電場と電束密度,磁場と磁束密度(1)
古典電磁気学は物理学の理論としては,Coulomb(クーロン)に始まり,
Faraday(ファラデー),および,Maxwell(マクスウェル)に至って完成
されたとされています。
ここでは,電磁気学において初学者が混乱しそうな概念と思われる
電場と電束密度,および類似した概念である磁場(磁界)と磁束密度
について,かなり詳細に解説してみたいと思います。
歴史的には電気力も磁気力も万有引力と同じく遠隔作用力として
導入され,やがて近接作用の表現に近い微分型のMaxwell方程式と
いう美しい形式に帰着されました。
この正統派とされている理論も,なお,見方によっては常識的イメ
ージとして違和感を感じる理論と見る向きもあるようです。
これに対して,Faradayの理論はより直観的で物理的な見方に主眼
をおいた理論であり,流体や弾性体などの力学的描像からのアナ
ロジーでもって電磁気現象を表現しようとしたかに見えます。
このFaradayの描像とMaxwellの数学的理論との間には若干の相克
が見られると感じられます。
現代的に見ても,本質的な結論は同じでしょうが,正統派でスマート
な記述をしていると思われる大田浩一氏らの著わしたテキストと,
一部には"トンデモ本"とも評されているらしい数理物理学者の
今井功氏著の特徴的な書物「電磁気学を考える」では,ある意味
で理論物理学の書籍として対極にあるような気がします。
まずは,電場,磁場などの場という概念を電場を例にとって説明
することから始めます。
電場というのは,
"電気力が働くとされている空間内の点に,電荷の大きさがq
の試験電荷を置いて,これに働く力がFであるとき,Fをqで
割った比:(F/q)を取ってこれのq→ 0 の極限を取り,これ
をEと書いて電場という。"
とでも定義すべきか,と思われます。
普通のテキストでは"単位電荷当りに働く電気力を電場という。"
という程度の簡単な表現で電場の定義が与えられることが多い
ようです。
なぜ,定義するだけなのに,こうした"神経質とも思われる注意深さ"
を必要とするのか?といえば,
厳密には試験電荷が無限小,または,近似的にゼロではなく有限
なら,有限電荷量の値が大きければ大きいほど,試験電荷を置く
だけで,それを置いた点とその周りの電場そのものをゆがめて
しまうと考えられるからです。
元々の電荷がないときの物理的状況を知りたいために試験電荷
を置くのにも関わらず,試験電荷自身が周りの環境をこわすとい
うディレンマがあること,あるいは,
"自分自身の作る場による自分自身への力=自己力"をどう評価
するのか?というような悩ましくも微妙な問題があるからです。
今井功氏の先に挙げた批判的著書では,"そもそも無限小の試験
電荷を基に定義された電場に実際に有限な電荷を置いたとして
正しい電気力が得られるのか?"とか,
"そもそも電気力が先験的に電荷量に比例する:言い換えると,
電荷の大きさがn倍なら電気力もn倍になる"という根拠が
あるのか?などの基本的?な疑問が投げかけられています。
まあ,物理学は経験科学である自然科学の一つですから,経験
あるいは実験が理論的概念を裏付ければそれでいいわけで,
究極的には根拠がなくても自然を正しく記述しているなら,それ
で良く,それを数学で言えば公理,物理学で言えば仮説,または,
法則として認めるだけのことですが。。。。
また,電磁気学は力学と並んで古典物理学の双璧をなす,といわれ
ていますが,電場にしても磁場にしても具体的に質点に働く力に
よって定義されているわけです。
流体力学が力学の応用として,応用力学の一分野であるといわれる
のと同様な意味で,古典電磁気学も1つの応用力学と考えてもいい
のではないか,という主張もあります。
一応,電場の概念規定の話はこの程度にして,次に電束密度の定義
を与えます。
電束というのはFaradayによって,
"電場があるところには目には見えないが電気力線の束が存在
