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2008年5月

2008年5月30日 (金)

電磁気学と相対論(6)(真空中の電磁気学5)

続きです。

 

まず,このシリーズの最初の記事である,

電磁気学と相対論(1)(特殊相対論の運動学と力学のレヴュー)

から引用します。(若干,修正しています。)

 

(※引用開始)

"有限質量mを持ち速度で運動する粒子の運動方程式:

/dt=は,tの代わりにdτ≡(1-u2/c2)1/2dt

満たすスカラーである固有時τを使用し,の代わりに,

Minkowskiの力M/(1-u2/c2)1/2を用いて表現すれ

ば,d/dτ=Mとなります。

 

が空間ベクトルで,dτがスカラーなので,左辺のd/dτ

はMinkwski空間の4元ベクトルの空間ベクトル成分となります。

 

そこで右辺のMもそうです。

 

したがって,元の運動方程式d/dt=の両辺に,

1/(1-u2/c2)1/2を掛けてd/dτ=Mとし,運動量

の固有時間τによる微分とMinkowskiの力M等式という

形で表現したものは座標系に依存しない表現です。

 

また,運動方程式d/dt=と独立ではなくこれから

導かれる式ですが,エネルギー保存則を表わす式:

dE/dt=(Fu)も同じくdE/dτ=(M)と書ける

ので,((M)/c,M)はMinkowski空間の4元ベクトル

です。

 

そこで,これは4元エネルギー運動量ベクトル:

μ≡(E/c,)=(mc/(1-u2/c2)1/2,m/(1-u2/c2)1/2)

と同じ変換性を持ちます。

 

ただし,mは粒子の"質量=静止質量"です。

 

そこで,FMμ≡((M)/c,M)と書いてこれをMinkowskiの

4元力と呼べば,運動方程式は4次元共変な形で,

dpμ/dτ=FMμ と書けます。

 

そして,粒子の位置をxμ=(ct,)と書くと,

 

4元速度;Uμ≡dxμ/dτ

=(c/(1-u2/c2)1/2,/(1-u2/c2)1/2)

によって,μ=mUμとなりますから,

dpμ/dτ=FMμはd(mUμ)/dτ=FMμ

と変形されます。"

(引用終わり※)

 

ここで,電荷eを有する荷電粒子が電場,磁場の中を

速度で運動している系を考えると,これに働く電磁力は

Lorentzの公式=e(×)で与えられます。

 

そこで,この電磁力に対するMinkowskiの4元力の表現は,Mμ

=e((Eu)/{c(1-u2/c2)1/2},(×)/(1-u2/c2)1/2)

です。

 

そして,=(E1,E2,E3)=-c(F01,F02,F03),

=(B1,B2,B3)=-(F23,F31,F12)なるテンソル表現によれば

Mμ=eFμννが成立することがわかります。

 

 したがって,質量m,電荷eを持つ粒子が電磁場Aμの中を運動

 するときの4次元共変な運動方程式は,

 d(mUμ)/dτ=FMμ=eFμνν なる形に書けることが

 わかりました。

 

 ただし,Fμν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνです。

 

より一般の電荷密度ρの帯電物体が速度で並進運動している

場合について考えるために,速度で運動する質点粒子の力学を

S系で密度μを持ち速度で並進運動する連続体に一般化する

ことを考えます。

 

そのために,まず,この運動物体の速度がゼロ,つまり,

"物体が静止していると見える系=静止系"をS0系とし,この系

での物理量には全て上添字 0 を付けて表現します。

 

対象物体において,S系で密度μを持つ点の近傍の微小体積

ΔVとすれば,この領域の物体の全質量はμΔVで与えら

れますが,質量はLorentzスカラーですから,静止系S0での同

じ領域の体積をΔV0とし密度をμ0とすると,

μΔV=μ0ΔV0が成立するはずです。

 

ところが,ΔV=ΔV0(1-u 2/c2)1/2ですから,

μ=μ0/(1-u 2/c2)1/2 なる関係式が成り立ちます。

 

そして,スカラー量μΔV=μ0ΔV0が,質点の場合の運動方程式

dpμ/dτ=d(mUμ)/dτ=FMμでのmに相当しますから,

 

4元運動量pμ=mUμには,pμ=μΔVUμ=μ0ΔV0μ

対応します。

 

一方,Minkowskiの4元力FMμ≡((M)/c,M)は,

具体的には,

Mμ=((Fu)/{c(1-u2/c2)1/2},/(1-u2/c2)1/2)

で与えられます。

 

これは,上述の密度μを持つ点の近傍ΔVでは,ΔVと書いて

Mμ=((fu)ΔV/{c(1-2/c2)1/2},

ΔV/(1-2/c2)1/2)=((fu)/c,)ΔV0

と表わすことができます。

 

そこで4元力密度をfμ≡((fu)/c,)によって定義すれば,

Mμ=fμΔV0と書けます。

 

以上から,質点粒子に対する運動方程式:

dpμ/dτ=d(mUμ)/dτ=FMμは,連続体に対しては,

d(μ0μΔV0)/dτ=fμΔV0となることがわかります。

 

そこで,もしも,質量湧き出しも吸い込みもなくて運動中に物体

の固有質量が保存されるなら,つまりd(μ0ΔV0)/dτ=0 なら

運動方程式はμ0dUμ/dτ=fμとなるのですが,

一般には,d(μ0ΔV0)/dτ=0 が成立するとは限りません。

 

一般に,dV/dt=∫σσ=V(div)dV

V(∇)dVが成立するので,ΔVが微小なら,

d(ΔV)/dt=(div)ΔV(∇)ΔVです。

 

また,一般に,d(μ0ΔV0)/dt=d(μΔV)/dt

=(dμ/dt)ΔV+μ{d(ΔV)/dt}

=[dμ/dt+μdiv]ΔV

=[∂μ/∂t+div(μ)]ΔVです。

 

それ故,d(μ0ΔV0)/dτ=0 なる式が成立することは,

質量保存の連続方程式∂μ/∂t+div(μ)

=dμ/dt+μdiv=0 が成立することと同等であること

がわかります。

 

0系ではdt0=dτですから,d(ΔV)/dt=(div)ΔVは

d(ΔV0)/dτ=(div00)(ΔV0)を意味しますが,

 

速度が物体の4元速度Uμについて∂Uμ/∂xμを考えると,

これはLorentzスカラーなので,S0系での4元速度U=(c,0)

とS系のそれについて,等式:∂U/∂x=∂Uμ/∂xμ

成立します。

 

定義:Uμ(c/(1-u2/c2)1/2,/(1-u2/c2)1/2)から,

∂U0/∂x0=cu(∂u/∂x0)/(1-u2/c2)3/2なので,

 

0 のS0系では∂U0/∂x0はゼロですから,

∂Uμ/∂xμ=∂U/∂x=div00

が得られます。

 

故にd(ΔV0)/dt=(div00)ΔV0=(∂Uμ/∂xμ)ΔV0

です。

 

これを用いると,d0ΔV0)/dτ

=(dμ0/dτ)ΔV0+μ0d(ΔV0)/dτ

=[(dμ0/dτ)+μ0(∂Uμ/∂xμ)]ΔV0

と書けます。

 

それ故,運動方程式d(μ0μΔV0)/dτ=fμΔV0は,

[d(μ0μ)/dτ+μ0μ(∂Uν/∂xν)]ΔV0

=fμΔV0と変形されます。

 

また,d(μ0μ)/dτ

={∂(μ0μ)/∂xν}(dxν/dτ)

={∂(μ0μ)/∂xν}Uνですから,

 

結局,連続物体の運動方程式は,

∂(μ0μν)/∂xν=fμ となります。

 

そこで,この連続体のエネルギー運動量テンソルを,

θμν≡μ0μνで定義すれば,運動方程式は,

∂θμν/∂xν=fμと,エネルギー運動量の保存則を示

す形になります。

 

さて,S系で電荷密度ρの帯電物体が速度で並進運動して

いる場合の考察に入ります。

 

ρ0をS0系における電荷密度とすると,ρ=ρ0/(12 2/c2)1/2

ですから,上と同じようにS系,S0系での微小体積をΔV,ΔV0

とすると,この領域の総電荷量はρΔV=ρ0ΔV0です。

 

そして,今の場合に,粒子の運動方程式:

d(mUμ)/dτ=FMμ=eFμννの右辺の電荷eに

相当するのはρΔV=ρ0ΔV0です。

 

そこで,この帯電体の運動方程式は,

d(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0=ρ0ΔV0μνν

となります。

 

のときの4元力の密度はfμ=ρ0μννですが,

4元電流密度sμ=(cρ,ρ)=ρ0μを用いると,

μ=ρ0μνν=Fμννとなりますから,

 

運動方程式は,

d(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0=FμννΔV0

とも書けます。

 

d(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0と同等な,

∂θμν/∂xν=∂(μ0μν)/∂xν=fμなる

表現では,∂θμν/∂xν=∂(μ0μν)/∂xν

=Fμννですね。

 

さて,次に電磁場を解析力学の形式で表現することを考えます。

 

まず,既に見たようにFμν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν

すれば,Maxwellの方程式のうちの4つの方程式:

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0

は自動的に満たされます。

 

一般に系全体のLagrangian密度を,LagrangianをLとすると,

L=∫dV0です。

 

そして,作用積分はS=∫Ldx0=∫ΩdΣ と書けます。

 

dΣは,dΣ=dx0dV=cdτdV0なる4次元体積要素

でありスカラー量です。

 

ところで,自由粒子のLagrangianは,L=-mc2(1-u2/c2)1/2

ですが,電磁場との相互作用があるとき,電磁場自身の項:

(-c2ε0/4)∫V(Fμνμν)dVを除けば,

L=-mc2(1-u2/c2)1/2+eAu-eφ です。

  

そして,-mc2(1-u2/c2)1/2を連続体の場合の式に書き直せば

-∫μdVc2(1-2/c2)1/2=-∫μ02dVとなります。

 

Au-eφについては,∫ρdV(Au-φ)

=-∫ρ0μμdV=-∫Aμμ dVです。

 

そこで系全体のLagrangan密度は,

=-(c2ε0/4)Fμνμν-Aμμ-μ02

=(-c2ε0/4)×

(∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν)(∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν)

-Aμμ-μ02 と書けます。

 

このLagrangian密度を採用するとき,"任意変分に対して,

作用S=∫Ldx0=∫ΩdΣが停留値を取るべきである。"

という作用原理からMaxwellの基本方程式を導くことが

できます。

 

すなわち,Ωの境界でδAμ=0 を満たす任意の電磁場Aμ

の変分δAμに対して,δS=0 を要求します。

 

ただし,この変分の際にはsμとμ0は一定に保たれるとします。

 

すると,δ(∂Aν/∂xμ)=∂(δAν)/∂xμなので,

δS=∫δdΣ

=∫[(c2ε0)Fμν∂(δAμ)/∂xν-(δAμ)sμ]dΣ

=∫[-(c2ε0)∂Fμν/∂xν-sμ](δAμ)dΣ=0

です。

 

変分δAμは各μについて独立であり,しかも任意である

ことから,-(c2ε0)∂Fμν/∂xν-sμ=0,

つまり,電磁場の基本方程式:

∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)

が得られます。

 

一方,電磁場Aμを一定に保って,荷電粒子の世界線のxμの変分

δxμに対してδS=0 を要求します。

 

S=∫dΣ=c∫dV0dτ=∫dV0τ1τ2dτです。

 

微小体積要素:ΔV0=∫dV0の領域を取って

∫(-Aμμ-μ02)dΣ

=c∫[-Aμρ0ΔV0(dxμ/dτ)-μ0ΔV02]dτ

=-c∫{ρ0ΔV0μ(dxμ/dτ)}dτ-c3∫{μ0ΔV0}dτ

を考えます。

 

そして,世界線の変分δxμ(τ)に対して,

δ(dxμ/dτ)=d(δxμ)/dτより,

δ∫τ1τ2[Aμ(dxμ/dτ)]dτ=

τ1τ2[(∂Aμ/∂xν)δxν(dxμ/dτ)

+Aμd(δxμ)/dτ]dτ

 

=∫τ1τ2[(∂Aμ/∂xν)Uμ-dAν/dτ]δxνdτ

=∫τ1τ2[(∂Aν/∂xμ)Uν-(∂Aμ/∂xν)Uν}]δxμdτ

=∫τ1τ2(Fμνν)δxμdτ

です。

 

電荷ρ0ΔV0が変動しないとすると,

-cδ∫{ρ0ΔV0μ(dxμ/dτ)}dτ

=-c∫τ1τ20ΔV0μνν)δxμdτ を得ます。

 

一方,前にも見たように世界線の変分に対して質量Δm≡μ0ΔV0

が変わることを考慮すれば,

δ(Δmdτ)=δ(Δm)dτ+Δm(δdτ)ですが,

cdτ=(dxμdxμ)1/2より,

cδ(Δmdτ)=(1/2)δ{Δm(dxμdxμ)}(dxνdxν)-1/2

=ΔmUμδ(dxμ/dτ)(Uνν)-1/2dτ

=c-1ΔmUμδ(dxμ/dτ)dτ

です。

 

故に,δ∫τ1τ2Δmdτ

=(1/c2)∫τ1τ2{ΔmUμδ(dxμ/dτ)}dτ

=-(1/c2)∫τ1τ2{d(ΔmUμ)/dτ}δxμdτ

です。

 

以上から,作用原理がδS=c∫τ1τ2[-ρ0μννΔV0

+d(μ0μΔV0)/dτ]δxνdτ=0 と表わされること

がわかります。

 

したがって粒子の運動方程式として,

d(μ0μΔV0)/dτ=ρ0μννΔV0

が得られます。

 

これは,前に4元力密度がfμ=ρ0μνν=Fμνν

与えられ,粒子の運動方程式が,d(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0

となること,

 

あるいはそれと同等ですが,

粒子のエネルギー運動量テンソルθμν=μ0μνに対して,

その保存方程式:∂θμν/∂xν=fμ=Fμννが成立する

ことを改めて示すものです。

 

さて,Maxwellの方程式を用いれば上記の4元力の密度:

μ=Fμννはある対称な反変テンソルの4次元発散

として表現できることを示すことができます。

 

すなわち,Maxwellの運動方程式:

∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)によって,

μ=Fμννの右辺に,sμ=-(c2ε0)∂Fμν/∂xν

を代入すれば,

 

-fμ/(c2ε0)=-Fμλλ/(c2ε0)

=Fμλ(∂Fλν/∂xν)

=∂(Fμλλν)/∂xν-(∂Fμλ/∂xν)Fλν

となります。

 

