相対論の幾何学(第Ⅱ部-7)(リー群とリー代数)
相対論の幾何学シリーズ記事の多様体に作用するリー群とリー代数等について残りの必要な知見を要約します。
まず,既に述べたことの復習です。
(復習):X^≡Xμ(∂/∂xμ)を微分多様体M上の滑らかなベクトル場とするとき,X^の積分曲線x(t)とはM上の曲線であって,その上の各点x=x(t)∈Mでの接ベクトルが丁度X^|xに一致するものです。
つまり,x=x(t)がX^の積分曲線であるとは曲線上の各点xの近傍Uでチャート(U,φ)が与えられたとき,座標(位置ベクトル)x(t)={xμ(t)}が,微分方程式dxμ/dt=Xμ(x(t))の解になることを意味します。
ただし,正確には点の座標xμ=xμ(t)とは,チャート(U,φ)による座標φ(x(t))の成分φμの意味です。
ベクトル場X^≡Xμ(∂/∂xμ)が滑らかなベクトル場であることから,初期条件として点x(0)=x0を与えれば,この点を通る一意的なdx/dt=Xの解が少なくとも局所的には存在することが,常微分方程式の解の存在と一意性の定理によって保証されます。
そこで初期条件x(0)=x0を満たすdx/dt=Xの一意解をσ(t,x0)とします。
すなわち,dσμ(t,x0)/dt=Xμ(σ(t,x0)),かつσμ(0,x0)=x0μとします。
このσ(t,x)∈M for (t,x)∈R×Mで表わされる写像σ:R×M → Mを"Mの上の滑らかなベクトル場X^によって生成される流れ"と呼びます。
[定義5]:リー群をGとし,a,g∈Gとする。Gの上での変換としてgのaによる右移動Ra,および左移動Laを,それぞれRag≡ga,およびLag≡agで定義する。
定義により,右左移動:Ra,Laは共に明らかにGからGへの微分同相写像です。
したがって,これらに対して接ベクトルの空間の上の誘導写:Ra*:Tg(G)→Tga(G),およびLa*:Tg(G)→Tag(G)が存在します。
そして,これら両方の移動は等価なので,以下では左移動のみを考えることにします。
以下,移動に関連する概念の定義をいくつか列記します。
[定義6]:X^=Xμ(∂/∂xμ)をリー群G上のベクトル場とする。これが左移動に対してLa*X^|g=X^|agを満たすとき,このX^を左不変ベクトル場であるという。
[定義7]:Gの上の左不変ベクトル場全体の集合gであって,リー括弧積[ , ]:g×g →gが定義されたものをリー代数(Lie algebra),またはリー環という。
(復習終わり)
さて,X^≡Xμ(∂/∂xμ)を"リ-群G=微分多様体G"上の滑らかな左不変ベクトル場とすると,これはGにおける流れを生成します。これに関連して1つ定義を書きます。
[定義8]:Gにおける曲線φ:R→Gがφ(t)φ(s)=φ(t+s)を満たすとき,φをGの1-パラメータ部分群)という。
これから,明らかにe=φ(0),かつφ-1(t)=φ(-t)であり,曲線φはRからGへの準同型写像です。Gが非アーベル群の場合でも,曲線φの群は常にアーベル部分群であることもわかります。
Gの1-パラメータ部分群φ:R→Gが与えられたとき,dφμ(t)/dt=Xμを満たすベクトル場X≡Xμ(∂/∂xμ)が存在します。これがGの上で左不変であることを示します。
すなわち,d/dt≡(dφμ/dt)(∂/∂xμ)が左不変であることを証明します。
(証明):定義によれば,ベクトル場d/dtが左不変である,というのは(La)*(d/dt)|g=(d/dt)||agが成立することを意味しますが,点gと点agが共に同じ流れ関数の曲線φ(t)上の点でなければ,d/dtなる演算に意味がないのでg=φ(s),a=φ(t)とすると,φは1-パラメータ部分群なのでag=φ(t)φ(s)=φ(t+s)です。
今,aもgもパラメータt,sだけで決まるので,(La)*(d/dt)|gを(Lt)*(d/dt)|sと書きます。
