電磁気学と相対論(3)(真空中の電磁気学2)
「電磁気学と相対論」の続きです。これまでと同じく相異なる2つ
の慣性系に固定された準拠座標系をS,および S'とします。
S,および,S'系の両方で当然成立すべき電荷の保存法則は,
それぞれ次の連続の方程式:∂ρ/∂t+div(ρu)=0 ,
および,∂ρ'/∂t'+div'(ρ'u')=0 で与えられます。
これらの方程式は,
Maxwellの方程式:
divD=ρ,rotH-∂D/∂t=ρu,および,
div'D'=ρ',rot'H'-∂D'/∂t'=ρ'u'
において,
右辺の電荷密度ρ,ρ'や電流密度ρu,ρ'u'が左辺で電場,
磁場によって表現されていると見て,それらを連続方程式の
左辺のρ,ρu,およびρ',ρ'u'に直接代入すれば右辺が
ゼロとなることがわかるので,
現象論のオームの法則のような独立な方程式ではなく,基本
方程式から得られる1つの結果です。
そこで,今,時空座標:xμ=(x0,x1,x2,x3)=(ct,x)と同じく
次の4成分を持つ量を,仮にsμ=(s0,s1,s2,s3)≡(cρ,ρu)
と表わすと,
S系での∂ρ/∂t+div(ρu)=0 は∂sμ/∂xμ=0 ,
または,∂μsμ=0 と表わされます。
同様に,S'系では,s'μ≡(cρ',ρ'u')であって,この系
での連続の方程式:∂ρ'/∂t'+div'(ρ'u')=0 は,
∂s'μ/∂x'μ=0 ,または,∂'μs'μ=0 となります。
そして,S系からS'系への時空座標のLorenyz変換が
x'μ=Λμνxν (x'=Λx)で表わされるとき,
上記の4つの成分を持つ量sからs'への変換が,
s'μ≡fμ(s0,s1,s2,s3)なる形で与えられる
とすれば,
∂'μs'μ=0 は,∂'μs'μ=∂fμ/∂x'μ
=(∂fμ/∂sν)(∂sν/∂xλ)(∂xλ/∂x'μ)
=(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ(∂λsν)=0
と書けます。
ここで,x'μ=Λμνxνよりxμ=(Λ-1)μνx'νなので,
∂xλ/∂x'μ=(Λ-1)λμが成立することを用いました。
(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ(∂λsν)=0 が,∂μsμ=0 の制限
付きで常に成立するので,条件付き恒等式に対するLagrangeの
未定係数法を用いることにします。
∂μsμの未定係数をAとすると,制限なしの恒等式:
[(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ-Aδνλ](∂λsν)=0
が成立します。
これは任意のsνの独立変動∂λsνに対して成立するので,
(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ=Aδνλが成立する必要があります。
したがって,最後に得られた式の両辺にΛσλを掛けて,
(∂fμ/∂sν)Λσλ(Λ-1)λμ=AΛσλδνλとすれば,
Λσλ(Λ-1)λμ=δσμを用いて,
∂fσ/∂sν=AΛσν,つまり,∂fμ/∂sν=AΛμν
を得ます。
ここで,未定係数Aも一般にsμの関数であると考えていいので,
恒等式:(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ=Aδνλの両辺を,
さらにsσで偏微分すると.