している"という概念を指し,これも流体力学における流線の
束からの類推であろうと思われます。
ある向きの単位面積をそれに垂直にD本の電気力線が貫いている
なら,その点での電束密度はDである,といい,その電気力線の向き
を持つベクトルDを電束密度ベクトルと呼んで,真空中の各点での
相対的電気力は電束密度に比例すると考えるわけです。
したがって,"真空中"であれば,電場と電束密度は,どちらも真空
中で働く電気力に比例し試験電荷にはよらないベクトルを示す別
々の電気の場の定義に過ぎません。
比例定数ε0(伝統的に真空の誘電率と呼ぶ)を与えて,D≡ε0E,
あるいはE≡D/ε0によって,一方から他方を定義できるので,
一方の厳密な定義を与え他方は単にそれの定数倍で定義される
量である,と考えてもいいわけです。
そこで,電束あるいは電気力線に主眼を置いた電場の定義は次の
ようになります。
すなわち,
真空中では電気力線は途切れることなく続いているが,もしも空間
のある点にそれの湧き出しがあるなら,その点に"正の電荷がある"
といい,吸い込みがあるなら"負の電荷がある"という。
それ故,電気力線の向きは正の電荷から負の電荷に向かうものと
約束し,"湧き出しや吸い込みでの電気量=電荷"は,そこで湧き
出すか吸い込む電気力線の代数的本数である,と定義する,
というわけです。
上のように定義すると,流体力学の流束と同じようにGaussの定理
として知られている電束の性質,
すなわち,
"任意の閉曲面Sを通って出ていく電気力線の総数はSの内部
(Sで囲まれた体積=V)に含まれる電気量に等しい。"
という定理が得られます。
つまり,電荷密度ρを単位体積当りの電気量とすると,
∫VρdV=∫SDdS,ただしDdS=(Dn)dSが
成立します。
これは数学におけるGaussの法則,つまり,
lim V→0[(∫SDdS)/V]=divDなる式で表わされる法則
を適用すると,divD=ρという微分型の形に表わすことも
できます。
そして,Dに基づいて真空中での電場EをE≡D/ε0で定義
すると,divE=ρ/ε0とも書けます。
さらに,電束密度:Dも電場Eも重ね合わせの原理を満たす,
つまり電束密度:D1,D2で表わされる2つの電場があれば,
c1,c2を任意の定数としてD≡c1D1+c2D2で表わされる
電場も存在し得るとします。
すなわち,電場は線形性を持っているとします。
こうした電束,あるいは電気力線というイメージから得られた
Gaussの定理と電場は"湧き出し,あるいは吸い込み=点電荷"に
対して等方的であろう,という物理的直観から,
電荷qの点電荷か1つだけあって,あらゆる方向に合計q本の
電気力線が出ているとしたとき,湧き出しと吸い込み以外では
電気力線が途切れることはないので,
点電荷を中心として半径rの球面全体を貫く電気力線の総本数
もq本となるはずです。
そして,電場の空間的等方性から点電荷を中心とした半径rの
球面上の任意の点での電場Eあるいは電束密度Dのベクトルは,
全てその大きさが等しく球面に垂直な方向を持ち,中心の点電荷
が正なら外向き,負なら内向きであろうと考えられます。
このとき,半径rの球面の総表面積は4πr2ですから球面を貫く
全電束,つまり全電気力線は4πr2Dで与えられるはずです。
したがって,当然成立すべき4πr2D=qなる等式から,
D=q/(4πr2),あるいは,D={q/(4πr2)}(r/r)
=qr/(4πr3)なる式が得られます。
これと電場Eの定義:E≡D/ε0から,Eは,
E={1/(4πε0)}(q/r2)}(r/r)={1/(4πε0)}(qr/r3)
と書けます。
そして,この電場によって点電荷eに働く電気力Fは,定義に
よってF=eE={1/(4πε0)}(eq/r2)}(r/r)
={1/(4πε0)}(eqr/r3)となり,自然にCoulombの法則が
導かれます。
