相対論の幾何学(第Ⅰ部-1:平面曲線)
相対性理論,特に一般相対性理論の運動学を表現するための基本的な部分は,ほとんど時空多様体の上での幾何学,それも微分幾何学そのものであると言ってもよいくらいなので,それを理解するために直感的なイメージから抽象的な概念)にわたる系統的で数学的な説明を試行してみます。
できるだけ平易な部分から始めたいので,まず2次元平面内の曲線から始めます。平面の"座標=位置ベクトル"をr≡(x,y)とし,平面曲線をパラメータ(媒介変数)表示でr(t)=(x(t),y(t))と書くことにします。
ここで,tは時間を意味するわけではなく単なるパラメータです。そしてr(t)のtによる微分dr/dt=(dx/dt,dy/dt)を特にrd(t)≡rdot(t)=(xd(t),yd(t))と表記することにします。
ちなみに,もしr(t)が時間tによる粒子の運動の軌跡を示すのであれば,rd(t)=dr/dtは運動の速度ベクトルを示します。
そして,このときにはrd(t)の大きさ|rd(t)|≡[{xd(t)}2+{yd(t)}2]1/2は速さを示し,r2d(t)=(x2d(t),y2d(t))≡d2r/dt2=(d2x/dt2,d2y/dt2)は加速度ベクトルです。
曲線r(t)(a<t<b)の長さ(弧長)は∫ab|rd(t)|dtで与えられます。そこで,s(t)≡∫0t|rd(u)|duと定義すれば,s(t)はtが 0 からtまで変動するときに描く曲線の長さです。
そして微積分学の基本定理によってsd(t)=|rd(t)|です。
全てのtでsd(t)=|rd(t)|≠0 なら常にds/dt=|rd(t)|>0 なので,s(t)はtの単調増加関数です。そこで単調増加の逆関数が存在します。
もし,sd(t)=0 の点があればそこではtは一意的ではありませんが,連続になるようなtを選択してs=s(t)の1つの逆関数をt=t(s)と書き,これをr(t)に代入することで曲線を表現するパラメータとしてtの代わりにsを採用することができます。
簡単のために,この表示での曲線r(t(s))=(x(t(s)),y(t(s)))を,改めてr(s)=(x(s),y(s))と表記します。
そして,曲線のsによる微分dr/ds=(dx/ds,dy/ds)をr'(s)=(x'(s),y'(s))と書くことにします。
このとき,dr/ds=(dr/dt)(dt/ds)より,|r'(s)|=|r d(t)|(dt/ds)=ds/ds=1 ですから,r'(s)=dr/dsは単位ベクトルになります。
そこでr'(s)=dr/dsをe1(s)と表記することにします。すなわち,e1(s)=r'(s)です。
幾何学的には,s=s0に対応するe1(s0)は曲線上の点r(s0)における接ベクトルを表わしており,その点での接線の方程式はr(s)=r(s0)+e1(s0)(s-s0)で与えられます。
同じ平面上でe1(s)に垂直な単位ベクトルは2つありますが,e1(s)を"正の向き=反時計回り"にπ/2だけ回転した方の単位ベクトルをe2(s)とします。
e1(s)とe2(s)が垂直なことはパラメータsを省略した表現では(e1,e2)=0 と表現されます。
また,定義から,e1=r',(e1,e1)=1,(e2,e2)=1です。ただし,(e1,e1),(e1,e2) etc.は内積を示しています。
ここで,(e1,e1)=1,(e2,e2)=1をsで微分すると,(e1',e1)=0,(e2',e2)=0 が得られます。
平面上のベクトルは2次元,つまりe1とe2の独立な2つの単位ベクトルの線型結合で表わされます。
e1とe2は直交基底なので,(e1',e1)=0 はあるスカラー値κが存在してe1'=κe2と書けること意味します。
ここで,表記にパラメータsを復活させるとe1'(s)=κ(s)e2(s)となって,κは定数ではなくsの関数であることが強調された表現となります。
同様に,(e2',e2)=0 によりe2'はe1の定数倍で表わされますが,(e1,e2)=0 をsで微分した式(e1',e2)+(e1,e2')=0 にe1'=κe2を代入すると(e1,e2')=-κなることがわかりますから,結局e2'=-κe1を得ます。
以上から,e1'=0e1+κe2, e2'=-κe1+0e2 となり,ei'=Σjaijej(i=1,2)なる線型変換の表現が可能です。
すなわち,t(e1',e2')=At(e1,e2)なる表現を与える2次の正方行列をA=(aij)とすると,これは交代行列(aji=-aij)になります。
また,e1'(s)=κ(s)e2(s)によりe1'(s)は曲線上の点r(s)における接線ベクトルe1(s)に垂直で長さが|κ(s)|のベクトルを示しています。
