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2009年7月17日 (金)

水の波(7)(有限振幅の波:非線形波2)

 水の波の続きです。


 水面z=ηでの速度ポテンシャルは
,

 Φ(ξ,η,τ)=Φ(ξ,0,τ)+(∂Φ/∂z)|z=0η(ξ,τ)

 +(1/2)(∂2Φ/∂z2)|z=0η(ξ,τ)2+.. のようにηの

 Taylor級数に展開できます。

 
この級数展開と,先のεのベキ級数展開:

Φ(x,z,t)=ε1/2(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},

および,η(x,t)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}

を,z=ηでの境界条件:

∂Φ/∂z=∂η/∂t+(∂Φ/∂x)(∂η/∂x),および,

∂Φ/∂t+{(∂Φ/∂x)2(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0

に代入します。

 
まず,Φ(ξ,η,τ)=Φ(ξ,0,τ)+(∂Φ/∂z)|z=0η(ξ,τ)

+(∂Φ/∂z)|z=0η(1/2)(∂2Φ/∂z2)|z=0η(ξ,τ)2+..

を.z=ηで∂Φ/∂z=∂η/∂t+(∂Φ/∂x)(∂η/∂x)

に代入します。

 
すると,

Φ=Φ(ξ,z,τ)について(∂Φ/∂z)+(∂2Φ/∂z2)η+..

=∂η/∂t+(∂/∂x){Φ+(∂Φ/∂z)η

+(1/2)(∂2Φ/∂z22+..}(∂η/∂x)

となります。

 

ただし,両辺の量は全てz=0 における値です。

ξ≡ε1/2(x-c0t),τ≡ε3/2tですから,

∂/∂x=(∂ξ/∂x)(∂/∂ξ)=ε1/2(∂/∂ξ),

∂/∂t=(∂ξ/∂t)(∂/∂ξ)+(∂τ/∂t)(∂/∂τ)

=-c0ε1/2(∂/∂ξ)+ε3/2(∂/∂τ)

です。

 
そこで,上で求めた境界条件のz=0 での形は,

(∂Φ/∂z)+(∂2Φ/∂z2)η+..

=-c0ε1/2(∂η/∂ξ)+ε3/2(∂η/∂τ)

+ε(∂/∂ξ)

×{Φ+(∂Φ/∂z)η+(1/2)(∂2Φ/∂z22+..}

×(∂η/∂ξ) となります。

 
これに,

Φ(ξ,z,τ)=ε1/2(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},

η(x,t)=η(ξ,τ)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}

を代入して,z=0 で両辺の同じεのベキの係数を等置します。

 ηはΦよりε1/2のオーダーだけ小さい量であると仮定した

展開ですから,z=0 でε1/2の係数としては,

∂Φ(1)/∂z=0 です。
 

そこで,ε3/2の係数として∂Φ(2)/∂z=-c0(∂η(1)/∂ξ),

ε5/2の係数として∂Φ(3)/∂z+η(1)(∂2Φ(2)/∂z2)

=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)

,..を得ます。

 
一方,z=ηでのもう1つの動的境界条件:

∂Φ/∂t+{(∂Φ/∂x)2(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0

は,-c0ε1/2(∂Φ/∂ξ)+ε3/2(∂Φ/∂τ)

+{ε(∂Φ/∂ξ)2(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0  です。

  
これもz=0 の近傍での展開:

Φ(ξ,z,τ)=ε1/2(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},

η(x,t)=η(ξ,τ)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}

を代入して,εのベキの係数を等置します。

 

z=0では∂Φ(1)/∂z=0なので,εの係数として,

-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0,ε2の係数として

∂Φ(1)/∂τ-c0(∂Φ(2)/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2

+gη(2)0 です。

 
これらの関係式に,前記事で求めた境界条件を満たす

解の具体的形:

Φ(1)=Φ(1)(ξ,τ),

Φ(2)=(-1/2)(z+h)2{∂2Φ(1)(ξ,τ)/∂ξ2}+f1(ξ,τ),

Φ(3)=(1/24)(z+h)4(∂4Φ(1)/∂ξ4)

-(1/2)(z+h)2(∂21/∂ξ2)+f2(ξ,τ),..