ここで,∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0

とFμνの反対称性により,

 

右辺第2項は,(∂Fμλ/∂xν)Fλν

=(∂Fμν/∂xλ)Fνλ=(∂Fνμ/∂xλ)Fλν

=(1/2)[(∂Fμλ/∂xν)+(∂Fνμ/∂xλ)]

=-(1/2)(∂Fλν/∂xμ)Fλν=-(1/4)∂(Fλνλν)/∂xμ

と書けます。

 

結局,Sμν≡-(c2ε0)[Fλμλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

=-(c2ε0)[ημδλδλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

とおけば,Sνμ=Sμνであり,fμ=-∂Sμν/∂xν

と書けます。

 

そこで,4元力の密度fμ=Fμννが対称な反変テンソル

μνの4次元発散として表現できることがわかりました。

 

対称テンソルSμνはトレースレス(対角和がゼロ)であることも

わかります。

 

すなわち,

μμ=-(c2ε0)[Fλμλμ-(1/4)4(Fσρσρ)]=0 です。

 

μνの空間成分:

ij=-(c2ε0)[Fλiλj-(1/4)ηij(Fσρσρ)]に,

=(E1,E2,E3)=-c(F01,F02,F03),

=(B1,B2,B3)=-(F23,F31,F12)の左辺の電場,磁場

を代入すると,

 

ij=(c2ε0)[Fλiλj-(1/4)ηij(Fσρσρ)

=(-c2ε0)[F0i0j+Fkikj-(1/2)δij(22/c2)]

=ε0ij+μ0-1ij-δijμ0-12

+(1/2)δij0-12-ε02)

となります。

 

すなわち,4元力密度はfμ=-∂Sμν/∂xνであって,

μνの空間成分をSij≡-tijとすると,

ij=ε0ij+μ0-1ij-(1/2)δij02+μ0-12)

と表現できて,tijはMaxwellの応力テンソルと呼ばれている

3次元空間のテンソルに一致しています。

 

また,3次元ベクトルの成分を,

k/c≡Sk0=S0k=-(c2ε0)Fλ0λkで定義すれば,

=(×μ0-1)=×であって,

 

これは電磁エネルギーの流れを示すポインティングベクトル

(Poynting vector)になっています。

  

そしてh≡S00とおくと,

h=-(c2ε0)[Fλ0λ0-(1/2)(22/c2)]

=(1/2)(ε02+μ0-12)=(1/2)(EDBH)ですが,

これは電磁エネルギー密度を表わしています。

 

そこで,fμ=-∂Sμν/∂xνでのμ=0 の式は,

0=(fu)/c=(1/c){-div-∂h/∂t},

すなわち,∂h/∂t+div=-(fu)です。

 

これを,系全体を囲むある定まった閉曲面σで囲まれた有限

な体積Vにおいて体積積分し,W≡∫VhdVとすると,Gauss

の定理によって-dW/dt=∫σσ+∫V(fu)dV

となります。

 

これは,(Vにおける場の総エネルギーWの減少分)

=(境界面σから流出するエネルギー量)

+(電磁場による力dVがVの外部になす仕事)

という等式で表わされ,エネルギー保存を意味すると

解釈できます。

 

他方,μ=1,2,3についての式は,

i=∂tij/∂xj-∂(Si/c2)/∂tです。

 

静電場の場合には右辺第2項はゼロですから,

i=∂tij/∂xjです。

 

これは真空も含めた物質中の力の密度をMaxwellの

応力テンソルの空間微分で表現した有名な力の密度に関する

Maxwellの式です。

 

すなわち,fi=∂tij/∂xjはGaussの定理により,

i=∫VidV=∫V(∂tij/∂xj)dV=∫σijjdσ

を意味しています。

 

物体に働く応力の総体が=∫VdVであるとき,これは

応力テンソルτij≡-tijがあって,j軸に垂直な面に働く力

の第i成分がτijjdσで与えられることを示していて,

むしろ,Faraday的な見方ですね。

  

※ (注):応力テンソルτijというのは,を応力が働く向きの

法線ベクトルとするとき,j軸に垂直な面要素dσに働く力の

第i成分がτijjdσで与えられる,というのがその定義です。

 

ただし,閉曲面境界で囲まれた物体が受ける応力を考える際には,

慣例として物体境界の面要素dσの法線を外向き法線と定義

するため,普通との向きが逆になるので,電磁力の物体に及ぼす

力の密度がfi=-∂τij/∂xj=∂tij/∂xjとなるのですね。)

 

以上はMinkoeskiの考察によるものですが,Minkowskiと対立して

いたらしいAbrahamの指摘によれば,閉じた系で運動量が保存さ

れるためには,ベクトル量/c2を電磁場の運動量密度と

解釈する必要があるということです。

 

なぜなら,次のような考察ができるからです。

 

すなわち,上で実行した積分と同じく,系全体を囲む定まった

閉曲面Σで囲まれた有限な体積Vにわたって,

i=∂tij/∂xj-∂(Si/c2)/∂tの両辺を体積積分すれば,

Gaussの定理によって∫V(∂tij/∂xj)dVは閉曲面Σ上でtij

の面積分となります。

 

閉曲面の上では電磁場がゼロなので応力tijもゼロですから,

=∫VdV=-(d/dt)(∫VdV)となります。

 

ここではもちろん物体に作用する電磁力の総体です。

 

これはニュートンの運動の第2法則が示すところによれば,

単位時間当りの力学的運動量mの増加分に等しいはずです。

 

つまり,dm/dt=∫VdV となるはずです。

 

そこで,∫VdV=-(d/dt)(∫VdV)は,

(d/dt)(m+∫VdV)=0  と書くことができます。

 

そこで,時間的に一定なベクトル量として全運動量が存在する

ためには,力学的運動量mの他に∫VdVにある(定数)を加

えたものが電磁的運動量であると仮定して,力学的運動量と

電磁的運動量の和が全運動量であるとしなければなりません。

 

それ故,[/c2+(定数)]を電磁運動量密度と考えることが

できますが,電磁場がないときには電磁運動量密度はゼロで

あるべきですから,この(定数)はゼロであり/c2

電磁運動量密度を表わしていると考えてよいと思われます。

 

さらに*/hを電磁エネルギーの伝播速度と定義すれば

電磁運動量密度は/c2=(h/c2)*と書けます。

 

これは一般にエネルギーE=∫εdVの粒子が速度で運動

しているとき,その力学的エネルギー密度がεなら運動量密度

=(ε/c2)で与えられるという関係に類似しています。

 

すなわち,エネルギー:E=mc2/(1-u2/c2)1/2

運動量:=m/(1-u2/c2)1/2=(E/c2)を持つ

自由粒子の相対論的質量はm/(1-u2/c2)1/2=(E/c2)

で定義されます。

 

そこで,もしもE=∫εdV,m=∫μdVなら,この粒子の

相対論的質量に対応する相対論的密度が,

μ/(1-u2/c2)1/2=(ε/c2)で与えられるという事実から

のアナロジーで,

 

今の場合は,(h/c2)は*/hで運動する電磁場の相対論

密度を示していると考えるわけです。

 

しかも,偏った単色電磁波では(EB)=0 であり,,

つまりε0=μ0-1であって,ε0μ0=1/c2なので,

*=|*|=||/h

=2μ0-1||||/(ε02+μ0-12)=c

です。

 

そこで,これが電磁波の伝播速度を示していると考えるなら,

それは光速cに等しいので,電磁波のエネルギーは光速cで

伝わります。

 

一方,任意の運動している荷電粒子の場でも(EB)=0 ですが,

||/||=ε0||/(μ0-1||)=α≧1なので,

*=|*|=2cα/(1+α2)≦cです。

 

いずれにしても,u*は光速c以下なので,/c2=(h/c2)*

を電磁場の運動量密度とするAbrahamの描像は正しいと思われます。

 

しかし,これを3次元で体積積分して近似すると,電磁運動量

は(W/c2)*ではなく,=(4/3)(W/c2)*で与えられる

ので,4元ベクトルにならないとの考察があります。

  

すなわち,荷電粒子の速度*の大きさが光速cに比べて小さい

ときには,=∫dV=(1/c2)∫dV

=(1/c2)∫(×)dV=(ε0/c2)∫{×(*×)}dV

={2ε0*/(3c2)}∫2dV です。

 

同じ近似で,W=(ε0/2)∫2dVなので

=(4/3)(W/c2)* となるというわけです。

 

しかし,後の考察で4元速度Uμで運動する荷電粒子と相互作用

している電磁場のエネルギー運動量はGμ=(1/c2)∫Sμ0dV

ではなく,Gμ=(1/c2)∫SμννdVで与えられるのが正し

いということで,先に矛盾があると見えたのは,定義,または,

近似方法の誤りであると指摘されているようです。

 

さて,Tμν≡θμν+Sμνと書いて,これを系全体の

全エネルギー運動量テンソルと定義します。

 

このとき,粒子に働く4元力の密度:fμは電磁場のエネルギー

運動量テンソルSμνをテンソルポテンシャルとして

μ=-∂Sμν/∂xνと表現されます。

 

そして,この電磁力によって加速される粒子の運動方程式が

∂θμν/∂xν=fμで与えられるので,

∂Tμν/∂xν=∂θμν/∂xν+∂Sμν/∂xν=0

なる式が得られます。

 

これは閉じた系では,全系のエネルギーと運動量が保存される

ことを示しています。

 

μν=θμν+Sμνを陽に書いてみます。

 

まず,これの空間成分は,

ij=θij-tij=μuij/(1-2/c2)1/2-tij

となります。

 

また,先に電磁エネルギーの流れ密度を示すポインティング

ベクトルを×=μ0-1×として,Sk/c=S0k

定義しましたが,

 

ここでは改めてSk/c≡T0kと定義し直すと,

=μ02/(1-u2/c2)+×

=μc2/(1-u2/c2)1/2×

と書けます。

 

右辺は全エネルギーの流れ密度を表わしていると見えます。

 

そして,cgk≡Tk0で与えられる成分gkを持つ3次元ベクトル

とすると,=μ/(1-u2/c2)1/2+(×)/c2は,

系の全運動量密度であると解釈されます。

 

先にはS00が電磁エネルギー密度を表わすことを示し,これを

hと表記しましたが,今度はT00=θ00+S00を改めてhと書き

h=μc2/(1-u2/c2)1/2+(1/2)(ε02+μ0-12)

=μc2/(1-u2/c2)1/2+(1/2)(EDBH)と表わせば,

これは系の全エネルギー密度を与えるものであることが

わかります。

 

そして,Tμνのトレース(対角和)は,

μμ=θμμ=μ02=μ02/(1-u2/c2)1/2

となります。

 

これで,とりあえず真空中の電磁気学を中心とした話について

終わりにし,次回からのこのシリーズの記事では,物質中の

電磁気学の話をしたいと思います。

 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)

「相対性理論」(みすず書房),

砂川重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店)

 

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2008年5月27日 (火)

電磁気学と相対論(5)(真空中の電磁気学4:補遺)

前記事は若干長くなり過ぎたので,意図していたことを全部書く

ことができませんでした。

 

前記事の前半では,電場と磁場が同じ力の場の別表現であると

うことを強調したかったのです。

 

すなわち,帯電体は,それが静止しているときに受ける力は電場

のみによるものですが,運動しているときには帯電体という意味

よりも"運動する電荷=電流"という意味に変わり,電荷に働く力

は電気力から電流に働く磁気力に移行することを明確に述べた

かったのです。

 

例えば,S系において運動する電荷の速度をとし,電荷に固定

されていて,それが静止していると見える座標系をS0系とすれ

ば,S系での電荷密度はρ=ρ0/(1-u2/c2)1/2で与えられます。

 

これと帯電体の体積の変換性:ΔV=ΔV0(1-2/c2)1/2

から,常にρΔV=ρ0ΔV0ですから,ある物質が担う電荷量

座標変換の"不変量=Lorentzスカラー"であることも見ました。

 

そして,電気力の大きさは電荷密度ρではなくスカラーである

総電荷量ρΔVに比例します。

 

粒子に固定されたS0系では電場00//0のみが存在して

磁場00は存在しないとすると,電荷に働く力0は電気力

のみで,00//0,0//=e0//,0=e0です。

 

そして,S系で電荷に働く力://は,

//=e//=e0//0//,および,=e(×)

=e0(1-u2/c2)1/20(1-u2/c2)1/2 です。

 

そこで,u→cに対し,//0//,→ 0 ですから,

に平行な方向の力は不変ですが,に垂直な方向の力は限り

なく小さくなります。

 

以下は,電磁気ではなく重力の話ですが,

 

光速に近い速度で運動する質量mの宇宙船が,質量Mの太陽に

よって受ける重力(引力)を,宇宙船が静止している立場から見た

ときには,逆に太陽が光速に近い速度-で運動していると見え

ます。

 

そして,この系では静止質量Mの太陽の相対論的質量M',

つまり,質量+(運動エネルギー)/c2は,u~cでは,

M'=M/(1-u2/c2)1/2なので,莫大になります。

 

しかも,一般相対論では重力は質量のみに比例するのではなく,

そのエネルギー全体に比例して働くとされています。

 

一見して,形が電気力のCoulombの法則と似ている,弱重力近似

ニュートンの万有引力の法則:=-GMm/r3において,

 

右辺のMは相対論的質量M'=M/(1-2/c2)1/2で置き換えら

れて,'=-GM'm'/r'3=GMm'/{r'3(1-2/c2)1/2}

とすべきではないか?という主張もありますが,

"見方=座標系"を変えただけで重力がはるかに大きくなったと

いう話は聞いたことがありません。

 

一般相対論ではなく,特殊相対論と重力の折衷ですが,

一般に任意の力についての変換性から,u→cに対して,

//0//,0(1-u2/c2)1/2 → 0 となることを

見れば,こうした馬鹿げたこと,を考える余地はないことが

わかります。

 

さらに,上述の定性的話ではなく,定量的な例で電磁場の相対性

を明確にしておきます。

 

,定常電流Iが流れている導線と,それとは別にその導線に平行

に等速度で動いている1つの負電荷-q(q>0)があるとします。

 

この系において働く電磁力を互いに慣性運動をする2つの準拠系

から眺めた場合を考察します。

 

準拠座標系の1つSは導線に固定したもので,その系では,

負電荷を担う粒子は運動していますが,導線は全く動かない

と見える座標系です。

 

そして,もう1つは導線に平行にSに対して速度で運動する,

負電荷を担う粒子の方に固定されたものです。

 

この準拠座標系をS'系と呼ぶことにします。

 

まず,Sでは定常電流Iは流れていますが,導線内の任意の点では

各時刻に電気的に中性であって導線は全く帯電していませんから

磁場はあっても電場はゼロです。

 

