水の波(7)(有限振幅の波:非線形波2)
水の波の続きです。
水面z=ηでの速度ポテンシャルは,
Φ(ξ,η,τ)=Φ(ξ,0,τ)+(∂Φ/∂z)|z=0η(ξ,τ)
+(1/2)(∂2Φ/∂z2)|z=0η(ξ,τ)2+.. のようにηの
Taylor級数に展開できます。
この級数展開と,先のεのベキ級数展開:
Φ(x,z,t)=ε1/2{Φ(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},
および,η(x,t)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}
を,z=ηでの境界条件:
∂Φ/∂z=∂η/∂t+(∂Φ/∂x)(∂η/∂x),および,
∂Φ/∂t+{(∂Φ/∂x)2+(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0
に代入します。
まず,Φ(ξ,η,τ)=Φ(ξ,0,τ)+(∂Φ/∂z)|z=0η(ξ,τ)
+(∂Φ/∂z)|z=0η(1/2)(∂2Φ/∂z2)|z=0η(ξ,τ)2+..
を.z=ηで∂Φ/∂z=∂η/∂t+(∂Φ/∂x)(∂η/∂x)
に代入します。
すると,
Φ=Φ(ξ,z,τ)について(∂Φ/∂z)+(∂2Φ/∂z2)η+..
=∂η/∂t+(∂/∂x){Φ+(∂Φ/∂z)η
+(1/2)(∂2Φ/∂z2)η2+..}(∂η/∂x)
となります。
ただし,両辺の量は全てz=0 における値です。
ξ≡ε1/2(x-c0t),τ≡ε3/2tですから,
∂/∂x=(∂ξ/∂x)(∂/∂ξ)=ε1/2(∂/∂ξ),
∂/∂t=(∂ξ/∂t)(∂/∂ξ)+(∂τ/∂t)(∂/∂τ)
=-c0ε1/2(∂/∂ξ)+ε3/2(∂/∂τ)
です。
そこで,上で求めた境界条件のz=0 での形は,
(∂Φ/∂z)+(∂2Φ/∂z2)η+..
=-c0ε1/2(∂η/∂ξ)+ε3/2(∂η/∂τ)
+ε(∂/∂ξ)
×{Φ+(∂Φ/∂z)η+(1/2)(∂2Φ/∂z2)η2+..}
×(∂η/∂ξ) となります。
これに,
Φ(ξ,z,τ)=ε1/2{Φ(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},
η(x,t)=η(ξ,τ)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}
を代入して,z=0 で両辺の同じεのベキの係数を等置します。
ηはΦよりε1/2のオーダーだけ小さい量であると仮定した
展開ですから,z=0 でε1/2の係数としては,
∂Φ(1)/∂z=0 です。
そこで,ε3/2の係数として∂Φ(2)/∂z=-c0(∂η(1)/∂ξ),
ε5/2の係数として∂Φ(3)/∂z+η(1)(∂2Φ(2)/∂z2)
=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)
,..を得ます。
一方,z=ηでのもう1つの動的境界条件:
∂Φ/∂t+{(∂Φ/∂x)2+(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0
は,-c0ε1/2(∂Φ/∂ξ)+ε3/2(∂Φ/∂τ)
+{ε(∂Φ/∂ξ)2+(∂Φ/∂z)2}/2+gη=0 です。
これもz=0 の近傍での展開:
Φ(ξ,z,τ)=ε1/2{Φ(1)(ξ,z,τ)+εΦ(2)(ξ,z,τ)+..},
η(x,t)=η(ξ,τ)=ε{η(1)(ξ,τ)+εη(2)(ξ,τ)+..}
を代入して,εのベキの係数を等置します。
z=0では∂Φ(1)/∂z=0なので,εの係数として,
-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0,ε2の係数として
∂Φ(1)/∂τ-c0(∂Φ(2)/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2
+gη(2)=0 です。
これらの関係式に,前記事で求めた境界条件を満たす
解の具体的形:
Φ(1)=Φ(1)(ξ,τ),
Φ(2)=(-1/2)(z+h)2{∂2Φ(1)(ξ,τ)/∂ξ2}+f1(ξ,τ),
Φ(3)=(1/24)(z+h)4(∂4Φ(1)/∂ξ4)
-(1/2)(z+h)2(∂2f1/∂ξ2)+f2(ξ,τ),..
