重力崩壊とブラックホール(2)
星の重力崩壊の話題の続きです。
遠方の観測者から見た重力崩壊と観測者の時間の関係を考えます。
圧力Pがゼロの場合の星の表面の運動はシュヴァルツシルト時空における自由落下運動と同じです。特に動径方向の運動を考えれば十分だと思われます。
シュヴァルツシルト時空の計量はds2=(1-2m/r)dt2-dr2/(1-2m/r)-r2(dθ2+sin2θdφ2)ですが,この時空では計量テンソルの成分gμνでゼロでないものは,g00=1-2m/r,g11=-(1-2m/r)-1,g22=-r2,g33=-r2sin2θのみです。
この重力場の中での粒子の運動方程式,すなわち測地線の方程式はd2xρ/dλ2+Γρσν(dxν/dλ)(dxσ/dλ)=0 で与えられます。
ここでΓρμνは接続係数と呼ばれるもので,Γσμν=(gσρ/2)(gρν,μ+gρμ,ν-gμν;ρ)です。陽な形に書かれた接続係数をクリストッフェルの記号とも言います。(捩率ゼロの接続の場合)
この方程式d2xρ/dλ2+Γρσν(dxν/dλ)(dxσ/dλ)=0 において,光ではない質量のある物質の運動を想定してμ=0,λ=sとし,θ,φが一定の動径r方向の軌道のみが問題になる場合を考えると,d2t/ds2+Γ000(dt/ds)2+(Γ001+Γ010)(dt/ds)(dr/ds)+Γ011(dr/ds)2=0 となります。
ここで,以前のg00=exp(2ψ),g11=-exp(λ)なる表現では接続係数はΓ000=ψd, Γ001=Γ010=ψ',Γ011=λdexp(λ-2ψ)/2でした。
ただし,ψd≡∂ψ/∂t,ψ’≡∂ψ/∂r,λd≡∂λ/∂t etc.なる記法を用いています。
今の場合には,exp(2ψ)=1-2m/r,exp(λ)=(1-2m/r)-1で,ψd=λd=0 であって,mは時間によらず,rにも独立な積分定数です。
故に,Γ000=Γ011=0 ,Γ001+Γ010)=2ψ'=d{ln(r-2m)-ln(r)}/dr=2m/{r(r-2m)}=(rg/r2)/(1-rg/r)です。
ここで,最後の式で,シュヴァルツシルト半径という意味でrg≡2m (2Gm/c2)としました。
そこで,d2t/ds2+(rg/r2)(1-rg/r)-1(dt/ds)(dr/ds)=0 です。
T≡dt/dsとおけば,dT/ds=-(rg/r2)(1-rg/r)-1T(dr/ds),or ∫dT/T=-∫dr(rg/r2)(1-rg/r)-1です。
すなわち,lnT=lnr-ln(r-rg)+const.です。そこでdt/ds=T=k(1-rg/r)-1です。
一方,μ=1の測地線はd2r/ds2+Γ100(dt/ds)2+(Γ101+Γ110)(dt/ds)(dr/ds)+Γ111(dr/ds)2=0 です。
そしてΓ100=ψ'exp(2ψ-λ),Γ101=Γ110=λd/2,Γ111=λ'/2より,Γ100=(1/2){exp(2ψ)}'exp(-λ)=(1/2)(rg/r2)(1-rg/r),Γ101+Γ110=0 ,Γ111=λ'/2=(d/dr){(-1/2)ln(1-rg/r)}=(-1/2)(rg/r2)(1-rg/r)-1です。
それ故,d2r/ds2+ (1/2)(rg/r2)(1-rg/r)(dt/ds)2-(1/2)(rg/r2)(1-rg/r)-1(dr/ds)2=0 となります。
これに,dt/ds=k(1-rg/r)-1を代入してdr/dsを解けば解軌道が得られますが,計量の表現ds2=(1-rg/r)dt2-(1-rg/r)-1dr2を用いて直接求める方が簡単です。
すなわち,1=(1-rg/r)(dt/ds)2-(1-rg/r)-1(dr/ds)2から,(dr/ds)2=k2-(1-rg/r)=rg{1/r-1/r(0)}が得られます。
