぶ超ひも理論』(竹内薫氏著、講談社)のP78-79で、超ひもの質量の計算に、ζ(-1)=-1/12が利用されている事が説明されている事を仰られているのではないでしょうか?
ところで、量子電磁力学で使われている繰り込みは、『よくわかる最新 量子論の基本と仕組み』(竹内薫氏著、秀和システム)のP146~148によると、0~∞の範囲で計算すると、通常の計算では無限大に発散する定積分を、有限の箇所で切断し、実験値を援用して「くりこみ式」をつくり、その式をつかって計算すると、有限の値を得る事が出来るというように説明されているようです。
したがって、超ひも理論やカシミール効果の計算で使われている繰り込みと、量子電磁力学で使われている繰り込みは、差し当たり似て非なる繰り込みではないかと理解しているのですが、如何でしょうか?
また、T_NAKAさんが仰られている事と重複すると思いますが、量子電磁力学や電弱理論、量子色力学の計算で現れる発散は、超ひも理論で回避可能だと思いますが、超ひもの質量の計算において現れる発散は、もう一段階高い見地から解明されなければならないと思っています。
なお私は、自然を整数論に「マッチ」させるためには、時空の離散化が必要となるのではないかと思っております。

投稿: 凡人 | 2008年3月29日 (土) 20時20分

 どもT.NAKAさん,コメントありがとうございます。

>現在の「超ひも理論」でもこの手の繰り込みを使っているので、本質的な繰り込みの回避は何かもう一つのレベルアップが必要かも知れませんね。

 ひもでも「くりこみ」を使っているかもしれませんが,一応,ひもは1点ではなくてプランク長程度でも大きさ(長さ)があるので「2点場=bilocal場」以上の非局所場ですから,その長さ程度の臨界波長λc=cutoffを持っており,そこでエネルギー運動量にp=h/λc程度の上限があるので,通常のregulatorの正則化において仮想上限運動量を設けて計算し,最後に運動量による積分の上限∞にするという操作が必要がないので,そもそもファインマン積分が発散しませんから,正則化なしで計算は有限になるはずだと思われるのですが。。。
                TOSHI

投稿: TOSHI | 2008年3月29日 (土) 14時48分

ある方が「wikiの内容は古典論と量子論の折衷案のようだ」と表現したので、それを本気にして「古典電磁気学でカシミール効果が導出できる」とお考えの方がいらっしゃるようです。この問題は、零点エネルギーの定在波の無限大からの上澄みを計算する方法が重要なので、繰り込みにゼータ関数を使おうが、オイラー・マクローリンの公式を使おうが本質的な話ではないのですが、「ゼータ関数=整数論」、「自然は整数論とマッチすべき」とお考えのようで、この件に拘っておられるようですね。さて、現在の「超ひも理論」でもこの手の繰り込みを使っているので、本質的な繰り込みの回避は何かもう一つのレベルアップが必要かも知れませんね。

投稿: T_NAKA | 2008年3月29日 (土) 13時21分

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