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2009年1月 3日 (土)

運動物質内の相対論(12)(熱力学の法則)

運動物質内の相対論の続きです。

 

今日は相対論における熱力学の記述を考察します。電磁気学ではないので本筋をはずれるようですが記事の最後で"電磁輻射=光子気体"との関連についても少し述べます。

熱力学の法則を特殊相対性理論に包含することは比較的容易です。

 

これについてはプランク(Planck)とアインシュタイン(Einstein)の仕事があります。

ここでは簡単のため,考察の対象として物体を構成する部分の如何なる面要素にも応力としては垂直な圧力のみが存在し得るような熱力学的流体のみから成る系に限定します。

まず,静止系では第一法則,第二法則など全ての通常の熱力学の形式が成立することを前提とします。

静止系では,熱力学第一法則によって状態変化を生起させる熱力学的過程での系のエネルギーE0の変化dE0はdE0=δQ0+δA0なる式で与えられます。

 

δQ0はこの過程で系に流入する熱量,δA0は系がその周囲になした仕事にマイナス符号を付けたもの,つまり外部環境から系が受ける仕事を示しています。

系の体積0の増加が無限小であるような過程は可逆過程ですが,この過程ではp0を圧力とし体積増加をdV0とすると系が受ける仕事δA0はδA0=-p0dV0で表わされます。

熱力学の第二法則によって静止系ではエントロピー0は状態量です。そして可逆変化によって定義されるエントロピー変化の定義はdS0≡(δQ0可逆)/T0=(dE0+p0dV0)/T0です。

 

(δQ0可逆)は今論じている状態変化をもたらす可逆過程で系に流入する熱量であり,T0は系の絶対温度です。

もしも状態変化が不可逆過程で生じたものなら,これに反して常にdS0>δQ0/T0が成立します。

1つの慣性系Sを考えます。その慣性系はその座標系に対して対象としている熱力学系が一定速度で走っているように見える系であるとします。

既に「運動物質内の相対論(4)(弾性連続体(2),完全流体)」で見たように,量μ0,p0,が完全流体のあらゆる位置で一定なら,系Sでの運動量密度とエネルギー密度を全体積V≡V0(1-2/c2)1/2にわたって積分することで,運動量VとエネルギーE=hVが次のように表わせることを知っています。

 

 すなわち,運動量はV={(h0+p0)V/c2}/(1-2/c2)={(h0+p0)V0/c2}/(1-2/c2)1/2={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2で,エネルギーはE=hV=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2です。

これを見ると,(E/c,)=({E0+p002/c2)/c}/(1-2/c2)1/2,{(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2})はローレンツ共変な4元ベクトルにならないことがわかります。

 

しかし,=(E+pV)/c2,E+pV=(E0+p00)/(1-2/c2)1/2なので,Gμ≡(E/c,)ではなくGμ≡((E+pV)/c,)とおけば,これらは静止質量が(E0+p00)/c2の質点のエネルギー運動量ベクトルと同じですから4元ベクトルです。

今考えている流体は静止系で平衡状態にあるので,そのエネルギー,および運動量は,それぞれE=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,および={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2=(E+pV)/c2で与えられます。

 

また,特にE+pV=(E0+p00)/(1-2/c2)1/2です。ただしp=p0,V=V0(1-2/c2)ですね。

さて,再び任意の慣性系でこの熱力学系の状態を変える同じ可逆過程を考えます。熱力学の第一法則はエネルギーの保存法則ですから任意の座標系でdE=δQ+δAと書けるはずです。

しかし,仕事δAは静止系のときのように-pdVではありません。なぜなら運動系では速度に伴なう系全体の運動量や運動エネルギー等があるため過程においてそれらに生じる変化をも考慮する必要があるからです。

 

系の平衡を保つため,つまり速度が物体のいたるところで一定であるためには普通の圧力の他に外力の存在を仮定しなければなりません。

S系において物体中でを一定に保つに必要な力=d/dt={(/c2)/(1-2/c2)1/2}(d/dt)(E0+p00)です。

 

そして,右辺は今想定している熱力学過程の間でゼロではないので,物体系の速度が一定に見えるためには,S系では物体に作用する外力の存在が必要なのです。

 

このは時間dtに(Fu)dt=だけ仕事をします。したがって,この系が受ける仕事は全体でδA=-pdV+となります。

そこで,E=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2によって熱力学の第一法則dE=δQ+δAはδQ=dE+pdV-となります。

 

したがって,δQ={dE0+(2/c2)d(p00)-(2/c2)d(E0+p00)}/(1-2/c2)1/2+p0dV0(1-2/c2)1/2=(dE0+p0dV0)(1-2/c2)1/2なる式を得ます。

 

