電磁気学と相対論(5)(真空中の電磁気学4)
電磁気学と相対論の続きです。
今回は,まず,
S系 → S'系への時空座標のLorentz変換:
x'μ=Λμνxν(x'=Λx)に対して,
電場E=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),
および,磁場B=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)が,
どのように変換されるかを見ます。
「電磁気学と相対論(1)(特殊相対論の運動学と力学のレヴュー)」
において,
真空中の光速をc,γ≡(1-v2/c2)-1/2とおけば,特殊Lorentz
変換は,t'=γ(t-vx/c2),x'=γ(x-vt),
y'=y,z'=z, つまり,
x'0=γ(x0-vx1/c),x'1=γ(x1-vx0/c),
x'2=x2,x'3=x3 で与えられることを見ました。
これは,変換行列:Λ=(Λμν)が次のようになることを意味します
そして,2階反変テンソルの定義によって,電磁場のテンソルは,
F'μν=ΛμλΛνσFλσと変換されます。
例えば,左辺の(0,i)成分の変換は,F'0i=Λ0λΛiσFλσ
=Λ00ΛikF0k+Λ0kΛi0Fk0+Λ0kΛijFkjと表現されるので,
S'系で電場の1軸成分の変換は,
E'1=-cF'01=γ2E1-(v2γ2/c2)E1
=γ2(1-v2/c2)E1=E1,
すなわち,E'1=E1 となります。
同様にして,E'2=γ(E2-vB3),E'3=γ(E3+vB2)
が得られます。
一方,F'ij=ΛiλΛjσFλσ
=Λi0ΛjkF0k+ΛikΛj0Fk0+ΛikΛilFkl なので,
例えば,B'3=-F'12=(-vγ/c2)E2+γB3
=γ(B3-vE2/c2) を得ます。
そこで,S'系で磁場になる変換をまとめると,
B'1=B1,B'2=γ(B2+vE3/c2),B'3=γ(B3-vE2/c2)
です。
上の特殊Lorentz変換は,慣性座標系間の相対速度vの向きが
x軸に平行な特別な場合,すなわち,v=(v,0,0)なる場合の
変換です。
これを考慮して,vが一般のベクトルである場合の空間軸の回転
を含まないLorentz変換の場合の変換表式:
つまり,上の特殊Lorentz変換での表式を一般化すると,
E'=γE+(v/v2)(vE)(1-γ)+γ(v×B),
B'=γB+(v/v2)(vB)(1-γ)-(γ/c2)(v×E)
となることがわかります。
これの逆変換はvを-vとして,プライムを逆につければいいので,
E=γE'+(v/v2)(vE')(1-γ)-γ(v×B'),
B=γB'+(v/v2)(vB')(1-γ)+(γ/c2)(v×E')
となります。
これらを見ると電場Eと磁場Bは座標変換に対して,ほぼ対称的
に変換され,S系において磁場Bが無く(B=0),電場Eだけが存
在する場合でも,S'系にはゼロでない磁場B'が出現して電場E'
と混在するようになることがわかります。
すなわち,電場Eと磁場Bは,同じ力の場の別の表現であり,
それらを全く独立なものとして区別する必要はない,という
ことが示されています。
例えば,大きさeの電荷を持つ荷電粒子がS系で等速度uで運動
しているとき,この粒子の速度がゼロ,すなわち粒子が静止して
いると見える系をS'系に取り,それをS0系と書いてみます。
S0系での物理量を,全て上添字が 0 で表現することにします。
そして,S0系では電場E0のみがあって,磁場はゼロ:B0=0 と
します。
このとき,Lorentz変換における系の相対速度はv=uであって
上記の逆変換の式で,v=u,γ=(1-u2/c2)-1/2とおけば,
S系では,
E=[E0+(u/u2)(uE0){(1-u2/c2)1/2-1}]/(1-u2/c2)1/2,
B=(u×E0)/{c2(1-u2/c2)1/2}
