電場の中の原子(シュタルク効果)
いろいろと邪魔が入ったり脱線したりして分子構造関係の記事
が中断して長い間隔が開きましたが再開しようと思います。
分子軌道(MO)の分類に原子軌道(AO)が必要なため,電場の中
の原子の構造から始めます。
一般に電場の中に物体を置けば,それを構成する正負の荷電粒子
が反対向きに引かれるために電気的分極が起こります。
そこで単独の原子を電場の中においてもそうした現象が見られ
ます。
まず,一様電場の下では中性原子の正負の電荷は同じで,それら
は互いに反対向きに同じ大きさの力を受けるので原子全体とし
ては動きませんが,分極は生じるはずです。
電場があまり大きくないとして摂動論によって分極の程度を
見積もってみます。一般には原子は多電子を有しますが,近似
的に水素様原子と仮定し1電子問題として扱うことにします。
一様電場をEとし,電子の電荷を-eとするとき,その位置エネ
ルギーはV(r)=eErとなります。
したがって,原子核と電子の2体問題を電子の1体問題にした
HamiltonianはH=H0+V,と書けます。
ただし,H0≡{-hc2/(2m)}∇2-Ze2/(4πε0r)は電場が無い
場合の非摂動Hamiltonianです。
ここにhc≡h/(2π)でhはPlanck定数です。
また,mは電子の換算質量です。
定常状態の波動関数をψ(r)とすれば,それに対するSchrödinger
の波動方程式はHψ=Eψ,
すなわち,
[{-hc2/(2m)}∇2-Ze2/(4πε0r)+eEr]ψ(r)
=Eψ(r)
です。
ここで,この水素様原子の量子数n,l,mを持つ電子の原子軌道
の波動関数をφnlm(r)とすると,水素様原子の量子力学から
H0φnlm=Enφnlm;En=-mZ2e4/{(4πε0)2(2hc2n2)}
が成立します。
ここで特にn=3,l=0 の3s状態の電子が分極して
n=3,l=1の3つの3p状態に分離する場合を考え
ます。
ここで, 計算上は非摂動の状態としてエネルギーが縮退した
3s状態と3p状態の4つしか存在しないと仮定してもかまい
ませんから,そう仮定します。
そして,φs≡φ300,φx≡φ31+,φy≡φ31-,φz≡φ311,とおけば
H0φj=E3φj(j=s,x,y,z)です。
エネルギーの縮退がある場合の摂動論を適用するために
ψ=csφs+cxφx+cyφy+czφzとおけば,
Hψ=(H0+V)ψ=
cs(H0+V)φs+cx(H0+V)φx+cy(H0+V)φy
+cz(H0+V)φz です。
よって,解くべき方程式は
E3(csφs+cxφx+cyφy+czφz)+V(csφs+cxφx
+cyφy+czφz)=Eψ となります。
この両辺に左からφi*(r)を掛けて積分して,内積
<φj|H0+V|ψ>=∫φj*(r)(H0+V(r))ψ(r)dr
を取ると,4つの未知係数{cj}に対する4つの連立1次方程式
E3ci+Σj<φi|V|φj>cj=Eci が得られます。
ここでV(r)=eErにおける電場Eの向きをz軸に取れば,
V(r)=e|E|zです。
波動関数の対称性,つまり被積分関数φi*(r)zφj(r)の
x,y,の関数としての奇関数性から,i=s,j=zで
φi(r)=φs(r),φj(r)=φz(r)のケース,および,
この逆のケースi=z,j=sを除けば
<φi|V|φj>=e|E|∫φi*(r)zφj(r)dr
は全てゼロです。
そこで唯一のゼロでない成分を
zsp≡<φs|z|φz>=<φz|z|φs>とすれば,
連立1次方程式は2つだけ,
(E-E3)cs+e|E|zspcz=0 ,
e|E|zspcs+(E-E3)cz=0 になります。
これが,自明でない解を持つのは、t(cs,cz)の係数行列の行列式
がゼロになることが必要十分であり,この永年方程式を解くと,
エネルギー固有値として,
E=E±=E3±e|E|zsp が得られます。
そして,エネルギーがこの値を取るときには,
