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2008年4月

2008年4月30日 (水)

電場と電束密度,磁場と磁束密度(3)

記事の続きです。前回は中途半端なところで終わりました。そこでさらに続きを書きます。

電場がなくて,磁束密度がの磁場のみがある場合,その中では速度で運動する電荷qの帯電体にはローレンツの力と呼ばれる磁力:=q(×)が働きます。

 

一般に電流Iがある場合,これを与えるキャリアが電荷-e(e>0)の電子Ne個であれば,電流ベクトルは=-Nee<>と表現されます。<>は電子の平均速度です。

あるいは,電子群を連続体近似し,それによる電荷密度をρとすれば,電子による"電流密度ベクトル=単位時間に単位面積を通過する電荷量"は=ρで与えられます。

 

そこで,それの媒体である導線の断面積σを通過する全電流は=∫σdσとなります。

それ故,長さがΔsで体積がΔV=σΔsの導線の微小素片に働く磁気力はd=∫ΔV(×)dV=Δs×と表わせます。

  

この力はアンペール(Ampere')の力と呼ばれています。

 

これはローレンツの力の表式:=q(×)でをd,qΔs=∫ΔVdVに置き換えたものに相当します。

前の記事では,磁荷の対という描像で磁気双極子モーメントを定義してこれに働く磁気力と,運動する電荷に働くローレンツの力を等値することから運動電荷に由来する磁気モーメントの表現を得ました。

 

すなわち,=q(×)=(∇)H=(μ∇)とおくことにより,磁気モーメントμの電荷による表現として,μ=(qv/2)[∫C('×d')]=IΔS,=μ0μを得ました。

 

そして,この式は,μ=IΔS=(I/2)[∫C('×d')]=(1/2)∫Cσidσ ('×d')=(1/2)∫Cσ{(')}d3r'とも変形できることがわかります。

 

ただし,ΔSは導線の断面積ではなく,環状電流の描く閉曲線Cで囲まれた領域の面積です。

そして,位置0に磁気双極子μ,あるいは=μ0μのみがある場合に生じる磁場()の磁位(磁気ポテンシャル)φm()による表現は()=-gradφm()=-∇φm(),φm()=grad0{μ/(4πR)}=∇0{μ/(4πR)}={1/(4π)}{(μR)/R3},r-r0です。

 

すなわち,()={-1/(4π)}[μ/R3-3(μR)/R5]です。

 

れの右辺のμに電流による磁気モーメントの表現:μ=(1/2)∫Cσ{(')}d3r'を代入することによって,これとは関係なく電流と磁場の関係式として発見されたアンペールの法則:∫C ()ds=S i,または微分形の法則:rot()=∇×()=iを演繹的に導くことができたらいいな,と思いました。

 

しかし,そもそも一価連続な位置のスカラー関数である磁位φm()が存在して,()=-gradφm()=-∇φm()と書けるための必要十分条件はrot()=∇×()=0 となることです。

 

そこで,この表式では閉曲線Cで囲まれた面Sを貫く電流がゼロでない限り,磁位そのものが定義できないのでアンペールの法則と両立するはずはないと思われます。

 

では,そうした発想自体が本当に無理なのでしょうか。

もしも,アンペールの法則∫C ()ds=Siにおいて,"右辺=Cで囲まれた面Sを通過する総電流"が,Sの中心r=r0にのみに集中して他はゼロの電流密度Iδ2(r-r0)で与えられるなら等方性から,2πRH()=I,(r-r0)が成立します。

 

これから,磁場はH()=I/(2πR),または()={I/(2πR2)}で与えられるはずです。

そして,この場合でも,敢えて磁位φm()の存在を仮定して無理に()=-gradφm()=-∇φm()と書いてみます。

 

AB()dはA→Bの経路に依存する積分で,それ故,どこかに基準点Oを取ってAの磁位をφm(A)=OA()dと定義しても,これは点Aだけでは決まらない多価関数です。

 

しかし,一応形式的には∫AB()d=φm(A)-φm(B)と書くことができます。

 

そして,特に経路がA=Bを満たす閉路Cの場合なら∫C ()ds=-m]C となります。

 

したがって,アンペールの法則:∫C ()ds=SiS=Iが成立することを認めるなら,この等式は左辺の()の線積分が経路Cを1回転するごとに,この磁場に対するC上の各点の磁位が周期的に[φm]C=-Iだけ増加することを意味します。

 

この場合には,磁位φm()は確かに一価関数ではなく多価関数です。あるいはCを定義したSを含む面領域は多重連結です。

 実は上のような発想からアンペールの法則は既に述べた電場の法則,およびローレンツの力などと独立な法則(公理)ではなく,これらから何らかの方法で演繹的に導けるのではないかという希望的な固定観念にとらわれて,ここ数日間悩んでいたのでした。

 

 もっとも,"磁場は静止系の電場を運動系から見た相対論的効果である"などという知見を考慮すれば,別の観点からの演繹方法もあるとは思いますが,私は最初に思いついた発想の方に固執しました。

 昔からあることに取り組んでいて途中で脱線したときでも,そこで何らかのテーマが気になって,それに嵌ってしまうと,とことんのめりこんで地獄の底まで行ってしまう,というのが私の悪い癖なのですが。。

 

 こうした場合,大学やその種の研究機関などに属していれば,大抵は附属の図書館などもあり,相談相手にも事欠かないはずなのですが,如何せん,単なる趣味の独学ですし,近くに理系のこのレベルの質問や相談ができる相手が全くいないのは困ったものです。

 そもそも,現在日常的に付き合っている友人たちは,私に物理学や数学の専門的素養があるとか,そういう趣味があることを知っている人はいなくて,むしろ,そうしたことがバレたら敬遠されて友人関係もこわれる危険性もあるような人ばかりです。

そうしたことが質問,相談できる友人といえば,かつて同じ予備校の講師として知り合って友人だった5,6歳年下のS田先生くらいです。

 

私は偶には彼に会いたいと思っているのですが,何故かここ数年来全くの音信不通です。

 

彼は家庭を持っていて,独身の私の方からの電話連絡は迷惑らしく,昔は原則的に連絡は一方通行でしたから,今も私からは連絡しません。

 

私は常識的な感覚がなくて,他人から"天然"などと呼ばれているらしく,昔普通のサラリーマンだった頃に,直属の上司が怒っていることにも気づかないことが多かったくらい変な奴であったらしいです。

 

また,私には何の悪気もなくて,私の価値観では何でもないことを述べているのに,何故か相手が怒ったのに気づいてビックリしたこともしばしばですから,私の知らぬ間に無意識に"彼=S田先生"を傷つけたり,彼が怒ったり不快に思うことをしたりしたことがあってそれが理由で嫌われてしまったのかもしれません。

 余談はさておき,どこかにアンペールの法則に対する私の上述の発想に似たようなことを書いたものがあればいいなと思って,まず私の20冊前後ある電磁気学関連の蔵書から調べてみました。

  

 またまた余談ですが,去年生活のために400冊程度の理科系の書物を処分したので蔵書はかなり減りました。

 

 元々少々経済的に余裕がなくても,飲食するものと書籍だけはできるだけ削らないようにしよう,という主義で,昔からすぐに読むわけではなくても,将来に必要になることを見越し,金があるときにコツコツと書籍を買いおきする習慣がありました。

 

 というわけで,かなり処分したにも関わらず,図書館でもないのに電磁気学ばかり20冊所持している,とかいう変なことになるのですね。

 

 そういえば,レコードやCDでも,同じクラシックの演奏曲で指揮者や演奏者が違うものが何枚もあるという贅沢もありますね。

 しかし,ジャクソンの大著やバークレーコースの本などは歴史とか導入方法にこだわらず,マクスウェル方程式を法則,公理として,それから演繹的に理論展開を行なう正統的な方法の本であるようだし,培風館シリーズの平川浩正などは,少しは参考になりましたが,むしろ工学系の本を参照すべきではなかろうか?などと思い煩いました。
 
 トンデモ的色彩も感じますが,関連した参考文献が多くて私の今のテーマには有用と思われた細野敏夫著の「メタ電磁気学」も手元にあったので参考にしてみましたが,ビンゴとはいきませんでした。

 まあ,悩んだときは書店めぐりをして何冊も立ち読みしながら,ひたすら同じ問題を考えていると,そのときには参考になる本,ましてやビンゴの本に当たることはまずないのですが,経験上,立ち読みしながら夢想しているだけで集中力が高まって,ながめている本とは無関係に何かがヒラめいて当面の疑問が解決することがよくあります。

 

 そこで,今回もそうした期待から池袋のジュンク堂書店で数時間立ち読みしていたら,何と工学棚ではなく理学棚でビンゴでした。

 

 理系の専門書としては1700円とえらく安い掘出し物です。

 

 阿部龍蔵著「電磁気学入門」(サイエンス社)です。

 

 阿部龍蔵氏の本なら,かつて難解な本ですが「統計力学(第2板)」(東京大学出版会)にも,お世話になっています。

 

 (この本「電磁気学入門」が専門書にしてはことの他安かったこともあり,現状ではあまり関係ない身分とはいえ,折角のゴールデンウィークなのに物理の本ばかりでもあるまい。と思って,読んだことのない作家だけど最近よく噂を聞く東野圭吾の小説「流星の絆」も合わせて衝動買いしてしまいました。)

 この程度の取るに足りないことでも,ウソでもいいから自分でヒネリ出したと言った方がカッコいいでしょうし,私も人間である以上自分独自の発見などを名誉と思う上昇志向性が皆無ではありません。

 

 ただ,私は純粋に結果が知りたいだけだし,単にわからないことが解決できればそれだけで嬉しいという性格なので,人まね,パクリだろうと理解の過程にはこだわりません。

 

 もっとも,自力で解決できるに越したことはありませんが。。

 

 そもそも学問とは"学ぶ=まねぶ",つまりパクリの連続でスポーツの新記録ではありませんが,それだからこそ前の時代よりも今の時代の方が発展してきたのだろうと思っています。

 

 中世暗黒時代から,ルネサンスが起きた理由の一つに懐疑論がはやったこともあったらしいし,懐疑することももちろん必要だと思いますが,これまでの歴史的発展を理解して体得するだけでは飽き足らず,歴史に頼らずに全てのことを初めから自力で導くのでなければ気が済まない,とかの性格でそれを実行に移すのであれば寿命がいくらあっても足りませんからね。

 えらく脱線してしまいましたが,本題に戻ります。

磁気モーメントμがあるときの磁位は,φm()=μgrad0{1/(4πR)}=μ0{1/(4πR)}={1/(4π)}{(μR)/R3}=IΔScosθ/(4πR2)であることは既に述べました。

 

ここで,θはμのなす角ですが,ΔScosθ/R2は位置の点PがΔSを見込む立体角ΔΩに等しいですから,φm()=IΔΩ/(4π)とも書けます。

 

そして,こうした多数の環状電流が互いに接触して並んで集まり,全体のS=ΣΔSを構成するときには,接触部分の逆向きの電流同士は相殺されて,S全体をまわる電流のみが残ります。

 

一方立体角も総和されて,ΩP=ΣΔΩとなり,これに対応する磁位Σφm()を改めて,φm()と定義し直せば,φm()=IΩP/(4π)となります。

 

ΩPはPから磁場の源を見込む角です。

 

ただし立体角にも符号があって,同じ面領域Sを反対側から見込む立体角にはマイナス符号が付くとしています。

したがって,∫AB()d=φm(A)-φm(B)={I/(4π)}(ΩA-ΩB)であり,A=Bの閉曲線Cなら∫C()d={I/(4π)}[Ω]C={I/(4π)}(ΩA-ΩB)(A=B)ですから,何のことはない右辺はゼロであって単に立体角で書き直したに過ぎないだけで,アンペールの法則∫C()d=Iなんか出てこないじゃないか,と思えます。

しかし,ここで早合点せずに,少し発想を変えて,Cは単なる空間に仮想した1つの閉曲線であって,それを回るループ電流などはなく,()もCを回る電流によって生じた磁場ではなく,この()の源となる大きさがIのループ電流は別に存在するとして,この電流のループ経路をC'としそれが囲む平面領域をS'とします。

そして,このとき仮想閉曲線C上の1点Aから一周してB=Aに戻るという経路Cに対する積分式∫C()d={I/(4π)}[Ω]Cを考えてみます。

 

このとき,もしもCがループ電流の閉じた経路C'と互いに素でCがC'で囲まれた面S'を貫通することがない場合には,点AがC上を動いて回るとき,AからS'を見込む立体角ΩAは常に連続的に変わるので1回転したときの変化[Ω]Cはゼロになります。

一方,CとC'が交叉してCがS'を裏から表へと貫通する場合には,出発点AがS'の表の部分のごく近くにあって,そこからS'面を通過することなく1回転してB=A-ΔCまで到達するとして,面S'の層を貫通する微小部分を無視すれば,表のAから接着しているS'を見下ろして見込む半平面の立体角はΩA=2πです。

 

他方,裏のB=A-ΔCから接着しているS'を見上げて見込む立体角はΩB=-2πです。

そこで,S'の中を貫通する微小部分を無視する限り,CがS'を貫通する場合には∫C()d={I/(4π)}[Ω]C={I/(4π)}[ 2π-(-2π)]=Iが成立することになります。

 

CがS'を貫通するのは見方を変えればC'がSを貫通すること,つまりIがSを貫通するのと同じです。

 

そして,CのうちでS'の中を貫通する部分であるΔCはいくらでも小さくすることができるので,元々これの寄与は無視してもよいと思われますから,結局,こうした論法でアンペールの法則を演繹的に説明できたような気がします。

一応,所期の目的が達成されたので,今日も中途ですがここで打ち切ってこの論題はまだまだ続きます。

参考文献:阿部 龍蔵 著「電磁気学入門」(サイエンス社),砂川 重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),ファインマン(R.P.Feynman)(宮島龍興 訳)「ファインマン物理学Ⅲ(電磁気学)」(岩波書店)他