そして,f:M→Nに対する誘導写像f*:Tp(M)→Tf(p)(N)の定義式f*X^[h]≡X^[h・f]で,f,f*の代わりにLt:G→G,(Lt)*:Tφ(s)(G)→Tφ(t+s)(G)を代入し,hをN上の関数ではなくG上の任意関数とします。
すると,誘導写像の定義は,(Lt)*(dh(φ(t))/dt)|s=(d/dt)[h(Ltφ(s))]=(d/dt)(h(φ(t+s)))を意味します。
それ故,1-パラメータ部分群φの場合,誘導写像の定義がそのまま左不変の定義(Lt)*(d/dt)|s=(d/dt)|t+sに一致しますから,確かにd/dt=(dφμ/dt)(∂/∂xμ)は左不変です。
特に,g=φ(s)でs=0 つまりg=φ(0)=eとすれば左不変性は(Lt)*(d/dt)|0=(d/dt)|tと書けます。(証明終わり)
くどいようですが,X^≡Xμ(∂/∂xμ)の係数がXμ≡dφμ(t)/dtで与えられる場合には,g=φ(t)のときX^|g=Xμ(∂/∂xμ)|g=(d/dt)|t=(dφμ/dt)(∂/∂xμ)|φ(t)と書けます。
そして,この式でt=0 としてgの代わりにe=φ(0)と書くと,X^|e=(d/dt)|0=(dφμ/dt)(∂/∂xμ)|φ(0)となります。
そこで,上に示したd/dtの左不変性(Lt)*(d/dt)|0=(d/dt)|tは,ベクトル場X^を用いた表記ではLg*X^|e=X^|gとなります。
以上から,流れφ(t)が与えられると,それに伴なう左不変ベクトル場X^|gが常に存在することが示されました
逆に,左不変ベクトル場X^があると,dσμ(t,g)/dt=Xμ|g,かつσ(0,g)=gを満たす流れσ(t,g):R→Gが存在します。
そこでφ(t)≡σ(t,e)と定義すると,曲線φ(t)はGの1-パラメータ部分群になることがわかります。
すなわち,定義によりdσμ(t,σ(s,e))/dt=Xμ(σ(t,σ(s,e))),つまりdσμ(t,φ(s))/dt=Xμ(σ(t,φ(s)))です。また特にσ(0,φ(s))=φ(s)です。
一方,σ~(t,φ(s))をσ~(t,φ(s))≡φ(t)φ(s)で定義すれば,φ(t)≡σ~(t,e)ですからdσ~μ(t,φ(s))/dt=Xμ(σ~(t,φ(s))),かつσ~(0,φ(s))=φ(s)です。
以上から,常微分方程式の解の一意性定理によって,σとσ~は一致します。つまりσ(t,σ(s,e))=σ~(t,φ(s))=φ(t)φ(s)となりますが,σ(t,g)は流れですからσ(t,σ(s,e))=σ(t+s,e)=φ(t+s)を満足します。
そこで,結局φ(t+s)=φ(t)φ(s)が得られます。
こうして,Gの1-パラメータ部分群と左不変ベクトル場の間には1対1の対応があることがわかりました。
[定義9]:Gを1つのリー群としV^∈Te(G)とする。このとき指数写像:exp:Te(G)→Gを,exp(V^)≡φV(1)で定義する。ここでφV(t)は左不変ベクトル場XV|g≡Lg*V^に対応するGの1-パラメータ部分群である。
(XV|e=V^∈Te(G)であり,XVはXV|g≡Lg*V^で定義されて,これをV^によって生成される左不変ベクトル場といいます。)
ここで,任意のベクトル場V^∈Te(G)に対して一意的に決まる左不変ベクトル場XV^の概念について,前記事で述べた内容を再掲します。
(再掲):任意のベクトル場V^∈Te(G)とg∈Gに対して,ベクトル場XV^をXV^|g≡Lg*V^で定義します。
XV^|g,g∈GはG全体で決まります。
そして,これはXV^|ag=Lag*V^=(La*Lg*)V^=La*XV^|gを満たしますから,XV^それ自身左不変です。
逆にGの上の任意の左不変ベクトル場X^があるとき,Te(G)の元としてV^≡X^|eを与えるとXV^|g=La*V^|gとなりますから,XV^≡X^が成立します。