E3cx=E±cx,E3cy=E±cyでE±≠E3ですから
cx=cy=0 です。
そこで固有値E=E±に属する固有状態の波動関数は
ψ±≡(1/2)1/2(φs±φz) と書けます。
このように電場によってエネルギー準位が受ける変化
=今の水素様原子のn=3の場合ならエネルギー縮退に
伴なうスペクトルの変化をシュタルク効果(Stark effect)
といいます。
上述のように水素様原子の特別な場合には1次のStark効果
が存在しますが,それ以外の多電子の原子では,電場による
摂動の効果Vは全電子の平均としては原子内電子全体に
ついての和の形でV=eE(Σjrj)となり,
球対称,つまり座標rの偶関数になると考えられるので
1次Stark効果は存在せず,2次以上の摂動の効果しか
存在しなくなります。
そして,水素様原子について前述のzsp=<φs|z|φz>の平方
zsp2を(xsp2+ysp2+zsp2)/3=|rsp|2/3で置き換えるのが
妥当と思われます。
時間によらない定常摂動論は,波動関数ψとエネルギーE
を微小摂動Vの次数に比例する項に展開して,
ψ≡φn+Δφ+Δ2φ+Δ3φ+..,
E≡En+ΔE+Δ2E+Δ3E+..としたとすると,
方程式Hψ=(H0+V)ψ=Eψは,
(H0+V)(φn+Δφ+Δ2φ+Δ3φ+..)
=(En+ΔE+Δ2E+Δ3E+..)(φn+Δφ+Δ2φ+Δ3φ+..)
となること,
これからVの同じ次数の微小項に関して恒等式
H0Δφ+Vφn=EnΔφ+ΔEφn,
H0Δ2φ+VΔφ=EnΔ2φ+ΔEΔφ+Δ2Eφn,..etc.
が成立するという推論に基づいています。
1次の等式H0Δφ+Vφn=EnΔφ+ΔEφnにおいては,
Δφ=Σiaiφiと展開して左からφi*を掛けて内積を取ると
縮退していようがいまいが状態が全ての波動関数が直交規格化
されているなら,
(En-Ei)ai=<φi|V|φn>-ΔE<φi|φn>
です。
そして,縮退してないとき,つまりEi=Enなるiがnだけ
しかないときには,ΔE=<φn|V|φn>,
ai=<φi|V|φn>/(En-Ei) (i≠n)となります。
anについては任意ですが,Vの最低次で規格化条件
<ψ|ψ>=1が成立することを要求すればこれも
決まります。
一方,縮退していてEi=Enなるiがn1,n2,..,nNのN個
あれば1次の等式H0Δφ+Vφn=EnΔφ+ΔEφnに戻って
実は摂動効果のために 0 次の波動関数φn自身が
φn=Σjcjφnj に変わると考える必要があります。
1次の波動関数をΔφ=Σiaiφiと展開して左から
φni*を掛けて内積を取ると,N個の等式
Σjcj<φni|V|φnj>-ΔEcj=0
が得られます。
これを未知係数{cj}に対する連立1次方程式として自明で
ない解を持つ条件から永年方程式を作れば,これはΔEを
未知数とするN次代数方程式になります。
もしもこれがN個の異なる実数根を持つなら,この摂動で縮退
は完全に解けることになります。
これは丁度, 上で水素様原子のエネルギー縮退した3s,3p
が1次Stark効果で解ける様子を論じた内容の論拠になって
います。
しかし,多電子系のStark効果では,既に述べたように全電子
の平均としての摂動の対称性のせいで,全ての<φni|V|φnj>
がゼロなので1次の摂動近似の解は自明な解のみであること
になり,系の電子エネルギーへの1次のStark効果による寄与
はありません。
そこで,次にVの2次の摂動に対する等式
H0Δ2φ+VΔφ=EnΔ2φ+ΔEΔφ+Δ2Eφn
を考えます。
やはり,Δφ=Σiaiφiとし,2次の波動関数も
Δ2φ=Σibiφiと展開できるとします。
これらを等式の両辺に代入した後に,左からφi*を掛けて
内積を取ると
Eibi+Σjaj<φi|V|φj>=Enbi+ΔEai+Δ2E<φi|φn>
が得られます。
上式において,もしi=nなら,
