相対論の幾何学(第Ⅱ部-6)(微分形式(2))
相対論の幾何学シリーズの続きで,多様体上の作用素としての微分形式の話の続きです。
多様体M上のr-形式(r-form):Ωr(M)を(r-1)形式:Ωr-1(M)へ写す写像で,ベクトル場:X^≡Xμ(∂/∂xμ)∈X(M)に関連した内部積:iXというものを考えます。
任意のr-形式ω≡(1/r!)ωμ1μ2..μrdxμ1∧dxμ2∧..∧dxμr∈Ωr(M)に対して,写像iXωをiXω(X1^,X2^,..,Xr-1^)≡ω(X^,X1^,X2^,..,Xr-1^)で定義します。
これは,陽な成分表現では,iXω={1/(r-1)!}Xνωνμ2..μrdxμ2∧..∧dxμr=(1/r!)Σs=1rXμsωμ1μ2..μr(-1)s-1dxμ1∧..∧^dxμs∧..∧dxμrとなります。
ここで,^dxμsなる記号は,各項から因子dxμsを削除することを意味します。
この内部積の定義では,例えばiex(dx∧dy)=dy,iex(dy∧dz)=0,iex(dz∧dx)=-dzとなります。
また,このiXと外微分dを組み合わせると,任意の1-形式ω≡ωμdxμに対し,(dlX+iXd)ω=d(Xμωμ)+iX[(1/2)(∂μων-∂νωμ)dxμ∧^dxν]=(ωμ∂νXμ-Xμ∂νωμ)dxν+Xμ(∂μων-∂νωμ)dxν=(ωμ∂νXμ+Xμ∂μων)dxνとなります。
これは丁度ωのリー微分:Lxωの表式Lxω=(Xν∂νωμ+∂μXνων)dxμと一致します。
すなわち,1-形式ωに対してはLxω=(diX+iXd)ωなる等式が成立することがわかります。
そして,一般のr-形式ω≡(1/r!)ωμ1μ2..μrdxμ1∧dxμ2∧..∧dxμr∈Ωr(M)に対しては,Lxω=limε→0[(1/ε){(σε)*ω|σε(x)-ω|x}]=(1/r!)[Xν∂νωμ1μ2..μrdxμ1∧dxμ2∧..∧dxμr+Σs=1r∂μsXνωμ1μ2..ν...μrdxμ1∧..∧^dxμs∧..∧dxμr]です。
この場合にも,(diX+iXd)ωがこのLxωと全く同じ表式になるので,一般に任意の微分形式ωに対して,リー微分は内部積で簡単に表現できて,Lxω=(diX+iXd)ωと表現できることがわかります。
次に,連結なm次元微分多様体Mの上での微分形式の積分について再考します。
まず,点p∈Mにおける接空間Tp(M)は,基底{eμ}≡{∂/∂xμ}によって張られます。
ここで,x={xμ}は点pが属するチャートUi上の局所座標です。
UjをUi∩Uj≠φを満たす局所座標y={yμ}を持つ別のチャートとし,{e~μ}≡{∂/∂yμ}とすると,p∈Ui∩Ujなる同じ点pの座標が別々のチャートUi,Ujによって,それぞれx,yで表現されます。
これらの基底の変換は,e~ν=(∂xμ/∂yν)eμとなります。
このとき,もしもUi∩Ujの上で常にJ≡det(∂xμ/∂yν)>0 なら,{eμ}と{e~μ}はUi∩Ujの上で同じ向きを定めるといい,J<0 なら逆の向きを定めるといいます。
[定義3]:Mをチャート(開集合族){Ui}で被覆される連結な多様体とする,Ui∩Uj≠φを満たす任意の対Ui,Ujに対しJ=det(∂xμ/∂yν)>0 を満たすUi上の局所座標{xμ}とUj上の局所座標{yμ}が存在すればMは向き付け可能であるといわれる。
m次元多様体Mが向き付け可能なら,M上の任意の点でゼロでないm形式ωで,体積要素と呼ばれるものを取ることができます。
例えば,あるチャート(Ui,φi)によるpの座標をx=φi(p)とし,h(p)をこのチャート上の正定値関数とします。
このとき,m形式ω=h(p)dx1∧dx2∧..∧dxmを取ると,もしもMが向き付け可能なら,このωをUi∩Uj≠φを満たす任意のチャートUj上でh(p)が正であるように拡張定義できます。
なぜなら,p∈Ui∩Ujなる同じ点の座標がx={xμ},かつy={yμ}で表現されるとき,ω=h(p)dx1∧dx2∧..∧dxm=h(p){(∂x1/∂yμ1)dyμ1}∧{(∂x2/∂yμ2)dyμ2}∧..∧{(∂xm/∂yμm)dyμm}=h(p)det(∂xμ/∂yν)dy1∧dy2∧..∧dymとなるからです。このm形式ωを体積要素と呼びます。