Gの上の左不変ベクトル場全体の集合をgと書けば,写像V^→XV^はTe(G)からgへの同型写像であることがわかります。
左不変ベクトル場全体gはTe(G)に同型なベクトル空間です。そして,特にdimg=dimGです。
XV^をV^によって生成される左不変ベクトル場といいます。
ベクトルV^=Vμ(∂/∂xμ)|e∈Te(G)は,リー群Gが行列群GL(n,R)の場合には,V^=Vij(∂/∂xij)|eとなり,V^で生成される左不変ベクトル場XV^はXV^|g=La*V^|g=ΣijklmVij[∂({xkl(g)xlm(e)}/∂xij(e)}{∂/∂xkm(g)}=Σijkxki(g)Vij(e)(∂/∂xkj)|gと表わされます。
(Vijは行列V^の(i,j)要素ですが,これをn2次元ベクトルV^の成分Vμ(μ=1,2,..n2)と同一視しました。)
ここで,上の最後に陽に書いたベクトル場XV^|g=La*V^|gの係数をgの座標を示す行列とV^の行列との積の行列要素として,Σkxki(g)Vij(e)=(gV)kjと書くことにすれば,上記表現はXV^|g=Σij(gV)ij(∂/∂xij)|gとなります。(再掲終わり)
さて,重要な定理を1つ与えて証明します。
[定理]:Gを1つのリー群としV^∈Te(G)とする。このときexp(tV^)=φV(t)が成り立つ。
(証明)a∈Rをゼロでない定数とすると,φV(at)はdφVμ(at)/dt|t=0=adφVμ(t)/dt|t=0=aVμを満たします。
これは,φV(at)がaV^で生成される左不変ベクトル場XaV^|g≡La*aV^|gから生成されるGの1-パラメータ部分群φaV(t)に一致することを意味しています。すなわち,φaV(t)≡φV(at)です。
ところが定義によって,exp(aV^)=φaV(1)ですから,φaV(1)=φV(a)により,exp(aV^)=φV(a)です。
最後の式でaをtに置き換えると,exp(tV^)=φV(t)を得ます。
(証明終わり)
さて,リー群Gが行列群GL(n,R)の場合,そのリー代数をgl(n,R)と書くことにします。
つまり,Gの左不変ベクトル場全体の集合で,g∈Gに対応して∀V^∈Te(G)に対しXV^|g=Lg*V^=gV∈gl(n,R)が定義され,[XV^,XV^]|g=Lg*[V^,W^]|g=g[V,W]なるリー括弧積[ , ]:gl(n,R)×gl(n,R)→gl(n,R)が定義されるようなものをGL(n,R)のリー代数,またはリー環と呼び,gl(n,R)と表記します。
一般に行列群Gに対して,V∈Te(G)のときVは行列であり,行列積:gVがXV^|gの行列を表わします。
gV∈gl(n,R)ですが,g=eとしたV^=eVも,もちろんリー代数gl(n,R)の元です。
先述したように,Te(G)はgl(n,R)と同型なのでTe(G)をGのリー代数gと同一視できます。
行列群に対しては指数写像は指数行列を意味します。
G=GL(n,R),A∈gl(n,R)のとき,Aに対応する1-パラメータ部分群φA:R→GL(n,R)をφA(t)≡exp(tA)≡1+tA+t2A2/2!+..+tnAn/n!+..で定義します。
[φA(t)]-1=φA(-t)により,φA(t)∈gl(n,R)です。
そしてφA(t+s)=φA(t)φA(s),e=φA(0)も成立し,φA(t)は確かにGの1-パラメータ部分群として問題ありません。
またAの指数写像:exp:Te(G)→Gは,φA(1)=exp(A)=1+A+A2/2!+..+An/n!+..で与えられます。
さらに,曲線gexp(tA)はg∈Gを通る流れであり,d(gexp(tA))/dt|t=0=XA|g=Lg*A=gAが成立します。
曲線gexp(tA)は,各tに対して写像σ(t):G→Gをσ(t,g)≡gexp(tA)によって定めます。これは右移動としてRexp(tA)とも表現されます。