と書けます。
そして,S0系で大きさeの電荷を持つ粒子が静止して
F0=eE0なる電磁力を受けているとき,
それに対して速度-uで運動しているS系からみると,この
系では電場Eと磁場Bが存在して同じ電荷eを持つ粒子は
速度uで運動しているわけですから,それに働く電磁力は,
F=e(E+u×B) となります。
ここで,以前の記事
「電磁気学と相対論(1)(特殊相対論の運動学と力学のレヴュー)」
で次のように書いたことを思い出します。
"S0系での力がF0のとき,S系における同じ力Fは,
F=F0(1-u2/c2)1/2+(u/u2)(uF0){1-(1-u2/c2)1/2}
=(1-u2/c2)1/2[F0+(u/u2)(uF0)(γ-1)]
と表わされます。
そして,F,F0をそれぞれuに平行な成分と垂直な成分に
分解して,F=F//+F⊥,F0=F0//+F0⊥と表現すれば,
F//=F0//,F⊥=F0⊥(1-u2/c2)1/2:
すなわち,F=F0//+F0⊥(1-u2/c2)1/2 と書けます。
また,E0をEとBで表わせば,
E0=[E+u(uE){(1-u2/c2)1/2-1}/u2+u×B]
/(1-u2/c2)1/2 と書けます。
特に,E0//=E//,E0⊥=(E⊥+u×B)/(1-u2/c2)1/2です。
それ故,電荷eを有する荷電粒子の速度がゼロで,外力として
電気力しか働かないS0系では,F0=eE0 の場合
つまり,F0//=eE0//,F0⊥=eE0⊥なら,同じ粒子が
速度uで運動していると見えるS系では,
F//=eE//,F⊥=e(E⊥+u×B) です。
それ故,F=e(E+u×B) となり磁気力のLorentzの公式が
自然に得られます。”
先に,これを書いたときには電磁場の変換が,
E0=[E+(u/u2)(uE){(1-u2/c2)1/2-1}+u×B]
/(1-u2/c2)1/2となるというこの表式は,単に天下り的に
与えただけでした。
しかし,今は上に記述したように,Minkowski空間の2階反変
テンソルの変換性からの帰結として,公式の成立が保証され
ています。
さて,次にLorenzゲージでの電磁場の基本方程式:
(∂2Aμ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0),または,
□Aμ=sμ/(c2ε0)を解いてみます。
そのためにはD'Alembertian:□の逆演算子□-1がわかればいい
のですが,これは3次元のLaplacian:△=∇2の逆演算子△-1を
求めるのと同じ方法で求めることができます。
Fourier変換に頼って,□-1に対応するGreen関数を求め,これに
よって解Aμを表現するという手法をとることも可能ですが,
ここではより初等的にGreen関数による具体的な解の表現を
求めるGreenの定理までさかのぼってみます。
そして,4次元Minkowski空間を4次元のEuclid空間と見なして,
極座標を取り,最終的には解析接続を用いて元のMinkowski空間
での表現に戻すという方法を取ってみます。
まず,時空座標がxμ(P)で与えられる時空間の固定点
(=事象)Pと,時空座標がxμの任意の点を結ぶ4元ベクトル
を,Rμ≡xμ-xμ(P)とし,Euclid空間の座標と見なすため,
x4≡ix0,R4≡iR0 etc.とおきます。
そして,同じ4元ベクトルの記号(xμ)を,通常の
xμ=(x0,x1,x2,x3)の代わりに,xμ=(x1,x2,x3,x4)
と表わし,同様に(Rμ)もRμ=(R1,R2,R3,R4)と表わす
ことにします。
このとき,□=(∂2/∂xμ∂xμ)=(∂2/∂x0∂x0)-∇2
=-(∂2/∂x4∂x4)-∇2となるので,Euclid座標では,
□=-(∂2/∂xμ∂xμ)です。
そこで,Euclid座標では,
解くべき基本方程式:□Aμ=sμ/(c2ε0)は,
(∂2Aμ/∂xν∂xν)=-sμ/(c2ε0)
