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2008年5月19日 (月)

電磁気学と相対論(4)(真空中の電磁気学3)

続きです。

 

前記事の終わりでは,

 

電磁場の基本方程式であるMaxwellの方程式が,

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 の4個

と,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の4個の計8個のテンソル

方程式に帰着することを見ました。

 

しかし,元々真空中の電場,磁場は,,,によって表わさ

れますが,実質的にはだけが決まれば残りも決まるので,

独立な未知関数の成分は6個だけですから,方程式が8個もある

のは過剰ではないかという気がします。

 

実際,div=0 が成立することから,=∇×=rotと表現

できるベクトルポテンシャルの存在がわかります。

 

これをrot+∂/∂t=0 に代入して,

rot(+∂/∂t)=∇×(+∂/∂t)=0 から

+∂/∂t=-∇Φ=-gradΦと表現できるスカラー

ポテンシャルΦの存在することがいえます。

 

それ故,=∇×rot,=-∇Φ-∂/∂t

=-gradΦ-∂/∂tと表現することで,

 

電場,磁場の6成分を決めることを,スカラーポテンシャル

Φ,および,ベクトルポテンシャルの4成分だけを決めること

に帰着せしめるのが,近代電磁気学の通常の理論で行なわれてい

ることです。

  

そして,をこのように表わしたときには,div=0,および,

rot+∂/∂t=0 は自動的に満足されます。

 

このΦ,を総称して,特に電磁ポテンシャルと呼ぶこともあり

ます。

 

そこで,ポテンシャルの4元ベクトル表現:

μ(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)から,その成分が

μν≡∂μν-∂νμ=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν

の2階反対称テンソル(Fμν)を作ります。

 

そして,電場,磁場=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03)

=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)と定義すれば,

 

これらが自動的にdiv=0 ,かつrot+∂/∂t=0 を満たす

ことは明白です。

 

つまり∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 は,

μを決める方程式ではなく,Aμをどう取っても常に成立する

恒等式であることは,確かめるまでもなく明らかです。

 

一方,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の方は,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-(∂2μ/∂xν∂xν)

=-sμ/(c2ε0),

 

または,符号を変えると, 

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)

=sμ/(c2ε0),(μ=0,1,2,3)となり,これがxμの未知関数

μ求める4個の微分方程式,という形になります。

 

μ=(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)の成分の数は,もちろん

4個であり,方程式の数も4個ですから,

 

この形に書けば,先に基本方程式であるMaxwell方程式において,

未知関数の数と比べて方程式の数が過剰ではないか?と見えた

のは見掛けの上のことであったとわかります。

 

一方,実際の観測などによって電場と磁場がわかっている

場合:つまり,テンソル(Fμν)が確定している場合を想定して,

 

∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=FμνなるFμνの定義式を,右辺の

μνに既知の値,または関数を与えたとき,未知関数Aμを定め

微分方程式であるという見方をしてみます。

 

これの左辺は,"ベクトルAμの4次元的な回転=rot(Aμ)"に相当

するので,この方程式は形式的にrot(Aμ)=Fμνと書けます。

 

そこで3次元ベクトルの渦無し場,または保存力場のアナロジー

で,この方程式:rot(Aμ)=(Fμν)の1つの解をAμとすると,

 

これに,rot(Bμ)=0 を満たす任意の渦無しベクトルBμを加え

も,rot(Aμ+Bμ)=Fμνが満たされるため,(Aμ+Bμ)も

解になることがわかります。

 

ところが,rot(Bμ)=0 ならBμに対しあるxμのスカラー関数:

Λ=Λ(x)が存在して,Bμ=-∂μΛ=-∂Λ/∂xμ=-gradΛ

と表わせます。

  

しかも,Bμはrot(Bμ)=0 を満たす任意の4元ベクトルです

ら,それを表現するΛ=Λ(x)も任意関数に取っていいです。

 