さて,次にはn=dimGとし,nは有限であって{V1^,V2^,..,Vn^}をG上のベクトル場Te(G)の基底とします。
∀g∈Gに対してXμ^|g≡Lg*Vμ^(μ=1,2,..,n)により,n個の1次独立な左不変ベクトル場{X1^,X2^,..,Xn^}を定めます。
集合{Xμ^}μ=1,2,..,nはG全体で定義されるベクトル場Tg(G)の基底となり,標構と呼ばれます。
リー括弧積[Xμ^,Xν^]|gもまたTg(G)の元ですから,基底{Xμ^}|gの1次結合で表わすことができます。
すなわち,[Xμ^,Xν^]=cμνλXλ^と展開できます。このときの右辺の係数cμνλをリー群Gの構造定数と呼びます。
構造定数cμνλはg∈Gに依存すると考えられるので,[Xμ^,Xν^]|g=cμνλ(g)Xλ^|gと表記すれば,[Xμ^,Xν^]|e=cμνλ(e)Xλ^|eです。
この両辺にLg*を作用させるとLg*[Xμ^,Xν^]|e=[Lg*Xμ^|e,Lg*Xν^|e]=[Xμ^,Xν^]|gなる公式によって[Xμ^,Xν^]|g=cμνλ(e)Xλ^|gが得られます。
つまり,cμνλ(g)=cμνλ(e)です。これは構造定数cμνλ(g)がg∈Gに独立な定数であることを意味します。このことはリーの定理として知られています。
というわけで,以下では構造定数はcμνλ(g)ではなく,cμνλとのみ表記します。
構造定数は個々の元gに独立で全体のGにのみ依存するので,むしろcμνλ(G)とでも表記すべきものです。ある意味では,これがリー群Gを完全に決定すると考えられます。
そして構造定数cμνλは次の性質を持ちます。
(a)歪対称性:cνμλ=-cμνλ,これは[Xν^,Xμ^]=-[Xμ^,Xν^]から明らかです。
(b)ヤコービ恒等式:cμντcτρλ+cρμτcτνλ+cνρτcτμλ=0 ,これは,リー括弧積のヤコービ恒等式[[Xμ^,Xν^],Xρ^]+[[Xν^,Xρ^],Xμ^]+[[Xρ^,Xμ^],Xν^]=0 を構造定数で表わしたものになっています。
次に{Xμ^}μ=1,2,..,nの双対基底,つまり左不変1-形式Tg*(G)の基底であって,<θμ,Xν^>=θμ(Xν^)=δμνを満たすものを{θμ}μ=1,2,..,nと表わすことにします。
これは,以前の記事で,df(X^)=X^[f]∈Rが内積の意味を持つため,これを<df,X^>と表記したのと同じ意味です。
このときには,基底として{∂/∂xν}を取り,その双対基底が{e*μ}={dxμ}で与えられることを見ました。
そして基底の正規直交性を<dxμ,∂/∂xν>=dxμ(∂/∂xν)=δμνと表現しました。そして,任意のベクトル:X^=Xμeμ=Xμ(∂/∂xμ)∈Tp(M)と,1-形式:ω=ωμe* μ=ωμdxμ∈Tp* (M)について<ω,X^>=ωμXμとなり,これが基底の選択に依らないことを見ました。
さて,<θμ,Xν^>=δμνを満たす双対基底{θμ}はマウレ-・カルタン(Maurer-Cartan)の構造方程式と呼ばれる公式:dθμ=(-1/2)cνλμθν∧θλを満たします。
これも,以前に微分形式について述べたとき求めた公式:dω(X^,Y^)=X^[ω(Y^)]-Y^[ω(X^)]-ω([X^,Y^])から導かれます。
すなわち,上式のω,X^,Y^として,それぞれθμ,Xν^,Xλ^を代入するとdθμ(Xν^,Xλ^)=Xν^[θμ(Xλ^)]-Xλ^[θμ(Xν^)]-θμ([Xν^,Xλ^])=Xν^[δμλ]-Xλ^[δμν]-θμ(cνλρXρ^)=-cνλμとなります。
そこで,2-形式dθμを,基底{θν∧θλ}で展開してdθμ=aνλμθν∧θλと書けば,上式からaνλμはaνλμ-aλνμ=-cνλμを満たします。
係数aνλμは,普通aνλμ-aλνμ=2aνλμとなるように歪対称に選ぶので,aνλμ=(-1/2)cνλμとなり,それ故,dθμ=(-1/2)cνλμθν∧θλが得られます。