を意味します。
また,xμ(P)からxμまでのEuclid距離の2乗をR2とすると,
R2≡RμRμ=R2+R4R4=-(R0R0-R2)ですから,これは
Minkowski表記では,R2=-RμRμに相当します。
しかし,以下ではxμ,Rμの添字μはμ=1,2,3,4を表わし,
□やR2もEuclid座標のそれで表現されているとします。
さて,∂R/∂xμ=Rμ/Rより,R≠0 ,つまりxμ≠xμ(P)
のときには,
□(1/R2)=-(∂2R-2/∂xμ∂xμ)
=-{∂(∂R-2/∂xμ)/∂xμ}
=2[∂{Rμ(R-2)2/∂xμ]}
=2δμμ(R-2)2-8RμRμ(R-2)3 =0 ,
つまり,□(1/R2)=0 です。
そして,一般にφ(x),ψ(x)をx=xμで連続微分可能な関数
であるとするとき,
φ□ψ-ψ□φ=(∂/∂xμ){φ(∂ψ/∂xμ)-ψ(∂φ/∂xμ)}
が成立します。
最後の等式で,ψ(x)≡1/R2とおき,この両辺を点Pを中心として
半径がaの4次元球の外部;R≧a にわたって積分します。
すると,この領域では□(1/R2)=0 ですから,
-∫R≧a(□φ/R2)dx1dx2dx3dx4
=∫R≧a(∂/∂Rμ)φ(∂R-2/∂Rμ)dR1dR2dR3dR4
-∫R≧a[(∂/∂Rμ){R-2(∂φ/∂Rμ)}dR1dR2dR3dR4
を得ます。
右辺の被積分関数は,Rμによる偏微分係数の和ですから,
これは4次元球:R=∞ の3次元球面での3次元面積分
から,R=aの3次元球面での3次元面積分を差し引いた
ものになるはずです。
そして,R=∞ でφ(x)が十分速やかにゼロになるため,
R=∞ での面積分の右辺への寄与はゼロであるとして
よいので,結局,右辺にはR=aの積分のみが残り,
∫R≧a[(∂/∂Rμ){φ(∂R-2/∂Rμ)-R-2(∂φ/∂Rμ)}]d4R
=-∫R=a{φ(∂R-2/∂Rμ)-R-2(∂φ/∂Rμ)}dS
となります。
これは例えば,μ=1では,
∫R≧a[(∂/∂R1){φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}]d4R
=-∫{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}+dR2dR3dR4
+∫{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}-dR2dR3dR4
と書けます。
ここで,最右辺の被積分関数中の{ }±は,R1がそれぞれ,
R1=±[a2-{(R2)2+(R2)2+(R2)2}]1/2=±(a2-ρ12)1/2
で与えられる値を取ることを表現しています。
ただし,ρ12≡(R2)2+(R2)2+(R2)2です。
そして,これを用いるとdR2dR3dR4の積分領域はρ1≦a
と書けます。
上のμ=1に対する式の,μ=2,3,4に対応するものは添字
(1,2,3,4)を巡回的に置換することで得ることができて,
対称性から明らかに,μ=2,3,4に対してもμ=1と同じ積分値
が得られるはずです。
球の半径aは任意なので,これをゼロに近づけます。
このとき,μ=1でのρ1≦aなる領域の体積はa3のオーダー
でゼロに近づきますが,一方,{ }±の中の第2項はR-2=a-2
なるオーダーですから,結局,a→+0 に対して{ }±の中の
第2項の積分はゼロになります。
そこで,∂R-2/∂Rμ=-2Rμ/R4なので,
-∫ρ1≦a{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}+dR2dR3dR4
+∫ρ1≦a{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}-dR2dR3dR4
→ 2φ(P)∫ρ1≦a[2(a2-ρ12)1/2/a4]dR2dR3dR4