Σjaj<φn|V|φj>=ΔEan+Δ2E となります。
これに先に求めた
ΔE=<φn|V|φn>,aj=<φj|V|φn>/(En-Ej) (j≠n)
を代入すると,
Δ2E=Σj≠n{<φn|V|φj><φj|V|φn>/(En-Ej)}
となります。
一方,i≠nなら,同じく
ΔE=<φn|V|φn>,aj=<φj|V|φn>/(En-Ej) (j≠n)
を代入して,
(Ei-En)bi+[an<φi|V|φn>
+Σj≠n{<φi|V|φj><φj|V|φn>/(En-Ej)}
=<φn|V|φn><φi|V|φn>/(En-Ei)
が得られます。
これを解けば
bi=an<φi|V|φn>/(En-Ei)
+Σj≠n[<φi|V|φj><φj|V|φn>/{(En-Ei)(En-Ej)}]
-<φn|V|φn><φi|V|φn>/(En-Ei)2
となります。
そして,bnは決まらず任意です。
非摂動時に縮退がある場合には,
H0Δ2φ+VΔφ=EnΔ2φ+ΔEΔφ+Δ2Eφnにおいて,
0 次近似の波動関数φn自身が摂動効果でφn=Σjcjφnj
に変わりますが,やはりΔφ=Σiaiφi,Δ2φ=Σibiφi
と展開できるとして,左からφni*を掛けて内積を取ると
Σjaj<φni|V|φj>=ΔEani+Δ2Eci(i=1,2,..,N)
が得られます。
ここで,エネルギー準位Enを取るN個の状態:
φnj(j=n1,n2,..,nN)について1次の摂動で全く縮退が
解けず,ΔE=<φnj|V|φnj>=0 ,anj=0 ,
つまり<φnj|V|φn>=0(j=n1,n2,..,nN)を満たし
自明な解しか無いとします。
特にci=1,cj=0(j≠i)として得られる式
Δ2E=Σjaj<φni|V|φj>に,aj=<φj|V|φn>/(En-Ej)
(j≠n1,n2,..,nN)を代入すれば,
Δ2E=Σj≠n1,n2,..,nN {<φni|V|φj><φj|V|φn>/(En-Ej)}
を得ます。
縮退,非縮退のいずれにしても多電子原子の2次のStark効果
ではV=eE(Σjrj)で平均すると,
<V>=eErsp ただし,rsp≡<Σjrj> です。
そこで,先に平均としてzsp2が (xsp2+ysp2+zsp2)/3=|rsp|2/3
とみなせるとした論拠により,
<φni|V|φj><φj|V|φn>=(e2|E|2/3)|rspjn|2
と書けばΔ2E=-(e2|E|2/3)Σj≠n{|rspjn|2/(Ej-En)}
となります。
ここで対象としているエネルギー準位がEnの状態がn=0
の基底状態の場合にはEj>EnよりΔ2E<0 です。
E=En+ΔE+Δ2EであってΔE=0 ですから,
E<Enとなります。
したがって,この場合Stark効果によってエネルギーは必ず
減少します。
ところで,現象論としては,電場Eによって原子が分極する
場合に原子全体として誘起される電気双極子ベクトルをD
とすれば,分極率αなる比例係数を用いてD=αEと書け
ます。
そして電場の存在による系のエネルギー変化をやはりΔ2E
と書けばΔ2E=-∫0EDdE=-α|E|2/2 となります。
これを上に摂動論で求めた
Δ2E=-(e2|E|2/3)Σj≠n{|rspjn|2/(Ej-En)}に等置すれば
分極率の表現としてα=(2e2/3)Σj≠n{|rspjn|2/(Ej-En)}
なる式が得られます。
さらに,具体的な計算を進めるには上式の右辺の無限個の項の和
を求める必要があります。
右辺の和はエネルギー準位が連続固有値である領域にも及ぶ
ので,実は積分も含んでいて正攻法で見積もるのはかなりむず
かしい問題です。
そこで,再び2次の等式
Σjaj<φn|V|φj>=ΔEan+Δ2Eまで戻ると,
1次の摂動ΔEがゼロの場合には,Δ2E=<φn|V|Δφ>
を得ますから,もしもΔφ=Σiaiφiを直接求めることが
できればΔ2Eを導出できると思われます。
そしてこれからΔ2Eが得られたなら,それを用いて
