束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(2)
ベーテ・サルピーター方程式(B-S.eq.)の続きです。
さて,前記事では運動量表示の4点グリーン関数:G(p,q,P)が"ベーテ・サルピーター方程式=B-S.eq."と呼ばれる一般的な積分方程式に従うことを見ました。
この運動方程式の具体形は[⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)]-1G(p,q,P)=δ4(p-q)+(2π)-4∫d4p'I(p,p';P)G(p',q;P)です。
特にK(p,q;P)≡[⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)]-1δ4(p-q)とおけば,これはKG(p,q;P)=(1+IG)(p,q;P)) (1(p,q)≡δ(p-q)),略してKG=1+IGと表現されます。
そして,x≡xa-xb,y≡-ya+yb,X≡ηa(xa-ya)+ηb(xb-yb))とおくと,位置表示のグリーン関数はG(xa,xb;ya,yb)≡<0|T(φ(xa)φ(xb)φ+(ya)φ+(yb))|0>=(2π)-12∫d4pd4qd4Pexp{-i(px+qy+PX)}G(p,q;P)と表わされます。
位相因子:exp{-i(px+qy+PX)}は,exp[i{-(ηaP+p)xa-(ηbP-p)xb+(ηaP+q)ya+(ηbP-q)ya}]とも書けます。
そこで,2体散乱a+b→a+bに対するグリーン関数の運動量表示G(p,q;P)では,ηaP+q,ηbP-qが入射粒子a,bの4元運動量であり,-(ηaP+p),-(ηbP-p)が散乱粒子a,bの標的に向かう向きの4元運動量であると考えられます。
そこで,a+b→a+bの全ての4元運動量を標的に向かう向きを正に取って,順にp1,p2,p3,p4とすると,p1=ηaP+q,,p2=ηbP-q,p3=-(ηaP+p),p4=-(ηbP-p)と書けます。
それ故,これらp1,p2,p3,p4で定義される散乱のs,t,uチャンネルのエネルギー変数s≡(p1+p2)2,t≡(p1+p3)2,u≡(p1+p4)2は,s=P2,t=(p-q)2,u={(ηa-ηb)P+p+q}2です。
そして,4元運動量の保存則(p1+p2+p3+p4)μ=0 (μ=0,1,2,3)による拘束があるため,これらs,t,uの3変数のうち独立なものは2つだけなので,以下では散乱に関わる物理量は,uを消去してs,tのみの関数であると考えます。
また,v≡p12=(ηaP+p)2,w≡p22=(ηbP-p)2,v0≡p32=(ηaP+q)2,w0≡p42=(ηbP-q)2と置きます。
ma,mbをそれぞれ粒子a,bの質量とすれば,v=v0=ma2,w=w0=mb2です。
このとき,ファインマン振幅(Feynman amplitude)F(p,P)は,v0=ma2,w0=mb2における-(G-K-1)の留数,散乱振幅は,G-K-1のv=v0=ma2,w=w0=mb2における留数に等しいことがわかります。
※訳注:上記の文の意味するところがやや不明なので.ちょっと考察しました。
一般にファインマン振幅というと不変散乱振幅のことを指すと思っていましたが,ここでのF(p,P)という表記を見ると,どうも不変散乱振幅という意味とは違うようなので調べてみました。
色々と所持している文献を調べていると,洋書ですがNishijima(西島和彦)氏の著書「Fields and Particles」にやっとそれと思われる記述を見つけました。
珍しく,この本にはB-S.eqのことも載っていましたが,正にそれを紹介する項目の場所にFeynman amplitudeの記述がありました。どうもF(p,P)はa,bの2粒子波動関数を示すような概念のようです。
この西嶋氏の書いた本のChapter.7(第7章)は"Green's functions and bound states(Green関数と束縛状態)"なる表題ですから,私のこの記事と同じテーマであって,かなり詳しいです。
これはいいものを見つけたと思いました。ひょっとしたら,かなり参考になると思います。
特に,通常の量子力学と場の理論の中間的な散乱理論において有名なLippmann-Schwinger(リップマン・シュヴィンガー)方程式を上記のFeynman-amplitudeに適用して束縛状態を記述できる"南部陽一郎による方程式"が解析されており,Bethe-Salpeter方程式の解析に非常に似ていました。