もしも,曲線が半径aの円なら,これは原点を中心とする場合,r(t)=(x(t),y(t))=(acost,asint)(a>0)と表現されます。このとき,rd(t)=(xd(t),yd(t))=(-asint,acost)でs(t)=∫ot|rd(u)|du=atです。
そこで,この円はsをパラメータとする表現ではr(s)=(x(s),y(s))=(acos(s/a),asin(s/a))となります。
したがって,e1(s)=r'(s)=(-sin(s/a),cos(s/a)),e2(s)=(-cos(s/a),-sin(s/a))と書けますから,e1'(s)=(-(1/a)cos(s/a),-(1/a)sin(s/a))=(1/a)e2(s)となります。それ故,この場合にはκ(s)=(1/a)(一定)です。
そして,e2'(s)=((1/a)sin(s/a),-(1/a)cos(s/a))=-(1/a)e1(s)ですから,e2'(s)=-κ(s)e1(s)も確かに満足されています。
一般の曲線においても円の半径aに相当するρ(s)≡1/κ(s)を曲率半径と呼び,その逆数で円の場合の1/aに相当するκ(s)=1/ρ(s)を曲率と呼ぶことにします。
逆に曲率がκ(s)=1/ρ(s)=1/a>0 (一定)の曲線をr(s)とするとき,これが円になることを証明しておきましょう。
まず,r(s)+e2(s)/κ(s)=r(s)+ae2(s)は円の中心の位置べクルになると予想されるので,これをsで微分すると,今のκ(s)=1/aの場合にはe1(s)+a{-(1/a)e1(s)}=0 となります。
したがって,r(s)+ae2(s)はsによらない定点ですから,この点をr0と置けば,これは円の中心になる資格があります。
そして,実際に|r0-r(s)|=a(一定)ですから,r(s)はr0を中心としa=1/κを半径とする円を表わしていることがわかります。
ここで,曲率κ(s)を座標(x(s),y(s))によって陽に表現する式を求めておきます。
まず,e1=(x',y')なので,e2=(-y',x')と書けます。
e1'=(x",y")なので,(e1',e1)=x"x'+y"y'=(1/2)(d/ds)(x'2+y'2)=(1/2)(ds2/ds)=0 です。
また,(e1',e2)=x'y"-y'x"ですから,e1'=κe2で定義される曲率κは,κ=(e1',e2)=x'y"-y'x"と表わされます。
パラメーターが弧長sではなく一般のtである場合はd/ds=(d/dt)(dt/ds)を用いればs微分による表現をt微分によるそれに変換できます。
dt/ds=(ds/dt)-1=1/{(xd)2+(yd)2}1/2=1/|rd(t)|ですから,d/ds={1/|rd(t)|}(d/dt)ですね。
そこで,e1=(x',y')=(xd,yd)/|rd(t)|=rd(t)/|rd(t)|,e2=(-y',x')=(-yd,xd)/|rd(t)|です。
さらにe1'=(de1/dt)/|rd(t)|なので,曲率はκ=(e1',e2)=(de1/dt,e2)/|rd(t)|と表現されます。
ここで,e1=rd(t)/|rd(t)|よりrd(t)=e1|rd(t)|ですが,この両辺をtで微分するとr2d(t)=(de1/dt)|rd(t)|+e1(d|rd(t)|/dt)となります。
そして(e1,e2)=0 ですから(r2d(t),e2)=(de1/dt,e2)|rd(t)|,つまり(de1/dt,e2)=(r2d(t),e2)/|rd(t)|です。
したがって,結局,曲率はκ=(de1/dt,e2)/|rd(t)|=(r2d(t),e2)/|rd(t)|2=(xdy2d-ydx2d)/{(xd)2+(yd)2}3/2と表わされることがわかりました。
合同変換による移動を除けば,平面曲線は曲率のみで決まることを示す定理を2つ述べておきます。
[定理1]:r(s),r^(s);(0≦s≦l)を共に弧長sをパラメータとする長さlの2つの平面曲線とする。
これらが回転と平行移動で重ね合わせることができる(合同である)ための必要十分条件は両者の曲率が一致することである。
(証明)2曲線が合同で,それ故,2次の回転行列(=直交行列)をT (tTT=TtT=I)として,r^(s)がr(s)からの回転と平行移動によってr^(s)=T{r(s)-r(0)}+r^(0)と表現できるとします。
このとき両辺をsで微分するとe^1(s)=dr^(s)/ds=T{dr(s)/ds}=Te1(s)が得られます。
そしてTは平面上での回転を示しているので,e1(s),e^1(s)をそれぞれ正の向きにπ/2だけ回転させたe2(s),e^2(s)に対してもe^2(s)=Te2(s)が成立します。
これらe^1(s)=Te1(s),e^2(s)=Te2(s)をさらにsで微分するとe^1'(s)=Te1’(s),e^2'(s)=Te2’(s)となります。