α=-2Δ2E/|E|2によって分極率αを求めることが
できますから,Δφを解くことを考えます。
さて,摂動の1次の式はH0Δφ+Vφn=EnΔφ+ΔEφn
でしたからV=e|E|zと置いて,さらに対象となる非摂動
の状態はn=0 の水素の基底状態で波動関数は
φn(r)=(πa03)-1/2exp(-r/a0)で与えられる場合
であるとすると,
このときは確かにΔE=<φn|V|φn>=0
が満たされています。
a0はBohr半径でa0≡ε0h2/(πme2)=4πε0hc2/(me2)
です。
ただし,ここでのmは電子の換算質量ですから,原子核が
水素原子のそれでないなら素朴なBohr半径とは微妙に異なる
とは思います。
そこでΔφ(r)≡Σlmflm(r)Yim(θ,φ)と置いて,
これをH0≡{-hc2/(2m)}∇2-e2/(4πε0r),V=e|E|z,
およびφn(r)=(πa03)-1/2exp(-r/a0)と共に,全て
H0Δφ+Vφn=EnΔφ+ΔEφnに代入した後に,
動径波動関数f(r)=flm(r)を分離すると,
(d2f/dr2)+(2/r)(df/dr)-(2f/r2)+{2f/(a0r)}
-(f/a02)=8πε0|E|rexp(-r/a0)/{ea0(πa03)1/2}
が得られます。
この2階常微分方程式に
f(r)=fim(r)=(Ar+Br2)exp(-r/a0)なる解の形
を仮定して代入し係数A,Bが満たす式を求めるという方法
を実施することから,このA,Bを適当な定数に取ったときに
これが確かに方程式の解となることがわかります。
そして,この解によって得られる
Δφ(r)≡Σlmflm(r)Yim(θ,φ)を
φn(r)=(πa03)-1/2exp(-r/a0)と共に
Δ2E=<φn|V|Δφ>=e|E|∫φn(r)zΔφ(r)dr
に代入して,右辺の積分を実行し,
結局,分極率の陽な値として
α=-2Δ2E/|E|2=(9/2)(4πε0)a03
が得られます。
弱い電場ならば摂動は2次までで十分ですが,より強い電場
ならさら高次の摂動を取る必要性も生じるようです。
ただ,一様電場中の水素様原子の場合にはSchroedinger
の波動方程式は変数分離できて,正確に解けます。
[{-hc2/(2m)}∇2-Ze2/(4πε0r)+e|E|z]ψ(r)
=Eψ(r)において,放物線座標ξ≡r+z,η≡r-z,
φ≡arctan(y/x) ⇔ x≡(ξη)1/2cosφ,y≡(ξη)1/2sinφ
z≡(ξ-η)/2,r≡(ξ+η)/2を用いると,
Laplacianは,
∇2={4/(ξ+η)}(∂/∂ξ){ξ(∂/∂ξ)}
+{4/(ξ+η)}(∂/∂η){η(∂/∂η)}+{1/(ξη)}(∂2/∂φ2)
となり,
摂動項は,V=e|E|z=e|E|(ξ-η)/2 となります。
ここで,e/(4πε0)1/2とhc2/mを1とする単位を取り,
さらにF≡(4πε0)1/2|E|とおくと,波動方程式は
{-(1/2)∇2-Z/r+Fz}ψ(r)=Eψ(r)となり,
変数変換すると,
(∂/∂ξ){ξ(∂ψ/∂ξ)}+(∂/∂η){η(∂ψ/∂η)}
+{1/(4ξ)+1/(4η)}(∂2ψ/∂φ2)+{(E/2)(ξ+η)
+Z-(F/4)(ξ2-η2)}ψ=0 となります。
ψ(r)≡u1(ξ)u2(η)exp(imφ),かつZ=Z1+Z2とおくと
変数分離されて
(d/dξ){ξ(du1/dξ)}+{Eξ/2+Z1-m2/(4ξ)
-Fξ2/4}u1=0 ,
(d/dη){η(du2/dη)}+{Eη/2+Z2-m2/(4η)
+Fη2/4}u2=0 ,
さらにu1(ξ)≡U1(ξ)ξ-1/2,u2(η)≡U2(ξ)η-1/2と
おけば,
ξ(du1/dξ)=(dU1/dξ)ξ1/2-U1(ξ)ξ-1/2/2,
(d/dξ){ξ(du1/dξ)}=(d2U1/dξ2)ξ1/2+U1(ξ)ξ-3/2/4
etc.より,