この場合,導線の中心から位置までの垂直距離をrとすると,

磁場()に対し真空中のAnpereの法則:∫C=μ0I

が成立するので,

 

導線の中心を中心とする半径rの円上の点における接ベクトル

の向きを示す単位ベクトルで,電流Iの正の向きに対して右ネジ

をなすものをを()とすると,

 

磁場=μ0I/(2πr)=I/(2πε02r)

となります。

 

負電荷-qの粒子に働く電磁力は,=-q(×)

ですから,

 

それは大きさが,

F=μ0Iqu/(2πr)=Iqu/(2πε02r)で,

運動速度が電流Iの向きと逆のときには,

粒子が導線の中心方向に引かれる引力の向き,

が電流Iの向きと同じときには斥力の向き

を持つベクトルになります。

 

ここで,この導線の平均断面積をA,電荷のキャリアとしての

導線中の伝導電子の電荷密度をρ-,運動速度をとすると,

電流はρ-Aなので,q>0,ρ-<0 によって,

F=-μ0qρ-Auv/(2πr)=-qρ-Auv/(2πε02r)

となります。

 

そして,特にuとvが等しい場合には,v=uと置いて,

F=-μ0qρ-Au2/(2πr)=-qρ-Au2/(2πε02r)

となります。

 

次に,この状況を荷電粒子が静止しているS'系から見ると,

導線内の伝導電子も荷電粒子と並走しているので,S'系

では共に静止していますが,導線は速度-で走っているの

で導線の伝導電子以外の残りの電荷密度ρ+を持つ正電荷も

で走ります。

 

このρ+は粒子の静止している場所にも磁場'を作るはずです。

しかし負電荷粒子は静止していますからこれに働く磁気力は

ゼロです。

 

しかし,S系では粒子に磁気力が働いて実際に導線に垂直な向き

に進路を変えますから,S系とは働く力の大きさが違ってもS'系

でも粒子に何らかの電磁気的力は働くはずです。

 

しかし,S'系では負電荷粒子が静止していることによって,これ

に働く磁気力はゼロですから,その力は電気力であるはずです。

 

すなわち,運動する導線が電場をつくって負電荷粒子は電気力を

受けると考えられます。

 

したがって,電気的に中性の導線も運動すると中性ではなくなり,

帯電して見える必要があります。

 

ここで先の記事で求めた電荷密度の表現,ρ=ρ0/(1-u2/c2)1/2

によればS'系の導線は導線が静止していると見えるS系に対して

速度-で運動しているので,

S'系での電荷密度は,ρ'+=ρ+/(1-u2/c2)1/2と書けます。

 

一方,S系で速度で運動していた伝導電子はS'系では導線が

速度-で運動しているために静止していますから,

負電荷の密度は逆にρ-=ρ'-/(1-u2/c2)1/2,あるいは,

ρ'-=ρ-(1-u2/c2)1/2を満たしています。

 

そこで,導線のS'系での正味の電荷密度は,

ρ'=ρ'++ρ'-=ρ+/(1-u2/c2)1/2+ρ-(1-u2/c2)1/2

ですが,導線はS系では中性なことが明らかですから,

ρ++ρ-=0 ,すなわちρ+=-ρ-です。

 

よって,ρ'=-ρ-2/{c2(1-u2/c2)1/2}が得られます。

 

このネットの電荷によるS'系での電場は断面積Aの帯電円筒

によるものですから,位置での電場を'='()とし

の中心軸からの距離をrとするとき,Gaussの定理によって,

2πrE'=ρ'A/ε0= -ρ-Au2/{ε02(1-u2/c2)1/2}

が成立します。

 

そこで,E'=ρ'A/(2πε0r)

=-ρ-Au2/{2πε02r(1-u2/c2)1/2} ですから,

S'系で負電荷粒子が受ける電気力は,'=-q'です,

その大きさはF'=-qρ-Au2/{2πε02r(1-u2/c2)1/2}

で与えられます。

 

これとS系での磁気力の表現式:

F=-μ0qρ-Au2/(2πr)

=-qρ-Au2/(2πε02r)を比較すると,

F'=F/(1-u2/c2)1/2 となっています。

 

そして,力の向きも全く同じなので,

'=/(1-u2/c2)1/2 なる関係式が得られました。

 

結局,上に求めたS'系での力'はS系での力をS'系での力

に変換した表式と完全に一致しています。

 

これで両者は同一の力の別表現であることがわかりました。

 

今日は補足説明なので,これくらいで終わります。

 

参考文献:R.P.Feynman 著(宮島龍興 訳)

「ファインマン物理学Ⅲ電磁気学」(岩波書店),

メラー 著(永田恒夫,伊藤大介訳)「相対性理論」(みすず書房)

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2008年5月24日 (土)

電磁気学と相対論(5)(真空中の電磁気学4)

電磁気学と相対論の続きです。

 

今回は,まず,

  

S系 → S'系への時空座標のLorentz変換:

x'μ=Λμνν(x'=Λx)に対して,

電場=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),

および,磁場=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)が,

どのように変換されるかを見ます。

 

電磁気学と相対論(1)(特殊相対論の運動学と力学のレヴュー)

において,

 

真空中の光速をc,γ≡(1-v2/c2)-1/2とおけば,特殊Lorentz

変換は,t'=γ(t-vx/c2),x'=γ(x-vt),

y'=y,z'=z, つまり,

x'0=γ(x0-vx1/c),x'1=γ(x1-vx0/c),

x'2=x2,x'3=x3 で与えられることを見ました。

 

これは,変換行列:Λ=(Λμν)が次のようになることを意味します

そして,2階反変テンソルの定義によって,電磁場のテンソルは,

F'μν=ΛμλΛνσλσと変換されます。

 

例えば,左辺の(0,i)成分の変換は,F'0i=Λ0λΛiσλσ

=Λ00Λik0k+Λ0kΛi0k0+Λ0kΛijkjと表現されるので,

 

S'系で電場の1軸成分の変換は,

 

E'1=-cF'01=γ21-(v2γ2/c2)E1

=γ2(1-v2/c2)E1=E1,

 

すなわち,E'1=E1 となります。

 

同様にして,E'2=γ(E2-vB3),E'3=γ(E3+vB2)

が得られます。

 

一方,F'ij=ΛiλΛjσλσ

=Λi0Λjk0k+ΛikΛj0k0+ΛikΛilkl なので,

 

例えば,B'3=-F'12=(-vγ/c2)E2+γB3

=γ(B3-vE2/c2) を得ます。

 

そこで,S'系で磁場になる変換をまとめると,

B'1=B1,B'2=γ(B2+vE3/c2),B'3=γ(B3-vE2/c2)

です。

 

上の特殊Lorentz変換は,慣性座標系間の相対速度の向きが

x軸に平行な特別な場合,すなわち,=(v,0,0)なる場合の

変換です。

 

これを考慮して,が一般のベクトルである場合の空間軸の回転

を含まないLorentz変換の場合の変換表式:

つまり,上の特殊Lorentz変換での表式を一般化すると,

 

'=γ+(/v2)(vE)(1-γ)+γ(×),

'=γ+(/v2)(vB)(1-γ)-(γ/c2)(×)

 

となることがわかります。

  

これの逆変換はを-として,プライムを逆につければいいので,

=γ'+(/v2)(vE')(1-γ)-γ(×'),

=γ'+(/v2)(vB')(1-γ)+(γ/c2)(×')

となります。

 

これらを見ると電場と磁場は座標変換に対して,ほぼ対称的

に変換され,S系において磁場が無く(=0),電場だけが存

在する場合でも,S'系にはゼロでない磁場'が出現して電場'

と混在するようになることがわかります。

 

すなわち,電場と磁場は,同じ力の場の別の表現であり,

それらを全く独立なものとして区別する必要はない,という

ことが示されています。

 

例えば,大きさeの電荷を持つ荷電粒子がS系で等速度で運動

しているとき,この粒子の速度がゼロ,すなわち粒子が静止して

いると見える系をS'系に取り,それをS0系と書いてみます。

 

0系での物理量を,全て上添字が 0 で表現することにします。

 

そして,S0系では電場0のみがあって,磁場はゼロ:0=0 と

します。

 

このとき,Lorentz変換における系の相対速度はであって

上記の逆変換の式で,,γ=(1-u2/c2)-1/2とおけば,

 

S系では,

=[0+(/u2)(uE0){(1-u2/c2)1/2-1}]/(1-u2/c2)1/2,

=(×0)/{c2(1-u2/c2)1/2} 

と書けます。

 

そして,S0系で大きさeの電荷を持つ粒子が静止して

0=e0なる電磁力を受けているとき,

 

それに対して速度-で運動しているS系からみると,この

系では電場と磁場が存在して同じ電荷eを持つ粒子

速度で運動しているわけですから,それに働く電磁力は,

=e(×) となります。

 

ここで,以前の記事

電磁気学と相対論(1)(特殊相対論の運動学と力学のレヴュー)

で次のように書いたことを思い出します。

 

"S0系での力が0のとき,S系における同じ力は,

0(1-u2/c2)1/2+(/u2)(uF0){1-(1-u2/c2)1/2}

=(1-u2/c2)1/2[0+(/u2)(uF0)(γ-1)]

と表わされます。

 

そして,,0をそれぞれに平行な成分と垂直な成分に

分解して,//,00//0と表現すれば,

//0//,0(1-u2/c2)1/2:

 

すなわち,0//0(1-u2/c2)1/2 と書けます。

 

また,0で表わせば,

0[(uE){(1-u2/c2)1/2-1}/u2×]

/(1-u2/c2)1/2 と書けます。

 

特に,0////,0=(×)/(1-u2/c2)1/2です。

 

それ故,電荷eを有する荷電粒子の速度がゼロで,外力として

電気力しか働かないS0系では,0=e0 の場合

 

つまり,0//=e0//,0=e0なら,同じ粒子が

速度運動していると見えるS系では,

//=e//,=e(×) です。

 

それ故,=e(×) となり磁気力のLorentzの公式が

自然に得られます。”

 

先に,これを書いたときには電磁場の変換が,

0[+(/u2)(uE){(1-u2/c2)1/2-1}+×]

/(1-u2/c2)1/2となるというこの表式は,単に天下り的に

与えただけでした。

 

しかし,今は上に記述したように,Minkowski空間の2階反変

テンソルの変換性からの帰結として,公式の成立が保証され

ています。

 

さて,次にLorenzゲージでの電磁場の基本方程式:

(∂2μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0),または,

□Aμ=sμ/(c2ε0)を解いてみます。

 

そのためにはD'Alembertian:□の逆演算子□-1がわかればいい

のですが,これは3次元のLaplacian:△=∇2の逆演算子△-1

求めるのと同じ方法で求めることができます。

 

Fourier変換に頼って,□-1に対応するGreen関数を求め,これに

よって解Aμを表現するという手法をとることも可能ですが,

 

ここではより初等的にGreen関数による具体的な解の表現を

求めるGreenの定理までさかのぼってみます。

 

そして,4次元Minkowski空間を4次元のEuclid空間と見なして,

極座標を取り,最終的には解析接続を用いて元のMinkowski空間

での表現に戻すという方法を取ってみます。

 

まず,時空座標がxμ(P)で与えられる時空間の固定点

(=事象)Pと,時空座標がxμの任意の点を結ぶ4元ベクトル

を,μ≡xμ-xμ(P)とし,Euclid空間の座標と見なすため,

4≡ix0,R4≡iR0 etc.とおきます。

 

そして,同じ4元ベクトルの記号(xμ)を,通常の

μ=(x0,x1,x2,x3)の代わりに,xμ=(x1,x2,x3,x4)

と表わし,同様に(Rμ)もRμ=(R1,R2,R3,R4)と表わす

ことにします。

 

このとき,□=(∂2/∂xμ∂xμ)=(∂2/∂x0∂x0)-∇2

=-(∂2/∂x4∂x4)-∇2となるので,Euclid座標では,

□=-(∂2/∂xμ∂xμ)です。

 

そこで,Euclid座標では,

解くべき基本方程式:□Aμ=sμ/(c2ε0)は,

(∂2μ/∂xν∂xν)=-sμ/(c2ε0)

を意味します。

 

また,xμ(P)からxμまでのEuclid距離の2乗をR2とすると,

2≡Rμμ2+R44=-(R002)ですから,これは

Minkowski表記では,R2=-Rμμに相当します。

 

しかし,以下ではxμ,Rμの添字μはμ=1,2,3,4を表わし,

□やR2もEuclid座標のそれで表現されているとします。

 

さて,∂R/∂xμ=Rμ/Rより,R≠0 ,つまりxμ≠xμ(P)

ときには,

 

□(1/R2)=-(∂2-2/∂xμ∂xμ)

=-{∂(∂R-2/∂xμ)/∂xμ}

=2[∂{Rμ(R-2)2/∂xμ]}

=2δμμ(R-2)2-8Rμμ(R-2)3 =0 ,

 

つまり,□(1/R2)=0 です。

 

そして,一般にφ(x),ψ(x)をx=xμで連続微分可能な関数

であるとするとき,

φ□ψ-ψ□φ=(∂/∂xμ){φ(∂ψ/∂xμ)-ψ(∂φ/∂xμ)}

が成立します。

 

最後の等式で,ψ(x)≡1/R2とおき,この両辺を点Pを中心として

半径がaの4次元球の外部;R≧a にわたって積分します。

 

すると,この領域では□(1/R2)=0 ですから, 

-∫R≧a(□φ/R2)dx1dx2dx3dx4

=∫R≧a(∂/∂Rμ)φ(∂R-2/∂Rμ)dR1dR2dR3dR4

-∫R≧a[(∂/∂Rμ){R-2(∂φ/∂Rμ)}dR1dR2dR3dR4 

を得ます。

 

右辺の被積分関数は,Rμによる偏微分係数の和ですから,

これは4次元球:R=∞ の3次元球面での3次元面積分

から,R=aの3次元球面での3次元面積分を差し引いた

ものになるはずです。

 

そして,R=∞ でφ(x)が十分速やかにゼロになるため,

R=∞ での面積分の右辺への寄与はゼロであるとして

よいので,結局,右辺にはR=aの積分のみが残り,

 

R≧a[(∂/∂Rμ){φ(∂R-2/∂Rμ)-R-2(∂φ/∂Rμ)}]d4

=-∫R=a{φ(∂R-2/∂Rμ)-R-2(∂φ/∂Rμ)}dS

 

となります。

 

これは例えば,μ=1では,

 

R≧a[(∂/∂R1){φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}]d4

=-∫{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}dR2dR3dR4

+∫{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}dR2dR3dR4

  