(∂2fμ/∂sν∂sσ)(Λ-1)λμ=(∂A/∂sσ)δνλ
なる恒等式を得ます。
左辺はνとσについて対称なので,右辺もそうであるはずですから,
(∂A/∂sσ)δνλ=(∂A/∂sν)δσλ が成立します。
そこで,σ=λ≠νとおけば,∂A/∂sν=0 が得られます。
それ故,Aは変数sμには無関係な定数です。
そこで,Bμをある定数として,
s'μ=fμ(s0,s1,s2,s3)=AΛμνsν+Bμ
と書けます。
定義から,sμ=(cρ,ρu),かつs'μ=(cρ',ρ'u')であり,
もしS内の至るところでρ=0 の真空の場合なら,S'でも至る
ところでρ'=0 が成立すべきです。
そのためには,明らかにBμ=0 であることが必要です。
以上で,s → s'の変換の必要な性質として,それが
s'μ=AΛμνsνなる形であるべきことが導かれました。
それ故,s'μs'μ=A2sνsν,すなわち,
c2ρ'2(1-u'2/c2)=A2c2ρ2(1-u2/c2)
が成立しますが,S系とS'系を逆に取ると,
右辺の係数:A2は(1/A2)となるので,対称性から
A2=1/A2,つまりA=±1を得ます。
ところが,この変換式はS系からS'系の変換が恒等変換である
場合も特別な場合として含むため,A=1であるべきです。
以上から,s'μ=Λμνsνなる変換性を持つことが示されたので,
仮に表現したsμ=(s0,s1,s2,s3)=(cρ,ρu)は,時空座標
xμ=(x0,x1,x2,x3)=(ct,x)と同じく,Minkowski空間の
4元ベクトルを意味することがわかりました。
そこで,以下では,sμ=(cρ,ρu)を4元電流密度と呼びます。
電流に限らず密度が4元ベクトルsμで与えられるとき,
その4次元の発散がゼロ,つまり∂sμ/∂xμ=0 ,または
∂μsμ=0 が成立することは連続の方程式が成立すること
を意味するので,
この形∂μsμ=0 はある量の保存方程式の4次元表現に
なっています。
そして,sμsμ=s'μs'μによる"不変量=スカラー量"は,
c2ρ2(1-u2/c2)=c2ρ'2(1-u'2/c2)=c2(ρ0)2
と書けます。
ここで,スカラーρ0はu=0 の静止系S0における電荷密度です。
この等式から,ρ=ρ0/(1-u2/c2)1/2が得られます。
したがって速度u=dx/dtに代わり,固有時:
dτ=dt(1-u2/c2)1/2を用いた表現である4元速度
Uμを,Uμ≡dxμ/dτ で定義すると,sμ=ρ0Uμと
表現することもできます。
この電荷密度を持つ荷電物質のS系での座標xμの近傍での
微小体積をΔVとすると,この領域での全電荷はρΔVです。
一方,静止系S0での同じ体積をΔV0とおけば,
ΔV=ΔV0(1-u2/c2)1/2です。
これはS0系でx,y,z軸に平行で長さがLの3辺を持つ立方体
を想定すればわかります。
つまり,この立方体のS0系での体積はV0=L3ですが,これがx軸
に平行に速度uで運動すると見えるようなS系ではx軸に平行な
1つの辺の長さのみがLorentz収縮でL(1-u2/c2)1/2になります。
一方,y,z軸に平行な辺の長さはLのまま変わらないので,
S系での体積をVと書くと,立方体は直方体になって,
V=V0(1-u2/c2)1/2が成り立つというわけです。
そこで,ρ=ρ0/(1-u 2/c2)1/2とΔV=ΔV0(1-u 2/c2)1/2
を掛け合わせると,ρΔV=ρ0ΔV0が得られます。
したがってある物質が担う電荷量は,"座標変換の不変量
=Lorentz-scalar"の1つであることがわかりますから,
理にかなっています。
ここで全く天下り的ですが,(Fμν)をMinkowski空間のある
2階反変反対称テンソルの場であるとして,
電場Eと磁場(磁束密度)Bは,E=(E1,E2,E3)
=-c(F01,F02,F03),B=(B1,B2,B3)=-(F23,F31,F12)
なる形で与えられるとしてみます。
Minkowski空間の2階反変テンソル(Tμν)というのは,
μ,ν=0,1,2,3の16個の成分を持つ4×4正方行列で,
2つの4元反変ベクトルの直積と同じ変換性を持つ量です。
すなわち,Aμ,Bμを反変ベクトルとすれば,それらの変換性