すなわち,"Gaussの定理+場の空間的等方性"のCoulombの法則
との同等性がわかります。
ここで電磁気学では,歴史的に混乱の元にもなっていた単位の
話を整理します。
現在では公けには"S.I.単位を採用すべきである。"という
指針があるようですが,歴史的に見ると例えば量子物理学など
の原子物理学ではc.g.s単位が主流でしたね。
かつて,Coulombの法則が,F=eE=(keq/r2)(r/r)
なる形で発見されたときに,MKSA単位では比例係数kを,
k=1/(4πε0)なる形とし,c.g.s単位ではk=1としたらし
いです。
そしてMKSA単位では,電気と関わる物理量の単位は,
[F]=N(Newton),[e]=[q]=C(Coulomb)なので,
[E]=N/C,[k]=[ε0]-1=Nm2C2となりますが,
c.g.s単位では[F]=d(dyne=10-5Newton),
[e]=[q]=c.g.s.esu(c.g.s静電単位)etc.です。
まあ,c.g.s単位では比例係数がk=1になるようにその他の
余分な因子を[e]=[q]の単位に押し込めたのですね。
c.g.s単位では,
係数1/(4πε0)を無理矢理1にしたので,MKSA単位での
E=D/ε0やGaussの定理でのdivD=ρ/ε0 なる表現は,
c.g.s.単位では,(1/ε0) → 4πなる読み換えによって,
E=4πD,divD=4πρ なる表現に変わります。
しかし,それ故,それぞれ,MKSA単位では,
E=q/(4πε0r2),c.g.s単位ではE=q/r2と表わされる
Coulombの法則は,電気力線という視覚的概念で捉える電束密度
という意味では,共にD=q/(4πr2)となります。
当然ですが,"半径rの球面上での電気力線の総本数が4πr2D=q
である。"という基本的な意味は単位の取り方には無関係です。
ですから,ε0という何か意味不明な定数はc.g.s単位では現われ
ないので,この真空の誘電率というのはMKSA単位にのみ必要
なものですが,敢えてc.g.s.単位でも真空の誘電率というものを
想定するなら,これは1/(4π)で与えられるとすべきでしょう。
しかし,後述するように,実際には一般に真空も含めた物質の
誘電率というものを定義してεという記号で表わし,MKSA
単位でもc.g.s.単位でも同じように,この誘電率をεで表わす
のですが,
c.g.s.単位でのεはMKSA単位での(ε/ε0):比誘電率
(真空に対する比)を意味する量なので,c.g.s.単位では真空
の誘電率は1であるとするのが慣例です。
以下では,特別なことがない限り単位はMKSAに統一します。
いずれにしても,真空中であれば電場も電束密度も同一の電気力
を別の言葉で表現しているに過ぎないわけです。
ということで主要な問題は真空中ではなくて物質中,
つまり電磁気にとっての媒質の中の電場と電気力線の問題です。
ここで後での説明の都合上電場Eや電束密度Dを空間位置r
の関数としてE(r)やD(r)と表記し,さらに静電場において,
その存在が保証されている静電ポテンシャル(電位):φ(r)を
設定してE(r)=-gradφ(r)=-∇φ(r)となるようにし
ます。
このとき,位置r0に単一の点電荷がある場合のCoulomb場は,
E(r)={1/(4πε0)}(q/R2)}(R/R),R≡r-r0です
から,R→ ∞ でφ(r)→ 0 となる静電ポテンシャルは
φ(r)=q/(4πε0R)で与えられることがわかります。
そもそも,電荷というのは最低値を持った素電荷の集まりであって,
1個,2個と数えられる量ですが,
先のGaussの定理の微分形;divD=ρでも見たように,
古典電磁気学のスケールでは,電荷を連続的な量と想定し,
電荷密度ρ(r)なるものを考えることができます。
そして電場の重ね合わせの原理から静電ポテンシャルの重ね
合わせの原理も成立することを考慮すると,単一点電荷がある
