相対論の幾何学(第Ⅱ部-1)(ベクトル空間)
これまでは主に3次元空間内の2次元曲面の幾何学について論じてきましたが,ここからは一般のn次元空間内の多様体などの話について述べることから始めます。
さし当っての目的は接続やリーマン曲率などのより詳細な幾何学的意味を理解するためです。
まず,体Kの上の2つの抽象的なベクトル空間(線型空間)V,Wが与えられ,VからWへの写像fが∀v1,v2∈V,∀a1,a2∈Kに対してf(a1v1+a2v2)=a1f(v1)+a2f(v2)∈Wを満たすとき,fを線型写像と呼びます。
Vの元をベクトル,Kの元をスカラーと呼ぶことにします。
線型写像は,ベクトルの和とスカラー倍という演算を保つ準同型写像を意味します。特にWがKである場合,つまりfがV→Kの線型写像ならfを線型関数と呼びます。また,W=Vならf:V→Vの線型写像fを線型変換と呼びます。
Imf≡f(V)≡{f(v)|v∈V}をVの写像fによる像と呼びます。もちろん,f(V)⊂Wです。
また,Kerf≡{v∈V|f(v)=0 }を写像fの核と呼びます。fが線型写像なら,f(0)=0 により,Kerf≠φです。
VとWの間に同型写像(全単射(全射,かつ単射)の準同型写像)が1つでも存在するとき,VとWは同型であるといいます。
VとWが同型であることを,V~Wと書くことにします。
特に線型写像fの場合,これが同型写像であることは,Kerf={0}なることと同値です
ベクトル空間の1次独立な元の最大個数は,各ベクトル空間に固有であり,これを次元と呼びます。Vの次元,Wの次元をそれぞれdimV,dimWと書きます。
VとWが同型:V~Wなら,もちろん,dimV=dimWです。
逆に任意のn次元ベクトル空間は,全て線型空間としては同型,つまりdimV=dimWならV~Wなので,特に体Kのn次元数ベクトル空間:Knと同型です。
K=R(実数体)なら,Kn=Rnはn次元ユークリッド空間です。
dimV=nの場合,V~Knなので,VをKnと同一視します。
一方f:Kn → Knの線型変換は,n次の正方行列と同型対応しますが,この変換行列の全体はリー群(Lie group)を作ります。
この行列群を一般線型変換群と呼びます。これは,GL(n,K)で表わされるのが慣例です。
そこで,もしもV~W~Knなら,V→Wの線型写像fも"GL(n,K)の元=n次正方行列"と同型対応するので,fをそのGL(n,K)の元の変換行列と同一視します。
以下では特に,V~KnでVがK上のn次元ベクトル空間である場合,VをV(n,K)と書くことがあります。
線型代数学において,"線型空間V,Wがあるとき,V→Wの任意の線型写像fに対してdimV=dim(Kerf)+dim(Imf)が成立する。"という定理があります。
先に述べた,"fが同型写像であることはKerf={0}と同値である。"という命題はこの定理の特別な場合に相当しています。
さて,f:V→Kをベクトル空間V=V(n,K)上のある線型関数とします。
{ei}i=1,2,..,nをVの1つの基底として,v≡v1e1+v2e2+..+vnen∈Vを適当に選びます。
このとき,f(v) =v1f(e1)+v2f(e2)+..+vnf(en)と書けます。そこで,{f(ei)}i=1,2,..,nが決まれば関数fは完全に決決定されまります。
そしてV上の2つの任意の線型関数f1,f2に対し,∀a1,a2∈Kについて,{a1f1+a2f2}(v)≡a1f1(v)+a2f2(v)によって関数a1f1+a2f2を定義すれば,a1f1+a2f2もまたV上の線形関数なのでV上の線型関数全体も再び線型空間になります。
この線型空間をV=V(n,K)の双対ベクトル空間といい,V*(n,K),あるいは単にV*と表わします。
先に述べたように,f:V→Kはn個のKの元の組(f(e1),f(e2),..,f(en))で完全に決まります。
これらの値が1つでも欠けるとfは決まりませんが,このn個の"スカラー=数"を並べた組は正にn次元数ベクトルの形をしています。
それ故,線型関数fとKnの元が完全に1対1に対応することになりますから,V*とKnは同型です。
よってV*の次元もnです。すなわちdimV*=dimVですね。
そして,e*k(ei)=δik (i=1,2,..,n)のn個の値で定義されるn個の線型関数e*k (k=1,2,..,n)の組をV*の双対基底と呼ぶことにします。
明らかに,任意の線型関数fはf=Σkfke*kと展開されます。
そこで,∀v∈Vに対し,f(v)=Σkfke*k(v)=Σk,ifkvie*k(ei)=Σkfkvkとなります。
右辺はf∈V*の成分(f1,f2,..,fn)とv∈Vの成分(v1,v2,..,vn)の内積の形になっています。そこで,f(v)をV*×V→Kの内積として(f,v)と書くこともあります。
