超弦理論(19)(2-8)
超弦理論(superstring theory)の続きです。
ツナギ,ツナギと言いながら,ずーっとこればっかしですみません。今は丁度季節的に「木の芽どき」でもあり,なぜか精神に余裕がなくブログも滞りがちです。
さて,ヴィラソロ条件(Virasoro-condition)(Lm-aδm0)|φ>=0 (m≧0)が課された場合,負ノルムの物理的状態が全く存在しないことを保証するような定数パラメータaと時空次元Dの満たすべき条件について予備的な検査をしてみます。
結果として,aとDのある領域では負ノルム状態が存在し,他の領域では負ノルム状態は全く存在しないという結論が得られます。
以下,その内容を詳述します。
物理的ヒルベルト空間に全く負ノルム状態がないようなパラメータaとDの領域を記述するためには,ゼロノルムの物理的状態を探すことが非常に有用な手段になります。
物理的ヒルベルト空間が非負定値ノルムを持つ領域から負ノルムを持つ領域までを横切ってaとDを変動させれば,それら2つの領域間の境界にはゼロノルムを与える物理的領域が存在すると考えられます。
そして後述する理由のために,これらある意味では余分のゼロノルム状態が重要な物理的原理に関連付けられ,最も関心のある物理的ヒルベルト空間が発展する際のゴースト状態の縁にある臨界の場合に相当するという結論を得ることになります。
以下の理論展開では開弦のみを対象にしますが,振動子とヴィラソロ条件を二重にすれば,閉弦の話もほとんど同じです。
実際,拘束Σn=1∞α-nαn=Σn=1∞α~-nα~nを除けば,閉弦のn番目の質量レベルは左移動演算子から作られる物理的状態のヒルベルト空間の元と,右移動演算子から作られる物理的状態のヒルベルト空間の元のテンソル積で表現されます。
したがって,左移動と右移動の物理的状態は開弦の物理的状態と全く同等ですから,負ノルム状態を探すという今の論題においても開弦と同等であり,開弦のみが対象の理論展開は,そのまま閉弦にも当てはまるといえます。
さて,運動量kμを持つ開弦の基底状態を|0;k>で記述します。
このとき,L0=(-1/2)Σ-∞∞α-nαn=-α'p2-Σn=1∞α-nαn,およびp2|0;k>=k2,かつαn|0;k>=0 によって,質量殻条件(L0-a)|0;k>=0,またはL0=aは,α'k2=-aなる等式を意味します。
(パラメータα'は後に1/2と置きます。)
基底状態|0;k>からの第1励起レベルの状態ξα-1|0;k>を考えます。ここで,ξ=ξμ(k)はゲージ拘束を考慮する前には,D個の独立成分を持つ偏極ベクトルであり,ξα-1|0;k>なる状態は,詳しく表現すればξμ(k)α-1μ|0;k>です。
この第1励起状態に対して,質量殻条件L0=-α'p2-Σn=1∞α-nαn=aは-α'k2=a-1を与えます。
また,L1補助条件L1(ξα-1)|0;k>=0 は,L1=(-1/2)Σ-∞∞α1-nαnによって,ξk=ξμkμ=0 を与えます。
後者のξk=ξμkμ=0 は,ゲージ拘束条件であり,D個の成分を持つ一般のベクトルξ=(ξμ)において,実際に許される独立な偏極の数は(D-1)個であることを示しています。
状態:ξα-1|0;k>のノルムは,-ξ2=-ξμξμです。そこで,特に,ベクトルk=(kμ)が(0,1)平面内にある,つまりk=(kμ)=(k0,k1,0,0,..,0)であるような座標系を選択すれば,kに垂直で空間的な偏極を持つ(D-2)個の状態は正のノルムを持ちます。
例えば,ξ=(ξμ)=(0,0,1,0,0,..,0),(0,0,0,1,0,..,0),..,(0,0,0,0,0,..,1)のような(D-2)個の空間的偏極ベクトルを考えることができます。
そして,もしも状態がk2=M2<0 のタキオンなら,ベクトルkは空間的なので時間成分k0がゼロであるようにkの座標を選ぶことができます。すると,最後の(D-1)個目の状態の偏極ξ=(ξμ)は時間的(time-like)であり,-ξ2=-ξμξμ<0 となってノルムは負になります。
すなわち,ξk=ξμkμ=0 を与える最後の偏極ベクトルとして例えば,ξ=(ξμ)=(1,0,0,0,0,..,0)と取ることができるわけです。
