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2008年9月10日 (水)

箱の中の粒子の運動量について(決着版)

 私がサブマネージャーをしていますが,参加してはいなかったfolomy「物理フォーラム」での「箱の中の粒子の運動量」という題目での1年以上続いている長い論争? http://folomy.jp/heart/?m=pc&a=page_c_topic_detail&target_c_commu_topic_id=1468&comment_count=628 に決着がついたというか,決着をつけたので,場違いですがここで総括をします。

まず,位置座標としてはxだけに依存する一般的な1次元の量子力学の問題を定式化します。

系のハミルトニアンを作用素として^=p^2/(2m)+V^と書き,それによって定まる状態ベクトルを|ψ>とすると,|ψ>が定常状態の場合のシュレーディンガー方程式(Schrödinger方程式)は^|ψ>=E|ψ>という固有値問題になります。

これをx表示で書くため,両辺の左からx^の固有ブラ<x|を掛けると<x|^|ψ>=E<x|ψ>ですが,さらに左辺に|x>の完全性を示す恒等式∫dx1|x1><x1|=1を挿入すると,∫dx1<x|^|x1><x1|ψ>=E<x|ψ>となります。

<x|^|x1>=<x|p^2/(2m)+V^|x1>={1/(2m)}<x|p^2|x1>+<x|V^|x1>ですが,一般にx表示での行列要素<x|V^|x1>はポテンシャルと呼ばれる対角要素V(x)によって,<x|V^|x1>=V(x1)δ(x-x1)なる形に対角化されます。

 

また,<x|p^|x1>もx表示の1次元のシュレーディンガー表現ではp^=-ihc/dxなので,<x|p^|x1>=δ(x-x1)(-ihc/dx1)という形に書けます。

 

ここでhc≡h/(2π)はプランク定数です。

そこで,結局<x|^|x1>=δ(x-x1)(x1,-ihc/dx1)=δ(x-x1)[(-ihc/dx1)2/(2m)+V(x1)]と書けます。

 

それ故,シュレーディンガーの波動方程式は∫dx1<x|^|x1><x1|ψ>=E<x|ψ>によって,(x,-ihc/dx)<x|ψ>=E<x|ψ>なる形に帰着します。

  

ただし,(x,-ihc/dx)≡(-ihc/dx)2/(2m)+V(x)={-hc2/(2m)}(d2/dx2)+V(x)です。これをx表示のハミルトニアンといいます。

そこで,<x|ψ>を状態:|ψ>のx表示,つまり波動関数と考えてψ(x)≡<x|ψ>と定義すれば,元々の歴史的に馴染み深い形の波動方程式:(x,-ihc/dx)ψ(x)={-hc2/(2m)}(d2ψ(x)/dx2)+V(x)ψ(x)=Eψ(x)が再現されます。

この形で,1次元の箱の中の粒子の問題を考えます。

 

この問題での系は,ランダウ(Landau & Lifschitz)の教科書「量子力学1」の設定によれば,x∈[0,a]ではV(x)=0 ,¬x∈[0,a]ではV(x)=∞なるポテンシャルV(x)で規定されるものです。

 

そこで,物理的にも,数学的に考えても,V(x)=∞なる領域:¬x∈[0,a]においては,確率振幅を示す波動関数の値はゼロ:ψ(x)=<x|ψ>=0 であると考えざるを得ません。

そして箱の境界:x=0,x=aでもψ(x)=0 であって波動関数が連続である,という合理的,かつ2階常微分方程式を解くのに,必要十分な境界条件の下で,波動方程式を解けば,ψ(x)=ψn(x)=(2/a)1/2sin(kn)なる解が得られます。

ただし,kn≡nπ/aで各々のknは,ψn=Enψn,En=hc2n2/(2m)(n=1,2,..)なる条件を満たす値です。

 

そして,<ψnn>=∫dx<ψn|x><x|ψn>=∫dxψn*(x)ψn(x)=1となるように規格化されています。

すぐ前の関連記事の最後では,"そもそも粒子がエネルギーEn=pn2/(2m)に属する定常状態にあって,波動関数がψn(x)=(2/a)1/2sin(pn/hc)で与えられる場合を考えると,xによる1回の微分ごとにsin関数とcos関数が入れ替わるので,kが奇数であればψn(x)はx表示でのp^k(-ihc/dx)kの固有関数ではありません。

しかしkが偶数ならp^kψn(x)=(-ihc/dx)kψn(x)=pnkψn(x)です。そこで,ψn(x)はp^kの固有値nkに属します。

 

しかも,これはエネルギー固有値E=Enにも属する同時的固有関数ですから,この状態ではp^kはpnkに完全に確定しており,期待値<p^k>がpnkに一致することは初めから明らかです。

したがって運動量表示であろうと何であろうと,それを用いた計算によってp^kの期待値が有限でなく発散するようであれば,それは計算方法のどこかに間違いがあると思われます。"と書きました。

この時点では,後に誤りであると裁定したランダウのテキストはずいぶん昔に通読した覚えがあるだけで,当該の問題について詳しく考えたという記憶もありませんでした。

そこで,次は問題となっている,定常状態|ψn>のx表示の関数ψn(x)=<x|ψn>に対応する運動量波動関数:<p|ψn>について考察してみましょう。

 

|p>はもちろんp^|p>=p|p>を満たす,運動量固有状態の固有ベクトルです。

 

運動量波動関数は,ランダウの本では添字nが1の場合だけを考察しているのでa(p)となっていますが,ここでは添字nを考慮してan(p)=<p|ψn>と書くことにします。

さて一般的問題としては,^=p^2/(2m)+V^のときに<p|[^-{p^2/(2m)+V^}]|ψ>=0 という式は自明な恒等式ですから,|ψ>に|ψn>を代入しても成立します。

 