f:V→Wとg:W→Kがあるとき,合成写像g・fをhと書いてh(v)≡g(f(v));v∈Vと定義することで,h∈V*が得られます。
これを,g∈W*が与えられたときに,写像f:V→Wが写像h∈V*を誘導したと見ます。そこで,このg→hなる対応をf*としてh=f*(g)と書くと,誘導写像と呼ばれる写像f*:W*→V*が得られます。
h=f*(g)を,f*によるgの引き戻しと呼びます。
以下ではKを実数体Rとして考察します。
さて,V=V(m,R)を基底{ei}i=1,2,..,mを持つベクトル空間,V*をその双対空間とします。
このときdimV*=dimVなので,VとV*の間には同型写像g:V→V*が存在します。
先に述べたようにgはGL(m,R)の任意の元と同一視できますから,gの行列としての成分表示が存在します。
すなわち,同型写像g:V→V*は,g:vj→Σkgjkvk,つまりgej=Σkgkje*k,またはv=Σjvjej∈Vに対して,gv=Σk,jgkjvje*k∈V*と表現できます。
そこで,Vの任意の2つのベクトルv1とv2の内積をg(v1,v2)と書き,同型写像g:V→V*を用いてg(v1,v2)≡Σk,jv1kgkjv2j=t(gv1)v2=tv1tgv2と定義します。
さらに,g(v2,v1)=g(v1,v2)であるようにgの行列(gij)はgji=gijなる対称行列gであるとし,常にg(v,v)≧0:行列g=(gij)は正値であるとします。
これによって非負のvのノルムを,g(v,v)の正の平方根として定義できます。
gji=gij (tg=g) なので,g(v1,v2)=Σk,jv1kgkjv2j=t(gv1)v2=tv1tgv2は,g(v1,v2)=Σk,jv1kgjkv2j=tv1gv2と書いても同じです。
ただしtv1,tgの左上添字tはそれぞれ行列v1,gの転置行列を示しています。
次に,上と同じくg:V→V*がV=V(m,R)からV*への同型写像であるとき,W=W(m,R)を基底{eWα}α=1,2,..,mを持つm次元ベクトル空間とし,G:W→W*をWからW*への同型写像とします。
そして,線型写像f:V→Wが与えられたとき,∀v∈V,∀w∈Wに対してG(w,fv)=g(v,f~w)を満たす写像f~:W→Vをが存在すれば,これをf:V→Wの随伴と呼びます。
G(w,fv)=g(v,f~w)は成分表示では,Σα,β,kwαGαβfβkvk=Σk,j,αvkgkjf~jαwαとなります。
ここに(fβj),(f~jα)は,それぞれ写像f,f~の行列成分表示です。
この等式から,随伴の条件は,Gαβfβk=gkjf~jα,またはG,f,g,f~を行列として,tftG=gf~,or f~=g-1 tftGなることで与えられることがわかります。
ここで,g,Gは同型写像故,detg≠0,かつdetG≠0 なので,条件f~=g-1 tftGから,rankf=rankf~であることが結論されます。
rankf=dim(Imf)ですから,このことはdim(Imf)=dim(Imf~)を意味します。
なお,Kが実数体Rではなくて複素数体Cのときには,v1,v2∈V=V(n,C)に対する内積はg:V=V*を同型写像としてg(v1,v2)≡Σk,jv1k*gkjv2jで定義されます。ただし,v1k*は複素数v1kの複素共役です。
そして,fの随伴f~はG(w,fv)*=g(v,f~w)で定義され,随伴であるための条件はf~=g-1f+G+となります。
ただし,f+はfのエルミート共役であり,行列の意味でf+≡tf*なることを意味します。また,dim(Imf) =dim(Imf~)が成立することはKがCでもKがRの場合と同じです。
したがって,V,Wが体K上の有限次元ベクトル空間でf:V→Wが線型写像であるとすると,dimV=dim(Kerf)+dim(Imf),かつdimW=dim(Kerf~)+dim(Imf~)なので,f~がfの随伴でdim(Imf)=dim(Imf~)なることは,dim(Kerf)-dim(Kerf~)=dimV-dimWを意味します。
右辺の差dimV-dimWは写像fの選択には無関係です。
もしも,fが微分作用素D^である場合,D^の随伴はD^+と書かれ,左辺のdim(Kerf)-dim(Kerf~)はdim(KerD^)-dim(KerD^+)と表現されますが,これを微分作用素D^の解析的指数といいます。
したがって,dim(Kerf)-dim(Kerf~)=dimV-dimWなる等式は後に述べる指数定理のミニチュア版となっています。
今日はここで終わります。
参考文献:中原幹夫 著「理論物理学のための幾何学とトポロジー」(ピアソン・エデュケーション)
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