次に,リー代数:Te(G)に値を持つ(1,1)-形式θ:Tg(G)→Te(G)を,X^∈Tg(G)に対してθ(X^)≡(Lg-1)*X^=(Lg*)-1X^∈Te(G)で定義します。
このθ(X^)を,マウレー・カルタン形式,あるいは,標準1-形式と呼びます。
[定理]:(a)マウレー・カルタン形式θは,Te(G)の基底{Vμ^}と,Tg*(G)の基底{θμ}によってθ=Vμ^⊗θμと展開される。
(b)マウレ-・カルタン形式θは,dθ+[θ∧θ]/2=0 を満たす。ここでdθ≡Vμ^⊗dθμであり,[θ∧θ]≡[Vμ^,Vν^]⊗(θμ∧θν)である。
(証明)(a)Tg(G)の基底を{Xμ^}とし,Xμ^=Lg*Vμ^とするとθ(Xμ^)=Vμ^,かつθμ(Xν^)=<θμ,Xν^>=δμνです。
そこで,∀Y^≡YμXμ^∈Tg(G)に対してθ(Y^)=Yμθ(Y^)=YμVμ^=θμ(Y^)Vμ^=Vμ^⊗θμ(Y^)です。
Y^は任意のTg(G)の元なので,θ=Vμ^⊗θμと結論されます。
(b) dθ≡Vμ^⊗dθμ=(-1/2)cνλμVμ^⊗(θν∧θλ)=(-1/2)[Vν^,Vλ^]⊗(θν∧θλ)=(-1/2)[θ∧θ]です。それ故,dθ+[θ∧θ]/2=0 を得ます。(証明終わり)
※素粒子論では自発的対称性の破れと関連してマウレー・カルタン形式が現われます。
すなわち,理論が元々は線型リー群Gに属する変換に対して不変であるという対称性を持っていたが,それが自発的に破れて部分群Hについてのみ不変という対称性が残ったとき,
"Gのリー代数gの基底=Gの生成子"{TA}を,対称性が破れていないHの生成子{Sa}⊂hと,破れた生成子{Xa}⊂g-hに分離します。
このとき現われる(dimG-dimH)個の零質量の南部・ゴールドストン粒子の場:π(x)={πa(x)}は,(右)商空間G/H="(右)同値類:gH={gh∈G|h∈H}を元とする空間"のリー代数の座標となります。
G/Hの(右)同値類の代表元をξ(π)=exp(iπ(x)),π(x)=ΣXa∈g-hπa(x)Xa∈g-hと書いて,α=ξ-1dξ∈gをマウレー・カルタン1-形式と呼びます。※
さて,さらに群Gの作用を考えます。
[定義10]:Mを多様体,GをMに作用するリー群とする。GのMへの作用は微分可能写像σ:G×M→Mで,(ⅰ)∀p∈Mに対してσ(e,p)=p(ⅱ)σ(g1,σ(g2,p))=σ(g1g2,p)を満たすものとする。
σ(g,p)をgpと表わすこともあります。
この表わし方では,上の作用規則は(ⅰ)∀p∈Mに対してep=p(ⅱ) g1(g2p)=g1g2pを満たす,となります。
[定義11]:Mを多様体,GをMに微分可能写像σ:G×M→Mによって作用するリー群とする。
(a)作用σが推移的である:とは∀p1,p2∈Mに対してσ(g,p1)=p2を満たすg∈Gが存在することをいう。
(b)作用σが自由である:とは如何なる非自明なGの元gもM内に不動点を持たないことをいう。すなわちσ(g,p)=pなるp∈Mが存在するならg=eでなければならないことをいう。
(c)作用σが効果的である:とは,単位元e∈GがM上に自明に作用する唯一の元であることをいう。すなわち,∀p∈Mに対してσ(g,p)=pならばg=eでなければならないことをいう。
一般にリー群の左移動L:(ag)→Lag=ag,右移動R:(ag)→Rag=gaはG自身の上で自由,かつ推移的ですね。
また,点p∈Mが与えられたとき,Gのpへの作用σの下でのpの軌道Gpを,Gp≡{σ(g,p)|g∈G}で定義します。
もしも,GのMへの作用が推移的であれば,軌道GpはM自身です。そしてGのGpへの作用は明らかに推移的です。
[定義12]:Mを多様体,GをMに作用するリー群とする。
点p∈Mが与えられたときpの等方群H(p)とは,H(p)≡{g∈G|σ(g,p)=p}で定義されるGの部分群である。
