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2008年12月14日 (日)

超弦理論(9)(タキオン(続き)と重力子の散乱振幅)

超弦理論(superstring theory)の続きです。

さて,前回までにM個の外粒子が全てタキオンである場合のM点散乱振幅がA=κM-2∫Πl=4M2lΠj=4M|zj|-k1kj/2Πi<l|1-zj|-k2kl/2Π4<i<j≦M|zi-zj|-kikj/2なる形となり,特にM=4の4点散乱振幅の場合はA=κ2∫|z4|-k1k4/2|1-z4|-k2k4/224となることを示しました。

しかし,一見したところこのVirasoroによって初めて導入された4点散乱振幅の形式では,これが明白な交叉対称性を持つこと,すなわち運動量k1,k2,k3,k4の置換の下での対称性を持つことが明らかではないことに気づくはずです。

ただ,この振幅では外タキオンの全てが質量殻kj2=-8(j=1,2,3,4)の上にあるときに限っては,運動量k1,k2,k3,k4を置換してみることで直接的に振幅が交叉対称であることを確かめることができます。

これはタキオンの質量を決定するための1つの方法として役立てることができます。この方法は弦の作用を量子化する定式化から得られるものと同じ結果を与えます。

 

この重要な点を理解するより明快な方法は,式A=κM-2∫Πj=1M2jΠi<l exp{-(1/2)kjlG(zj,zl)}に戻ることです。これは,まだ望ましくないSL(2,)多様体上の積分を含むので,このまま受容することはできませんが,明白に交叉対称性を見て取れます。

この式からA=κ2|z4|-k1k4/2|1-z4|-k2k4/224を導く際の重要なステップはSL(2,)ゲージ固定でした。

 

そして,SL(2,)対称性が本当に正しいならA=κM-2∫Πj=1M2jΠi<l exp{-(1/2)kjlG(zj,zl)}は確かに交叉対称です。

そこでA=κ2|z4|-k1k4/2|1-z4|-k2k4/224が交叉対称なことを確かめるためにSL(2,)不変性にアノマリー(anomaly)がないことを確かめる必要があります。

SL(2,)対称性の1つの側面は積分された頂点演算子:V=∫d2σexp{-ikX(σ)}がSL(2,)不変であるべきことです。

 

結局のところ,SL(2,)は単に世界面の再パラメータ化の特殊な場合です。そして,世界面のどこかからの弦の放出,または吸収の振幅を記述するV自身も再パラメータの下で不変であるべきです。

SL(2,)変換の特別な場合の1つは,世界面の大域的な再縮尺(global rescaling):z →tz(あるいは無限小的にはδz=bzによるz →z+δz=(1+b)z)です。

 

こうしたscalingで積分測度:d2σ,またはd2zは因子t2を拾い上げるので,V=∫d2zexp(-ikX)においてexp(-ikX)がt-2を持って変換する場合にのみVが不変で有り得ることになります。

 

これは重力場の演算子exp(-ikX)が次元2の演算子であるべきことを意味します。

しかし,一見したところ,これは不可能に見えます。

 

なぜならゲージ固定された弦の作用S=-(T/2)∫d2σ[ημνηαβαμβν]の大域的スケール不変性(glabal scale-invariance)はXμが無次元であることを要求し,それゆえ古典的意味では無次元であるべきだからです。

唯一の望みは,演算子exp(-ikX)の中の適当な量に"異常次元=アノマリー的次元(anomalous dimension)"を見出すことです。

 

自由場の理論で異常次元を見つけるというのは尋常なことではないですが,実はスピンがゼロの(1+1)次元の自由な場では本当にこれが生じます。

exp(-ikX)の異常次元を求める最速の方法は,この演算子の2点関数を調べることです。

 

一般にスケール不変な理論では次元がpを持つ演算子Yの2点関数はCを定数として,<Y(z)Y+(0)>=C|z|-2pとなるはずです。

 