=4φ(P)(4π/a4)∫0a(a2-ρ12)1/2ρ12dρ1=π2φ(P)
となります。
結局,a→+0 の極限を取れば,
4π2φ(P)=-∫(□φ/R2)d4x
が得られることがわかりました。
ただし,d4xは4次元体積要素:dx1dx2dx3dx4
の略号です。
特に,φ(P)としてAμを代入すれば,Euclid座標では,
□Aμ=-sμ/(c2ε0)なので,
これは,4π2Aμ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4x
が成立することを意味します。
ここまでは,xμ(μ=1,2,3,4)の全てが実数であると仮定して
進んできましたが,現実の物理学の問題としては,
4元電流密度sμは,x4については実数値に対してでなく,
x4=ix0=ictにおいて,Pにおける時刻t(P)より過去
のt<t(P)に対応する虚数値のx4に対してのみ与えられ
ていると考えられます。
つまり,時空点P:xμ(P)=(ct(P),x(P))における
Aμ(P)=Aμ(x(P),t(P))を決定するための情報は,
時刻t(P)より過去の時刻:t<t(P)における既知の
電流密度su だけのはずです。
当然,時刻t(P)よりも未来:t>t(P)の未知のsμは
Aμ(P)=Aμ(x(P),t(P))には寄与しないはずです。
上記の考察は,情報の伝達が因果的であるべきであるという
条件を導入することに相当しています。
実は電磁場の基本方程式:□Aμ=sμ/(c2ε0)の解はLorenz条件
を与えても,なお一意には決まらなくて境界条件を与える必要が
ありますが,
上記の考察による時間の因果的条件設定は遅延境界条件と呼ばれる
1つの境界条件を与えることに相当しています。
つまり,sμは複素x4平面の虚軸上(-∞,ct(P))に対応する部分
のみで与えられています。
そこでx4平面の実軸(-∞,∞)に対するdx4の積分路に加えて,
そのx4=∞ の終点から,半径が ∞ の半円弧に沿って下半平面
を時計回りに回り,虚軸上のx4=-i∞ の点まで進みます。
そこから虚軸上をx4(P)=ict(P)まで上昇し,トップの点
x4(P)=ict(P)を反時計周りに迂回反転して,虚軸上を下降
し,点x4=-i∞ まで戻ります。
そこから,再び半径 ∞ の下半平面の時計回りの半円弧に沿って,
実軸上x4=-∞ まで進む路を作れば,これは閉路になります
この閉路は,後述する極:x4=ict(P)-ir=x4(P)-ir
を回避し,それが外部になるように周回しているので,閉路全体
にわたる(sμ/R2)のdx4積分はゼロです。
しかも,半径が ∞ の円弧の上のdx4積分の寄与もゼロ
ですから,結局,
[実軸上の(-∞,∞)に対する積分]
=[虚軸上をx4=-i∞ からx4(P)=ict(P)まで上昇しトップ
の点ct(P):x4 (P)=ict(P)を時計周りに迂回反転し虚軸上
x4=-i∞ まで戻る積分] となります。
つまり,虚軸上をx4=-i∞からx4 (P)=ict(P)まで上昇し,
トップの点ct(P)をx4 (P)=ict(P)反時計周りに迂回反転
し虚軸上x4=-i∞まで戻るループ経路をLとすると,
4π2Aμ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4x
={1/(c2ε0)}∫d3x[∫-∞∞(sμ/R2)dx4]
={1/(c2ε0)}∫d3x[∫L(sμ/R2)dx4]
と書けます。
そして,r≡|x-x(P)|とおけば,
R2=r2+(x4-x4(P))2
=(x4-x4(P)+ir)(x4-x4(P)-ir)ですから,
関数(1/R2)はループL内ではx4の関数として1点:
x4=x4(P)-ir にのみ極を持ちます。
関数(sμ/R2)もループL内で,これ以外に極を持たず,積分路L
は負の向きのループなのでCauchyの積分定理によって,