はA'μ=ΛμνAν,B'μ=ΛμνBνです。
これらの成分の積で構成される16個のAμBν(μ,ν=0,1,2,3)
の組を成分とする4×4正方行列(AμBν)で与えられる量を
2つのベクトルAμ,Bμの直積と呼びます。
そうして,これらの成分はS → S'の座標変換に対して,
A'μB'ν=ΛμλAλΛνσBσ=ΛμλΛνσAλBσなる変換性
を持つわけです。
逆に,この直積成分と同じ変換性:T'μν==ΛμλΛνσTλσ
を示す成分Tμνを持つ量(=行列):(Tμν)を2階反変テンソル
と定義します。
こう定義された任意の2階反変テンソルの成分Tμνは,幾つ
かの4元反変ベクトルの直積成分の線形結合で表わされること,
例えばTμν=AμBν+CμDν+..と書けることを示すことも
できますが,ここでは証明は割愛します。
また,任意のテンソルの成分は,Tμν=Fμν+Gμν;
Fμν≡(1/2)(Tμν-Tνμ),Gμν≡(1/2)(Tμν+Tνμ)
と分解できます。
Fμνはμとνの交換に対して反対称:Fνμ=-Fμνなので
Tμνの反対称成分と呼ばれ,Gμνはμとνの交換に対し対称:
Gνμ=GμνなのでTμνの対称成分と呼ばれます。
特にTμνの対称成分;Gμνがゼロで,TμνがFμνに一致する
ようなテンソルは反対称テンソルと呼ばれます。
そしてこれら対称,反対称という性質は,明らかにLorentz変換で
保存されます。
つまりS系で反対称ならS'系でも反対称です。
そこで,改めて2階反対称反変テンソルを(Fμν)と書けば,
Fνμ=-Fμνなので,μ=νなら成分Fμνはゼロです。
つまり対角成分は全てゼロです。
4×4=16個の成分から4個の対角成分を除くと残りは12個です
が,反対称なので6個の成分だけが独立で残りの6個は,別の6個
の成分のそれぞれにマイナス符号をつけたもので与えられます。
例えばF01,F02,F03,F23,F31,F12の6個を独立成分として指定
すれば,(Fμν)を完全に決めることができます。
Minkowski空間の4元ベクトルXμ(μ=0,1,2,3)の空間成分Xi
(i=1,2,3)が普通の3次元空間のベクトルXを形成することは
明らかです。
そこで特に2階反対称反変テンソル(Fμν)の成分の3個の組:
-(F01,F02,F03)を電場Eと置くことに不都合はありません。
一方,残りの3成分(F23,F31,F12)は,Levi-Civitaのテンソルと
呼ばれる3次元Euclid空間の3階不変テンソルを(εijk)とすれば
Xi≡(1/2)εijkFjk (i=1,2,3)という形で表現されます。
例えばX1=(1/2)(ε123F23+ε132F32)=F23です。
そういえば,Levi-Civitaのテンソルについては,かつての
@nifty「物理フォーラム」(2007年3月末で閉鎖,その後 folomy
(フッター参照)に移行)でも質問があって,そのときもサブシス
であった私が回答しています。
→ http://sci.la.coocan.jp/fphys/log/sotai/432_main.html
そして,特に座標変換(Λμν)(μ,ν=0,1,2,3)がBoostを含まず,
空間回転のみを表わす場合には,(Λij)(i,j=1,2,3)のみゼロ
でなくて,これは3×3直交行列を表わすので,
tΛij=Λji=(Λ-1)ij となります。
(以下では説明抜きでμ,ν,λ,σ..のようなギリシャ文字
は 0,1,2,3 で与えられる4次元空間の添字を,
i,j,k,l,m,p,q..のようなラテン文字は 1,2,3 で
与えられる3次元空間の添字を表わすとします。)
つまり,Lorentz変換:(Λμν)は,特にS,S'が全く同じ慣性系I
に固定されている場合(慣性系Iと慣性系I'の相対速度vがゼロ
の場合)も含んでいて,もちろんt=t'=0 で原点OとO'が一致
していますが,
その場合には時間についてはt'=tなのでΛμνのμ=0 かν=0
の成分はゼロです。
要するに,単なる原点の周りの3次元の空間軸の回転しか表現して
いませんから空間のみの変換としては直交変換です。
そして,F'μν=ΛμλΛνσFλσなる4元テンソルの変換性
から,F'pq=ΛpλΛqσFλσ=ΛplΛqmFlmが得られ,(Flm)が
