「電磁場の共変的量子化(中西-Lautrap理論)」の続きです。
PCのトラブルで,ちょっと間があきました。
今日は,一般的な不変デルタ関数を考察します。
無用な煩雑さを避けるため,素朴な質量mのKlein-Gordon方程式
に従う1成分の自由な中性スカラー場φ(x)の考察から始めます。
(※簡単のため,c=h/(2π)=1 の自然単位を採用します。)
自由な中性スカラー場φ(x)のLagrangian密度L0は,
L0(φ,∂μφ)=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ)
で与えられます。
(ただし,∂μφ≡∂φ/∂xμetc.です。)
φの変分δφに対して,作用S=∫L0(φ,∂μφ)d4xの変分
δSが停留値を取るべきであるという作用原理から,
場の運動方程式は,Euler-Lagrange方程式:
∂μ{∂L0/∂(∂μφ)}-∂L0/∂φ=0
で与えられます。
当然ながら,これは素朴なKlein-Gordon方程式:(□+m2)φ(x)=0
に一致します。
ここに□≡∂μ∂μ=∂2/∂t2-∇2で,これはD'Alembertian
と呼ばれる微分演算子です。
∇2はLaplace演算子(Laplacian)です。
正準共役な運動量密度演算子はπ(x)=∂L0/∂(∂0φ)
=∂0φ=∂0φで与えられます。
そこで,同時刻の正準交換関係は,
[π(x),φ(y)]|x0=y0=-iδ3(x-y),および,
[φ(x),φ(y)]|x0=y0=[π(x),π(y)]|x0=y0=0
となります。
そして,φ(x)の自由平面波によるFourier展開式は,
φ(x)=(2π)-3/2∫d3k(2ωk)-1/2
{a^(k)exp(-ikx)+a^+(k)exp(ikx)}
と書けます。
ただし,ωk≡(k2+m2)1/2>0 であり,
exp(-ikx)=exp(-iωkt+ikx),
exp(ikx)=exp(iωkt-ikx)です。
また,a^+(k)はa^(k)のHermite共役です。
同時刻の正準交換関係:[π(x),φ(y)]|x0=y0=-iδ3(x-y),
[φ(x),φ(y)]|x0=y0=[π(x),π(y)]|x0=y0=0 から,
a^(k),a^+(k)の交換関係:
[a^(k),a^+(k')]=δ3(k-k'),
[a^(k),a^(k')]=[a^+(k),a^+(k')]=0
が得られます。
これらa^(k),a^+(k)の交換関係から,同時刻とは限らない
一般の時刻の場合の場の交換関係を計算できます。
交換関係の陽なFourier積分表示を得ることができて,
[φ(x),φ(y)]=(2π)-3∫d3k(2ωk)-1
[exp{-ik(x-y)}+exp{ik(x-y)}]
と書けます。
これを,iΔ(x-y)と定義します。
特に,質量mの関数であることを強調したいときには,
Δ(x)の代わりにΔ(x,m2)と表記します。
Δ(x),またはΔ(x,m2)は座標xμのLorentz変換に対して
不変なので,不変デルタ関数と呼ばれます。
そして,iΔ(x-y)=[φ(x),φ(y)]ですから,
Δ(y-x)=-Δ(x-y)であり,
また,(□+m2)φ(x)=0 ですから,
(□+m2)Δ(x)=0 が満たされます。
前記事の電磁場について,不変デルタ関数として与えたD(x)
は質量がゼロのD(x)=-Δ(x,0)であり,□D(x)=0 の解
です。
不変デルタ関数は,交換子[φ(x),φ(y)]で与えられる上記の
関数だけではなく,
(□+m2)Δ(x)=0 ,または(□+m2)Δ(x)=±δ4(x)
を満たすLorentz不変な関数Δ(x)は全て,Klein-Gordon演算子:
(□+m2)に対する不変デルタ関数と呼ばれるようです。
特に正準交換関係:つまり,x3=y0の同時刻交換関係:
[π(x),φ(y)]|x0=y0
=[∂0φ(x),φ(y)]|x0=y0=-iδ3(x-y)から,交換関係
で定義された関数:Δ(x)は∂0Δ(x)|x0=0=-δ3(x)を