を代入して高次の項を消去します。

 
結局,水面波形の第1近似η(1)(ξ,τ)に対する方程式

として,

∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)

=(-c02/6)(∂3η(1)/∂ξ3) が得られます。

 
同じ方程式は,水平速度の第1近似∂Φ(1)/∂ξに対しても成立

します。


 こうして,第1近似解が得られれば,高次の近似解は機械的

得られます。

  ※(注7-1):
(証明)∂Φ(2)/∂z=-(z+h)(∂2Φ(1)/∂ξ2),

2Φ(2)/∂z2=-∂2Φ(1)/∂ξ2,

∂Φ(3)/∂z=(1/6)(z+h)3(∂4Φ(1)/∂ξ4)

-(z+h)(∂21/∂ξ2)  です。

  
これにz=0 を代入すると,

∂Φ(2)/∂z=-h(∂2Φ(1)/∂ξ2),

2Φ(2)/∂z2=-∂2Φ(1)/∂ξ2,

∂Φ(3)/∂z=(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂21/∂ξ2)

です。

 
よって,∂Φ(2)/∂z=-c0(∂η(1)/∂ξ)は,

① -h(∂2Φ(1)/∂ξ2)=-c0(∂η(1)/∂ξ)

となります。
 

また,∂Φ(3)/∂z+η(1)(∂2Φ(2)/∂z2)

=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)

+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)は,

 
②(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂21/∂ξ2)

-η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)

+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)


 と書けます。

 
一方,

③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0 はそのままで,

∂Φ(1)/∂τ-c0(∂Φ(2)/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2

+gη(2)0 の方は,Φ(2)=(-1/2)h2(∂2Φ(1)/∂ξ2)+f1

より,

  ④∂Φ(1)/∂τ+(1/2)c02 (∂3Φ(1)/∂ξ3)

-c0(∂f1/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2+gη(2)0

です。

  
02=ghなので,

①-h(∂2Φ(1)/∂ξ2)=-c0(∂η(1)/∂ξ)は,

③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0

をξで微分すれば得られます。

  
他方,

④∂Φ(1)/∂τ+(1/2)c02(∂3Φ(1)/∂ξ3)

-c0(∂f1/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2+gη(2)0

をξで微分してhを掛けると,

h(∂2Φ(1)/∂τ∂ξ)+(1/2)c03(∂4Φ(1)/∂ξ4)

-c0h(∂21/∂ξ2)+h(∂Φ(1)/∂ξ)(∂2Φ(1)/∂ξ2)

+gh(∂η(2)/∂ξ)=0  となります。

  
左辺の最後の項gh(∂η(2)/∂ξ)=c02(∂η(2)/∂ξ)

に,②(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂21/∂ξ2)

-η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)

+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ) より得られる,

02(∂η(2)/∂ξ)=c0(∂η(1)/∂τ)

+c0(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)

-(1/6)c03(∂4Φ(1)/∂ξ4)+c0h(∂21/∂ξ2)

+c0η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2
 
を代入します。

 
すると,

(∂2Φ(1)/∂τ∂ξ)+(1/3)c03(∂4Φ(1)/∂ξ4)

+h(∂Φ(1)/∂ξ)(∂2Φ(1)/∂ξ2)+c0(∂η(1)/∂τ)

+c0(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)

+c0η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=0    となります。

 最後に,③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0 より,

∂Φ(1)/∂ξ=gη(1)/c0 として,Φ(1)を消去します。
 

すると,c0(∂η(1)/∂τ)+(1/3)gh3(∂3η(1)/∂ξ3)

+(g2h/c02(1)(∂η(1)/∂ξ2) +c0(∂η(1)/∂τ)

+ghη(1)(∂η(1)/∂ξ)+ghη(1)(∂η(1)/∂ξ)=0

です。

 
したがって,2c0(∂η(1)/∂τ)+(1/3)c022(∂3η(1)/∂ξ3)

+3gη(1)(∂η(1)/∂ξ)=0,

 つまり,
∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)

=(-c02/6)(∂3η(1)/∂ξ3) が得られます。
 

∂Φ(1)/∂ξ=gη(1)/c0なので,η(1の代わりに∂Φ(1)/∂ξ

を代入しても同じ非線形方程式を満たします。(証明終わり)

