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2009年4月 9日 (木)

超弦理論(18)(2-7)

超弦理論(superstring theory)の続きです。

実はツナギとしてアップしようと軽く考えていたのですが,ノートにある約10年前にやった計算の間違いに気付いたので,やや手間取っていました。

 

種本の計量(metric)と私が常用しているBjorken-Drellのテキストの計量では符号が逆なので,ときどき混乱することがあるのでした。

 さて,既に説明したように,ボソン弦(Bosonic string)の振動するαmμ(とα~mμ)で作られるフォック空間は,時間成分の交換関係における負の計量のために正定値ではありません。

一方,物理的状態の空間は,m≧0 に対して(Lm-aδm0)|φ>=0 なるヴィラソロ条件(Virasoro condition)を満足する状態:|φ>で作られる上記フォック空間の部分空間に対応します。

 

(閉弦における演算子L~m,α~mについての話も,mmについてのそれとほぼ同じなので,ここでは余計な煩雑さを避けるために開弦のLmmだけについて話を進めます。)

 そして,ヴィラソロ条件は時間的(time-like)な負ノルムの振動子と1対1に対応するため,丁度正定値な部分フォック空間を残すのに十分な条件を与えます。

 これを理解するために,ヴィラソロ演算子が,Lm~ -pμαmμ+(振動子の2次の項)と表わせることに着目します。

(訳注27):記事「超弦理論(16)(2-5)」で示したように,開弦では,Lm=(-1/2)Σn=-∞αm-n,μαnμですが,α'=1/2ならα0μ=lpμ=pμより,Lm=(-1/2)Σn=-∞αm-n,μαnμ=(-1/2)(αm,μα0μ+α0,μαmμ)+(-1/2)Σn≠0,mαm-n,μαnμ=-pμαmμ+(-1/2)Σn≠0,mαm-n,μαnμとなります。

 

 (訳注27終わり)※

この近似式から,もしも振動子の2次の項がないなら,条件Lm|φ>=0 はpμαmμ|φ>=0 と同値になることがわかります。

そして,一般に粒子がタキオン(tachyon)でないなら,その運動量は時間的(p2=pμμ=M2>0),または光的(p2=M2=0)なので,pμ=(M,0)という静止系を取れば,pμαmμ|φ>=0 はαm0|φ>=0,あるいはam^0|φ>=0 を意味します。

静止系でなくとも高エネルギーなら,pμ=(p0,-)でE=p0>>||ですから,pμαmμ|φ>=0 は近似的にαm0|φ>=0,またはam^0|φ>=0 と同値です。

 

とにかく,ヴィラソロ条件は負ノルム振動子と1対1に対応します。

 そこで,静止系での物理的状態は,振動子ベクトルαm=(αm0,αm)=(αm0m1m2,..,αmD-1)のうち,(D-1)次元の空間成分ベクトルαm≡(αm1m2,..,αmD-1)だけで生成されます。

 

 これは,条件の個数をカウントすることからヴィラソロ条件(Lm-aδm0)|φ>=0 (m≧0)が,ゴーストを分離するのに十分であることを示しています。

しかし,振動子の2次の項も重要な役割を有していて,真理は,はるかに精緻で興味深いものです。

 以下では,ゴーストのないスペクトルは先に述べた定数aと時空の次元Dのある値においてのみ可能であることを示します。

 

 より綿密に調べるためには,ヴィラソロ演算子の代数を研究することが必要です。

 既に,記事「超弦理論(16)(2-5)」で,ヴィラソロ代数が古典形式ではポアソン括弧(Poisson括弧)[ , ]P.B.によって,[Lm,Ln]P.B.=-i(m-n)Lm+nなる形で与えられることを見ました。

 

 これは量子論ではポアソン括弧を交換子[ , ]に置き換えた[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nなる表現に変わります。

 古典形式では,Lm(-1/2)Σn=-∞αm-nαn=0,[αmn]P.B.=imδm+nから,[Lm,Ln]P.B.=(1/4)Σk,lm-kαkn-lαl]P.B.=(i/2)[Σkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαk]と変形しましたが,ポアソン括弧[ , ]P.B.を交換子[ , ]の(-i)倍で置き換えれば,ここまでの変形過程は量子論でもそのまま正しいと考えられます。

そして,右辺第1項をΣkkαm-kαk+n=Σk(k-n)αm-k+nαkと変数変換することも,m+n≠0 の場合なら,量子論でも全く問題ないので,m+n≠0 ならΣkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαk=Σk(k-n)αm-k+nαk+Σk(m-k)αm-k+nαk=(m-n)Σkαm-k+nαk)としてもいいです。

