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2008年6月15日 (日)

電磁気学と相対論(8)(物質中の電磁気学2)

一週間ほど西の方へ旅に出ていたため,前回のシリーズ記事からは

ずいぶんと時間が経ったので,私自身の復習も兼ねて,物質中の現象

論的な電磁力学に関する前回の話を要約し,それから新しい論題

に入ります。

 

前回の記事では,運動する物質中の電磁場に対して2つの2階

反対称反変テンソルFμν,Hμνを導入しました。

 

それによって,

電場,磁束密度,電束密度,磁場の強さを,

E=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),

B=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12),

D=(D1,D2,D3)≡-c-1(H01,H02,H03),

H=(H1,H2,H3)≡-(H23,H31,H12)

で定義しました。

 

そして,ρを物質の電荷密度,Uμを運動物質の4元速度:

μ≡(c/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)として,

4元電流密度をJμ≡(cρ,)=ρ0μ+sμ

=(cρ,ρ),sμ=(s0,)

=Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=(0,-ρ)

とします。

 

こうすれば,任意の座標系における電磁力学の基本方程式は,

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,

∂Hμν/∂xν=-Jμ と表現されます。

 

さらに,Fμν,Hμνから4元ベクトルFμ≡Fμνν

=((Eu)/{c(1-2/c2)1/2},(×)/(1-2/c2)1/2),

および,

μ≡Hμνν/c2

=((Du)/{c2 (1-2/c2)1/2},

{+(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)

を作ります。

 

また,Fμν,Hμνに双対な擬テンソル

*μν≡(1/2)εμνλσλσ,

*μν≡(1/2)εμνλσλσ) を構成します。

 

そして,4元擬ベクトルF≡-F*μνν/c

=((Bu)/{c(1-2/c2)1/2},{-(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)=((~)/{c(1-2/c2)1/2},~/(1-2/c2)1/2),

および,

≡-H*μνν/c

=((Hu)/{c(1-2/c2)1/2},{-(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)

を作ります。

 

特に,0 の静止系S0では,

=(0,0),K=(0,0),F*0μ=(0,0),K*0μ=(0,0)

です。

 

これら4元ベクトルFμ,Kμ,F,Kを,S系のMinkowskiの

4元力の表現:Mμ≡((M)/c,M)

=({(Fu)/c}/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)

と比較します。

 

すると,~≡×,および~≡+(×)/c2は,

それぞれ,単位量の試験電荷に作用する"canal field",および

"gap field"の電気力,

  

~=×,および,~=-(×)/c2は,

それぞれ単位磁極の試験磁荷に作用する"canals field",

および"gap field"の磁気力であることがわかります。

 

そして,S系での量~≡×,~≡+(×)/c2,

~=×,~=-(×)/c2の,S0系(0)での

表現:0,0,0,0に対しては,等方性媒質の場合,εを誘電率

μを透磁率と呼ばれる比例定数として0=ε0,0=μ0

書けます。

  

このことから,~=ε~,~=μ~,あるいは,

μ=εFμ,F=μKが成立し試験体に作用する

"canal field"の力と"gap field"の力が互いに比例する

という表式が得られます。

 

これらの式はまた,Hμνν/c2=εFμνν,

*μνν/c=μH*μνν/c とも書けます。

 

そして後者:F*μνν/c=μH*μνν/cは,

μνλ+Fνλμ+Fλμν

=μ(Hμνλ+Hνλμ+Hλμν)なる等式と同等

であることを示すこともできます。

 

さらに,σを電気伝導度とすると,S0系でのオームの法則は

0=σ0で与えられます。

 

そこで,sμ=(s0,)=Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=(0,-ρ)

のS0系での形は,s=(0,0)=(0,σ0)=σF0μ 

と書けます。

 

それ故,S系ではsμ=σFμより,

μ-(Jλλ)Uμ/c2=σFμなる形で,オームの法則の

テンソル表現が得られます。

 