一方,もしもk2=M2>0 なら最後の(D-1)個目の状態のξも他の(D-2)個の状態と同じく空間的で,偏極ξは-ξ2=-ξμξμ>0 を満たし正のノルムを持ちます。(例えばξ=(ξμ)=(0,1,0,0,0,..,0)と選べます。)
最後に質量がゼロ,つまりk2=M2=0 (光的)なら(0,1)平面内のベクトルkの成分はk0=±k1となります。
このとき,ξμkμ=ξ0k0-ξ1k1=0 なる必要条件から,(D-1)個目の偏極ベクトルはξ=(ξμ)=(ξ0,ξ1,0,0,..,0),ξ0=±ξ1,例えばξ=(ξμ)=(1,1,0,0,0,..,0)と選ぶことができて,-ξ2=-ξμξμ=0 となり,この状態のノルムはゼロです。
以上から,-ξ2=-ξμξμ<0 によって負ノルムが生じない条件はベクトルkが空間的または光的であること,つまりk2=M2≧0 であることが必要と考えられます。
この条件は,等式-α'k2=a-1 により,a-1≦0 を意味します。よって,ゴーストが存在しないための最初の条件:a≦1が得られます。
特に,この条件の境界のa=1 の場合には,スカラー基底状態|0;k>はα'k2=-a=-1 により,k2=M2=-1/α'<0 のタキオン状態ですが,最初の励起状態であるξα-1|0;k>ではk2=M2=0 となるので,これの示すベクトル粒子の質量はゼロです。
質量がゼロのベクトル粒子のケースにはL1補助条件:L1(ξα-1)|0;k>=0 ,またはξk=ξμkμ=0 は丁度質量がゼロの光子(電磁場Aμ)のQED(量子電磁力学)における共変ゲージ条件∂μAμ=0 に対応しています。
そして,丁度,QEDの共変グプタ・ブロイラー(Gupta-Bleuler )量子化での∂μAμ=0 と同じように,L1補助条件ξk=ξμkμ=0 は"横偏極を持つ(D-2)個の正ノルム状態=(D-2)個の横波状態"と1個のゼロノルムの縦波状態:ξμ=kμを許される偏極として残します。
そして,観測にかかるS行列からは最後の縦波のゼロノルム状態が解離することを示す必要があります。
場の理論では縦波ゼロノルム状態の解離はゲージ不変性とカレントの保存から導かれましたが,弦理論でもこのことを具体的に証明することは可能です。
(第1章序文(introduction)では重力のワード・高橋恒等式(Ward-Takahashi identity)の項目の議論で,これを証明する1つのアプローチをスケッチしました。)
しかし,我々は今のところ明らかにされているより深い構造について不完全な理解にしか到達していません。
aが臨界値a=1を取るときの最初の励起レベルξα-1|0;k>は,一般には無限個存在する"ゼロノルム状態=ヌル状態"の最初の例を与えています。この特殊な励起状態に関して見出される結果は,以下の考察によって一般化することができます。
任意の状態|φ>は,それが拘束:Lm|φ>=0 (m>0),かつ(L0-a)|φ>=0 を満たすなら物理的状態と呼ばれます。
一方,(L0-a)|ψ>=0 に従う状態|ψ>が,あらゆる物理的状態|φ>と直交するとき,すなわち,|ψ>が全ての物理的状態|φ>に対して<φ|ψ>=0 を満たすなら,これは"擬似状態"であるといわれます。
任意の擬似状態|ψ>は,(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて,常に|ψ>=Σn>0L-n|χn>と表わすことができることがわかります。
※(訳注30):(L0-a)L-n|χn>={[L0,L-n]+L-n(L0-a)}|χn>=L-n(L0-a+n)|χn>=0 より,|ψ>=Σn>0L-n|χn>なら(L0-a)|ψ>=0 であって,|φ>が物理的状態なら,n>0 のときLn|φ>=0 ですから,<φ|L-n|χn>=<χn|Ln|φ>*=0 となります。
そこで,|ψ>=Σn>0L-n|χn>と表わせることは|ψ>が擬似状態であるための十分条件になっています。
(訳注30終わり)※
|ψ>=Σn>0L-n|χn>の右辺の無限級数は実際にはn≧3 に対する項:L-n|χn>のL-nをL-1とL-2の交換子の繰り返しによって表現することができることがわかります。