さて,一般にn個の自由な入射スカラー粒子|αin>≡a1in+(q1)..anin+(qn)|0>が散乱されて,結局はm個の自由なスカラー状態|βout>=a1out+(p1)..amout+(pm)|0>になる散乱過程のS行列(散乱行列)の行列要素は,Sβα≡<βout|αin>=<0|amout(pm)..a1out(p1)a1in+(q1)..anin+(qn)|0>で定義されます。
時間発展のユニタリ演算子U(t,t0)に基づく散乱のS演算子:S≡U(∞,-∞)はS行列要素Sβα≡<βout|αin>がSβα=<βin|S|αin>と表現できるように,<βout|=<βin|Sなる状態のユニタリ変換を与える作用として定義されます。
ただし,真空状態|0>に対しては,もちろんS|0>=|0>,かつ<0|S=<0|です。
|αin>は真空状態|0>に幾つかのain+を,|βout>は真空状態|0>に幾つかのaout+を作用させたものです。
ain+とaout+はユニタリ同値な自由粒子の生成演算子ですね。
これら粒子ごとの量子数を指定した運動量の固有状態を与える演算子ain,ain+,およびaout,aout+は,ハイゼンベルク表示の粒子場φ(x)において,t→-∞,およびt→∞の極限でのそれの自由な漸近場φin(x),およびφout(x)の展開表現:φin(x)=∫d3p[ain(p)fp(x)+ain+(p)fp*(x)],およびφout(x)=∫d3p[aout(p)fp(x*)+aout+(p)fp*(x)]での自由平面波fp(x)=C(p)exp(-ipx),fp*(x)=C*(p)exp(ipx)による展開係数を表わすものです。
fp(x),fp*(x)は自由スカラー波ですから,その粒子の質量がmの場合,クライン・ゴルドン方程式:(□+m2)fp(x)=(□+m2)fp*(x)=0 を満足します。
これらのことから,S演算子:S≡U(∞,-∞)はハイゼンベルク表示の場のユニタリ変換:φout=S+φinS,φout+=S+φin+S,またはaout=S+ainS,aout+=S+ain+Sを与える演算子として定義することもできることがわかります。
ところで,通常の量子力学のポテンシャル散乱の問題で,散乱境界条件を満たす状態の波動関数はψ(r,θ)=exp(ikz)+f(k2,cosθ)exp(ikr)/rなる形で表わされますが,この表現の右辺第1項exp(ikz)は入射粒子の状態を変えないで素通りしていく前方散乱に相当していて,一般に散乱問題を考える際には除外されます。
これと同様,相対論的な散乱でも,S演算子をS=1+iT,S行列要素をSβα≡<βout|αin>≡<βin|S|αin>=δβα+iTβα (Tβα=<βin|T|αin>)として,1 またはδβαで表わされる前方散乱項を分離して考察します。
このとき,Tβαは,さらにTβα=(2π)4δ4(Pβ-Pα)Mβαなる形に書けますが,このMβαを不変散乱振幅と同定するのが通常の定式化です。
ここで,S=1+iTなる分割表現で,Tにわざわざ純虚数の係数iを付けているのは,単にSのユニタリ性がS+S=1-i(T+-T)=1を意味するので,T+=T,つまりTのエルミート性がSのユニタリ性を保証する形になるようにするためです。
以前のレッジェ理論のシリーズ記事では2体散乱での不変散乱振幅をA(s,t)と書き,sチャンネルでは,これがA(s,t)=s1/2f(k2,cosθs)と表現されることを見ました。
2体弾性散乱a+b→a+bにおいて,クライン・ゴルドン演算子をKxa≡□+ma2,Kxb≡□+mb2で定義し,S行列を摂動展開する理論的公式であるLSZの簡約公式(LSZ-reduction formula),またはHaag-GLZの公式をくりこみ定数因子を省略して陽に書くと次のようになります。
i<βin|T|αin>=<βin|S-1|αin>=i4∫d4xbd4xad4yad4ybf-p4*(ya)f-p3*(xa)fp1(xb)fp2(yb)KxaKxbKyaKyb<0|T(φa(xa)φb(xb)φa+(ya)φb+(yb))|0>=i4∫d4xbd4xad4yad4ybf-p4*(ya)f-p3*(xa)fp1(xb)fp2(yb)KxaKxbKyaKybG(xa,xb;ya,yb)です。
※ちなみに,LSZとはH.Lehmann(レーマン),K.Symanzik(ジマンチック),W.Zimmmermann(ツィンマーマン)のことで,Haag-GLZのHaagはR.Haag,GはV.Glaserです。※
ここで,前記事でも見たように,4点グリーン関数GはG(xa,xb;ya,yb)=(2π)-12∫d4pd4qd4Pexp{-i(px+qy+PX)}G(p,q;P),ただし,exp{-i(px+qy+PX)}=exp[i{-(ηaP+p)xa-(ηbP-p)xb+(ηaP+q)ya+(ηbP-q)ya}]=exp{i(p3xa+p4xb+p1ya+p2yb)}とフーリエ積分で表現されます。