そして|ψ>に|ψn>を代入した式に,さらに^|ψn>=Enn>と<p|p^=<p|pを代入します。後者は^がエルミート演算子であれば成立します。

すると<p|[^-{p^2/(2m)+V^}]|ψn>=0 は{En-p2/(2m)}<p|ψn>+<p|V^|ψn>=0 となります。

 

右辺の項<p|V^|ψnは,<p|V^|ψn>=∫dx1dx2<p|x1><x1|V^|x2><x1n>=∫dx<p|x>V(x)ψn(x)と変形できます。

 

xの積分区間(-∞,∞)のうちで,x∈[0,a]においてはV(x)=0です。また,それ以外の領域¬x∈[0,a]では,V(x)=∞ ですが,ψn(x)=0 です。

そもそも,波動関数解ψ(x)が¬x∈[0,a]なる領域ではゼロになるべきであることを要求した理由は,そこでも波動方程式{-hc2/(2m)}(d2ψ(x)/dx2)+V(x)ψ(x)=Eψ(x)が成立するためです。

 

波動方程式の項を移項して,V(x)ψ(x)={hc2/(2m)}(d2ψ(x)/dx2)+Eψ(x)なる形に書くと,x∈[0,a]以外のψ(x)が恒等的にゼロである領域では,右辺がゼロなので,左辺のV(x)ψ(x)もゼロであるべきです。

したがって,V(x)=∞で,かつψ(x)=0 ですから一般にはV(x)ψ(x)の値は不定で全く評価不可能なのですが,今の場合は物理的に考えて,これをゼロと考えるのが妥当であると思われます。

 

すると,積分区間,(-∞,∞)全体でV(x)ψ(x)=0 と考えることができます。

さらに係数:<p|x>も別に特異な関数ではなく有限ですから,どこかに関数とはいえない超関数のようなものを無理に想定しない限り,<p|V^|ψn>=∫dx<p|x>V(x)ψn(x)=0 としてよいです。

以上から,常識的に考えると{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 なる等式が成立することがわかります。

 

この式によれば,En-p2/(2m)≠0 なら<p|ψn>=0 でなければならないのでp2/(2m)=Enを満たすnごとに,2つの運動量値:p=±pn,pn=hcn=nπhc/a(n=1,2,..)以外ではan(p)=<p|ψn>=0 となるべきです。

 

したがって,定常状態を展開すべき,運動量pの関数としての運動量波動関数:an(p)=<p|ψn>は,nを固定すると,離散的な値p=±pn以外ではゼロの関数であると結論されます。

ところが,ランダウの教科書の演習問題によればan(p)=<p|ψn>=∫-∞dx<p|x><x|ψn>=∫0a<x|p>*ψn(x)dxにψn(x)=(2/a)1/2sin(pn/hc),<x|p>=(2πhc)-1/2exp(ipx/hc)を代入して,an(p)を計算しています。

 

そして,運動量pがp~p+dpに存在する確率として|an(p)|2dp/(2πhc)=(4πhc2){cos2{pa/(2hc)}/(p22-n2π2)2}dp=(4πhc2){cos2{pa/(2hc)}/(p22-pn22)2}dpなる式を求めています。

 

この関数は,確かにp=±pnでは絶対値がピークを取りますが,それ以外のpでもゼロであるというわけではありません。

この関数の評価については,2008年8月14日の記事「三角関数を含むある関数の定積分」で詳細に考察しています。

 

確率分布:|an(p)|2dp/(2πhc)に基づいて,期待値:<p^k>を計算すると,kが奇数のときは確かにゼロになります。

 

しかし,kが偶数のときは,k=2のときはpnkに一致しますが,kが4以上の偶数では,この期待値は ∞ に発散して,pnkには一致しないという矛盾が生じる結果が得られることがわかりました。

 

そこで,上で書いたように,計算方法か考え方のどこかに間違いがあるはずです。

 

ただ,この過去記事を書いた当時は,微妙な物理学の問題にはタッチせず,純粋に数学の問題として,積分の計算だけを考察したのでした。

 

x表示をp表示に変換した際の式変形のプロセスが,全て同値変形だと思っていましたが,同じ物理量の期待値が一致しないということは,どこかに両者が同値ではない不連続な論理の飛躍があることが,こうした矛盾の原因でしょうね。

そこで,突き詰めると,an(p)=<p|ψn>=∫0a<x|p>*ψn(x)dx,ψn(x)=(2/a)1/2sin(pn/hc),<x|p>=(2πhc)-1/2exp(ipx/hc)から,p≠±pn (p2/(2m)≠En)でもan(p)=<p|ψn>≠0 を得た定式化と,

 

<x|^|ψn>=En<xn>であって,x∈[0,a]では^=p^2/(2m),かつ{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 なので,p≠±pn (p2/(2m)≠En)では,an(p)=<p|ψn>=0 であるべきという定式化との間にどういう矛盾があるか?を探せばいいだけです。

 

そして,間違いがあるなら,それはランダウの演習問題の解の方にあるはずです。

この中で疑問があるとしたら,運動量固有状態|p>とそれに対するx表示の固有関数<x|p>=(2πhc)-1/2exp(ipx/hc)で,これを代入したという部分だけですね。

 

古典的かつ非相対論的にはp=mvですが,さらに自由粒子だとすれば,E=p2/(2m)=mv2/2で外力のポテンシャルVがゼロで一定速度vで慣性運動をしているだけです。

 

そこで,量子論では,この粒子の時間を含んだ運動量の固有状態|p,t>の"波動関数=x表示"は<x|p,t>=<x,t|p>=Cexp[{ipx-ip2t/(2m)}/hc]=C∫exp{(ipx-iEt)/hc]δ(E-p2/(2m))dEですね。

 

E(p)≡p2/(2m)と定義して|p,t>=|p>exp{-iE(p)/hc}と書けば空間部分|p>だけでなく,時間依存の位相部分exp{-iE(p)/hc}もまたpの関数ですね。

 

