相対論の幾何学(第Ⅰ部-6:coffee break)
ちょっと夏バテなのか,あるいは一時的に急性熱射病もどきにかかったのか,最近日常生活さえ,息苦しく酸欠気味に感じるので,コーヒー・ブレイクということで,ちょっと物理的な方に戻って軽い話題をします。
前記事の最後で求めた2次元曲面に束縛された粒子(生物)にとっての意味のある運動方程式(d2uk/dt2)+Γkij(dui/dt)(duj/dt)=0 を再考してみます。
これの基本となる方程式は,ニュートンの運動の法則を示す微分方程式d2r/dt2=F/mの右辺の外力Fが曲面に垂直な束縛力:mβeのみであるとした式d2r/dt2=βeです。
これを曲面r(u,v)を表わすパラメータ:(u,v)=(u1,u2)で表現すると(∂r/∂ui)(d2ui/dt2)+(∂2r/∂ui∂uj)(dui/dt)(duj/dt)=βeとなります。
左辺第2項の係数である曲面の2階導関数∂2r/∂ui∂ujは3次元空間を張る3つの独立なベクトル:∂r/∂uk(k=1,2),eで展開すると,∂2r/∂ui∂uj=Γkij(∂r/∂uk)+hijeと書けます。
そこで,∂2r/∂ui∂ujをこれで置き換えることにより,法ベクトルeに垂直な接平面成分の式(∂r/∂uk){(d2uk/dt2)+Γkij(dui/dt)(duj/dt)}=0 と,e=法線方向の成分の式hij(dui/dt)(duj/dt)=βの互いに独立な2つの方程式が得られます。
そして,2次元生物には知ることのできない後者の法線e成分の式は無視して,2次元曲面上の軌道のみを記述した前者(∂r/∂uk){(d2uk/dt2)+Γkij(dui/dt)(duj/dt)}=0 に着目します。
これは外力Fの接平面成分がゼロなので,右辺がゼロベクトルなのですね。そして,2つの(∂r/∂uk)は1次独立なので,その係数はゼロですから,d2uk/dt2+Γkij(dui/dt)(duj/dt)=0 が得られるわけです。
これは外力が全くなくて単に慣性の法則に従う粒子が2次元曲面の上ではどのように運動するかを記述する式となっています。
一方,4次元時空の一般座標xμ=(x0,x)=(ct,x,y,z)に対応する局所ローレンツ座標をXμ=(X0,X)=(cT,X,Y,Z)とした一般相対論の動力学でも,ニュートン力学と同じく,"ローレンツ系(慣性系)では外力がゼロの粒子は直線運動をする。"という慣性の法則,すなわち,dXμ=(一定)が成り立ちます。
これを適当なパラメータλを用いた軌道曲線Xμ(λ)によってd2Xμ/dλ2=0 と表わしたものが,測地線の方程式d2xρ/dλ2+Γρσν(dxν/dλ)(dxσ/dλ)=0 ;Γσμν=(∂xσ/∂Xρ)(∂2Xσ/∂xμ∂xν)となります。
先にベースとした方程式d2r/dt2=βeと,今のd2Xμ/dλ2=0 は一見異なる種類の方程式であるように見えます。
しかし,前者から得られる接平面上の式(∂r/∂uk){(d2uk/dt2)+Γkij(dui/dt)(duj/dt)}=0 は法線方向の式:hij(dui/dt)(duj/dt)=βとは全く無関係で,例えばβ=0 とした運動方程式d2r/dt2=0 であっても接平面上の方程式は変わりません。
そして,一般相対性理論で,この3次元空間内の2次元曲面の法線eの第3の方向に相当するものは,4次元時空を4次元曲面と考えたとき,それに垂直な5次元目ということになりますから,この余分の仮想次元に関する方程式は我々には認識できないし,我々には無関係です。
そこで,この次元に関する成分の表現が空間曲面のそれと4次元時空のそれとで食い違っていても無視していいと思われます。
こうした運動学と動力学の法則を結合させた物理的な直観に根ざした考察とは別に,測地線にはベクトル場やテンソル場の平行移動概念に伴なう共変微分とかアファイン接続(アフィン接続)などのような物理学とは独立な数学の1分野である幾何学の対象としての意味もあります。
測地線という言葉は計量を持つ多様体上での最短距離,すなわち平坦な空間では直線に相当するものですが,実は擬リーマン多様体であるローレンツ多様体の計量ds2=c2dτ=gμνdxμdxν=ημνdXμdXν=c2dT2-dX2では,AB間の距離∫ABds=c∫ABdτ=∫AB(gμνdxμdxν)1/2が最長となる経路を示すものです。
つまり,シルヴェスターの慣性律にしたがって,ローレンツ多様体の計量はミンコフスキー(Minkowski)計量と同じ構造なので,その上では三角形の2辺の和が他の一辺よりも短かいのです。
すなわち,"真っ直ぐ"進むよりも回り道をしたほうが,進んだ距離∫ABds=c∫ABdτが短かくなるのですね。
通常の時間的(time-like)運動では,静止状態も含め外力がない状態で(重力は外力でないと考えています)自然に過ごすよりも,宇宙船などに乗って星間旅行をする場合のように,自由落下に逆らう機械的力を受けて回り道をすると,彼に特有の固有時間である∫ABdτは短かくなるということですね。
ここら辺の話については,2006年5/6の記事「測地線(双子のパラドックス)」や,2007年5/15の記事「シルヴェスターの慣性律とローレンツ多様体」も参照してみてください。
そして測地線を最短,または最長経路と考える空間の幾何学は自然現象とは直接には関係ない数学の1分野ですが,もしも物理学の分野である力学のラグランジアンLをL≡-m∫ds=-mc∫dτ=-m∫(gμνdxμdxν)1/2と定義すれば,"実際の物理的運動はLを最小とするべきである"という最小作用の原理に従う運動の軌跡が測地線になることから,幾何学と力学を結合させた考察を行なうことができるわけです。
このシリーズは,まだまだ続ける予定でガウス・ボンネの定理(Gauss-Bonnet's theorem)を扱ったり,微分形式による話,あるいはもっと抽象的な微分幾何を使用した定式化,そして空間曲面の曲率とリーマンの曲率との数学的関係,または物理的関係などをも書く予定です。
今日の記事はいつもより短かいものですし,珍らしく薀蓄だけに頼ったので参考文献はありません。
私は能天気なので,年中盆と正月と花見などが頭の中に同居しているようなものですが,まあ人並みに夏休みでもということで私事ですが週末の8/9,10に「将棋チェスネット」での毎年恒例の関東オフ合宿に参加するため,愛知県知多市の方に行ってきます。
これには,前はほぼ毎年参加していたのですが,2005年7月の湯河原だったか熱海だったかを最後に,病気などでドタキャンしたりしたこともあって,久しぶりです。
「将棋チェスネット」はパソコン通信ニフティ・サーブ時代の「将棋フォーラム:FSHOGI」の有志が,フォーラム制度がニフティ(現@nifty)で廃止になったあとも続けているネットです。
これの前身は,私がインターネット時代より前の1991年にパソコン通信の世界にどっぷり漬かるきっかけになったものです。
年1回夏の湯河原オフはニフティ時代に始まったものです。
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