相対論の幾何学(第Ⅲ部-2)(リーマン幾何学(2))
前に2008年12/10に書いてからずいぶん間が開きましたが相対論の幾何学シリーズの第Ⅲ部-1:リーマン幾何学(1)の続きです。
今日は平行移動,接続,そして共変微分など一般相対性理論の定式化と関連した事項を中心に話を進めていきます。
まず,いつものようにMをm次元の微分可能多様体とします。
M上のベクトル場V^≡Vμ(∂/∂xμ)はM上の関数fに対しV^:f→ V^[f]=Vμ(∂f/∂xμ)なる写像として作用し,方向微分と呼ばれる演算子です。
しかし,これのアナロジーとなるべき,一般の(p,q)型テンソルの方向微分なるものは存在しません。また,前に述べたリー微分LUV^=[U^,V^]もU^の微分に依存するため,いわゆる方向微分に対応するような概念ではありません。
そもそも,素朴な微積分学で学ぶm次元空間Mでの方向微分という概念とは何かということを考えることから始めましょう。
記憶に頼ると,Mの上で微分可能な関数f:M→Rがあって,これをM上の点の位置座標を意味するm次元の数ベクトルx=(x1,x2,..,xm)の関数としてf=f(x)と書くとき,座標xで表わされる点Pから座標x+dxで表わされる点QまでPQ=dxだけの変位に対するf(x)からf(x+dx)=f(x)+dfまでのfの変化dfに対して定義され,ベクトル解析でいう勾配∇f=gradfという量が方向微分係数を意味するものだったような。。。
まあ,ここでは方向微分という言葉の厳密な定義を問題にしているのではなく,共変微分という概念を発見的に導入するための伏線に過ぎませんから,ちょっとイイカゲンです。
まあ,昔から掲示板などで論じている際に,物理用語と同じように数学用語を駆使していて,特に数学屋さんからよく重箱的なツッコミが入りましたね。
これは,大体は本で調べるのを面倒がって記憶に頼って数学書で一度か二度接した聞きかじった程度の用語の定義や概念を一旦自分の頭で理解して記憶したと思っていることなどをテキトーに使う傾向があるためです。
私の場合,昔から,数学という意味では大切な厳密さやディテールを犠牲にした不完全な発言であることがわかっていて,割と軽々しく意見を主張するものですから,発言を正反対の意味に取られたりしたことも多々ありましたし,実際,私自身の勘違いもよくありましたが,そこは掲示板の短かい文章で行なう議論の限界でしょうね。
その点,いまどきの科学ブログでは,かなりディテールまで突っ込んで書くことが可能なので少しはましですね。。
ああ,また余談を長々とやってしまった。
さて,勾配∇fという量は,PQ=dxなる変位に対して,dfをベクトル∇fとdxのスカラー積として,df=∇fdxと表現できることを意味し,dxがいわゆる反変ベクトルであるなら,∇fはそれに双対な共変ベクトルを意味しますね。
∇fは,またfの変化率が最大となる向きを表わしますから,物理学ではfの勾配を∇f=gradfと表記する代わりに,記号的にdf/dxと略記してfのxによる全微分係数と同一視します。
直感的には,2次元平面上に山があって,その高さ方向をz軸として,xy平面の座標における山の高さをz=f(x,y)として,これが山の斜面の曲面を表わす方程式を与えるというような描像がわかりやすいのではないか,と思いました。
すなわち,xy平面上の点の微小変位(x,y)→(x+Δx,y+Δy)に対し,山の高さzはz=f(x,y)→z+Δz=f(x+Δx,y+Δy)=f(x,y)+(∂f/∂x)Δx+(∂f/∂y)Δyと変動します。
そこで,平面上の変位をベクトル表記でΔr=(Δx,Δy)と書き,勾配と呼ばれるベクトルを∇f≡(∂f/∂x,∂f/∂y)で定義すれば,変位に対応するfの増分ΔzはΔz=(∂f/∂x)Δx+(∂f/∂y)Δy=∇fΔrとスカラー積で表現されます。
したがって,変位Δrに対して山の高さの変化率,すなわち,傾きはΔz/|Δr|=|∇f|cosθとなります。
ここで,θは勾配ベクトル∇f≡(∂f/∂x,∂f/∂y)と変位ベクトルΔr=(Δx,Δy)のなす角です。そして,もしも変位Δrの向きが勾配∇fの向きと丁度一致すればΔz/|Δr|=|∇f|となります。
このことは,その点(x,y)では勾配∇fの向きへの変位に対する傾きが最大であり,例えば平面上のその点に対応する山の面上の点で水を流すと,水の流れる主流方向は-∇fの方向になることを意味します。
つまり方向微分,あるいは方向微分係数が∇f,またはその成分を意味するものであるというのが正しいなら,それはその点での様々な方向への微小変位に対する変化率,あるいは最大変化率を代表するものであると直感されます。
しかし一方,多様体と表題されるような数学の本で,Mが多様体の場合の方向微分は大体,次のような描像から導入されます。
