相対論の幾何学(第Ⅰ部-2:空間曲線)
さて,3次元の空間曲線に入ります。
ds=(dx2+dy2+dz2)1/2で定義された弧長sをパラメータとする3次元のベクトル値関数:r(s)=(x(s),y(s),z(s))(a≦s≦b)を,空間における曲線と定義します。
sの定義によって|dr/ds|=1ですから,e1(s)≡r'(s)≡dr/ds=(x'(s),y'(s),z'(s))は単位ベクトルです。
つまり,内積:(e1(s),e1(s))=|e1(s)|2が常に1で,一定ですから,(de1(s)/ds,e1(s))=(e1'(s),e1(s))=0 です。
よってe1'(s)はe1(s)と直交しています。
e1'(s)の大きさをκ(s)と書き,曲線r(s)の曲率と呼びます。すなわち,κ(s)≡|e1'(s)|=(e1'(s),e1'(s))1/2≧0 ですね。
また,曲率の逆数:ρ(s)≡1/κ(s)を曲率半径と呼びます。
平面曲線の場合はe1(s)と直交するもう1つの基底単位ベクトルe2(s)をe1(s)を正の向きにπ/2だけ回転したベクトルと定義し,e1'(s)=κ(s)e2(s)によって曲率κ(s)を定義しました。
空間曲線ではe1(s)と直交する単位ベクトルは無数にあるので,こうした方法では基底単位ベクトルの1つであるe2(s)を決めることができません。
そこで,κ(s)=|e1'(s)|≠0 のときには,逆にe1'(s)≡κ(s)e2(s),またはe2(s)≡e1'(s)/κ(s)からe2(s)を定義します。
しかし,sにおける曲率がゼロ,つまりκ(s)=0 で,そこでsの近傍ではr(s)が直線の場合は,そこでは一意的なe2(s)を決めることができません。
以下では,全てのsについてκ(s)≠0 ,つまりκ(s)>0 であるとして話を進めます。
この場合には(e1'(s),e2(s))=κ(s)です。sを省略した記法では(e1',e2)=κですね。
以下,特に必要な場合を除いてsを省略します。
空間においてe1とe2の両方に垂直なベクトルは2つあって,一方はe1,e2と右手系,他方は左手系を作りますが,特に右手系を作るものを採り,それをe3と定義します。
すなわち,e3≡e1×e2とします。こうして選ばれたe1,e2,e3をフレネの標構(Frenet frame)と呼びます。このとき,(ei,ej)=δij(i,j=1,2,3)となっています。
e2(s)を延長したr(s)の法線を主法線,e3(s)を延長したr(s)の法線を従法線,または陪法線と呼びます。
(ei,ej)=δij(i,j=1,2,3)をsで微分すると,(ei',ej)+(ei,ej')=0 です。
特に(e2',e1)+(e2,e1')=0 ですから,(e2,e1')=κにより,(e2',e1)=-κを得ます。
また,(ek',ek)=0 (k=1,2,3)ですが,特に(e2',e2)=0 です。したがって,ある数τが存在してe2'=-κe1+τe3と書けます。この式から,(e3,e2')=τとなることもわかります。
さらにe1'=κe2により,(e3,e1')=0 ですから,(e3',e1)+(e3,e1')=0 は(e3',e1)=0 を意味します。
また,(e3',e2)+(e3,e2')=0 により,(e3',e2)=-τです。(e3',e3)=0 ですから,結局,e3'=-τe2となります。
以上をまとめると,r'=e1, e1'=κe2, e2'=-κe1+τe3, e3'=-τe2と書けます。これを空間曲線のフレネ・セレの公式(Frenet-Serret's formula)といいます。
また,τ=τ(s)を捩率(るいりつ)と呼びます。捩率の逆数: 1/τ(s)は捩率半径,または第二曲率半径と呼ばれることもあるようです。
そして,これらの関係をei'=Σjaijej,(i=1,2,3)なる線形関係式で系統的に表わしたもの,つまり,t(e1',e2',e3')=At(e1,e2,e3)なる表現として与える3次の係数行列をA=(aij)とすると,これは平面の場合と同じく交代行列(aji=-aij)です。
特に曲線r(s)がある平面,例えば(α,r)=c (α≠0:定ベクトル,c:定数)の上にある場合には,(α,r(s))=cが成立します。
これの両辺をsで微分すると,(α,e1)=0 であり,さらにsで微分すると(α,κe2)=0 となりますが,今はκ≠0 と仮定しているので,(α,e2)=0 です。
さらに(α,e2)=0 の両辺をsで微分して,それにe2'=-κe1+τe3なる表式を代入すると,(α,τe3)=0 が得られます。
平面の法線ベクトルαは既にe1,e2と直交することがわかっていて,しかもゼロではないので,αとe3は平行でなければならないので(α,e3)≠0 です。そこで,上の(α,τe3)=0 はτ=0 を意味します。
以上から,次の命題:[定理3]が成立することが示されました。
[定理3]:空間曲線r(s)の曲率κ(s)が常に正(ゼロでない)のとき,捩率τ(s)がいたるところゼロになるのは,r(s)が1つの平面に含まれるとき,またそのときに限られる。
ここで,平面曲線においてしたように,空間曲線での曲率,および捩率のの陽な表現を求めておきます。