すなわち,例えばL-3~[L-1,L-2]なる同一視が可能であり,L-4はL-1,L-2,L-3で表現できるので,|ψ>=Σn>0L-n|χn>は右辺を短縮して切り取った表現として|ψ>=L-1|χ1>+L-2|χ2>,(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 と簡単に書くことができるわけです。
※(訳注31):(L0-a+3)|χ3>=0 を満たす|χ3>に対して|χ1>≡L-2|χ3>,|χ2>≡-L-1|χ3>と置けば,(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 が満たされ,L-1|χ1>+L-2|χ2>=[L-1,L-2]|χ3>=L-3|χ3>が成立します。
そこで,L-3|χ3>はL-3|χ3>=L-1|χ1>+L-2|χ2>なる形で表現されることがわかります。
そして,n≧4のL-n|χn>もこうした [L-1,L-2],[[L-1,L-2],L-1]etc.のような交換子の繰り返しの組み合わせによってL-n|χn>=L-1|χ1>+L-2|χ2>なる形に表現可能であると予想されます。
(訳注31終わり)※
|ψ>=Σn>0L-n|χn>,あるいは|ψ>=L-1|χ1>+L-2|χ2>は確かに全ての物理的状態|φ>と直交します。なぜなら,<φ|ψ>=Σm=12<φ|L-m|χm>=Σm=12<χm|Lm|φ>*=0 となるからです。
任意の擬似状態|ψ>が(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて|ψ>=Σn>0L-n|χn>と表わすことができること,したがって(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 に従う状態|χ1>,|χ2>を用いて|ψ>=L-1|χ1>+L-2|χ2>の形に表現できることを見るために,|ψ>が|ψ>=Σn>0L-n|χn>の形なら演算子:O≡|ψ><ψ|があらゆる物理的状態を消滅させることに着目します。
(既に,|ψ>=Σn>0L-n|χn>が擬似状態であるための十分条件であることは示しましたが必要条件であることを示します。)
※(訳注32):(訳注30)で既に示したように,任意の物理的状態|φ>について<φ|L-n|χn>=<χn|Ln|φ>*=0 が成立しますから,O|φ>=Σm,n>0L-m|χm><χn|Ln|φ>=0 です。
つまり演算子O≡|ψ><ψ|は,全ての物理的状態を消滅させます。
(訳注32終わり)※
一般的な物理的状態に対する唯一の制限はm>0 の任意のLmによって消滅させられることですから,Oが任意の物理的状態を消滅させるということは演算子群:X-nを係数としてO=Σn>0X-nLnと展開できることを意味します。
O=|ψ><ψ|なので,これは任意の擬似状態|ψ>が(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて|ψ>=Σn>0L-n|χn>と表わせることを示しています。
※(訳注33):|ψ><ψ|=Σn>0X-nL-nより,<x|ψ>≠0 なる任意の状態|x>に対し<x|ψ><ψ|=Σn>0<x|X-nLnです。これのエルミート共役を取ると,<ψ|x>|ψ>=Σn>0L-nX-n+|x>です。故に|ψ>=Σn>0L-nX-n+|x>/<ψ|x>です。
そこで,|χn>≡X-n+|x>/<ψ|x>と定義すれば,|ψ>=Σn>0L-n|χn>となります。さらに,(L0-a)|ψ>=0 なる仮定によって(L0-a+n)|χn>=0 が成立することもわかります。
(訳注33終わり)※
さて,擬似状態|ψ>が物理的状態でもあるときには,何か特別のことが生じます。|ψ>は擬似状態なので全ての物理的状態|φ>と直交しますから<φ|ψ>=0 ですが,物理的状態でもあるので,Lm|ψ>=0(m>0),(L0-a)|ψ>=0 を満たします。