つまり,運動量pが増えれば連動して運動エネルギーE(p)が増えるのでE(p)が一定の定常状態になるのは,一方の係数がゼロの場合も含めて,状態が|p>と|-p>の重ね合わせになるときだけです。

 

当たり前のことですが,"振動数が一定=エネルギーが一定"の場合,すなわち,定常状態ψ(x,t)=ψ(x)exp(-iEt)なら位相部分は確率には無関係で|ψ(x,t)|2=|ψ(x)|2です。

 

しかし,エネルギーが一定でない非定常状態なら最も単純な重ね合わせ:ψ(x,t)=ψ1(x)exp(-iE1t)+ψ2(x)exp(-iE2t)でさえ,確率密度として|ψ(x,t)|2を計算するとき"位相部分=時間依存部分"の干渉が効いてきます。

 

そしてx表示の運動量演算子:p^=-id/dxの固有状態の時間依存を陽に書いた波動関数はφ(x,t)≡<x,t|p>=<x|p>exp{-iE(p)/hc}=Cexp[{ipx-ip2t/(2m)}/hc]となります。

 

一方,時間依存を陽に書いた定常状態|ψn>のx表示波動関数はψn(x,t)=<x,t|ψn>=<x|ψexp{-iE/hc}=ψn(x)exp{-iE/hc}=(2/a)1/2sin(pn/hc)exp{-ipn2t/(2mhc)}となりますね。

 

元々のランダウの本に書いてあるan(p)=<p|ψn>=∫0a<x|p>*ψn(x)dx,ψn(x)=(2/a)1/2sin(pn/hc),<x|p>=(2πhc)-1/2exp(ipx/hc)は,時間依存部分の干渉を無視し,エネルギー保存などの物理的制約もない,単なる数学的なフーリエ積分ですね。

 

しかし,状態空間の母体であるヒルベルト空間の中でも,自由粒子のハミルトニアンであれ何であれ,少なくとも物理的境界条件を満たす波動方程式の解のみで構成される1つの完全系の状態関数の空間に問題を限定すべきでしたね。

 

(今の場合,境界条件というのは粒子が有限領域に閉じ込められているということです。自由粒子ではなく,[H,p^]≠0 ですから定常状態でかつがp^の固有関数ということは不可能です。

 

しかし,[H,p^2]=0 なのでp^の偶数ベキであれば,"期待値=固有値"を定常状態の問題として扱えます。)

 

ランダウの表現でも,an(p,t)=<p,t|ψn>=∫0a<x,t|p,t>*ψn(x,t)dxのような展開をすれば,少しはましな計算ができるのではないかと考えられます。

 

実際,x∈[0,a]ならψn(x)=(2/a)1/2sin(pn/hc)=(-i)(2a)-1/2[exp(ipn/hc)-exp(-ipn/hc)]で,¬x∈[0,a]ならψn(x)=0 なので,ψn(x)は,元々,運動量固有値が±pnの運動量固有状態の単純な代数和の形をしています。

以上,この教育的な1問題の考察は,これ以上の具体的計算は省略して,これで封印します。

 

参考文献:ランダウ,リフシッツ著「量子力学1(改訂新版)」(東京図書)

 

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111. 量子論」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

複雑な数式がたくさん出てきますが、勉強になります。

投稿: 師子乃 | 2020年10月11日 (日) 19時57分

こんにちは。
導出過程での、座標表示とそのフーリエ変換の計算です。
http://folomy.jp/heart/img.php?filename=tc_255703_1_1331447986.jpg
http://folomy.jp/heart/img.php?filename=tc_255703_2_1331447986.jpg
http://folomy.jp/heart/img.php?filename=tc_255703_3_1331447986.jpg

投稿: 甘泉法師 | 2012年3月11日 (日) 15時44分

こんにちは。
一次元井戸ポテンシャルの基底状態の波動関数の運動量表示を検算しました。

http://folomy.jp/heart/img.php?filename=tc_255696_1_1331443418.jpg

投稿: 甘泉法師 | 2012年3月11日 (日) 15時23分

冷蔵庫です。TOSHIさんのコメントに対する返事が十分でないことに気付いたのでしておきます。

>>{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つと仰るので、

> これはp表示なので(完全系による正しい変換なら)とりあえずxは関係ないです。

> "{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つ"という意味については,

> これはEn-p2/(2m)=0 つまりp=±pn=±√(2mE)であるか,さもないと<p|ψn>=0 のいずれかであると判断されると本文でも述べていますがおかしいですか?

> <p|ψn>はp=±pnならEn-p2/(2m)=0 でかつ<p|ψn>≠0 であり,p≠±pnなら常に<p|ψn>=0 である関数という意味で,

> "{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つ"ことになるのでは?と思っていました。

> もっとも,<p|ψn>が普通の有限な関数とは限らず,超関数であるとしてデルタ関数なども許すなら,xδ(x)=0なのでcを係数として,<p|ψn>=cδ(En-p2/(2m))のような形にも表現されますかね?

{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0の解は、<p|ψn>=aδ(p-pn)+bδ(p+pn)ですよね。(pn=√(2mE)で、a,bは定数)これって座標表示では全空間に広がった波を表しますけれど、変じゃありませんか?ちなみにp=±pnで有限値というのも解ですが、ノルムがゼロになり、あまり意味がないと思います。それから、δ(En-p2/(2m))=(m/pn)(δ(p-pn)+δ(p+pn))ですね。

不連続点云々に関しては前に書いたとおり、p^2ψn(x)にもVψn(x)にもデルタ関数が含まれます。

前回言い忘れていたのですが、ここでポテンシャルをV(x)ではなくVと書いているのは、Vを単なるxの関数と書くことができないためです。このことは、特に問題ではなく、ポテンシャルを一旦有限にする方法で考えても同じ結果が得られます。有限ポテンシャルを考えているときは常にVはxの関数なのですが、極限をとってしまうとそのように見ることができなくなります。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年8月15日 (日) 21時57分