ただし,r(0)はdr/ds=0 のときのrの値でr(0)≡rg/(1-k2),またはk2≡1-rg/r(0)で定義されます。
sの代わりに軌道のパラメータを遠方の観測者にとっての固有時間tで表わせば,(dr/dt)2=(dr/ds)2(ds/dt)2=rg{1/r-1/r(0)}k-2(1-rg/r)2=(1-rg/r)2[1-(1-rg/r)/{1-rg/r(0)}]となります。
今の場合は,dr/dt<0 に対応する自由落下を考察しているので,動径r方向の運動はdr/dt=-(1-rg/r)[1-(1-rg/r)/{1-rg/r(0)}]1/2で与えられます。
ここで,r(0)=∞,つまりr→ ∞でdr/ds→ 0 ,or dr/dt→ 0 ,k2→ 1 (ds2=c2dt2)とすれば,dr/dt=-(rg/r)1/2(1-rg/r),または-∫dt=∫dr(r/rg)3/2(r/rg-1)-1です。
ξ≡(r/rg)1/2と変数置換すれば,右辺=2rg[ξ3/3+ξ+(1/2)ln{(ξ-1)/(ξ+1)}+const.]となります。
したがって,ct/rg=-(2/3)(r/rg)3/2-2(r/rg)1/2-ln[{(r/rg)1/2-1}/{(r/rg)1/2+1}]+const.です。
これにより,今の場合の自由落下ならr→rgでt→ ∞ となり,事象の地平面に到達するのに無限大の座標時間がかかります。
逆にdr/dt>0 の場合,つまり落下とは逆で星の表面から物体を発する放物運動を考察しているのであれば,∫dt=∫dr(r/rg)3/2(r/rg-1)-1=2rg[ξ3/3+ξ+(1/2)ln{(ξ-1)/(ξ+1)}+const.]なので,ct/rg=(2/3)(r/rg)3/2+2(r/rg)1/2+ln[{(r/rg)1/2-1}/{(r/rg)1/2+1}]+const.となります。
そこで,面の内側から事象の地平面に到達するにも無限大の時間がかかります。これは内部から脱出不可能であることを意味しています。
光の道筋を求める場合は,ds=0 なので, 0=ds2=(1-rg/r)dt2-(1-rg/r)-1dr2により,dt=(1-rg/r)-1drとなりますから,動径がrのところから出た光が観測者の位置の動径robまで到達するのに要する時間をTとすると,T=∫rrobdr(1-rg/r)-1=rob-r+rgln{(rob-rg)/(r-rg)}となるはずです。
そこでr→rgならT→ ∞ となります。これによって,星の重力崩壊の際に表面から出た光が観測者に到達するには無限大の時間がかかることがわかり,観測者はあたかも星の収縮が止まったように観測すると思われます。
表面から光を放出する物質の固有時間dτと世界時間dtとの関係は,近似的にcdτ={(1-rg/r)-(1-rg/r)-1(dr/dt)2}1/2dt~ (1-rg/r)dtと表現されます。
ここでdr/dt=-(1-rg/r)[1-(1-rg/r)/{1-rg/r(0)}]1/2,かつ(rg/r)<<0 によりdr/dt~-(rg/r)1/2(1-rg/r)と書けることを用いました。
さらにT=∫rrobdr(1-rg/r)-1=rob-r+rgln{(rob-rg)/(r-rg)}により,r→rgのときの世界時間tとrの関係はrob-r+rgln(rob-rg)に比べて-rgln(r-rg)が支配的になるのでt~ -rgln(r-rg)+const. or (r-rg) ∝ exp(-t/rg)です。
そこでr→rgのとき,光の振動数ν ∝ (1/Δt)の時間変化は(1/Δt)∝(r-rg)/rgなので,(ν/ν0)∝ exp(-t/rg),あるいはν∝ν0 exp(-t/rg)なる式で与えられます。
ただしν0は(r-rg)/rg>>1の遠方の自由空間位置での光の振動数です。