結局,電流密度Jμが与えられている場合の電磁力学の

基本方程式の閉じた形式は,

 

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,

∂Hμν/∂xν=-Jμと,Hμνν/c2=εFμνν,

 

μνλ+Fνλμ+Fλμν

=μ(Hμνλ+Hνλμ+Hλμν),

μ-(Jλλ)Uμ/c2=σFμ

 

の組で与えられます。

 

原理的には,これらから物質内の場を決定できるはずです。

 

ここで,物質と真空の境界で場の量が満足すべき境界条件は,

については方程式:

rot~+d~/dt=0,rot~+d~/dt=-ρu=s

を物質の境界面のすぐ内側と外側に相対する2辺を持つ小さな

長方形が囲む無限小面内で積分することから得られます。

 

これは,,あるいはの境界面に平行な成分が連続であるべき

という条件になります。

 

一方,については,方程式 div=0,div=ρ

を積分することにより,

 

の垂直成分:Bnは境界で連続であるべきで,

垂直成分:Dnは物質外部から内部に向かって境界表面

の電荷度分:ΔDnだけ不連続に変化してDn+ΔDnなる

べきという条件が得られます。

 

ただし,定義:~≡×,~≡+(×)/c2,

~≡×,~≡-(×)/c2における

"境界の外=真空領域"でも物質の速度に等しいとして

います。

 

先に2008年5/30の記事

電磁気学と相対論(6)(真空中の電磁気学5)」では,

 

μをローレンツの電子論における電流密度とするとき,

真空中での電磁気力の4元力密度fμが,

μ=ρ0μνν=Fμννなる表式で与えられる

ことを見ました。

 

4元力がこの形に書けることは,静電荷(=0)に作用する力

の密度がρ00であるという電場の定義から明らかです。

 

しかしε≠ε0,μ≠μ0の一般の物質内で作用する力の密度を

一意的に表現するのは容易ではありません。

 

このような力の定義の曖昧さは当然ながら,エネルギー運動量

テンソルの曖昧さを呼び起こします。

 

ともあれ,ここではまず電子論での話にならって,

μ=Fμννにおいて携帯電流ρのみで書かれた

4元電流密度sμを,ρに伝導電流(を加えた物質

における全4元電流密度Jμで置き換えた4元ベクトル量:

μννを取り上げて考えてみます。

 

場の方程式:

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,

∂Hμν/∂xν=-Jμ によって,

 

μνν=-Fμν(∂Hνλ/∂xλ)

=-∂(Fμννλ)/∂xλ+(∂Fμν/∂xλ)Hνλ

   

=∂(Fμνλν)/∂xλ

+(1/2)(∂Fμν/∂xλ+∂Fλμ/∂xν)Hνλ

 

=∂(Fμνλν)/∂xλ-(1/2)(∂Fνλ/∂xμ)Hνλ

=∂(Fμνλν)/∂xλ-(1/4)∂(Fνλνλ)/∂xμ

-(1/4){(∂Fνλ/∂xμ)Hνλ-Fνλ(∂Hνλ/∂xμ)}

 

が得られます。

 

したがって,

μνν(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}

=-∂Sμν/∂xνが成立します。

 

ただし,Sμν≡-ηνσμλσλ+(1/4)Fλσλσημν

です。

 

このテンソルSμνの空間成分;ij≡-tijを,

E=(E1,E2,E3)-c(F01,F02,F03),

B=(B1,B2,B3)-(F23,F31,F12),および

D=(D1,D2,D3)-c-1(H01,H02,H03),

H=(H1,H2,H3)-(H23,H31,H12)

を用いて表わすと,

 

ij=Eij+Hij-(1/2)(EDHBij

となります。

 

それ故,Sμνの空間成分Sijにマイナス符号をつけた

ijは,静止系S0では物体におけるMaxwellの応力テンソル

に一致します。

 