と書けます。

 

ここで,最右辺の被積分関数中の{ }±は,R1がそれぞれ,

1=±[a2-{(R2)2+(R2)2+(R2)2}]1/2=±(a2-ρ12)1/2

で与えられる値を取ることを表現しています。

 

ただし,ρ12≡(R2)2+(R2)2+(R2)2です。

 

そして,これを用いるとdR2dR3dR4の積分領域はρ1≦a

と書けます。

 

上のμ=1に対する式の,μ=2,3,4に対応するものは添字

(1,2,3,4)を巡回的に置換することで得ることができて,

対称性から明らかに,μ=2,3,4に対してもμ=1と同じ積分値

が得られるはずです。

 

球の半径aは任意なので,これをゼロに近づけます。

 

このとき,μ=1でのρ1≦aなる領域の体積はa3のオーダー

ゼロに近づきますが,一方,{ }±の中の第2項はR-2=a-2

なるオーダーですから,結局,a→+0 に対して{ }±の中の

第2項の積分はゼロになります。

 

そこで,∂R-2/∂Rμ=-2Rμ/R4なので,  

-∫ρ1≦a{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}dR2dR3dR4

ρ1≦a{φ(∂R-2/∂R1)-R-2(∂φ/∂R1)}dR2dR3dR4

 

→ 2φ(P)∫ρ1≦a[2(a2-ρ12)1/2/a4]dR2dR3dR4

=4φ(P)(4π/a4)∫0a(a2-ρ12)1/2ρ12dρ1=π2φ(P)

となります。

 

結局,a→+0 の極限を取れば,

2φ(P)=-∫(□φ/R2)d4

が得られることがわかりました

  

ただし,d4xは4次元体積要素:dx1dx2dx3dx4

の略号です。

 

特に,φ(P)としてAμを代入すれば,Euclid座標では,

□Aμ=-sμ/(c2ε0)なので,

 

これは,2μ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4

が成立することを意味します。

 

ここまでは,xμ(μ=1,2,3,4)の全てが実数であると仮定して

進んできましたが,現実の物理学の問題としては,

 

4元電流密度μは,x4については実数値に対してでなく,

4=ix0=ictにおいて,Pにおける時刻t(P)より過去

のt<t(P)に対応する虚数値のx4に対してのみ与えられ

ていると考えられます。

 

つまり,時空点P:xμ(P)=(ct(P),(P))における

μ(P)=Aμ((P),t(P))を決定するための情報は,

時刻t(P)より過去の時刻:t<t(P)における既知の

電流密度su だけのはずです。

 

当然,時刻t(P)よりも未来:t>t(P)の未知のsμ

μ(P)=Aμ((P),t(P))には寄与しないはずです。

 

上記の考察は,情報の伝達が因果的であるべきであるという

条件を導入することに相当しています。

 

実は電磁場の基本方程式:□Aμ=sμ/(c2ε0)の解はLorenz条件

を与えても,なお一意には決まらなくて境界条件を与える必要が

ありますが,

 

上記の考察による時間の因果的条件設定は遅延境界条件と呼ばれる

1つの境界条件を与えることに相当しています。

 

つまり,sμは複素x4平面の虚軸上(-∞,ct(P))に対応する部分

のみで与えられています。

 

そこでx4平面の実軸(-∞,∞)に対するdx4の積分路に加えて,

そのx4=∞ の終点から,半径が ∞ の半円弧に沿って下半平面

を時計回りに回り,虚軸上のx4=-i∞ の点まで進みます。

 

そこから虚軸上をx4(P)=ict(P)まで上昇し,トップの点

4(P)=ict(P)を反時計周りに迂回反転して,虚軸上を下降

し,点x4=-i∞ まで戻ります。

 

そこから,再び半径 ∞ の下半平面の時計回りの半円弧に沿って,

実軸上x4=-∞ まで進む路を作れば,これは閉路になります

 

 

 

この閉路は,後述する極:x4=ict(P)-ir=x4(P)-ir

を回避し,それが外部になるように周回しているので,閉路全体

にわたる(sμ/R2)のdx4積分はゼロです。

 

しかも,半径が ∞ の円弧の上のdx4積分の寄与もゼロ

ですから,結局,

 

[実軸上の(-∞,∞)に対する積分]

=[虚軸上をx4=-i∞ からx4(P)=ict(P)まで上昇しトップ

の点ct(P):x4 (P)=ict(P)を時計周りに迂回反転し虚軸上

4=-i∞ まで戻る積分] となります。

 

 

 

つまり,虚軸上をx4=-i∞からx4 (P)=ict(P)まで上昇し,

トップの点ct(P)をx4 (P)=ict(P)反時計周りに迂回反転

し虚軸上x4=-i∞まで戻るループ経路をLとすると,

 

2μ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4

={1/(c2ε0)}∫d3x[∫-∞(sμ/R2)dx4]

={1/(c2ε0)}∫d3x[∫(sμ/R2)dx4]

 

と書けます。

 

そして,r≡|(P)|とおけば,

2=r2+(x4-x4(P))2

=(x4-x4(P)+ir)(x4-x4(P)-ir)ですから,

関数(1/R2)はループL内ではx4の関数として1点:

4=x4(P)-ir にのみ極を持ちます。

 

関数(sμ/R2)もループL内で,これ以外に極を持たず,積分路L

は負の向きのループなのでCauchyの積分定理によって,

 

(sμ/R2)dx4

=[-2πisμ/(x4-x4(P)-ir)]x4=x4(P)-ir

=πsμ(,t(P)-r/c)/r (r=|(P)|)

が得られます。

 

したがって,4π2μ(P)

=1/(c2ε0)∫d3x[∫(sμ/R2)dx4]

={π/(c2ε0)}∫d3x[sμ(,t(P)-r/c)/r] です。

  

故に,Aμ(P)

=∫[sμ(,t(P)-r/c)/(4πc2ε0r)]dV

となります。

 

右辺のsμとして時刻t=t(P)の値ではなく,

t=t(P)-r/cでの値を取る必要があることは,

電磁的攪乱が光速度cで伝わることに対応しています。

 

そこで,このように表現された電磁ポテンシャルAμ(P)

を遅延ポテンシャルと呼びます。

 

もしも先の閉曲線路をx4の下半平面でなく,上半平面での

半径 ∞ の反時計周りの半円に基づいて取るなら,対応する

4の極はx4=x4(P)+irとなりますから,

 

μ(P)

=∫[sμ(,t(P)+r/c)/(4πc2ε0r)]dV

となります。

 

これは先進ポテンシャルといわれています。

 

特に大きさがeの点電荷が運動している場合の遅延ポテンシャル

を求めてみます。

  

点電荷の空間座標は軌道としてはtの関数なので,

これを(t)と書くことにします。

 

しかし,点電荷に対する遅れた時間変数を代入した

μ(,t(P)-r/c)は,やや複雑な関数形になります。

 

すなわち,

0(,t-r/c)

=(ce)δ((t-r/c)),および, 

(,t-r/c)

=e{d(t-r/c)/dt}δ((t-r/c))

です。

 

そこで,この場合は,

2μ(P)={1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d4

なる表式まで戻った方が計算が容易です。

 

(t)を満たす点以外では,

μ/(c2ε0)}=(cρ/ε00)はゼロなので,

{1/(c2ε0)}∫(sμ/R2)d3

=(1/R2)(e/(cε0),e/(c2ε0))

={e/(c2ε0)}(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2) です。

 

ここに,=d/dtは,軌道が(t)で与えられる

点電荷の速度であり,

μ=(c/(1-u2/c2)1/2,/(1-u2/c2)1/2)

は,その4元速度です。

 

そして,このときのR2は,

2=((P))2-c2(t-t(P))2=r2+(x4-x4(P))2

で与えられます。

 

これは実数のt,あるいは純虚数のx4の関数ですが,

これについては先にやったような遅延条件に対応する

解析接続ができます。

 

すなわち,

2μ(P)={e/(c2ε0)}∫(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2)dx4

と書けますが,被積分関数は複素x4平面上の

2=r2+(x4-x4(P))2=0 を満たすx4に極を持ちます。

 

遅延境界条件では,積分に効く極はx4=x4(P)-irです。

 

そして,x4 ~ {x4(P)-ir} では,

2=(dR2/dx4){x4-x4(P)+ir}ですが,

dR2/dx4=2RμdRμ/dx4=2Rμμdτ/dx4

=2Rμμ(1-u2/c2)1/2/(ic) です。

 

また,r=r(t)におけるx4として,x4=x4(P)-ir

を採用しなければなりません。

 

そこで,Cauchyの積分定理に従って,(1/R2)の留数を求めると

(-2πi)/(dR2/dx4)=πc/{Rμμ(1-u2/c2)1/2}です。

 

したがって,4π2μ(P)

={e/(c2ε0)}∫(1-u2/c2)1/2(Uμ/R2)dx4

=πeUμ/(cε0νν),

つまり,Aμ(P)=eUμ/(4πcε0νν)

が得られます。

 

μは,Pを頂点とする2つの光円錐:

2=Rνν=-Rνν=0 上の過去の側の面と対象とする

点電荷の世界線xμ=xμ(τ)が交わる点Qへ,事象点Pから

引いた4元ベクトルを示しています。

 

PからQへと向かう4元ベクトルRμの空間部分をと書けば,

νν(uR)/(1-u2/c2)1/2-cR0/(1-u2/c2)1/2

={(uR)+R}/(1-u2/c2)1/2 と書けます。

 

したがって,結局,電荷eが軌道(t)で運動しているとき,

点P;空間座標(P),時刻t(P)での電磁ポテンシャルAμ

最終的表現として,

 

φ(P)={e/(4πε0)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c,

 

(P)={e/(4πc2ε0)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c

={eμ0/(4π)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c

 

が得られました。

 

ここで,(t(P)―r/c)-(P) であり,

R=||です。

 

これは運動する点電荷の Lienard-Wiecheld のポテンシャル

(リエナール・ウィーヘルト)と呼ばれているものです。

 

μ(P)={1/(4πc2ε0)}(eUμ)/(Rνν)なる表現を用いて

事象点Pにおける電磁場テンソルFμν(P)を計算するときには,

Qの固有時τが,R2=-{xμ(τ)-xμ(P)}{xμ(τ)-xμ(P)}

=0 で与えられる点Pの座標の関数であることに注意する必要が

あります。

 

2=-{xμ(τ)-xμ(P)}{xμ(τ)-xμ(P)}=0 をxν(P)

で微分すれば,Rμ[(dxμ/dτ){∂τ/∂xν(P)}-δμν]=0 ,

あるいは,{∂τ/∂xν(P)}=Rν/(Rμμ) です。

 

故に,4πFμν(P)

={e/(c2ε0)}[(d/dτ){Uν/(Rλλ)}]{Rμ/(Rσσ)}

-[(d/dτ){Uμ/(Rλλ)}]{Rν/(Rσσ)},

 

μμ=c2,Uμ(dUμ/dτ)=0 なので,

4πFμν={e/(c2ε0)}(Rλλ)-2{Rμ(dUν/dτ)

-Rν(dUμ/dτ)}-{e/(c2ε0)}(Rλλ)-3

{c2+Rσ(dUσ/dτ)}(Rμν-Rνμ)

が得られます。

 

これを見ると,4πFμν=Rμν-Rνμ,

4πaμ≡{e/(c2ε0)}(Rλλ)-2{(dUμ/dτ)}

-{e/(c2ε0)}(Rλλ)-3{c2+Rσ(dUσ/dτ)}Uμ

なる形になっています。

 

μνに双対(共役)なテンソルをF*μν≡(1/2)εμνλσνσ

で定義すると,4πFμν=Rμν-Rνμの形によって,

μν*μν=0 となります。

 

そしてFμν → F*μνは,(,)→(-,-)なる変換に

相当するので,Fμν*μν=0 は,(EB)=0 に同等です。

 

そこで,電場と磁場はあらゆる慣性系で直交していることも

証明されました。

 

さらに,R2=-Rμμ=0 より,

(4π)2μνμν=2(4π)2(22/c2)

=(Rμν-Rνμ)(Rμν-Rνμ)

=-2(Rμμ)2 です。

 

具体的なaμは,4πaμ

≡{e/(c2ε0)}(Rλλ)-2{(dUμ/dτ)}

-{e/(c2ε0)}(Rλλ)-3{c2+Rσ(dUσ/dτ)}Uμ

で与えられます。

 

そこで,4πRμμ=-(e/ε0)/(Rλλ)2となりますから,

結局,(4π)2μνμν=2(4π)2(22/c2)

=-2(e/ε0)2/(Rλλ)4 なる等式が成立します。

 

したがって,"不変量=Lorentzスカラー"の1つである

(22/c2)は,どのような運動をする点電荷の作る場

についても,常に負の値を取ることがわかります。

 

これと,(EB)=0 から,任意の事象Pにおいて,この時空点

の磁場ベクトル(P)がゼロとなるような慣性系を選ぶこと

が可能なこともわかります。

 

実際,'=γ+(/2)(vE)(1-γ)+γ(×),

'=γ+(/2)(vB)(1-γ)-(γ/c)(×)

なる変換において,'=0 を得るには,=c(×)/2

と取ればよいことがわかります。

 

これと(EB)=0 ,および,

(4π)2μνμν=2(4π)2(22/c2)

=-2(e/ε0)2/(Rλλ)4から,v=||=cB/E<c

ですから,このようなを取ることは常に可能です。

 

特に,点電荷が一定の速度で等速度運動をしている場合には,

dUμ/dτ=0 なので,荷電粒子の"軌道=世界線"は直線に

なり,電磁場の強さを示すテンソルFμνは特に簡単になって

μν=-[e/{(4πε0)(Rλλ)3}](Rμν-Rνμ)

となります。

 

さらに,S系の原点を適切に取れば,x0軸と粒子の世界線L

が同一平面上にあるようにできます。

 

以前にも述べましたが,Rμ=xμ(τ)-xμ(P)であって,

μを点P:xμ(P)から遅延光円錐,すなわち過去側の光円錐

の点Q:xμ(τ)まで向かうベクトルPQとし,Rμ=PQの

世界線Lの上への射影ををAQとして,AからPへと向かう

ベクトルAPをx(1)μと書くと,

(1)μμ=0 ,かつ,-x(1)μμ=x(1)μ(1)μ

です。

 

そこで,x(1)μ=-Rμ+Uμ{(Rλλ)/c2}であり,

それ故,x(1)μ(1)μ=-(Rλλ)2/c2 が得られます。

 

点電荷が静止しているようなS'系ではU'μ=(c,0)