すなわち,多様体M上で座標としてx=(x1,x2..,xm)を有する点P∈Mを通る任意の滑らかな曲線)をc(t)=(cμ(t))(ただしcμ(0)=xμ)とし合成関数としてf(c(t))をtの関数と見ます。
このとき"tに対するfの傾き=微分係数"を求めると,df/dt=(dcμ/dt)(∂f/∂xμ)=(dc/dt)∇fとなります。
これは,t=0 のときVμ≡(dcμ/dt)t=0として演算子V^をV^≡Vμ(∂/∂xμ)と定義すれば(df/dt)t=0=V^[f]と書けますから,先に与えた一般のベクトル場V^の演算子表記が(dc/dt)t=0∇なる演算子に一致します。
つまり,単に勾配∇というベクトル演算子ではなく,曲線x=c(t)に沿ったある向きdx=dcへの勾配∇に変動係数dcまたは(dc/dt)をも含めたスカラー演算子 (dc/dt)∇を方向微分と同定するわけです。
逆に,任意のベクトルV^=Vμ(∂/∂xμ)に対し,dcμ/dt=Vμを満たす曲線c(t)=(cμ(t))が常に存在します。
そこで,多様体の立場でV^=Vμ(∂/∂xμ)を方向微分と呼ぶのは妥当な呼称と思われます。
そして初期条件cμ(0)=xμを満たすdcμ/dt=Vμの解曲線を求めるのは,いわゆる力学系問題ですね。
さて,幾何学というよりも解析学の問題として,m次元ユークリッド空間Mにおける関数f:M→Rに対する方向微分係数∇fの概念を,Mからn次元ユークリッド空間Nへの写像f:M→N;y=f(x),x=(x1,x2..,xm)∈M,y=(y1,y2..,yn)=(f1(x),f2(x),.,fn(x))∈Nに対する概念に拡張することを考えます。
dy=df=(df1,df2..,dfn)=(∇f1dx,∇f2dx.,..,∇fndx)ですから,(∂f/∂x)を(i,j)成分が∂fi/∂xj(i=1,2,..n,j=1,2,..m)のn行m列のヤコービ行列とし,dx=(dx1,dx2..,dxm)をm成分の列ベクトルdx=t(dx1,dx2..,dxm)とすれば,df=(∂f/∂x)dxと書けるので,係数行列(∂f/∂x)を全微分係数(と同一視します。
先に方向微分と考えた関数fの勾配∇f=df/dxは,n×mヤコービ行列(∂f/∂x)のn=1,N=R (m=1)の特別な場合である,と考えれば自然ですね。
このときにも,x=c(t)に対してf(c(t))をtで微分すると,df/dt=(∂f/∂x)(dc/dt)ですから,Vμ≡dcμ/dt,かつV^=Vμ(∂/∂xμ)と置いてdf/dt=(∂f/∂x)(dc/dt)を考えるとdfν/dt=(∂fν/∂xμ)(dcμ/dt)=Vμ(∂fν/∂xμ)=V^[fν],または記号的にdf/dt=V^[f]と表現できます。
さて,一般の多様体M上のベクトル場V^=Vμ(∂/∂xμ)において,基底をeμ≡∂/∂xμとすれば,V^=Vμeμと表記できます。
そして,ベクトル場V^=Vμeμのxνに関する微分係数
は,通常はμ成分として偏微分係数の形で∂Vμ/∂xν=limΔxν→0[{Vμ(..,xν+Δxν,..)-Vμ(..,xν,..)}/Δxν]を持つということで定義されます。
しかし,この右辺の分子の第2項のVμは点x≡(xμ)で定義される量であるのに対して,第1項のVμは点x+Δx≡(..,xν+Δxν,..)で定義される量です。
ベクトルV^(x)をxからx+Δxまで座標を移動させたときに,平行移動したベクトルV^のμ成分の差というからには点xにおけるμ軸と点x+Δxにおけるμ軸が同じ軸であるか,少なくとも同じ向きである場合でなければ平行移動という意味はないと思われます。
そこで,例えばベクトルV^(x)の点xにおけるμ軸の成分Vμ(x)ではなく,点x+Δxにおけるμ軸成分を求める必要があります。そのV^(x)の点x+Δxにおけるμ軸成分をV~μ(x+Δx)と書くことにします。
このとき,2つのμ軸成分の差V~μ(x+Δx)-Vμ(x)はΔxに比例するオーダーを持ちますから,この差をCμν(V^)Δxνと書くことにします。すなわち,V~μ(x+Δx)=Vμ(x)+Cμν(V^)Δxνとします。
x,およびx+Δxで定義される任意のベクトルV^(x),W^(x)があるとき,ベクトルの和の同じμ軸成分ですから常に(V+W)~μ(x+Δx)=V~μ(x+Δx)+W~μ(x+Δx)なる線形性が成立すると考えられます。
これはCμν(V^+W^)=Cμν(V^)+Cμν(W^)を意味します。
つまり,Cμν(V^)はベクトルV^の定数項を持たない1次関数です。そこで比例係数行列の成分をV^には無関係な-Γμνλなる記号で表わせば,Cμν(V^)は結局Cμν(V^)=-ΓμνλVλなる形に書けます。