一方,これまでの議論からM点振幅はA=κM-2Πi=1M∫d2i<exp{-ii(zi)}>=κM-2Πj=1M∫d2iΠi<l|zi-zj|-kjkl/2でしたから,運動量と-に対し<exp{-ikX(z)}exp{ikX(0)}>=|z|k2/2となることがわかります。

これから,exp(-ikX)は異常次元-k2/4を持つ演算子であるということが読み取れます。

 

そこで,exp(-ikX)が次元2の演算子であるべきという要求からタキオンの質量が,m2=k2=-8であるべきことが決定されます。

 

実際,m2=-8で運動量保存Σii=0 が成立するなら,M点振幅:A=κM-2∫Πj=1M2jΠi<l exp{-(1/2)kjlG(zj,zl)}が大域的スケール変換の下で不変なことを直接チェックするのも容易です。

さて,A=κM-2∫Πl=4M2lΠj=4M|zj|-k1kj/2Πi<l|1-zj|-k2kl/2Π4<i<j≦M|zi-zj|-kikj/2はタキオンのM点散乱振幅ですが,この振幅は弦理論がそれで有名な紫外部の挙動を有しています。

 

しかし,より関心があるのは同じ紫外部での卓越した挙動を有する重力子の散乱振幅を求めることです。

これもタキオンの場合と同様な方法で求めることができます。

 

すなわち,タキオンの頂点演算子:V=∫d2σexp(-ikX)を重力子の頂点演算子Vμν=∫d2σαμανexp(-ikX)で置き換え,他には上の計算を繰り返すだけです。

 

これに含まれる代数はタキオンにおけるそれよりもはるかに複雑ですが,もしも点粒子で重力場の理論ができたとして予想される"重力子・重力子散乱"の計算よりもはるかにやさしいはずです。

実際の"重力子・重力子散乱"の具体的計算については後章に譲ります。そこでは完全に矛盾がなくタキオンもない超弦理論のより興味深い計算さえ実行する予定です。

 

ここでは単にこれまでの知見だけで推測可能な重力子の質量の決定を試みます。

タキオンの質量と同様,重力子の質量は積分された頂点演算子に大域的スケール不変性を要求することから決まります。

 

これは,Wμν≡(∂αμαν)exp(-ikX)が次元2を持つことに相当します。

 

タキオンの場合との違いは既に存在する2つの微分のために,Wμνは古典レベルで既に次元2を持っているということです。それ故,この場合にはexp(-ikX)に異常次元があろうと,それはゼロであることが求められます。

以前と同じようにexp(-ikX)は異常次元-k2/4を持ちますから,これの次元がゼロであるという要求はk2=0 ,つまり重力子の質量がゼロであるべきことを意味します。

 

これは確かに弦理論が質量のないスピン2の粒子を生ぜしめることを理解する最も有効な手法の1つです。

同様に,VD=∫d2σαμαμexp(-ikX)を持つディラトン(dilaton)やVA=∫d2σεαβαμβμxp(-ikX)を持つ反対称テンソルの粒子もまた質量がゼロであると見ることができます。

 

これは閉弦理論での質量がゼロの粒子のリストを完成させます。何故なら,この他には次元が2の適切な演算子は存在しないからです。

他の可能な頂点演算子は正の平方質量を持つ粒子に対応します。

 

例えば,頂点演算子がVTμνλσ=∫d2σαμανβλασexp(-ikX)を持つスピン4の粒子はm2=+8の質量を持つ必要があることになります。

重力子が質量を持たないということは,歴史的にもそうであったように上述の議論の中でも驚くべき事情によって出現しました。

 

この議論の中のどこにも重力子がゲージ不変な方法で結合するという予想を正当化する如何なる根拠をも与えるものはありません。

 

しかし,これは質量がゼロでスピンが2の粒子の矛盾のない理論を構成する数少ない可能な方法の1であるという理由で真であろうという推測することはできます。

実際,一般共変場理論において一般共変性から引き出される,それへのワード・高橋恒等式(Ward-Takahashi identity)のアナロジーの出現を示すことはむずかしくありません。

最初に場の理論におけるワード恒等式(Ward identity)の性質を思い起こすことにしましょう。QEDにおいて分極μ12,..,μMのM個の外光子に対するM点関数Aμ1μ2..μM(k1,k2,..,kM)を考えてみます。