タイトルでは「箱の中の粒子」と言っていますが、本文中で考えているのは無限井戸型ポテンシャルですよね。

今さらですが。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年8月15日 (日) 00時11分

冷蔵庫です。さて、間が空きましたが続きを書きたいと思います。その前に前回の訂正を一か所しておきます。

誤)
p^2ψn(x)=(hc/i)2{δ(x)θ(a-x)φn'(x) - θ(x)δ(a-x)φn'(x) + θ(x)θ(a-x)φn''(x)}
=(hc/i)2 kn{δ(x) - (-1)n δ(x-a)}+2mEnψn(x)

正)
p^2ψn(x)=(hc/i)2{δ(x)θ(a-x)φn'(x) - θ(x)δ(a-x)φn'(x) + θ(x)θ(a-x)φn''(x)}
=(hc/i)2(2/a)1/2 kn{δ(x) - (-1)n δ(x-a)}+2mEnψn(x)

2つ目の等号の後でデルタ関数の係数が間違っていました。最終的な計算結果にはあまり影響はありません。

本題に入ります。今考えている問題を確認しておくと、

>V(x)=0 ,¬x∈[0,a]ではV(x)=∞なるポテンシャルV(x)

のもとで1次元のSchrodinger方程式を解く、という問題です。このような無限大のポテンシャルをそのまま考えて方程式を解くことには無理があります。その代わり、適切な境界条件、

>V(x)=∞なる領域:¬x∈[0,a]においては,確率振幅を示す波動関数の値はゼロ:ψ(x)=<x|ψ>=0

>箱の境界:x=0,x=aでもψ(x)=0 であって波動関数が連続である

を与えて解くということをしています。ある意味、境界条件を用いて、無限大ポテンシャルに定義を与えているとも言えます。この方法の良いところは計算が簡単化されるということです。

もう1つ無限大ポテンシャルを定義する方法を挙げておきます。¬x∈[0,a]ではV(x)=U(有限)としておき、計算後にU→∞の極限をとるというものです。この方法は直接的でかなり自然に思えます。計算はやや煩雑になりますが、極限操作で解がどのように変化するかが見られます。

これらの2つの方法はやっている計算は異なりますが、最終的な結果はもちろん一致します。


それでは、

>>> ∫[0,a]dy<x|En-p^2/(2m)}|y><y|ψn>+∫[箱の外]dy<x|En-V^-p^2/(2m)}|y><y|ψn>=∫dy<x|En-H^|y><y|ψn>です。<<

> の部分も確認していただけたでしょうか?

にお答えしたいと思います。境界条件を用いてポテンシャルを解釈する立場を採用すると、V(x)をψn(x)に作用させてV(x)ψn(x)を得る、ということは直接できません。壁の内部でゼロというのは分かります。また、外部でもゼロになるはずだということも言えます。ですが、丁度壁のところでどんな値を持つかは直接にはわかりません。そこで、Schrodinger方程式を使います。今、

(p2/2m+V)ψn(x)=Eψn(x)

を認めることにする(もともとSchrodinger方程式は壁の内部でしか考えていません。壁上や外部の波動関数は境界条件を与えることで形を決めています。それに対して、上の式は空間全体で成り立つと形式的に書いています。)と、

Vψn(x)=Eψn(x) -(p2/2m)ψn(x)
=(1/2m)(hc)2(2/a)1/2 kn{δ(x) - (-1)n δ(x-a)}

を得ます。2つ目の等式では、前回(2010年8月 3日 (火) 01時23分)の私のコメントの計算結果を使っています。壁上でゼロではないことと、積分時にこれを無視できないことがわかりました。この結果は今の計算法ではやや奇異に見えるのですが、ポテンシャルを一旦有限にする方法からも導けます。その計算については、気が向いたらそのうち書くかもしれません。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年8月14日 (土) 23時54分

x表示とp表示で計算結果が食い違って見えるのは、x表示で考える際にx=0,aでの関数の特異性を無視しているためです。このことを考慮に入れてn番目のエネルギー固有状態に対する期待値<p^k>(k=2,4)を、x表示で計算してみます。

まず、n番目のエネルギー固有状態の波動関数ψn(x)は、階段関数θ(x)を用いて、

ψn(x)=θ(x)θ(a-x)φn(x)

φn(x)=(2/a)1/2sin(knx)
kn=nπ/a
En=hc2kn2/(2m)(n=1,2,..)

と書けます。(このような表し方は、フーリエ級数のフーリエ積分展開(1)のコメント欄で甘泉さんも指摘しています)係数は∫|ψn(x)|^2dx=1になるようにとっています。これにp^を作用させると、

p^ψn(x)=(hc/i)(d/dx)ψn(x)
=(hc/i){δ(x)θ(a-x)φn(x) - θ(x)δ(a-x)φn(x) + θ(x)θ(a-x)φn'(x)}
=(hc/i)θ(x)θ(a-x)φn'(x)

を得ます。最後の等式でφn(0)=φn(a)=0を使っています。ここではまだ特異性は現れていません。ですがp^ψn(x)は不連続なので、もう一度微分するとデルタ関数が現れます。

p^2ψn(x)=(hc/i)2{δ(x)θ(a-x)φn'(x) - θ(x)δ(a-x)φn'(x) + θ(x)θ(a-x)φn''(x)}
=(hc/i)2 kn{δ(x) - (-1)n δ(x-a)}+2mEnψn(x)

これを見ると、ψn(x)はp^2の固有関数ではありませんね。この結果から、

<p^2>=∫ψn*p^2ψndx=2mEn
<p^4>=∫|p^2ψn|2dx=∞

が得られます。これはp表示でTOSHIさんが計算した結果と一致しており、矛盾がないことが確かめられました。

>>> ∫[0,a]dy<x|En-p^2/(2m)}|y><y|ψn>+∫[箱の外]dy<x|En-V^-p^2/(2m)}|y><y|ψn>=∫dy<x|En-H^|y><y|ψn>です。<<

> の部分も確認していただけたでしょうか?