H(p)はまた,pの小群(little group),あるいは安定化部分群と呼ばれる。
※例えばMを(3+1)次元ミンコフスキー空間R3,1,G=SO(3,1)(ローレンツ群)とし,点pをp=pμ=(1,0,0,0)∈R3,1に取ると,小群H(p)は時間軸を固定した3次元空間の回転,つまりSO(3)(回転群)に同型です。
そこでH(p)=SO(3)の表現を調べることで,ローレンツ群全体の構造を知ることができます。
つまり量子論における粒子のスピンによる分類におけるスカラー,ベクトル,テンソルetc.の粒子場が(3+1)次元の幾何学量ではなく3次元空間の量であるのは,ローレンツ回転の自由度が"等方群=SO(3)"で尽くされるからです。※
Gをリー群,Hをその任意の部分群とするとき剰余空間G/Hは微分構造を持ち多様体になります。
これを等質空間と呼びます。Gを多様対Mに推移的に作用するリー群とし,H(p)を点p∈Mに対する等方群とします。
このときの等質空間G/H(p),Mがある種の要請を満たせば,G/H(p)はMに同相になります。
Gを多様体M上で(g,x)→gxとして作用するリー群とします。
V^∈Te(G)によって生成される左不変ベクトル場XV^は,自然にMにおけるベクトル場を誘導します。
すなわち,Mにおける流れをσ(t,x)≡exp(tV^)xによって定義します。σ(t,x)はGの1-パラメータ部分群です。このときV#^|x≡dσ(t,x)/dt|t=0を誘導ベクトル場と呼ぶわけです。
つまり,点σ(t,x)∈Mを陽に座標表示でσμ(t,x)と書くとき,V#^|x={dσμ(t,x) /dt|t=0}(∂/∂xμ)|x=V^(∂/∂xμ)|xが誘導ベクトル場です。
X(M)を多様体M上のベクトル場全体の集合とするとき,V^→V#^は#:Te(G)→X(M)なる1つの写像を定義します。
さて,リー群GはG自身には特別な仕方で作用します。
[定義13]:Gをリー群とする。∀a∈Gに対して準同型ada:G→Gをadag≡aga-1で定義する。一般に準同型を表現と呼ぶが,特にada:G→Gを随伴表現と呼ぶ。
さて,adae=eですから,ada:G→Gの誘導写像ada*:Tg(G)→Tadag(G)のg=eへの制限,ada*|Te(G)をAdaと書くと,これはTe(G)のTe(G)自身への写像となります。
そしてTe(G)をGのリー代数gと同一視して,AdaをG×gからgへの写像と見るとき,この写像Adaを随伴写像と呼びます。
Gが行列群であれば,随伴表現は単に行列演算になります。
g∈G,Xv∈gとしσv(t)=exp(tV)をV∈Te(G)で生成される1-パラメータ部分群とすると,adgσv(t)=gexp(tV)g-1=exp(tgVg-1)(=行列σv(t)の共役)です。したがって,誘導ベクトル場もVの共役であり,AdgV=gVg-1を得ます。
今日はこれで終わります。
(相対論の幾何学第Ⅱ部終わり)
参考文献:中原幹夫 著「理論物理学のための幾何学とトポロジー」(ピアソン・エデュケーション),九後太一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館) ,大貫義郎 著「ポアンカレ群と波動方程式」(岩波書店)
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コメント
Lie環(Lie代数)を満たす条件として、
[x,y]=-[y,x]
[[x,y],z]+[[y,z],x]+[[z,x],y]=0
がありますが、フェルミオン/グラスマン数の性質を用いた次の反交換関係(G奇)
{A,B}=AB+BA=0
の{}はLie環を成すのでしょうか?
[]の代わりを{}がつとまればLie環とみなせるでいいでしょうか?
投稿: 多様体勉強中 | 2013年3月21日 (木) 01時20分