 

※追伸:この程度の話は,別に阿部さんの本ではなく,高橋秀俊さん他,磁位=磁気ポテンシャルを扱っている昔の著者の書いた本には大抵載っていることが後でわかりました。

 

昔学んだはずなのにその記憶がないのは,当時は恐らくちゃんと理解してなかったのでしょう。

 

オリジナルの発想ではないか?なんてトンデモない思い上がりで,赤っ恥ものですね。。。

 

既にわかっていたことを,数日間も悩むなんて愚の骨頂です。真面目に調べていたら王道があったのでした。。。

 

 

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2008年4月25日 (金)

最近の裁判(山口母子など)に思う。

 殺人被害者の身内の人物については本当に気の毒なことだとは思うが,被告は犯罪当時は未成年者でそれも殺したのは2人だけなので判例からすると無期相当だと私には思われるのに,マスコミに取り上げられたために当事者ではなくて対岸の火事にすぎない無関係の世論の後押しなどもあってまだ確審とは限らないが裁判で死刑にされるのはかわいそうだと思う。

 秋田の幼児殺害事件も本来はわれわれ都会に住む人間が知り得ない片田舎の三面記事的事件だと思われるのにマスコミに取り上げられたばかりに裁判で死刑が宣言されることを予想していたが,近年には珍しく死刑ではなかったのでホッとしたということもあります。

 当事者なら報復したいという気持ちはあるだろうが,そうではない人が国家権力を嵩に着てまるで全能の神のごとく人を審く,しかも人に死を宣告する,何と思い上がったことだろう。。

 国家権力の助けを借りることなく当事者が直接,冤罪では有り得ない犯人に報復するという行為なら,法律的には断罪されるけれど私は肯定的(むしろ大賛成)だが,司法が神のごとく制裁を加える思い上がりにはいずれバチが当たるだろう。

 戦時なども含めて殺人を犯す状況というのは,そもそも殺人者が平時の平静で正常な精神状態にあるとは思えないし,正常でないから責任能力がない=罪には問えないなどと言ったら,これはトートロジー(同義語反復:堂々巡り)だろうから,どこかで正常と異常の線引きをしなければならない。

 こんな線引きが人間に可能だろうか?

 また火事場で火の粉や有毒ガスがあって死ぬかもしれないような状況に置かれたら,たとえそれが自分のせいで起きたことであっても,どんな恥ずかしいこと,どんな汚いことをしても,卑怯だと言われても,とにかく自分の身を守ろう命乞いをしようとするのは人情として当然だろう。

 それが潔くない,などとか言えるのは自分が火の粉もかからず鉄砲の玉も飛んでこない安全なところに身を置いているからに他ならないと思う。

 ジタバタせずに死刑を甘んじて受けるなどという精神状態があるなら,それも正常な精神かどうか疑わしい。

(追記:"自己を弁護することを目的とした発言を繰り返した=死刑を免れようとする行為を繰り返したこと”が悪いとか,潔くないとかいうような判決理由や,

 弁護側は事件の客観的事実について係争するよりも,いわゆる日本的浪花節的なお情けにすがるべき=情状酌量に訴えるべき

 というような裁判という場にふさわしいとは思われない感情論の非論理的な意見が多いことに疑問を感じたことや。。。,

 そもそも無期か死刑か半々くらいの微妙な裁判だと思うのに,死刑を歓迎する風潮が一方的に強すぎるというようなファッシズム的な危険性を感じたというのもこの記事を書いた動機ですね。。。。)

 一応,勘違いされないために言っとくけど,俺の愛する身内に危害を加える奴は裁判なんてまだるっこしい手続きは抜きで,ぶっ殺したるで!! 

 まあ,その殺人の罪で俺が死刑になっても,それは構わん。。。

 また,これとは関係ない話だが,スポンサーには逆らえないのだろうが,いっぱいあるニュースの中から.ジャーナリストとしてのマスコミがどの話題を重要視して取り挙げるか?というのが世論の誘導に大きく影響するという自覚を持っているのかどうか,疑わしい。

 昔からあった視覚障がい者の偽装などの話題を,ことさら今取り上げる。。という姿勢にはとても疑問を感じる。

 全く逆行している。ニュースはごまんとあって,社会への影響を慮ると真実だからといってニュースバリューのために何を報道してもよい。というわけではないだろう。。

 (そもそも現代社会で全ての話題を取り上げて報道することなど不可能なのだから,当然報道する者の主観によるプライオリティに依存しているはず。。。)

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電場と電束密度,磁場と磁束密度(2)

 前記事の続きです。以下では,電場に双対な場である磁場について詳しく解説したいと思います。

 本題に入る前に,電磁気学を学ぶ際の背景事情を述べてみます。

大学の学部で言えば,どちらかと言えば基礎科学としての理論を中心に考える傾向があって,言い過ぎかもしれないが詩や小説を書く文学などと同じく,直接には世間的に何の役にも立たず単なる興味で物理学を学ぶだけの理学部の物理学科の履修科目としての電磁気学があります。

 

一方,臨床に関わる医師のように実際に直接的に世間の役に立つ,いわゆる実学としての技術を体得するのを主目的とし,そうした技術を裏付ける理論としての物理学を必須の教養科学として学ぶと想像される工学部の幾つかの学科の履修科目にも電磁気学があります。

 

そうして,同じ物理学の一分野である古典電磁気学を学ぶのに際し,一般には,使うテキストさえ異なるという背景があります。

もっとも理学部の物理学科でも,大きく分けて実験物理と理論物理があって,かなり学問的性格は異なります。

 

まあ,実学だと言われている医学部を卒業して医学博士などを取っていても臨床のための医師免許も持ってなくて,野口英世などに代表されるように基礎医学にたずさわっていて,理学部の生物学科や農学部に近い分野の人もいます。

 

(実は,私の,ある病気の30年にわたる主治医も医学部のない大学で理学部の生物学の教授をしていて,確か今年定年退官を迎える予定です。)

別に区別する必要はないと思われるのに専門書を置いている比較的規模の大きい書店でも,理学系統の書籍と工学系統の書籍は離れた違う書棚にあって古典電磁気学であれば,多くの専門書については「電磁気学」とか「電磁気学入門」という両者の書棚で共通した名称になっていますが,工学棚にある書籍には理学棚にはない「電気磁気学」という少し古めの呼称の書籍などもあります。

まあ,通常は教授,助教授,講師,助手など大学の教師は理学部の先生は理学部出身で工学部の先生は工学部出身ですが,どちらか一方の学部しかない大学もあるし偶にこれと逆の場合もあります。

 

そして,大方の電磁気学のテキストで言えば,理学部で使っているテキストは理学部の先生が書いたもので,工学部で使っているテキストは工学部の先生が書いたものですね。

電磁気学だけではなく熱物理学や流体力学なども理学,工学両方ありますが,例えば工学部の書棚には内容は流体力学とほぼ同じでも「水力学」とか,少し技術的部分が入っている「水理学」とか,応用的色彩の濃い名称のものもあります。

まあ,別にいがみ合う必要はないと思われるのに,学問分野でも文科系と理科系という区別でのレッテル貼りと同じく,さらに狭い理科系の中でも世間で言う縄張り争いのようなもの,あるいはお互いのプライドとコンプレックスの入り混じった諍いのようなものがあるようです。

私自身は理学部出身ですが最初に就いていた仕事は工学畠ですし,これまで必要に迫られて理学,工学両系統の書籍をいろいろと買い集めて読んできていますが,これらは題名がほとんど同じの同じ分野のそれなら,専門用語の使い方など少しの違いを除けば同じだと感じています。

 

今の本には,昔日本語で書かれた書籍が不足していて共通の洋書で学んでいたような世代の人が書いた著書が多いですから,これも当然でしょう。

私の持っている洋書の中でも流体力学関係ではLamb(ラム)著の「Hydrodynamics」や,Chandrasekhar(チャンドラセカール)著の「Hydrodynamic and Hydromagnetic stability」などもありますが,このうち,ラムの本などは訳者が理学畠のせいか邦訳書では「流体力学」(今井功,橋本英則 訳)という名称で出版されてるようです。

 

しかし,これは単に直訳すると「水力学」ですし,別に"彼ら=原著者"を理学者だの工学者だのと区別する必要もないと思います。

物性科学の,"superconductorやsuperconductivity"などという専門用語は理学者なら「超伝導」,工学者なら「超電導」と訳して,こちらの方が正しいなどと主張し合っているらしいということも聞きますが,これなども変な話で結構むなしいものですね。

なぜ,こうした話をしたかというと,電磁気理論においてマクスウェル(Maxwell)とファラデー(Faraday)をめぐる相克があるとしたら,これもこうした流れと似ていて工学分野では磁場を磁界と呼ぶこととか,磁束密度(磁場)と磁場の強さ(磁界)のどちらを先に定義するか?などの水掛け論などの存在も不要なものです。

 

電場と磁場の2種類の量を定義して表現するのに,初めから,,,と4種類の場の概念を用いる必要があるという不条理さを感じるのも,実際には必要なことなのかもしれないけれど,ひょっとしたら,こうした諍いの帰結ではないかと思ったからです。

 しかし,余談はこのくらいにして,本題の磁場の話に入りましょう。理学部流?の入り方を採用することにして,まず,磁場を表現する量として磁束密度を導入することから始めます。

まず,磁束密度,電束密度と同じように"磁場があるところには目には見えないが"磁力線の束=磁束"が存在している。"という概念に基づくものです。

電束密度と同様,ある向きの単位面積をそれに垂直にB本の磁力線が貫いているなら,その点での磁束密度はBであるといい,その磁力線の向きを持つベクトルを磁束密度ベクトルと呼ぶわけです。

そして,真空中では磁力線は途切れることなく続いているが,もしも空間のある点にそれの湧き出しがあるなら,その点に"正の磁荷,あるいはN極がある"といい,吸い込みがあるなら"負の磁荷,あるいはS極がある"といいます。

 

それ故,磁力線の向きは正の磁荷から負の磁荷,あるいはN極からS極に向かうものと約束し,"湧き出しや吸い込みでの磁気量=磁荷"はそこで湧き出すか吸い込むかの磁力線の代数的本数である,と約束します。

 上のように定義すると,電束密度の場合と同じようにガウスの定理が成り立ちます。

 

 すなわち,"任意の閉曲面Sを通って出てゆく磁力線の総数はSの内部(Sで囲まれた体積=V)に含まれる磁気量に等しい。"という定理が得られます。

 

 つまり,磁荷密度ρmを単位体積当りの磁気量(磁荷)とすると,∫VρmdV=∫Sが成立します。ただし=(Bn)dSです。

そして,この定理は数学におけるガウスの法則,lim V→0[(∫S)/V]=divによって,div=ρmという微分型の形に表わすこともできます。

 

そして,に基づいて真空中での磁場の強さ(磁界)0で定義すると,div=ρm0とも書けます。

 

μ0は慣例によって真空の透磁率と呼ばれる定数です。

 

さらに,磁束密度も電場も重ね合わせの原理を満たす,つまり磁束密度1,2で表わされる2つの磁場があれば,c1,c2を任意の定数として≡c11+c22で表わされる磁場も存在し得るとします。

 

すなわち,磁場は線形性を持っているとします。

磁束,あるいは磁力線から得られるガウスの定理を満たす磁場は"湧き出し,あるいは吸い込み=点磁荷"に対して等方的であろう,という物理的直観から,磁荷qmの点磁荷か1つだけあって,あらゆる方向に合計qm本の磁力線が出ているとしたとき,湧き出しと吸い込み以外では磁力線が途切れることはないので,点磁荷を中心として半径rの球面全体を貫く磁力線の総本数もqm本となるはずです。

そして,真空中の磁場の空間的等方性から,点磁荷を中心とした半径rの球面上の任意の点での磁場ベクトル,あるいは磁束密度ベクトルは,全てその大きさが等しく球面に垂直な方向を持ち,中心の点磁荷が正(N極)なら外向き,負(S極)なら内向きであろうと考えられます。

そして,球面の総面積は4πr2ですから,球面を貫く全磁束=全磁力線は4πr2Bで与えられるはずです。

 

したがって,4πr2B=qmなる等式から,B=qm/(4πr2),あるいは={qm/(4πr2)}(/r)=qm/(4πr3)なる式が得られます。

 

これと磁場の定義:0から,={1/(4πμ0)}(qm/r2)}(/r)={1/(4πμ0)}(qm/r3)と書けます。

ちなみに,単位の話をすると,MKSA単位では磁荷qmと磁束の本数は同じ単位:Wb(Weber=J/A:ウェーバー)を持つとされていて,それゆえ磁束密度の単位は(Wb/m2)です。

 

そして,その意味は後述する予定ですが,真空の透磁率はμ0=4π×10-7(N/A2)なる値と単位で与えられることがわかっています。

 

そこで磁場の強さ(磁界)0は(Wb/m2)/(N/A2)={(J/A)/m2)}/(N/A2)=(A/m)なる単位で表わされます。

ここでJ=Nmはジュール(Joule),Nはニュートン(Newton),A=C/sはアンペア(Ampere;Cはクーロン(Coulomb))です。

 

これらの単位の意味を理解するには磁束密度や磁場,および磁荷や電流と磁力の関係,つまり応用力学の一分野としての磁気学の位置を知る必要があります。

ここまでは前記事で電束密度と電場について解説した際の文章において,電束密度,電場をそれぞれ磁束密度,磁場に,そして電荷q,電荷密度ρをそれぞれ磁荷qm,磁荷密度ρmに機械的に置き換えただけなのですが,ここで今まで残しておいた磁力と磁場,あるいは磁力と磁束密度の関係を述べておきます。