静止系では,dE0=δQ0+δA0=δQ0-p0dV0よりδQ0=dE0+p0dV0ですから,これはδQ=δQ0(1-2/c2)1/2であること意味します。

さて,任意の座標系でもエントロピーSと絶対温度Tの関係をdS≡(δQ可逆)/Tで定義します。

 

ところで,ある特定の座標系に静止している熱力学系を,その内部状態を変えないように,系全体の速度がになるまで断熱可逆的に加速すろとき状態量の変化はdS≡(δQ可逆)/Tを満たします。

 

断熱ですからこの過程中にはδQ可逆=0 ⇔ dS=0 です。つまり,静止系からS系に慣性系を乗り換えても,エントロピーは一定のままである必要があります。

つまり,内部状態が一定のとき,この系のエントロピーはその全体としての速度に無関係です。エントロピーはS=S0でローレンツ不変量です。

 

まあ,早い話,純粋に力学的な回転やブ-ストは可逆過程で,かつ断熱過程なのでエントロピーは変化しないのですね。

というわけで,dS=dS0です。dS≡(δQ可逆)/T,dS0≡(δQ0可逆)/T0,δQ=δQ0(1-2/c2)1/2ですから,T=T0(1-2/c2)1/2なる絶対温度の変換式が得られます。

 

これは,状態の不可逆的変化が静止系と同じく,あらゆる座標系でdS>δQ/Tを満たすこととも矛盾しません。

一般的な系でエネルギーと運動量の保存則を微分形式で表現すると,既に閉じていな系の一般論で述べたように,これは∂Tμν/∂xν=fμで与えられることがわかっています。

 

ただし,Tμνは系のエネルギー運動量テンソルを表わし,fμは4元力密度を示しています。∂Tμν/∂xν=fμは,熱力学においては第一法則そのものを表わしています。

 

一方,第二法則を4次元形式で表現することも可能です。

エントロピーが加法性を持つことから,エントロピー密度sを定義することができます。

 

エントロピーの変換公式S=S0と体積のそれV=V0(1-2/c2)1/2から,sΔV=s0ΔV0により,容易に密度sの変換性を求めることができます。明らかにs=s0/(1-2/c2)1/2ですね。

さて,無限小時間dtを考えて,この間に微小体積ΔVに熱量δQが流入したとします。

 

このとき,体積ΔV内のエントロピー変化dS=d(sΔV)は,クラウジウスの不等式:{d(sΔV)/dt}dt≧δQ/Tを満たすはずです。

 

ところが,既にd(sΔV)/dt=(ds/dt)ΔV+s(dΔV/dt)=(∂s/∂t+grads)ΔV+sdivΔV={∂s/∂t+div(s)}ΔVと書けることを知っています。

そこで,電荷Qに対する4元電流密度Jμと同じように,エントロピーの4元流密度をSμ≡(s,s/c)で定義すると,上で得られたd(sΔV)/dt={∂s/∂t+div(s)}により,{d(sΔV)/dt}dt≧δQ/Tは,(∂Sμ/∂xμ)d∑≧δQ/Tと書けます。

 

ただし,d∑≡cΔVdtですが,これは4次元の不変体積要素を示しています。

δQ=δQ0(1-2/c2)1/2,およびT=T0(1-2/c2)1/2によってδQ/Tはスカラーですから,結局,第二法則のローレンツ共変な4元形式は(∂Sμ/∂xμ)d∑≧δQ0/T0となります。

さて,次にN個の単原子分子から成る理想気体を考えます。

 

これは静止質量がm0の分子の平均の運動エネルギーが静止エネルギーm02に比べて小さい場合には静止系でのエネルギーやエントロピー等に関し通例となっている状態方程式がわかっています。

 

すなわち,kB0/m02<<1のとき,理想気体の状態方程式はp00=NkB0です。kBはボルツマン定数(Boltzmann constant)です。

静止系での気体の総エネルギーはE0=Nm02+(3/2)NkB0です。E0はT0=0 のときにエネルギーE0が分子の静止エネルギーとなるように規格化されています。

 

これとp00=NkB0,およびdS0=(dE0+p0dV0)/T0からdS0=(3/2)NkBdT0/T0+NkBdV0/V0と書けます。

 

これを積分すると静止系でのエントロピーの表式は良く知られたS0=(3/2)NkBlnT0+NkBlnV0+Cという形になります。なお,右辺のCはT0,V0に依らない積分定数です。

この理想気体の系が一定の巨視的速度を持つように見える座標系においても,p=p0,V=V0(1-2/c2),T=T0(1-2/c2)ですからp00=NkB0はそのままpV=NkBTを意味します。

 

よって,気体の状態方程式の形は慣性座標系によらず不変であるとわかります。

一方,既に見たようにE=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2=(E+pV)/cです。

 