3次元空間の2階テンソルとして変換することがわかります。
ここで,行列の余因子が行列式と逆行列の成分の積になるという
線形代数学の公式から,Λを3×3直交行列として,
det(Λ)(Λij)=(1/2)εipqεjrsΛprΛqs と書けます。
つまり,Λの転置行列: tΛの余因子行列を, tΛ~と書くと,
det(tΛ)(tΛ-1)=tΛ~ですが,det(tΛ)=det(Λ)であり,
Λは直交行列なので, tΛ-1=Λですから,結局,
det(Λ)Λ=tΛ~が成り立ちます。
そして,余因子の定義から,成分は(tΛ~)ij=(-1)(i+j)Δijです。
ここで,Δijは"行列ΛからΛij成分を含む第i行,第j列の成分
を全て除いた残りの正方行列の行列式=小行列式"の値を示して
います。
ところが,3×3行列Λの場合には,簡単な考察から,この転置行列
の余因子成分を,
(tΛ~)ij=(-1)(i+j)Δij=(1/2)εipqεjrsΛprΛqs
と表わすことができることがわかります。
実際,
(tΛ~)12=(-1)3Δ12=-Λ21Λ33+Λ23Λ31
=(1/2)(ε123ε213Λ21Λ33+ε123ε231Λ23Λ31
+ε132ε213Λ31Λ23+ε132ε231Λ33Λ21)
が確かに成立しています。
そして行列式成分の添字,あるいは行や列の交換に対する反対称性
から残りの任意成分についても成立すると思われます。
したがって,det(Λ)Λ=tΛ~から,
det(Λ)(Λij)=(1/2)εipqεjrsΛprΛqs
が導かれるわけです。
そして今の場合の変換はproperな直交変換,つまりdet(Λ)=+1
なる変換なので,Λij=(1/2)εipqεjrsΛprΛqsと書けます。
それ故,ΛijXj=(1/2)εjlmΛijFlm
=(1/4)εjlmεipqεjrsΛprΛqsFlm なる等式が得られます。
ところが,不変テンソルの縮約に関するよく知られた公式:
εjlmεjrs=δlrδms-δlsδmrを用いると,
ΛijXj=(1/4)εipq(δlrδms-δlsδmr)ΛprΛqsFlm
=(1/4)εipq(ΛplΛqm-ΛpmΛql)Flm
=(1/2)εipqΛplΛqmFlm=(1/2)εipqF'pq=X'i
となり,結局X'i=ΛijXjが示されるわけです。
したがって,
"3次元空間の2階反対称テンソルの独立な3成分は3次元の
擬ベクトル=軸性ベクトルをなす。"
というよく知られた法則が改めて証明されました。
ここでは,物理屋らしく成分を使って泥臭い計算をしていますが,
そもそも,テンソルというのは,ベクトルを空間に矢印を書いて
幾何学的にイメージするのと同じく,座標系の取り方でコロコロ
変わるような"成分=単なるラベル"とは独立な幾何学的実体です。
このことを意識すれば,微分形式の機械的な演算をベクトル解析
に応用する際のように,外積代数とHodgeの星印作用素のような
ものをうまく使うことで,よりスマートな解析も可能だろうと
いう気がします。
ところで,一応ご存知ない方のために"擬ベクトル=軸性ベクトル
とは何か?"ということも説明しておきます。
通常の座標軸の回転などの連続的な変換に対しては3次元空間
のベクトルとしての変換性を持つ量:V=V(x,t)が,
不連続な"空間反転:x → -x=空間座標系のx,y,z軸の向き
を全て反転する変換(3次元なのでこれは右手系→左手系の変換
を意味し鏡映も同等な意味になります)"に連動して,
V→V'と変換されるとします。
このとき,同じ位置x → -xでの量について,V→V'が
V'(-x,t)=-V(x,t)なる関係を示すとき,これは位置
ベクトルxと同じく符号を変える普通のベクトルであること
を意味しています。
こうした場合には,Vを極性ベクトルと呼びますが,もしも
V'(-x,t)=V(x,t)と符号が変わらない場合には,
この量Vを擬ベクトル,または軸性ベクトルと呼びます。
そして,古典電磁気学で知られているように,φを3次元の
スカラーポテンシャル,Aを3次元のベクトルポテンシャル
とすると,
電場Eと磁場(磁束密度)Bは,これらにより,
E=-∇φ-∂A/∂t,B=∇×Aと表現されます。
そして,Aは空間反転に対して符号を変える普通の極性ベクトル