それ故,特に自分自身とも直交しますから<ψ|ψ>=0 です。あるいは|ψ>=Σn>0L-n|χn>と表わせば,<ψ|ψ>=Σm>0<χm|Lm|ψ>=0 です。
よって,こうした擬似状態かつ物理的状態である状態|ψ>はゼロノルムを持つことがわかります。これらをヌル物理的状態と呼びます。
特に,Lm|χ~>=0 (m>0),(L0-a+1)|χ~>=0 を満たす任意の状態|χ~>によって|ψ>≡L-1|χ~>なる形の擬似状態を作ると,これのノルムは<ψ|ψ>=<χ~|L-1|ψ>=0 となるので,これはゼロノルム状態となっています。
|χ~>は演算子α0μの固有状態としてはゼロ運動量状態:|0;0>であることも可能ですが,任意の状態はpμだけシフトできます。
|ψ>≡L-1|χ~>はさらに擬似状態であることに加えて,L1|ψ>=0なるL1補助条件を除いて物理的状態であるためのあらゆる条件を満足しています。
そして,アノマリーを含むヴィラソロ代数[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nを用いると,L1|ψ>=L1L-1|χ~>=2L0|χ~>=2(a―1)|χ~>となります。そこで,a=1ならL1|ψ>=0 も満足されます。
しかし,D=26次元ではゼロノルム状態の数はもっと劇的に増加します。これは,|ψ>≡(L-2+γL-12)|χ~>なる構造を持つ擬似状態を考えることで発見できます。ただし,a=1とし|χ~>は(L0-a+2)|χ~>=(L0+1)|χ~>=0 を満足するとします。
これから,擬似状態であるための条件であり物理的状態であるための条件の1つである(L0-a)|ψ>=(L0-1)|ψ>=0 が確かに満たされていることがわかります。
さらに,|ψ>は明らかにm≧3のLmによっては消滅されるので,アノマリーを含むヴィラソロ代数:[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nを用いて,|ψ>が残りの条件L1|ψ>=0,L2|ψ>=0 をも満足することが可能かどうかを調べます。
簡単な計算によって,これら2つの条件は3-2γ=0 とD/2-(4+6γ)=0 を与えることがわかります。これから,γ=3/2,D=26が得られます。
※(訳注34):L1|ψ>=(L1L-2+γL1L-12)|χ~>=(3L-1+2γL-1L0)|χ~>=(3-2γ)L-1|χ~>=0より3-2γ=0 です。また,L2|ψ>=(L2L-2+γL2L-12)|χ~>=(4L0+D/2+6γL0)|χ~>={D/2-(4+6γ)}|χ~>=0 よりD/2-(4+6γ)=0を得ます。
(訳注34終わり)※
そこで,|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>とすれば,これは擬似状態かつ物理的状態ということになります。もちろん,<ψ|ψ>=<χ~|L2+(3/2)L12|ψ>=0 となっています。
こうして,a=1,D=26の場合には|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>の形のはるかに多くのゼロノルム物理的状態が存在することがわかりました。
前の|ψ>=L-1|χ~>のゼロノルム物理的状態とは異なり,この2番目のタイプの状態のノルムはD=26のときに限ってゼロになります。
|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>の形の最初の例としては,{L-2+(3/2)L-12}|0;p>なる形が考えられます。
計算すると,これは|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|0;p>={-(1/2)α-1α-1-(5/2)pα-2+(3/2)(pα-1)2}|0;p>と書けます。
ただし,a=1であり|χ~>=|0;p>は(L0+1)|0;p>=(-p2/2+1)|0;p>=0 を満たすのでp2=2です。この|ψ>のノルムは(D-26)/2となるので,予期したようにD=26で消えます。
