運動物質内の相対論(6)(閉じていない系)
運動物質内の相対論の続きです。
ここからは閉じていない系に入ります。
まず,一般論です。
どんな場合にも,それに応じて対象となる領域を十分大きい範囲に取れば,全体としては必ず閉じた系になるはずですから,その閉じた系をΣとして系の全エネルギー運動量テンソルをTμνとします。
そして,全系Σを2つの閉じていない系Σ(1),およびΣ(2)に分割して,それらのエネルギー運動量テンソルをそれぞれT(1)μν,およびT(2)μνとします。
系の分割というのは,単にTμνをTμν=T(1)μν+T(2)μνと2つに分けることを意味します。
Tμνを2つに分ける方法は無数にあるので,それらに応じて系を2つの閉じていない系に分割する仕方も無数にあります。
例えば閉じた全系Σが帯電体である場合,T(1)μνに物質の力学的エネルギー運動量テンソルを,T(2)μνに電磁エネルギー運動量テンソルを振り分ける方法もあります。
そして,fμ≡-∂T(2)μν/∂xνによって,4元ベクトルfμを定義すると,Tμν=T(1)μν+T(2)μνであり,かつ∂Tμν/∂xν=0 なので∂T(1)μν/∂xν=-∂T(2)μν/∂xν=fμを得ます。
改めて上記のΣ(1),T(1)μνを単にΣ,Tμνと書いて任意の閉じていない系と考え,また上記のT(2)μνをSμνと書くことで一般の任意の閉じていない系(Σ,Tμν)に対して,常に∂Tμν/∂xν=fμ=-∂Sμν/∂xνと書けることがわかります。
そして,閉じてない系のエネルギー運動量テンソルTμνの時間空間成分T0k,およびTμ0の物理的意味は閉じた系の場合と同じと考えます。
すなわち,系のエネルギー密度をh,3次元のエネルギー流束密度ベクトルをS,運動量密度ベクトルをgで表わすとき,成分表示でSk=cT0kであり,gk=Tk0/c,h=T00,またはgμ=(h/c,g)=Tμ0/cと考えます。
しかし,以前には成立していた微分形の運動量保存式∂gi/∂t+∂Tij/∂xj=0 ,およびエネルギー保存式∂h/∂t+divS=0 は閉じていない系では成立しません。
今の場合は,∂Tμν/∂xν=fμによって,∂gi/∂t+∂Tij/∂xj=fi,および∂h/∂t+divS=cf0に変わります。
ただしTijは閉じた系と同じく応力テンソル,または運動量流束テンソルを表わします。
先にも述べたように,閉じた系を2つの閉じていない系に分割する仕方は無数にあるので,閉じていない系のエネルギー運動量テンソルTμνは必ずしも対称である必要はありませんが,総和(Tμν+Sμν)は閉じた系なので対称です。
Tμν-Tνμ=-(Sμν-Sνμ)が成立する必要があります。
また,先に閉じた系では,∂Tμν/∂xν=0 によって(d/dt)(∫Tμ0dV)=0 が成立するので,Gμ≡∫gμdV=(H/c,G)で定義される4つの量は時間的に一定になると述べました。
これらも今の系では∂Tμν/∂xν=fμなので,(d/dt)(∫Tμ0dV)/c=dGμ/dt=∫fμdVとなって一般に一定値ではないことがわかります。
ここで,前と同じくGは系の運動量,Hは系のエネルギーに同定されるとしています。
閉じた系では,aμを任意の定4元ベクトルとしてbν≡aμTμνとおけば,∂Tμν/∂xν=0 により∂bν/∂xν=aμ∂Tμν/∂xν=0 が成立しますから,両辺に4次元体積要素dΣ=dx0dx1dx2dx3を掛けて積分し拡張されたガウスの定理を用いると∫ΩbμdVμ=0 となります。
ここでΩは4次元領域Σの3次元境界を示しています。
そこで,(3+1)次元空間の任意の2つの慣性座標系をS,およびS'とし,S系のx0=一定で定義される超平面Ω1とS'系のx'0=一定で定義される超平面をΩ2として対象とする(3+1)次元区域Σを境界Ωが超平面Ω1,Ω2,およびTμν≠0 を満たす管を含む円筒の側面の超曲面Ω3で形成されるように取ります。
このとき,側面Ω3上ではTμν=0 なので,∫Ω3bμdVμ=0 となり,上で求めた∫ΩbμdVμ=0 は,∫Ω1bμdVμ+∫Ω2bμdVμ=0 を意味することになります。
そして,この式∫Ω1bμdVμ+∫Ω2bμdVμ=0 ,および左辺の積分項は座標系の取り方によらず不変ですから,左辺第1項をS系,第2項をS'系で計算してΩ2上の事象はΩ1上の事象よりも時間的に未来であるとすれば,∫Ω1b0dV=∫Ω2b'0dV'です。
つまりaμGμ=(aμ/c)[∫Tμ0dV]=(1/c)[∫b0dV]によりaμGμ=a'μG'μとなって,これはaμGμがスカラーであることを意味します。
そして,aμは任意の4元ベクトルなので,閉じた系ならGμ≡∫gμdV=(H/c,G)も4元ベクトルであることが示されます。
しかし,これを今の閉じてない系の∂Tμν/∂xν=fμの場合で考えると,閉じた系という前提で成立した式:∂bν/∂xν=aμ∂Tμν/∂xν=0 は,今度は∂bν/∂xν=aμ∂Tμν/∂xν=aμfμなる式に変わっています。
そこで,∫ΩbμdVμ=∫Ω1bμdVμ+∫Ω2bμdVμ=0 なる式も,∫Ω1bμdVμ+∫Ω2bμdVμ=∫ΣaμfμdΣに変わり,結局∫Ω1b0dV≠∫Ω2b'0dV',つまりaμGμ≠a'μG'μです。
すなわち,今の場合aμGμがスカラーではなくなるので,閉じてない系ではGμ≡∫gμdV=(H/c,G)は4元ベクトルではないという結論が得られます。