QEDにおいては,もしもこの光子(photon)の少なくとも1つが縦の分極を持つように取られるとき,この振幅の寄与は質量殻外(仮想光子過程)でさえゼロです。

 

つまり,例えば粒子1の添字μ1を取ればkμ1μ1μ2..μM(k1,k2,..,kM)=0 ですね。

これがどのように証明されるかを思い起こすのは教育的です。

 

光子のM点関数はカレント相関関数で書かれます。

 

すなわち,Aμ1μ2..M(k1,k2,..,kM)=∫d4142..d4M exp(-Σikii)<T(Jμ1(x1)Jμ2(x2).JμM(xM))>です。

 

ここにJμは電磁カレント,Tは"時間順序積(time-orderd product)=T積(T-product)",<,>は真空期待値です。

そして,電磁カレントは保存されるので<T(∂μ1μ1 (x1)Jμ2(x2)..JμM(xM))>=0 ですが,電磁カレントは自分自身と交換するためT積から微分を取り出して,0=∂μ1<T(Jμ1 (x1)Jμ2(x2)..JμM(xM))>を得ます。

 

この方程式を,Aμ1μ2..μM(k1,k2,..,kM)=∫d4142..d4M exp(-Σikii)<T(Jμ1(x1)Jμ2(x2)..JμM(xM))>に代入して∂μ1を部分積分するとワードの恒等式:kμ1μ1μ2..μM(k1,k2,..,kM)=0 に到達します。

非可換ゲージの場合にはワード恒等式の構造はより複雑です。

 

大雑把に言えば電磁カレントはYang-Mills current:Jμαに置き換えられます。それはなお保存されますが互いに交換はしません。

 

従って微分∂μ1をT積から除こうとする際に同時刻交換子を巻き込んだ余分の項を拾い上げます。

 

そこで1つの縦分極ベクトルを持ったM点関数は質量殻の外でゼロにはなりませんが,縦分極を持つ外グルオンが他のそれの1つと縮約されたある非物理的(M-1)点関数によって表現されます。

これら(M-1)点関数も質量殻外で消えることを示すためにさらなる解析が要求されます。以下では弦理論では,どのようにしてワードの様な恒等式が生じるかの基本的考え方をスケッチします。

まず,運動量kμと分極ξμνを持つ外重力子のM点振幅はA=κM-2∫D(x,y)exp[{1/(2π)}∫d2x(∂αμβμ)]{Πi=1MΛi(i)}=κM-2<Πi=1MΛi(i)>のVΛにVΛ=∫dzdz*μν(∂Xμ/∂z)(∂Xν/∂z*)exp(-ikX)}を代入することによって表わされると考えられます。

ここで弦の散乱振幅,そして頂点演算子の評価式を弦世界面の複素z平面上への立体射影で表現しました。したがって積分測度はdzdz*です。

以下では,もしも分極ξμνが縦テンソル,つまりξμν=kμζν+kνζμなる一般的な縦の対称テンソル形を持つときにはこの振幅の評価式が消えることを示そうと思います。

対称ではないけれどξμν=kμζν+kνζμの右辺第1項だけ取ったξμν=kμζνの場合,振幅がゼロになることを示せば十分です。それが示されれば対称性から第2項の寄与も消えます。

 

そこでξμν=kμζνと置くと,VΛ=∫dzdz*{kμζν(∂Xμ/∂z)(∂Xν/∂z*)exp(-ikX)}=i∫dzdz*ν(∂Xν/∂z*)(∂{exp(-ikX)}/∂z)]となります。

これを部分積分して全体の発散はコンパクトな世界面にわたる積分なので消えるため,この項を捨てると頂点演算子はVΛ=-i∫dzdz*ν(∂2ν/∂z∂z*)exp(-ikX)}に帰着します。

 

ところが自由弦の伝播を支配する(1+1)次元の量子場理論の場の方程式は,今用いている共形ゲージでは単に(∂2/∂τ2-∂2/∂σ2)Xμ=0,つまり∂2ν/∂z∂z*=0 です。