したがって,Aμが∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνの解で

れば,Λを任意関数として,Aμ-∂μΛもこれの解であると

いう性質があることがわかりました。

 

そして,∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνは,

=∇×=rot,=-∇Φ-∂/∂

=-gradΦ-∂/∂t なることを意味し,

 

μ→ Aμ-∂μΛなる変換は,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなることを意味します。

 

すなわち,電磁ポテンシャルAμをAμ-∂μΛと変えることは,

実際に観測される場である電場と磁場,あるいは,

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない

ことがわかります。

 

このAμ→ Aμ-∂μΛ,あるいは,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなる変換をゲージ変換

(gauge transformation)と呼び,この変換に対し理論が

何の影響も受けないことを,理論はゲージ不変である,

といいます。

 

そして,このスカラー関数Λ,あるいはその微分をゲージ(gauge)

と呼びます。

 

しかし,この変換でAμに対する基本方程式:

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

の方は,その形に変更を受ける可能性があります。

 

すなわち,方程式

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

において,Aμの代わりにA'μを代入すると,

 

(∂2A'μ/∂xν∂xν)-(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

となりますが,A'μがゲージ変換:Aμ→A'μ≡Aμ-∂μΛ

=Aμ-∂Λ/∂xμ の結果として得られるものであれば,

 

左辺の第2項の(∂2A'ν/∂xμ∂xν)は,

(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=(∂2ν/∂xμ∂xν)

-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}と書けます。

 

そこで,例えば,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

が満たされるようにゲージ Λを取ることができれば,

  

そのときには,基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

簡単な形になります。

 

そこで,こういうゲージΛを取ることができたと仮定して,

 

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

の両辺をxμで積分すると,これは, 

∂Aν/∂xν-{∂(∂Λ/∂xν)/∂xν}=定数

となります。

 

したがって,この最後の条件となる等式の右辺の定数をゼロ

おいた μμ=∂μμΛ,または,∂Aμ/∂xμ

={∂(∂Λ/∂xμ)/∂xμ}が成立するようなΛが存在する

とき,言い換えると,変換後のA'μが∂A'μ/∂xμ=0 を満足

するようにできれば,

 

そのときは,電磁場の基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

と書けます。

  

(※ただし,右辺の定数はゼロでなくてもいいので,これは1つの

十分条件であり必要条件ではないです。)

  

一方,任意に与えられたAμに対し,Λを未知関数とする

微分方程式:∂μμΛ=∂μμ, or □Λ=∂μμ

考えると,

 

これは解Λに右辺がゼロの斉次方程式:□χ=0 の一般解χだけ

の任意性があることを利用することで,任意の境界条件を満たす

一意解を持つことがわかります。

 

ここで,記号□は,□≡∂μμ=∂2/∂xμ∂xμで定義される

D'Alembertianと呼ばれる微分演算子を示しています。

 

以上から,電磁場のベクトルポテンシャルとして,元々,

∂Aμ/∂xμ=0 なる条件を満たすようなゲージを取った

μを採用しておけば,電磁場の基本方程式は,最初から,

 

(∂2μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0),あるいは,

□Aμ=sμ/(c2ε0) と書けることになります。

 

このゲージを採用すれば,テンソル方程式としても対称な美しい

形であると感じます。

 

上記の∂Aμ/∂xμ=0 ,あるいは∇A+(1/c2)(∂φ/∂t)=0

なるゲージ条件はLorenz条件といわれ,この条件を満たすゲージ

Lorenzゲージ(ローレンスゲージ or ローレンツゲージ)と呼ば

れています。

 

Lorenz条件自体は,相対性理論の座標変換に対し不変のまま保存

される(共変な:covariant)ことが自明な形をしていますが,

 

μ → A'μ≡Aμ-∂μΛ=Aμ-∂Λ/∂xμ なる一般の

ゲージ変換は相対性理論の座標変換で不変に保たれる操作と

限りません。

 

