超弦理論(23)(2-12)
超弦理論(superstring theory)の続きです。
ずいぶん間が空きましたが,またまた,超弦理論でツナギです。
前記事の最後で述べたゼータ関数正則化の幾分発見的な手法の示すところは,光錐(light-cone)定式化のローレンツ共変性が,a=1,D=26なる条件を要求することでした。
以下では,ローレンツ生成子Jμνの体系的研究により,こうした条件a=1,D=26が実際にローレンツ不変性にとって必要十分であることを厳密に証明します。
さて,D次元の"ローレンツ生成子=角運動量演算子":Jμνは以前に次の形で定義しました。
すなわち「超弦理論(15)(2-4)」において,Jμν=lμν+Eμν,
lμν=xμpν-xνpμ, Eμν=-iΣn=1∞[(α-nμαnν-α-nναnμ)/n]と定義しました。
今の,光錐ゲージではゲージがローレンツ不変でないので,座標へのローレンツ変換の効果はゲージに敏感なものでなければなりません。
変換の幾つかは,+方向を他の方向に回転し,そこでゲージ条件を復元するためには,再パラメータ化(これもゲージ変換です)を実行する必要があります。
これを補償再パラメータ化と呼びます。
ゲージ条件に影響する変換はJ+-とJi-によって生成されるはずです。そして,これらは潜在的にアノマリーを有する変換であろうと予期されます。
このアノマリーを相殺させることが,aとDにある種の制限を与えると予想されます。
残りの,ローレンツ生成子Jij(i,j=1,2,...,D-2)は,光錐ゲージの持つ明白な対称性であるSO(D-2)を生成する横波空間に関連したものです。
まず,任意の再パラメータ化ξα(σ,τ)を許しながら,古典論での座標への無限小ローレンツ変換に対する一般的表現を考えます。
これはδXμ(σ,τ)=aμνXν(σ,τ)+ξα(σ,τ)∂αXμ(σ,τ)です。ただし,ξαはゲージ条件hαβ=ηαβと両立するように制限されています。
この制限は,既に述べたように,ξαが∂αξβ+∂βξα=Ληαβを満足すべきことを意味します。
一方,ゲージ条件X+(σ,τ)=x++p+τは,新座標系でもこれが保持されるために,δX+=a+νxν+a+νpντ=a+ν(xν+pντ)に従って変換されることを要求します。
なぜなら,ゲージ条件X+=x++p+τはδX+=δx++δp+τなら保持されますが,δxμ=aμνxν,δpμ=aμνpνより,δx+=a+νxν,δp+=a+νpνですから,δX+=δx++δp+τはδX+=a+ν(xν+pντ)を意味するからです。
一方,δXμ=aμνXν+ξα∂αXμより,δX+=a+νXν+ξ0∂0X++ξ1∂0X+=a+νXν+ξ0δp+です。
そこで,δX+=a+ν(xν+pντ)はa+νXν+ξ0p+=a+ν(xν+pντ)=a+νxν(τ)となります。ただし,xμ(τ)≡xμ+pμτです。
したがって,ξ0=a+ν{xν(τ)-Xν(σ,τ)}/p+によって変換のパラメータ成分ξ0が決まります。
そして,∂αξβ+∂βξα=Ληαβより∂0ξ1-∂1ξ0=0 ですから,ξ1=∫τdτ'(∂ξ0/∂σ)によりξ1も決まります。
これらの,座標Xνの1次関数であるξαの表現をδXμ(σ,τ)=aμνXν(σ,τ)+ξα(σ,τ)∂αXμ(σ,τ)に代入すると,非共変なゲージ固定を考慮したローレンツ変換の作用形式が得られます。
新しい重要な特徴は,ξαがXνについて1次なので,a+iを伴なうそうしたローレンツ変換が横座標Xiに非線形に作用することです。
量子論では,そうした双線形項はローレンツ代数でアノマリー源となる可能性があり,それを正規順序(normal-ordering)等で処理する必要があるかどうか?という繊細な争点を生み出します。
それ故,Jμν=lμν+Eμν,lμν=xμpν-xνpμ,Eμν=-iΣn=1∞[(α-nμαnν-α-nναnμ)/n]なる表現の生成子が,本当に正しくローレンツ代数:[Jμν,Jρλ]=iηνρJμλ-iημρJνλ-iηνλJμρ+iημλJνρを生成するかどうか?をチェックすることが重要になります。
交換子のほとんどは直線的にチェックできて,如何なるDに対しても正しい答を与えることがわかります。
しかし,Ji-の変換については注意が必要であると予期されます。
特に交換子:[Ji-,Jj-]はローレンツ不変性が成り立つなら消えてゼロとなる必要があります。しかし,特殊な制限下を除いてアノマリーに導きます。
※(訳注51):[Jμν,Jρλ]=iηνρJμλ-iημρJνλ-iηνλJμρ+iημλJνρをが成立するとします。
まず,Ji-=(Ji0-Ji,D-1)/21/2ですから,1≦i,j≦D-2 に対して[Ji-,Jj-]=(1/2)[Ji0-Ji,D-1,Jj0-Jj,D-1]=(1/2){[Ji0,Jj0]+[Ji,D-1,Jj,D-1]}となります。