このあたりの式変形も、x=0,aの効果が入っていないため、正しくないと思います。この辺りについては後日コメントしますが、おそらくTOSHIさんの引越し後になってしまうと思います。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年8月 3日 (火) 01時23分

TOSHIさん

お忙しい中、長文でのお返事ありがとうございます。私からの返事が引越しの直前になってしまいすみません。

> そして,このテーマについては2年前くらいに各所で相当やられていて,話が目新しければ別なのですが一応私も今はアキアキしています。

> よろしかったら,相手の許可をもらってブログ記事とコメントのやりとりそのものをEMANさんの掲示板あたりにでも転載したりして公開議論にしてもらえるとありがたいのですが。。

>(私の方は参照元を書いた転載なら宣伝にもなるのでもちろん転載許可です。)

> 引越しが済んで,ネット環境や金銭問題も含めて新居で落ちついたら気が変わるかもしれませんが,今は私事の雑事に追われているので頭の中にも余裕がありません。


わかりました。それではこれ以上TOSHIさんに質問することは辞めます。この問題に対する私の答えをここに書くことで、この場での議論は終わりにしたいと思います。

他のところで公開議論にするつもりは今のところ有りませんが、私のコメントに対する質問があれば、この場を借りてできる限りお答えするつもりです。

冷蔵庫

投稿: 冷蔵庫 | 2010年8月 3日 (火) 00時33分

PS:冷蔵庫さん。。
 
 議論は望むところで逃げも隠れもするつもりはありませんが,一応ここは私の言いたい放題の場のような個人的ブログでいわゆる掲示板ではありません。

 ブログが盛況ならいろいろコメント多数で掲示板に似たようになって私もその状況を拒否するつもりはないので,また別ですが,今は1対1なので,問われると返答せざるを得ません。

(無視しても自由なことは自由なのですが)

 そして,このテーマについては2年前くらいに各所で相当やられていて,話が目新しければ別なのですが一応私も今はアキアキしています。

 よろしかったら,相手の許可をもらってブログ記事とコメントのやりとりそのものをEMANさんの掲示板あたりにでも転載したりして公開議論にしてもらえるとありがたいのですが。。

(私の方は参照元を書いた転載なら宣伝にもなるのでもちろん転載許可です。)

 引越しが済んで,ネット環境や金銭問題も含めて新居で落ちついたら気が変わるかもしれませんが,今は私事の雑事に追われているので頭の中にも余裕がありません。

                TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年8月 1日 (日) 09時11分

ども冷蔵庫さん。。

>>{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つと仰るので、それならばこの式をFourier変換すると、ψn(x)が(すべてのxで)自由粒子のSchrodinger方程式を満たすという式になりますよ、

と述べているだけです。この結果は明らかにおかしいですよね。この議論はどこが間違っていると思われますか? <<

 本記事内容はそのおかしいと思われる部分を論じています。

 冷蔵庫さんが記事の明確な間違いとか,もっと明確な答がおわかりなら私に対する間違い指摘の質問形でなく,より明快な種明かしなどを書いてくださるとありがたいです。

 そうすれば私はもちろん,甘泉さんたちまだモヤモヤしてるだろう方たちもきっと喜ばれますよ。

また

>{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つと仰るので、

 これはp表示なので(完全系による正しい変換なら)とりあえずxは関係ないです。

 "{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つ"という意味については,

 これはEn-p2/(2m)=0 つまりp=±pn=±√(2mE)であるか,さもないと<p|ψn>=0 のいずれかであると判断されると本文でも述べていますがおかしいですか?

 <p|ψn>はp=±pnならEn-p2/(2m)=0 でかつ<p|ψn>≠0 であり,p≠±pnなら常に<p|ψn>=0 である関数という意味で,

 "{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つ"ことになるのでは?と思っていました。

 もっとも,<p|ψn>が普通の有限な関数とは限らず,超関数であるとしてデルタ関数なども許すなら,xδ(x)=0なのでcを係数として,<p|ψn>=cδ(En-p2/(2m))のような形にも表現されますかね?

 ところで,私の前コメントの中の

>> ∫[0,a]dy<x|En-p^2/(2m)}|y><y|ψn>+∫[箱の外]dy<x|En-V^-p^2/(2m)}|y><y|ψn>=∫dy<x|En-H^|y><y|ψn>です。<<

 の部分も確認していただけたでしょうか?

 ここでは,箱の外では<y|ψn>=0 なので∫[箱の外]..=0 であるという同じような話を書いているのですが。。

 そして箱の外では,p^もp^2/(2m)}も不定ですが,エネルギーH=p^2/(2m)+Vは確定です。

 そもそも箱の外では存在確率密度がゼロ:<y|ψn>=0 で,そこではほとんどいたるところで粒子が存在しないのですから。

 もっとも位置エネルギーVの存在のため中でも外でも総エネルギーH^は確定値Enを取るという合理的な解ではあります。。。

 さてちょっと以前の不連続を無視云々に冠するコメントを見落としていたのでそれにも私なりに答えておきます。

 先の不連続点を無視したというのはx表示からp表示へ等の表示の変換は一般に積分変換であり,高々可算無限個の測度(長さ)がゼロの不連続点を無視しても通常は積分結果に影響はないということを考えたからです。

 しかし,甘泉さんその他の方たちは超関数を仮定するなら測度(長さ)ゼロを掛けても積はゼロじゃないからその限りではないと考えたから延々とした議論が続いたと思っています。

 理想的には剛体壁近似の普通の容器の壁の場所だけで「存在確率密度=(波動関数Ψの絶対値の2乗)」が超関数になるような特異な確率分布を持つわけではないと思ったのです。