満たすことがわかります。
そして,[φ(x),φ(y)]|x0=y0=0 から,xとyが空間的
(space-like)に離れているとき,すなわち(x-y)2<0
のときには,[φ(x),φ(y)]=iΔ(x-y)=0 なること
が得られます。
xとyの時空間距離が空間的である場合:
(x-y)2=(x0-y0)2-(x-y)2<0 の場合には,
2つの事象x,yの座標は,適当なLorentz変換により,
それらが同時刻:x0=y0の現象であると観測される
ような準拠座標系を取ることが可能です。
その座標系では,同時刻なので[φ(x),φ(y)]|x0=y0=0
ですが,これはLorentz変換に対して不変な関係ですから,
[φ(x),φ(y)]=iΔ(x-y)=0 と結論されます。
そういうわけで,(x-y)2<0 (空間的)なら,常に,
[φ(x),φ(y)]=0 が成立します。
これは,理論が相対論的な微視的因果律を満たす十分条件
に一致しています。
さて,簡単な計算によって,ωk≡(k2+m2)1/2>0 とkの
任意関数:f(ωk,k)に対して,公式;
∫d3k(2ωk)-1f(ωk,k)
=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)f(k0,k)
が成立することがわかります。
ただし,θ(τ)はHeaviside関数(階段関数)で,
θ(τ)≡1(τ>0),0(τ>0)によって定義され,
常にθ(τ)+θ(-τ)=1 を満たします。
これを用いると,
iΔ(x)
=(2π)-3∫d3k(2ωk)-1[exp(-ikx)+exp(ikx)]
より,
Δ(x)=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)
[exp(-ikx)-exp(ikx)]
=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2-m2)ε(k0)exp(-ikx)
と書けます。
ここで,ε(τ)はε(τ)≡1(τ>0),-1(τ>0)で
θ(τ)=(1/2){ε(τ)+1}で定義される符号関数です。
一方,(□+m2)ΔF(x)=-δ4(x)を満たすGreen関数として,
よく知られた伝播関数(propagator)ΔF(x)があります。
これは,T積の真空期待値:
iΔF(x-y)≡<0|T(φ(x)φ(y)))|0>
=θ(x0-y0)<0|φ(x)φ(y)|0>
+θ(y0-x0)<0|φ(y)φ(x)|0>
で与えられるGreen関数です。
φ(x)=(2π)-3/2∫d3k(2ωk)-1/2
{a^(k)exp(-ikx)+a^+(k)exp(ikx)} を代入すると,
<0|φ(x)φ(y)|0>=(2π)-3∫d3k(2ωk)-1exp{-ik(x―y)},
<0|φ(y)φ(x)|0>=(2π)-3∫d3k(2ωk)-1exp{ik(x―y)}
です。
この<0|φ(x)φ(y)|0>,<0|φ(y)φ(x)|0>を示す関数を,
それぞれΔ+(x-y),Δ-(x-y)と書けば,
iΔF(x)=θ(x0)Δ+(x)+θ(-x0)Δ-(x)
と書けます。
一般に,Δret(x)≡θ(x0)Δ+(x)は遅延Green関数と呼ばれ,
Δadv(x)≡-θ(-x0)Δ-(x)は先進Green関数と呼ばれます。
そこで,伝播関数iΔF(x)は,iΔF(x)=Δret(x)-Δadv(x)
とも表現されます。
一方,iΔ(x-y)=[φ(x),φ(y)]=<0|[φ(x),φ(y)]|0>
=<0|φ(x)φ(y)|0>-<0|φ(y)φ(x)|0>
=Δ+(x-y)-Δ-(x-y) です。
よって,iΔ(x)=Δ+(x)-Δ-(x)です。
Δret(x)≡θ(x0)Δ+(x),および,
Δadv(x)≡-θ(-x0)Δ-(x)を用いると,
iΔ(x)もiΔ(x)=θ(x0)Δret(x)+θ(-x0)Δadv(x)
と表現することができます。
いずれにしても,x0>0 の未来では,iΔ(x)=iΔF(x)