まず,"磁力が働くとされている空間内の点に磁荷の大きさがqmの試験磁荷を置いて,これに働く力がであるとき,をqmで割った比(/qm)を取って,これのqm→ 0 の極限を取り,これをと書いて磁場(磁界)という。

 

"あるいは,"単位磁荷当りに働く磁力をと書いて磁場という。"のように電場を電気力から定義したのと同じ表現で書いてみます。

もちろん,この定義でもいいのですが,実は磁気は電気と完全に対称な概念とは言えず,ある"決定的な違い"があります。

 

電気の場合には電荷というのは観測可能な量であって,比較的明確な意味を持っていたのに対し,磁気の場合にはそれに対応するとされる磁荷qmというのは一体何者なのか?というある種の不明瞭さがあることがわかっていて,磁場についての上の表現にはやや違和感があります。

すなわち,"正あるいは負の磁荷が単独で存在することは不可能である。",あるいは,"この世の中に単独磁荷=磁気単極子(モノポール)というものは存在するとしても現在までのところ発見されていない。"というのが,電気との決定的な違いです。

 

古典電磁気学では,正あるいは負の磁荷(N極あるいはS極)が単独で存在することはなく,磁荷(磁極)は大きさが等しい正負(NS)の磁荷(磁極)が無限小の距離で並ぶ対として,つまり流体力学でのダランベールの背理で現われる"2重湧き出し"と同じように磁気双極子(ダイポール)という形でしか存在し得ないとされています。

ちなみに,磁気単極子,あるいはモノポールに関係した私のブログの記事が2007年8/24の「磁気単極子(モノポール)」,8/25の「磁気単極子(モノポール)(補遺)」にありますので,よかったら参照してみてください。

 

(既に私のブログのバックナンバーには,多くの物理学,数学のトピックスが揃っていますから,よろしかったら必要に応じて,検索するなりしてご覧ください。)

しかし,敢えて=em,={1/(4πμ0)}(qm/r2)}(/r)={1/(4πμ0)}(qm/r3)なるモノポール的な表現を取ると,磁力は=em=(kmmm/r2)(/r),km=1/(4πμ0)となって,形の上では電気力のクーロンの法則と全く同じになります。

 

そして,さらに前記事で静電場()が位置のあるスカラー関数,"静電ポテンシャル=電位"φ()によって,()=-gradφ()=-∇φ()と表わせるという事実からのアナロジーで,静磁場()と表示して,これを()=-gradφm()=-∇φm()なる形で表わすスカラー関数φm()があるとします。

  

このφm()を"静磁ポテンシャル=磁位"と呼びます。

 

すると,位置0に単一の点磁荷があるとした場合の磁場()={1/(4πμ0)}(qm/R2)}(/R),0を表わす磁位関数φm()は,R→ ∞ でφm()→ 0 なる境界条件を満たすとすればφm()=qm/(4πμ0R)となります。

そこで,磁気モーメント0≡qm00(0は無限小)で与えられる磁気双極子の磁位は,φdm()={0/(4πμ0)}grad0(1/|0|)={0/(4πμ0)}∇0(1/|0|)={1/(4πμ0)}{0(0)/(|0|3)}となります。

 

したがって,この"磁気双極子=磁気モーメント0の磁石"による磁場(磁界)は()=-gradφdm()=-∇φdm()={-1/(4πμ0)}[0/(|0|3)-3{0(0)}(0)/(|0|5)]です。

一方,一般の磁場(磁界)()がある場合に,位置にあって磁気モーメントが≡qmの磁石に働く力()は()=lim d→0[qm{(/2)-(/2)}]=(∇)()と書けます。

 

()が磁気モーメント0の磁気双極子による磁場の場合には磁力は,()=(∇)()に()=-gradφdm()=-∇φdm()={-1/(4πμ0)}[0/(|0|3)-3{0(0)}(0)/(|0|5)]を代入したものとなります。

 

これの計算はかなり複雑になると予想されますから,具体的な計算は割愛します。

さて,見方を変えて,磁束密度()に着目します。

 

先に述べたように磁気単極子が存在しないということは,磁気を帯びた物体なら必ずその表面の一方に正極=N極,他方に負極=S極が同じ大きさの対として現われ,これをどんなに細かく切り刻んでも両端には金太郎飴のように際限なく正極と負極(N極とS極)が対で現われるということを意味します。

 

"双極子=2重湧き出し"では常に"(湧き出し+吸い込み)=ゼロ"であるという事実によって,磁束密度()に対するガウスの定理∫S=∫VρmdV,あるいはdiv=ρmは,常に∫S=0,あるいはdiv=∇=0 となって簡単になります。

そして,経験によって電場と磁束密度が共存している中を電荷がqの粒子が速度で運動するとき,これには電気力と共にローレンツの力と呼ばれる磁力が働き,位置の電気力と磁力の合力は=q(×)という形に書けることがわかっています。

 

特に磁場だけがあって,電場はゼロのときには働くのは磁力だけであり,=q(×)です。

ここで真空中では,磁束密度と磁場の強さ(磁界)の関係が=μ0で与えられることを考慮すると,真空中でのガウスの定理は,div=∇=0 と同等であり,また電荷がqの粒子が速度で運動するとき,これに働く力は=(μ0q)(×)とも表わせます。

ここで同じ磁場によって働く磁力を表わす2つの表現式(∇)=(μ0q)(×)があることになるので,もしも双方の磁力の働く対象である運動する電荷と磁気双極子が全く同じものを表わすような場合があれば,そのときこれらに働く力の表現は一致する必要があると考えられます。

しかし,磁気モーメントを持つ"磁石=磁気双極子"のは磁荷の対であるという意味では,単極子ではなく双極子であり,ある明確な向きを持つ磁場によって磁石に働く力は無限小距離だけ離れた双極子の正負の磁荷(磁極)に対し,大きさが等しく向きが反対ですから,もしも作用点が全く同じであれば釣り合って磁石は動かないはずです。

しかし,無限小距離とはいえ,空間的に離れた双極子であるという意味では,磁力が働くのは同じ作用点ではないので,合力はゼロですが偶力として,トルク(能率=力のモーメント)はゼロでないはずです。

実際,一様磁場の中に磁針を置くと,それは引き付けられたりして平行移動するのではなく,その場で回転してNとSを結ぶ方向が磁力線の方向と一致するとトルクがゼロになって静止することを我々は常識として知っています。

一方,我々の経験では,鉄などの磁性体が磁化されて磁石になったとき,それが別の磁石の磁場の中にあれば,単に回転するだけではなく,引き寄せられることも知っているので,上の磁針についての知見とは矛盾するように見えます。

 

しかし,現実の磁化された磁石は,大きさのない質点と同一視できるような小さな磁針とは違って,有限な大きさを持っており,しかもそれに対して磁力を及ぼす別の磁石の磁場は一様ではなくて,磁石の近くでは磁力が大きく,遠くでは小さいという分布を持っています。

 

したがって,付近に磁石を置けば,そのN極に働く力とS極に働く力は向きは逆ですが,位置が違っているので,その大きさが等しいわけではないため,当然引き寄せられますから,別に矛盾ではありません。

というわけで,磁場の中で速度で運動する電荷qの粒子と磁気モーメント≡qmを持つ"磁石=磁気双極子"は一方にはゼロでない力が働き,他方に働く合力はゼロなので,そのままで単純に同一視するわけにはいきません。

 

そこで今,この電荷qの荷電粒子が位置を中心にしたある微小回路C上の各点で速度を持ち動径'で定常的に周回して環状電流をなす場合を想定し,これと磁気双極子を同一視することを考えます。

 

この周回運動の周期はTであるとしておきます。

このとき荷電粒子の軌道中の微小時間dtの間に移動する微小部分d'=dtに働く力はdF=(μ0q){×}dr' =(μ0qv){×}ですから,回路全体に働く合力は確かにゼロ:∫CdF=0です。

 

しかし,Cの中心の回りの全トルクは=∫C('×dF)=∫0T[(μ0qv){'×(×)}]dt0T[(μ0qv){(')(')}]dtとなります。

 

さらに周回軌道Cの動径'とd'dtは,常に直交するので回路Cの上では(')=0 となることから,トルクについて=∫C['×dF]=∫0T[(μ0qv)(')]dtなる表式が得られます。

ところで,d'/dt=なので(d/dt){(')'}(')+()'が成立します。

 

これと恒等式:('×=(')-()'とを辺々加え合わせると,(d/dt){(')'}+('×=2(')となります。

 

左辺の第1項を1周期にわたって時間積分すると0T(d/dt){(')'}=0 となってゼロになるので,これを利用すると∫0T[(')]dt=(1/2)∫0T[('×]dtを得ます。

以上から,この環状電流の全トルクは=∫C('×dF)=(μ0qv/2)[∫0T('×dt)]×と書けることがわかりました。

 

そして一方,磁気モーメントが≡qmの磁石に働く偶力のトルクのもう1つの表現は,単極磁荷に働く力を≡qmとして=lim d→0[×]=lim d→0{×qm}=×なる形で与えられます。

 

以上から,と(μ0qv/2)[∫0T('× dt)]=(μ0qv/2)[∫C('×d')]とを等しいと置けば,トルクに対する2つの表現は完全に一致することがわかります。

ところで,(1/2)∫C('×d')は大きさがCの内部面積ΔSに等しく,向きは軌道面に垂直なベクトルを表わします。

 

それをΔと表示すれば,"電荷qの荷電粒子が速さvで内部面積ΔSを持つ微小回路をまわる。"という電流の大きさがI=qvの環状電流は,結局,=μ0qvΔ=μ0IΔなる磁気双極子と等価であることが示されました。

以上の話は,磁場の強さ(磁界)を中心とした定義に基づく表現になっていますが,磁束密度を中心とした表現として磁気モーメントを改めてμ0によって定義すれば,磁力の表現は=(∇)の代わりに=(μ0μ∇)H=(μ∇)となります。

 

磁気モーメントは,=μ0qvΔ=μ0IΔの代わりにμ=(qv/2)[∫C('×d')]=IΔと表わされます。

 途中ですが,話はまだまだ長くなりそうなので,今日はひとまず,ここまでとします。

参考文献:砂川 重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),高橋秀俊 著「電磁気学」(裳華房),ファインマン(R.P.Feynman)(宮島 龍興 訳)「ファインマン物理学Ⅲ(電磁気学)」(岩波書店)他

 

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2008年4月21日 (月)

電場と電束密度,磁場と磁束密度(1)

古典電磁気学は物理学の理論としては,Coulomb(クーロン)に始まり,

Faraday(ファラデー),および,Maxwell(マクスウェル)に至って完成

されたされています。

 

ここでは,電磁気学において初学者が混乱しそうな概念と思われる

電場と電束密度,および類似した概念である磁場(磁界)と磁束密度

について,かなり詳細に解説してみたいと思います。

 

歴史的には電気力も磁気力も万有引力と同じく遠隔作用力として

導入され,やがて近接作用の表現に近い微分型のMaxwell方程式と

いう美しい形式に帰着されました。

 

この正統派とされている理論も,なお,見方によっては常識的イメ

ージとして違和感を感じる理論と見る向きもあるようです。

 

これに対して,Faradayの理論はより直観的で物理的な見方に主眼

をおいた理論であり,流体や弾性体などの力学的描像からのアナ

ロジーでもって電磁気現象を表現しようとしたかに見えます。

 

このFaradayの描像とMaxwellの数学的理論との間には若干の相克

が見られると感じられます。

 

現代的に見ても,本質的な結論は同じでしょうが,正統派でスマート

な記述をしていると思われる大田浩一氏らの著わしたテキストと,

 

一部には"トンデモ本"とも評されているらしい数理物理学者の

今井功氏著の特徴的な書物「電磁気学を考える」では,ある意味

で理論物理学の書籍として対極にあるような気がします。

 

まずは,電場,磁場などの場という概念を電場を例にとって説明

することから始めます。

 

電場というのは,

 

"電気力が働くとされている空間内の点に,電荷大きさがq

試験電荷を置いて,これに働く力がであるとき,をqで

割った比:(/q)を取ってこれのq→ 0 の極限を取り,これ

と書いて電場という。"

 

とでも定義すべきか,と思われます。

 

普通のテキストでは"単位電荷当りに働く電気力を電場という。"

という程度の簡単な表現で電場の定義が与えられることが多い

ようです。

 

なぜ,定義するだけなのに,こうした"神経質とも思われる注意深さ"

を必要とするのか?といえば,

 

厳密には試験電荷が無限小,または,近似的にゼロではなく有限

なら,有限電荷量の値が大きければ大きいほど,試験電荷を置く

だけで,それを置いた点とその周りの電場そのものをゆがめて

しまうと考えられるからです。

 

元々の電荷がないときの物理的状況を知りたいために試験電荷

置くのにも関わらず,試験電荷自身が周りの環境をこわすとい

うディレンマがあること,あるいは,

 

"自分自身の作る場による自分自身への力=自己力"をどう評価

するのか?というような悩ましくも微妙な問題があるからです。

 

今井功氏の先に挙げた批判的著書では,"そもそも無限小の試験

電荷を基に定義された電場に実際に有限な電荷を置いたとして

正しい電気力が得られるのか?"とか,

 

"そもそも電気力が先験的に電荷量に比例する:言い換えると,

電荷の大きさがn倍なら電気力もn倍になる"という根拠が

あるのか?などの基本的?な疑問が投げかけられています。

 

まあ,物理学は経験科学である自然科学の一つですから,経験

あるいは実験が理論的概念を裏付ければそれでいいわけで,

 

究極的には根拠がなくても自然を正しく記述しているなら,それ

で良く,それを数学で言えば公理,物理学で言えば仮説,または,

法則として認めるだけのことですが。。。。

 

