フェルマー(Fermat)の定理と類体論(1)
深いところでは関係するかもしれないけれど,通常は物理とは関係ないような数学の話も偶にはしようかなと思います。
代数学,数論関連については,恐らく2007年1/14~1/29のシリーズ記事「ガロア理論(1) 」 ~「ガロア理論(6)」同じく2007年2/25の「円分多項式のガロア群 」や2007年5/25の[代数的数と超越数 」,2007年7/27の「 eとπの超越性],
それに続く2007年8/11の記事「リーマン予想と素数定理 」2007年8/17の「代数学の基本定理」以来のことでしょうか。
偶には考えないとカビが生えてしまいそうです。
数論について読んだ本というと,入門程度なら20年以上前にアーベルやガロアの「代数方程式のベキ根による解法」に対する興味と関連して通読した松坂和夫著の「代数系入門」や,最近では量子暗号に対する興味と関連して,かつてニフティのサイエンスフォーラムの数学会議室議長だったプークさん(鈴木治郎氏)が訳された「はじめての数論」を通読した程度です。
(2006年5/4の記事「公開キー暗号(神はサイコロ遊びをなさる)」参照)
今回は,ある程度は予備知識があることを前提に,まずは加藤和也,黒川信重,斉藤毅著「数論I」(Fermatの夢と類体論)(岩波書店)を参考に,10年くらい前に証明されたばかりのFermatの定理や高木貞治氏の研究で有名な類体論などを含む代数的数論関連の領域について言及してみたいと思います。
まず,楕円曲線と有理点について記述します。
ただし有理数体Qの上の楕円曲線とはy2=ax3+bx2+cx+d(a,b,c,d∈Q,a≠0),かつ右辺は重根を持たないというの形の3次方程式で定義される曲線です。
今日は,まず楕円曲線による方法の導入のため,"3以上の整数nについて,xn+yn=znを満たす自然数x,y,zは存在しない。"というフェルマーの定理のうちのn=4の場合の次の命題を証明することから始めます。
[命題1.1]:x4+y4=z4を満たす自然数x,y,zは存在しない。
この命題の証明の1つはフェルマー(Fermat)が書き残しています。
彼の証明を現代風に解釈するなら,それは[命題1.1]の証明を次の楕円曲線y2=x3-xに関する[命題1.2]の証明に帰着させるものと考えられます。
[命題1.2]:y2=x3-xの有理数解は(x,y)=(0,0),および(±1,0)のみである。
実際,もしも[命題1.1]が成立せずx4+y4=z4を満たす自然数x,y,zが存在するなら,x4=z4-y4の両辺にz2/y6を掛けると(x2z/y3)2=(z3/y3)2-z2/y2となります。
これはy2=x3-xにy≠0 の有理数解(x,y)が存在することを意味し,これは[命題1.2]に反しますから,[命題1.2]が成立するなら[命題1.1]が成立しなければなりません。
[命題1.2]は次の[補題1.3]のd=1の特別な場合になっています。
[補題1.3]:dを正の有理数とすると,次の条件(ⅰ)~(ⅲ)は全て同値である。
ⅰ)3辺の長さが有理数で面積がdの直角三角形が存在する。
(ⅱ)有理数の平方となる3つの数で,公差がdの等差数列をなすものが存在する。
(ⅲ)y2=x3-d2xの有理数解が(x,y)=(0,0),(±d,0)以外にも存在する。
[補題1.3]の条件(ⅰ)~(ⅲ)は,それぞれ次の[補題1.4]でK=Qとしたときに与えられる集合Ad,Bd,Cdが空集合でないことを意味するので,[補題1.4]が成立することを示せば[補題1.3]も従います。
[補題1.4]:Kを標数が2でない体とするとき,d∈Kに対して集合Ad,Bd,CdをAd≡{(x,y,z)∈K×K×K;x2+y2=z2,xy/2=d},Bd≡{(u,v,w)∈K×K×K;u2+d=v2,v2+d=w2},Cd≡{(x,y)∈K×K;y2=x3-d2x,y≠0}と定義する。
このとき,Ad,Bd,Cdの間に全単射が存在する。
(ただし標数というのはRを環とするとき,その乗法の単位元をいくつ加えたらゼロになるかという最小の数のことを意味します。通常の有理数体Qなどを環と考えたときの標数はゼロです。)
(証明)まず,(x,y,z)∈Ad,すなわちx2+y2=z2,xy/2=dのとき,(u,v,w)=((y-x)/2,z/2, (x+y)/2)とすれば,u2+d=v2,v2+d=w2,より(u,v,w)∈Bdです。