=Δret(x)=Δ+(x)となりますから,iΔ(x)もiΔF(x)も
遅延Green関数として同じ意味を持ちます。
したがって,Δ(x)を用いてもΔF(x)を用いても,全く同じように
初期値問題のKirchhoff表示が可能です。
なお,(□+m2)ΔF(x)=-δ4(x)から,ΔF(x)のFourier変換
をΔF(x)≡(2π)-4∫d4kΔ~F(k)exp(-ikx)と書けば,
(k2-m2)Δ~F(k)=1となります。
そこで,iΔF(x)=(2π)-3∫d3k(2ωk)-1
[θ(x0-y0)exp{-ik(x-y)}+θ(y0-x0)exp{ik(x-y)}]
は,別の表示として,
(2π)-4∫d4k[exp{-ik(x-y)}/(k2-m2+iε)]
を持ちます。
これは,Heaviside関数θ(τ)が,θ(τ)
={-/(2πi)}∫-∞∞dω[exp(-iωτ)(ω+iε)-1]
と表わせることからも簡単に示せます。
Δ(x),ΔF(x)を,それぞれΔ(x,m2),ΔF(x,m2)と表記して
質量mがゼロの場合のΔ(x,m2),ΔF(x,m2)を,それぞれ,
D(x)≡Δ(x,0),DF(x)≡ΔF(x,0)と定義します。
(※ 前記事までで電磁場のGreen関数としていたD(x)は
D(x)=-Δ(x,0)であって,ここの定義と符号が違います。※)
(□+m2)Δ(x,m2)=0,(□+m2)ΔF(x,m2)=-δ4(x)
でしたから,□D(x)=0,□DF(x)=-δ4(x)です。
D(x)のFourier積分表示は,
D(x)=(-i)(2π)-3∫d3k(2|k|)-1[exp(-ikx)+exp(ikx)]
=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2)θ(k0)[exp(-ikx)-exp(ikx)]
=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2)ε(k0)exp(-ikx)
であり,∂0D(x)|x0=0=-δ3(x)です。
また,xが空間的:x2<0 ならD(x)=0 です。
一方,DF(x)のFourier積分表示は,
DF(x)=(-i)(2π)-3∫d3k(2|k|)-1
[θ(x0-y0)exp{-ik(x―y)}+θ(y0-x0)exp{ik(x―y)}]
=(2π)-4∫d4k[exp{-ik(x―y)}/(k2+iε)]
です。
さらに,E関数は□E(x)=D(x)を満たす関数であるとすると,
□2E(x)=D(x)です。
D(x)=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2)ε(k0)exp(-ikx)
でしたから,形式上は,
E(x)=(-i)(2π)-3∫d4kδ(k2)ε(k0)(1/k2)exp(-ikx)
と表現できます。
しかし,被積分関数がk2=0 に特異性を持つので,何らかの特異点
を避ける処理が必要です。
k2をk2+iεで置き換えて,積分後にε→+0 の極限を取ること
にします。
細かいことは後にして,,電磁場の共変的量子化を考えます。
すぐ前の記事では,D(x)は∂0D(x)|x0=0=δ3(x)を満たすと書い
ていることからもわかるように,前記事でのD(x)は-Δ(x,0)を
意味していました。
そこでは,補助場B(x)がD'Alembet方程式□B(x)=0 を満たす
ので,Kirchhoffの積分表示が,
B(x)=∫d3z[{∂D(x-z)/∂x0}B(z)
+D(x-z)∂B(z)/∂z0]
で与えられるとしていました。
しかし,ここでは,D(x)=Δ(x,0)としているので,Kirchhoff
の表示式は,B(x)=∫d3z[{∂D(x-z)/∂z0}B(z)
-D(x-z)∂B(z)/∂z0] となります。
ここで,記号∂0⇔を,
f∂0⇔g≡{∂f(x)/∂x0}g(x)-f(x)∂g(x)/∂x0
によって定義すると,B(x)の積分表示は,
B(x)=∫d3zD(x-z)∂z0⇔B(z)と簡単になります。