ですからx'0軸は世界線Lに平行です。

 

そして,S'系では事象Pに対応する3次元空間の

点P'と静止点電荷を結ぶ空間ベクトルを'とすれば,

x'(1)μ=(0,')ですから,

 

x'(1)μx'(1)μ=-(R'λU'λ)2/c2は,

r'2=(R'λU'λ)2/c2より,U'μR'μ=cr'です。

 

そして,Uμμはスカラーなので,μμ=U'μR'μ

=cR'0=cr'です。ただし,r'≡|'|です。

 

さらに,Rμν-Rνμ=-(x(1)μν-x(1)νμ)

が成立するので,

μν=-[e/{(4πε0)(Rλλ)3}](Rμν-Rνμ)

は,μν=[e/{(4πε0)(cr')3}](x(1)μν-x(1)νμ)

です。

 

ところで,L上の任意の点からPに向かう任意のベクトルyμは,

aを任意定数としてyμ=x(1)μ-aUμと表わせますが,aを

適切に取れば,これらのyμうちでS系での時間成分y0がゼロ

であるものをとることができます。

 

そして,こう取ったときのyμをx(2)μと記することにします。

 

こうすればS系では,x(2)μ=(0,)と書けます。

 

ここでは事象Pが起こったときと同時刻の点電荷の空間位置

からPに引いた空間ベクトルです。

  

この意味で,このは,Lienard-Wiecheldのポテンシャル:

φ(P)={e/(4πε0)}//{(uR)+R}|t=t(P)-r/c,

(P)={eμ0/(4π)}/{(uR)+R}|t=t(P)-r/c

におけるとは異なります。

  

Lienard-WiecheldポテンシャルのはRμの空間部分で,

これは同時刻のベクトルではありません。

 

そして

(2)μ=x(1)μ-aUμとなるようにaを取ったときのμνは,

μν[e/{(4πε0)(cr’)3}](x(2)μν-x(2)νμ)

となります。

 

それ故,電場と磁場についての陽な表式として,

=e/[(4πε0){r'3(1-u2/c2)1/2}],

=eμ0(×)/[(4π){r'3(1-u2/c2)1/2}]

が得られます。

 

ところで,点電荷が静止しているS'系ではU'μ=(c,0)

ですから,x'(2)μ=x'(1)μ-aU'μにより,S'系では,

x'(2)μとx'(1)μの空間成分は共に'であって一致します。

 

S系に対するS'系の相対速度はなので,x(2)μ=(0,)

がS→S'の変換でx(2)μ=(x'(2)0,')になるのは,

'=+(/u2)(ur){(1-u2/c2)-1/2-1}なることを

意味します。

 

そこで,r'=|'|={2+(ur)2/(c2-u2)}1/2

を得ます。

 

ところで,,および'をに平行な成分と垂直な成分に分割

して//,'='//'と書けば,

'/////(1-2/c2)1/2,'⊥ です。

 

すなわち,'はLorentz収縮の関係になってることが

わかります。

 

実は,上に求めた=e/[(4πε0){r’3(1-u2/c2)1/2}],

=e(×)/[(4πcε0){r'3(1-u2/c2)1/2}],

'+(/u2)(ur'){1-(1-u2/c2)1/2}/(1-u2/c2)1/2

なる公式は,

 

Coulombの法則による球対称な静電場に,座標変換に対する電場,

磁場の変換公式:=γ'+(/u2)(uE')(1-γ)-γ(×'),

=γ'+(/u2)(uB')(1-γ)+(γ/c)(×),

γ≡(1-u2/c2)-1/2 

を用いることで簡単に求められます。

 

すなわち,電場が'=e'/{(4πε0)r'3},磁場が'=0 で

原点O'に大きさeの静止した点電荷のみがある場合の,

S'系でのCoulomb場を考察し,

 

点電荷と同じ速度で運動するS系での電場と磁場

求めるための変換式:=γ'+(/u2)(uE')(1-γ),

=γ(×),γ≡(1-u2/c2)-1/2 から,

 

={e/(4πε0)}['+(/u2)(ur'){(1-u2/c2)-1/2-1]

/{r'3(1-u2/c2)1/2},

={eμ0/(4π)}(×')/ /{r'3(1-u2/c2)1/2},

 

すなわち,

={e/(4πε0)}/{2+(ur)2/(c2-u2)}3/2(1-u2/c2)1/2},

={eμ0/(4π)}(×)/[{2+(ur)2/(c2-u2)}3/2

(1-u2/c2)1/2] が得られるわけです。

 

一般的な表式だとかえってわかりづらい,ということもあるので,

=(u,0,0)の特別な場合を想定し,さらにt=0 で電荷eが

x=y=z=0 の原点にあったとします。

 

すると,Lienard-Wiecheldのポテンシャルは,

φ(x,y,zt)

=[e/{4πε0(1-u2/c2)1/2}]

/[{(x-ut)/(1-u2/c2)1/2}2+y2+z2]1/2,

 

(x,y,zt)=(/c2)φ(x,y,zt) となります。

 

そして,特に=0 なら,

φ(x,y,zt)={e/(4πε0)}/[x2+y2+z2]1/2,

(x,y,zt)=0 ですが,これは普通の静電Coulomb場

を表わしていますから,理にかなっています。

 

これから,u→cのときには,φ→ {e/(4πε0)}/|x-ct|,

φ/c2となって,=-∇φ-∂/∂t,=∇×

ですから,

 

点電荷による電場は,→-∇φ-(1/c)(∂φ/∂t)によって

ゼロに近づき,電磁力へのほとんどの寄与は電荷の運動=電流

によって発生する磁場に転化することがわかります。

 

今日はこのくらいにしておきます。

 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)

「相対性理論」(みすず書房)

 

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2008年5月22日 (木)

最近の社会の動向について

物理や数学など自然科学系の話ばかり書くのにも少し疲れたので,

大学生の頃は必要に迫られて,むしろ勉強の主流だった経済学関係

の話をします。

 

このブログでは,大分以前の2006年7月28日に,

労働価値説と効用価値説」という記事を書きました。

 

最近の社会の動向からマルクスが見直されているらしいので,

ちょっと薀蓄を語ってみます。

 

カール・マルクス(Karl Marx)というとフリードリヒ・エンゲルス

(Friedrich Engels)と共に秘密結社:共産党の綱領「共産党宣言」

を執筆し,「資本論」など多くの著書を書いた人物として有名です。

 

彼の資本主義に対する分析は次のようなものです。

   

すなわち,資本主義の社会では経済的な自由競争の果てに,必然的

に定期的な経済恐慌が起こり,その末に最終的には資本主義は破綻

して矛盾が奔出して取り返しのつかないことになる。

  

そして,こうした状況を止揚するためには社会革命を起こす以外

にはないが,その主体として"プロレタリアート=労働者"が組織

れて政治革命が起こり,さまざまな変革の末に.理想社会

(ユートピア)1モデルである"共産主義社会"に落ち着くであろ

うというものです。

 

要するに,例外はあっても,基本的には経済という下部構造が,

"我々のイデオロギーや政治を含む生活活動全体=上部構造"を

支配しているという唯物論的な考え方,

"存在が意識を規定する" というわけです。

   

そして,下部構造を変革する社会革命を実行するためには,逆に

上部構造を変える政治革命が必要であると考えます。

   

マルクスの言う史的唯物論では,資本主義に限らず,下部構造に

よって社会は発展してゆき,その発展方法はヘーゲル(Hegel)や

フォイエルバッハ(Feuelbach)の言う弁証法論理に従うであろう

というわけです。

  

つまり,振り子のように行き過ぎては戻るというプロセスを繰り

返して,やがては淘汰されて安定な位置に落ち着くという,近代

では社会科学でも自然科学でもごく普通の考え方ですね。

  

弁証法では正,反,合といいますが,同時に同じ場所で正と反が

存在するとすれば,それは矛盾します。

  

しかし,実際にはタイムラグやポイントラグがあるので,結局は

安定な場所=合に落ち着く(止揚(aufheben)される)というわけ

です。

 

"存在が意識を規定する"という唯物論の考え方は,平たく言えば

例外はあるけれど,"金持ち,セレブに生まれた男女の観念,思想は

貧乏な家に生まれた男女とは違う"ってなもんです。

  

"育ちの良さ"や"血筋"は隠せない,争えないものなのですね。

 

いまどきの年金とか健康保険とかの問題などについていうなら,

 

保険など不要で年金などもらわなくても老後の心配など.ほとん

どなく,また,庶民のように,わずかな給料をもらうために,あく

せく労働したこともないような2世,3世議員で代表される"

お金持ちのボンボン"達が,自分たちには関係ない"対岸の火事を

どうするか?"って国会でワイワイと井戸端会議をしているわけ

ですから,

 

"名案など浮かぶはずがない"という感じでしょうか。

 

そもそも75歳以上とかいえば,税金にしろ何にしろ,もはや払う

じゃなくて貰う一方の側でなきゃおかしいですよね。。

  

そのための年金ではなかったのでしょうか?

 

多重債務じゃあるまいし,財源がなけりゃ借金してでも他から

もってくるのが筋です。

  

ちょっと前には,たかが金貸しのなれの果ての大銀行の"自己責任

で生じたこげつき"を国民の税金でまかなったと聞いてますから,

それくらい朝飯前で可能かと思います。

  

例えば,戦争放棄しているのだから,必要ない"防衛費=軍事予算"

とか,一般会計の5倍以上もあると聞く使途不明の特別会計

(埋蔵金?)でもセッセと使いますか?

 

まあ,余談ですが,1960年代の終わりから1970年代初めの70年安保

時代の学生運動でもノンポリを除く当時の政治活動を行なってい

た学生の主体は"代々木系(日本共産党系)"と,私もその末端だった

"反代々木系"に分かれていたわけです。

  

いわゆる"反代々木系"というのは,私を含む少数の例外を除けば,

大体"お金持ちのボンボン"が多くて,"きれいごと(例えば自分の

ことは棚に上げて他人を批判するようなこと)"である場合も多い

し,理想的なことを主張していました。

  

それに対して"代々木系"の学生は,比較的貧しい家庭の子女が多く

て,そればかりが理由ではなかったでしょうが,生活観に根ざした

ことを主張する傾向があったと思います。

 

もっとも,"理想を言って何が悪いのか?"ってなもんで,それは

それとして筋は通っています。

  

逆に,自分の貧困や,不遇,不満を基に被害者意識に固まって行動を

起こした場合には,とりあえず自分と自分の関係者の不満が解消さ

れたなら,急激にモチベーションを失なうのでは?と邪推してしま

います。

  

実際,当時の"ベトナム戦争反対運動"について"反代々木系"の側

からの"代々木系"の非難をも含めた一方的な主張を述べるなら,

"代々木系"の主張はこのまま米国に追随していったら,やがて

我々日本も昔のように戦争に巻き込まれてしまうのでは?」と

いう被害者意識が中心であると思っていました。

 

一方,一部「ベ平連」なども含む我々"反代々木系"の主張は,同じ

ようでも"日本が巻き込まれる"というのではなく,とにかく"戦争,

それも侵略戦争は悲惨で不幸を生む源だから反対"という単純な

ものでした。

  

"侵略をしている米国と,それに加担している日本,そして,そこに

住んでいる我々は被害者ではなく加害者である。"

  

そして,"侵略戦争をしかけているのは国という圧力団体であり,

彼ら=有閑階級は"この戦争でいくら儲かるだろうか?と"高みの

見物をしているのだろうが,現地や周辺で実際に戦争をしている

それ以外の人々にとっては彼らがベトナム人であるか,米国人で

あるかに関わりなく,とにかく悲惨なことだから,戦争は早く終わ

らせるべきだ"といういわゆる"きれいごと"の主張でした。

  

そして"革命的祖国敗北主義"などという言葉に自己陶酔すること

もありました。

  

しかし,たとえ"きれいごと"であると後ろ指を指されるような主張

であっても,当時は自分たちの主張の方に理が有ると思っていたし,

今もそうだと思うので,何も後悔はしていません。

 

現代でいうなら,イラクやアフガンに無用な攻撃を加えるアメリカ

資本の利益に肩入れするくらいなら,テロリストの爆弾でテロられ

たり,テポドンの攻撃などを受けて自国も,自分も滅んでしまえ,

というくらいのもんでしょうか。

  

また,同じく"金持ちのボンボン"の考えそうなことで,自分たちは

親の脛を齧って学生という贅沢な身分である,そうした"贅沢な在

り方=自己の存在様式"を否定して自己を対象化せよ,とも主張し

ていました。

  

まあ,自分というものを他人の目でみたらどうだろうか?という

ように"自己を客観視せよ"という考えから,自分が恵まれて飽食

な日本人の一人であることも含め,"自己否定"などという言葉が

流行りましたね。

 

まあ,"きれいごと"ですから,実際に親に勘当されたり,親が破産

したり死んだりして,お尻に火がついたときに,どのくらいが逃げ

出さずに留まっていられるかは疑問ですが。。。

 

それでも"理想を言って何が悪いのか?"ってことであれば,別に

間違っているわけではなく,むしろ崇高であるとさえ思います。

  

祖国敗北主義というのはグローバルに考えようということで,

ジョン・レノン(John Lennon)のイマジンじゃないけれど,

"国境はない,ただ地球があるだけ"というわけです。

 

だからと言って,"右の頬を打たれたから左の頬も差し出す"って

ほど人が良い人たちばかりじゃないですから,"借りは返せ"とい

うわけで,日本が昔侵略した当事者の国々からは"清算しろ",と言

われています。

  

それを,"同じ地球人なんだから,すぐに全てご破算にして仲良く

しよう"と言うのは,引っぱたいた後で手のひらを返して握手しよ

う,ってことなので,"世界連邦を作ろう,みんな同じ地球人なんだ

から"などというのも,一朝一夕にはうまくいきません。

  

卑近な例ですが,昔イジメを受けた経験から言えば,久しぶりに会

ってみると相手はイジめたことを覚えてさえいなかったけど,イジ

められた側には何十年経っても夢で寝汗を書く程のトラウマが残

っています。

  

ですから,同じ行為なのに,数十年経っていても侵略し迫害した側

と迫害された側の意識に雲泥の差があるのは当然だと思います。

そして,かつてや今もある独立戦争や民族解放戦争っていうのも,

別に地球人や世界連邦に向かう道筋を考えると逆行しているとか

じゃなくて,これらも必要なプロセスだと思います。

 

たとえ,地球人,世界連邦という目標が達成されたとしても,かつて

のイギリスからのアメリカの独立戦争が無駄だったという人はい

ないでしょう。

 