※(訳注36):L-2=(-1/2)Σn=-∞∞α-2-nαn,L-1=(-1/2)Σn=-∞∞α-1-nαnです。そこで,L-2の右辺の級数で状態L-2|0;p>にゼロでない寄与をする項はn=0,-1,-2の項だけです。
それ故,L-2|0;p>=(-1/2)(α-2α0+α-1α-1+α0α-2)|0;p>={-(1/2)α-1α-1-α-2α0}|0;p>={-(1/2)α-1α-1-pα-2}|0;p>となります。
一方,L-1の右辺の級数の項でL-12|0;p>にゼロでない寄与をするのはn=0,1,-1,-2の項だけです。
L-12|0;p>=(1/4)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)|0;p>=(1/4)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)(α-1α0+α0α-1)|0;p>=(α-1α0)2-α-2α0)|0;p>={(pα-1)2-pα-2}|0;p>となります。
そして,|ψ>={-(1/2)α-1α-1-(5/2)pα-2+(3/2)(pα-1)2}|0;p>より,|ψ>のノルムは<ψ|ψ>=(1/4)<0;p|α1μα1μα-1να-1ν|0;p>+(25/4)p2<0;p|α2α-2|0;p>+(9/4)pμpνpρpσ<0;p|α1μα1να-1ρα-1σ|0;p>-2(3/4)<0;p|α1μα1μpνα-1νpρα-1ρ|0;p>となります。
この式の右辺の第1項は,(1/4)<0;p|α1μα1μα-1να-1ν|0;p>=-(1/2)ημν<0;p|α1μα-1ν |0;p>=(1/2)ημνημν=(1/2)Dとなり,第2項は(25/4)p2<0;p|α2α-2|0;p>=-(25/2)p2=-25となります。
また,第3項は(9/4)pμpνpρpσ<0;p|α1μα1να-1ρα-1σ|0;p>=(9/2)(p2)2=18,第4項は-2(3/4)<0;p|α1μα1μpνα-1νpρα-1ρ|0;p>=-3p2=-6 となりますから,結局<ψ|ψ>=(1/2)D-25+18-6=(1/2)D-13=(D-26)/2 です。
(訳注36終わり)※
時空次元が26より小さいとき,すなわちD<26のときには,|ψ>のノルム:<ψ|ψ>=(D-26)/2が負になるという事実は重要ではありません。というのは,D<26の場合には|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|0;p>はL1|ψ>=0 を満足しないので物理的状態ではないからです。
現実に負ノルムの物理的状態が出現するのはD>26の場合です。例として|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>なる形の状態|φ>を考えます。ただし,(L0-a)|φ>=(L0-1)|φ>=0 が満たされるようにp2=2とします。
簡単な計算から,この状況で状態|φ>がL1|φ>=L2|φ>=0 に従うのは,c2=c1(D-1)/5,c3=c1(D+4)/10 のときであることがわかります。
※(訳注37):α02=p2=2 とすると,L0α-1α-1|0;p>={(-1/2)α02-α1α-1}α-1α-1|0;p>=(-1+2)α-1α-1|0;p>=α-1α-1|0;p>です。
それ故,L0(pα-1)2|0;p>=(pα-1)2|0;p>も成立します。また,L0α-2|0;p>={(-1/2)α02-α2α-2}α-2|0;p>=α-2|0;p>も成立します。
以上から,p2=2 で|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>なら,L0|φ>=|φ>なる等式が成立し,確かに(L0-1)|φ>=0 なる条件が満たされることがわかります。
次に,L1=(-1/2)Σn=-∞∞α1-nαnなので,L1α-1α-1|0;p>=-α0α1α-1α-1|0;p>=2α0α-1|0;p>=2(pα-1)|0;p>です。
同様に,L1(pα-1)2|0;p>=-α0α1(pα-1)(pα-1)|0;p>=2p2(pα-1)|0;p>=4(pα-1)|0;p>,L1(pα-2)|0;p>=-α-1α2(pα-2)|0;p>=2(pα-1)|0;p>です。