(なぜなら,[Ji0,Jj,D-1]=[Ji,D-1,Jj0]=0 です。)
そして,[Ji0,Jj0]=-iη00Jij=-iJij,[Ji,D-1,Jj,D-1]=-iηD-1,D-1Jij=iJijです。
そこで,確かに[Ji-,Jj-]=0 となることが必要です。
(訳注51終わり)※
さて,光錐ゲージではEμ+=E+μ=0 です。
一方,Ei-はαn-の光錐ゲージでの展開:αn-=(1/p+)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞∞:αn-miαmi:}-aδn]を代入すると,横波振動子について3次式になります。
結果として,交換子[Ji-,Jj-]は6次ですが,高次の項は相殺されて,[Ji-,Jj-]=-(1/p+)2Σm=1∞{Δm(α-miαmj-α-mjαmi)}(係数Δmはc-数)なる形になり,振動子の2次の項で表わせることがわかります。
※(訳注52):(証明)Ji-=li-+Ei-=xip--x-pi-iΣn=1∞[(α-niαn--α-n-αni)/n], αn-=(1/p+)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞∞:αn-miαmi:}-aδn],p-=α0-です。
そして,[Ji-,Jj-]=[li-,lj-]+[li-,Ej-]+[Ei-,lj-]+[Ei-,Ej-]です。
特に,4つ以上の振動子を含んで6次の項となるのは交換子[Ei-,Ej-]です。
これは,[Ei-,Ej-]=-Σn,m=1∞({1/(nm)}[α-niαn--α-n-αni,α-miαm--α-m-αmi])=-(1/p+)2Σn,m=1∞({1/(4nm)}[Σs=-∞∞Σk=1D-2{α-ni:αn-skαsk:-:αn-skαsk: α-ni},Σt=-∞∞Σl=1D-2{α-mj:αm-tlαtl:-:αm-tlαtl:α-mj}]です。
これは,確かにαniの6次の項になります。
特に,[Ei-,Ej-]=-(1/p+)2Σn,m=1∞({1/(nm)}[α-nip+αn--p+α-n-αni,α-mip+αm--p+α-m-αmi])と書きます。
既に,[p+αm-,p+αn-]=(m-n)p+αm+n-+A(m)δm+nであり[p+αn-,αmj]=-mαn+mj,or [αni,p+αm-]=nαn+miであることを知っています。
交換子の恒等式:[AB,CD]=A[B,C]D+AC[B,D]+[A,C]BD+C[A,D]Bを使用します。
そうして,具体的に[Ei-,Ej-]を計算すると,[Ei-,Ej-]=-(1/p+)2Σn,m=1∞({1/(nm)}[mα-niαn-mjp+αm-+(n-m)α-nip+αm+n--nα-miαm-njp+αm-+p+α-n-nαn-miαmjp+
(m-n)p+α-n-m-αmjαni-p+α-m-mαm-njαni-α-ni{(n+m)p+αn-m-+A(n)δn-m}αmj+αnip+α-m-mαn+mj+
nαn+miαmjp+αn-+p+α-m-p+αn-nδm-nδij-nδn-mδijp+α-n-p+αm--p+α-n-α-mjnαn+mi-mα-n-mjp+αm-αni+αmj{(n+m)p+αm-n-+A(m)δm-n}αni])となります。
Ei-=-iΣn=1∞[(α-niαn--α-n-αni)/n]=(-i/2)Σn≠0[(:α-niαn-:-:α-n-αni:)/n]と書けるので,αnとα-nの順序を気にせずnと-nの変換が許されます。
また,n-m→-mなどの変換も,n,mが単なるパラメータなので許されます。
そこで,pα-の添字をp+αm+n-に,αiをα-niにαjをα-mjにそれぞれ添字を統一すると,{-(p+)2][Ei-,Ej-]=Σn,m≠0{(1/m)(p+αm+n-α-niα-mj+α-mjα-nip+αm+n--α-nip+αm+n-α-mj-α-mjp+αm+n-α-mj)}-Σn0{A(n)(α-niαnj-α-njαni)/n2]と書けます。
さらに,{-(p+)2][Ei-,Ej-]=-Σn≠0{A(n)(α-niαnj-α-njαni)/n2]+Σn,m≠0{(n/m)(α-miαmj-α-mjαmi)}です。
よって,結局αniの高次の項は消えて2次の項だけが残りアノマリーの形も決まります。(まだ,正規順序を考慮していないのでこれで最終形ではありません。)
そこで,[Ji-,Jj-]=-(1/p+)2Σm=1∞{Δm(α-miαmj-α-mjαmi)}と書けるはずです。係数Δmはc-数です。
(訳注52終わり)※
短いですが,今日はここまでにします。
参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
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