∫L(sμ/R2)dx4
=[-2πisμ/(x4-x4(P)-ir)]x4=x4(P)-ir
=πsμ(x,t(P)-r/c)/r (r=|x-x(P)|)
が得られます。
したがって,4π2Aμ(P)
=1/(c2ε0)∫d3x[∫L(sμ/R2)dx4]
={π/(c2ε0)}∫d3x[sμ(x,t(P)-r/c)/r] です。
故に,Aμ(P)
=∫[sμ(x,t(P)-r/c)/(4πc2ε0r)]dV
となります。
右辺のsμとして時刻t=t(P)の値ではなく,
t=t(P)-r/cでの値を取る必要があることは,
電磁的攪乱が光速度cで伝わることに対応しています。
そこで,このように表現された電磁ポテンシャルAμ(P)
を遅延ポテンシャルと呼びます。
もしも先の閉曲線路をx4の下半平面でなく,上半平面での
半径 ∞ の反時計周りの半円に基づいて取るなら,対応する
x4の極はx4=x4(P)+irとなりますから,
Aμ(P)
=∫[sμ(x,t(P)+r/c)/(4πc2ε0r)]dV
となります。
これは先進ポテンシャルといわれています。
特に大きさがeの点電荷が運動している場合の遅延ポテンシャル
を求めてみます。
点電荷の空間座標xは軌道としてはtの関数なので,
これをx(t)と書くことにします。
しかし,点電荷に対する遅れた時間変数を代入した
sμ(x,t(P)-r/c)は,やや複雑な関数形になります。
すなわち,
s0(x,t-r/c)
=(ce)δ(x-x(t-r/c)),および,
s(x,t-r/c)
=e{dx(t-r/c)/dt}δ(x-x(t-r/c))
です。
そこで,この場合は,
4π2Aμ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4x
なる表式まで戻った方が計算が容易です。
x=x(t)を満たす点以外では,
sμ/(c2ε0)}=(cρ/ε0,ρu/ε0)はゼロなので,
{1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d3x
=(1/R2)(e/(cε0),eu/(c2ε0))
={e/(c2ε0)}(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2) です。
ここに,u=dx/dtは,軌道がx=x(t)で与えられる
点電荷の速度であり,
Uμ=(c/(1-u2/c2)1/2,u/(1-u2/c2)1/2)
は,その4元速度です。
そして,このときのR2は,
R2=(x-x(P))2-c2(t-t(P))2=r2+(x4-x4(P))2
で与えられます。
これは実数のt,あるいは純虚数のx4の関数ですが,
これについては先にやったような遅延条件に対応する
解析接続ができます。
すなわち,
4π2Aμ(P)={e/(c2ε0)}∫L(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2)dx4
と書けますが,被積分関数は複素x4平面上の
R2=r2+(x4-x4(P))2=0 を満たすx4に極を持ちます。
遅延境界条件では,積分に効く極はx4=x4(P)-irです。
そして,x4 ~ {x4(P)-ir} では,
R2=(dR2/dx4){x4-x4(P)+ir}ですが,
dR2/dx4=2RμdRμ/dx4=2RμUμdτ/dx4
=2RμUμ(1-u2/c2)1/2/(ic) です。
また,r=r(t)におけるx4として,x4=x4(P)-ir
を採用しなければなりません。
そこで,Cauchyの積分定理に従って,(1/R2)の留数を求めると
(-2πi)/(dR2/dx4)=πc/{RμUμ(1-u2/c2)1/2}です。
したがって,4π2Aμ(P)
={e/(c2ε0)}∫L(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2)dx4