さらに,/c≡(S01,S01,S03)と定義すれば,×

ポインティングベクトルになっています。

 

また,h≡S00とするとh=(1/2)(EDHB)となります。

 

すなわち,静止系S0ではおよびhはそれぞれ定常運動して

いる物体の電磁エネルギー流,および電磁エネルギー密度に

一致します。

 

また,c≡(S10,S20,S30)で与えられる3次元ベクトル

すると×となり,真空中の理論からのアナ

ロジーで,これは電磁運動量密度を示していると思われます。

 

これらのことから,

μνν-(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}

=-∂Sμν/∂xν の左辺がこの際の電磁的な4元力密度 fμ

であって,Sμνが電磁エネルギー運動量テンソルを表わしてい

と暗示されます。

 

この結果,,h,は静止系S0だけでなく,任意の座標系

おいても電磁エネルギー流,電磁エネルギー密度,電磁

運動量密に相当するものとして扱えると考えられます。

 

,h,を上述のように表現することは,Minkowskiに始まります

が,これらはε=ε0,μ=μ0のときには,いずれも電子論における

表現形式に帰着します。

 

ところで,一般物質から成る対象帯電物体が均質かつ等方的

であれば,Fμνν-(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)

-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}=-∂Sμν/∂xν の左辺第2項

はゼロになることを示せます。

 

すなわち,

(1/4){F0σλ(∂H0σλ/∂x0μ)-(∂F0λσ/∂x0μ)H0σλ}

=(1/2)[0(∂0/∂x0μ)-0(∂0/∂x0μ)

-(∂0/∂x0μ)0+(∂0/∂x0μ)0]

=-(1/2)[|0|2(∂μ/∂x0μ)+|0|2(∂ε/∂x0μ)]

となりますが,S0系でεとμが定数ならば最右辺はゼロです。

 

この式は座標系によらない表現なので,任意の系Sでもゼロである

というわけです。

 

こうして,均質かつ等方的な物体内部では,fμ=Fμνν

となりますが,Jμ=(cρ,)より,

μ=((EJ)/c,ρ+(×))

を得ます。

 

つまり,=ρ+(×)

=ρ[+(×)]+(×),

0=(EJ)/c={)}/c

~EC)/c=(fu~)/c

となります。

 

すなわち,cf0fu~ですが,これは静止S0系(=0)

では物体中の単位体積中で単位時間に発生する熱量=ジュール熱

を表わしたもの;~000と一致しています。

 

一方,fuはどんな座標系でも力学的仕事を示すので,

μ相対論的力学において定式化された4元力密度の

一般的な表現形式:μ=((fu+q)/c,)(qは単位時間

当りに系が自身の運動で放出する非力学的エネルギー)

と合致するためには,

 

先の式の項このプロセスで発生する熱量率qを示して

いる,と考える必要があります。

 

実際,系の力学的エネルギーをEmとすると,

cf0=dEm/dt=(エネルギーの増加率)ですから,

これは力学系が受け取るエネルギー率そのものです。

 

そこで,独立な4個の方程式:fμ=-∂Sμν/∂xνは,

通常のエネルギー運動量の保存法則を示しています。

 

そして,fμ=Fμνν=((EJ)/c,ρ+(×))

から,μμ=Uμμνν=U0μ0μν0ν

=(00)0=(不変量) が得られます。

 

0は静止系での力学的効果以外の効果を示しており,

もちろんLorentzスカラーですが,μ=((fu+q)/c,),

μ=(c/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)から得られる

μμの表式において,0 とおけばわかるように,

0=q/(1-2/c2)1/2,あるいはq=q0(1-2/c2)1/2

が成立します。

 

一方,先に同じく2008年5/30の記事

電磁気学と相対論(6)(真空中の電磁気学5)

で述べたように,

  

対象とする帯電物体の"密度(静止質量密度)をμとし,

μ0 を物質の不変質量密度(静止系での物質密度)とすれば,

μ=μ0/(1-2/c2)1/2と書けるので,

 