場合も含め,
一般に空間のある領域Vに電荷密度ρ(r)で連続的に電荷が
分布して存在している場合に,E(r)=-gradφ(r)
=-∇φ(r)で電場E(r)を与える静電ポテンシャルは,
φ(r)={1/(4πε0)}∫V{ρ(r')/|r-r'|}dr'
と書けることがわかります。
特に位置r0に単一の点電荷qがあるという特別な場合には,
ρ(r)=qδ(r-r0)と置けばいいだけです。
さて,物質中の電場の話に移ります。
電気に関係した物質の分類としては,導体と絶縁体というのが
主要な分類ですが,これらを総称して誘電体と呼びます。
まあ,導体は誘電率εが∞の理想的な誘電体であると考える
わけですね。
通常,外部に電場も磁場もない状態ではこの世に存在する物質
を遠方から巨視的イメ-ジとして観測する限り,それらを構成
する分子,原子の中の電気的相互作用などの構造は遮蔽されて
います。
そこで,物質は電気的に中性であり,電流もゼロで磁気的にも
中性と考えていいのですが,外部に電場がある場合には,
電磁気学のような巨視的物理学のスケールで考えても電気的
分極が生じてバランスが崩れます。
外部電場Eがあるとき,対象とする物質が絶縁体なら,それを
構成する中性原子の原子番号をZ,電子1個の電荷を-eと
すると,
各構成原子は電荷が(+Ze)の原子核と合計電荷が(-Ze)
の電子群が外部電場Eの方向に平行に引き伸ばされた正負
2つの"点電荷の対=電気双極子"になっているという模型
で考えることができます。
これは,外部電場が正負の点電荷を引き離そうとしても点電荷
自身の引力のために,ある程度離れた距離で釣合うという描像
です。
しかし,もしも対象物質が絶縁体ではなく固体の金属物質の
ような導体であれば,それは結晶格子の周期的構造のせいで,
外郭電子がほぼ自由電子のようになっていて,外部電場による
電子の移動に歯止めが効かないというわけで,導体の場合には,
その内部に少しでも電場があれば電子は飛散してしまいます。
そこで,対象が導体なら,外部電場をかけて電気的平衡になった
静電場の状態でも個々の原子が分極して双極子状態になるわけ
ではなく,導体内部の電場は正確にゼロになります。
電荷は導体表面にしか存在しなくなります。
つまり,静電場ではなくて絶えず電荷が供給される電流源などが
あるような状況なら定常的に電流が流れますが,さもなければ導
体内部に電流が流れていても,やがてそれは止まってしまうわけ
です。
その結果,導体内の内部電場はゼロになります。
これがもしゼロでなければ,せっかく平衡に落ち着いた電荷分布
が再び崩れて,また電流が生じるので平衡状態の静電場である,
という仮定に矛盾するからです。
そこで導体の中でのEはどこもゼロなので,導体内各点での電場
の発散divEもゼロですから内部での湧き出し(吸い込み),つまり
電荷密度ρはゼロです。
それ故,電荷は導体内部には存在しません。
ですから,導体に付随する電子が導体から離れて逃げていくので
なければ,それらは導体表面に分布するしかないわけです。
その他,導体で囲まれた空洞の中の電場はゼロであるという静電
遮蔽現象も似たような論理で説明可能ですが,ここでは割愛します。
ここでの主眼は導体ではなく誘電体であるとしているので,
導体という特別な物質に関する話題はこれくらいにして,
主として絶縁体と呼ばれる一般的な誘電体の考察に移ります。
対象物質が一般の誘電体のケースには,外部電場Eに対して全て
の原子が分極してEと同じ向きの電気双極子の集まりになると
予想されます。
そして,外部電場に誘起されて点rに生成される全ての電気双極子
モーメントベクトルの代数和の単位体積当たりの量:体積密度"を
P(r)とします。
すると,以下に述ベル理由からP(r)は分極ベクトルと呼ばれます。
ところで,位置r0の近傍の点r1≡r0+d/2に電荷q,
点r2≡r0-d/2に電荷-qがあるとしたときの双極子:
モーメントがp≡qdでdが無限小の電気双極子の
静電ポテンシャルφd(r)は,
dが有限のポテンシャル:φd(r)は,
φd(r)={q/(4πε0)}(|r-r1|-1-|r-r2|-1)において,
p=qdを固定したまま,d→ 0,q→ ∞ の極限を取れば得
られます。
それは,結局,
φd(r)={1/(4πε0)}pgrad0(1/|r-r0|)
={1/(4πε0)}p∇0(1/|r-r0|)
となるはずです。
そこで密度が,P(r)の連続的双極子分布がある場合の
静電ポテンシャルは,
φd(r)={1/(4πε0)}∫{P(r')grad'(1/|r-r'|)}dr'
と表わすことができます。
ここで,
div'[P(r')/|r-r'|]
=(1/|r-r'|)div'P(r')+P(r')grad'(1/|r-r'|)
なる等式を用いれば,
φd(r)
={1/(4πε0)}(∫[div'{P(r')/|r-r'|}]dr'
-∫[(1/|r-r'|)div'P(r')]dr'
と書けます。
これの右辺の第1項はGaussによって,
{1/(4πε0)}(∫[P(r')/|r-r'|]dSなる表面積分
に帰着します。
ところが,この表面積分の被積分関数のベクトル因子P(r)は
有限領域内においてのみゼロでない関数,有限な台を持つ関数
なので,この項の寄与はゼロになります。
そこで,分極による電場の静電ポテンシャルの最終的表現ては,
φd(r)={1/(4πε0)}∫[(1/|r-r'|){-div'P(r')}]dr'
なる形式に帰します。
一方,こうした外部電場によって誘起された静電ポテンシャル
φd(r)とは別に,
通常の電荷密度,いわゆる真電荷の密度:ρe(r)があるときの
電場の静電ポテンシャルをφe(r)と書けば,これは,
φe(r)={1/(4πε0)}∫[ρe(r')/|r-r'|]dr'
で与えられます。
そこで,ρd(r)≡-divP(r)と置いて得られる静電ポテンシャル
の形:φd(r)={1/(4πε0)}∫[ρd(r')/|r-r'|]dr'を,
φe(r)={1/(4πε0)}∫[ρe(r')/|r-r'|]dr'
と比較します。
これを見るとするとすぐわかりますが,φd(r)を独立な静電
ポテンシャルとして-gradφd(r)=-∇φd(r)とした式から
得られる電場=分極電場は,ρd(r)=-divP(r)なる形で
与えられる仮想電荷ρd(r),
何か"分極によって顕在化する電荷=分極電荷"が存在して,
それを源するCoulomb静電場に同定できます。
そして,
φd(r)={1/(4πε0)}∫[(1/|r-r'|){-div'P(r')}]dr'
から,-∇2φd(r)=div{-gradφd(r)}=-divP(r)/ε0
=ρd(r)//ε0によって,
-P(r)/ε0を,-gradφd(r)=-∇φd(r)なる分極電場と見なし,
-P(r)を分極によって発生した真空中の電束密度と見なしてよい
と思われます。
実は,構成原子の原子核や電子など微視的で離散的構造を意識する
ような規模で見るなら,実際の電荷に働く電気力を示す電場という
のは,たとえ分極した誘電体の中であろうと原子核とか電子のない
空虚な空間の部分では実質上真空中と同じと考えてよいので理論的
には真空中と全く同じ法則を満たすはずです。
そして,電場E(r)はrの近傍で適当に取った点rを囲む閉曲面内
の湧き出し(吸い込み)=電荷による電荷密度ρ(r)によって,
divE(r)=divD(r)/ε0=ρ(r)/ε0を満たすように決まって
いると考えるなら,
微視的なスケールでの離散的な電荷構造であれば,E(r)も
divE(r)も至るところ不連続であり,連続的な電荷密度ρ(r)
という概念は通用しないと思われます。
では分極した誘電体の電場に与える効果というのは一体何を
示しているのでしょうか?