=πeUμ/(cε0RνUν),
つまり,Aμ(P)=eUμ/(4πcε0RνUν)
が得られます。
Rμは,Pを頂点とする2つの光円錐:
R2=RνRν=-RνRν=0 上の過去の側の面と対象とする
点電荷の世界線xμ=xμ(τ)が交わる点Qへ,事象点Pから
引いた4元ベクトルを示しています。
PからQへと向かう4元ベクトルRμの空間部分をRと書けば,
RνUν=(uR)/(1-u2/c2)1/2-cR0/(1-u2/c2)1/2
={(uR)+R}/(1-u2/c2)1/2 と書けます。
したがって,結局,電荷eが軌道x=x(t)で運動しているとき,
点P;空間座標x(P),時刻t(P)での電磁ポテンシャルAμの
最終的表現として,
φ(P)={e/(4πε0)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c,
A(P)={eu/(4πc2ε0)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c
={eμ0u/(4π)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c
が得られました。
ここで,R=r(t(P)―r/c)-r(P) であり,
R=|R|です。
これは運動する点電荷の Lienard-Wiecheld のポテンシャル
(リエナール・ウィーヘルト)と呼ばれているものです。
Aμ(P)={1/(4πc2ε0)}(eUμ)/(RνUν)なる表現を用いて
事象点Pにおける電磁場テンソルFμν(P)を計算するときには,
Qの固有時τが,R2=-{xμ(τ)-xμ(P)}{xμ(τ)-xμ(P)}
=0 で与えられる点Pの座標の関数であることに注意する必要が
あります。
R2=-{xμ(τ)-xμ(P)}{xμ(τ)-xμ(P)}=0 をxν(P)
で微分すれば,Rμ[(dxμ/dτ){∂τ/∂xν(P)}-δμν]=0 ,
あるいは,{∂τ/∂xν(P)}=Rν/(RμUμ) です。
故に,4πFμν(P)
={e/(c2ε0)}[(d/dτ){Uν/(RλUλ)}]{Rμ/(RσUσ)}
-[(d/dτ){Uμ/(RλUλ)}]{Rν/(RσUσ)},
UμUμ=c2,Uμ(dUμ/dτ)=0 なので,
4πFμν={e/(c2ε0)}(RλUλ)-2{Rμ(dUν/dτ)
-Rν(dUμ/dτ)}-{e/(c2ε0)}(RλUλ)-3
{c2+Rσ(dUσ/dτ)}(RμUν-RνUμ)
が得られます。
これを見ると,4πFμν=Rμaν-Rνaμ,
4πaμ≡{e/(c2ε0)}(RλUλ)-2{(dUμ/dτ)}
-{e/(c2ε0)}(RλUλ)-3{c2+Rσ(dUσ/dτ)}Uμ
なる形になっています。
Fμνに双対(共役)なテンソルをF*μν≡(1/2)εμνλσFνσ
で定義すると,4πFμν=Rμaν-Rνaμの形によって,
FμνF*μν=0 となります。
そしてFμν → F*μνは,(B,E)→(-E,-B)なる変換に
相当するので,FμνF*μν=0 は,(EB)=0 に同等です。
そこで,電場と磁場はあらゆる慣性系で直交していることも
証明されました。
さらに,R2=-RμRμ=0 より,
(4π)2FμνFμν=2(4π)2(B2-E2/c2)
=(Rμaν-Rνaμ)(Rμaν-Rνaμ)
=-2(Rμaμ)2 です。
具体的なaμは,4πaμ
≡{e/(c2ε0)}(RλUλ)-2{(dUμ/dτ)}
-{e/(c2ε0)}(RλUλ)-3{c2+Rσ(dUσ/dτ)}Uμ
で与えられます。
そこで,4πRμaμ=-(e/ε0)/(RλUλ)2となりますから,
結局,(4π)2FμνFμν=2(4π)2(B2-E2/c2)
=-2(e/ε0)2/(RλUλ)4 なる等式が成立します。
したがって,"不変量=Lorentzスカラー"の1つである
