磁場の中の原子(ゼーマン効果)(1)
化学結合関連のシリーズ記事は,今年初めの2008年1/6の記事「氷,水,水蒸気の比熱」から動機付けされて,始めたものです。
そして,分子を語るにはその前にとりあえず原子からということで,1/11の「水素様原子の波動関数」,続いて1/13の「量子力学の変分原理」,1/15の「多電子原子の構造」と書き進みました。
さらに,1/19,1/21,1/23の「多原子系の方法論(分子軌道)(1),,(2),(3)」,1/26の「水素分子イオンと水素分子」,1/29の「水素分子イオンと水素分子(補遺)」と記事が続いて1月中は割りとマメに書いて理論としての順序もオーソドックスなものでした。
しかし,2月に入って2/5の記事「2原子分子イオン再考」の頃から分子の定性的構造主体の話に飽きたらず,その数学的な基礎付けが気になってやや脱線し始め,またモチベーションの維持も怪しくなって,この後は3月に入ってしまいました。
そして個人的には引越しなどもあって,この関連の最新記事3/12の「一般の2原子分子(等核,異核)」を書くためのの準備とするために3/5に原子に関する記事「電場の中の原子(シュタルク効果)」を書く,という状態になって,それからは結局,遅々として進まず,とうとう4月にまで突入してしまいました。
しかし「氷,水,水蒸気の比熱」の続編である「氷,水,水蒸気の比熱(2)」etc.を書きたい,という当初の目的意識は変わっていません。
しかし今日は脱線ついでに,せっかく「電場の中の原子(シュタルク効果)」を書いたので「磁場の中の原子(ゼーマン効果)」をも書いておこうと思います。
一般に原子は永久電気双極子モーメントを持たないので,水素様原子を除けば電場の中に物体を置いてもその影響,すなわち,Stark(シュタルク)効果は,摂動の2次以上でしか現われません。
これに反して,磁気双極子モーメントを持つ原子は珍らしくないので,磁場をかけるとその影響は摂動の1次で現われて,つまり1次の摂動でエネルギーの縮退が解けて輻射されるスペクトル線の分裂として観測されます。
これを,ゼーマン効果(Zeeman effect)と呼びます。
一様磁場があるとして,"それ=磁束密度"をBとすると,これはベクトルポテンシャルAによってB=∇×Aと表わされます。
Bが一様なので,この関係を満たすAの具体的な形としては位置ベクトルをrとしてA=(1/2)B×rなる表式を採用することができます。
そして,これは特にBの向きをz方向に選び,B≡|B|とすると,A=(-yB/2,xB/2,0)と書けます。
電子の電荷を-e,質量をmeとし,原子の系を原子核の中心力による電子の1体問題と考え,その位置エネルギーを-eV(r)と書けば,外場の存在しない場合の系のHamiltonianH0は,H0=p2/(2me)-eV(r)={-hc2/(2me)}∇2-eV(r)です。
ここでhc≡h/(2π)はPlanck定数でmeは電子の換算質量です。
定常状態の波動関数をψ(r)とすれば,それに対するSchrödingerの波動方程式は,H0ψ=Eψ,
すなわち[{-hc2/(2me)}∇2-eV(r)]ψ(r)=Eψ(r)です。
そして,電子に限らず荷電粒子に対する方程式を,外場としてのベクトルポテンシャルA(r)が存在する場合に変更するには,
粒子の電荷がqのときは,これに対する極小相互作用変換(minimal couplimg):p→p-qAを実行すればいいことがわかっています。
今の電子の場合には,操作:p→p-qAにおいて,q=-eとすればいいことになります。
こう変換すれば,系のHamiltonianはH0→H=(p+eA)2/(2me)-eV=(-ihc∇+eA)2/(2me)-eVとなります。
そこで,磁場がある場合のSchrödinger方程式は,
{-hc2∇2/(2me)-iehcA∇/me+e2A2/(2me)-eV}ψ=Eψ となります。
ここで,A=(1/2)B×rにより∇A=0 となることを用いました。
左辺の第2項は,-iehcA∇/me={e/(2me)}(B×r)(-ihc∇)={e/(2me)}{(B×r)p}={e/(2me)}{(r×p)B}={e/(2me)}(hclB)と書けます。