また,電磁気学は力学と並んで古典物理学の双璧をなす,といわれ

ていますが,電場にしても磁場にしても具体的に質点に働く力に

よって定義されているわけです。

 

流体力学が力学の応用として,応用力学の一分野であるといわれる

のと同様な意味で,古典電磁気学も1つの応用力学と考えてもいい

のではないか,という主張もあります。

 

 一応,電場の概念規定の話はこの程度にして,次に電束密度の定義

 を与えます。

 

 電束というのはFaradayによって,

 "電場があるところには目には見えないが電気力線の束が存在

 している"という概念を指し,これも流体力学における流線の

 束からの類推であろうと思われます。

 

 ある向きの単位面積をそれに垂直にD本の電気力線が貫いている

 なら,その点での電束密度はDである,といい,その電気力線の向き

 を持つベクトルを電束密度ベクトルと呼んで,真空中の各点での

 相対的電気力は電束密度に比例すると考えるわけです。

 

 したがって,"真空中"であれば,電場と電束密度は,どちらも真空

 中で働く電気力に比例し試験電荷にはよらないベクトルを示す別

 々の電気の場の定義に過ぎません。

 

 比例定数ε0(伝統的に真空の誘電率と呼ぶ)を与えて,≡ε0,

 あるいは0によって,一方から他方を定義できるので,

 一方の厳密な定義を与え他方は単にそれの定数倍で定義される

 量である,と考えてもいいわけです。

 

そこで,電束あるいは電気力線に主眼を置いた電場の定義は次の

ようになります。

 

すなわち,

真空中では電気力線は途切れることなく続いているが,もしも空間

のある点にそれの湧き出しがあるなら,その点に"正の電荷がある"

といい,吸い込みがあるなら"負の電荷がある"という。

 

それ故,電気力線の向きは正の電荷から負の電荷に向かうものと

約束し,"湧き出しや吸い込みでの電気量=電荷"は,そこで湧き

出すか吸い込む電気力線の代数的本数である,と定義する,

というわけです。

 

 上のように定義すると,流体力学の流束と同じようにGaussの定理

 として知られている電束の性質,

 

 すなわち,

 "任意の閉曲面Sを通って出ていく電気力線の総数はSの内部

 (Sで囲まれた体積=V)に含まれる電気量に等しい。"

 という定理が得られます。

 

 つまり,電荷密度ρを単位体積当りの電気量とすると,

 ∫VρdV=∫S,ただし=(Dn)dSが

 成立します。

 

これは数学におけるGaussの法則,つまり,

lim V→0[(∫S)/V]=divなる式で表わされる法則

を適用すると,div=ρという微分型の形に表わすことも

できます。

 

そして,に基づいて真空中での電場0で定義

すると,div=ρ/ε0とも書けます。

  

さらに,電束密度:も電場も重ね合わせの原理を満たす,

つまり電束密度:1,2で表わされる2つの電場があれば,

1,c2を任意の定数として≡c11+c22で表わされる

電場も存在し得るとします。

 

すなわち,電場は線形性を持っているとします。

 

こうした電束,あるいは電気力線というイメージから得られた

Gaussの定理と電場は"湧き出し,あるいは吸い込み=点電荷"に

対して等方的であろう,という物理的直観から,

 

電荷qの点電荷か1つだけあって,あらゆる方向に合計q本の

電気力線が出ているとしたとき,湧き出しと吸い込み以外では

電気力線が途切れることはないので,

 

点電荷を中心として半径rの球面全体を貫く電気力線の総本数

もq本となるはずです。

 

そして,電場の空間的等方性から点電荷を中心とした半径rの

球面上の任意の点での電場あるいは電束密度のベクトルは,

全てその大きさが等しく球面に垂直な方向を持ち,中心の点電荷

が正なら外向き,負なら内向きであろうと考えられます。

 

このとき,半径rの球面の総表面積は4πr2ですから球面を貫く

全電束,つまり全電気力線は4πr2Dで与えられるはずです。

 

したがって,当然成立すべき4πr2D=qなる等式から,

D=q/(4πr2),あるいは,={q/(4πr2)}(/r)

=q/(4πr3)なる式が得られます。

 

これと電場の定義:0から,は,

={1/(4πε0)}(q/r2)}(/r)={1/(4πε0)}(q/r3)

と書けます。

 

そして,この電場によって点電荷eに働く電気力は,定義に

よって=e={1/(4πε0)}(eq/r2)}(/r)

={1/(4πε0)}(eq/r3)となり,自然にCoulombの法則が

導かれます。

 

すなわち,"Gaussの定理+場の空間的等方性"のCoulombの法則

との同等性がわかります。

 

ここで電磁気学では,歴史的に混乱の元にもなっていた単位

話を整理します。

 

現在では公けには"S.I.単位を採用すべきである。"という

指針があるようですが,歴史的に見ると例えば量子物理学など

の原子物理学ではc.g.s単位が主流でしたね。

 

かつて,Coulombの法則が,=e(keq/r2)(/r)

なる形で発見されたときに,MKSA単位では比例係数kを,

k=1/(4πε0)なる形とし,c.g.s単位ではk=1としたらし

いです。

 

そしてMKSA単位では,電気と関わる物理量の単位は,

[]=N(Newton),[e]=[q]=C(Coulomb)なので,

[]=N/C,[k]=[ε0]-1=Nm22となりますが,

 

c.g.s単位では[]=d(dyne=10-5Newton),

[e]=[q]=c.g.s.esu(c.g.s静電単位)etc.です。

 

まあ,c.g.s単位では比例係数がk=1になるようにその他の

余分な因子を[e]=[q]の単位に押し込めたのですね。

 

c.g.s単位では,

係数1/(4πε0)を無理矢理1にしたので,MKSA単位での

0やGaussの定理でのdiv=ρ/ε0 なる表現は,

c.g.s.単位では,(1/ε0) → 4πなる読み換えによって,

=4π,div=4πρ なる表現に変わります。

 

しかし,それ故,それぞれ,MKSA単位では,

E=q/(4πε02),c.g.s単位ではE=q/r2と表わされる

Coulombの法則は,電気力線という視覚的概念で捉える電束密度

という意味では,共にD=q/(4πr2)となります。

 

当然ですが,"半径rの球面上での電気力線の総本数が4πr2D=q

である。"という基本的な意味は単位の取り方には無関係です。

 

ですから0という何か意味不明な定数はc.g.s単位では現われ

ないので,この真空の誘電率というのはMKSA単位にのみ必要

なものですが,敢えてc.g.s.単位でも真空の誘電率というものを

想定するなら,これは1/(4π)で与えられるとすべきでしょう。

 

しかし,後述するように,実際には一般に真空も含めた物質の

誘電率というものを定義してεという記号で表わし,MKSA

単位でもc.g.s.単位でも同じように,この誘電率をεで表わす

のですが,

 

c.g.s.単位でのεはMKSA単位での(ε/ε0):比誘電率

(真空に対する比)を意味する量なので,c.g.s.単位では真空

の誘電率は1であるとするのが慣例です。

 

以下では,特別なことがない限り単位はMKSAに統一します。

 

いずれにしても,真空中であれば電場も電束密度も同一の電気力

を別の言葉で表現しているに過ぎないわけです。

 

ということで主要な問題は真空中ではなくて物質中,

つまり電磁気にとっての媒質の中の電場と電気力線の問題です。

 

ここで後での説明の都合上電場や電束密度を空間位置

関数として()や()と表記し,さらに静電場において,

その存在が保証されている静電ポテンシャル(電位):φ()を

設定して()=-gradφ()=-∇φ()となるようにし

ます。

 

このとき,位置0に単一の点電荷がある場合のCoulomb場は,

()={1/(4πε0)}(q/R2)}(/R),0です

から,R→ ∞ でφ()→ 0 となる静電ポテンシャルは

φ()=q/(4πε0R)で与えられることがわかります。

 

そもそも,電荷というのは最低値を持った素電荷の集まりであって,

1個,2個と数えられる量ですが,

 

先のGaussの定理の微分形;div=ρでも見たように,

古典電磁気学のスケールでは,電荷を連続的な量と想定し,

電荷密度ρ()なるものを考えることができます。

 

そして電場の重ね合わせの原理から静電ポテンシャルの重ね

合わせの原理も成立することを考慮すると,単一点電荷がある

場合も含め,

 

一般に空間のある領域Vに電荷密度ρ()で連続的に電荷が

分布して存在している場合に,()=-gradφ()

=-∇φ()で電場()を与える静電ポテンシャルは,

φ()={1/(4πε0)}∫V{ρ(')/|'|}d'

と書けることがわかります。

 

特に位置0に単一の点電荷qがあるという特別な場合には,

ρ()=qδ(0)と置けばいいだけです。

 

さて,物質中の電場の話に移ります。

 

電気に関係した物質の分類としては,導体と絶縁体というのが

主要な分類ですが,これらを総称して誘電体と呼びます。

 

まあ,導体は誘電率εが∞の理想的な誘電体であると考える

わけですね。

 

通常,外部に電場も磁場もない状態ではこの世に存在する物質

を遠方から巨視的イメ-ジとして観測する限り,それらを構成

する分子,原子の中の電気的相互作用などの構造は遮蔽されて

います。

 

そこで,物質は電気的に中性であり,電流もゼロで磁気的にも

中性と考えていいのですが,外部に電場がある場合には,

電磁気学のような巨視的物理学のスケールで考えても電気的

分極が生じてバランスが崩れます。

 

外部電場があるとき,対象とする物質が絶縁体なら,それを

構成する中性原子の原子番号をZ,電子1個の電荷を-eと

すると,

 

各構成原子は電荷が(+Ze)の原子核と合計電荷が(-Ze)

の電子群が外部電場の方向に平行に引き伸ばされた正負

2つの"点電荷の対=電気双極子"になっているという模型

で考えることができます。

 

これは,外部電場が正負の点電荷を引き離そうとしても点電荷

自身の引力のために,ある程度離れた距離で釣合うという描像

です。

 

しかし,もしも対象物質が絶縁体ではなく固体の金属物質の

ような導体であれば,それは結晶格子の周期的構造のせいで,

外郭電子がほぼ自由電子のようになっていて,外部電場による

電子の移動に歯止めが効かないというわけで,導体の場合には,

その内部に少しでも電場があれば電子は飛散してしまいます。

 

そこで,対象が導体なら,外部電場をかけて電気的平衡になった

静電場の状態でも個々の原子が分極して双極子状態になるわけ

ではなく,導体内部の電場は正確にゼロになります。

 

電荷は導体表面にしか存在しなくなります。

 

つまり,静電場ではなくて絶えず電荷が供給される電流源などが

あるような状況なら定常的に電流が流れますが,さもなければ

体内部に電流が流れていても,やがてそれは止まってしまうわけ

です。

 

その結果,導体内の内部電場はゼロになります。

 

これがもしゼロでなければ,せっかく平衡に落ち着いた電荷分布

が再び崩れて,また電流が生じるので平衡状態の静電場である,

という仮定に矛盾するからです。

 

そこで導体の中でのはどこもゼロなので,導体内各点での電場

の発散divもゼロですから内部での湧き出し(吸い込み),つまり

電荷密度ρはゼロです。

 

それ故,電荷は導体内部には存在しません。

 

ですから,導体に付随する電子が導体から離れて逃げていくので

なければ,それらは導体表面に分布するしかないわけです。

 

その他,導体で囲まれた空洞の中の電場はゼロであるという静電

遮蔽現象も似たような論理で説明可能ですが,ここでは割愛します。

 

ここでの主眼は導体ではなく誘電体であるとしているので,

導体という特別な物質に関する話題はこれくらいにして,

主として絶縁体と呼ばれる一般的な誘電体の考察に移ります。

 

対象物質が一般の誘電体のケースには,外部電場に対して全て

の原子が分極してと同じ向きの電気双極子の集まりになると

予想されます。

 

そして,外部電場に誘起されて点に生成される全ての電気双極子

モーメントベクトルの代数和の単位体積当たりの量:体積密度"を

()とします。

 

すると,以下に述ベル理由から()は分極ベクトルと呼ばれます。

 

ところで,位置0の近傍の点10/2に電荷q,

20/2に電荷-qがあるとしたときの双極子:

モーメントが≡qが無限小の電気双極子の

静電ポテンシャルφd()は,

 

が有限のポテンシャル:φd()は,

φd()={q/(4πε0)}(|1|-1-|2|-1)において,

=qを固定したまま,d→ 0,q→ ∞ の極限を取れば得

られます。

 

それは,結局,

φd()={1/(4πε0)}grad0(1/|0|)

={1/(4πε0)}0(1/|0|)

となるはずです。

 

そこで密度が,()の連続的双極子分布がある場合の

静電ポテンシャルは,

φd()={1/(4πε0)}∫{(')grad'(1/|'|)}d'

と表わすことができます。

 

ここで,

div'[(')/|'|]

=(1/|'|)div'(')+(')grad'(1/|'|)

なる等式を用いれば,

 

φd()

={1/(4πε0)}(∫[div'{(')/|'|}]d'

-∫[(1/|'|)div'(')]d'

と書けます。

 

これの右辺の第1項はGaussによって,

{1/(4πε0)}(∫[(')/|'|]dなる表面積分

に帰着します。

 

ところが,この表面積分の被積分関数のベクトル因子()は

有限領域内においてのみゼロでない関数,有限な台を持つ関数

なので,この項の寄与はゼロになります。

 

そこで,分極による電場の静電ポテンシャルの最終的表現ては,

φd()={1/(4πε0)}∫[(1/|'|){-div'(')}]d'

なる形式に帰します。

 

一方,こうした外部電場によって誘起された静電ポテンシャル

φd()とは別に,

 

通常の電荷密度,いわゆる真電荷の密度:ρe()があるときの

電場の静電ポテンシャルをφe()と書けば,これは,

φe()={1/(4πε0)}∫[ρe(')/|'|]d'

で与えられます。

 

そこでd()≡-div()と置いて得られる静電ポテンシャル

の形:φd()={1/(4πε0)}∫[ρd(')/|'|]d'を,

φe()={1/(4πε0)}∫[ρe(')/|'|]d'

と比較します。

 

これを見るとするとすぐわかりますが,φd()を独立な静電

ポテンシャルとして-gradφd()=-∇φd()とした式から

得られる電場=分極電場は,ρd()=-div()なる形で

与えられる仮想電荷ρd(),

 

何か"分極によって顕在化する電荷=分極電荷"が存在して,

それを源するCoulomb静電場に同定できます。

 

そして,

φd()={1/(4πε0)}∫[(1/|'|){-div'(')}]d'

から,-∇2φd()=div{-gradφd()}=-div()/ε0

=ρd()//ε0によって,

 

()/ε0を,-gradφd()=-∇φd()なる分極電場と見なし,

()を分極によって発生した真空中の電束密度と見なしてよい

と思われます。

 

実は,構成原子の原子核や電子など微視的で離散的構造を意識する

ような規模で見るなら,実際の電荷に働く電気力を示す電場という

のは,たとえ分極した誘電体の中であろうと原子核とか電子のない

空虚な空間の部分では実質上真空中と同じと考えてよいので理論的

には真空中と全く同じ法則を満たすはずです。

 

そして,電場()はの近傍で適当に取った点を囲む閉曲面内

の湧き出し(吸い込み)=電荷による電荷密度ρ()によって,

div()=div()/ε0=ρ()/ε0を満たすように決まって

いると考えるなら,

 

微視的なスケールでの離散的な電荷構造であれば,()も

div()も至るところ不連続であり,連続的な電荷密度ρ()

という概念は通用しないと思われます。

 

では分極した誘電体の電場に与える効果というのは一体何を

示しているのでしょうか?