 常識的に物理的に期待値<p>や<p^2>の計算などではx=0,aの反射壁でのpを無視してもいいというように判断したわけです。

 ただし,壁位置でx表示の波動関数Ψ(x)が不連続という境界条件を採用した場合,それでも定義できるの左微分,または右微分はδ関数となる可能性もあるので,Ψは超関数でなくてもpΨがδ関数=超関数となる可能性もあるので,

 その場合には,積分測度がゼロでもpΨを積分するのに単純に不連続を無視してはいけないでしょうが,いずれにしろ単に壁位置でpが-pとなる反射を示す程度のものなのでその辺は神経質になる必要ないと思ったので省略して述べてます。

 壁位置では波動関数の左(右)微分が無限大ならそれをp^に同定すると,p^2/mも無限大となりますが,その場合も含めp^2/mは不定です。

 しかし,壁位置でも容器の外でも中と同じく状態が持つ確定エネルギー値E=Enが保証されるように,壁と外には無限大のVが存在してそれとゼロのΨと掛けて常にH=p^2/m+V=E=Enとなるモデルであるわけです。

 それ以上に特異でもなんでもなくそんなに延々と議論しなくてもいいのでは?と思いました。
 
 決着版と書いていますが,甘泉さんからハンドルさんとの1年以上の議論への決着依頼がきて双方納得の上でサブマネージャーとして無理やり決着させた?のです。

 folomyで議論には参加してない外野の私がひと言で決着と言っていいのかは未だに疑問ですね。。

 こうした物理的には明らかでも数学的に変形していくと矛盾に見えることについては実は私の頭の中でも完全には決着していなくて,

 2008年11/135の「フーリエ級数のフーリエ積分展開(1)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-a3b8.html と11/15のフーリエ級数のフーリエ積分展開(2)」と続いていっています。よろしく。。

 古典論でも量子論でも容器が存在すると明らかに系は空間並進不変でないので運動量は確定しません。回転不変でもないので角運動量もそうです。

 しかし時間並進は不変なのでエネルギーは確定です。

 だからこそ,例えば容器内の気体を扱う統計力学ではエネルギーの保存だけを問題にして運動量などは変数として扱いません。

          TOSHI

 

投稿: TOSHI | 2010年8月 1日 (日) 08時49分

TOSHIさん

もちろんSchrodinger方程式を解いたことはあるし、箱の中で[En-p^2/(2m)}]ψn(x)=0 を満たすことはわかっていますよ。
私も式の意味をそのまま述べているだけです。

{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つと仰るので、それならばこの式をFourier変換すると、ψn(x)が(すべてのxで)自由粒子のSchrodinger方程式を満たすという式になりますよ、

と述べているだけです。この結果は明らかにおかしいですよね。この議論はどこが間違っていると思われますか?

投稿: 冷蔵庫 | 2010年7月31日 (土) 22時10分

冷蔵庫さん。引き続きレスありがとうございます。TOSHIです。

 引越し小休止です。

> <x|En-p^2/(2m)}|ψn>=0 を得ます。これはψn(x)が自由粒子のSchrodinger方程式を満たすことを意味しており、xは任意ですよね。

 いえ後半の自由粒子のというのは違います。

 箱の外ではψn(x)=<x|ψn>=0 なので

 0=<x|En-p^2/(2m)}|ψn>=∫dy<x|En-p^2/(2m)}|y><y|ψn>

=∫[0,a]dy<x|En-p^2/(2m)}|y><y|ψn>+∫[箱の外]dy<x|En-V^-p^2/(2m)}|y><y|ψn>=∫dy<x|En-H^|y><y|ψn>です。

 最後の式は,<x|En-H^|y>がx表示で対角化されていれば普通の閉じた箱のx表示のシュレーディンガー方程式です。
 
 冷蔵庫さんって,普通に量子力学入門書の1次元井戸型障壁のシュレーディンガー方程式を解く例題を読んだり自分で解いてみたりしたことはないのでしょうか?

 自由粒子じゃなくて[0,a]や[-a/2,a/2]の箱の壁で反射して往復運動している±pnの重ねあわせのsin型やcos型のψn(x)=<x|ψn>でも

 箱の中では[En-p^2/(2m)}]ψn(x)=0 を満足してますよ。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年7月31日 (土) 16時55分

> 29日に引越し予定なのでバタバタしていて新居でのネット環境次第では以後は返答が遅くなるかもしれませんがよろしく。。

お忙しい中お付き合い頂いてありがとうございます。8月3日に変更になったんですよね。

>>>以上から,常識的に考えると{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 なる等式が成立することがわかります。

>>とありますが、これもすべてのpについて仰っているように見えます。

> それは,その通りです。

> 波動関数が超関数的でなく物理的なものであれば座標空間の2点x=0,x=aだけの座標表示の不連続は無視できると思いました。

すみません。不連続が無視できるというのは何故でしょうか?
(En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 がすべてのpで成り立つのであれば、これを変形して、
(En-p2/(2m)}<p|ψn>=<p|En-p^2/(2m)}|ψn>=0
さらに<x|p>を左から掛けてpで積分することで、
<x|En-p^2/(2m)}|ψn>=0 を得ます。これはψn(x)が自由粒子のSchrodinger方程式を満たすことを意味しており、xは任意ですよね。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年7月30日 (金) 21時24分

ps:座標表示で固有値方程式a=0を満たさないa≠0の座標xのところではb=0なので,常にab=0であると主張しています。

 問題はa≠0なるところで必ずしもaが有限値でなく無限大のこともあるのでその場合でもb=0ならab=0は成立するのか?という話が延々と続いてたのでした。(folomy過去ログ参照。。。)

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年7月27日 (火) 23時50分

 冷蔵庫さん。引き続きレスありがとうございます。TOSHIです。

 29日に引越し予定なのでバタバタしていて新居でのネット環境次第では以後は返答が遅くなるかもしれませんがよろしく。。

>>kが偶数ならp^kψn(x)=(-ihcd/dx)kψn(x)=pnkψn(x)