ここでl=(lx,ly,lz)は方位量子数,あるいは角運動量量子数で,L=hclは軌道角運動量ベクトルを表わします。
ところで,電子の磁気双極子モーメントをMとすると,それが磁場Bの中にあるときには相互作用エネルギーは,-MBで与えられるはずですから,
上の磁場の1次の相互作用エネルギー項:(-iehcA∇/me)は,この-MBに等しいと同定される必要があります。
そして,軌道に関わる磁気双極子モーメントを特にMlと書けば,それによる相互作用エネルギーは,-MlB=-iehcA∇/me={-iehc/(2me)}(B×r)∇={ehc/(2me)}(lB)です。
故に,Ml=-μBl,μB≡ehc/(2me)と書いてよいことになります。
ここでμBはボーア磁子(Bohr magneton)と呼ばれる定数です。
実際,古典論でも電子は電荷-eを持つので電子が周期運動をする場合の軌道電流によって生じる磁気モーメントMlは,軌道角運動量Lに対してMl={-e/(2me)}Lなる式で与えられますから,理にかなっています。
そして磁場が比較的弱い場合を考えてAの2次の項e2A2/(2me)ψ(r)を無視する近似をします。
ところで電子には軌道角運動量L=hclのほかにスピン角運動量S=hcsがあることが知られています。
Pauli(パウリ),およびGoudsmit(ガウシュミット),Uhlenbeck(ウーレンベック)に始まるスピン概念に基づく電子のスピン角運動量S=hcsは,Pauli行列σを用いて,s=σ/2,あるいはS=hcs=(hc/2)σと行列表現されます。
このsとスピン磁気モーメントMsの関係は,上述の古典論から推察される軌道角運動量のそれ:Ml=-μBlとは異なり,
磁気回転比(gyromagnetic-ratio),またはLande(ランデ)のg因子と呼ばれる余分な因子ge=2を持っていて,Ms=-geμB s=-2μBsで与えられることがわかっています。
このge=2の因子が存在する理論的根拠については私の過去のブログ記事,2006年9/8の「パウリのスピンと相対性理論」で次のように書いています。
Pauliの導入したスピンという概念は,Dirac方程式という量子論の相対論的波動方程式が導入されて初めてその意味が明らかになったのは歴史的には恐らくその通りであろうと思います。
しかし,これは決して相対論的効果であるというわけではなく,非相対論でも電子などのFermi粒子が2成分のスピノルで記述されることを意識すれば得られる概念であると思われます。
実際,まず,非相対論での"運動エネルギー=自由粒子の全エネルギー"を示すHamiltonian:H=p2/(2m)を,これと全く同値な表現の式:
H=(σp)2/(2m)に書き換えて,
その後,電磁場がある場合の通常の手続きに従い,極小相互作用変換:
p→p-qA,H→H-qVを施して,
H={σ(p-qA)}2/(2m)+qVと変換すれば,
H=p2/(2m)-(qhc/2m)(σB)+q2A2/(2m)+qV
となります。
こうして,自然にPauli項:-(qhc/2m)(σB)が得られます。
そして,この項において1体問題の対象粒子を電子としてq=-e,m=me,かつσ=2sと置けば,-(qhc/2m)(σB)は{ehc/(2me)}(σB)=(ehc/me)(sB)=-{(-2μBs)B}となります。
これは,確かに電子の磁気モーメントがMs=-2μBs=-μBσのときの磁場と磁気モーメントの相互作用:-MsBに一致します。
もっとも実際の電子の磁気回転比geの値が正確に2に一致するというわけではなく,現時点ではge=2.0023193044という微妙に異なる実測値が得られています。
現実の電子は絶えず仮想的に"光子=電磁波"の輻射と吸収を繰り返している存在であるという効果を考慮して輻射補正を行なう,
つまり,量子電磁力学(QED)の"くりこみ"を行なうと,その結果,お釣りの項として得られる"異常磁気モーメント"として知られています。
この異常磁気モーメントへの最低次の摂動項の寄与なら,私も学生時代に計算をしたことがありますが,これは元の素朴な値に対してα/(2π)なる比率で与えられることがわかります。
この項は,発見者の名を取ってSchwinger(シュヴィンガー)項と呼ばれています。