 

かつて電磁気学を初めて学んだ頃には,はっきりとは理解できず

結構悩んだものでしたが,結局,誘電体の中の電場()とは電荷

分布を連続した密度と見なせる古典電磁気学の巨視的規模で見た

とき,試験電荷に働く平均の電気力を与える電場とみなせばいい

わけです。

 

巨視的規模の平均量であれば,分極によって生じる多くの電気

双極子の各々は同じ大きさの湧き出しと吸い込みの対なので,

電場の電束密度()への寄与はトータルでゼロですから,

 

分極によって発生する真空中の電束密度と見える量-()

などは()とは無関係であり,真空中と同じ電束密度の

Gaussの定理:div()=ρe()が成立します。

 

一方,平均電場()の方は真電荷ρe()による電場と

分極電荷ρd()による電場の重ね合わせで与えられると

考えられますから,

 

Gaussの定理: div()={ρe()+ρd()}/ε0を満たします。

 

したがって,現象論的定式化を行なって,誘電体中の電場()は

その中に真電荷を置いて生じた電束密度()に相当する外電場

により誘起される誘導電場と考え,

 

そこで誘電率と呼ばれる比例係数εにより,()=()/ε,

あるいは()=ε()なる比例関係で表わされるとします。

 

これを,先に述べた式:

div()={ρe()+ρd()}/ε0=div{()-()}/ε0

と合わせると,()=()/ε={()-()}/ε0,

すなわち,()=ε()=ε0()+()

なる式を得ます。

 

単一電荷qがある場合のCoulombの法則は,電束密度()で表現

するなら真空中でも物質(誘電体)中でも同じ式:

D()=q/(4πr2),または()={q/(4πr2)}(/r)

=q/(4πr3)です。

 

電場()の方は誘電率εに依存して()=()/εである

ため,物質中では()=q/(4πεr2),または,

()={q/(4πεr2)}(/r)=q/(4πεr3)となって,

真空中のε0をε(一般にε>ε0)に変更した形になります。

 

誘電率εの誘電体が存在する場合の電場:

()=()/εと()/ε0は,共に誘電体内部の電荷に

働く電気力として観測可能です。

 

例えば2つの平行板の間に誘電体が充填された平行板

コンデンサー(蓄電池)の間の電荷への電気力を測る場合,

 

平行板に"垂直に切れ目を入れて隙間を空けた部分=gap"に

電荷を置いたとき,つまり直列に並んでいる双極子と双極子

の間に電荷を置いた場合の"gap field"としては,

真空中の電場()/ε0()+()/ε0に相当する

電気力を受けます。

 

一方,平行板に"平行に切れ目を入れて隙間を空けた部分

=canal"に電荷を置いたとき,つまり直列に並んでいる

双極子ベクトルの腕ベクトルの上に電荷を置いた場合の

"canal field"としては()=()/εに対応する

電気力を受けるはずです。

 

このように微視的に見るなら,電気力をどこで測るかによって

電場はコロコロ変わります。

 

例えばLorentz(ローレンツ)の電子論で現われる微視的模型:

誘電体の中に微小球体の孔をくりぬいてその空隙の中にある

試験電荷に働く平均電気力に相当する電場,Loretzの電場と

呼ばれる分子電場L()は,

 

先の"gap field "()/ε0()+()/ε0とも異なって,

L()=()+()/(3ε0)なる表式で与えられます。

 

それ故,分極場の表現()=(ε-ε0)()によって,

L()={(ε+2ε0)/(3ε0)}()と書くことができます。

 

そして誘電分極の場()はL()によって誘起された微視的

双極子≡αLの単位体積当りN個の集まりであると見なす

なら,

 

(ε-ε0)()=()=NαL()

={Nα(ε+2ε0)/(3ε0)}()と書けて,

Clausius-Mossottiの式:(ε-ε0)/(ε+2ε0)=Nα/(3ε0)

が得られます。

 

さらに,これからn2=ε/ε0によって光(電磁波)の屈折率nと

誘電率εの関係を示す式であるLorentz-Lorenz の式:

(n2-1)/(n2+2)=Nα/(3ε0)が得られます。

 

以上を要約し,さらに数学的な式変形による定式化ではなく

幾分物理的な表現を交えた説明もしておきます。

 

すなわち,誘電体で満たされた空間の中に真電荷Qeを置いたとき,

対象とする物質を構成する分子,原子は分極して電場を生じ,

さらに2次以上の分極の連鎖の後に定常状態に達したときには

これらを微小な電気双極子の集合体と見なすことができます。

 

Lorentzの電場のような微視的立場ではなく,巨視的平均電場と

して見ると,分極してできた双極子の集合体は連続体と考える

ことができて,正負等量の電荷で一様に帯電した物体を重ねた

後に僅かにずらしたものと見ることができます。

 

このとき,ずらした正電荷の移動の向きを持ち,物体内に取った

任意の単位面を垂直に通り抜ける,電荷量に等しい大きさのベク

トル()を位置の関数として導入し,これを分極ベクトルと

呼びます。

 

このとき誘電体内に真電荷Qeを囲む任意の閉曲面Sを考え,これ

を通過する分極による全電荷は∫S()()dSで与えられ

閉曲面Sの取り方に依りません。

 

真電荷Qeが正電荷なら,表面Sから外へ染み出す正電荷の反作用

としてSの表面に現われる電荷は負電荷であり,その総量は

-∫S()()dSです。

 

そして電場は巨視的平均場なので,"canal field"であり,Gauss

の法則はε0S()()dS=Qe-∫S()()dS

となります。

 

すなわち,∫S0()+()]()dS=Qeですから,

電束密度()≡ε0()+()を導入すると,

S()()dS=Qe,微分形では,div()=ρe(),

Vρe()d=Qeとなります。

 

最後に現象論的扱いでは,()=ε()の誘電率εは単なる

定数ですが,この関係式を一般化するなら()=ε()()

と書いて誘電率もの関数であるとしたり,

複素屈折率nと2=ε/ε0の関係や光(電磁波)の吸収,回折,散乱

などに関連して実数ではない複素数のεを考えたりもします。

 

また,電気的に等方的ではなく,異方的な物質が対象ならεを

スカラーではなくテンソルε=(εij)として,最も一般的な

形式Di()=εij()Ej()(εij()は複素数)なる表現

を与えることもできます。

 

今日はこのくらいにして,分極電荷と電場の話の続きとなる

分極電流,磁化電流と磁場の話,および真空中とは異なる物質

中の相対性理論の話はまた今度にします。

 

参考文献:砂川 重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店)

     高橋秀俊 著「電磁気学」(裳華房),

 

     今井 功 著「電磁気学を考える」サイエンス社,

     ファインマン(R.P.Feynman) 著 (宮島 龍興 訳)

     「ファインマン物理学Ⅲ(電磁気学)」(岩波書店)他

  

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2008年4月17日 (木)

磁性の話(キュリーの法則)(補遺)

前記事で述べたように,Curie(キュリー)の法則は磁場H→ 0 の極限で磁化率(帯磁率)χが絶対温度Tに反比例するという法則:

 

χ=C/T (C≡NμB2μ0J2(J+1)/(3kB)) なる法則です。

 

これは,物質を構成する個々の原子のエネルギー的に安定な状態が"全角運動量がの状態=J多重項"で与えられ,Lande(ランデ)の因子:gJ≡3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}が一定,つまりJと共にL,Sの値も固定されている場合に成立します。

 

この原子から成る"バルクな物質=巨視的な原子数の系"が絶対温度Tの下で熱平衡状態にあって,の向きだけが統計的に乱雑になっている場合,

  

そして特にをゼロと見なしていいほど外部磁場が弱い場合に成立する法則です。

 

一般にが有限な量であっても,その物質の磁化ベクトル(H,T)の磁場方向の成分は,M(H,T)=N[ΣJ=-JJ(-μBJJ)exp{-(J,MJ)/(kB)}]/(ΣJ=-JJ[exp{-(J,MJ)/(kB)}])なる式で与えられると考えられます。

そして,上述の式は,M(H,T)={N/0)}(/∂β){log(ΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}と変形されます。

 

右辺の対数log(自然対数ln)の中の項は.実は双曲線関数を用いてΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}]=ΣJ=-JJ[exp(-αβJ)]=exp(αβJ)[1-exp{-αβ(2J+1)}]/[1-exp(-αβ)]=sinh{αβ(J+1/2)}/sinh(αβ/2)と簡明に表現できます。

 

したがって,この表式から,さらに(∂/∂β){log(ΣMJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}=α(J+1/2)cosh{αβ(J+1/2)}/sinh{αβ(J+1/2)}-(α/2)cosh(αβ/2)/sinh(αβ/2)=α(J+1/2)coth{αβ(J+1/2)}-(α/2)coth(αβ/2)と書けることもすぐにわかります。

そこで,既にBrillouin(ブリリュアン)関数という名称で知られている関数:BJ(x)≡{(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}-1/(2J)coth{x/(2J)}を導入すれば,

 

(∂/∂β){logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}=(αJ)J(αβJ)と,非常に簡単な表現になります。

 

そこで,α≡μBμ0JHが有限のとき,

(H,T)=N[ΣJ=-JJ(-μBJJ)exp{-(J,MJ)/(kB)}]/(ΣJ=-JJ[exp{-(J,MJ)/(kB)}])

{N/0)}(/∂β){log(ΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}

なる変形によって,

  

結局,磁化の大きさはM(H,T)=NμBJJ{JμBμ0J/(B)}となります。

 

こうして数学的に明確な形式で与えられることがわかりました。

双曲線余接関数は,y→ 0 でcoth(y)=cosh(y)/sinh(y)~(1+y2/2)/(y+y3/6)=(1/y)(1+y2/3)なる近似式で表現できることから,

 

x→ 0 でJ(x)~(J+1)x/(3J)と近似できることもわかります。

 

そこで,H 0 においてCurieの法則χ=C/T,C≡NμB2μ0J2(J+1)/(3kB)が確かに成り立つことも自然に得られます。

 

今思うと,前記事のように苦労して地道に計算する必要なかったですね。うーん,ある意味でくやしいですね。

 一方,y→ ∞ の極限では,coth(y) → 1ですから,x→ ∞ でJ(x)→ 1であり,それ故,このときはM(H,T) → NμBJJです。

 

 これは外部磁場Hが非常に強い場合とか,β=1/(B) → ∞,つまり温度Tが極低温のように低い場合には,磁化されて生じる単位体積当りN個の原子の磁気モーメントの全ての外部磁場方向成分がそろって,最大値μBJJを取るようになること,

 

 つまり全ての原子の磁気モーメントがそろって磁場の方向を向くようになることを意味しています。

 短いですが今日はこれまでとします。 

参考文献:金森 順次郎 著「磁性」(培風館)

  

PS:(2010年5/16追記):

  

Brillouin関数:BJ(x)≡{(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}-1/(2J)coth{x/(2J)}においてJ→ ∞ の極限を取ってみます。

    

このとき,右辺第1項={(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}→ coth(x)です。

  

一方,coth{x/(2J)}=cosh{x/(2J)}/sinh(x/(2J)}です。

  

そして,limJ→∞sinh(x/(2J)})}=0,limJ→∞cosh{x/(2J)}=1ですから,limJ→∞coth{x/(2J)}=∞です。

  

しかし,limy→0{sinh(y)/y}=1なのでlimJ→∞{1/(2J)}/sinh(x/(2J)}=(1/x)limJ→∞{x/(2J)})}/sinh(x/(2J)}=1/xです。

  

以上から,lim J→∞J(x)=coth(x)-1/xです。右辺はLangevin(ランジュバン)関数と呼ばれる関数に一致しています。

  

すなわち,L(x)≡coth(x)-1/xで定義されるxの関数L(x)をLangevin関数といいます。

  

J→ ∞ の極限の磁性はJが連続的で全ての値を取り得るという古典的極限に相当しています。

  

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2008年4月15日 (火)