(B2-E2/c2)は,どのような運動をする点電荷の作る場
についても,常に負の値を取ることがわかります。
これと,(EB)=0 から,任意の事象Pにおいて,この時空点
の磁場ベクトルB(P)がゼロとなるような慣性系を選ぶこと
が可能なこともわかります。
実際,E'=γE+(v/v2)(vE)(1-γ)+γ(v×B),
B'=γB+(v/v2)(vB)(1-γ)-(γ/c)(v×E)
なる変換において,B'=0 を得るには,v=c(E×B)/E2
と取ればよいことがわかります。
これと(EB)=0 ,および,
(4π)2FμνFμν=2(4π)2(B2-E2/c2)
=-2(e/ε0)2/(RλUλ)4から,v=|v|=cB/E<c
ですから,このようなvを取ることは常に可能です。
特に,点電荷が一定の速度で等速度運動をしている場合には,
dUμ/dτ=0 なので,荷電粒子の"軌道=世界線"は直線に
なり,電磁場の強さを示すテンソルFμνは特に簡単になって
Fμν=-[e/{(4πε0)(RλUλ)3}](RμUν-RνUμ)
となります。
さらに,S系の原点を適切に取れば,x0軸と粒子の世界線L
が同一平面上にあるようにできます。
以前にも述べましたが,Rμ=xμ(τ)-xμ(P)であって,
Rμを点P:xμ(P)から遅延光円錐,すなわち過去側の光円錐
上の点Q:xμ(τ)まで向かうベクトルPQとし,Rμ=PQの
世界線Lの上への射影ををAQとして,AからPへと向かう
ベクトルAPをx(1)μと書くと,
x(1)μUμ=0 ,かつ,-x(1)μRμ=x(1)μx(1)μ
です。
そこで,x(1)μ=-Rμ+Uμ{(RλUλ)/c2}であり,
それ故,x(1)μx(1)μ=-(RλUλ)2/c2 が得られます。
点電荷が静止しているようなS'系ではU'μ=(c,0)
ですからx'0軸は世界線Lに平行です。
そして,S'系では事象Pに対応する3次元空間の
点P'と静止点電荷を結ぶ空間ベクトルをr'とすれば,
x'(1)μ=(0,r')ですから,
x'(1)μx'(1)μ=-(R'λU'λ)2/c2は,
r'2=(R'λU'λ)2/c2より,U'μR'μ=cr'です。
そして,UμRμはスカラーなので,UμRμ=U'μR'μ
=cR'0=cr'です。ただし,r'≡|r'|です。
さらに,RμUν-RνUμ=-(x(1)μUν-x(1)νUμ)
が成立するので,
Fμν=-[e/{(4πε0)(RλUλ)3}](RμUν-RνUμ)
は,Fμν=[e/{(4πε0)(cr')3}](x(1)μUν-x(1)νUμ)
です。
ところで,L上の任意の点からPに向かう任意のベクトルyμは,
aを任意定数としてyμ=x(1)μ-aUμと表わせますが,aを
適切に取れば,これらのyμうちでS系での時間成分y0がゼロ
であるものをとることができます。
そして,こう取ったときのyμをx(2)μと記することにします。
こうすればS系では,x(2)μ=(0,r)と書けます。
ここでrは事象Pが起こったときと同時刻の点電荷の空間位置
からPに引いた空間ベクトルです。
この意味で,このrは,Lienard-Wiecheldのポテンシャル:
φ(P)={e/(4πε0)}//{(uR)+R}|t=t(P)-r/c,
A(P)={eμ0u/(4π)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c
におけるRとは異なります。
Lienard-WiecheldポテンシャルのRはRμの空間部分で,
これは同時刻のベクトルではありません。
そして
x(2)μ=x(1)μ-aUμとなるようにaを取ったときのFμνは,
Fμν=[e/{(4πε0)(cr’)3}](x(2)μUν-x(2)νUμ)
となります。
それ故,電場と磁場についての陽な表式として,
E=er/[(4πε0){r'3(1-u2/c2)1/2}],