逆に,(u,v,w)∈Bdなら,(x,y,z)=(w-u,w+u,2v)とすれば(x,y,z)∈Adです。これは互いに逆写像となる全単射です。
次に(u,v,w)∈K×K×K;u2+a=v2+b=w2+cのとき,(x,y)=f(u,v,w)≡(u2+a+uv+vw+wu,(u+v)(v+w)(w+u))とすれば,y2=(x-a)(x-b)(x-c)となります。
これには逆写像が存在し,それはg(x,y)=({(x-a) 2+(b-a)(c-a)}/(2y),{(x-b) 2+(c-b)(a-b)}/(2y),{(x-c) 2+(b-c)(a-c)}/(2y))で与えられます。
特にa=d,b=0,c=-dとおけば,これはBd ⇔ Cd の全単射を表わします。(証明終わり)
※[補題1.4]の証明からのおまけ:
[補題1.4]の結論のような全単射ではないですが,(u,v,w)∈K×K×K;u2+a=v2+b=w2+cに対する写像を,(x,y)=h(u,v,w)≡(u2+a,uvw)で定義すれば,明らかにy2=u2v2w2=(x-a)(x-b)(x-c)となります。 ※
さて,以下ではK=Qとして[命題1.2]を証明します。
まず,有理数a∈Qの高さH(a)を,aをa=m/nと既約分数に表わしたときH(a)≡max(m,n)によって定義します。
そして,y2=x3-xに(0,0),(±1,0)以外にも有理数解が存在すると仮定しx座標の高さが最小のものを(x0,y0)とします。
もしもx座標の高さが最小の有理数解が複数個あればその中の1つを(x0,y0)とします。
一般に,y2=x3-d2xに(0,0),(±d,0)以外の有理数解(x,y)が存在すれば,もちろんx≠0,y≠0 ですが,この等式の両辺にd4/x4を掛けると(d2y/x2)2=d4/x-(d2/x)3となります。
そこで,y2=x3-d2xに(0,0)と異なる有理数解(x,y)∈Q×Qが存在すれば,(-d2/x,d2y/x2)も(0,0)と異なる有理数解です。
ここで,特にd=1とすると,もしもy2=x3-xに(0,0)とは異なる有理数解(x,y)∈Q×Qが存在すれば,(-1/x,y/x2)も同じ楕円曲線上にある有理数解であるということになります。
そしてH(x)=H(-1/x)ですから,x0<0 の場合には-1/x0 を新しくx0に取っても,高さは同じなので問題ないことがわかります。そこで,x0>0 を満たすy2=x3-xの解を(x0,y0)として採用します。
こう選ぶと,y02=x03-x0により,x0(x0-1)(x0+1)=y02>0 であって,かつx0>0 ですからx0>1です。
このとき,x0'≡(x0+1)/(x0-1)と置くとx0'-1=2/(x0-1),x0'+1=2x0/(x0-1)により,x0'(x0'-1)(x0'+1)=4x0(x0+1)/(x0-1)3=4y02/(x0-1)4={2y0/(x0-1)2}2となります。
そこで,x0'≡(x0+1)/(x0-1),y0'≡2y0/(x0-1)2と置けば,(x0',y0')∈Q×Qであり,かつx0'(x0'-1)(x0'+1)=y0'2,またはy0'2=x0'3-x0'が成立します。
x0>1,x0∈Qなのでx0≡m/n(m>n>0:既約分数)と置くと,x0'=(x0+1)/(x0-1)=(m+n)/(m-n)=(m+n)/(m-n)となります。
m/nは既約分数なのでm,nが共に偶数であることはあり得ませんが,もしも共に奇数ならp=(m+n)/2,q=(m-n)/2は共に整数でx0'=p/qであり,max(p,q)<max(m,n),つまりH(x0')<H(x0)ですから,x0の高さが最小であるという仮定に矛盾します。
それ故,m,nのどちらか一方は偶数です。そして,x0(x0-1)(x0+1)=mn(m-n)(m+n)/n4ですが,これが有理数y0の平方に等しいので,明らかにmn(m-n)(m+n)はある整数の平方です。
なぜなら,mn(m-n)(m+n)はn4y02ですから,これは整数であってかつ有理数n2y0の平方だからです。
m/nが既約分数なので,mとnは互いに素です。そこで,結局m,n,(m-n),(m+n)は全て互いに素です。
したがって,mn(m-n)(m+n)が平方数になるためにはm,n,(m-n),(m+n)が各々平方数である必要があります。(これは素因数分解可能性からの帰結です。)
それ故,x0=m/n,x0-1=(m-n)/n,x0+1=(m+n)/nは全て有理数の平方数です。