磁性の話(キュリーの法則)

ゼーマン効果(Zeeman effect)の話をしているうちに,私が勉強したことがほとんどない磁性に興味がわいたので,またまた脱線ついでにその話を記事にしてみようと思います。

まず,前回の記事で磁場の中では,原子は磁気モーメント=-μB(+2)を持った磁石のように挙動すること,

 

そして磁場(磁束密度)比較的弱い場合に,核スピンを無視したとき,磁場との相互作用に実質的に寄与する部分である全角運動量に平行な観測にかかるの成分//,//-μBJ,gJ≡3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}で表わされることを見ました。

 

ここでgJはLande(ランデ)のg因子です。

したがって全角運動量の状態に対応して磁気モーメント:=-μB(+2)に由来する磁場との相互作用エネルギーは,E(J,MJ)=-=μBJJB=μBJJB=μBμ0JJ,MJ=-J,-J+1,..,Jで与えられます。

 

ここにB=μ0(μ0は真空の透磁率)で,は工学において磁界とか磁場の強さと呼ばれている量です。

そして巨視的個数の原子から成る系で,原子が全角運動量で安定に存在している系では,絶対温度Tで,状態が実現される相対確率はexp{-(J,MJ)/(kB)}に比例します。

 

そこで,この単一種類の原子のみから成る物体内での単位体積当たりの原子数をNとすると,磁場(磁界)の中での磁化の大きさ:M(H,T)は, 

M(H,T)=N[ΣMJ=-JJ(-μBJJ)exp{-(J,MJ)/(kB)}]/[Σj=-JJexp{-(J,MJ)/(kB)}] で与えられます。

 

ただし,kBBoltzmann定数です。

そこで,磁場H → 0 の極限での磁化率(帯磁率)χ≡M/Hを求めるには,

lim H→0{(H,T)/H}{N/02)}(/∂β){ln(ΣMJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}(J,MJ)=0 の右辺を計算すればいいことがわかります。

 

ただし,便宜上β≡1/(kB)とおきました。

ここで,さらにα≡μBμ0JHとおけば,等比数列の有限和の公式から, 

ΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}]=ΣJ=-JJ[exp(-αβJ)]

=exp(αβJ)[1-exp{-αβ(2J+1)}]/[1-exp(-αβ)]

を得ます。

 

それ故,logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}]=αβJ+log[1-exp{-αβ(2J+1)}]-log[1-exp(-αβ)]と書けます。

 

したがって,(∂/∂β){logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}=αJ+α(2J+1)exp{-αβ(2J+1)}/[1-exp{-αβ(2J+1)}]-αexp(-αβ)/[1-exp(-αβ)]

 

=[1-exp(-αβ)]-1[1-exp{-αβ(2J+1)}]-1(αJ[1-exp{-αβ(2J+1)}][1-exp(-αβ)]+α(2J+1)exp{-αβ(2J+1)}[1-exp(-αβ)]-αexp(-αβ)[1-exp{-αβ(2J+1)}])

 

=[1-exp(-αβ)]-1[1-exp{-αβ(2J+1)}]-1[αJ-α(J+1)exp(-αβ)-α(J+1)exp{-αβ(2J+1)}+αJexp{-2αβ(J+1)}]

 

と整理されます。

この最後の表式で,H → 0 の極限,つまりα→ 0 の極限を考えると,

 

(∂/∂β){logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}(αβ)-2(2J+1)-1(α2β)[J(1-αβ/2+α2β2/6)+(J+1)(2J+1){1-αβ(2J+1)/2+α2β2(2J+1)2/6}2J(J+1){1-αβ(J+1)+4α2β2(J+1)2/6]}

 

最終的には,(∂/∂β){logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}

α2(J+1)/(3kBT)となります。

 

こうして,α→ 0 の極限で有用な近似式が得られました。

先述のように,Hの弱い極限での磁化率(帯磁率)χ=M/Hは,χ=limH→0{(H,T)/H}{N/02)}(/∂β){log(ΣMJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}(J,MJ)=0 で与えられますから,

  

Hが弱いときはCを定数として,χ=C/Tなる形になります。

  

の計算によれば,C=Nα2(J+1)/(3kB)ですから,α2Bμ0J)2μ0μB2J202)よりC=NμB2μ0J2(J+1)/(3kB)です。

 

この表式の"磁化率(帯磁率)χが温度Tに反比例する"という法則はCurie(キュリー)の法則といわれます。CはCurie定数と呼ばれます。

 

ここでは磁気モーメントや磁化M(H,T)を,磁束密度μ0の方の単位に合わせて定義しましたが,"磁界=磁場の強さ"の方に合わせると,キュリー定数はC=NμB2J2(J+1)/(3kB)となります。

これは,イオンの磁化率(帯磁率)についての基本公式を与えるもので,後に放射能の研究などでノーベル賞をもらったCurie(キュリー)夫妻の夫の方のPierre Curieの若い頃(結婚前)の発見ですね。

この程度の計算は,最初は朝飯前だと思っていて,本当は記事としてはCurieの法則の話だけじゃなく,もっと突っ込んだ内容も含めて盛り沢山に書きたかったのですが,

 

結局,結果を知っているとはいえ,検算としての極限値の計算に丸1日半もかかってしまったので.短い内容になってしまいました。

 

歳のせいか,元々頭が馬鹿なのか,どちらかなのでしょうね,同じ計算間違いを何回もしてしまいました。

参考文献:金森 順次郎 著「磁性」(培風館),高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店)

 

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2008年4月13日 (日)

久しぶりにヤフオク出品

 昨日,引越しでこわれた再生専用の8ミリビデオデッキを,もうほとんど使わないので,久しぶりにYAhooのオークションに出品しましたが,そのための写真を撮ったら,自分の本棚を背景にフラッシュをたいたので商品よりも本のほうが目立っています。(^^;)http://page6.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/f67042589

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2008年4月10日 (木)

記念日(その2)

 実は今日4月10日は,昨年御茶ノ水の順天堂大学病院心臓血管外科で天野先生を中心とするスタッフの執刀で10時間程度の「心臓バイパス手術」を受けてから丁度1年経った記念日です。。

 一種の心臓を中心とした身体の再生した誕生日かなあ。。とりあえず,術後1年経ちました。当時から今まで世話になった方々,この1年間ありがとうございました。

 (心臓の冠動脈を中心とした動脈が糖尿病が原因か?通常人よりも極端に細くなっていて,いつ切れてもおかしくない状態で,切れたら死ぬところだったらしいのですが,運良く2度も心筋梗塞を起こしたのに助かり,そのときにこの病気が見つかりました。

 細くて切れそうな動脈血管の代わりとして,自分の体の肋骨の下の動脈や胃などの内臓のまだ太い動脈を,7本移植して繋ぎ,さらに不調だったらしい僧帽弁を修復して心臓を小さく絞るという内容の手術でした。) 

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2008年4月 9日 (水)

磁場の中の原子(ゼーマン効果)(2)

ゼーマン効果(Zeeman effect)の続きです。

前回の最後では,

 

"外場としての磁場があるとき原子エネルギーの変化は,

 

1電子系ならΔE=μB{(+2)},

2電子系ならΔE=μB{(12)+2(12)}となって,

 

原子が磁気モーメント:

=-μB(+2),または=-μB{(12)+2(12)}

を持つ磁石のように挙動をすることがわかります。"

 

と書きました。

そして,前回の記号では.hc≡h/(2π)をPlanck定数として,

=hc,=hcでしたが,今回はこれら大文字の

多電子系での合成されたの意味に用いることにします。

  

すなわち,2電子系なら12,12とします。 

こうすると,前回の結論は,

 

"磁場があるとき原子エネルギーの変化はΔE=μB(+2)であり,この原子は磁気モーメント=-μB(+2)を持った磁石のように挙動する。"

 

と,やや簡単な表現になります。

ここで,さらに簡単のためにスピンの存在を無視して,上式で=0 とおいてみます。

 

そして磁場が弱いときには全角運動量は保存されるはずですから,合成軌道角運動量は一定に保たれるとしてよいと思われます。

 

このとき,磁場が加えられた場合の原子のエネルギー変化はΔE=μBL,ML=-L,-L+1,..,Lの様に,原子全体が磁場の中でどちらを向くかの違いによって(2L+1)通りのエネルギーに分裂します。

ここで,L,ML以外の量子数全体をαとして電子状態を(α,L,ML)で指定してみます。

 

こうすれば,光子の角運動量(スピン)が1なので,光の吸収・放出に伴なって生じる電子遷移:(α,L,ML)→(α',L',ML')でのMLの変化:ΔML=ML'-MLはΔML0,±1に限られるという選択則(selection rule)の存在がわかります。

 

したがって,磁場が存在しないときには1本であったスペクトルはΔML0,±1に応じてBに比例するμBBをエネルギー間隔とした3本の線に分裂します。これを"正常Zeeman効果"と呼びます。

しかし,現実にはスピンの存在もあって磁場の中で原子スペクトルの多くはより複雑な変化を受けます。

 

これらを一般に"異常Zeeman効果"と呼びます。

スピン・軌道相互作用(L-S coupling)があると合成軌道角運動量と合成スピンは無関係ではありません。

 

空間の等方性によって合成された全角運動量のみが一定に保存される量です。

ここで厳密ではありませんが,原子番号の小さい原子について有効な近似として,,,で大きさと形の一定な三角形が作られ,決まった向きと大きさを持つベクトルのまわりに,が回転するような1種の歳差運動をする半古典的な原子模型を考えます。

 

そして,こうした原子が一様磁場の中にある場合のエネルギー変化:

ΔEを考察します。

上述のモデルの原子系の軌道状態は全軌道角運動量Lとそのz成分(z-component):ML(ML-L,-L+1,..,L)によって(2L+1)通りの関数:ψ(L,ML),あるいはその1次結合で表わされます。

 

また,スピン状態関数も同様にスピンとそのz成分:ML(MS-S,-S+1,..,S)によって(2S+1)通りの関数φ(S,MS),あるいはその1次結合で表わされます。

そこで,結局,全角運動量がJでそのz成分がMJであるような電子状態Ψ(J,J)は(2L+1)(2S+1)個の積:ψ(L,ML)φ(S,MS)の適当な1次結合で与えられると考えられます。

 

この関数を摂動論の 0-次の波動関数として,これによって磁場の存在による摂動ΔE=μB(+2)の期待値を計算すれば,Zeeman効果の主要なエネルギー変化を求めることができます。

さらに進めるに当たって量子力学における数学的な角運動量の合成則については割愛して,半古典的なベクトル模型によって同じ結論を物理的考察から導くことにします。

まず,磁気モーメント=-μB(+2)のうち,全角運動量に垂直な成分,上記の歳差運動によって平均としてゼロになるので,観測にかかる磁気モーメントは平行成分//で与えられます。

 

そして,//(/|J|)/|J|=(MJ)(/2)です。

 

=-μB(+2)を代入して計算すると,

 

//-μB(/2)[(LJ)+2(SJ)]

-μB(/2)[-(1/2){(J-L)222}

{(J-)222}]

-μB(/2)[(1/2){-222}+{222}]

-μB[3/2+(22)/(22)]

 

となります。

 

これを固有状態の状態関数に作用させたときの固有値としては,

2=J(J+1),2=L(L+1),2=S(S+1)なので,結局,

公式://-μB[3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}]

を得ます。

最後の表式を,//-μB,

g≡3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}と書けば,

 

gは全角運動量に対するLande(ランデ)のg因子,あるいは

磁気回転比を表わすものです。

 

ここまでは磁場の存在を無視して原子の中での角運動量の合成のみで考察しています。

 

これは磁場の存在がこうしたの結合がを与えるという法則をこわすほど強くはないという近似に基づいています。

しかし,実際には磁場がそれほど強くはないとしても,上述のように

原子がの方向に//-μBのような磁気モーメントを持つ磁気双極子,または磁石として存在しているという性質を維持しながらも,

 

磁場が存在するときは,それによって電子系が力を受けるためにはもはや一定の向きを保持できません。

しかし,Larmor(ラーモア)の定理として知られている性質があって,一般に角運動量は磁場方向を軸として歳差運動を行ない,磁場方向の成分のみは保存されます。

 

すなわち,磁場があるとき磁気モーメントの受けるトルクは

//×-μB×なので,他にトルクが無いなら角運動量が従う方程式はd/dt=-μB×で与えられます。

 

そこで磁場があるときでも,その方向をz軸にとればdJz/dt=0 となり,Jz=MJは時間的に一定であって保存されることになります。

得られた表式://-μB,

g≡3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}によれば,

L=0 のときg=2でS=0 のときg=1です。

 

一般には磁場があるとき,(L,S)の値の組によってgが複雑に変わるので,それに応じて原子エネルギー準位の分裂:

ΔE=//

-μBgMJ,MJ=-J,-J+1,..,J

の間隔μBgBも変動します。 

既に述べたように,輻射補正があるので,電子1個のスピンのg因子はわずかに2とは異なるため,これをgeと書けば系の磁気モーメントは 

-μB(+2)の代わりに-μB(+ge)となります。

 

そこで,Landeの式は厳密には,ΔE=-μBgMJ,

g=1+(ge-1){(S+1)(L+1)+J(J+1)}/{2(J+1)}

と書けますが,通常はg=ge=2として差し支えないと思われます。

先に述べたように,光子の角運動量(スピン)は1なので,光の吸収・放出に伴なって生じる電子遷移によるMJの変化は,ΔMJ0,±1に限られるという選択則があります。

 

一般に始状態と終状態のg因子は異なるので,輻射される光のスペクトル線もかなり複雑な分裂を示すようです。

 

以上の議論では原子核は単に固定された点電荷であると見てきましたが,核によってはその角運動量をゼロとすることができないものもあります。この角運動量をhcIと書くことが多いです。

 

核は複合粒子ですが,1つの粒子のように見なして,核スピンと呼ぶ習わしになっているようです。そして核スピンの存在に伴なって原子核が磁気モーメントを持つのでこれと磁場との相互作用も生じます。

 

しかし,原子核と磁場の直接相互作用は核外電子群と磁場との相互作用に比べて極めて小さいので無視されることが多いようです。

 

電子の磁気モーメントの角運動量による表現://-μBで.