この物体の微小体積をΔVとしたとき,これが従うべき運動

方程式は,d(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0 となります。

 

そして,この方程式が,∂(μ0μν)/∂xν=fμなる式

と等価であることも示しました。

 

そこで,この両辺にUμを掛けてμで縮約すると,

μμ=c2,,かつUμ(dUμ/dτ)=0 であって,

μμ=q0なので,∂(μ0ν)/∂xν=q0/c2,

 

つまり∂μ/∂t+div(μ)=q0/c2なる質量保存の

連続方程式が得られます。

 

連続方程式の右辺は質量の湧き出しですから,この式は

正に非力学的エネルギーq0,今の場合は,

"q0=(00)(~0,C0)=(ジュール熱)"を受け取ること

によって,物質の固有質量がq0/c2だけ増加することを意味

しています。

 

つまり,電磁場の話は質量とエネルギーについてのEinstein

の一般定理:E=mc2の典型例の1つを示していると考えら

れます。

 

Minkowskiの電磁エネルギー運動量テンソル:

μν=-ηνσμλσλ(1/4)Fλσλνημνは,

電子論の場合のそれと同じくトレ-スレス(対角和がゼロ)

という性質:Sμμ=-Fμλμλ+(1/4)4Fλσλσ=0

を確かに満たしています。

 

しかし,Fμλνλ≠FνλμλなのでSμν≠Sνμとなり,

μνは対称テンソルではありません。

 

μνの空間部分:

ij=-tij-Eij-Hij(1/2)(EDHBijは,

等方性物体なら静止系S0では0=ε0,0=μ0なので,

対称テンソルですが,

 

時間と空間の混合成分は静止系でも,

i0-S0i=c(gi-Si/c2)=c(εμ-ε0μ0)(0×0)≠0

となって確かに対称ではありません。

 

したがって,一般に等方性物体でもS0系以外ではSij≠Sji

であって空間成分も非対称です。

 

こうしたMinkowskiのエネルギー運動量テンソルの非対称性

ついては長い間文献上で議論が続けられ,この非対称性の

中にMinkowski理論の真の難点が現われているという感があ

りました。

 

そこで,Abrahamは対称性を持つ電磁エネルギー運動量テンソル

の表現形式を作ってみました。

  

彼の電磁エネルギー運動量テンソルの表現:SAμνはとにかく

静止系S0で等方性物体の場合には,

Aij=-tAij=-Eij-Hij+(1/2)(EDHBij,

×=c(SA01,SA01,SA03),h=(1/2)(EDHB)

=SA00となるように作られています。

 

しかし,電磁運動量密度については,

Mikowskiが,自身のテンソルSμνから,

≡(S10,S20,S30)=×として,これを与えたのに対し,

Abrahamは,あくまでもテンソルの対称性が保たれるように,

静止系S0=(×)/c2/c2の形をとるものと仮定

しました。

 

AbrahamのテンソルSAμν,静止系S0では対称ですから,

任意の座標系Sでも対称です。

 

しかしS0系以外の任意系Sでの成分はS0系での表現:

Aij=-tAij=-Eij-Hij+(1/2)(EDHBij,

×=c(SA01,SA02,SA03),h=(1/2)(EDHB)

=SA00のような簡単な形にはならず,

 

場を示す変数,,,でSAμνを表わそうとすると,

物質速度を示すが非常に複雑な形で入ってきます。

 

そして,テンソルSAμνから方程式fAμ=-∂SAμν/∂xν

満たすものとして導かれるAbrahamの4元力密度fAμは,先

の表現式:fμ=Fμνν=((EJ)/c,ρ+(×))から

のずれも,きわめて複雑な形になります。

 