また,角運動量はMμν=∫(xμgν-xνgμ)dVで定義されますが,これも時間の関数であり閉じた系では∂Tμν/∂xν=0 ,およびTμν=Tνμの成立から(∂/∂xλ)(xμTνλ-xνTμλ)=Tνμ-Tμν=0 なる等式が得られました。
しかし,今の閉じていない系:∂Tμν/∂xν=fμの場合には,これは(∂/∂xλ)(xμTνλ-xνTμλ)=xμfν-xνfμ+Tνμ-Tμνに変わり,右辺は一般にゼロとはなりません。
さらに,これを全物理空間で積分するとdMμν/dt=∫(xμfν-xνfμ+Tνμ-Tμν)dVとなります。
したがって角運動量保存の運動方程式をdMμν/dt=∫dμνdVと書き,右辺を力のモーメント(力能率)と考えると,その密度dμνはdμν=xμfν-xνfμ+Tνμ-Tμν=xμfν-xνfμ+Sμν-Sνμとなるべきであるということになります。
このdμνの空間成分dijは通常の軸性ベクトルとしての力のモーメント部分∫(x×f)dVの他に,余計なゆがみ項∫(Sij-Sji)dVを持っています。
さらに閉じていない系では質量中心,つまり"重心=慣性中心"は物理的に重要な概念ではないことを示すことができます。
ニュートン力学では密度がμ=μ(x,t)で与えられるような物理系の"重心=慣性中心,または質量中心"の座標ベクトルはX≡(1/M)∫μ(x,t)xdVによって定義されます。
ただしMは全質量でM=∫μ(x,t)dVです。
ところが相対性理論の力学では,慣性系Sにおいて,密度μはエネルギー密度hとμ=h/c2なる関係で結びついています。
そして質量中心の座標(位置ベクトル)Xは準拠とする系Sに依存して異なります。
そこで,Sに固有の重心の位置ベクトルをX(S)と書けば,X(S)=(1/H)∫h(x,t)xdV=(1/G0)∫xg0dVとなります。
両辺をtで微分すると,質量中心の移動速度)の式が得られ,dX(S)/dt=(1/G0){(d/dt)∫xg0dV}-(1/G0)2(dG0/dt)(∫xg0dV) =-{X(S)/G0}∫f0dV+(1/G0){(d/dt)∫xg0dV}となります。
ところが,角運動量保存の運動方程式dMμν/dt=∫(xμfν-xνfμ+Sμν-Sνμ)dVから,dMko/dt=(d/dt)[∫(xkg0-x0gk)dV]=∫(xkf0-x0fk+Sk0-S0k)dVです。
質量中心の速度を示す上式の右辺では,さらに(d/dt)(∫xkg0dV)=∫{d(x0gk)/dt}dV-∫(xkf0-x0fk)dV+∫(Sk/c-cgk)dVとなります。
そして,∫{d(x0gk)/dt}dV=cGk+∫x0fkdV-x0∫(∂tkj/∂xj)dV=cGk+∫x0fkdVとなりますから,結局,dX(S)/dt=c2G/H-cX(S)(∫f0dV)/H-c(∫xf0dV)/H+c{∫(S/c-cg)dV}/Hです。
この式は,閉じた系の場合には,g=S/c2であることもあってdX(S)/dt=c2G/Hと簡単になり,X(S)の移動速度はc2G/Hと一定だったのですが,今の閉じていな系の場合のX(S)の速度ははるかに複雑に変動します。
これでは物理系を代表する点としての"質量中心=重心"の価値は非常に狭い範囲に限られてしまうと思われます。
そして,閉じた系では固有質量中心とは物体の静止座標系における質量中心のことでした。
閉じていない系でも時刻ごとに異なるとしても系のある時刻の静止系では質量中心となるような系の代表点を定義できるかどうかが詳しく研究され,上のような定義からでは,こうした代表点を一義的に決めることが不可能であることがわかっています。
実は,閉じた系においてさえ,如何なる時刻でもその時刻の静止系での質量中心となり得る点が無数に在ることがわかっています。
既に以前に定義した固有質量中心がX(S0)の静止系S0において,その固有中心のまわりの"相対角運動量=内部角運動量"をm0とすると,一定角速度ω0≡M0c2m0/(m0)2で固有中心のまわりを回転する円板上の任意の点Pの中心からの動径をaとすれば,Pの回転速度vはv=ω0×a={M0c2/(m0)2}(m0×a)となり,(v×m0)/(M0c2)=aとなります。
これを,以前の座標系による質量中心の位置の差の公式:X(S)-X(S0)=(v×m0)/(M0c2)と比較すれば,X(S)=X(S0)+aとなることがわかり,確かに円板上の任意の点PはS0に対するP自身の速度vで運動する座標系Sにおいての質量中心になることがわかります。
閉じた系でもそうなのですから,閉じてない系での質量中心の多義性はなおさらです。
そこで閉じていない系でのニュートン的重心を相対論へと一義的に拡張できるのは,外力fμが非常に特別な性質を持つ場合に限られます。
しかし,後述の予定ですが,これには唯一重要な例外があります。
それは,外力が重力で対象とする系が十分小さい場合です。このときにはニュートン的重心の性質を全て保有した固有質量中心を一義的に定義することが常に可能になります。
短かいですが今日はここで終わります。
参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)
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