"係数=Bohr磁子(Bohr magneton)":μB=ehc/(2me)の分母の電子の換算質量meを"原子核の質量=A個の核子の質量和":AmN (mN ~1840me)で置換したものが核磁気モーメントなので,これは明らかです。

 

とは言っても,核スピンの角運動量:hcは核外電子群の全角運動量:hcと結びついて原子の全角運動量:hcを与えるので,これについては考慮する必要があります。

  

すなわち,,2=F(F+1),F=|I-J|,|I-J|+1,..,I+Jであり,核スピンは全角運動量の保存則を通じて電子群と磁場との相互作用に間接的に寄与します。

 

外場としての磁場がの結び付きをこわすほど強くないときには,原子は量子数Fによって定まる磁石のように挙動します。

 

先に用いた,,の作る三角形のモデルを,,の作る三角形に置き換える考察から,原子核と電子群の系は磁場の中での磁石の向きに応じて以下のようなエネルギーを持つことがわかります。

 

つまり,ΔE=μBFF,MF=-F,-F+1,..,FでFはこの場合に修正されたLandeのg因子です。

 

すなわち,磁気モーメントの全角運動量に平行な成分を示す表式は//(/|F|)/|F|=(MF)(/2)です。

 

これに,極めて小さい核磁気モーメントを無視した電子系のみの磁気モーメント:=-μBを代入すると,

 

//-μB(/2)[(JF)]

=-B/2)(/2)[22(F-J)2]

=-B/2)(/2)[222]

 

を得ます

 

ここで,角運動量の固有状態では2=J(J+1),2=I(I+1),

2=F(F+1)なので,

 

Landeの式が.

 

ΔE=μBFF,

F=g{F(F+1)+J(J+1)-I(I+1)}/{2F(F+1)}

 

と書けるわけです。

 

つまり,この場合//に平行な成分の意味ではなく,それとわずかに向きの違うに平行な成分となります。

 

も軸のまわりにわずかな歳差運動するということの影響を考えることが必要になります。

 

以上は弱い磁場によるZeeman効果におけるスペクトルの超微細構造を与えたものです。

 

以下では原子番号が大きい場合や強い磁場がある場合の論議に移りますが,簡単のために核スピンについては無視することにします。

 

さて,これまでは原子番号があまり大きくなくて量子数Jだけでなく量子数L,Sもほぼ確定値を持ち,Jはそれらの確定値の結合である,としてきました。

 

こうした角運動量の合成はLS結合(LS-coupling),または

Russell-Saunders coupling(ラッセル・ソーンダース結合)

と呼ばれる方式です。

 

しかし,原子番号が大きくなるにつれて,スピン・軌道相互作用が強くなり,やがてそれがCoulombよりも重要な存在になります。

 

ここまでくると電子群の軌道角運動量の合成やスピン角運動量の合成が別々になされるより以前に,個々の電子の軌道角運動量とスピン角運動量が強く結合して,それぞれの電子の全角運動量hcを作り,然る後にそれらが全て結合して全角運動量が決まると考えられます。

  

すなわち,12+..+Nです。(Nは原子内電子数)

 

こうした方式での結合はjj結合(jj-coupling)と呼ばれます。

 

このような大きい原子番号の場合にはZeeman効果もそのような枠組みで計算される必要があります。

 

一方,原子番号の中間領域ではCoulomb力とスピン・軌道相互作用が同程度に重要ですが,ここは中間結合領域と呼ばれます。

 

これらの場合にも,もちろんエネルギー変化はΔE=//

-μBgMJ,MJ=-J,-J+1,..,Jの形に表わせますが,

 

これのg因子に対する公式は.先に与えられたLandeのものとは違ってきます。

 

ところで,L=S=0 であるような原子でもZeeman効果は現われるのでしょうか?

 

実は磁場の1次の効果としては,Zeeman効果は現われませんが,これまでは無視してきた2次の項であるe22/(2me)が重要になります。

 

つまり磁場の向きをz軸に取れば,L=S=0 に対し磁場の存在によるエネルギー変化はΔE=e22/(2me)={e22/(8me)}{Σi=1N(xi2+yi2)}と書けます。

  

そして原子番号が大きくて原子の中に多数の電子がある場合には,その分布は球対称であると考えられるので平均して,ΔE={e22/(12me)}{Σii2>}となります。

 

なぜなら,球対称分布では<xi2>=<yi2>=<i2>/3 が成立すると考えられるからです。

 

ここで3月5日の記事「電場の中の原子(シュタルク効果)」で述べたことを思い出して,磁場の中の原子の同様な効果であるゼーマン効果に対して,この中の論議を応用することを考えます。

 

すなわち,一様電場の中に置かれた球対称原子のエネルギー変化であるStark効果においては,=α(は電場,は分極ベクトルなる現象論的な式に対して,2次のエネルギー変化は,

ΔE=-∫0E=-α||2/2

 

なる表現で与えられます。

 

これが,ΔE=-(e2||2/3)}{Σj≠n<|spjn|2>/(Ej-En)}

なる表式に等置されてαの値が評価されました。

 

そこで,ここでもそのアナロジー(類似,模倣)で,"原子全体の磁気モーメント=磁化":が磁場(磁界)から磁化率χで誘起されるという線形構造を持って=χなる表式で与えられる一般的現象論を考えます。

 

アナロジーから,ΔE=-χ2/2となりますが,磁束密度

=μ00は真空の透磁率)なのでΔE=-χμ0-22/2です。

 

これを,ΔE={e22/(12me)}{Σii2>}と等置することから

χ=-{μ022/(6me)}{Σii2>}なる等式を得ます。

 

これを見ればχは負の値ですが,これは原子の磁気モーメントが磁場と反対向きに生じることを意味しています。

  

これを"反磁性(diamagnetism)"と言います。

 

こうして,L=S=0 の磁気モーメントがゼロの原子でも磁場がかけられられたとき,磁場が誘起されてエネルギーにずれが生じるという効果が存在することが理論的に示されました。

  

しかし,これは磁気モーメントによる1次の効果よりはるかに小さいので,反磁性の寄与は通常の大抵の考察では無視されます。

 

ところで2に比例する摂動項のの1次の項を問題にするなら,の1次の摂動項の2次の寄与も同じオーダーの量ですから,同様に考慮する必要があると思われます。

 

すなわち,L=S=0 の状態|0>への項-iehc∇/meの2次の摂動項として,

 

Σn≠0{|<n|-iehc∇/me|0>|2/(En-E0)}

=Σn≠0{(|<n|(/me)|0>|2/(En-E0)}

 

を計算し,考慮する必要があります。

 

この形を見ると,En>E0によって,この摂動項は正の寄与をすると見られるので"常磁性(paramagnetism)"を与えると思えますが,単独原子の場合にはこの寄与はゼロです。

 

そこで,"L=S=0 の状態=基底状態"へのの2次の効果は反磁性だけでよいことがわかっています。

 

しかし,複数の原子系である分子の場合には,この項はゼロではなく無視できないようです。

 

さらに磁場が強くなると,異なる非摂動準位から磁場による摂動のために分裂して派生したエネルギー準位が混じるようになるので,もはや摂動として扱うのが正しくなくなります。

 

そこで,これにはより一般的な扱いが必要で,外磁場が強くてそれと比較してスピン・軌道相互作用が無視できる近似が可能になります。

 

それ故,はもはやとして一体になって外磁場と結び付くのではなく,それぞれ勝手にと結び付くようになります。この場合にも全角運動量自身ではなく,の磁場の方向成分であるz成分はよい量子数になります。

 

例えば,L=1のP状態の近傍ではML=1,0,-1,Ms=1/2,-1/2の組み合わせでMJ=3/2,1/2,-1/2,-3/2の4通りが可能です。

 

しかし,光の吸収・放出,特に光学的許容遷移と呼ばれる主要な遷移ではΔMs=0 ですからMLの変化だけを考えればよいので強磁場では正常ゼーマン効果のみが現われるようになります。

 

こうした異常Zeeman効果が現われる弱磁場から正常Zeeman効果を示す強磁場へのスペクトル構造の変化はPaschen-Back effect(パッシェン-バック効果)と呼ばれています。

 

磁場がさらに強くなり原子内のCoulomb力を凌ぐ程度になると,電子軌道関数はもはや外場がないときと著しく異なるようになる,と予想されます。

 

したがって,摂動ではなく最初から外場を含む原子状態を考察する必要があると思われます。

 

外磁場を極めて強い一様磁場とし,その方向をz方向とします。

 

この中に電子を置くとz方向には力は働かず自由粒子と同じです。

 

x,y方向ではよく知られた円運動になり,全体としては螺旋運動をすることになります。そして,その振動数はω=eB/mですが,これはサイクロトロン振動数(Cyclotron frequency)と呼ばれています。

 

量子論ではこの円運動に相当するものが量子化されて,エネルギーとして離散的な許容値を取るような状態のみが許されるようになります。

 

つまり,エネルギー許容値はE=(K+1/2)hcω+pz2/(2me);K=0,1,2,..なる半離散的な表現で与えられます。

 

これの右辺第2項はz方向の自由運動のエネルギーを表わし,これは連続な正の値を取ります。

 

このエネルギー準位の表式はLandau(ランダウ)エネルギー準位と呼ばれているものです。

 

これらに対応した状態の波動関数は陽に解くことができて,円筒座標ρ,φ,zを用いると,それらの関数形はラゲール多項式などによって具体的に表現可能ですが,煩雑なのでここでは割愛します。

 

そして,同時にエネルギーのLandau準位もより具体的に書くことができますが,こちらは陽に書くとE=(N+M/2+|M|/2+geσz/2+1/2)hcω+pz2/(2me)です。

 

先に与えた式のKに相当するのは,N+M/2+|M|/2 です。また,σzはパウリのスピン行列のz成分で,スピンの向きによるエネルギー差を表わすものです。

 

これ以上の話は極端に強い磁場での原子定常状態について実際に複雑な方程式を解く必要がありますが,これは簡単ではないのでここでは話を限定して,いわゆる断熱近似による水素原子についての記述のみを見ることにします。

 

一般に複数の自由度を持つ力学系において,ある自由度の運動が他の自由度の運動と比べて極端に速いとき,まず他の自由度は固定して速い運動をする自由度についてのみ解くことがよくあります。

  

こうした近似を断熱近似といいます。

 

外磁場があるとき,電子1個の系である水素原子のHamiltonianは,

 

={-hc2/(2me)}{(∂2/∂ρ2)+(1/2)(∂/∂ρ)

+(1/ρ2)(∂2/∂φ2)+(∂2/∂z2)}

+{eB/(2me)}(lz+geσz)+e22ρ2/(8me)

-e2/{4πε0((ρ2+z2)1/2} 

 

です。

 

さらに,磁場に比べてCoulomb力がはるかに弱いとして,右辺最後の項を無視する近似を行ないます。

 

すると,これは何のことはない,外場の中の自由電子の運動に帰着しますから,結果はLandau軌道になります。

 

z=一定の平面内の運動なら,そのエネルギー準位はENM=(N+M/2+|M|/2+geσz/2+1/2)hcωで与えられます。

 

ただし,原子単位ではhcω=B(tesla)/(2.35×105)です。

 

一応これでZeeman効果については終わりにします。 

参考文献:高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店)

 

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2008年4月 5日 (土)

磁場の中の原子(ゼーマン効果)(1)

化学結合関連のシリーズ記事は,今年初めの2008年1/6の記事「氷,水,水蒸気の比熱」から動機付けされて,始めたものです。

 

そして,分子を語るにはその前にとりあえず原子からということで,1/11の「水素様原子の波動関数」,続いて1/13の「量子力学の変分原理」,1/15の「多電子原子の構造」と書き進みました。

 

さらに,1/19,1/21,1/23の「多原子系の方法論(分子軌道)(1),,(2),(3)」,1/26の「水素分子イオンと水素分子」,1/29の「水素分子イオンと水素分子(補遺)」と記事が続いて1月中は割りとマメに書いて理論としての順序もオーソドックスなものでした。

しかし,2月に入って2/5の記事「2原子分子イオン再考」の頃から分子の定性的構造主体の話に飽きたらず,その数学的な基礎付けが気になってやや脱線し始め,またモチベーションの維持も怪しくなって,この後は3月に入ってしまいました。

 

そして個人的には引越しなどもあって,この関連の最新記事3/12の「一般の2原子分子(等核,異核)」を書くためのの準備とするために3/5に原子に関する記事「電場の中の原子(シュタルク効果)」を書く,という状態になって,それからは結局,遅々として進まず,とうとう4月にまで突入してしまいました。

 

しかし「氷,水,水蒸気の比熱」の続編である「氷,水,水蒸気の比熱(2)」etc.を書きたい,という当初の目的意識は変わっていません。

しかし今日は脱線ついでに,せっかく「電場の中の原子(シュタルク効果)」を書いたので「磁場の中の原子(ゼーマン効果)」をも書いておこうと思います。

 

一般に原子は永久電気双極子モーメントを持たないので,水素様原子を除けば電場の中に物体を置いてもその影響,すなわち,Stark(シュタルク)効果は,摂動の2次以上でしか現われません。

 

これに反して,磁気双極子モーメントを持つ原子は珍らしくないので,磁場をかけるとその影響は摂動の1次で現われて,つまり1次の摂動でエネルギーの縮退が解けて輻射されるスペクトル線の分裂として観測されます。