そこで,A=κM-2∫D(x,y)exp[{1/(2π)}∫d2x(∂αμβμ)]{Πi=1MΛi(i)}の経路積分の内部で場の方程式を用いる資格があるなら,縦分極を持つ重力子に対しては,VΛ=0 であるという結論になります。

経路積分において運動方程式(場の方程式)を用いようと試みるのはQEDにおいては∂μμ=0 を用いる試みに相当しますから,先にワード・高橋恒等式の説明で<T(∂μ1μ1 (x1)Jμ2(x2)..JμM(xM))>=0 であることを言明したのと類似したステップです。

このステップはQEDにおいては正しいのですが,Yang-Mills理論や弦理論では事はそれほど単純ではありません。

 

特に.実際弦理論では(∂2ν/∂z∂z*)を挿入した経路積分はゼロではなく,Yang-Mills理論のワード恒等式のそれに似た同時刻交換子項が生じます。

Yang-Mills理論では,幾分技巧的な解析を用いて,もしも他の全ての外線が質量殻の上にあればこれら同時刻交換子項は消えることが証明されています。弦理論でも1つの近似によって同じ結論に到達します。

 

上記同時刻交換子項は運動変数の完全セットに依存するわけではなく単にその1つの部分集合にのみ依存します。

 

つまり,同時刻交換子項は2つの外線.例えば運動量がそれぞれki,kjの2つのみを縮約することから作られておりki+kjには依存しますがki,kjの各々に独立には依存しません。

運動変数の部分集合にのみ依存する振幅は,弦理論で質量殻上の散乱振幅が持つと知られているレッジェ様(Regge-like)の漸近的挙動を取ることができません。その結果として,同時刻交換子項はあらゆる外線が質量殻の上にあるときには消えなければなりません。

 

たった今用いた論旨は後章でこのテーマに立ち戻ったときに,より明快となる理由の故に"propagator(伝播関数)の相殺"と呼ばれます。

縦重力子の分離は基礎にある一般共変性から導かれる一般相対論における条件の1つです。

 

一般相対性理論は,分極ξμνと運動量kσを持つ重力子がk2=0 のみならず,kμξμν=0,ξμμ=0 も満たすべきことを要求します。

 

この追加条件は弦理論ではどのような形で出現するのでしょうか?

 

事の本質は頂点演算子:VΛ=∫dzdz*μν(∂Xμ/∂z)(∂Xν/∂z*)exp(-ikX)}の次元を決める際に,単に因子ξμν(∂Xμ/∂z)(∂Xν/∂z*) の次元にexp(-ikX)の異常次元-k2/4を加えたことにあります。

実は,このことは一般には正しくありません。というのも同じ点での局所演算子AとBの積A(σ)B(σ)の次元は必ずしもA,Bそれぞれの次元の和とはならないからです。

 

※(訳注10):そもそも局所演算子の積は必然的に超関数にならざるを得ないことが数学的にわかっています。(超関数関係の数学書を参照)※

 

それはABの意味を定義する際に正規順序積によって除去されねばならない演算子積A(σ)B(σ)の短距離特異性のためです。

重力子の頂点演算子の場合,A≡ξμν(∂Xμ/∂z)(∂Xν/∂z*),B≡exp(-ikX)です。そしてξμμ=0 であれば積ABが次元2をとることを妨げる演算子Aの正規順序の曖昧さから解放され,kμξμν=0 であればA(σ)B(σ)の短距離特異性から自由になるのです。これらの詳細(detail)については後章に譲ります。

こうした条件に従い,そしてk20 なら∫d2σA(σ)B(σ)は受け入れ可能な頂点演算子となります。しかし,これらの条件が満たされないなら如何なるk2に対しても共形不変な頂点演算子を作ることは不可能です。

 

これらはワード恒等式のすぐ前の議論と相まって,この定式化で如何にして弦理論が一般相対論の一般共変性から従うべき条件を再現するかを示しています。

今日はここまでにします。

 

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

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