まず,e1=r'より,e1'= r"=κe2です。そこでe1×e1'=r' ×r"=κe1×e2=κe3ですから,κ=|r'×r"|を得ます。
また,e1"/κ=r(3)/κ=e2'+ κ'e2/κ= -κe1+τe3+κ'e2/κです。ただしr(3)≡dr"/dsです。
故に,τ=(e3,e1")/κ=(e3,r(3))/κ=(e1×e2,r(3))/κですから,τ=(r'×r",r(3))/|r'×r"|2を得ます。
ちなみに,|(r'×r",r(3))|はr',r",r(3)で作られる平行六面体の体積を示しています。
空間曲線がr(s)=(x(s),y(s),z(s))なる表現ではなく,一般のパラメータtで表現されている場合:r(t)=(x(t),y(t),z(t))の場合には,rd(t)≡dr/dt,r2d(t)≡d2r/dt2なる表記を用いれば,dt/ds=1/|rd(t)|なので,e1=r'=rd/|rd|,e1'=r"=e1d/|rd|です。
そこで,rd=e1|rd|よりr2d=e1d|rd|+e1(d|rd|/dt)です。,それ故,r'×r"=e1×e1'=(e1×e1d)/|rd|=(rd ×r2d)/|rd|3となります。
以上から,κ=|r'×r"|=|rd ×r2d|/|rd|3を得ます。
一方,τ=(r'×r",r(3))/|r'×r"|2の方ですが,r2d=e1d|rd|+e1(d|rd|/dt)より,r3d=e12d|rd|+2e1d(d|rd|/dt)+e1(d2|rd|/dt2)です。
また,e1'=r"=e1d/|rd|より,e1"=r(3)=e12d/|rd|2-e1d(d|rd|/dt)/|rd|3なので,r(3)=r3d/|rd|3-3e1d(d|rd|/dt)/|rd|3+e1(d2|rd|/dt2)/|rd|3を得ます。
そして,(r'×r",e1)=(e1×e1',e1)=0 ,(r'×r",e1d.)=(e1×e1',e1')/|rd|=0 なので,(r'×r",r(3))=(r'×r",r3d)/|rd|3と書けます。
さらに,上で求めたようにr'×r"=(rd ×r2d)/|rd|3ですから,結局,τ=(rd ×r2d,r3d)/|rd ×r2d|なる表式が得られます。
これで,曲率,捩率の陽な表現も得られました。
次に,空間曲線の基本的な性質として次の[定理4]が成立することを示すことができます。
これの内容は平面曲線の場合の[定理1]の空間曲線への拡張です。
この定理の証明は平面曲線の[定理1]の証明とほぼ同じで,2次の回転行列Tを3次のそれに変更し,曲率を曲率と捩率の2つに変えるだけの直線的な拡張なので,定理の内容だけ述べて証明は割愛します。
[定理4]:r(s),r^(s);(0≦s≦l)を共に弧長sをパラメータとする長さlの2つの空間曲線とする。
これらが,回転と平行移動で重ね合わせることができる(合同の)ための必要十分条件は両者の曲率,および捩率が一致することである。すなわちκ(s)=κ^(s),およびτ(s)=τ^(s)が成立することである。
さらに,κ(s)>0 およびτ(s)が与えられたとき,これらをそれぞれ曲率,および捩率とする空間曲線r(s)が上の[定理4]の合同変換による任意性を除いて一意的に存在することを示しておきます。
これは,既知のκ(s),τ(s)によって,"行列A=A(s)が既知のときsの未知関数t(e1(s),e2(s),e3(s))に対する微分方程式(d/ds)t(e1(s),e2(s),e3(s))=A(s)t(e1(s),e2(s),e3(s))の初期条件t(e1(0),e2(0),e3(0))を満たす解が一意的に存在する。"という命題を示すことに帰着します。
そして,上記命題は,よく知られた常微分方程式の解の存在と一意性の定理において,微分方程式が線型であって係数がA(s)で与えられる場合に相当しています。そこで,解の存在と一意性は保証されます。
形式的ですが具体的にt(e1(s),e2(s),e3(s))={∫0sA(u)du}t(e1(0),e2(0),e3(0))なる形で,t(e1(s),e2(s),e3(s))に対する一意的な解を表現することができます。
そして,このt(e1(s),e2(s),e3(s))の一意解から,cを積分定数ベクトルとしてκ(s),τ(s)をそれぞれ曲率,捩率とする空間曲線r(s)は,r(s)=∫0se1(u)du+cなる形で一意的に得られます。
このことから,平面曲線での[定理2]に相当する次の[定理5]の成立することが示されました。
[定理5]:(曲線論の基本定理)
パラメータsの閉区間:[a,b]で定義された滑らかな関数κ(s),τ(s)(a≦s≦b)が与えられ,これらのsに対してκ(s)>0 とする。
このとき,sを弧長としてκ(s)を曲率,τ(s)を捩率とする平面曲線r(s)(a≦s≦b)が存在する。
さらに,このような曲線は"回転と平行移動"(=合同変換)で写すことが可能なものを除いて一意的である。
今日はここまでにします。
参考文献:小林昭七著「曲線と曲面の微分幾何」(裳華房),梅原雅顕,山田光太郎 著「曲線と曲面」(裳華房),スミルノフ 著「高等数学教程(4)」(Ⅱ巻 第二分冊) (共立出版)
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