向き付け可能なm次元連結多様体の上での関数f:M→Rが与えられ,Mにおけるp∈Mでの体積要素がω=h(p)dx1∧dx2∧..∧dxmなるとき,pの近傍Uiでのm形式fωの積分を∫Uifω≡∫φi-1(Ui)f(φi-1(x))h(φi-1(x))dx1dx2..xmで定義します。
Ui上でのfの積分が定義されれば,M全体の上でのfの積分が1の分割を用いて定義できます。
[定義4]:Mの開被覆{Ui}に対しMの各点が有限個のUiで覆われるようなものを選ぶ。これが常に可能なときには,Mはパラコンパクトであるといわれるが,ここでは,Mはパラコンパクトと仮定する。
もし微分可能な関数族{εi(p)}が,(ⅰ) 0≦εi(p)≦1,(ⅱ)¬p∈Uiならεi(p)=0,(ⅲ)∀p∈Mに対してε1(p)+ε2(p)+..=1を満たすなら,関数族{εi(p)}を被覆{Ui}に属する1の分割と呼ぶ。
条件(ⅲ)から,f(p)=Σifi(p),fi(p)≡f(p)εi(p)が成立することがわかります。
そして,(ⅱ)よりfi(p)≡f(p)εi(p)はUiの外ではゼロです。
そしてパラコンパクト性の仮定からf(p)=Σifi(p)は有限和であることが保証されます。
各々のfi(p)に対して∫Uifω=∫Uifiωを定義できるので,M上でのfの積分は∫Mfω≡Σi∫Uifiωで与えられます。
異なるアトラス{(Vi,ψi)}は異なる座標の分割と異なる1の分割を与えますが積分は変わりません。
次にリー群(Lie group)とリー環(Lie algebla)です。
[定義5]:リー群Gとは微分多様体であって次の群演算
(ⅰ)・:G×G→G,(g1,g2)→g1・g2,(ⅱ)-1:G→G,g→g-1によって群の構造を与えたものである。ただし,これらの演算は共に滑らかな写像であるとする。
リー群Gの単位元をeと書き,またGの次元を多様体としてのGの次元として定義します。なお,積記号・は省略して,以下ではg1・g2をg1g2のように表記することにします。
さて,実数のベクトル空間Rnにおける非特異な線型変換全体の集合をGL(n,R)とすると,これはn×n非特異実行列全体で与えられるリー群をなします。
このGL(n,R)は一般線型群と呼ばれます。ここでGL(n,R)の代わりに実数Rを複素数CとしてRnでなくベクトル空間Cnにおける非特異な線型変換全体の集合を考えて,これをGL(n,C)と書くと,これも一般線型群と呼ばれ,GL(n,R)はGL(n,C)の部分群です。
特に直交群:O(n),特殊線型群:SL(n,R),特殊直交群:SO(n)はGL(n,R)の部分群で,物理学への応用で重要なものです。
これらの定義は,O(n)≡{M∈GL(n,R)|tMM=MtM=1},SL(n,R)≡{M∈GL(n,R)|detM=1},SO(n)≡{M∈O(n)|detM=1}ですね。
また,特殊相対論では,O(1,3)≡{M∈GL(4,R)|MηtM=η}がよく出現します。ただし,tMは行列Mの転置です。ηはミンコフスキー計量(Minkowski metric):η=diag(1,-1,-1,-1)です。
これらは,多様体としてO(1,3)以外はコンパクトです。
また,対応するGL(n,C)の部分群はユニタリ群U(n),特殊線型群SL(n,C),特殊ユニタリ群SU(n)で,次のように定義されます。
U(n)≡{M∈GL(n,C)|MM+=M+M=1},SL(n,C)≡{M∈GL(n,C)|detM=1},SU(n)≡{M∈U(n)|detM=1}です。
ただし,M+は行列Mのエルミート共役でM+≡tM*です。
次にリー環の概念について述べます。
[定義6]:リー群をGとしa,g∈Gとする。Gの上での変換;gのaによる右移動Ra,左移動Laを,Rag≡ga,Lag≡agで定義する。
定義によって,Ra,Laは明らかに共にGからGへの微分同相写像です。したがって誘導写像Ra*:Tg(G)→Tga(G),およびLa*:Tg(G)→Tag(G)が存在します。
これら両方の移動は等価なので以下では移動といえば左移動のみを想定します。
[定義7]:X^=Xμ(∂/∂xμ)をリー群G上のベクトル場とする。これが左移動に対してLa*X^|g=X^|agを満たすとき,このX^は左不変ベクトル場であるという。
g,ag∈Gに対する多様体G上の座標を,それぞれxμ(g),xμ(ag)と書くと誘導写像の定義(f:M→Nに対し誘導写像f*:Tp(M)→Tf(p)(N)がN上の任意関数hについて,f*X^[h]≡X^[h・f]なる等式で定義される)から,G上の任意関数hについてLa*X^|g[h]=X^|g[h・a]=Xμ(g)(∂(h(x(ag)))/∂xμ(g))です。