かつて電磁気学を初めて学んだ頃には,はっきりとは理解できず
結構悩んだものでしたが,結局,誘電体の中の電場E(r)とは電荷
分布を連続した密度と見なせる古典電磁気学の巨視的規模で見た
とき,試験電荷に働く平均の電気力を与える電場とみなせばいい
わけです。
巨視的規模の平均量であれば,分極によって生じる多くの電気
双極子の各々は同じ大きさの湧き出しと吸い込みの対なので,
電場の電束密度D(r)への寄与はトータルでゼロですから,
分極によって発生する真空中の電束密度と見える量-P(r)
などはD(r)とは無関係であり,真空中と同じ電束密度の
Gaussの定理:divD(r)=ρe(r)が成立します。
一方,平均電場E(r)の方は真電荷ρe(r)による電場と
分極電荷ρd(r)による電場の重ね合わせで与えられると
考えられますから,
Gaussの定理: divE(r)={ρe(r)+ρd(r)}/ε0を満たします。
したがって,現象論的定式化を行なって,誘電体中の電場E(r)は
その中に真電荷を置いて生じた電束密度D(r)に相当する外電場
により誘起される誘導電場と考え,
そこで誘電率と呼ばれる比例係数εにより,E(r)=D(r)/ε,
あるいはD(r)=εE(r)なる比例関係で表わされるとします。
これを,先に述べた式:
divE(r)={ρe(r)+ρd(r)}/ε0=div{D(r)-P(r)}/ε0
と合わせると,E(r)=D(r)/ε={D(r)-P(r)}/ε0,
すなわち,D(r)=εE(r)=ε0E(r)+P(r)
なる式を得ます。
単一電荷qがある場合のCoulombの法則は,電束密度D(r)で表現
するなら真空中でも物質(誘電体)中でも同じ式:
D(r)=q/(4πr2),またはD(r)={q/(4πr2)}(r/r)
=qr/(4πr3)です。
電場E(r)の方は誘電率εに依存してE(r)=D(r)/εである
ため,物質中ではE(r)=q/(4πεr2),または,
E(r)={q/(4πεr2)}(r/r)=qr/(4πεr3)となって,
真空中のε0をε(一般にε>ε0)に変更した形になります。
誘電率εの誘電体が存在する場合の電場:
E(r)=D(r)/εとD(r)/ε0は,共に誘電体内部の電荷に
働く電気力として観測可能です。
例えば2つの平行板の間に誘電体が充填された平行板
コンデンサー(蓄電池)の間の電荷への電気力を測る場合,
平行板に"垂直に切れ目を入れて隙間を空けた部分=gap"に
電荷を置いたとき,つまり直列に並んでいる双極子と双極子
の間に電荷を置いた場合の"gap field"としては,
真空中の電場D(r)/ε0=E(r)+P(r)/ε0に相当する
電気力を受けます。
一方,平行板に"平行に切れ目を入れて隙間を空けた部分
=canal"に電荷を置いたとき,つまり直列に並んでいる
双極子ベクトルの腕ベクトルの上に電荷を置いた場合の
"canal field"としてはE(r)=D(r)/εに対応する
電気力を受けるはずです。
このように微視的に見るなら,電気力をどこで測るかによって
電場はコロコロ変わります。
例えばLorentz(ローレンツ)の電子論で現われる微視的模型:
誘電体の中に微小球体の孔をくりぬいてその空隙の中にある
試験電荷に働く平均電気力に相当する電場,Loretzの電場と
呼ばれる分子電場EL(r)は,
先の"gap field "D(r)/ε0=E(r)+P(r)/ε0とも異なって,
EL(r)=E(r)+P(r)/(3ε0)なる表式で与えられます。
それ故,分極場の表現P(r)=(ε-ε0)E(r)によって,
EL(r)={(ε+2ε0)/(3ε0)}E(r)と書くことができます。
そして誘電分極の場P(r)はEL(r)によって誘起された微視的
双極子p≡αELの単位体積当りN個の集まりであると見なす
なら,
(ε-ε0)E(r)=P(r)=NαEL(r)
={Nα(ε+2ε0)/(3ε0)}E(r)と書けて,
Clausius-Mossottiの式:(ε-ε0)/(ε+2ε0)=Nα/(3ε0)
が得られます。
さらに,これからn2=ε/ε0によって光(電磁波)の屈折率nと
誘電率εの関係を示す式であるLorentz-Lorenz の式:
(n2-1)/(n2+2)=Nα/(3ε0)が得られます。