また,かつて旧ソ連のロシアでは大ロシアと小ロシアがあって

少数民族は差別迫害を受けていたらしく,ソ連が弱った際には

多くの人民が民族独立を主張して小国家が乱立したのも無理

からぬことです。

  

これらも全て必要なプロセスです。

 

急がなきゃいけないけど急いではいけないのです。

三歩進んで二歩下がるというべきでしょうか。。

 

私は,何でもかんでも戦争反対という絶対平和主義者ではなく

て,暴力革命も含めて過渡期には戦うことも必要なことだと思

っています。

  

もっとも,国家間の戦争はある種のお金持ちにとっての

"金の成る木"であり,火のないところに無理に火をつけようと

する人達もいるようです。

 

地球人という意味では,かつて"万国の労働者,団結せよ"という

言葉に感銘を受けていた頃から,私はといえば,

"どこの国の人か?"という区別よりも,"お金持ちか貧乏人か?"と

いう区別の方が気になっていました。

 

ナショナリズムが必要な場合もあるのでしょうが,

私自身はグローバリズムしか眼中にありません。

 

ナショナル,国家といえば,レーニンの[国家と革命」には丁度,

警察の実体が"おまわりさん"という描像とは違うごとく,国家

は人民を庇護するためにあるのではなく人民を支配する権力と

して存在し,その役目が終われば自然消滅すると書かれています。

 

国家が公共の福祉,国益を守るとか治安維持を行なうとかいう形

で出てきたときには,一体,公共の福祉,利益とか,国益というのは

誰の利益のことなのか?を良く考えてみたいものだと思います。

 

もっとも権力としての国家という意味の国ではなく,生まれた故郷

という意味での"くに"には天邪鬼の私でも愛着を感じています。

 

さて,マルクスやエンゲルスのいう"共産主義"という

"理想社会=ユートピア"の定義は, 

"各人の能力に応じて働き,必要に応じて与えられる。"

という社会のことです。

 

要するに,原始共産社会の時代から連綿と続いてきた経済システム

であるところの,"労働の代価として給料をもらう"という私有財産

的な考え方を捨てるのです。

  

例えば,体格が優れているとか,計算能力があるとか,能力のある人

は他人の2倍でも3倍でも働くことを奨励し,一方,生来の障がい者

であるために労働の種類によっては,量的に彼の労働成果が健常者

の半分である場合もあるとしてもそれはそれでいいとします。

 

しかし,同じ労働時間で平均的な人の2倍,3倍働いたからといって

平均人の2倍,3倍の報酬をもらえるわけでもなく,半分の労働生産

物しかできなかったからといって平均人の半分の報酬というわけで

もありません。

  

では,報酬というのはないのでしょうか?

  

実は,労働,仕事とは全く関わりなく,自分の生活を維持するため

に必要な量であれば,十分な量が支給されるわけです。

  

そして,究極的には,貨幣で物を買うということも必要なくなる

ので.ごく身近な個人に属する必需品以外については,全ての品

が只と同じなのですから,誰のものということもなくて自然に

共有になります。

 

"他人のふんどしを使うのは気持ち悪い"というような個人に

属する他にはないものを除けば,謂わゆる"私有財産は禁止する"

という強制的,法令的な意味ではなく,そういうものは自然になく

なります。

 

しかし,"単なる"お人良し"じゃあるまいし,そんなことになった

ら仕事というのは全部ボランティアのようなものですから,

  

能力のない奴や怠け者は喜ぶでしょうが,そうでない人間は

"労働意欲=モチベーション"をなくしてしまうでしょうから

"それが理想なのかもしれないけど,俺は真っ平だ"という感想

も当然あるでしょうね。

 

しかし,仕事で考えるとわかりづらいと思うので,スポーツの話

をすると,ゴルフの上田桃子プロのように,

 

"バレーボールもゴルフも好きだったけど,バレーボールはお金に

ならないアマチュアスポーツだからゴルフをやることにしました。"

というような人ばかりじゃないでしょう。

  

タラレバですが,体格がよく運動能力もあってイケメンの,某ハンド

ボール選手(宮崎)が,もしも野球やサッカーをしていたら,今頃,松井

や松坂のように年間で10億円以上稼げたのじゃないだろうか?

という人もいますが,

 

彼は自分の今までの道を後悔しているのでしょうか?

  

高校野球を一所懸命やるのも,関係者にとっては所詮お金がから

む話かもしれないけれど,一番の当事者の高校生の方は,一部を

除けばそうではないと思います。

 

もっとも,アマチュアスポーツと言っても昔のような意味ではな

なっているとは思いますが,お金にならなくてもモチベーションが

起きる例としてはこんなもんでしょう。

  

直接,仕事の話にしても,自分の選んだ道が金に結びつかなくても

意欲がなくなるとは限らないし,金に結びつかなくても好きな道

というのはあると思います。

 

もっとも,チャップリン(Chaplin)の映画の中の機械に使われる

ような労苦とも言える疎外された労働であれば,労働意欲が沸く

のは私のような変態だけかもしれませんから,当然,やり甲斐が

あって楽しんでやれるような人間的な労働にするべく,環境を

整えることも必要でしょう。

 

いずれにしても,"権力を握ったものは必ず腐敗する"ので,

トロツキーではないけど,永続革命がなされる必要があるだろう

し.結局は意味は違うと思うけれど,どこかの宗教団体のお方の

言われるごとく"人間革命"が完遂されなければ不可能であると

いう意味では確かに"絵に描いたもち"のような"きれいごと"の

理想です。

 

そして,具体的な政治革命の方法としては,暴力的に政治権力を

奪取することになると予想されています。

  

実際,"ベルリンの壁崩壊"などで,東欧ではそうした体制の国は

もうなくなりましたが,一国でなされたロシア革命では帝政から

資本主義を飛び越えて暴力的な革命がなされ,

 

お隣の中国でもそうでしたが,共産主義への過渡期としての社会

主義とは似ても似つかない独裁者と官僚主体の

"歪曲されたプロレタリア国家に成り下がって,

当然あるべき"民主化=プロレタリア民主主義"さえ実現されませ

んでした。 

 

暴力革命といえば,日本の時代劇では,ねずみ小僧は

"義賊とは言っても所詮盗人は盗人"などと評されますが,

政治革命では経済的な意味では大勢の貧乏な労働者達が皆で

盗人になり,少数のお金持ちから財産を略奪するわけです。

  

それで,抵抗にあえば死傷者が出るという意味で,暴力革命に

つながるわけです。

  

そんなことを言って,貧乏だとか理由をつけてもそれは自業自得

で,皆でやってもやはり盗人は盗人だ,私は別に悪事をして財を

なしたのじゃなく,苦労して一代でこの富を築いたのだから,それ

を殺してでも奪うということに理があるとは思えない,という感想

もあるでしょうが。。。

  

お気の毒なことです。

   

あなたが,この時代環境で財をなしたのが,ひとえにあなたご自身

の努力のみに帰するとはいえない,とでもお答えしましょうか?

  

もしも,違う時代の違う社会体制,例えば江戸時代で生まれたとき

から身分が決まっている状況でも,同じような財を作れる自信が

おありでしょうか?あるいは,今ワーキングプアという言葉を

ご存知でしょうか?

  

逆に,人並み以上に労働したからといって,貧乏なのですから貧乏

人であることが,本当に全て自己責任,自業自得ということになり

ますか?

  

さらに私がグローバリストの目で,もっと言うなら,現代の日本

生まれてきて,しかも孤児ではなかったということだけでも,

イラク,アフガン等の一部?の貧乏人の家庭の子として生まれる

よりも,既に物質的には恵まれていると思います。

   

"政治革命=暴力革命"とも言われますが,もちろん,暴力を奨励し

ているわけではなくて,銃を向けるまでもなく,お金持ち達が全員

おとなしく財産を放棄すれば無血革命になる可能性もあります。

  

実際にはその方がいいのでしょうが,一旦握った既得権益を理不尽

な輩のために,むざむざと放り捨てるというわけにはいかないでし

ょうから,奪う側からは暴力で差し押さえる以外にないということ

になるのでしょうね。

 

そして,過渡期では過去のお金持ちを全く排除して,労働者だけの

民主的機構,いわゆるプロレタリア民主主義によって,労働者に関

してはなるべく公平な制度を築こうとします。

  

誤解を招く表現かもしれませんが,この時期の体制は

"プロレタリア独裁"と言われます。

 

いずれにしても,共産主義社会は生産性が向上して全ての人間の

衣食住を賄って余りあるほどにならないと不可能なことです。

  

現在のように,全ての人間が食べられるだけの食糧の需給はないの

に小数の人々が食料を独占して過食した挙句,ダイエットだグルメ

だと抜かしているようじゃ,理想からは程遠いです。

 

そして,天才と思えるマルクスにしても限界があって,彼の考える

世界は自身が行動範囲としていたヨーロッパ,特に当時でも既に

先進的な資本主義社会であったドイツとイギリスという狭い社会

だけと思われます。

 

広い世界と狭い世界の違いというのは,交通手段の必要性ですね。

  

狭い世界での変化は一瞬で全てに行き渡りますが,広い世界,それ

も19世紀の交通手段では,ある場所での変化が全地域に行き渡るま

でには莫大な時間がかかりますから,変化は場所ごとに異なり.

まばらになるはずです。

  

こうしたことに着目してマルクス経済学を補ったのが,帝国主義

の不均等発展を論じたレーニンの「帝国主義論」です。

  

当然,上記の広い世界について述べたことから経済的,資本主義的

意味での先進国と発展途上国が混在することを考慮する必要があ

ります。

  

そして先進国での矛盾を,とりあえず発展途上国に押し付ければ,

当面の危機を回避して,恐慌の発生を遅らせることができます。

  

こうしたことを国家レベルで行なえば,経済的な意味では

「国家独占資本主義国」,政治的意味では「帝国主義国」

になります。

  

自由競争に任せるのでなく,様々な,国家や地方主導による緩やか

な資本主義への修正を行なえば,体制を永らえることもできるで

しょう。

 

旧ソ連や中国がマルクスやレーニンの言う通りにはならず,歪曲さ

れた国家になったのは,それぞれ一国革命であってそれからなだれ

的に世界革命が起こるということがなかったからでしょう。

  

周りを囲む他国のほとんどが資本主義国であって,もはや全てを

国で自給自足して鎖国できるという時代でもないので,情報の流出

入を抑えた完全な秘密主義を貫くことは国際的に不可能です。

  

周りの資本主義国と交易することは,自国が存続するため,自国民

が生きていくために不可欠です。

  

それ故,ある部分には,そうした経済システムを導入する以外には

なく,そうした綻びから全体が侵されていったわけです。

  

経済的には侵されても,政治体制だけでも周囲の国家達の圧力に

して維持するためには,独裁や洗脳もやむを得ないというわけ

でしょう。

  

もしも,周り全部で政治革命が起こっていれば,そういうこともな

かったでしょうけど。。。

  

したがって,ベルリンの壁の崩壊でもってマルクスは終わった,など

とは私自身は当時も思っていなかったし,今も思っていません。

 

さて,以前にも書きましたが,一般に物には使用価値と交換価値が

あって,我々が経済学などで価値と呼んでいるのは貨幣で買ったり

する商品の価格を決める普遍的な尺度のことです。

  

それは後者の交換価値のことですが,例えば空気や水のように人間

が生きるためには不可欠で大きな使用価値があるのに,交換価値の

方はほぼゼロですが,逆にダイヤモンドなど使用価値はほとんどな

いと思われるものが,交換価値が莫大というのが現実です。

 

こうした性質の"交換価値=価値"を説明するのに,"その物を手

入れるために必要とする平均的な人間の労働量=抽象的労働量

価値"であるとしたのが,アダム・スミス'(Adam Smith)に始まり

マルクスに至る「労働価値説」ですね。

 

つまり,現在の日本では普通の水を得るには水道料金が必要で

ミネラルウォーターであれば安価ですけど購買する必要がある

ため,水の交換価値はゼロに近いけどゼロではなくそれなりの

お金が必要ですが,空気なら,きれいな空気とか贅沢言わなけれ

ば,未だに只です。

  

空気の薄くない地上に住んでいる限り,今のところ空気を手に入

れるのに労働する必要は全くない,つまり必要労働はゼロなので,

空気の使用価値はそれこそ量り知れないほど大きいけど,

"価値=交換価値"はゼロであるという「労働価値説」の論理には

納得できるでしょう。

 

一方,ダイヤモンドについては,アダム・スミスのの説明は

「労働価値説」とは違うみたいですが,

 

「労働価値説」の論理でダイヤモンドの価値が大きいことは

次のように説明されます。

  

すなわち,ダイヤモンドの鉱石を掘り出して加工したとしても,

他の安価な鉱石を掘り出して精錬するのと費やす

"労働量=労働時間"は同じくらいであるという気がします。

  

ところが,実は平均労働量という意味では,石炭や鉄などとは違って

希少にしか存在しないダイヤモンド鉱脈を発見するに必要な莫大な

無駄な労働量をも考慮する必要があります。

  

つまり,ダイヤモンドの鉱脈1つを発見するための労働量として,

例えば一生かかっても鉱脈を1つも発見できなかった人などの無駄

であった労働量も全て加算して平均するわけです。

 

そうすれば,宝石を売り出すまでにかかる平均労働量は莫大で価格

相応になるわけです。

  

要するに需要に対して供給が少ないという希少価値も「労働価値説」

で説明できます。

 

一方,マルクス経済学と対立していた近代経済学の流れを引く

ミクロ経済学などは新古典派経済学と呼ばれる流れを引いて

います。

  

マルクス経済学が機械的労働による人間疎外とか商品に対する物神

崇拝=物象化など,人間の欲望の機微に深く入った分析をしている

のに対して,こうした経済学はイデオロギー的側面,哲学的側面の

分析を極力避けて,需給バランスを中心とした価格の推移など数学

的な扱いに終始しているように見えます。

 

そして,新古典派経済によると商品の価値というのは効用関数を

基にした限界効用で与えられると考えられています。

 

数学的に言えば限界効用というのは効用関数をその商品の消費量

で偏微分したときの微分係数のことです。

  

効用関数というのは,現在の消費量の時点でトータルの効用,

つまり"どれくらいの満足度があるか?"というのをさまざまな要素

の関数として表現したものです。

  

そこで,"限界効用=商品の消費量で偏微分したときの微分係数"と

いうのは,他のあらゆる要因を全て固定したままで,その商品の消費

を1つ増やす,つまり,その品を1つ買ったときに,"効用=満足度"

がどのくらい増加するか?の度合いを意味しています。

 

そして,この場合,労働というのは,効用関数を決定する多くの要因

のうちの1つの要因に過ぎないというわけです。

 

しかし,この効用関数というものは何か胡散臭いです。

  

これは,普遍的なもの絶対的な評価基準を与えるものでしょうか?