そこで最低次の摂動までなら,ge~2{1+α/(2π)}と近似されます。
ここで無次元の定数α≡e2/(4πε0hcc)~1/137.03599は微細構造定数と呼ばれている値ですが,これを代入すると,ge~ 2×1.0011614=2.0023228ですから,最低次の近似でも実測値 2.0023193044との著しい一致が見られます。
まあ,余談はさておき,この他にさらにスピン軌道相互作用項:
(L-S coupling)として,
{e/(2mec2r)}(dV/dr)(LS)
={ehc2/ (2mec2r)}(dV/dr)(ls)
={ehc2/(4mec2r)}(dV/dr)(lσ)
もあります。
こちらの方は,明らかに相対論的効果です。
特殊相対論によれば,磁場Bの他に電場:E=-∇V
=-(r/r)(dV/dr)がある場合には,
速度vで運動する荷電粒子の体験する磁場はBではなく,粒子に対してEが-vで運動する効果から生じる磁場との重ね合わせです。
v=|v|がcに対して十分微小なときの近似では,有効磁場は,
B-(v×E)/c2となります。
粒子の感じる実質的な磁場は,B→ B+(E×v)/c2
=B+(E×p)/(mec2)なので,
荷電粒子が電子の場合のPauli項は,{ehc/(2me)}(σB) →
{ehc/(2me)}(σB)+{ehc/(2me2c2)}{σ(E×p)}
と変換されます。
そして,右辺最後の余分な項{ehc/(2me2c2)}{σ(E×p)}は,
σ(E×p)=-(1/r)(dV/dr){σ(r×p)}
=-(1/r)(dV/dr)(σL)によって,
{ehc/(2me2c2)}{σ(E×p)}
=-{e/(me2c2r)}(dV/dr)(LS)
=-{ehc2/(2me2c2r)}(dV/dr)(lσ)
となります。
しかし,これは実際のスピン軌道相互作用項:
{e/(2me2c2r)}(dV/dr)(LS)
={ehc2/(4me2c2r)}(dV/dr)(lσ)
と比較して因子2だけ大きく見積もられている違いがあります。
つまり,これは磁場B→B+(E×v)/c2に対するPauli項を,
ge(1)μBsB+ge(2)μB/(mec2r)(dV/dr)(ls)
と表現するとき,
第1項のスピン項での磁気回転比ge(1)が2 であるのに対して,
第2項のge(2)μBhc/(mec2r)(dV/dr)(ls)
=ge(2)μB/(mec2r)(dV/dr)(Ls)でのそれは,
ge(2)=1であることを意味します。
これには,相対論におけるThomas(トーマス)の歳差運動が関係していると思われます。
非相対論では直交座標軸の回転を伴わない2つのGalilei変換の合成によって,ある慣性系から別の慣性系に移っても,もちろん座標軸の回転は生じません。
しかし,特殊相対論では"座標軸の回転を伴なわない相対運動=ブースト(boost)"のLorentz変換の連続であっても,2つ以上の変換の合成は直交軸の回転を伴なうことがわかっています。
すなわち,S系に対するS'系の速度をuとしたときのLorentz変換:
(x,t) → (x',t')は,
x'=x+u{(xu)(γ-1)/u2-γt},
t'=γ{t-(xu)/c2}
ただし,γ≡(1-u2/c2)-1/2 です。
さらにS'系に対するS"系の速度をu'としたときのLorentz変換:
(x',t') → (x",t")は
x"=x'+u'{(x'u')(γ'-1)/u'2-γ't'},
t"=γ{t'-(x'u')/c2} ;γ'≡(1-u'2/c2)-1/2
です。
これらから(x',t')を消去すれば,
x"=D-1x-w"{(xw)(γ"-1)/w2-γ"t},
t"=γ"{t-(xw)/c2};γ"≡(1-w2/c2)-1/2
なる変換となり,やはりLorentz変換ですが演算子D が一般に単位演算子ではないので軸の回転が生じます。
ここでwはSに対するS"の速度,w"はS"に対するSの速度です。
w=[u'/γ+u{(u'u)(1-1/γ)/u2+1}]/{1+(u'u)/c2},
w"=-[u/γ'+u'{(u'u)(1-1/γ')/u'2+1}]/{1
+(u'u)/c2}
と書けるわけです。