ところがe1'(s)=κ(s)e2(s),e2'(s)=-κ(s)e1(s)より,Te1'(s)=κ(s)Te2(s),Te2'(s)=-κ(s)Te1(s)です。
すなわち,e^1'(s)=κ(s)e^2(s),e^2'(s)=-κ(s)e^1(s)が成立します。
したがって,合同な2曲線の曲率は一致することがわかりました。
逆に2曲線の曲率κ(s),κ^(s)が等しいとき,局所的には回転行列P(s) (tP(s)P(s)=P(s)tP(s))によってdr^(s)=P(s)dr(s)と書けますから,e^1(s)=P(s)e1(s),e^2(s)=P(s)e2(s)です。
これをsで微分すると,e^1'(s)=P(s)e1'(s)+P'(s)e1(s)=P'(s)e1(s)+P(s)κ(s)e2(s)となります。
一方,仮定κ^(s)=κ(s)によりe^1'(s)=κ^(s)e^2(s)=κ^(s)P(s)e2(s)=P(s)κ(s)e2(s)も成立します。
それ故,恒等的にP'(s)e1(s)=0 となることが必要です。これはP'(s)=0 を意味します。
したがって,P(s)=T(一定),tTT=TtT=Iと書くことができます。すなわち,dr^(s)=Tdr(s)ですが,これを積分するとqを積分定数のベクトルとして,r^(s)=Tr(s)+qとなります。
これにs=0 を代入することによって,q=r^(0)-Tr(0)が得られます。
結局,r^(s)=T{r(s)-r(0)}+r^(0)という形の回転プラス平行移動の変換によって,r(s)をr^(s)にピッタリと重ねあわせることが可能であることが示されました。
(証明終わり)
[定理2]:(曲線論の基本定理):パラメータsの閉区間[0,l]で定義された滑らかな関数κ(s)(0≦s≦l)に対して,sを弧長としκ(s)を曲率とする平面曲線r(s)(0≦s≦l)が存在する。
さらに,このような曲線は回転と平行移動で写すことが可能なものを除いて一意的である。
(証明)後半の一意性の部分は定理1そのものです。
また,与えられたκ(s)に対して曲線r(s)をr(s)=(x(s),y(s)),x(s)≡∫0scos{∫0tκ(u)du}dt,y(s)≡∫0ssin{∫0tκ(u)du}dtによって定義すれば,dr/ds=(cos{∫0sκ(u)du},sin{∫0sκ(u)du})により|dr/ds|=1なので,sは確かにこの曲線r(s)の弧長です。
そこで,e1(s)=dr/ds=(cos{∫0sκ(u)du},sin{∫0sκ(u)du})と置くことができて,e2(s)はe2(s)=(-sin{∫0sκ(u)du},cos{∫0sκ(u)du})となります。
したがってe1'(s)=de1/ds=κ(s)(-sin{∫0sκ(u)du},cos{∫0sκ(u)du})=κ(s)e2(s)を得ます。
かくして,前半部分も証明されました。
(証明終わり)
さて,平面曲線r(s)(a≦s≦b)は,その始点r(a)と終点r(b)が一致する,すなわちr(a)=r(b)なるとき,閉曲線と呼ばれます。
そして,閉曲線の曲率がκ(s)で与えられるとき,m≡{∫abκ(s)ds}/(2π)で定義される値mは常に整数(0,±1,±2,..)となることを示すことができます。
すなわち,曲率がκ(s)のこの曲線r(s)(a≦s≦b)においてsの変域を特に 0≦s≦lとすると,上の証明におけるようにr(s)=(∫0scos{∫0tκ(u)du}dt,∫0ssin{∫0tκ(u)du}dt),(0≦s≦l)と表現できます。
そこで,θ(s)≡∫0sκ(u)duと置けば,r(s)の接ベクトルr'(s)=dr/dsはr'(s)=(cos{θ(s)},sin{θ(s)})と表わされ,θ(0)=0 によりθ(s)は,sにおける接線r'(s)がs=0 における接線r'(0)となす角度を示しています。
そこでr(s),(0≦s≦l)が滑らかな閉曲線:r(0)=r(l)なら,これはr'(0)=r'(l)を意味し,偏角θ(l)=∫0lκ(s)dsは2πの整数倍でなければならないことがわかります。
そこで,一般に 0≦s≦lではなく,a≦s≦bで定義された曲率がκ(s)の閉曲線r(s)(r(a)=r(b))においても,積分値m≡{∫abκ(s)ds}/(2π)はm={(θ(b)-θ(a))/(2π)は常に整数になることが示されたことになります。
この整数mを回転数と言います。
今日はここまでにして,次回は3次元の空間曲線から始めます。
参考文献:梅原雅顕,山田光太郎 著「曲線と曲面」(裳華房),小林昭七著「曲線と曲面の微分幾何」(裳華房)
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