  

それが存在すると仮定して,その数学的性質だけを分析したとして

も,効用関数として仮定した関数の数だけの結果があります。

  

人間が幸福になるべきという哲学を抜きにして,前提と結果の集合

について整合性,無矛盾性を追求するだけの学問としての経済学で

あれば,それは,論理学と同じく同義語反復という意味でのトート

ロジーです。

  

ですから,効用を決める多くの要因のうちのどれが最も効くという

ような"エコひいき",あるいは特殊な意味のあるモデル効用関数を

決定しなければ"船山に登る"ということになるでしょう。

  

スピノザの汎神論の神についてはよく知りませんが,

フロイトの汎性論の性,あるいはリビドーについては,活力の源が

性衝動にあって,それがなくなると人間としての活力も失われる

という意味で,他の要素因もゼロではないが,心理を生み出す主要因

は性であるという特定がなされています。

  

こうした特定は効用関数を決める要因にも必要なことだと思います。

 

理論が不可知論や形而上学に至らないためにも「労働価値説」の

ような,これが一番効くという主要因の特定が必要だと思います。

 

ただし,ポジティブな意味に取るなら,ひとたび正しい効用関数が

与えられると,それによる経済のミクロな動向を全て機械的に分析

できるような万能の方法論を提供するのではないか?

という可能性はあります。

  

(※マクロ経済はミクロ経済の集積という意味では,熱物理学,

物性物理学が原子分子物理学の統計平均という関係と同じです。)

   

これは例えば,株価予測において,マルチンゲールを示すという

意味では何も予測できないモデルと考えられるブラックショールズ

のモデルのようなものですね。

  

これも,株変動の特定の要素因が効くようなモデルを入れて,個々の

パラメータが決まれば実際の株価の予測モデルとなり得ます。

 

もっとも,商品を作るのに必要な労働量が価値を決める尺度になる

というマルクス経済学の「労働価値説」にしても,

 

"誰も興味を持たないもの=需要がないもの",

つまりTPOで決まる人間の満足度,あるいは効用(=使用価値)が

ないものを作るために,いくら労働時間をかけたとしても

"商品=交換価値"を作るという意味では無駄な労働です。

 

一方,一時的でも需要が多いものを作る場合だと,そのときには.

少ない労働でも大きな意味がありますから,逆に,その場,そのとき

の需要の多寡が,尺度と考えていた労働の価値を決めるという側面

もありますから,

 

"ニワトリが先か卵が先か"という構造になっているわけで,

決して威張れるほどのものではないとも思いますが。。。

 

理想社会は,何も共産主義社会だけというわけではなくて,

本当に理想的なのかはわかりませんが,何も計画する人のいない

エスペラント主義者などの目指す無政府主義社会,

あるいはコンピュートピアを含む修正資本主義社会

というのもあります。

  

コンピュートピアとは,つまりボタンを押したら食べたい料理など

がすぐにポンと出てくるという奴ですね。

  

いずれにしても,ユートピア以前に,労働が正当に評価されない

社会,何か生活にとって使用価値のあるものを生産する生産的労働

を行なうよりも,一部資本を持っている者がバクチに属するような

投機的な金融,マネー・ゲームをする方が楽に効率よく大きな収入

が得られると見える社会になりつつあると見えます。

  

日本もまた,自国の製造業をないがしろにして金融投棄に走った

末に工業国としては没落していった大英帝国のような形骸社会へ

の道を真っ直ぐ歩んでいるのでしょうか?

  

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2008年5月19日 (月)

電磁気学と相対論(4)(真空中の電磁気学3)

続きです。

 

前記事の終わりでは,

 

電磁場の基本方程式であるMaxwellの方程式が,

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 の4個

と,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の4個の計8個のテンソル

方程式に帰着することを見ました。

 

しかし,元々真空中の電場,磁場は,,,によって表わさ

れますが,実質的にはだけが決まれば残りも決まるので,

独立な未知関数の成分は6個だけですから,方程式が8個もある

のは過剰ではないかという気がします。

 

実際,div=0 が成立することから,=∇×=rotと表現

できるベクトルポテンシャルの存在がわかります。

 

これをrot+∂/∂t=0 に代入して,

rot(+∂/∂t)=∇×(+∂/∂t)=0 から

+∂/∂t=-∇Φ=-gradΦと表現できるスカラー

ポテンシャルΦの存在することがいえます。

 

それ故,=∇×rot,=-∇Φ-∂/∂t

=-gradΦ-∂/∂tと表現することで,

 

電場,磁場の6成分を決めることを,スカラーポテンシャル

Φ,および,ベクトルポテンシャルの4成分だけを決めること

に帰着せしめるのが,近代電磁気学の通常の理論で行なわれてい

ることです。

  

そして,をこのように表わしたときには,div=0,および,

rot+∂/∂t=0 は自動的に満足されます。

 

このΦ,を総称して,特に電磁ポテンシャルと呼ぶこともあり

ます。

 

そこで,ポテンシャルの4元ベクトル表現:

μ(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)から,その成分が

μν≡∂μν-∂νμ=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν

の2階反対称テンソル(Fμν)を作ります。

 

そして,電場,磁場=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03)

=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)と定義すれば,

 

これらが自動的にdiv=0 ,かつrot+∂/∂t=0 を満たす

ことは明白です。

 

つまり∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 は,

μを決める方程式ではなく,Aμをどう取っても常に成立する

恒等式であることは,確かめるまでもなく明らかです。

 

一方,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の方は,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-(∂2μ/∂xν∂xν)

=-sμ/(c2ε0),

 

または,符号を変えると, 

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)

=sμ/(c2ε0),(μ=0,1,2,3)となり,これがxμの未知関数

μ求める4個の微分方程式,という形になります。

 

μ=(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)の成分の数は,もちろん

4個であり,方程式の数も4個ですから,

 

この形に書けば,先に基本方程式であるMaxwell方程式において,

未知関数の数と比べて方程式の数が過剰ではないか?と見えた

のは見掛けの上のことであったとわかります。

 

一方,実際の観測などによって電場と磁場がわかっている

場合:つまり,テンソル(Fμν)が確定している場合を想定して,

 

∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=FμνなるFμνの定義式を,右辺の

μνに既知の値,または関数を与えたとき,未知関数Aμを定め

微分方程式であるという見方をしてみます。

 

これの左辺は,"ベクトルAμの4次元的な回転=rot(Aμ)"に相当

するので,この方程式は形式的にrot(Aμ)=Fμνと書けます。

 

そこで3次元ベクトルの渦無し場,または保存力場のアナロジー

で,この方程式:rot(Aμ)=(Fμν)の1つの解をAμとすると,

 

これに,rot(Bμ)=0 を満たす任意の渦無しベクトルBμを加え

も,rot(Aμ+Bμ)=Fμνが満たされるため,(Aμ+Bμ)も

解になることがわかります。

 

ところが,rot(Bμ)=0 ならBμに対しあるxμのスカラー関数:

Λ=Λ(x)が存在して,Bμ=-∂μΛ=-∂Λ/∂xμ=-gradΛ

と表わせます。

  

しかも,Bμはrot(Bμ)=0 を満たす任意の4元ベクトルです

ら,それを表現するΛ=Λ(x)も任意関数に取っていいです。

 

したがって,Aμが∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνの解で

れば,Λを任意関数として,Aμ-∂μΛもこれの解であると

いう性質があることがわかりました。

 

そして,∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνは,

=∇×=rot,=-∇Φ-∂/∂

=-gradΦ-∂/∂t なることを意味し,

 

μ→ Aμ-∂μΛなる変換は,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなることを意味します。

 

すなわち,電磁ポテンシャルAμをAμ-∂μΛと変えることは,

実際に観測される場である電場と磁場,あるいは,

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない

ことがわかります。

 

このAμ→ Aμ-∂μΛ,あるいは,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなる変換をゲージ変換

(gauge transformation)と呼び,この変換に対し理論が

何の影響も受けないことを,理論はゲージ不変である,

といいます。

 

そして,このスカラー関数Λ,あるいはその微分をゲージ(gauge)

と呼びます。

 

しかし,この変換でAμに対する基本方程式:

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

の方は,その形に変更を受ける可能性があります。

 

すなわち,方程式

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

において,Aμの代わりにA'μを代入すると,

 

(∂2A'μ/∂xν∂xν)-(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

となりますが,A'μがゲージ変換:Aμ→A'μ≡Aμ-∂μΛ

=Aμ-∂Λ/∂xμ の結果として得られるものであれば,

 

左辺の第2項の(∂2A'ν/∂xμ∂xν)は,

(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=(∂2ν/∂xμ∂xν)

-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}と書けます。

 

そこで,例えば,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

が満たされるようにゲージ Λを取ることができれば,

  

そのときには,基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

簡単な形になります。

 

そこで,こういうゲージΛを取ることができたと仮定して,

 

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

の両辺をxμで積分すると,これは, 

∂Aν/∂xν-{∂(∂Λ/∂xν)/∂xν}=定数

となります。

 

したがって,この最後の条件となる等式の右辺の定数をゼロ

おいた μμ=∂μμΛ,または,∂Aμ/∂xμ

={∂(∂Λ/∂xμ)/∂xμ}が成立するようなΛが存在する

とき,言い換えると,変換後のA'μが∂A'μ/∂xμ=0 を満足

するようにできれば,

 

そのときは,電磁場の基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

と書けます。

  

(※ただし,右辺の定数はゼロでなくてもいいので,これは1つの

十分条件であり必要条件ではないです。)

  

一方,任意に与えられたAμに対し,Λを未知関数とする

微分方程式:∂μμΛ=∂μμ, or □Λ=∂μμ

考えると,

 

これは解Λに右辺がゼロの斉次方程式:□χ=0 の一般解χだけ

の任意性があることを利用することで,任意の境界条件を満たす

一意解を持つことがわかります。

 

ここで,記号□は,□≡∂μμ=∂2/∂xμ∂xμで定義される

D'Alembertianと呼ばれる微分演算子を示しています。

 

以上から,電磁場のベクトルポテンシャルとして,元々,

∂Aμ/∂xμ=0 なる条件を満たすようなゲージを取った

μを採用しておけば,電磁場の基本方程式は,最初から,

 

(∂2μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0),あるいは,

□Aμ=sμ/(c2ε0) と書けることになります。

 

このゲージを採用すれば,テンソル方程式としても対称な美しい

形であると感じます。

 

上記の∂Aμ/∂xμ=0 ,あるいは∇A+(1/c2)(∂φ/∂t)=0

なるゲージ条件はLorenz条件といわれ,この条件を満たすゲージ

Lorenzゲージ(ローレンスゲージ or ローレンツゲージ)と呼ば

れています。

 

Lorenz条件自体は,相対性理論の座標変換に対し不変のまま保存

される(共変な:covariant)ことが自明な形をしていますが,

 

μ → A'μ≡Aμ-∂μΛ=Aμ-∂Λ/∂xμ なる一般の

ゲージ変換は相対性理論の座標変換で不変に保たれる操作と

限りません。

 

そこで,相対論的に共変でないゲージ,例えば良く使用される

もので,Φ/c=A0には関わりなくのみが∇=div=0

を満たすべきである,というCoulombゲージなどは特定の座標系

に固定されたゲージですから,

 

S系 → S'系というように準拠系を乗り移ると,ゲージ条件が

破れてS'系では違う条件に従うゲージになってしまう,という

ことがあります。

 

まあ,それでもすぐ上に書いたように,

"実際に観測される場ある電場と磁場:

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない"

のですが,見た目には美しくありません。

 

そこで古典電磁気学では相対論的に共変なLorenzゲージを採用

することが多いようです。

 

しかし,量子論ではゲージ条件が正準交換関係と矛盾するとか,

不定計量になるとかで確率解釈において困るなどの問題から,

素朴なLorenzゲージのみを用いて共変的量子化をすることは

不可能で,初期にはむしろCoulombゲージが使用されていたこと

が多いようです。

 

荷電粒子と光子の場の量子論であるQED(量子電磁力学)でも形

上では共変でLorenzゲージと一致するものも取ることができ

ますが,それがLorenzゲージとは呼ばれず,Landauゲージと呼ば

るのは上記のような問題があるからです。

 

系統的な共変的量子化の手続きでは,Aμの他にBという補助場

を導入して,ダミーのスカラー場C≡∂Aμ/∂xμ+αBを作り 

α-12という項を含む場のLagrangian密度から,変分原理によっ

て得られる場の方程式=運動方程式のうちの1つであるC=0,

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 なる方程式を考慮することで

ゲージを一意に固定してゲージ変換の任意性を取除きます。

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 が場を支配する運動方程式の

1つとなり,この方程式において特にα=0 のLandauゲージを

取った場合がLorenz条件:∂Aμ/∂xμ=0 と一致するという

わけです。

 

しかし,補助場Bがある場合,

もう1つの方程式のsμ=0 のときの自由場の運動方程式の形

,□Aμ=0 ではなく,□Aμ-(1-α)B=0 で与えられる

という事情があるため,

 

α=0 の場合には,方程式の1つが∂Aμ/∂xμ=0 と一致し

ても,Lorenzゲージと呼ばれないのですね。

 

ただ,∂Aμ/∂xμ+αB=0 は相対論的に共変な等式なので,

この意味で共変ゲージはαの数だけ無数にありますが,

  

場の方程式:□Aμ-(1-α)B=0 が古典論の共変な方程式:

□Aμ=0 に一致する場合に相当する,α=1 の特別な場合は

Feynmanゲージと呼ばれています。

 

電磁場は,そのLagrangianが特異であり,それ故,ゲージの自由度

を持つわけですが,その特異性のため,

 

古典論でも単純なPoisson括弧による正準理論として扱うことは

できなくてPoisson括弧を修正したDirac括弧を用いることが必要

になります。

 

そうしたわけで,電磁場ではゲージを固定せずには,普通の正準

量子化によって共変的量子化を行なうことは不可能です。

 

従来から場を表現する空間であるHilbert空間の方に,"その個々

のベクトルが物理的に許される状態であるために必要な条件=

付帯条件(subsidary condition)"を課すことで量子化された場

そのものに生じる困難に対処してきました。

 

(→ ※ 例えばGupta-Bleulerの方法など※)

 

上に挙げた例では,α=0 のLandauゲージの場合には,

∂Aμ/∂xμ=0 かつ,□Aμ-B=0 が成立しますが,

 

補助場Bの正エネルギー部分=正振動数部分

(positive frequency part)をB(+)として,

(+)|ψ>=0 を満足する|ψ>のみが物理的に許される

状態であるという付帯条件を与えます。

 