以上を要約し,さらに数学的な式変形による定式化ではなく
幾分物理的な表現を交えた説明もしておきます。
すなわち,誘電体で満たされた空間の中に真電荷Qeを置いたとき,
対象とする物質を構成する分子,原子は分極して電場を生じ,
さらに2次以上の分極の連鎖の後に定常状態に達したときには
これらを微小な電気双極子の集合体と見なすことができます。
Lorentzの電場のような微視的立場ではなく,巨視的平均電場と
して見ると,分極してできた双極子の集合体は連続体と考える
ことができて,正負等量の電荷で一様に帯電した物体を重ねた
後に僅かにずらしたものと見ることができます。
このとき,ずらした正電荷の移動の向きを持ち,物体内に取った
任意の単位面を垂直に通り抜ける,電荷量に等しい大きさのベク
トルP(r)を位置rの関数として導入し,これを分極ベクトルと
呼びます。
このとき誘電体内に真電荷Qeを囲む任意の閉曲面Sを考え,これ
を通過する分極による全電荷は∫SP(r)n(r)dSで与えられ
閉曲面Sの取り方に依りません。
真電荷Qeが正電荷なら,表面Sから外へ染み出す正電荷の反作用
としてSの表面に現われる電荷は負電荷であり,その総量は
-∫SP(r)n(r)dSです。
そして電場は巨視的平均場なので,"canal field"であり,Gauss
の法則はε0∫SE(r)n(r)dS=Qe-∫SP(r)n(r)dS
となります。
すなわち,∫S[ε0E(r)+P(r)]n(r)dS=Qeですから,
電束密度D(r)≡ε0E(r)+P(r)を導入すると,
∫SD(r)n(r)dS=Qe,微分形では,divD(r)=ρe(r),
∫Vρe(r)dr=Qeとなります。
最後に現象論的扱いでは,D(r)=εE(r)の誘電率εは単なる
定数ですが,この関係式を一般化するならD(r)=ε(r)E(r)
と書いて誘電率もrの関数であるとしたり,
複素屈折率nとn2=ε/ε0の関係や光(電磁波)の吸収,回折,散乱
などに関連して実数ではない複素数のεを考えたりもします。
また,電気的に等方的ではなく,異方的な物質が対象ならεを
スカラーではなくテンソルε=(εij)として,最も一般的な
形式Di(r)=εij(r)Ej(r)(εij(r)は複素数)なる表現
を与えることもできます。
今日はこのくらいにして,分極電荷と電場の話の続きとなる
分極電流,磁化電流と磁場の話,および真空中とは異なる物質
中の相対性理論の話はまた今度にします。
参考文献:砂川 重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店)
高橋秀俊 著「電磁気学」(裳華房),
今井 功 著「電磁気学を考える」サイエンス社,
ファインマン(R.P.Feynman) 著 (宮島 龍興 訳)
「ファインマン物理学Ⅲ(電磁気学)」(岩波書店)他
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「TRS健康ランド」では2008年1月10日よりお徳用SCS500mlを新発売!!当店の専売です。
そこのお酒のみの方,いろいろと飲食の機会の増えたあなた、体によいし特に肝臓によいウコンがいいですよ!! そして特に今回提供する沖縄原産の純粋な黒ウコンは当店が専売の新製品ですが古くから沖縄地方ではいわゆる男性機能に効果があると言われています。
おやおや、そこの静電気バチバチの人、いいものありますよ。。。
それから農薬を落とした後の皮がピカピカに光っているリンゴなど商品として販売する際の見栄えをよくするなどのために化学処理をした食品を安全に洗浄する新商品の洗浄液SCSはいかがですか。。。
http://www.rakuten.co.jp/trs-kenko-land/「TRS健康ランド」-- 黒ウコン,SCS(洗浄剤)専売などの店: 私が店長 です。
http://www.mediator.co.jp/category/pages.php?id=115「中古パソコン!メディエーター巣鴨店」
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
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