右辺の積分式はz0に依存するように見えますが,左辺のB(x)
がz0に依存しないので,右辺をz0で偏微分してもゼロのはずです。
実際,□B=0 を用いると,確かに,
∂[∫d3zD(x-z)∂z0⇔B(z)]/∂z0
=∫d3z[∇2D(x-z)B(z)-D(x-z)∂z02B(z)]=0
となります。
4次元交換関係:[B(x),B(y)]に,
B(x)=∫d3z{∂z0D(x-z)B(z)
-D(x-z)∂z0B(z)}を代入すると,
[B(x),B(y)]=∫d3z{∂z0D(x-z)[B(z),B(y)]
-D(x-z)[∂z0B(z),B(y)]}
が得られます。
右辺のz0は何でもいいので,z0=y0とおくと,既知の同時刻
交換関係[B(x0,x),B(x0,y)]=0,
[B(x0,x),∂0B(x0,y)]=0 から,
[B(x),B(y)]=0 が得られます。
一方,運動方程式:□Aμ=(1-α)∂μB=0 から,前記事では,
Aμ(x)=Cμ(x)+(1-α)∫d4zD(x-z){∂B(z)/∂zμ},
□Cμ=0 なる表現ができるはず,と書きました。
特に,□Cμ=0 を満たすCμ(x)を,
Cμ(x)≡∫d3z{∂z0D(x-z)∂z0⇔Aμ(z)}
とします。
残りの非同次の部分:
(1-α)∫d4zD(x-z){∂B(z)/∂zμ}は,
前記事ではD(x)の符号が違うので,これを-D(x)
に変更します。
すると,Aμ(x)=∫d3z{D(x-z)∂z0⇔Aμ(z)}
-(1-α)∫d4zD(x-z)∂zμB(z) となります。
さらに,□∂μB=0 ですから,
∂μB=∫d3z{D(x-z)∂z0⇔∂zμB(z)}
と,これもKirchhoff表示式で表現できます。
そこで,
Aμ(x)=∫d3z{D(x-z){∂-z)∂z0⇔Aμ(z)}
-(1-α)∫d4y∫d3zD(x-y)D(y-z)∂zμB(z)
となります。
ところが,□E(x)=D(x)から,E(x)は,
E(x)=-∫d4zD(x-z)D(z)なる表現を持ちますから,
∫d4y∫d3zD(x-y)D(y-z)=E(x-z)
と書けます。
したがって,結局Aμ(x)=∫d3z{D(x-z)∂z0⇔Aμ(z)
+(1-α)E(x-z)∂z0⇔∂zμB(z)} なる表現を得ます。
これから,[Aμ(x),Aν(y)]=-iημνD(x-y)
+i(1-α)∂xμ∂xνE(x-y)なる4次元交換関係の表現
が得られます。
最後の部分の詳細についてはは次回にして今日はここで終わります。
参考文献:J.D.Bjorken,S.D.Drell「Relativistic Quantum Fields」McGraw-Hill,中西 襄 著「場の量子論」(培風館)
PS:(6/17(水)早朝記す。)
何?「大政奉還すべきだ。」という主張の意味がわからない?
だって。。。。発想が貧困だなあ。。
「別に政権を朝廷に返せ」などというアナクロな意味じゃないよ。
これは,「政治を本来の主人=主権者に返還するべきだ。」という
意味だろう?
いつまでも姑息な延命をはかるんじゃなくて,早く主権者に返して
少なくとも審判を仰げ。。という素朴な意味だぜ。。
PS2:どうも,この記事本文は,
CatFalconさんのブログの記事「不変デルタ関数」
http://blogs.yahoo.co.jp/cat_falcon/29567993.html
とほぼ,かぶっているようです。
CatFalconさんの方が,時期的に少し前で,かなり似ているよう
ですが参考文献が同じ中西さんの本なのでそうなりますね。。
ヒョッとしたら,記事を見かけてブログネタとして参考にした
かもしれませんが,内容をコピーしたわけではありません。
悪気はないので,よろしくです。>CatFalconさん
なお,「電磁場の共変的量子化(2)」の続きは今執筆中です。
TOSHI
http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。
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