こう規定すれば,実質上このゲージでも□A(+)μ=0 が成立する

と見なせます。

 

また,α=1 のFeynmanゲージでは∂Aμ/∂xμ+B=0,

かつ □Aμ=0 ですが,これは実質上∂A(+)μ/∂xμ=0 ,

かつ□Aμ=0 なることを示しています。

 

結局,どのαでも共変ゲージとしては同等である,

と考えられます 。

 

このように,一連の量子化の手続きを補助場Bの導入によって

体系化し,電磁場Aμの4元運動量がゼロ質量の光子に対応する

Minkowski空間のヌルベクトル(null-vector)であることから,

 

不定計量の状態空間を扱うことを余儀なくされるため生じる

dipoleゴーストなどの非物理的存在を観測可能量から排除し

電磁場の共変的量子化を完成させた理論は,中西-Lautrap理論

として知られています。

 

既に脱線していますが,さらに量子論の話に脱線します。

 

電磁場のようにゲージ不変な場のことをゲージ場と呼ぶのです

が,ゲージ場に対応する粒子は電磁場の場合の光子のように質量

がゼロのベクトル粒子であり,それ故Bose粒子(Boson)です。

 

質量がゼロでなければゲージ不変性が満たされないという事実

があるにも関わらず,素粒子場の電磁相互作用とは別の相互作用

において,その力を媒介するゲージボゾンの中に有限な質量のあ

る粒子が存在する場合があります。

 

これはゲージ不変性を保証していた対称性が自発的に破れた際に

ヒッグス機構(Higgs mechanism)などによって,元々ゼロ質量だっ

た粒子が有限質量を獲得する場合があるためです。

 

さて,次に物質粒子を示す場の理論において存在する対称性と

ゲージ変換,あるいはゲージ場の関連性について述べてみます。

 

まず,電磁場(光子)と共に荷電粒子を含む系を対象とする量子

電磁力学において,電子などの物質粒子の波動関数,あるいは,

それが第二量子化された粒子場は,粒子がFermi粒子(Fermion)

である場合なら一般にスピノル(spinor)で与えられます。

 

そこで光と電磁相互作用する物質場の粒子がFermi粒子である

として,この粒子の場を表現するスピノルをψ(x)とします。

 

そして,これに対する1パラメータの位相変換:

ψ(x)→ exp(iθ)ψ(x)を考えます。

 

特に,パラメータθが無限小の場合,θの代わりにεと書けば

exp(iε)~ 1+iεによって,

同じ位相変換は,ψ(x) → (1+iε)ψ(x) と書けます。

 

この位相変換に対して,自由粒子のLagrangian密度:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψは明らかに不変です。

 

しかし,もしも位相変換が全ての時空点xμに対して共通な

大域的変換ではない場合,すなわち,パラメータのθまたはε

が定数でなく時空座標xμの関数で与えられ,

 

θ=θ(x),またはε=ε(x)であるような局所的変換の場合,

Lagrangian密度は,=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ

'=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ-γ0γμμθと変換され,

不変ではなく,余分な項がでてきます。

 

ところが,Lagrangian密度が,自由粒子のそれ:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψではなく,電荷eを持った粒子

が電磁場Aμと相互作用している場合のそれ,であるとすれば,

 

この相互作用の効果は,いわゆる極小相互作用変換

(minimal interaction):μ=i∂μ→ pμ-eAμ

=i∂μ-eAμで表現されますから,

  

自由粒子のLagrangian密度に対し,この極小相互作用変換を

実際に行なえば,新しく得られるLagrangian密度の形は

=ψ+γ0μ(i∂μ-eAμ)-m]ψ(x)となるため,

 

ψ(x)→ exp[iθ(x)]ψ(x)なる位相変換と同時に,

eAμ→eAμ-∂μθなるゲージ変換がなされるなら,

局所変換に対しても,こうしたFerm粒子のLagrangian密度

は不変になります。

 

さらに,"自由な電磁場=光子"自身のLagrangian密度をph

すると,ph(1/2)(ε02-μ0-12)=-(c2ε0/4)Fμνμν

ですから,

 

これは,eAμ→ eAμ-∂μθなるゲージ変換に対して不変な

量のみから構成されています。

 

したがって,電荷eを持つ自由な荷電粒子があるだけでは,

局所的位相変換に対して不変でなかった理論に"電磁場=光子"

というゲージ場を加えることで理論が不変になった,

という見方ができます。

 

この考えを発展させて,スピノルψ(x)が,唯1種類の粒子だけで

なく独立な属性(例えばcolor)を持つ複数種類の粒子;ψi(x)

(i=1,2,3,.)の集まりである場合を想定して,

 

これに対する位相変換のパラメータはQEDの場合のようにθ,

またはεの唯1つでなく,複数の値θk またはεk(k=1,2,3,.)

で与えられるとします。

 

通常の座標軸のまわりの回転が角運動量の軸成分を持つ

ベクトルで表わされるのと同様,

 

抽象空間におけるk軸のまわりのθkの回転が,k軸方向

角運動量演算子に相当する生成子:Lkにより,θkk

で与えられるとすることができます。

 

そして,各々の生成子:Lkは,一般にはψi(x)を成分とする

ベクトルに作用する行列作用素で表現され,対応する粒子

の位相変換は,ψ(x) → exp(iΣkθkk)ψ(x)で与えら

れます。

 

しかし,これらパラメータが複数の局所位相変換に対して,

自由粒子場のLagrangian密度を不変にするために必要な複数

のゲージ場は,Lkが行列であることからも想像されるように,

 

"電磁場=光子場"のような可換なゲージ場ではなく,一般に

非可換な場であり,ゲージ変換も,電磁場のそれである:

eAμ→ eAμ-∂μθのような単純な変換でなく,いくらか

複雑になり非線形な項も出現します。

 

こうした原理=ゲージ原理を初めて導入したのは,ヤン(C.N.Yang)

とミルズ(R.L.Mills)です。

 

それ故,ゲージ場はYang-Mills場,上に考察したゲージ理論は

Yang-Mills理論と呼ばれることがあります。

 

いずれにしても,

 

上では引数xμを省略してθk(x)を単にθkと書きました

が,理論が局所的変換θk=θk(x)に対して不変であるなら,

 

これは,あらゆる時空点:x=xμに対しθk(x)が同一である;

つまり,θk(x)=θk(定数)の場合も特別な場合として含んで

ますから,大域的変換に対しても,もちろん理論は不変です。

 

しかしながら,逆に理論に"大域的対称性=大域的不変性"が

あっても,"局所的対称性=局所的不変性"があるとは限りません。

 

内山先生が,生前,Yang and Millsとは独立に発見したと述べられ

ていて,もうちょっと早く発表していれば,Yang-Mills場ではなく,

ウチヤマ場になっていたのではないか?と悔やんでいたらしく,

 

実際には,自身の発見よりかなり後,自分の論文のReferenceに,

Yang and Millsの論文をも添えている1956年の論文を,私的には

Yang and Millsの有名な論文と並べて,共にゲージ理論の代表的

参考文献として挙げておきます。

 

余談はさておき,最後に上述の位相変換を連続群の一種である線形

Lie群に属する変換群の表現であると見て,位相変換に対する理論

の不変性は"対応する変換群に対して理論が不変である"という対

称性を持つと見なし,

 

粒子場やゲージ場は群のユニタリな既約表現や随伴表現で分類

されるとする系統的な見方をしてみます。

 

こう見たときには,電磁気力を媒介するゲージ粒子として

"光子=電磁場"を必要とする,可換な1パラメーターの位相変換

は1パラメータの線形Lie群の1つである1パラメータユニタリ

群であるU(1)に対応していて,

 

上で行なった位相変換不変性は量子電磁力学の理論がU(1)不変

であるという対称性を持つことを意味しています。

 

一方,例えばquark(クォーク)を結合させる強い相互作用を媒介

る非可換なゲージ場に対応するgauge Boson(ゲージボソン)は,

color gluon(カラーグルオン)と呼ばれており,

 

これを必要とする対称性変換である複数パラメーターを持った

ユニタリ変換群は,カラーSU(3)群と呼ばれています。

  

こうした,U(n)やSU(n)のような変換群に属する位相変換の

局所変換対称性に伴なう非可換ゲージ場の共変的量子化は,電磁

場の場合よりもかなり複雑ですが,

  

基本的には補助場Bを導入して行なわれる電磁場の量子化の

"中西・Lautrap理論"の直線的な応用で与えられます。

  

これは,Faddev-popovゴースト(FP-ghost)のようなゴースト

を用いてゲージを固定する定式化を行なうことなどによって,

中西氏の教え子?であろう九後・小嶋(オジマ)氏により,スマート

な付帯条件が与えられて完成されました。

 

なお,理論の大域的対称性と密接に関係して現われる保存量に

ついてのNoetherの定理と関連した過去の記事をいくつか,列挙

しておきます。よろしければ参照してください。

 

まず,2006年9/6の「不確定性,相補性とネーターの定理」,

9/8の「ポアンカレ群と粒子のスピン」,10/8の

WKB近似,ハミルトン・ヤコービ方程式,経路積分」,

 

さらに,2007年5/7の

量子化された場と調和振動子(パラ統計)」,

8/7の「場の演算子とリー群(Lie群)の生成子」,

11/2の「解析力学の初歩」,

 

そして,2008年2/29の「ネーターの定理と場理論

などがあります。

 

また,記事の順番は違うし,ちょっとマニアックな話題ですが

2008年2/21,2/25の「非ネーター保存量」,および,

非ネーター保存量(続き) 」 もあります。

 

今日はこのくらいにします。

 

参考文献:

1.メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

2.中西 (のぼる) 著「場の量子論」(培風館)

3.九後汰一郎「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」(培風館)

 

4.C.N.Yang and .L.Mills,Phys.Review.Vol.96,p191-(1954)  

5.Ryoyu.Utiyma(内山龍雄)

“Invariant Theoretical Interpretation of Interaction”

(Institute for Advanced Study.Princeton New Jersey,

Received July 1955),Physical Revie,Vol.101,pp1597-1607(1956)

  

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2008年5月16日 (金)

電磁気学と相対論(3)(真空中の電磁気学2)

「電磁気学と相対論」の続きです。これまでと同じく相異なる2つ

の慣性系に固定された準拠座標系をS,および S'とします。

 

,および,S'系の両方で当然成立すべき電荷の保存法則は,

それぞれ次の連続の方程式:∂ρ/∂t+div(ρ)=0 ,

および,∂ρ'/∂t'+div'(ρ'')=0 で与えられます。

  

これらの方程式は,

 

Maxwellの方程式:

div=ρ,rot-∂/∂t=ρ,および,

div''=ρ',rot''-∂'/∂t'=ρ''

において,

 

右辺の電荷密度ρ,ρ'や電流密度ρ,ρ''が左辺で電場,

磁場によって表現されていると見て,それらを連続方程式

左辺のρ,ρ,およびρ',ρ''に直接代入すれば右辺が

ゼロとなることがわかるので,

  

現象論のオームの法則のような独立な方程式ではなく,基本

方程式から得られる1つの結果です。

 

そこで,今,時空座標:μ=(x0,x1,x2,x3)=(ct,)と同じく

次の4成分を持つ量を,仮にsμ=(s0,s1,s2,s3)≡(cρ,ρ)

と表わすと,

 

S系での∂ρ/∂t+div(ρ)=0 は∂sμ/∂xμ=0 ,

または,∂μμ=0 と表わされます。

 

同様に,S'系では,s'μ≡(cρ',ρ'')であって,この系

での連続の方程式:∂ρ'/∂t'+div'(ρ'')=0 は,

∂s'μ/∂x'μ=0 ,または,∂'μs'μ=0 となります。

 

そして,S系からS'系への時空座標のLorenyz変換が

x'μ=Λμνν (x'=Λx)で表わされるとき,

 

上記の4つの成分を持つ量sからs'への変換が,

s'μ≡fμ(s0,s1,s2,s3)なる形で与えられる

とすれば,

 

∂'μs'μ=0 は,∂'μs'μ=∂fμ/∂x'μ

=(∂fμ/∂sν)(∂sν/∂xλ)(∂xλ/∂x'μ)

=(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ(∂λν)=0

と書けます。

 

ここで,x'μ=Λμννよりxμ=(Λ-1)μνx'νなので,

∂xλ/∂x'μ=(Λ-1)λμが成立することを用いました。

 

(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ(∂λν)=0 が,∂μμ0 の制限

付きで常に成立するので,条件付き恒等式に対するLagrangeの

未定係数法を用いることにします。

  

μμの未定係数をAとすると,制限なしの恒等式:

[(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ-Aδνλ](∂λν)=0

が成立します。

 

これは任意のsνの独立変動∂λνに対して成立するので,

(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ=Aδνλが成立する必要があります。

 

したがって,最後に得られた式の両辺にΛσλを掛けて,

(∂fμ/∂sνσλ-1)λμ=AΛσλδνλとすれば,

 

Λσλ-1)λμ=δσμを用いて, 

∂fσ/∂sν=AΛσν,つまり,∂fμ/∂sν=AΛμν

を得ます。

 

ここで,未定係数Aも一般にsμの関数であると考えていいので,

恒等式:(∂fμ/∂sν)(Λ-1)λμ=Aδνλの両辺を,

さらにsσで偏微分すると.

(∂2μ/∂sν∂sσ)(Λ-1)λμ=(∂A/∂sσνλ

なる恒等式を得ます。

 

左辺はνとσについて対称なので,右辺もそうであるはずですから,

(∂A/∂sσνλ=(∂A/∂sνσλ が成立します。

 

そこで,σ=λ≠νとおけば,∂A/∂sν=0 が得られます。

 

それ故,Aは変数sμには無関係な定数です。

 

そこで,Bμをある定数として,

s'μ=fμ(s0,s1,s2,s3)=AΛμνν+Bμ

と書けます。

 

定義から,μ=(cρ,ρ),かつs'μ=(cρ',ρ'')であり,

もしS内の至るところでρ=0 の真空の場合なら,S'でも至る

ところでρ'=0 が成立すべきです。

 

そのためには,明らかにBμ=0 であることが必要です。

 

以上で,s → s'の変換の必要な性質として,それが

s'μ=AΛμννなる形であるべきことが導かれました。

 

それ故,s'μs'μ=A2νν,すなわち,

2ρ'2(1-'2/c2)=A22ρ2(1-2/c2)

が成立しますが,S系とS'系を逆に取ると,

右辺の係数:A2は(1/A2)となるので,対称性から

2=1/A2,つまりA=±1を得ます。