しかし,m+n=0 に対しては右辺の2つの無限和の各々が量子レベルで正規順序による無限大の不明瞭さを伴なうことがわかります。

Σkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαkの2つの無限和の項は,各々がill-defined(定義がまずい)ですから,古典論で[Lm,Ln]P.B.=-i(m-n)Lm+n,量子論で[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nを得るために,2つの無限和のうちの1つの和において和を施す添字をシフトする操作はきわめて危険です。

しかし,こうして,m+n=0 に対して[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nを示す過程で生じるかもしれない如何なる正規順序の曖昧さも,単にc-数を加減することに帰着するので,[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nなる式はA(m)をmに依存するあるc-数として [Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+A(m)δm+nなる形に修正さるべきであることが保証されます。

そこで,[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+A(m)δm+nを仮定します。

 

この式でm+n=0 なる関係を保存したまま,m→-mとすればA(-m)=-A(m)を得ます。また,A(0)=0であることもわかります。

 

それ故,正のmについてA(m)を決めれば,全てのmについてのA(m)が決まります。

しかしながらkkαm-kαk+n=Σk(k-n)αm-k+nαkとする仮定での右辺の2つの無限和の正規順序を直接調べることから,A(m)を求めるのは驚くほど扱いにくい作業です。

そこで,とりあえず別の簡単なアプローチでA(m)を求めます。

まず,ヤコービの恒等式:0=[Lk,[Ln,Lm]]+[Ln,[Lm,Lk]]+[Lm,[Lk,Ln]]において,k+m+n=0 とすると(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 を得ます。

※なぜなら,0=-[Lk,(n-m)Ln+m]-[Ln,(m-k)Lm+k]-[Lm, (k-n)Lk+n]ですからk+m+n=0 とすると(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 です。※

ここで,k=1,m=-n-1を代入すると(2n+1)A(1)-(n+2)A(n)+(n-1)A(n+1)ですからA(n+1)={(n+2)A(n)-(2n+1)A(1)}/(n-1)です。

 

この漸化式はA(1)とA(2)を決めれば,全てのA(n)が決まることを示しています。そこで,A(n)の一般形は2つの未知係数によって決まるはずです。

実際,上の漸化式の一般解はc1,c3を未知定数としてA(m)=c33+c1mで与えられることがわかります。

(訳注27):A(n)=anと書けば,漸化式は(n-1)an+1=(n+2)an-(2n+1)a1です。

 まず,A(0)=0よりa0=0です。そこでan≡nbnとして,これ代入すると,(n-1)(n+1)bn+1=n(n+2)bn-(2n+1)a1です。

 

 そこで,さらにun≡bn/{(n-1)(n+1)}とおくとun-un=-(2n+1)a1/{(n-1)n(n+1)(n+2)}=-a1[1/{(n-1)n(n+1)}+1/{n(n+1)(n+2)}]です。

 

 右辺はさらに(-a1/2)[1/{(n-1)n}-[1/{n(n+1)}]+(-a1/2)[1/{n(n+1)}-[1/{(n+1)(n+2)}]となります。

両辺の階差数列を加えるとun-u2=(-a1/2)[1/2-1/{(n-1)n}]+(-a1/2)[1/6-1/{n(n+1)}]を得ます。

n=bn/{(n-1)(n+1)}を代入すると,bn/{(n-1)(n+1)}-b2/3=-a1/3+(a1/2)[1/{(n-1)n}+1/{n(n+1)}],結局bn=(b2-a1)(n2-1)/3+a1です。

n=nbnを代入し返すと,an=(2a2-a1)(n3-n)/3+na1=c33+c1n,c3=(2a2-a1)/3,c1=(2a2-a1)/3+a1と書けることがわかりました。a1,a2が任意なのでc1,c3も任意です。

 さらに,このA(m)=c33+c1mを(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m) に代入すれば,(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=-c3(n-m)(m-k)(k-n)(n+m+k)を得るので,(n+m+k)=0 なら(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 は確かに満足されています。

 (訳注27終わり)※

 A(m)=c33+c1mの定数c1はL0の定義を定数だけシフトさせることによって変化し得る定数です。これはその他にはヴィラソロ代数を乱さない操作です。

0を定数だけシフトさせることは,また(L0-a)|φ>=0 の定数aをもシフトさせます。それ故,それはaとc1の間の唯一の意味を持つ関係です。

さて,LmとL-mの交換子を非常に注意深く評価することで,正しくアノマリー(異常項)の寄与を得ることができます。特に,c1とc3を決める最も簡単で最も安全な方法は適切な状態での[Lm,L-m]の期待値を計算することです。

これに供する最も便利な状態の選択は,pμ=0 の振動子基底状態|0;0>です。運動量がゼロの状態|0;μ>=|0;0>の選択は,特にα0μ|0;pμ>=α0μ)|0;0>=0 を意味します。

