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2009年4月16日 (木)

多項式の判別式と終結式について

2009年3/11の数論関係の記事「フェルマー(Fermat)の定理と類体論(1) の続きとして楕円曲線の群構造について書こうとしていましたが,参考書を読んでいると証明抜きで代数幾何学の定理を応用したものなどが出てきました。

こういうものは見過ごせば,付け焼刃的に理解することはできますが,私の悪い癖で数論よりも代数幾何学の中の射影幾何学などにも興味が湧きました。

 

そこで自分の本棚を探してみると,唯一持ってはいても読んだことのない「代数幾何入門」(上野健璽著(岩波書店))という本を見つけたので,それを最初から勉強することにしてそれが終わってから数論に戻ろうかとか思いをめぐらしました。

代数幾何学というのは,歴史的には式で定義された図形の幾何学などを意味し,デカルト・フェルマー(Descartes-Fermat)に始まる座標幾何学,または解析幾何学の導入と共に誕生したものらしいです。

しかし,いきなり一般論に入るのはやめて,ペル方程式のようなディオファントスの方程式の例題でも考えようとして「数論入門講義(数と楕円曲線)」(J.S.Chahel著;織田進訳(共立出版))を見つけて読んでいると,次のような終結式や判別式に関する項目が出てきました。

2つの多項式をf(x)=a0+a1x+a22+...+ann (degf=n),g(x)=b0+b1x+b22+...+bmm (degg=m)とするとき,係数(a0,a1,a2,..an)を1列ずつずらしてm行並べ,その下に(b0,b1,b2,..bm)を1列ずつずらしてn行並べた(m+n)×(m+n)の行列式をf(x),g(x)の終結式と呼び,R(f,g)と書く。

ただし,ここではf(x),g(x)はある体kの上の多項式環k[x]の元とし,degf,deggはそれぞれf,gの次数を表わすとする

また,f(x),g(x)の最大公約数(g.c.d)をd(x)≡(f(x),g(x))と書くことにする。このとき,次の定理が成り立つ。

[定理1]:d(x)=(f(x),g(x))とする。このとき,degd≧1であるための必要十分条件はR(f,g)=0 である。

(証明)d=(f,g)なので,f=df1,g=dg1と書けばfg1=f1g=df11が成立します。そこで,degd≧1であるための必要十分条件はdegf1<degf,degg1<degg,かつfg1=f1gを満たすf1(x),g1(x)が存在することです。

(x)=a0+a1x+a22+...+ann (degf=n),g(x)=b0+b1x+b22+...+bmm (degg=m)と書きます。

 

degf1<degf,degg1<deggを満たすf1,g1が存在してfg1=f1gなる恒等式(identity)が成立するならdegf1≦n-1,degg1≦m-1ですから,f1(x)=α1+α2x+...+αnn-1,g1(x)=β1+β2x+...+βmm-1とすると,fg1=f1gは両辺の係数を等置する(m+n)個の等式:a0β1=b0α1,a1β1+a0β2=b1β1+b0β2,...,αnm=βmnが成立することを意味します。

 この(m+n)個の等式はα12,...,αnのn個のf1(x)の係数の組をn成分の列ベクトルαt12,...,αn)で,β12,..,βmのm個のg1(x)の係数の組をn成分の列ベクトルβt12,...,βm)で表現すると,(a0,0)β=(b0,0)α,(a1,a0,0)β=(b1,b0,0)α,(a2,a1,a0,0)β=(b2,b1,b0,0)α,...,となります。

 

 ここで,(a0,0),(a1,a0,0),(a2,a1,a0,0),...はm成分の行ベクトル(row vector),(b0,0),(b1,b0,0),(b2,b1,b0,0),...はn成分の行ベクトルで,これら(m+n)個の式の両辺はそれぞれベクトルの内積の形になっています。

そこで,さらにβと-αを並べた(m+n)成分の列ベクトル:γt12,...,βm,-α1,-α2,...,-αn)を作れば,上の(m+n)個の等式は(a0,0,b0,0)γ=0,(a1,a0,0,b1,b0,0)γ=0,(a2,a1,a0,0,b2,b1,b0,0)γ=0 ...となります。

 

 この表現では,係数(a0,0,b0,0),(a1,a0,0,b1,b0,0),(a2,a1,a0,0,b2,b1,b0,0)も(m+n)成分の行ベクトルです。

 