であり,また空間微分∇も明らかに空間反転に対して符号を変え
ます。
したがって,パリティの性質から電場Eは極性ベクトル,
磁場(磁束密度)Bは軸性ベクトルであると同定されます。
そこで,E=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),
B=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)とおくことは,これまで
の議論から考えて3次元空間での変換性の意味では整合的です。
まあ,Aμ=(A0,A1,A2,A3)≡(φ/c,A)とおいて,
Fμν≡∂μAν-∂νAμ=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν
と定義すれば,Aμ≡(cφ,A)が4元反変ベクトルであること
がわかるので,(Fμν)は確かに2階反対称反変テンソルになり
ます。
そして,-F0i=F0i≡=-∂0Ai+∂iA0の右辺は,
E/c=-{∂A/∂(ct)}-∇(φ/c)の第i成分を表わし,
-Fjk=Fjk=Fkj≡-∂jAk+∂kAiの右辺は,
B=∇×Aにおいて(i,j,k)が巡回的になるような第i成分
に一致するので,先に与えた定義と同じになります。
つまり,E=(E1,E2,E3)=ーc(F01,F02,F03)
=c(F01,F02,F03),B=(B1,B2,B3)=-(F23,F31,F12)
=(F32,F13,F21)なる表現が,天下りより少しはましな方法
で得られるわけですね。
そして,電場,磁場をこのように定義したとき,電磁場の基本方程式
である真空中のMaxwell方程式:divB=0 ,rotE+∂B/∂t=0 ,
divD=ρ,rotH-∂D/∂t=ρu;(D≡ε0E,B≡μ0H)
のうちで,
divB=0 ,rotE+∂B/∂t=0 は見かけ上は,ただ1行の
テンソル表現の微分方程式:
∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0
で与えられます。
実際,divB=0 は∂F23/∂x1+∂F31/∂x2+∂F12/∂x3=0
と表現されるし,
rotE+∂B/∂t=0 は,"x軸の向きの成分=第1成分"
であれば,∂F03/∂x2+∂F32/∂x0+∂F10/∂x3=0 と一致し,
その他の2成分についてもそれぞれ一致します。
方程式∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0
の左辺は3階テンソルですから,素朴に勘定すると,成分の数
は4×4×4個ですが,
左辺はμ,ν,λについて完全に反対称な反変テンソルなので
既にμ,νについての2階反対称テンソルFμνの独立な成分
の数が4×4個ではなくてEとBの6成分=(4×3)/2!で
あることを見たように,
この場合も独立な成分は(4×3×2)/3!=4成分だけです
から,独立な方程式の数も4個となって確かに計算が合います。
一方,divD=ρ,rotH-∂D/∂t=ρuの方は,これに
D≡ε0E,H≡B/μ0を代入して,EとBの方程式にすると
divE=ρ/ε0,rotB/μ0-ε0∂E/∂t=ρu
となりますが,
これらは∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)と書けます。
すなわち,∂F01/∂x1+∂F02/∂x2+∂F03/∂x3
=-s0/(c2ε0),∂F12/∂x2+∂F13/∂x3+∂F10/∂x0
=-s1/(c2ε0) etc.です。
ここでは,x0=ct=t/(cε0μ0)などの等式を用いました。
こうして電磁場の基本方程式の表現は,Minkowski空間のテンソル
の間の等式という形(スカラーは 0 階テンソル,ベクトルは1階
テンソルetc.)に帰着されたので,理論の相対論的共変性は自明に
なりました。
今日はこのくらいにします。
※(参考文献):
メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)
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