そこで,相対論的に共変でないゲージ,例えば良く使用される

もので,Φ/c=A0には関わりなくのみが∇=div=0

を満たすべきである,というCoulombゲージなどは特定の座標系

に固定されたゲージですから,

 

S系 → S'系というように準拠系を乗り移ると,ゲージ条件が

破れてS'系では違う条件に従うゲージになってしまう,という

ことがあります。

 

まあ,それでもすぐ上に書いたように,

"実際に観測される場ある電場と磁場:

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない"

のですが,見た目には美しくありません。

 

そこで古典電磁気学では相対論的に共変なLorenzゲージを採用

することが多いようです。

 

しかし,量子論ではゲージ条件が正準交換関係と矛盾するとか,

不定計量になるとかで確率解釈において困るなどの問題から,

素朴なLorenzゲージのみを用いて共変的量子化をすることは

不可能で,初期にはむしろCoulombゲージが使用されていたこと

が多いようです。

 

荷電粒子と光子の場の量子論であるQED(量子電磁力学)でも形

上では共変でLorenzゲージと一致するものも取ることができ

ますが,それがLorenzゲージとは呼ばれず,Landauゲージと呼ば

るのは上記のような問題があるからです。

 

系統的な共変的量子化の手続きでは,Aμの他にBという補助場

を導入して,ダミーのスカラー場C≡∂Aμ/∂xμ+αBを作り 

α-12という項を含む場のLagrangian密度から,変分原理によっ

て得られる場の方程式=運動方程式のうちの1つであるC=0,

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 なる方程式を考慮することで

ゲージを一意に固定してゲージ変換の任意性を取除きます。

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 が場を支配する運動方程式の

1つとなり,この方程式において特にα=0 のLandauゲージを

取った場合がLorenz条件:∂Aμ/∂xμ=0 と一致するという

わけです。

 

しかし,補助場Bがある場合,

もう1つの方程式のsμ=0 のときの自由場の運動方程式の形

,□Aμ=0 ではなく,□Aμ-(1-α)B=0 で与えられる

という事情があるため,

 

α=0 の場合には,方程式の1つが∂Aμ/∂xμ=0 と一致し

ても,Lorenzゲージと呼ばれないのですね。

 

ただ,∂Aμ/∂xμ+αB=0 は相対論的に共変な等式なので,

この意味で共変ゲージはαの数だけ無数にありますが,

  

場の方程式:□Aμ-(1-α)B=0 が古典論の共変な方程式:

□Aμ=0 に一致する場合に相当する,α=1 の特別な場合は

Feynmanゲージと呼ばれています。

 

電磁場は,そのLagrangianが特異であり,それ故,ゲージの自由度

を持つわけですが,その特異性のため,

 

古典論でも単純なPoisson括弧による正準理論として扱うことは

できなくてPoisson括弧を修正したDirac括弧を用いることが必要

になります。

 

そうしたわけで,電磁場ではゲージを固定せずには,普通の正準

量子化によって共変的量子化を行なうことは不可能です。

 

従来から場を表現する空間であるHilbert空間の方に,"その個々

のベクトルが物理的に許される状態であるために必要な条件=

付帯条件(subsidary condition)"を課すことで量子化された場

そのものに生じる困難に対処してきました。

 

(→ ※ 例えばGupta-Bleulerの方法など※)

 

上に挙げた例では,α=0 のLandauゲージの場合には,

∂Aμ/∂xμ=0 かつ,□Aμ-B=0 が成立しますが,

 

補助場Bの正エネルギー部分=正振動数部分

(positive frequency part)をB(+)として,

(+)|ψ>=0 を満足する|ψ>のみが物理的に許される

状態であるという付帯条件を与えます。

 

こう規定すれば,実質上このゲージでも□A(+)μ=0 が成立する

と見なせます。

 