(注7-1終わり)※

  
たった今得られた有限振幅の非線形波に対する方程式:

 ∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)

 =(-c02/6)(∂3η(1)/∂ξ3)


  これは,既に19世紀末(1895)
に,KortweigとdeVriesによって

上記とは別の方法で導かれており,これをKortweig-deVries方程式,

または,略してK-dV方程式と呼びます。

 
K-dV方程式:

∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)

=(-c02/6)(∂3η(1)/∂ξ3)は,適当な尺度(単位)

取り方によって,

∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0

なる形に書くことができます。
 

係数μは正,負どちらでもいい形ですが,

変換:u→-u,x→-x,t→tによって,

この方程式におけるμは,μ→ -μと変換されるので,

一般性を失なうことなく.μ>0 とします。

  さて,この
K-dV方程式:

∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0

の解として,波形を変えず一定速度で伝播する定常波

が存在すると仮定し,以下,それを求めてみます。

 
そのために,σを速度を表わす定数として

u(x,t)=u(ζ),ζ≡x-σt とします。

 
こうすると,

∂u/∂t=-σ(du/dζ),∂u/∂x=du/dζ

です。

 
そこで,∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0

は,次の3階常微分方程式:

-σ(du/dζ)+u(du/dζ)+μ(d3u/dζ3)=0

に帰着します。

 
これは,ζで1回積分すると,

μ(d2u/dζ2)=-u2/2+σu+2A (Aは積分定数)

となります。
 

さらに両辺にdu/dζを掛けて,もう1度積分すると,

(μ/2)(du/dζ)2=-u3/6+σu2/2+Au+B

(A,Bは積分定数) です。
 

そこで,μV(u)≡E-(-u3/6+σu2/2+Au+B)と

置くと,これは,(μ/2)(du/dζ)2+μV(u)=E

となります。

 それ故,uを質量μを持つ質点の位置座標,V(u)を
それ

に働く力のポテンシャルと考えることができます。
 

もしも,uが位相速度一定の線形波の典型的な形である

正弦波であるとしたら,それは,u=Csin(ωt-kx)

=-Csin(kζ),ζ≡x-σt;σ≡ω/k 

与えられます。
 

これについては,du/dζ=-kCcos(kζ),

2u/dζ2=k2Csin(kζ)なので,

u=u(ζ)が満たす方程式は,よく知られた形:

2u/dζ2=-k2u,k-2(du/dζ)2=-u2+C2

です。
 

これは,

(μ/2)(du/dζ)2=-(1/2)μk22+(1/2)μk22

と変形されますから,V(u)=(1/2)k22と置けば,

(μ/2)(du/dζ)2+μV(u)=E (E≡(1/2)μk22)

となります。V(u)はよく知られた線形調和振動子の

ポテンシャルですね
 

一方,非線形なKdV方程式のポテンシャル

(非調和振動子ポテンシャル)は,

μV(u)≡E-(-u3/6+σu2/2+Au+B)

で与えられます。

 これが,線形調和振動子のそれ:
μV(u)=(1/2)μk22

と決定的に違うのは,非線型調和振動子のポテンシャル

は,uの3次以上の項を含むことです。
 

定数項の差は,エネルギーの基準点の取り方の違いだけだし,

uの1次の項の差は完全平方によって2次の項に含めること

できるので,これらは本質的な違いではぁりません。

 今日はここまでにします。

(参考文献):巽友正著「流体力学」(培風館)

PS:明日は毎年夏恒例の一泊二日の「将棋チェスネット

主催の「関東お泊りオフ」別名「将棋合宿」に

行ってきます。今年は隔年の湯河原の杉の宿で開催の年

です。

 

 去年,2008年8/11の「将棋合宿」と同じく,何もなければ,

まず,明日朝,たいとさんが私の家に来られてて次に北島プロ,

柿木さんを拾って直接現地に向かう予定です。

1年に1回の道楽なので前から何もなければ生きているうちは

毎年参加することにしています。今年は女流プロは休場中の

バンカナと藤田綾初段が見えるそうですね。

(15年以上も前から,ときたま日程の都合で行けない場合を

除いて参加していたのですが,最近は2006,2007年病気入院

もあって参加できず,昨年復帰しました。

将棋は弱いくせに威張っています。)

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