さらに,S'系に対するS"系の変換が無限小変換,つまりu'が無限小のとき,u'の2次以上は無視できて,(x',t')→(x",t")は,
x"=x'-u't',t"=t'-(x'u')/c2 となり,
また,w=u+(1/γ){u'+u(u'u)(1/γ-1)/u2},
w"=-{u+u'-u(uu')/c2}
となります。
これらの大きさは等しく,w2=w"2=u2+2(uu')/γ2
です。
これに,(x,t)→(x',t')の
x'=x+u{(xu)(γ-1)/u2-γt},
t'=γ{t-(xu)/c2}を代入すれば,
長い計算の結果として,
D-1x=x+{(γ-1)/u2}{(u×du)×x}
を得ます。ここで,du=w-uです。
それ故,こうした座標系の変換のために,系の位置座標が変換を受けるという受動的な表現ではなくて,座標系を不変に保って系自身が移動するという能動的な表現では,
Dx=x+(Ω×x),Ω=-{(γ-1)/u2}{(u×du)
となります。
したがって,回転演算子Dは軸の方向がベクトルΩの方向に等しく,回転角がΩの絶対値|Ω|に等しい無限小回転を表わしています。
ここで仮想的に大きさを持たない点状のコマですが,何らかの方法で回転軸の方向を定義できる質点,あるいは粒子の存在を想定します。
スピン(自転)を有する古典的電子はこうした点状のコマと考えることができます。
そして,ある準拠系Sに対する質点粒子の速度をv=v(t)とした,
Dx=x+(Ω×x),Ω=-{(γ-1)/v2}{(v×dv)
なる表現において,
dv=(dv/dt)dtと考えれば,S',S"系というのはそれぞれ時刻t,t+dtにおいて粒子が瞬間的に静止している慣性系であると解釈することができます。
そして,SからS"への変換は回転を伴なわず,しかも無限小変換ですから,粒子に作用する力がコマにトルクを及ぼすようなものでない限り,コマが時刻t+dtにS"系の座標軸に対して示す方向は時刻tにS'系の座標軸に対して示す方向と同じとみなすのが自然です。
実際に,dv=(dv/dt)dtをΩ=-{(γ-1)/v2}{(v×dv)に代入すると,
このときの回転ベクトルΩは時刻t+dtにS"系でのコマが時刻tにS'系で有するのと同じ向きを有するために,S系において行なうべき回転を示しています。
よって,Ω=ωdtと書けば,"加速度運動をしている粒子=コマ"はS系に対して角速度ω=-{(γ-1)/v2}{v×(dv/dt)}で歳差運動を行なうと解釈されます。
さらに,v<<cの場合はω~-{v×(dv/dt)}/(2c2)です。
これをトーマスの歳差運動(Thomas' precession)と呼びます。
※下図はスピンという意味ではなく古典的軌道運動として電荷eの荷電粒子が描く歳差運動の例です。
※
さて,Thomasの歳差運動の角運動量への寄与を求めてみます。
粒子のスピンなどの運動が理想的に等速円運動であるとしても一般性を失わないと思われるので,これを仮定し,この運動の角速度をω0とすれば
dv=-v(r/r)dθ,つまりdv/dt=-v(r/r)ω0より,
v×(dv/dt)=-v2ω0です。
ただし,ここではγ≡(1-r2ω02/c2)-1/2 です。
そこで,Thomas歳差運動の角速度:
ω=-{(γ-1)/v2}{v×(dv/dt)}を回転運動の1周期:
T=2π/ω0にわたって積分して1平面内での回転角を求めると,
∫0Tωdt=-(γ-1)∫0T[{v×(dv/dt)}/v2]dt
=2π(γ-1)
となります。
つまり,Thomas歳差運動は回転運動の1周期当りに,軸のまわりに角度2π(γ-1)の軸の回転を与えます。
したがって,一般に粒子の角運動量がJで与えられる場合,粒子はThomas歳差運動のおかげで1周期の間に通常の2π回転の他にさらに2π(γ-1)の寄与を受けるため,実質的な角運動量はJではなく,
{1+(γ-1)}J=γJ=(1-v2/c2)-1/2J
になると考えられます。
そして,このときのγが磁気回転比geに相当すると思われます。
Jが軌道角運動量Lなら軌道運動の速度:v=rω0は光速cに比べて無視できるので,ge=(1-v2/c2)-1/2 ~1ですが,