また,α=1 のFeynmanゲージでは∂Aμ/∂xμ+B=0,

かつ □Aμ=0 ですが,これは実質上∂A(+)μ/∂xμ=0 ,

かつ□Aμ=0 なることを示しています。

 

結局,どのαでも共変ゲージとしては同等である,

と考えられます 。

 

このように,一連の量子化の手続きを補助場Bの導入によって

体系化し,電磁場Aμの4元運動量がゼロ質量の光子に対応する

Minkowski空間のヌルベクトル(null-vector)であることから,

 

不定計量の状態空間を扱うことを余儀なくされるため生じる

dipoleゴーストなどの非物理的存在を観測可能量から排除し

電磁場の共変的量子化を完成させた理論は,中西-Lautrap理論

として知られています。

 

既に脱線していますが,さらに量子論の話に脱線します。

 

電磁場のようにゲージ不変な場のことをゲージ場と呼ぶのです

が,ゲージ場に対応する粒子は電磁場の場合の光子のように質量

がゼロのベクトル粒子であり,それ故Bose粒子(Boson)です。

 

質量がゼロでなければゲージ不変性が満たされないという事実

があるにも関わらず,素粒子場の電磁相互作用とは別の相互作用

において,その力を媒介するゲージボゾンの中に有限な質量のあ

る粒子が存在する場合があります。

 

これはゲージ不変性を保証していた対称性が自発的に破れた際に

ヒッグス機構(Higgs mechanism)などによって,元々ゼロ質量だっ

た粒子が有限質量を獲得する場合があるためです。

 

さて,次に物質粒子を示す場の理論において存在する対称性と

ゲージ変換,あるいはゲージ場の関連性について述べてみます。

 

まず,電磁場(光子)と共に荷電粒子を含む系を対象とする量子

電磁力学において,電子などの物質粒子の波動関数,あるいは,

それが第二量子化された粒子場は,粒子がFermi粒子(Fermion)

である場合なら一般にスピノル(spinor)で与えられます。

 

そこで光と電磁相互作用する物質場の粒子がFermi粒子である

として,この粒子の場を表現するスピノルをψ(x)とします。

 

そして,これに対する1パラメータの位相変換:

ψ(x)→ exp(iθ)ψ(x)を考えます。

 

特に,パラメータθが無限小の場合,θの代わりにεと書けば

exp(iε)~ 1+iεによって,

同じ位相変換は,ψ(x) → (1+iε)ψ(x) と書けます。

 

この位相変換に対して,自由粒子のLagrangian密度:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψは明らかに不変です。

 

しかし,もしも位相変換が全ての時空点xμに対して共通な

大域的変換ではない場合,すなわち,パラメータのθまたはε

が定数でなく時空座標xμの関数で与えられ,

 

θ=θ(x),またはε=ε(x)であるような局所的変換の場合,

Lagrangian密度は,=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ

'=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ-γ0γμμθと変換され,

不変ではなく,余分な項がでてきます。

 

ところが,Lagrangian密度が,自由粒子のそれ:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψではなく,電荷eを持った粒子

が電磁場Aμと相互作用している場合のそれ,であるとすれば,

 

この相互作用の効果は,いわゆる極小相互作用変換

(minimal interaction):μ=i∂μ→ pμ-eAμ

=i∂μ-eAμで表現されますから,

  

自由粒子のLagrangian密度に対し,この極小相互作用変換を

実際に行なえば,新しく得られるLagrangian密度の形は

=ψ+γ0μ(i∂μ-eAμ)-m]ψ(x)となるため,

 

ψ(x)→ exp[iθ(x)]ψ(x)なる位相変換と同時に,

eAμ→eAμ-∂μθなるゲージ変換がなされるなら,

局所変換に対しても,こうしたFerm粒子のLagrangian密度

は不変になります。

 

さらに,"自由な電磁場=光子"自身のLagrangian密度をph

すると,ph(1/2)(ε02-μ0-12)=-(c2ε0/4)Fμνμν

ですから,

 