そこで,L1|φ>=0 なる条件が満たされるためには2c1+2c2+4c3=0,すなわちc1+c2+2c3=0 が成立する必要があります。
一方,L2=(-1/2)Σn=-∞∞α2-nαnですから,L2α-1α-1|0;p>=(-1/2)α1α1α-1α-1|0;p>=-D|0;p>,L2(pα-1)2|0;p>=(-1/2)α1α1(pα-1)(pα-1)|0;p>=p2|0;p>=2|0;p>,L2(pα-2)|0;p>=-α0α2(pα-2)|0;p>=2p2|0;p>=4|0;p>ですから-c1D+4c2+2c3=0 を得ます。
そして,連立方程式:c1+c2+2c3=0,-c1D+4c2+2c3=0 を解けば,c2=c1(D-1)/5,c3=c1(D+4)/10 が得られます。
(訳注37終わり)※
この場合,|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>のノルムを計算すると,<φ|φ>=2c12D-4c22+8c32-8c1c3=2c12(D-1)(26-D)となります。
それ故,D>26の場合には物理的スペクトルの中にゴーストが存在することになります。
後に証明される一般的規則では,a=1,かつD=26,またはa≦1,かつD≦25であれば物理的状態のスペクトルはゴーストを持たないということがわかります。
a=1,かつD=26の場合には多くの余分なゼロノルム状態が存在し,物理的状態のスペクトルはα振動子の"(D-2)個=24個"のセットによって生成されるものと同数の伝播モードを持ちます。
一方,後者のa≦1,かつD≦25の場合にはゼロノルム状態ははるかに少なく,物理的状態のスペクトルは"(D-1)個≦24個"のセットから生成されます。
また,a=1,かつD=26の場合には弦は横波励起のみを持ち,一方,a≦1,かつD≦25の場合には横波だけでなく縦波モードも有するともいえます。こうした事実は「ゴースト非存在の定理(no-ghost theorem)」の証明に関連して出現してきます。
ここでの定式化での自由理論の研究だけからは時空次元が26に等しくなければならないと結論付けることはできません。
その理由は,理論がD=26に対してゴーストを持たないなら,そのαnμ振動子(μ=0,1,2,..,25)が例えばμ=25の基底状態,つまり成分αn25がゼロの状態から成るD=25の部分空間もまたゴーストを持たないからです。
この定式化においてツリーレベルで示すのが可能と思われる最大のことは,D=26の空間が最も自然であり,D<26の空間は全体の26次元空間に属しそれから任意に切り取った部分空間であろうということです。
D=26のみに存在する余分なゼロノルム状態の発見が,このことの第一のしるしです。というのは,このゼロノルム状態は非常に便利な意味を持つからです。
前に述べた質量がないベクトルメソンの縦波モード状態の解離のように,物理的に有意な理論においてはゼロノルム状態は場の理論のゲージ不変性に類似したある根底的な原理によってS行列から分離される必要があります。
そこで,D=26に対して余分なゼロノルム状態が発生することは,この理論が拡張されたゲージ不変性を持ち,最も興味深い可能性を含む理論であることを示唆していると思われます。
同様に,正確にa=1に対してゼロノルム状態の無限個の連鎖があることも,これが最も興味深いケースであることを暗示しています。
そこで,以下に続く節では,試しに開弦の基底状態をa=1に対応した平方質量が-2のタキオンと考え,第1励起レベルを質量がゼロのベクトルメソンと考えます。
こうした質量がゼロのゲージ粒子の存在は臨界次元における弦理論の非常に特別な性質の1つの側面を示していると言えます。
今日はここまでにします。
参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」Cambridge University Press)
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