そこで,V~μ(x+Δx)=Vμ(x)-ΓμνλVλΔxνですね。
それ故,"(0,0)型テンソル=関数"fの方向微分に対応する(0,1)型テンソルV^の方向微分として,limΔxν→0[{Vμ(x+Δx)-V~μ(x+Δx)}/Δxν]なる量を共変微分という名称で定義すると,これは∂Vμ/∂xν+ΓμνλVλと書けます。
そしてVμ(x)→V~μ(x+Δx)=Vμ(x)-ΓμνλVλΔxνなる変換を平行移動と呼ぶことにします。
ただし,今のところ係数Γμνλの選び方に何の制限も与えていないので,係数Γ={Γμνλ}の1つの選択ごとに平行移動,共変微分の規則が1つ決まることになります。
しかし,多様体Mに計量(metric)が与えられている場合には,都合のよい係数Γ={Γμνλ}の選択が存在します。
すなわち,Γλνμ=Γλμνなる対称性を満たし平行移動の前後でベクトルのノルムが不変であるという2条件を満たすという規則を持つレビ-チビタ接続(Levi-Civita接続)と呼ばれるものを採用します。
以上のような直感的考察を踏まえて,まずアファイン接続(affine connection;アフィン接続)を定義します。
[定義Ⅲ.3] アファイン接続∇とは(X^,Y^)に∇XY^を対応させる1つの写像∇:X(M)×X(M)→X(M)であって次の条件を満たすものを言う。ここでX(M)は多様体M上のベクトル場の全体を指す。
満たすべき条件とは∀X^,Y^,Z^∈X(M),およびM上の任意関数fに対して,∇X(Y^+Z^)=∇XY^+∇XZ^,∇(X+Y)Z^=∇XZ^+∇YZ^,∇fXY^=f∇XY^,∇X(fY^)=X[f]Y^+f∇XY^が成立することである。
M上で座標x=φ(p)を持つチャート(U,φ)を選びm3個の接続係数と呼ばれる変数を∇νeμ≡∇eνeμ=eλΓλνμで定義します。ただし,{eμ}={∂/∂xμ}はTp(M)の座標基底です。
こうしてアファイン接続∇の基底ベクトル{eμ}への作用∇νeμ≡∇eνeμが定義されれば,∇の任意のベクトルへの作用が計算可能です。
例えばV^=Vμeμ,W^=Wμeμ∈Tp(M)に対して∇VW^=Vμ∇eμ(Wνeν)=Vμ{eμ[Wν]+Wν∇eμeν}=Vμ(∂Wλ/∂xμ+WνΓλμν)eλとなります。
右辺における因子は先に直感的に得られた共変微分と形が一致していますね。
そこで,∇μWλ≡∂Wλ/∂xμ+WνΓλμνとおけばアファイン接続∇は,2つのベクトルV^=Vμeμ,W^=Wμeμ∈Tp(M)を新しいベクトル∇VW^=Vμ(∂Wν/∂xμ+WνΓλμν)eλに移し,これのλ番目の成分がVμ∇μWλで与えられることになります。
この∇VW^はリー微分LVW^=[V^,W^]とは異なってV^の微分を含みませんから,この意味で共変微分は関数の方向微分のテンソルへの一般化になっています。
さて,次に多様体M上の任意の滑らかな曲線をc(t)=(cμ(t))とし,この曲線上の点の座標xμ=cμ(t)は点p∈Mの座標がx=φ(p)となるようなチャート(U,φ)によって与えられるとします。
そしてX^≡Xμ(∂/∂xμ)は少なくともc(t)に沿う点の上で定義されたベクトル場とします。
つまり,X^|c(t)=Xμ(c(t))eμ|c(t)とします。ここでeμ≡∂/∂xμです。
一方,c(t)によって与えられる方向微分,あるいは接ベクトルをV^=Vμ(∂/∂xμ)≡(dcμ/dt)eμ|c(t),つまりV^≡(d/dt)|c(t)とします。
このときX^|c(t)が∀tに対して∇VX^=0 なる条件を満たすならX^は曲線をc(t)に沿って平行移動されると言います。
∇VX^=0 を成分で書くと(dcμ/dt)(∂Xλ/∂xμ+XνΓλμν)|c(t)=0,つまりdXμ/dt+Γμνλ(dxν/dt)Xλ=0 となります。
特に,接ベクトルV^≡(d/dt)|c(t)と自身がc(t)に沿って平行移動される,すなわち∇VV^=0 なら曲線c(t)は測地線であると言われます。
∇VV^=0 を成分で表わすには,∇VX^=0 の成分表示dXμ/dt+Γμνλ(dxν/dt)Xλ=0 に,X^=V^の成分表示:Xμ=Vμ=dcμ/dt=dxμ/dtを代入すればよいことがわかります。
そこで,結局,座標成分で表わした測地線の方程式はd2xμ/dt2+Γμνλ(dxν/dt)(dxλ/dt)=0 で与えられるという結果を得ます。
短かいですが今日はこれで終わります。
参考文献:中原幹夫 著「理論物理学のための幾何学とトポロジー」(ピアソン・エデュケーション)
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