これは,eAμ→ eAμ-∂μθなるゲージ変換に対して不変な

量のみから構成されています。

 

したがって,電荷eを持つ自由な荷電粒子があるだけでは,

局所的位相変換に対して不変でなかった理論に"電磁場=光子"

というゲージ場を加えることで理論が不変になった,

という見方ができます。

 

この考えを発展させて,スピノルψ(x)が,唯1種類の粒子だけで

なく独立な属性(例えばcolor)を持つ複数種類の粒子;ψi(x)

(i=1,2,3,.)の集まりである場合を想定して,

 

これに対する位相変換のパラメータはQEDの場合のようにθ,

またはεの唯1つでなく,複数の値θk またはεk(k=1,2,3,.)

で与えられるとします。

 

通常の座標軸のまわりの回転が角運動量の軸成分を持つ

ベクトルで表わされるのと同様,

 

抽象空間におけるk軸のまわりのθkの回転が,k軸方向

角運動量演算子に相当する生成子:Lkにより,θkk

で与えられるとすることができます。

 

そして,各々の生成子:Lkは,一般にはψi(x)を成分とする

ベクトルに作用する行列作用素で表現され,対応する粒子

の位相変換は,ψ(x) → exp(iΣkθkk)ψ(x)で与えら

れます。

 

しかし,これらパラメータが複数の局所位相変換に対して,

自由粒子場のLagrangian密度を不変にするために必要な複数

のゲージ場は,Lkが行列であることからも想像されるように,

 

"電磁場=光子場"のような可換なゲージ場ではなく,一般に

非可換な場であり,ゲージ変換も,電磁場のそれである:

eAμ→ eAμ-∂μθのような単純な変換でなく,いくらか

複雑になり非線形な項も出現します。

 

こうした原理=ゲージ原理を初めて導入したのは,ヤン(C.N.Yang)

とミルズ(R.L.Mills)です。

 

それ故,ゲージ場はYang-Mills場,上に考察したゲージ理論は

Yang-Mills理論と呼ばれることがあります。

 

いずれにしても,

 

上では引数xμを省略してθk(x)を単にθkと書きました

が,理論が局所的変換θk=θk(x)に対して不変であるなら,

 

これは,あらゆる時空点:x=xμに対しθk(x)が同一である;

つまり,θk(x)=θk(定数)の場合も特別な場合として含んで

ますから,大域的変換に対しても,もちろん理論は不変です。

 

しかしながら,逆に理論に"大域的対称性=大域的不変性"が

あっても,"局所的対称性=局所的不変性"があるとは限りません。

 

内山先生が,生前,Yang and Millsとは独立に発見したと述べられ

ていて,もうちょっと早く発表していれば,Yang-Mills場ではなく,

ウチヤマ場になっていたのではないか?と悔やんでいたらしく,

 

実際には,自身の発見よりかなり後,自分の論文のReferenceに,

Yang and Millsの論文をも添えている1956年の論文を,私的には

Yang and Millsの有名な論文と並べて,共にゲージ理論の代表的

参考文献として挙げておきます。

 

余談はさておき,最後に上述の位相変換を連続群の一種である線形

Lie群に属する変換群の表現であると見て,位相変換に対する理論

の不変性は"対応する変換群に対して理論が不変である"という対

称性を持つと見なし,

 

粒子場やゲージ場は群のユニタリな既約表現や随伴表現で分類

されるとする系統的な見方をしてみます。

 

こう見たときには,電磁気力を媒介するゲージ粒子として

"光子=電磁場"を必要とする,可換な1パラメーターの位相変換

は1パラメータの線形Lie群の1つである1パラメータユニタリ

群であるU(1)に対応していて,

 

上で行なった位相変換不変性は量子電磁力学の理論がU(1)不変

であるという対称性を持つことを意味しています。

 