これらを評価する際の実際の時間スケールはrg/c~ 10-5(m/M◎)sec程度です。(mは対象とする星の質量M◎は太陽の質量です。)
動径方向以外に出る光をも考慮して,詳細な計算を実行し星のエネルギーを星の明るさLによって表現すると,明るさLはr→rgで,L∝L0 exp{-4t/(33/2rg))のように減衰していくことがわかります。
遠方の観測者にとって星の重力崩壊が止まっているように見える場合でも,星の明るさの方は急激に減衰して,星はまたたくまに暗くなってゆくのが観測されるはずです。
座標時間=世界時間は重力落下につれて,t~ -rgln(r-rg)+const.なる傾向を示すのに対し,固有時間τはdr/dτ~ -(r/rg)1/2,r~(3/2)2/3rg1/3(τ0(r)-τ)2/3のような緩やかな関係を示すことを強調しておきます。
ここでτ0(r)はrから出発して星の中心=原点(origin:r=0)に到達したときのτの値です。
球対称のシュヴァルツシルト解では,計量がds2=(1-rg/r)dt2-dr2/(1-rg/r)-r2(dθ2+sin2θdφ2)なので,r=rgにおいてg00=0 ,g11=-∞ となります。
そこでr=rgでは計量としての意味が失われるため,これは時空の特異点であるように見えますが,これは見掛けの上のことであって,r=rgは真の特異点ではありません。
実際,スカラー曲率の平方はR2=RμνσρRμνσρ=12(rg)2/r6と計算されますから,これはr=rgなる面が何の特異性も示さず,真の特異点はr=0 のみであることを示しています。
r=rgが特異面にならないような座標系としてはds2=(1-rg/r)dt2-dr2/(1-rg/r)-r2(dθ2+sin2θdφ2)なる計量の(t,r,θ,φ)から,新座標(t',r',θ',φ')をt=t'± rgln(r'/rg-1)(r>rg),t=t'± rgln(1-r'/rg)(r>rg),r=r',θ=θ',φ=φ'なる変換によって与えるエディントン・フィンケルシュタイン座標(Eddington-Finkelstein coordinate),
変数(t,r)をu=±(r/rg-1)-1/2exp{r/(2rg)}cosh{t/(2rg)},v=±(r/rg-1)-1/2exp{r/(2rg)}sinh{t/(2rg)}でu,vの符号に合わせて符号±を取るような座標変数(u,v)に変換するクルスカル座標(Kruskal coordinate)などがあります。
しかし,物理的に見ると,r=rgの球面には,やはり特異な性質があるようです。
その主なものは,この面内に入った粒子は再び外へ出てくることができないということです。このr=rg=2Gm/c2の球面をシュヴァルツシルト面と言います。
シュヴァルツシルト時空で,(r,θ,φ)が一定の質点を考えると,これの描く世界線はds2=(1-rg/r)dt2です。
そしてr>rgならds2>0 で時間的(time-like)ですから,ds2=cdT2-dX2-dY2-dZ2なる局所ローレンツ系の表現でdX=dY=dZ=0 として質点がその位置に留まることができます。
しかし,r<rgのシュヴァルツシルト面の内側なら(r,θ,φ)が一定dr=dθ=dφ=0 というのは,ds2<0 を意味し空間的(space-like)です。
これは局所ローレンツ座標(cT,R)では|dR|=(dX2+dY2+dZ2)1/2>c|dT|を意味しますから,物質がこのような世界線を取ることは不可能です。
そこでdr,dθ,dφがゼロではないとすることによってds2>0 と運動を表わす時間的なものにするためには,物質は静止状態ではなく動かざるを得ません。
光の道筋はdr/dt=±(1-rg/r)ですが,この境界である光円錐の向きを考えれば,ds2>0 はr>rgなら-(1-rg/r)-1dr<dt<(1-rg/r)-1drで,r<rgならdt<(1-rg/r)-1dr,dt>-(1-rg/r)-1drであること意味します。