特に,m=1に対しては,<0;0|[L1,L-1]|0;0>=0 を見出します。

 

なぜなら,L1やL-1の全ての項は0-運動量の基底状態を消滅させるからです。

(訳注28):何故なら,[Lm,Ln]=(1/4)Σk,lm-kαkn-lαl]から,<0;0|[L1,L-1]|0;0>=(1/4)Σk,l<0;0|[α1-kαk-1-lαl]|0;0>ですが,α-1-lαl=αlα-1-lです。

 

 l≧0 ならαl|0;0>=0 によってα-1-lαl|0;0>=0,l<0,すなわち-1-l≧0 なら,α-1-l|0;0>=0 によりαlα-1-l|0;0>=0 です。同様に,k≧0 ならαk|0;0>=0,k<0 なら1-k>1>0 より,α1-k|0;0>=0,ですから-1-l≧0 なら<0;0|[α1-kαk-1-lαl]|0;0>=0です。

 

 (訳注28終わり)※

m=2からは,<0;0|[L2,L-2]|0;0>=<0;0|L2-2|0;0>=1/4Σk,l<0;0|[α2-kαk-2-lαl]|0;0>=1/4<0;0|α1,μα-1μα1,να-1ν|0;0>=-(1/2)ημν<0;0|α1μα-1ν|0;0>=(1/2)ημνημν=(1/2)Dを見出します。

     (訳注29):[α2-kαk-2-lαl]=[α2-k,μαkμ-2-l,ναlν]に

恒等式:[AB,CD]=A[B,C]D+AC[B,D]+[A,C]

B+C[A,D]Bを適用します。

mμnν]=-mδm+nημνを用いると,第1,4項では交換子がゼロでないのは,k-l=2のときのみで[B,C]=[αkμ-2-l,ν]=-kδμν,[A,D]=[α2-k,μlν]=-(2-k)δμνです。

 

また,第2,3項ではk+l=0 のときのみで,[B,D]=[αkμlν]=-kημν,[A,C]=[α2-k,μ-2-lν]=-(2-k)ημνです。

第1項:A[B,C]Dでは,k-l=2の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|A[B,C]D|0;0>=-k<0;0|α2-k,μαk-2μ|0;0>ですが,これはk≧2ではゼロ,k<2では積を交換してゼロにすると,交換子項だけ残って<0;0|A[B,C]D|0;0>=-k<0;0|αk-2μα2-k,μ+[α2-k,μαk-2μ]|0;0>=k(2-k)となります。

一方,第4項C[A,D]Bでは,k-l=2の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|C[A,D]B|0;0>=-(2-k)<0;0|α-k,μαkμ|0;0>ですが,これはk≧0ではゼロ,k<0では-k(2-k)の寄与になります。

よって,k≧2に対しては第1,4項の寄与は共にゼロで,k<0では両項の寄与であるk(2-k)と-k(2-k)が相殺されてゼロとなりますから,結局これらからはk=1,l=-1の第1項-<0;0|α1μα-1,μ|0;0>だけがゼロでない寄与を与えます。

第2,3項は,k+l=0の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|AC[B,D]|0;0>=-k<0;0|αkμαk-2,μ|0;0>,<0;0|[A,C]DB|0;0>=-(2-k)<0;0|αk-2,μαkμ|0;0>です。そこで,k-2+k=0のときのk=1,l=-1の第2項-<0;0|α1μα-1,μ|0;0>以外はゼロです。

結局k,l<0;0|[α2-kαk-2-lαl]|0;0>=-2<0;0|α1μα-1,μ|0;0>=2ημμ=2δμμ=2Dを得ます。(∵ <0|α1μα-1,μ|0>=<0|a1^μ1^μ|0>=-ημμ)

 

(訳注29終わり)※

得られた2つの値:A(1)=<0;0|[L1,L-1]|0;0>=0,A(2)=<0;0|[L2,L-2]|0;0>=D/2は一般項:A(m)=c33+c1mの係数c1,c3を決めるには十分です。

 

実際に計算することから,c3=-c1=D/12を得ます。つまり,A(m)=(D/12)(m3-m)です。

したがって,アノマリーを含むヴィラソロ演算子の代数は[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nとなることがわかります。

特に,こうしたヴィラソロ代数とアノマリーの構造はL1,L0,L-1だけを生成子とする閉部分代数をリー代数とする線形リー群:SU(1,1)またはSL(2,R)と同型であることに注意しておきます。

途中ですが今日はここまでにします。

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

PS:畠山鈴香さんが「無期は絶対イヤ」と控訴するらしいのは「死刑の方がまだマシ」という意味も含まれていますよね?

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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