d2U1/dξ2+{E/2+Z1/ξ+(1-m2)/(4ξ2)
-Fξ/4}U1=0 ,
d2U2/dη2+{E/2+Z1 /η+(1-m2)/(4η2)
+Fη/4}U2=0
となります。
以下,計算を省略して結果だけ書けばF=0 の電場の無い
非摂動系ではZ1={n1+(|m|+1)}(-2E)1/2,
u1(ξ)=(-2E)(|m|+1)/4{(n1!)1/2/(n1+|m|)3/2}
exp{-(-E/2)1/2ξ}ξ|m|/2Ln1+|m||m|((-2E)1/2ξ)
となります。
ここでn1=0,1,2,..は量子数で,Llm(x)はLaguere陪多項式です。
この場合,Z2の方はZ2=Z-Z1から自動的に決まります。
これからFがゼロでないときのZ1 の補正をFの1次まで求める
と,Z1={n1+(|m|+1)}(-2E)1/2+∫0∞dξ(Fξ2/4)u1(ξ)2
={n1+(|m|+1)}(-2E)1/2+{F/(-8E)}(6n12+6n1|m|+m2
+6n1+3|m|+2) です。
同様にZ2の量子数n2=0,1,2,..による表現を求めて,
Z=Z1+Z2をFの1次までの近似で表わせば,
Z=n(-2E)1/2+{3F/(-8E)}n(n1-n2) となります。
ここに,n≡n1+n2+|m|+1 です。
これを逆に解いて,エネルギーEを求めると,Fの1次まで
でE=-Z2/n2+3Fn(n1-n2)/Z が得られます。
ここまでは,Eは量子数n,n1,n2が同じならmには依らない
表現になっています。
そしてn≡n1+n2+|m|+1で,F=0 のとき
Z=n(-2E)1/2>0 ,Z1={n1+(|m|+1)}(-2E)1/2>0
なので,mは|m|=0,1,2,..,n-1の範囲にあり,
E=-Z2/n2+3Fn(n1-n2)/ZのFの項が最大になるのは
n1=n-1,n2=0のときで,最小になるのはn1=0 ,n2=n-1
のときです。
これらの差は3Fn(n-1)/Zなのでnが大きいと,ほぼn2に
比例して1次Stark効果による分極が大きくなって電子波動関数
の広がりは大きくなると思われます。
一方,2次のStark効果も2次の摂動論から求めてこれの
計算結果を付け加えると,
E=-Z2/n2+3Fn(n1-n2)/Z-(1/16)F2(n/Z)4{17n2
-3(n1-n2)2-9m2+19}
となります。
この式で基底状態n=1,n1=n2=m=0 を取れば,1次
のStark効果はゼロであって,E=-Z2-(9/4)F2/Z4
となります。
これから-(9/4)F2/Z4=Δ2E=-αF2/2と等置すれ
ば,α=9/(2Z4) が得られます。
ここではe/(4πε0)1/2とhc2/mを1とする単位を取っており,
かつ,F≡(4πε0)1/2|E|としていますからBohr半径は
a0=ε0h2/(πme2)=4πε0hc2/(me2)=1
になっています。
それ故,先に水素原子Z=1について摂動論から求めた値
α=-2Δ2E/|E|2=(9/2)(4πε0)a03と完全に一致し
ています。
ところで,他の多電子原子と異なり,水素様原子で1次の
Stark効果が現われる原因は,先に考察した3sと3pの例の
ように,エネルギー準位が方位量子数lによらず縮退して
いることであると考えられます。
今日はこのへんで終わりにします。
参考文献:高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店),猪木慶冶,川合 光 著「量子力学Ⅱ」(講談社)
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コメント
ありがとうございます。よくわかりました。gradをとって力がF=-eEと表せるからですね。
投稿: チンパンジー | 2009年9月 8日 (火) 15時07分
はじめましてチンパンジーさんTOSHIです。質問大歓迎です。