このとき,運動量表示でのG(p,q;P)に対するB-S.eq.の具体形はG(p,q,P)=δ4(p-q)⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)+⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)(2π)-4∫d4p'I(p,p';P)G(p',q;P),または[⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)]-1G(p,q,P)=δ4(p-q)+(2π)-4∫d4p'I(p,p';P)G(p',q;P)であることも既に見ました。
一方,クライン・ゴルドン演算子:Kx≡□+m2の運動量表示はKa=-pa2+ma2,Kb=-pb2+mb2なので,i<βin|T|αin>=i4∫d4xbd4xad4yad4ybf-p4*(ya)f-p3*(xa)fp1(xb)fp2(yb)KxaKxbKyaKybG(xa,xb;ya,yb)=(-i)4(2π)4δ4(p1+p2+p3+p4)(p12-ma2)(p22-mb2)(p32-ma2)(p42-m2)G(p,q,P)となります。
つまり,i<βin|T|αin>=(-i)4(2π)4δ4(p1+p2+p3+p4)KaKbKaKbGと書けます。
一方,B-S.eq.をK(p,q;P)≡[⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)]-1δ4(p-q)を用いて表現すると,G=K-1+K-1IG,またはKG=1+IGです。
このG=K-1+K-1IGの第1項K-1,またはδ4(p-q)⊿Fa'(ηaP+p)⊿Fb'(ηbP-p)の部分は,自己エネルギーの衣を着た自由粒子の部分です。
これらにクライン・ゴルドン演算子Ka=-pa2+ma2,Kb=-pb2+mb2を掛けると,これは当然1,またはδ-関数になります。
そこで,これらKa,Kbを2つずつ掛けた積,すなわちKaKbKaKbを第1項K-1に掛けると,これの寄与はゼロですから,KaKbKaKbG=KaKbKaKb[K-1+(G-K-1)]=KaKbKaKb(G-K-1)となります。
結局,i<βin|T|αin>=(-i)4(2π)4δ4(p1+p2+p3+p4)KaKbKaKb(G-K-1)ですね。
そして,Ka=-pa2+ma2,Kb=-pb2+mb2は現実にゼロ(質量殻上:pa2=ma2,pb2=mb2)なのですから,KaKbKaKbを(G-K-1)に作用させると(G-K-1)のうちでpa2=ma2に極を持つ因子(pa2-ma2)-1とpb2=mb2に極を持つ因子(pb2-mb2)-1の積:(pa2-ma2)-1(pb2-mb2)-1に比例した項が2重にあるもの以外の寄与はゼロとなります。
例えば,pa2=ma2に極を持つ項はKa=(pa2-ma2)を掛けたとき,そこだけが留数として振幅へのゼロでない寄与を与えるわけです。
これでやっと,"このとき,Feynman振幅F(p,P)は,v0=ma2,w0=mb2における-(G-K-1)の留数,散乱振幅は,G-K-1のv=v0=ma2,w=w0=mb2における留数に等しいことがわかります。"という本文の後半の意味がわかりました。
一方,ファインマン振幅F(p,P)というのはG(p,q,P)とは異なって入射粒子の運動量遷移qを含まないので,位置表示でのF(xa,xb)がF(xa,xb)≡∫dyadybG(xa,xb;ya,yb)で与えられるようなものではないかと推測されます。※
ここのところ週末の2,3日を含め,たった1行か2行の解釈を考えることに疲れたので,今日はここまでにします。
参考文献:1.Noboru Nakanishi "A General survey of the Theory of the Bethe-Salpeter Equation”Progress of Theoretical Physics, supplement,No.43(1969),2.K.Nishijima "Fields and Particles(Field theory and Dispersion Relations)" W.A.Benjamin Inc.(1969),3.J.D.Bjorken&S.D.Drell"Relativistic Quantum Field"McGraw-Hill Book Company 4.S.S.Schweber"An Introduction to Relativistic Quantum Field Theory"Dover
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