>が,[0,a]に限って成り立つということでしょうか?全空間で成り立つと仰っているように見えますけれど。

 はい。点x=0,x=aでは不連続でxによる微分が存在しないので,x=0,x=aを除けば[0,a]はもちろん全空間で成り立つと書いたつもりです。

>>以上から,常識的に考えると{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 なる等式が成立することがわかります。

>とありますが、これもすべてのpについて仰っているように見えます。

 それは,その通りです。

 波動関数が超関数的でなく物理的なものであれば座標空間の2点x=0,x=aだけの座標表示の不連続は無視できると思いました。

(甘泉さんとハンドルさんの長い議論はその点の解釈に集中していると思いましたが,私の決着版はそれを無視しているだけです。)

>最初のコメントの内容をもう少し詳しく述べておきます。私が指摘したいのは、「ψn(x)は自由粒子じゃない」ということではありません。「p^2ψn(x)=2mEnψn(x)という式は全空間では正しくない」ということです。

 その通りです。点x=0,x=aではp^2ψn(x)=2mEnψn(x)は確かに正しくないです。

 その他のψn(x)=0 の部分では自由粒子ではないけど0=0が成り立つという意味でp^2ψn(x)=2mEnψn(x)は正しいはずです。

>ψn(x)が反射されているのはポテンシャルの影響によるものです。ところが自由粒子のSchrodinger方程式にはポテンシャル項は入っていません。全空間でポテンシャルのない状況の方程式を解いて、ψn(x)が出るというのはおかしいと思います。

 全空間でポテンシャルのない状況の方程式を解いてはいません。[0,a]ではV=0,それ以外ではV=∞ の方程式を解いています。

 x∈[0,a]以外ではψ(x)=<x|ψ>=0 なる境界条件でもってx∈[0,a]以外ではポテンシャルVが無限大であることを考慮しています。

 つまりこの条件でx=0,aが固定端でありそこで波が完全反射されて定在波になるということを考慮しています。

           TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年7月27日 (火) 23時38分

TOSHIさんお返事ありがとうございます。申し訳ないですが、もう少しだけ意見を書かせてください。

>もちろん存在領域を箱の中[0,a]に限った話です。一貫して外や壁を除外して考察しています。

と仰るのは

>kが偶数ならp^kψn(x)=(-ihcd/dx)kψn(x)=pnkψn(x)

が、[0,a]に限って成り立つということでしょうか?全空間で成り立つと仰っているように見えますけれど。また、その後で、

>以上から,常識的に考えると{En-p2/(2m)}<p|ψn>=0 なる等式が成立することがわかります。

とありますが、これもすべてのpについて仰っているように見えます。

最初のコメントの内容をもう少し詳しく述べておきます。私が指摘したいのは、「ψn(x)は自由粒子じゃない」ということではありません。「p^2ψn(x)=2mEnψn(x)という式は全空間では正しくない」ということです。

ψn(x)が反射されているのはポテンシャルの影響によるものです。ところが、自由粒子のSchrodinger方程式にはポテンシャル項は入っていません。全空間でポテンシャルのない状況の方程式を解いて、ψn(x)が出るというのはおかしいと思います。

まあ、物理的考察はさておき、p^2ψn(x)=2mEnψn(x)が正しいかどうかは、容易に計算で確認できます。もう一度チェックしなおしてみることをおすすめします。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年7月27日 (火) 22時24分

 お久しぶりです。冷蔵庫さん。。レスありがとうございます。TOSHIです。

>しかしkが偶数ならp^kψn(x)=(-ihcd/dx)kψn(x)=pnkψn(x)です。そこで,ψn(x)はp^kの固有値pnkに属します。

とありますが、本当にそうなりますか?


 もちろん存在領域を箱の中[0,a]に限った話です。一貫して外や壁を除外して考察しています。

 もっとも壁が無いならゼロ関数は固有関数の定義から除外されますがあらゆる演算子のあらゆる値の固有値に属する固有関数の形をしています。

 何らかの境界を除去する処理をうまくやれば全空間でも可能です。

 まあ,こうしてどんなに工夫をして固有関数もどきを作ろうが壁にぶつかるわけですから全空間では自由粒子でないのは明らかです。

 (別にこうした表現を矛盾だと感じたらそこだけを修正すればいいだけです。)

 いろいろなHに対する定常シュレ-ディンガー方程式,Hψ=Eψの解は一般にpの固有状態ではないのですが,定常状態ですからエネルギーH=p^2/(2m)+Vの固有状態です。

 箱に閉じ込められた1粒子なら箱の壁位置も含めるとH=p^2/(2m)+Vで一般にはV≠0です。しかし反射壁を除く箱の中[0,a]ではH=p^2/(2m)です。

 そこで[0,a]においては,Hψ=Eψはp^2ψ=(2mE)ψを意味するので,任意の定常解ψがp^2ψ=const×ψを満たすのは明らかです。

 私は,式の意味をそのままを述べているに過ぎませんし,箱の中に閉じ込められている粒子が自由粒子でないことは私の頭でも明らかです。

 定式化あるいは言葉の表現に矛盾を感じたら,固有値,固有関数の定義とか関数の定義域とか境界条件とかが現実世界(実験etc.)をうまく体現してるかどうかを疑うこと,

 あるいは私などが勝手に論じてる内容を疑うのは当然の姿勢であると思います。

 実際よく間違えるので,どこがどう間違いであってどう直せば適切であるかを私のバカな頭でも理解できるように説明いただいて納得できれば過去にもその都度直しています。

 私自身は,式の表現にはそれほどあいまいなところはないと思っていますが,それの言葉での表現や物理的意味の解釈を表現して述べている際には,矛盾と思われる場所も多々あると思います。