Jがスピン角運動量Sなら,スピン運動の速度v=rω0は非常に大きく磁気回転比はge =(1-v2/c2)-1/2 ~2 となるはずですから,r~ 0 でのスピン運動の速度は,v=rω0=(√3/2)cに相当します。
実際には,上のような物理的考察を介さずとも量子論では,輻射補正を除けば厳密な相対論的量子力学を表現する初期の形の素朴な電子のDirac方程式:
ihc(∂ψ/∂t)=Hψ,H=cα(p+eA+βmec2-eV)
に非相対論的近似を行なえば,これらの項は得られます。
すなわち,Dirac方程式の正エネルギー解:ψ≡t(φ,χ)の大成分φと小成分χを関係付けるαのようなあらゆる演算子を除去してしまうユニタリ変換:UF≡eiSの存在を仮定した理論を変えない相似変換:
ψ'≡eiSψ,H'≡eiSHe-iSを適用します。
これにより,ihc(∂ψ'/∂t)=H'ψ'と変形されて,ψ'の大成分φ'に関する非相対論近似の方程式,またはHamiltonianを求める変換を利用すれば,求める項は全て自動的に出てきます。
こうした非相対論的近似に適したユニタリ変換をFoldy-Wouthuysen変換(フォールディ・ウウトホイゼン変換)と呼びます。
この変換による展開の低次の近似は,
H'~β[mec2+(p+eA)2/(2me)-p4/(8me3c2)]-eV
+β{ehc/(2me)}(σB)+{iehc/(8me2c2)}{σ(rotE)}
+{ehc/(4me2c2)}{σ(E×p)}+{ehc/(8me2c2)}(divE)
となります。
原子核によるCoulomb相互作用を表わす中心力場:
V=V(r)=Ze/(4πε0r)では,電場はE=-∇V
=-(r/r)(dV/dr)で,これについてはrotE=0 であり,
H'~β[mec2+(p+eA)2/(2me)-p4/(8me3c2)]-eV
+β{ehc/(2me)}(σB)+{ehc/(4me2c2r)}(σL)}
+{ehc/(8me2)}(divE)
となります。
ここで,βは4×4の対角行列で,これはψの大成分φに対しては+1,小成分χに対しては-1の因子を掛ける作用を行なう行列演算子です。
上式の最後の項{ehc/(8me2)}(divE)はDarwin項として知られており,謂わゆるZitterbewegung(ツィッターベベーグング=ジグザグ運動)に寄与する項です。
ただし,これは非相対論的近似を問題にする際には,非常に微小な項で,ほとんど興味がないのでここではこれ以上の説明はしません。
現実的な非相対論近似として磁場の2次以上の項やp4に比例する項,Darwin項を無視し整理すると,1電子系の非相対論的波動方程式は
[{-hc2/(2me)}∇2+μB{(l+2s)B}+{μB /mec2r)}(dV/dr)(ls)-eV(r)]φ(r)=Eφ(r)
と書けます。
また,多電子系,例えば2電子系では,
[{-hc2/(2me)}(∇12+∇22)+μB{(l1+l2)+2(s1+s2)}B
+{μB /mec2r1)}(dV/dr1)(l1s1)
+{μB /mec2r2)}(dV/dr2)(l2s2)-eV(r1)-eV(r2)
+e2/(4πε0r12)]φ(r1,r2)
=Eφ(r1,r2)
となります。
そこで,外場としての磁場Bによる原子エネルギーの変化は左辺の第2項で与えられます。
1電子系ならΔE=μB{(l+2s)B},2電子系ならΔE
=μB{(l1+l2)+2(s1+s2)}Bとなって,原子が磁気モーメント:
M=-μB(l+2s),
または,M=-μB{(l1+l2)+2(s1+s2)}を持つ磁石のように挙動することがわかります。
これによるスペクトル線の分裂をZeeman(ゼーマン)効果といいます。
今日はこの辺で終わりにします。
参考文献:,J.D.Bjorken,S.D.Drell"Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill Book Company),高柳和夫 著「原子分子物理学」(朝倉書店),メラー(C.Möller) 著(永田恒夫伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)
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