超弦理論(13)(2-2)
2月の初め以来,色々と目移りがして超弦理論(superstring theory)シリーズは疎かになっていました。ほぼ1ヶ月ぶりですが続きです。
実は他の題材を書いていましたが,途中でつまづいて苦戦しているので,ツナギとして既にノートがあって書き写すだけのこのシリーズでお茶を濁しています。
さて,弦の作用の表式S=-(T/2)∫dn+1σh1/2hαβgμν(X)∂αXμ∂βXν;(n=1)は一般時空多様体上の弦の伝播に対して定式化されたものですが,今のところは背景空間が平坦なミンコフスキー空間(Minkowski space)である場合の話に集中することにします。
この状況での完全な理解が,弦理論の一般化にとって不可欠なプロセスなのです。
平坦なミンコフスキー空間では,上の式の一般の計量(metric)gμν(X)がミンコフスキー計量ημνに変わるので,作用はS=-(T/2)∫d2σh1/2hαβ∂αXμ∂βXμとなります。
そして,弦の座標パラメータσ≡(σ0,σ1)=(τ,σ)のうち,空間座標に対応するσは,数学的便宜上 0<σ<πなるレンジを持つとします。
こうした平坦な背景空間の場合でも,弦の作用に付加的な項を加えることができます。
D次元のポアンカレ不変性(Poincare's symmetry)や2次元理論の次数勘定くりこみ可能性と矛盾しない付加項の可能性は,次の2つの項のみです。S1=λ∫d2σh1/2,およびS2={1/(2π)}∫d2σh1/2R(2)(h)ですね。
最初のS1は2次元の"宇宙定数"項ですが,これはSとは異なってワイル不変性(hαβ→Λhαβの下での不変性)を持たず,その結果,これから得られるものは古典場の方程式としても無矛盾でなくなります。
つまり,S+S1に対する運動方程式のトレース(対角和)から,λがゼロでないなら,恒等的にhαβ=0 が成立することが示されます。このように計量が常にゼロというのはちょっと受け入れ難いことです。
また,S2の右辺の表現R(2)(h)は計量hαβから形成される世界面の2次元スカラー曲率を表わす記号です。これは弦の相互作用に関連して重要な役割を果たすのですが,このS2項は我々の目的にとって重要ではありません。
何故なら,2次元では相互作用結合h1/2R(2)(h)は1つの全微分項であり,その結果,変分方程式としての古典的な場の方程式には,この項は全く寄与せず,これを付加しても今の自由場の量子化の作業にとって無意味だからです。
というわけで,S1やS2を付加しない元々の作用S=-(T/2)∫d2σh1/2hαβ∂αXμ∂βXμのみで考えます。この作用は前に言及した背景空間の選択に無関係な局所対称性を持っています。
つまり,以下の再パラメータ化不変性を有します。
まず,δXμ=ξα∂αXμ,δhαβ=ξγ∂γhαβ-∂γξαhγβ-∂γξβhαγ,δh1/2=∂α(ξαh1/2),およびワイルスケーリング:δhαβ=Λhαβに対して作用Sは不変です。
※(訳注12):(証明)S=-(T/2)∫d2σh1/2hαβ∂αXμ∂βXμからのδS/δhαβ=0 による運動方程式は∂αXμ∂βXμ-(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμ=0 となります。
ξαを微小パラメータとして,σα→σα+ξα:δσα=ξαなる再パラメータ化に対し,Xμ→Xμ+ξα∂αXμ,つまりδXμ=ξα∂αXμ,δXμ=ξα∂αXμです。