一方,X^|ag[h]=Xμ(ag)(∂h(x(ag))/∂xμ(ag))ですから,左不変ベクトル場であること;La*X^|g=X^|agは,Xμ(g){∂(h(x(ag)))/∂xμ(g)}=Xμ(ag){∂h(x(ag))/∂xμ(ag)}を意味します。
すなわち,Xμ(g){∂h(x(ag))/∂xν(ag)}{∂xν(ag)/∂xμ(g)}=Xμ(ag){∂h(x(ag))/∂xμ(ag)},またはhを消してXμ(g){∂xν(ag)/∂xμ(g)}(∂/∂xν)|ag=Xμ(ag)(∂/∂xμ)|agです。
そこで,任意のベクトル場V^=Te(G)に対して,ベクトル場XV^をXV^|g≡Lg*V^,g∈Gで定義します。
XV^|g,g∈GはG全体で決まります。
そして,これはXV^|ag=Lag*V^=(La*Lg*)V^=La*XV^|gを満たしますから,XV^はそれ自身左不変です。
逆にGの上の任意の左不変ベクトル場X^があるとき,Te(G)の元としてV^≡X^|eを与えると,XV^|g=Lg*V^が得られますから,XV^≡X^です。
以上からV^=Te(G)に対して左不変ベクトル場XV^は一意的であり,Gの上の左不変ベクトル場全体の集合をgと書けば写像V^→XV^はTe(G)からgへの同型写像であることがわかります。
つまり,左不変ベクトル場全体gは,1つのTe(G)に同型なベクトル空間です。そして,特にdimg=dimGです。
XV^をV^によって生成される左不変ベクトル場といいます。
左不変ベクトル場の全体gはベクトル場の集合なので「流れとリー微分」の記事で述べたリー括弧積が∀X^,Y^∈gに対して[X^,Y^]≡(Xμ∂μYν-Yμ∂μXν)∂νによって定義されます。
ベクトル場のリー括弧積自身がまたベクトル場になることは既に示しましたが,f* [X^,Y^]=[f*X^,f*Y^]によってLa*[X^,Y^]|g=[La*X^|g,La*Y^|g]=[X^,Y^]|agなので,左不変性もまた保持されます。
したがって,∀X^,Y^∈gに対して[X^,Y^]∈gとなり,gはリー括弧積について閉じています。
リー群Gの例として,一般線型群GL(n,R)を考えます。この群ををn×n行列g全体のn2次元の微分多様体と考えて,gの座標x(g)をその成分x(g)≡{xij(g)}であると考えます。
このとき,単位元の成分はx(e)={1ij}={δij}であり,g∈Gのa∈Gによる左移動はLag=ag=Σkxik(a)xkj(g)なる行列積で与えられます。
ベクトルV^=Vμ(∂/∂xμ)|e∈Te(G)は,今のG=GL(n,R)の場合V^=Vij(∂/∂xij)|eとなり,V^で生成される左不変ベクトル場XV^はXV^|g=La*V^|g=ΣijklmVij[∂({xkl(g)xlm(e)}/∂xij(e)}{∂/∂xkm(g)}=Σijkxki(g)Vij(e)(∂/∂xkj)|gと表現されます。
ここで,gの座標行列とV^の行列の積として係数成分をΣkxki(g)Vij(e)=(gV)kjと書くことにすれば,XV^|g=Σij(gV)ij(∂/∂xij)|gとなります。
XV^|g=Σij(gV)ij(∂/∂xij)|gですから,Vμ(∂/∂xμ)をV^と称するのと同じくXV^をgVと書くこともあります。
V^=Vij(∂/∂xij)|e,W^=Wij(∂/∂xij)|eによって生成されるXV^,XW^のリー括弧積は,定義[X^,Y^]≡(Xμ∂μYν-Yμ∂μXν)∂νから[XV^,XW^]|g=Σijkl[(gV)ij{∂(gW)kl/∂xij}-(gW)ij{∂(gW)kl/∂xij)}](∂/∂xkl)|g=Σij(g[V,W])ij(∂/∂xij)|g=X[V,W]^|gです。
または,[gV,gW]=g[V,W] for ∀g∈Gです。
これによって次の定義が得られます。
[定義8]:Gの上の左不変ベクトル場全体の集合gであって,リー括弧積[,]:g×g→gが定義されたものをリー環,またはリー代数という。
今日はこれで終わります。
参考文献:中原幹夫 著「理論物理学のための幾何学とトポロジー」(ピアソン・エデュケーション)
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