一方,例えばquark(クォーク)を結合させる強い相互作用を媒介

る非可換なゲージ場に対応するgauge Boson(ゲージボソン)は,

color gluon(カラーグルオン)と呼ばれており,

 

これを必要とする対称性変換である複数パラメーターを持った

ユニタリ変換群は,カラーSU(3)群と呼ばれています。

  

こうした,U(n)やSU(n)のような変換群に属する位相変換の

局所変換対称性に伴なう非可換ゲージ場の共変的量子化は,電磁

場の場合よりもかなり複雑ですが,

  

基本的には補助場Bを導入して行なわれる電磁場の量子化の

"中西・Lautrap理論"の直線的な応用で与えられます。

  

これは,Faddev-popovゴースト(FP-ghost)のようなゴースト

を用いてゲージを固定する定式化を行なうことなどによって,

中西氏の教え子?であろう九後・小嶋(オジマ)氏により,スマート

な付帯条件が与えられて完成されました。

 

なお,理論の大域的対称性と密接に関係して現われる保存量に

ついてのNoetherの定理と関連した過去の記事をいくつか,列挙

しておきます。よろしければ参照してください。

 

まず,2006年9/6の「不確定性,相補性とネーターの定理」,

9/8の「ポアンカレ群と粒子のスピン」,10/8の

WKB近似,ハミルトン・ヤコービ方程式,経路積分」,

 

さらに,2007年5/7の

量子化された場と調和振動子(パラ統計)」,

8/7の「場の演算子とリー群(Lie群)の生成子」,

11/2の「解析力学の初歩」,

 

そして,2008年2/29の「ネーターの定理と場理論

などがあります。

 

また,記事の順番は違うし,ちょっとマニアックな話題ですが

2008年2/21,2/25の「非ネーター保存量」,および,

非ネーター保存量(続き) 」 もあります。

 

今日はこのくらいにします。

 

参考文献:

1.メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

2.中西 (のぼる) 著「場の量子論」(培風館)

3.九後汰一郎「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」(培風館)

 

4.C.N.Yang and .L.Mills,Phys.Review.Vol.96,p191-(1954)  

5.Ryoyu.Utiyma(内山龍雄)

“Invariant Theoretical Interpretation of Interaction”

(Institute for Advanced Study.Princeton New Jersey,

Received July 1955),Physical Revie,Vol.101,pp1597-1607(1956)

  

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コメント

どもTOSHIです。

LorenzはゲージとLorentz-Lorenzの公式だけでした。。。

                TOSHI

投稿: TOSHI | 2008年5月21日 (水) 22時23分

いや、、誤解されると拙いのですが、「ローレンツの電子論,ローレンツ変換,ローレンツ収縮」 は[Lorentz]でいいのですが、このゲージだけが[Lorenz]なんです。敢えて日本語で書けば「ローレンス・ゲージ」になるようで。。

投稿: T_NAKA | 2008年5月21日 (水) 22時21分

 T_NAKAさん,ご指摘ありがとうございます。

 指摘されないと,おそらくずーっと誤解したままでしたね。ローレンツの電子論,ローレンツ変換,ローレンツ収縮全部そうでした。

 昔,専門学校の教壇に立っていて股間のジッパー=社会の窓が開いていたけど90分授業の後半まで誰も指摘してくれなくて気がつかなかったなさけないこともありました。。

               TOSHI   

 

投稿: TOSHI | 2008年5月21日 (水) 21時34分

議論の本質ではないのですが、私のブログでもある人から指摘されたので、念のため。
[Lorentz gauge]→ [Lorenz gauge]
だそうです。(重箱の隅を突くような感じで申し訳ありません。。)

Although this gauge is often erroneously attributed to the Dutch physicist H. A. Lorentz (Griffiths 1998), it was actually published by the Danish physicist L. Lorenz (Lorenz 1867, Whittaker 1989, van Bladel 1991).

投稿: T_NAKA | 2008年5月21日 (水) 17時59分

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