これに対して運動方程式∂αXμ∂βXμ-(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμ=0 が不変に保たれる条件は,δ[∂αXμ∂βXμ-(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμ]=∂α(ξγ∂γXμ)∂βXμ+∂αXμ∂β(ξγ∂γXμ)-(1/2)hαβhα'β'{∂α'(ξγ∂γXμ)∂β'Xμ+∂α'Xμ∂β'(ξγ∂γXμ)}-(1/2)[hαβ(δhα'β')+(δhαβ)hα'β']∂α'Xμ∂β'Xμ=0 です。
ところで,∂αXμ∂βXμ-(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμ=0 より,ξγ∂γ(∂αXμ∂βXμ)-(1/2)ξγhαβhα'β'∂γ(∂α'Xμ∂β'Xμ)=(1/2)ξγ∂γ(hαβhα'β')∂α'Xμ∂β'Xμです。
それ故,-(1/2)[hαβ(δhα'β')+(δhαβ)hα'β']=-(1/2)ξγ[hαβ∂γhα'β'+(∂γhαβ)hα'β']+(1/2)hαβhγβ'∂γξα'+(1/2)hαβhα'γ∂γξβ'-∂αξα'δββ'-∂βξβ'δαα'を得ます。
最後の式の両辺にhταを掛けるとδτβ(δhα'β')+hτα(δhαβ)hα'β'=δτβξγ∂γhα'β'+ ξγhτα(∂γhαβ)hα'β'-δτβhγβ'∂γξα'-δτβhα'γ∂γξβ'+2hτα∂αξα'δββ'+2hτα∂βξβ'δαα'となります。
両辺のδτβの係数を比較すると,δhαβ=ξγ∂γhαβ-∂γξαhγβ-∂γξβhαγであれば係数が一致するので,δhαβはこのように表わされると仮定します。
こうすると,-(1/2)hαβ(δhα'β')=-(1/2)ξγhαβ∂γhα'β'+(1/2)hαβhγβ'∂γξα'+(1/2)hαβhα'γ∂γξβ'となります。
そこで,残りは-(1/2)(δhαβ)hα'β'=-(1/2)ξγ(∂γhαβ)hα'β'-∂αξα'δββ'-∂βξβ'δαα'です。
すなわち,(δhαβ)hα'β'=ξγ(∂γhαβ)hα'β'+2∂αξα'δββ'+2∂βξβ'δαα'です。
これの両辺にhβ'ρを掛けると,(δhαβ)δα'ρ=ξγ(∂γhαβ)δα'ρ+2∂αξα'hβρ+2∂βξβ'hβ'ρδαα'です。
α'=ρとしてρ=0,1を加えて縮約すると,2δhαβ=2ξγ∂γhαβ+2∂αξρhβρ+2∂βξβ'hβ'αです。すなわち,δhαβ=ξγ∂γhαβ+∂αξγhγβ+∂βξγhαγを得ます。
結局,δhαβ=ξγ∂γhαβ-∂γξαhγβ-∂γξβhαγ,δhαβ=ξγ∂γhαβ+∂αξγhγβ+∂βξγhαγですが,0=δ(δαγ)=δ(hαβhβγ)=(δhαβ)hβγ+hαβ(δhβγ)が確かに満足されます。
最後に,行列式の公式からδh/h=hαβδhβα=ξγ∂γh/h+∂αξα+∂βξβより,δh=ξγ∂γh+2h∂γξγ,それ故δh1/2=δh/(2h1/2)=ξγ∂γh/(2h1/2)+h1/2∂γξγ=∂γ(ξγh1/2)が得られます。(証明終わり)
(訳注12終わり)※
これらに加えて,弦が伝播する背景空間の対称性を反映する大局的対称性があります。これは平坦なミンコフスキー空間では,δXμ=aμνXν+bμ,δhαβ=0 で記述されるポアンカレ不変性です。ここで,係数aμν=ημρaρνは反対称です。
ξαやワイルスケーリングのΛはσの関数ですから局所対称性に関係しますが,aμν,bμは定数なので大局的対称性を示すものです。
さて,2次元の自由弦のエネルギー運動量テンソルTαβはSの2次元世界面の計量hαβに関する変分で与えられます。すなわち,Tαβ=(2/T)h-1/2(δS/δhαβ)です。
これから,Tαβ=-∂αXμ∂βXμ+(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμなる陽な表式が得られます。