 まあ,それは数理的厳密さにおける姿勢に関しての私の限界です。

 さて,自由粒子であるためにはpの偶数次だけではなく奇数次(特に1次)の固有状態であることが必要です。

 反射されるのでなく永遠にまっすぐ飛ぶのが自由粒子ですから。。

 しかし加速器などの実験においてもそうであるように,所詮は我々が認識するのはある大きさの実験室:[0,a]という箱の中ですから,そうした近似的に自由な粒子で十分であると思います。

 たとえばaが無限大の箱であっても,sin関数であればpの奇数次の固有関数ではないですが,それでも±pの重ね合わせ関数ですからpの偶数次の固有関数ではあります。

 私は閉じた箱の話というのは現実世界としては原子の束縛状態のある種のモデルのようなもの(すなわち不連続な離散エネルギー固有値を取る定常状態の例)として以上の興味はありません。

 実証科学としての追求としては,そうした部分はずいぶん昔に解決していると思うので,例えばランダウなどの表現に不適切なところがあると思っても「ああ,ここはこれをこの問題に適用するのは間違ってるかもね。」というくらいの感想しかなくて議論には教育的な意味ぐらいしか感じていません。

 量子力学の数理物理的扱いについては,現在はそこをつつけば発散の問題が解決できるのでは?というようなもっと別の部分には関心があります。

 ともあれご指摘ありがとうございます。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年7月26日 (月) 11時34分

こんにちは。冷蔵庫です。2年も前の記事ですが、一つだけコメントさせてください。

>しかしkが偶数ならp^kψn(x)=(-ihcd/dx)kψn(x)=pnkψn(x)です。そこで,ψn(x)はp^kの固有値pnkに属します。

とありますが、本当にそうなりますか?k=2でこれが正しいなら、ψn(x)は自由粒子のハミルトニアンの固有関数ということになります。ψn(x)はx∈[0,a]の外でゼロなので、これが自由粒子の状態であるというのは物理的におかしいですよね。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年7月25日 (日) 13時59分

(追伸)説明不足補。井戸の深さDの無次元パラメータθによる関数式: D(θ)= hbar^2 / (2m) * (2/w)^2 * θ^2 (1 + (tanθ)^2 )
θ=0でD=0,θ→π/2-0でD→+∞。wは井戸の幅。 

投稿: 甘泉法師 | 2008年9月12日 (金) 12時16分

TOSHIさん フォロミーでの裁定ありがとうございました。裁定を受けての私の理解で
有限井戸、”パウリ井戸”、”ランダウ井戸” 3つの整理図を書いてみました。
ご笑納ください。

ふるまい(イメージ)
○↑
○|○○○○○○○★ パウリ井戸 
○|○○○○○○○○(無限障壁,無限深さ井戸,
○|○○○○○○○○  完全に閉じ込められた粒子) 
○|○○○○○○○○ 運動量表示φ(p)離散スペクトル 
==========
○|○○○○○○○○
○|○○○○○○○☆ ランダウ井戸
○|○○○○○○●○ φ(p)連続スペクトル 
○|○○○○○●○○ フーリエ変換適用
○|○○○○●○○○ 
○|○○○●○○○○
○|○○●○○○○○
○|○●○○○○○○
○|●有限深さ井戸○
○●-------△-θ 無次元パラメター
○0○○○○○○π/2
○0○○○○○○+∞ D 井戸の深さ 

D=∞      パウリ井戸  
有限井戸でD→∞ ランダウ井戸 

(参考)
パウリ本
-------------------------------
パウリ物理学講座5量子力学 講談社1976 
P.36 7.箱の中の一粒子・連続の方程式  
運動量空間における確率密度
W(pn)=W(-pn)=1/2 ...[7.6]
-------------------------------
(ランダウ本)
----------------------------------
ランダウリフシッツ理論物理学教程 量子力学 非相対的理論 1 第二版 東京図書1967
第3章シュレジンガー方程式  P.74
問題
1.無限に深い垂直なポテンシャルの井戸の中にある粒子の基底状態について、運動量のいろいろな値の確率分布を求めよ。
解 運動量の固有関数(21.10)による関数ψ1(22.8)の展開係数a(p)は、
a(p)=∫ψp*ψ1dx=1/√(πahbar) ∫[o,a] sin (πx/a)e^-ipx/hbar dx
である。この積分を計算し、絶対値の自乗をとると、求める確率分布が得られる。
|a(p)|^2 =4π hbar^3 a / (p^2a^2-π^2hbar^2)^2 {cos (pa/2hbar)}^2
----------------------------------

投稿: 甘泉法師 | 2008年9月12日 (金) 10時25分

TOSHIさんすいません
ブログエディタ使用中にブラウザのキャッシュのせいでトラックバックが何度も送られてしまいました。
スパムではありません。申し訳ありませんが1部を残して削除願います。

投稿: 全充 | 2008年9月11日 (木) 19時35分

TOSHIさん、ありがとうございます。
後半も編集できしだい公開させていただきます。その際、この記事にトラックバックさせていただきます。
よろしくお願いいたします。

投稿: 全充 | 2008年9月11日 (木) 10時46分

 ども全充さん。。いつもありがとうございます。TOSHIです。

>せっかくですので自分のブログで公開したいのですが、かまいませんか?
快いご返事がいただけるとありがたいです。

 参照元を書いてもらえば全く問題ないし,宣伝になるし間違っていようがどうしようが元々私の責任発言で垂れ流していますのでどうぞTeXでもPDFでも公開OKですよ。

              TOSHI


投稿: TOSHI | 2008年9月11日 (木) 09時53分

TOSHIさん詳しい解説ありがとうございます。じっくり読ませてもらいます。
ところで、私は未熟者ゆえ教科書的な数式に書き直さないとなかなか理解できません。ということで、この記事をTex表式に変換しています。せっかくですので自分のブログで公開したいのですが、かまいませんか?
快いご返事がいただけるとありがたいです。
できばえは、下記リンクアドレスに
TOSHI.pdfを付加すると見ていただけます。

投稿: 全充 | 2008年9月11日 (木) 08時58分

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