それ故,E=Nm02/(1-2/c2)1/2+(3/2+2/c2)NkBT/(1-2/c2),=Nm0/(1-2/c2)1/2+(5/2)NkB/(c22),S=(3/2)NkBlnT+NkBlnV-(5/2)NkBln(1-2/c2)1/2+C,なる変換のセットを得ます。

既に過去記事で述べたように,完全流体のエネルギー運動量テンソルはTμν0+p0/c2)Uνν-p0ημνで与えられることがわかっています。

 

ただしμ0=E0/(c20)=n0{m0++(3/2)kB0/c2}は静止系での密度で圧力はp0=n0B0を満たします。n0≡N0/V0は静止系での分子数密度です。

したがって,静止系での圧力p0,密度μ0,温度T0の間にはp0=μ0B0/{m0++(3/2)kB0/c2}なる関係があることがわかります。

 最後に黒体輻射の話をします。

空洞内に閉じ込められて空洞の壁とある温度で平衡状態にある電磁輻射は完全流体として扱うことができます。

空洞の壁が静止している座標系では"電磁輻射=光子気体"の巨視的な流れはいたるところゼロです。つまり統計熱力学の対象としては輻射される電磁波の統計平均としての速度は静止系では方向性がないのでゼロなのですね。 

そして,輻射のエネルギー密度h0はステファン・ボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則によって,h0=a(T0)4で与えられます。

 

ただし,aはステファン・ボルツマン係数でa~7.6237×10-15 erg/(cm3.deg4)です。密度h0は空洞の体積によらない量です。

また,面に垂直に及ぼされる輻射圧は,p0=h0/3=a(T0)4/3=μ02/3で与えられます。

 

また,輻射の全エネルギーE0はE0=h00=aV0(T0)4と表わされるので,dS0=(dE0+p0dV0)/T0に代入すると,dS0=4aV0(T0)2dT0+(4a/3)(T0)3dV0=(4a/3)d{V0(T0)3}を得ます。

 

そこで,これを積分してV0=0,T0=0ではS0=0 となるように,積分定数を選べば,S0=(4/3)aV0(T0)3が得られます。

したがって,この空洞容器の固定された系が速度で運動しているように見える座標系では,E=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2=aV0(T0)4{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)1/2=aVT4{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)です。

 

また,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2={(4/3)aV0(T0)4/c2}/(1-2/c2)1/2となります。

 

エントロピーはスカラーなので,S=S0=(4/3)aV0(T0)3=(4/3)aVT3/(1-2/c2)3ですね。

そこで,この輻射のエネルギーEと運動量を,E0,の関係として表わせばE=E0{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)1/2,={(4/3)E0/c2}/(1-2/c2)1/2となります。

 

これらは前に古典電子模型として論じた球対称な静電系の運動系での表式と完全に一致しています。これで,取り合えず,熱物理学の話と電磁気学の話が結びつきました。

今日はここで終わります。 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

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コメント

はは(笑)。。
中村匡さんはプラズマ関連の専門物理学者で、私は一介の電気屋でしかありません。
冗談にしても同一人物と言われるのは光栄のかぎりです。

私もアンルー効果について勉強したことがあるので、そう言われればそうなのかもしれませんね。

投稿: T_NAKA | 2009年1月 5日 (月) 08時53分

 どもT_NAKAさん。。コメントありがとうございます。TOSHIです。

 紹介のホームページを見ました。。これT_NAKAさん本人じゃないですよね。^^);

 難しいといえば相対論抜きでも熱力学はむずかしいですが相対論的熱力学については当人やそのまわりの方たちが知らないだけだと思いますよ。

 まあ普通の物理屋だと知る必要もない分野ではありますが

 一応私の記事は恐らく正統派のメラーの受け売りなのでアインシュタイン自身もからんでいて巷のトンデモさんよりはましだと思います。いや読みもしないのにくだんの論文がトンデモという意味ではなくてこの記事程度の基本事項については問題ないと思います。

 もしも特殊相対論で熱物理,統計物理がまだ解明できていないのなら一般相対論のブラックホールでのホーキング輻射などと関係したブラックホールの蒸発やエントロピーなどについて論じられるはずもないので,宇宙論関係の研究者ならきっと非常によく知っているというのが本当のところではないでしょうか。。

 まあ相対論関連の擬似パラドックスについては枚挙にいとまがないので熱力学でもそうした困難はあるには違いないでしょうけど。。。

          TOSHI

投稿: TOSHI | 2009年1月 4日 (日) 19時48分

どうも、記事内容に言及する力は持っていませんが、次の記事を読むと「相対論的熱力学」というのは色々難しいようですね。
http://mira.bio.fpu.ac.jp/tadas/cgi-bin/blxm/blosxom.cgi/081221.htm
ちょっと、面白そうな記事だったので、ご参考までに。

投稿: T_NAKA | 2009年1月 4日 (日) 18時43分

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