結局,(m+n)個の等式は係数の行ベクトルを(m+n)行並べたものを(m+n)×(m+n)の正方行列Aと考えれば,等式系はAγ0 なる行列形式の斉次連立方程式になることがわかります。

このとき,行列Aの転置tAは,明らかにそれの行列式として終結式R(f,g)を与える行列に一致しています。

 

したがって,R(f,g)=detA=0 なる等式の成立がAγ0 γt12,...,βm,-α1,-α2,...,-αn)の自明でない解を持つための必要十分条件になります。つまり,R(f,g)=0 がdegd≧1 であるための必要十分条件です。(証明終わり)

[定義]:f(x)=a0+a1x+a22+...+ann (an≠0)をk[x]における多項式とするとき,Δ(f)≡(-1)n(n+1)/2R(f,f')/anをf(x)の判別式という。

 

 ただし,f'(x)はf(x)の導多項式と呼ばれる多項式でf'(x)≡a1+2a2x+...+nann-1で定義される。

 特にf(x)=ax2+bx+cならf'(x)=2ax+bより,R(f,f')=ab2-4a2cですから,Δ(f)=b2-4acです。また,f(x)=x3+Ax+Bならf'(x)=3x2+Aより,R(f,f')=4A3-27B2ですから,Δ(f)=-4A3+27B2です。

(x)が重根を持つのはf(x)とf'(x)が1次以上の共通因数を持つときですから,[定理1]によりこれはR(f,f')=0,すなわちΔ(f)=0 と同値です。

[定理2]:f(x),g(x)をk[x]における多項式とする。このときk[x]の中に多項式F(x),G(x)が存在してR(f,g)=F(x)f(x)+G(x)g(x)が成り立つ。

(証明)f(x)=a0+a1x+a22+...+ann (an≠0),g(x)=b0+b1x+b22+...+bmm (bm≠0)とします。

 

 R(f,g)=0 ならfg1=f1gなる1次以上の多項式f1,g1が存在するので,F(x)≡g1(x),G(x)≡-f1(x)とおけば, 0=R(f,g)=F(x)f(x)+G(x)g(x)となります。

そこで,R(f,g)≠0 と仮定してr(x)≡R(f,g)と置きます。

 

そうして,連立方程式系xif(x)=a0i+a1i+1+a2i+2+...+ani+n (i=0,1,...,m-1),xjg(x)=b0j+b1j+1+b2j+2+...+bmj+m (j=0,1,...,n-1)を考えます。

 

t(1,x,x2,...,xm+n-1),t(f(x),xf(x),...,g(x),xg(x),...)なるベクトル表現を採用すれば,これは(m+n)次の正方行列Aを係数とする行列形式の(m+n)元連立1次方程式:Aとなります。                        

このとき,明らかにR(f,g)=det(A)=r≠0 です。

 

det(A)≠0 ですから,Aの逆行列:A-1が存在します。これは,Aの余因子Aijを成分とする行列を(adjA)として,A-1=(adjA)/rと書けますから,これをAの左から掛けて解として=(adjA)/rが得られます。

 

そして,=(adjA)/rの第1行目の式は1=[(Σj=1m1jj-1)f(x)+(Σj=m+1m+n1jj-m-1)g(x)]/r(x)となります。

 

そこでF(x)≡Σj=1m1jj-1,G(x)≡Σj=m+1m+n1jj-m-1と置けばr(x)=F(x)f(x)+G(x)g(x)が得られます。(証明終わり)

などなどと続いていきますが,ここで私がかつて学生時代に読んだ「代数学講義」(高木貞治 著(岩波書店))とは判別式,終結式の定義が全然違っているので,果たして同じものだろうか?という疑問が湧きました。

しかし,上で見たように上述の定義での判別式Δ(f)は,fがf(x)=ax2+bx+cの2次式ならΔ(f)=b2-4ac,f(x)=x3+Ax+Bの3次式ならΔ(f)=-4A3+27B2で,これは両者の定義で全く同じですから,恐らく同じものなのでしょうが,本当に同じであることかどうかを証明しようという気になりました。

従来から知っていた多項式の判別式,終結式の定義は次のようなものでした。

まず,n個の変数x1,x2,...,xnがあるとき,差積PをP≡(x1-x2)(x1-x3)...(x1-xn)(x2-x3)...(x2-xn)...(xn-1-xn)で定義します。このPは対称式ではなくて交代式ですが,P2は対称式です。