r<rgのときには動径rが時間軸の役割を果たすように見えます。
古典論では,r>rgの観測者はr<rgに入った粒子から情報を得のることはできません。
r<rgの領域をブラックホールといい,r=rgをのシュヴァルツシルト面を事象の地平面ともいいます。
ここまでは,私が所持している通常のいくつかの書物に書かれている内容について,それらの行間を埋めてブログで平易に解説できるようにまとめたものですが,以下では持論をも書いてみます。
すなわち,2008年6/19の記事「重力崩壊によるブラックホール形成についての小考察」で書いている内容ですが,
これは重力崩壊の途中での事象の地平面r=rg=2Gm/c2の球面を与えるmは落下している星の表面の動径位置がrのときに,半径rの内部の質量m(r)を意味しており,それゆえrg=2Gm(r)/c2と書けば,落下に伴なって変化するrと共にm(r),したがってrgも変わってゆくというものです。
そこで,遠方の観測者にとっての固有時間tで表わした星の表面の自由落下の動径r方向の運動方程式であるdr/dt=-(1-rg/r)[1-(1-rg/r)/{1-rg/r(0)}]1/2において,r(0)=∞,つまりr→ ∞でdr/ds→ 0 or dr/dt→ 0 ,k2→ 1 (ds2=c2dt2)であるとして,dr/dt=-(rg/r)1/2(1-rg/r)なるものを考察しますが,
右辺のrg=2Gm/c2の表現ではmを固定された星の質量と考えるのではなく,rより内側に既に崩落し累積している部分の物質の総質量m=m(r)と考えます。
今の場合は星の表面が自由落下し重力崩壊をしている最中なので,動径rgが示す球面は,重力崩壊中ではない安定した星の固定された事象の地平面を意味するのではなくて,rgもm(r)と共に変動するrの関数であると考えるわけです。
そして,例えば星の構成物質の密度ρが一様でm=m(r)=4πρr3/3と書ける場合なら,rg/r=2m/r=8πGρr2/(3c2)によって,dr/dt=-{8πGρr2/(3c2)}1/2{1-8πGρr2/(3c2)}=-{8πGρ/(3c2)}1/2r{1-8πGρr2/(3c2)}となります。
これは初等的に積分できて,t=-{8πGρ/(3c2)}1/2lnr+(1/2)[ln|r+{3c2/(8πGρ)1/2}|+ln|r-{3c2/(8πGρ)1/2}|+constとなります。
例えば太陽程度の密度ρ~1kg/m3 を仮定すれば{3c2/(8πGρ)1/2} ~ 1011kmです。
したがって,重力崩壊中の星の表面の半径rについては,崩壊の最初から星の落下物質の位置の動径はr<{3c2/(8πGρ)}1/2(≒1011km)を満たすはずですから,解はt=-{8πGρ/(3c2)}1/2lnr+(1/2)ln{3c2/(8πGρ)-r2}+constです。
星の中心r=0 に向かって崩落してゆく過程では,最終到達点である中心:r=0 以外には全く特異点はなく,世界時間で見ても重力崩壊は有限な短時間で終了し,決して無限大時間を要することなど有り得ないと結論されます。
(太陽なら,t=-{8πGρ/(3c2)}1/2lnr+(1/2)ln{3c2/(8πGρ)-r2}+const.にr=rg≒3km=3000mを代入したものから,太陽半径r=RS≒7×108mを代入したものを引いた時間です。)
一様密度の星という特殊なモデルで考察しましたが,遠方の観測者にとってもブラックホールの形成時間が有限になるという結論は一般的に成立すると考えられ,モデルの選択には依らないと思われます。
参考文献:佐藤文隆,原 哲也 著「宇宙物理学」(朝倉書店)
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