これを見ると自由弦のエネルギー運動量テンソルTαβのトレース(対角和):Tαα=hαβTαβは自動的にゼロになることがわかります。これはワイル対称性からの帰結です。
そして,場の方程式であるδS/δhαβ=0 はTαβ=0 ,すなわち弦のエネルギー運動量テンソルが常にゼロであることを意味します。
※(訳注13):まず,2008年6/22の記事「ネーターの定理と電磁エネルギー運動量テンソル」から一部を再掲します。
※(再掲):電磁場に限らず,4次元ミンコフスキー空間内のある領域Σに,例えば連続体の各点における変位などを表現した古典的な場φ(x)={φi(x)}があって,系のラグランジアン密度Lが場φi(x)とその1階微分∂μφi(x)の関数としてL(φi(x),∂μφi (x))で表わされるとします。
このとき,作用積分はS[φ]=∫Σd4xL(φi(x),∂μφi (x))で与えられます。そして場の従う基本的な運動方程式はφi(x)の変分に対する作用Sの停留条件:δS=0 から決まります。
すなわち,系を支配する運動方程式はδS/δφi(x)=∂L/∂φi-∂μ{∂L/∂(∂μφi )}]=0 で与えられます。
これはよく知られたオイラー・ラグランジュの方程式です。
そしてネーター(Noether)の定理は"ある連続変換の下で作用Sが不変な場合,それに対応してある保存量が存在する。"というものです。
(※中略,そして以下では内容を若干修正しています。)
そして,物質のエネルギー運動量テンソルは時空座標の平行移動不変性に対する「ネーター保存量」として与えられます。
これの陽な混合テンソル表現はTμν=Σi{∂L/∂(∂νφi)}∂μφi-δμνLです。反変テンソルの表現では,Tμν=ημρTρν=Σi{∂L/∂(∂νφi)}∂μφi(x)-ημνLとなります。
そして,これから平行移動の4つの"生成子=ネーター保存量"はPμ/c=(E,P/c)=∫Tμ0(x,t)d3xで与えられることになります。ここにPμは場の4元運動量です。(再掲終わり)※
これによれば,物質場の4次元のエネルギー運動量テンソルはTμν=ημρTρν=Σi {∂L/∂(∂νφi)}∂μφi(x)-ημνL (μ,ν=0,1,2,3)で与えられますが,今の物質場が自由弦の2次元世界面座標{Xμ(σ)}(μ=0,1,2,3)である場合には,Tαβ={∂L/∂(∂βXμ)}∂αXμ-hαβL (α,β=0,1)になるはずです。
ところが,2次元の不変体積要素はh1/2d2σなので,S=∫d2σh1/2L=-(T/2)∫d2σh1/2hαβ∂αXμ∂βXμから,ラグランジアン密度がL=-(T/2)hαβ∂αXμ∂βXμと書けるはずなので,自由弦のエネルギー運動量テンソルは,Tαβ=T[-∂αXμ∂βXμ+(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμ]で与えられることがわかります。
これは,本文に書かれた表現:Tαβ=(2/T)h-1/2(δS/δhαβ)=-∂αXμ∂βXμ+(1/2)hαβhα'β'∂α'Xμ∂β'Xμとは定数倍(因子T)だけ違います。
さらに,ワイル不変性は,スケール変換:hαβ→Λhαβの下でSが不変なことを意味します。この変換によってエネルギー運動量テンソルTαβ=(2/T)h-1/2(δS/δhαβ)も確かに不変です。
しかし,トレースTαα=hαβTαβは,Tαα→Λ-1Tααと変換されますから,この変換の下でのトレースの不変性:Λ-1Tαα=Tααの要求はTαα=0 を意味します。(訳注13終わり)※
今日はここまでにします。
参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)
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