さて,[補題1.4]の証明とそのおまけから,(u,v,w)=g(x,y)とh(u,v,w)=(u2+a,uvw)を合成した写像h・gを作ります。ただし,今の場合a=1,b=0,c=-1とします。
任意の(x1,y1)∈Q×Qのgによる像を(u1,v1,w1)=g(x1,y1)とし,さらに(u1,v1,w1)∈Q×Q×Qのhによる像を(x2,y2)=h(u1,v1,w1)とします。(x2,y2)=h・g(x1,y1)ですね。
このとき,y22=u12v12w12=(x2-1)x2(x2+1)ですから,x2-1,x2,x2+1は全て有理数の平方数です。
逆に言えば,y22=(x2-1)x2(x2+1)を満たす(x2,y2)∈Q×Qで,x2-1,x2,x2+1が全て有理数の平方である場合なら,h・g(x1,y1)=(x2,y2)を満たす(x1,y1)∈Q×Qが常に1組だけ存在することがわかりました。
ところで,すぐ前で見たようにx0=m/n,x0-1=(m-n)/n,x0+1=(m+n)/nは全て有理数の平方数です。
そこで,h・g(xp,yp)=(x0,y0)を満たす(xp,yp)∈Q×Qが,存在します。
(up,vp,wp)=g(xp,yp)よりup={(xp-1)2-2}/(2yp)でx0=up2+1,yp2=xp3-xpです。
故に,x0=up2+1={(xp-1)2-2}2/{4(xp3-xp)}+1=(xp2+1)2/{4(xp3-xp)}です。有理数xpを互いに素な整数r,sによる既約分数としてxp=r/sと表わします。
このとき,x0=(r2+s2)2/{4rs(r2-s2)}です。
まず,x0>1ですから,分母より分子の方が大きいので(r2+s2)2>4rs(r2-s2)です。
そして,xp=r/sは既約分数ですからrとsは互いに素なので,分子の(r2+s2)2と分母のrsは明らかに共通因数を持ちませんから,分母と分子が共通因数を持つとすれば,r2+s2と4,またはr2-s2が共通因数を持つ場合に限られます。
このとき,もしもr,sが共に奇数ならr2+s2は4で割ると余りが2の偶数,r2-s2は4の倍数です。
(r2+s2)2は丁度4の倍数ですから,今のx0の分数表現で分子,分母は共通因数4を持ちます。
したがって,この場合にはH(x0)≧(r2+s2)2/4≧{max(r,s)}4/4>max(r,s)=H(xp)です。
ただし,右辺の最後の不等式:{max(r,s)}4/4>max(r,s)では,xp=r/s>1によりH(xp)=max(r,s))≧2なることを考慮しました。
他方,r,sの一方が奇数,もう一方が偶数ならr-s,r+sは共に奇数で,共通因数を持ちません。そしてp≡r-s,q≡r+sと置けばr2-s2=pq,r2+s2=(p2+q2)/2,rs=(p2-q2)/4です。
結局,x0=(p2+q2)2/{4pq(p2-q2)}と書けますから,片方だけが奇数の(r,s)の組が共に奇数の(p,q)に置き換えられただけで,x0の分数表現は前と全く同じ形をしています。
それ故,前と同じく分子,分母は共通因数4のみを持ちます。
そこで,この場合にもH(x0)≧(p2+q2)2/4≧{max(p,q)}4/4>max(p,q)>max(r,s)=H(xp)となります。
以上から,既約分数xp=r/s>1のr,sが共に奇数の場合,一方が奇数,もう一方が偶数の場合のいずれであっても,H(x0)>H(xp)になるという結果が得られました。これはx0の高さH(x0)が最小であるという仮定に矛盾します。
それ故,(x,y)=(0,0),(±1,0)以外のy2=x3-xを満たす高さH(x)が最小の(x,y)=(x0,y0)は存在しないと結論されます。
これは,[命題1.2]の結論が成立することを意味しますから,結局,[命題1.2]が成立することが示されたわけです。
そして最初に述べたように,[命題1.2]が成立することは[命題1.1]が成立することを意味するので,結局,"x4+y4=z4を満たす自然数x,y,zは存在しない。"ことが証明されました。
この証明方法はフェルマー自身が無限降下法と呼んだ方法です。
今日はここまでにします。
参考文献:加藤和也,黒川信重,斉藤 毅著「数論I」(Fermatの夢と類体論)(岩波書店)
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
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