>その摂動がどうして、V(r)=eErというふうになるのかが、わからないんです。
具体的に電場Eがあるとき電荷-eにかかる力FはF=-eEです。
VというのはF=-∇V=-(∂V/∂x,∂V/∂y,∂V/∂z)となるようなものです。
簡単のため電場の向きにx軸を取ればF=(-eE,0,0)なのでV=eEx+定数(xを含まない,yzは含んでもよい)となります。
一般にはV=e(E1x+E2y+E3z)=eErcosθであればいつでもF=-eEになります。
V(r)=eEr+定数でいいのですが定数は無関係でE=0からの摂動ならV(r)=eErです。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2009年9月 8日 (火) 07時15分
はじめまして。いつも楽しく読んでます。
調べごとをしていたら、この記事にたどり着きました。質問したくなっちゃったので質問してもいいですか?
あのう、荷電粒子に電場をかけるとハミルトニアンに摂動項がつきます。その摂動がどうして、V(r)=eErというふうになるのかが、わからないんです。
初対面なのに質問しちゃってごめんなさい。すみません、めんどくさいですよね。ただ、ぼーっと考えていて浮かんだおならみたいな疑問なので、いつでもいいです。
投稿: チンパンジー | 2009年9月 7日 (月) 23時32分
さっそくのお返事ありがとうございます。
ますますのご健勝を祈ります。
また‥
投稿: マンボウ | 2008年3月 7日 (金) 09時46分
ども,マンボウさん。コメントありがとうございます。TOSHIです。
>広島の郡部です。60です。暇です。
私も東京在住ですが中国は岡山県の出身です。今の名称新倉敷ですね。かつて福山英数学館という福山にある予備校に1年通いました。この2月で58になりましたが,ほぼ同年代ですね。
>「人気ブログランキング」で私のすぐそばに居るではありませんか。ここ数日ず~~とです。TOSHIさん昨日は90番でした。私89番。今日、私81番。ホッ。したらTOSHIさんも83番になっていました。
そうですね。半年前は50番以内でしたね。マメにほぼ毎日記事を書けばいいのですが,まあ、最近はマイペースなので順番はゲンキンなもので1ヶ月入院したときはランキングから消えてました。せっせと新しい記事を書けよ!ってことらしいけど,こちらは過去記事でも読めよ!って感じですね。
90番前後というのは,その日に自分が投票したか忘れたかで10番くらい違うようです。今はランキングにはほぼ無関心になり,それより平均アクセス数やリピート率をチェックしてます。こちらは着実に増えてますね。。。
>私のブログはたわごとですが、暇つぶしに‥‥
先ほど伺いました。銀河の腕の話ですね。面白い話題です。ひょっとしたら,理由などしらべてみるかもしれません。。私のブログは題材をいろいろなところで探して自分なりの考察と色付けをするというのが結構あります。
自然科学以外の記事も書いてますが大したことはないです。以後よろしくね。。。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2008年3月 6日 (木) 19時12分
どもマンボウです。
広島の郡部です。60です。暇です。
宇宙のこと好きで、"カラオケ狂い"さんのブログ見ていたら、TOSHIさんのことが載っていました。
そのときは、気にはしなかったのですが、「人気ブログランキング」で私のすぐそばに居るではありませんか。
ここ数日ず~~とです。
TOSHIさん昨日は90番でした。私89番。
今日、私81番。ホッ。 したらTOSHIさんも83番になっていました。
TOSHIさんのブログ拝見しましたが、????????? もひとつおまけに???????
円周率3.14が3.05より大きいことの証明が????????
私のブログはたわごとですが、暇つぶしに‥‥
また‥‥。
投稿: mannbou03 | 2008年3月 6日 (木) 18時22分