 

そして判別式の定義は「f(x)=a0+a1x+a22+...+annのn個の根をx1,x2,...,xnとしてこれらの差積をPで表わすとき,D≡an2(n-1)2を方程式f(x)=0,または多項式f(x)の判別式という。」というものです。

 

上記の別の定義ではfの判別式はΔ(f)と表記されていましたが,ここではDです。

また,終結式の定義は「f(x)=a0+a1x+a22+...+ann (an≠0),およびg(x)=b0+b1x+b22+...+bmm (bm≠0)の根をそれぞれα12,...,αn,およびβ12,...,βmとするとf(x)=anΠμ=1n(x-αμ),g(x)=bmΠν=1m(x-βν)ですが,R≡anmmnΠμ,νμ-βν)をf(x),g(x)の終結式と呼ぶ。」という形で与えられています。

 

別の定義ではf,gの終結式はR(f,g)と表記されています。

そして,f(x)=a0+a1x+a22+...+ann (an≠0)に対して導多項式はf'(x)≡a1+2a2x+...+nann-1で与えられますから,f'(x)=anΠν=1n-1(x-βν)と書けばf'(αμ)=anΠν=1n-1μ-βν)となります。

 

それ故,この場合従来から知っていた定義でのfとf'の終結式はR=R(f,f')=an2n-1Πμ,νμ-βν)=ann-1Πμf'(αμ)となることがわかります。

ところが,f(x)=anΠμ=1n(x-αμ)のときf'(x)/f(x)=Σμ=1n{1/(x-αμ)}ですから,f'(x)=Σμ=1n{f(x)/(x-αμ)}と表現できます。

 

それ故,f'(αμ)=Πμν≠μnν-αμ)}と表現できます。

 

したがって,従来の終結式はR=R(f,f')=ann-1Πμf'(αμ)=an2n-1Πν{μ≠νμ-αν)}となります。

一方,従来の定義でのf(x)の判別式DはP=(α1-α2)(α1-α3)..(α1-αn)(α2-α3)...(α2-αn)...(αn-1-αn)としてD=an2(n-1)2で与えられますから,D=an2(n-1)μ<νμ-αν)}2=(-1)n(n+1)/2n2(n-1)Πμ≠νμ-αν)です。

ここで,最右辺に符号の係数(-1)n(n+1)/2があるのは,次のようにして示されます。

 

もしもα12,...,αnの中に1組でも重根があればP=0 によりD=0 なので符号係数などは関係ないです。

 

そうでない場合には全ての根が異なるため,αμ<αν,つまり(αμ-αν)の符号がマイナスになる(αμν)の対の数はn個の中から2個を取り出す組み合わせの数n(n+1)/2に等しいからです。

したがって,R=R(f,f')=an2n-1Πμ≠νμ-αν),D=(-1) n(n+1)/2n2(n-1)Πμ≠νμ-αν)によって,D=(-1) n(n+1)/2R(f,f')/anとなることがわかりました。

これは,先に与えた別の定義での終結式R(f,g)による判別式Δ(f)の定義:Δ(f)≡(-1)n(n+1)/2R(f,f')/anと全く同じ形です。

したがって,終結式R(f,g)の2つの定義が同じものであることを証明しさえすれば,判別式については自動的にD=Δ(f)であることになります。

(証明)f(x)=a0+a1x+a22+...+ann (an≠0),およびg(x)=b0+b1x+b22+...+bmm (bm≠0)の根をそれぞれα12,...,αn,およびβ12,...,βmとすると,f(x)=anΠμ=1n(x-αμ),g(x)=bmΠν=1m(x-βν)です。

 そして根と係数の関係としてa0/an,a1/an,...,an-1/anは全てf(x)=0 の根α12,...,αnの基本対称式,b0/bm,b1/bm,...,bm-1/bmは全てg(x)=0 の根β12,...,βmの基本対称式で表わされますから,行列式で定義された方のR(f,g)はan,bmおよびα12,...,αn12,...,βmの関数です。

 