B=eμ0(u×r)/[(4π){r'3(1-u2/c2)1/2}]
が得られます。
ところで,点電荷が静止しているS'系ではU'μ=(c,0)
ですから,x'(2)μ=x'(1)μ-aU'μにより,S'系では,
x'(2)μとx'(1)μの空間成分は共にr'であって一致します。
S系に対するS'系の相対速度はuなので,x(2)μ=(0,r)
がS→S'の変換でx(2)μ=(x'(2)0,r')になるのは,
r'=r+(u/u2)(ur){(1-u2/c2)-1/2-1}なることを
意味します。
そこで,r'=|r'|={r2+(ur)2/(c2-u2)}1/2
を得ます。
ところで,r,およびr'をuに平行な成分と垂直な成分に分割
してr=r//+r⊥,r'=r'//+r'⊥と書けば,
r'//=r///(1-u2/c2)1/2,r'⊥=r⊥ です。
すなわち,rとr'はLorentz収縮の関係になってることが
わかります。
実は,上に求めたE=er/[(4πε0){r’3(1-u2/c2)1/2}],
B=e(u×r)/[(4πcε0){r'3(1-u2/c2)1/2}],
r=r'+(u/u2)(ur'){1-(1-u2/c2)1/2}/(1-u2/c2)1/2
なる公式は,
Coulombの法則による球対称な静電場に,座標変換に対する電場,
磁場の変換公式:E=γE'+(u/u2)(uE')(1-γ)-γ(u×B'),
B=γB'+(u/u2)(uB')(1-γ)+(γ/c)(u×E),
γ≡(1-u2/c2)-1/2
を用いることで簡単に求められます。
すなわち,電場がE'=er'/{(4πε0)r'3},磁場がB'=0 で
原点O'に大きさeの静止した点電荷のみがある場合の,
S'系でのCoulomb場を考察し,
点電荷と同じ速度uで運動するS系での電場Eと磁場Bを
求めるための変換式:E=γE'+(u/u2)(uE')(1-γ),
B=γ(u×E),γ≡(1-u2/c2)-1/2 から,
E={e/(4πε0)}[r'+(u/u2)(ur'){(1-u2/c2)-1/2-1]
/{r'3(1-u2/c2)1/2},
B={eμ0/(4π)}(u×r')/ /{r'3(1-u2/c2)1/2},
すなわち,
E={er/(4πε0)}/{r2+(ur)2/(c2-u2)}3/2(1-u2/c2)1/2},
B={eμ0/(4π)}(u×r⊥)/[{r2+(ur)2/(c2-u2)}3/2
(1-u2/c2)1/2] が得られるわけです。
一般的な表式だとかえってわかりづらい,ということもあるので,
u=(u,0,0)の特別な場合を想定し,さらにt=0 で電荷eが
x=y=z=0 の原点にあったとします。
すると,Lienard-Wiecheldのポテンシャルは,
φ(x,y,zt)
=[e/{4πε0(1-u2/c2)1/2}]
/[{(x-ut)/(1-u2/c2)1/2}2+y2+z2]1/2,
A(x,y,zt)=(u/c2)φ(x,y,zt) となります。
そして,特にu=0 なら,
φ(x,y,zt)={e/(4πε0)}/[x2+y2+z2]1/2,
A(x,y,zt)=0 ですが,これは普通の静電Coulomb場
を表わしていますから,理にかなっています。
これから,u→cのときには,φ→ {e/(4πε0)}/|x-ct|,
A=uφ/c2となって,E=-∇φ-∂A/∂t,B=∇×A
ですから,
点電荷による電場は,E→-∇φ-(1/c)(∂φ/∂t)によって
ゼロに近づき,電磁力へのほとんどの寄与は電荷の運動=電流
によって発生する磁場に転化することがわかります。
今日はこのくらいにしておきます。
参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)
「相対性理論」(みすず書房)
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