Minkowskiの表現の場合,静止系でもFμννからのずれが,

(1/4){F0σλ(∂H0σλ/∂x0μ)-(∂F0λσ/∂x0μ)H0σλ}

=(1/2)[|0|2(∂μ/∂x0μ)+|0|2(∂ε/∂x0μ)]であり,

これは均質,かつ等方的な物質内ならゼロになります。

 

一方,Abrahamの表現の場合には,静止系では空間成分の力の

密度:Aが,A+{(εμ-ε0μ0)/c2}(∂/∂t)と

表わせることがわかっています。

 

これによれば,Abrahamの力の密度:AはMinkowskiのそれ:

よりも{(εμ-ε0μ0)/c2}(∂/∂t)だけ異なります。

 

しかし,この違いを実験的に検証するのは困難らしいです。

 

そして,ごく最近まで,ほとんどの物理学者はAbrahamの理論

を採用する方向に向かっていましたが,これについてはまだ

決着が付いていたわけではなく,最近,Tamm(タム)はこの問題

の論議を再開して,結局,Minkowskiの表現形式の方が正しい

という結論を得ています。

  

(↑※最近というのは"参考文献=メラーの著書"が書かれた

当時のことですが,現在については,まだ調べていません。)

 

すなわち,ある物体中の電磁場は本質的には閉じた系ではない

ため,電磁エネルギー運動量テンソルが対称であるべき,という

先験的理由(a-prioriな理由)はありません。

 

Abrahamがテンソルが対称であるべきことを主張する主な論拠は,

 

"巨視的理論に現われる諸量は,各々に対応する電子論の諸量を

適当な大きさの時空領域で平均して得られるべきで,電子論での

微視的なエネルギー運動量テンソルsμνは対称なので,その平均

として得られるSμν=<sμν>も対称でなければならない。"

 

というものでした。

 

しかし,Tammが着目したのは,"巨視的テンソルSμνは,必ずしも

μνの平均<sμν>に一致する必要はなく,むしろSμνが力

の密度,および力のモーメント(能率)を正しく与えるように定義

すべきである"ということです。

 

つまり,彼は,

"fμ=-∂Sμν/∂xν=-<∂sμν/∂xν>,

および,αμν=xμν-xνμ+Sμν-Sνμ

=-xμ(∂Sνλ/∂xλ)-xν(∂Sμλ/∂xλ)+Sμν-Sνμ

=-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>

の成立を条件とすべきである"

と主張しました。

 

それ故,Tammによれば,aμνを∂aμν/∂xν=0 を満たす適切

な非対称テンソルとして,Sμν=<sμν>+aμνと書かれる

べきことがいえるのみです。

 

そして,これを力のモーメントテンソルの等式

αμν=-xμ(∂Sνλ/∂xλ)-xν(∂Sμλ/∂xλ)

+Sμν-Sνμ

=-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>

に代入すると,

 

-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>

=-<xμ><∂sνλ/∂xλ>+<xν><∂sμλ/∂xλ

が成立するときに限って,Sμνが対称となることがわかります。

 

そして,今の電磁場のテンソルの場合に,こうなる必然性はない

ということです。

 

さらに加えて,TammはMinkowskiのテンソル表現が電子論と一致

するのに反し,アブラハムの表現はある特別な場合には誤った

結果に導くことを示し得ました。

 

また,Dallenbachは電子論からMinkowskiのテンソルを一般的に

導く方法を与えました。

 

これらのことから,電磁エネルギー運動量テンソルは一般に

非対称であるとしてよいと思われますが,物質と電磁場の全

エネルギー運動量テンソルは依然として対称であると仮定

できます。

 

しかし,このときは逆に物質の力学的エネルギー運動量テンソル

が非対称になります。

 

これで「電磁場と相対論」のシリーズ記事は当面は終わりに

したいと思います。

 

そもそも,このシリーズは電場と電束密度,磁場と磁束密度の

関係を論じていた記事から派生したものでした。

 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)

「相対性理論」(みすず書房)

 

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