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2009年1月31日 (土)

超伝導の理論(3)

超伝導の続きです。前記事と合わせた記事全体をうまくアップできず,何故かアップしてブログに反映させるたびに全部消えてしまうので仕方なく分割しました。

 

次は,Londonの電磁的なモデルについての話です。

 

     The London Theory

1934年にはGorterとCasimirのFとHに関する仕事に続いてLondonは超伝導体の電磁的挙動についての現象論を進めました。

 

Gorter-CasimirおよびLondonの理論は,超流体と常流体のそれぞれの電子の数密度nS,nN,および速度S,Nを持った2流体タイプの概念に基づいています。

局所電荷が中性であるせいで,電子数密度はnS+nN=nなる式で制限されます。ここでnは単位体積当たりの平均電子数です。

超流体と常流体の流束密度SNは次式を満たすと仮定します。

 

すなわち,dS/dt=nS2/m,およびN=σNです。ただし,S≡-enSS,N≡-enNNです。

 

第2の式は通常のオームの法則(Ohm's law)ですが,第1の式は1個の電荷が-e,数密度がnSの荷電粒子の集合に適用されたニュートンの運動方程式mそのものです。

 

超流体は,常流体の場合に有限な電気伝導度σNを生み出す通常の散乱構造とは無縁であると考えるのですね。

次に,超伝導電流SはLondon理論で最も有名な磁場に関する方程式∇×S=-nS2/(mc)を満たすと仮定します。

 

これとマクスウェルの方程式∇×=4πS/cの両辺の回転を取ったものとを比較することから,マイスナー効果(Meissner effect)が導かれます。ただし,この式の右辺では変位電流と常流体の電流Nを無視しました。

すなわち,マクスウェルの方程式から∇×∇×=∇(∇)-∇2B=-∇2によって,-∇2=(4π/c)(∇×S)を得ます。

 

この式の右辺に∇×S=-nS2/(mc)を代入すると,∇2=4πnS2/(mc2),つまり方程式∇2=λL-2が得られます。

 

ここで,λL≡{mc2/(4πnS2)}1/2としました。

さて,前記事の訳注では境界上の1点を座標原点として境界面の法線方向にx軸を取り,xの負の側を超伝導体の領域としましたが,今度は逆にxの正の側を超伝導体の領域とします。

 

そして,方程式∇2=λL-2を,x=0 のyz平面に境界を持ち,yz面に平行な平面上では一様でxのみに依存する1次元の微分方程式と捉えれば,xが大きいと磁束が消えるという境界条件での解は,(x)=(0)exp(-x/λL)と表現されます。

実際に,長さの単位を持つ定数λL{mc2/(4πnS2)}1/2を計算すると,これは非常に小さい値であることがわかります。

 

そして,x>λLの領域の大部分では(x)~ 0 となり,磁場は消えて求める完全反磁性を得ます。

 

それ故,定数λLをLondonの浸入深さと呼びます。

 

そして磁束が内部に浸入することが不可能で,結果として完全反磁性を示すという性質が超伝導体のマイスナー効果ですからLondon理論はこれをうまく説明しています。

London理論での超電流に対する式:dS/dt=nS2/mの両辺の回転を取って得られる式:∇×(dS/dt)=nS2(∇×)/mと,マクスウェルの電磁誘導の方程式c(∇×)=-∂/∂tを結びつけると,固定したxに対しては,(d/dt)[(∇×S)-{-nS2/(mc)}]=0 が得られ,これはLondon方程式:∇×S=-nS2/(mc)の時間微分です。

 

したがって,積分定数を除けば,マイスナー効果は超流体の完全伝導性を示す運動方程式dS/dt=nS2/m (電子の散乱に由来する電気抵抗が全く無い運動方程式)からの帰結であることがわかります。

 

こうして,∇×S=-nS2/(mc)を仮定することで,Londonは履歴とは無関係に超伝導体内では磁束密度がゼロになるという重要な制限を与えましたが,電気抵抗がゼロであるという完全伝導性がマイスナー効果の本質です。

浸入深さをλL(T)≡{mc2/(4πnS(T)e2)}1/2と書いて,これをGoter-Casimirモデルの結果である関係式nS(T)/n=1-x=1-(T/Tc)4と結びつけると,λL(T)=λL(0)/{1-(T/Tc)4}1/2なる形の浸入深さの温度依存性を見出します。

つまり,T=TcではλL=∞ですから,この温度では如何なる磁束も排除されませんが,TがTcよりも低くなって無限小まで下がるにつれて,λLは急速に減少するため,T<Tcではバルクな試料中でマイスナー効果の成立が裏付けられるわけです。

この温度依存性については,微視的理論の結果の方が幾分実験と良く一致しますが,今見たλL(T)=λL(0)/{1-(T/Tc)4}1/2なる式による評価値も実験的観測と驚くほど近い値を与えます。

マイスナー効果に従って"超伝導電流=超電流"が磁場の形態から一意的に決まるという事実は,超伝導体の準静的過程に可逆熱力学が適用できるという1つの重要な事実を保証します。

まず,磁場をベクトルポテンシャルによって=∇×と表現すれば,London方程式∇×S=-nS2/(mc)は∇×S=∇×{-nS2/(mc)}となります。

 

これは,S=-nS2/(mc)と置けばもちろん満たされます。

定常的な超電流が保存される,すなわち∇S=0となるようにゲージ条件として∇=0 を採用します。

 

これでもなお,Laplace方程式:∇2χ=0 を満たすχについてのゲージ変換:+∇χの自由度はまだ残ります。

孤立した単連結の物体に対して,その表面上では超電流の面に直角な成分S⊥は消える必要があります。そこで,もまた表面で消える必要があります。

 

この条件は物体の全表面での(∇χ)を決定し,結局付加定数を除いてχが決まります。そして質量を持つ物体に対しては,これらの条件は物質の大部分で=0 なることを意味します。

 もしも電流が境界に沿って流れるのであれば,超伝導体は1つの電流回路内の要素と見なせるので,境界上の電流はを一意的に決めます。

 

そこで,S=-nS2/(mc)なる等式はゲージ不変には見えませんが,上記のLondonゲージ条件を満たさないの部分を捨てることが要求されるため,実際には理論はゲージ不変です。というわけで理論はゲージ選択に独立です。

 一方,多重連結の物体でのゲージ関数χへの制限は∇2χ=0 ,かつ(∂χ/∂n)|表面=0 ですが,これは,もはや加えるべきゲージポテンシャルχの勾配∇χがゼロなることを要求しません。そこで,この場合には境界条件|表面=0 だけからは一意的に決まりません。

 重連結体中の空洞を周るループCに沿っての線積分を実行すると,Stokesの定理によって∫dl=∫=Φとなり,ループの内部を貫く磁束を得ます。

 

 そして積分経路Cを0 の超伝導体の内部に取れるなら,そこでは∇×=0 なので,ある関数χが存在して,=∇χと書けます。

 しかし,∇χが1価であっても,∫dl=∫∇χdl=Δχ=Φ (ただし,ΔχはCに沿って空洞を1回転して元に戻ったときのχの変化分)となるため,ループCの内部では=∇×0 であるにも関わらず,χが1価に決まるとは限りません。

 

 けれども,空洞の各々を貫く磁束Φiを全て定めることができればを一意に決めることができます。

 今日はここまでにします。 

参考文献:J.R.Schrieffer著「Theory of Superconductivity 」(Revised printing;Persues  Books) 

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。 

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