 つまり,R(f,g)はR(an,bm12,...,αn12,...βm)なる形の関数です。

一方,[定理2]の証明では(m+n)元の連立方程式系xif(x)=a0i+a1i+1+a2i+2+...+ani+n (i=0,1,...,m-1),xjg(x)=b0j+b1j+1+b2j+2+...+bmj+m(j=0,1,...,n-1)を想定しました。

 

そして,この方程式の解の組:1,x,x2,...,xm+n-1を列ベクトルt(1,x,x2,...,xm+n-1)で,右辺の関数の組:f(x),xf(x),...,g(x),xg(x),...を列ベクトルt(f(x),xf(x),...,g(x),xg(x),...)で表わせば,係数を(m+n)次の正方行列Aとして元の方程式を行列形式の1次方程式:Aの形に書くことができて,係数Aの行列式が終結式R(f,g)に等しいことを見ました。

この連立一次方程式Aにおいて,仮に代数方程式f(x)=0 とg(x)=0 に共通根x=γが存在すれば,γt(1,γ,γ2,...,γm+n-1)と書くとγではAγ0 となるので斉次方程式A0 に自明でない解γが存在することになり,そのときにはR(f,g)=det(A)=0 です。

そこで,先に書いたan,bm,およびαμν(μ=0,1,2,...,n,ν=0,1,2,...,m)の関数としてのR(f,g)の表現式:R(f,g)=R(an,bm12,...,αn12,...,βm)にαμ=βν=γを代入するとR(f,g)=0 となることがわかります。

 

すなわち,同じことですがαμにβνを代入するとR(f,g)=0 となります。

これは,R(f,g)=R(an,bm12,...,αn12,..,βm)が全ての対(μ,ν)に関して因数(αμ-βν)を持つことを意味します。

 

それ故,R(f,g)はΠμ,νμ-βν)pなる因子を持つはずです。

 

因子(αμ-βν)pのベキpが共通の値であるとしたのはR(f,g)が根の対称式だからです。

また,R(f,g)は係数(a0,a1,a2,...an)を1列ずつずらしてm行並べ,その下に(b0,b1,b2,...,bm)を1列ずつずらしてn行並べた(m+n)×(m+n)の行列式ですが,a0,a1,a2,...,anの各々はα12,...,αnの対称式のan倍,b0,b1,b2,...bmの各々はβ12,..,βmの対称式のbm倍ですから,R(f,g)はα12,...,αnの対称式,β12,...,βmの対称式に係数anmmnを掛けたもので与えられることがわかります。

一方,f(x)=a0+a1x+a22+...+ann=anΠμ=1n(x-αμ)により,両辺の1,x2,x,...,xnの係数を比較すればa0=anΠμ=1nαμ,a1=-anΣν=1nΠμ=1nαμ)/αν...etc.が得られますから,ak/anのαμによる次数は(n-k)です。

 

同様に,bl/bmのβνによる次数は(m-l)です。

 

これから,m行の(a0,a1,a2,...,an)とn行の(b0,b1,b2,...,bm)からなる成るR(f,g)の行列式のゼロでない全ての展開項の根αμνによる次数はmnであることがわかります。

したがって,行列式R(f,g)の根の対称式因子Πμ,νμ-βν)pは高々mn次の式である必要があるため,(αμ-βν)pのベキ指数pは1であると結論されます。

 

すなわち,R(f,g)=Πμ,νμ-βν)×(根αμνを全く含まない因子)です。

以上から,行列式で定義されたR(f,g)はanmmnΠμ,νμ-βν)の定数倍であることまでわかりました。

 

後は定係数を決めるだけですが,既に2次式と3次式の判別式について2つの定義が一致することがわかっているので後は手抜きで定係数=1だということで証明を終わりにします。(証明終わり)

なお,上述の証明に際しては, 勝手に以下のホームページ(HP)を参照させて頂きました。感謝!です。

 

終結式の行列式表現 (「青空学園数学科(書庫)」)

イヤ,単なるパクリかな?ちょっと手抜き記事でした。。。

 

(別に,演習問題を解くことで勉強しなければいけないような学生ではないので,今のように読んでも理解がかなり困難であるわけでもなく簡単明瞭な証明が既にあるならワザワザ最初から証明する必要も無いという安易なジジィです。。)

 

参考文献:J.S.Chahel著;織田進 訳「数論入門講義(数と楕円曲線)」(共立出版),高木貞治 著「代数学講義」(岩波書店)

 

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