 

これを,ゼーマン効果(Zeeman effect)と呼びます。

一様磁場があるとして,"それ=磁束密度"をとすると,これはベクトルポテンシャルによって=∇×と表わされます。

 

が一様なので,この関係を満たすの具体的な形としては位置ベクトルをとして=(1/2)×なる表式を採用することができます。

 

そして,これは特にの向きをz方向に選び,B≡||とすると,=(-yB/2,xB/2,0)と書けます。

電子の電荷を-e,質量をmeとし,原子の系を原子核の中心力による電子の1体問題と考え,その位置エネルギーを-eV(r)と書けば,外場の存在しない場合の系のHamiltonian0は,02/(2me)-eV(r)={-hc2/(2me)}∇2-eV(r)です。

 

ここでhc≡h/(2π)はPlanck定数でmeは電子の換算質量です。

定常状態の波動関数をψ()とすれば,それに対するSchrödingerの波動方程式は,0ψ=Eψ,

 

すなわち[{-hc2/(2me)}∇2-eV(r)]ψ()=Eψ()です。

 

そして,電子に限らず荷電粒子に対する方程式を,外場としてのベクトルポテンシャル()が存在する場合に変更するには,

 

粒子の電荷がqのときは,これに対する極小相互作用変換(minimal couplimg):-qを実行すればいいことがわかっています。

 

今の電子の場合には,操作:-qにおいて,q=-eとすればいいことになります。

こう変換すれば,系のHamiltonianは0(+e)2/(2me)-eV=(-ihc∇+e)2/(2me)-eVとなります。

 

そこで,磁場がある場合のSchrödinger方程式は, 

{-hc22/(2me)-iehc/me+e22/(2me)-eV}ψ=Eψ となります。

 

ここで,=(1/2)×により∇=0 となることを用いました。

左辺の第2項は,-iehc/me{e/(2me)}(×)(-ihc)={e/(2me)}{(×)}={e/(2me)}{(×)}={e/(2me)}(hclB)と書けます。

 

ここで(lx,ly,lz)は方位量子数,あるいは角運動量量子数で,=hcは軌道角運動量ベクトルを表わします。 

ところで,電子の磁気双極子モーメントをとすると,それが磁場の中にあるときには相互作用エネルギーは,-で与えられるはずですから,

 

上の磁場の1次の相互作用エネルギー項:(-iehc/me)は,このMBに等しいと同定される必要があります。

そして,軌道に関わる磁気双極子モーメントを特にlと書けば,それによる相互作用エネルギーは,liehc/me{iehc/(2me)}(B×r)∇={ehc/(2me)}(lB)です。

  

故に,l=-μB,μBehc/(2me)と書いてよいことになります。

 

ここでμBはボーア磁子(Bohr magneton)と呼ばれる定数です。

 

実際,古典論でも電子は電荷-eを持つので電子が周期運動をする場合の軌道電流によって生じる磁気モーメントlは,軌道角運動量に対してl={-e/(2e)}なる式で与えられますから,理にかなっています。 

そして磁場が比較的弱い場合を考えての2次の項e22/(2me)ψ()を無視する近似をします。

 

ところで電子には軌道角運動量=hcのほかにスピン角運動量=hcがあることが知られています。

 

Pauli(パウリ),およびGoudsmit(ガウシュミット),Uhlenbeck(ウーレンベック)に始まるスピン概念に基づく電子のスピン角運動量=hcは,Pauli行列σを用いて,σ/2,あるいは=hc(hc/2)σと行列表現されます。

 

このとスピン磁気モーメントsの関係は,上述の古典論から推察される軌道角運動量のそれ:l=-μBとは異なり,

 

磁気回転比(gyromagnetic-ratio),またはLande(ランデ)のg因子と呼ばれる余分な因子geを持っていて,s=-geμB =-2μBで与えられることがわかっています。 

このge2の因子が存在する理論的根拠については私の過去のブログ記事,2006年9/8の「パウリのスピンと相対性理論で次のように書いています。

 

Pauliの導入したスピンという概念は,Dirac方程式という量子論の相対論的波動方程式が導入されて初めてその意味が明らかになったのは歴史的には恐らくその通りであろうと思います。

 

しかし,これは決して相対論的効果であるというわけではなく,非相対論でも電子などのFermi粒子が2成分のスピノルで記述されることを意識すれば得られる概念であると思われます。

実際,まず,非相対論での"運動エネルギー=自由粒子の全エネルギー"を示すHamiltonian:2/(2m)を,これと全く同値な表現の式:

=(σp)2/(2m)に書き換えて,

 

その後,電磁場がある場合の通常の手続きに従い,極小相互作用変換:

-q,H→H-qVを施して,

 

={σ(-q)}2/(2m)+qVと変換すれば,

2/(2m)-(qhc/2m)(σB)+q22/(2m)+qV

となります。

 

こうして,自然にPauli項:-(qhc/2m)(σB)が得られます。

そして,この項において1体問題の対象粒子を電子としてq=-e,m=me,かつσ=2と置けば,-(qhc/2m)(σB){ehc/(2me)}(σB)(ehc/me)(sB)=-{(2μB)}となります。

 

これは,確かに電子の磁気モーメントがs=-2μB=-μBσのときの磁場と磁気モーメントの相互作用:sに一致します。 

もっとも実際の電子の磁気回転比geの値が正確に2に一致するというわけではなく,現時点ではge2.0023193044という微妙に異なる実測値が得られています。

 

現実の電子は絶えず仮想的に"光子=電磁波"の輻射と吸収を繰り返している存在であるという効果を考慮して輻射補正を行なう,

 

つまり,量子電磁力学(QED)の"くりこみ"を行なうと,その結果,お釣りの項として得られる"異常磁気モーメント"として知られています。

この異常磁気モーメントへの最低次の摂動項の寄与なら,私も学生時代に計算をしたことがありますが,これは元の素朴な値に対してα/(2π)なる比率で与えられることがわかります。

 

この項は,発見者の名を取ってSchwinger(シュヴィンガー)項と呼ばれています。

 

そこで最低次の摂動までなら,ge2{1+α/(2π)}と近似されます。

 

ここで無次元の定数α≡e2/(4πε0c)~1/137.03599は微細構造定数と呼ばれている値ですが,これを代入すると,ge2×1.0011614=2.0023228ですから,最低次の近似でも実測値 2.0023193044との著しい一致が見られます。

まあ,余談はさておき,この他にさらにスピン軌道相互作用項:

(L-S coupling)として,

 

{e/(2me2)}(dV/dr)(LS)

={ehc2/ (2me2)}(dV/dr)(ls)

{ehc2/(4me2)}(dV/dr)(lσ)

  

もあります。

 

こちらの方は,明らかに相対論的効果です。

 

特殊相対論によれば,磁場の他に電場:=-∇V

=-(/r)(dV/dr)がある場合には,

 

速度で運動する荷電粒子の体験する磁場はではなく,粒子に対してが-で運動する効果から生じる磁場との重ね合わせです。

 

v=||がcに対して十分微小なときの近似では,有効磁場は,

-(×)/c2となります。 

粒子の感じる実質的な磁場は,(×)/c2

(×)/(e2)なので,

 

荷電粒子が電子の場合のPauli項は,{ehc/(2me)}(σ)

{ehc/(2me)}(σ)+{ehc/(2me22)}{σ(×)}

と変換されます。

 

そして,右辺最後の余分な項{ehc/(2me22)}{σ(×)}は,

σ(×)=-(1/r)(dV/dr){σ(×)}

=-(1/r)(dV/dr)(σL)によって,

 

{ehc/(2me22)}{σ(×)}

=-{e/(me22)}(dV/dr)(LS)

=-{ehc2/(2me22)}(dV/dr)(lσ) 

 

となります。

しかし,これは実際のスピン軌道相互作用項:

{e/(2me22)}(dV/dr)(LS)

={ehc2/(4me22)}(dV/dr)(lσ)

 

と比較して因子2だけ大きく見積もられている違いがあります。

 

つまり,これは磁場+(×)/c2に対するPauli項を,

e(1)μBsBe(2)μB/(me2)(dV/dr)(ls)

と表現するとき,

 

第1項のスピン項での磁気回転比ge(1)が2 であるのに対して,

 

第2項のe(2)μBc/(me2)(dV/dr)(ls)

e(2)μB/(me2)(dV/dr)(Ls)でのそれは,

e(2)=1であることを意味します。 

これには,相対論におけるThomas(トーマス)の歳差運動が関係していると思われます。

 

非相対論では直交座標軸の回転を伴わない2つのGalilei変換の合成によって,ある慣性系から別の慣性系に移っても,もちろん座標軸の回転は生じません。

 

しかし,特殊相対論では"座標軸の回転を伴なわない相対運動=ブースト(boost)"のLorentz変換の連続であっても,2つ以上の変換の合成は直交軸の回転を伴なうことがわかっています。

すなわち,S系に対するS'系の速度をとしたときのLorentz変換:

(,t) → (',t')は,

 

'={(xu)(γ-1)/u2-γt},

t'=γ{t-(xu)/c2}

ただし,γ≡(1-u2/c2)-1/2 です。

 

さらにS'系に対するS"系の速度を'としたときのLorentz変換:

(',t') → (",t")は

 

"='+'{('')(γ'-1)/u'2-γ't'},

t"=γ{t'-('')/c2} ;γ'≡(1-u'2/c2)-1/2 

 

です。

 

これらから(',t')を消去すれば,

 

"=-1"{(xw)(γ"-1)/w2-γ"t},

t"=γ"{t-(xw)/c2};γ"≡(1-w2/c2)-1/2

 

なる変換となり,やはりLorentz変換ですが演算子が一般に単位演算子ではないので軸の回転が生じます。

 

ここではSに対するS"の速度,"はS"に対するSの速度です。

=['/γ+{(')(1-1/γ)/u21}]/{1+(')/c2},

"=-[/γ'+'{(')(1-1/γ')/u'21}]/{1

+(')/c2}

 

と書けるわけです。

さらに,S'系に対するS"系の変換が無限小変換,つまり'が無限小のとき,'の2次以上は無視できて,(',t')→(",t")は,

 

"='-'t',t"=t'-('')/c2 となり, 

また,(1/γ){'+(')(1/γ-1)/u2},

"=-{'-(uu')/c2} 

 

となります。

 

これらの大きさは等しく,2"2=u22(uu')/γ2

です。 

これに,(,t)→(',t')の

 

'={(xu)(γ-1)/u2-γt},

t'=γ{t-(xu)/c2}を代入すれば,

 

長い計算の結果として, 

-1{(γ-1)/u2}{(×d}

を得ます。ここで,dです。

 

それ故,こうした座標系の変換のために,系の位置座標が変換を受けるという受動的な表現ではなくて,座標系を不変に保って系自身が移動するという能動的な表現では,

 

+(Ω×),Ω=-{(γ-1)/u2}{(×d) 

となります。

したがって,回転演算子は軸の方向がベクトルΩの方向に等しく,回転角がΩの絶対値|Ω|に等しい無限小回転を表わしています。

ここで仮想的に大きさを持たない点状のコマですが,何らかの方法で回転軸の方向を定義できる質点,あるいは粒子の存在を想定します。

 

スピン(自転)を有する古典的電子はこうした点状のコマと考えることができます。

 

そして,ある準拠系Sに対する質点粒子の速度を(t)とした,

+(Ω×),Ω=-{(γ-1)/v2}{(×d)

なる表現において,

 

=(d/dt)dtと考えれば,S',S"系というのはそれぞれ時刻t,t+dtにおいて粒子が瞬間的に静止している慣性系であると解釈することができます。

そして,SからS"への変換は回転を伴なわず,しかも無限小変換ですから,粒子に作用する力がコマにトルクを及ぼすようなものでない限り,コマが時刻t+dtにS"系の座標軸に対して示す方向は時刻tにS'系の座標軸に対して示す方向と同じとみなすのが自然です。

実際に,d(d/dt)dtをΩ=-{(γ-1)/v2}{(×d)に代入すると,

 

このときの回転ベクトルΩは時刻t+dtにS"系でのコマが時刻tにS'系で有するのと同じ向きを有するために,S系において行なうべき回転を示しています。

 

よって,Ωωdtと書けば,"加速度運動をしている粒子=コマ"はS系に対して角速度ω=-{(γ-1)/v2}{×(d/dt)}で歳差運動を行なうと解釈されます。

 

さらに,v<<cの場合はω~-{×(d/dt)}/(2c2)です。

  

これをトーマスの歳差運動(Thomas' precession)と呼びます。

   

※下図はスピンという意味ではなく古典的軌道運動として電荷eの荷電粒子が描く歳差運動の例です。

 

   

 

さて,Thomasの歳差運動の角運動量への寄与を求めてみます。

 

粒子のスピンなどの運動が理想的に等速円運動であるとしても一般性を失わないと思われるので,これを仮定し,この運動の角速度をω0とすれば

  

=-v(/r)dθ,つまり/dt=-v(/r)ω0より,

×(d/dt)=-v2ω0です。

 

ただし,ここではγ≡(1-r2ω02/c2)-1/2 です。

 

そこで,Thomas歳差運動の角速度:

ω=-{(γ-1)/v2}{×(d/dt)}を回転運動の1周期:

T=2π/ω0にわたって積分して1平面内での回転角を求めると,

 

0Tωdt=-(γ-1)∫0T[{×(d/dt)}/v2]dt

=2π(γ-1) 

 

となります。

 

つまり,Thomas歳差運動は回転運動の1周期当りに,軸のまわりに角度2π(γ-1)の軸の回転を与えます。

 

したがって,一般に粒子の角運動量がで与えられる場合,粒子はThomas歳差運動のおかげで1周期の間に通常の2π回転の他にさらに2π(γ-1)の寄与を受けるため,実質的な角運動量はではなく,