を代入して高次の項を消去します。
結局,水面波形の第1近似η(1)(ξ,τ)に対する方程式
として,
∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)
=(-c0h2/6)(∂3η(1)/∂ξ3) が得られます。
同じ方程式は,水平速度の第1近似∂Φ(1)/∂ξに対しても成立
します。
こうして,第1近似解が得られれば,高次の近似解は機械的に
得られます。
※(注7-1):(証明)∂Φ(2)/∂z=-(z+h)(∂2Φ(1)/∂ξ2),
∂2Φ(2)/∂z2=-∂2Φ(1)/∂ξ2,
∂Φ(3)/∂z=(1/6)(z+h)3(∂4Φ(1)/∂ξ4)
-(z+h)(∂2f1/∂ξ2) です。
これにz=0 を代入すると,
∂Φ(2)/∂z=-h(∂2Φ(1)/∂ξ2),
∂2Φ(2)/∂z2=-∂2Φ(1)/∂ξ2,
∂Φ(3)/∂z=(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂2f1/∂ξ2)
です。
よって,∂Φ(2)/∂z=-c0(∂η(1)/∂ξ)は,
① -h(∂2Φ(1)/∂ξ2)=-c0(∂η(1)/∂ξ)
となります。
また,∂Φ(3)/∂z+η(1)(∂2Φ(2)/∂z2)
=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)
+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)は,
②(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂2f1/∂ξ2)
-η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)
+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)
と書けます。
一方,
③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0 はそのままで,
∂Φ(1)/∂τ-c0(∂Φ(2)/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2
+gη(2)=0 の方は,Φ(2)=(-1/2)h2(∂2Φ(1)/∂ξ2)+f1
より,
④∂Φ(1)/∂τ+(1/2)c0h2 (∂3Φ(1)/∂ξ3)
-c0(∂f1/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2+gη(2)=0
です。
c02=ghなので,
①-h(∂2Φ(1)/∂ξ2)=-c0(∂η(1)/∂ξ)は,
③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0
をξで微分すれば得られます。
他方,
④∂Φ(1)/∂τ+(1/2)c0h2(∂3Φ(1)/∂ξ3)
-c0(∂f1/∂ξ)+(1/2)(∂Φ(1)/∂ξ)2+gη(2)=0
をξで微分してhを掛けると,
h(∂2Φ(1)/∂τ∂ξ)+(1/2)c0h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)
-c0h(∂2f1/∂ξ2)+h(∂Φ(1)/∂ξ)(∂2Φ(1)/∂ξ2)
+gh(∂η(2)/∂ξ)=0 となります。
左辺の最後の項gh(∂η(2)/∂ξ)=c02(∂η(2)/∂ξ)
に,②(1/6)h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)-h(∂2f1/∂ξ2)
-η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=∂η(1)/∂τ-c0(∂η(2)/∂ξ)
+(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ) より得られる,
c02(∂η(2)/∂ξ)=c0(∂η(1)/∂τ)
+c0(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)
-(1/6)c0h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)+c0h(∂2f1/∂ξ2)
+c0η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)
を代入します。
すると,
h(∂2Φ(1)/∂τ∂ξ)+(1/3)c0h3(∂4Φ(1)/∂ξ4)
+h(∂Φ(1)/∂ξ)(∂2Φ(1)/∂ξ2)+c0(∂η(1)/∂τ)
+c0(∂Φ(1)/∂ξ)(∂η(1)/∂ξ)
+c0η(1)(∂2Φ(1)/∂ξ2)=0 となります。
最後に,③-c0(∂Φ(1)/∂ξ)+gη(1)=0 より,
∂Φ(1)/∂ξ=gη(1)/c0 として,Φ(1)を消去します。
すると,c0(∂η(1)/∂τ)+(1/3)gh3(∂3η(1)/∂ξ3)
+(g2h/c02)η(1)(∂η(1)/∂ξ2) +c0(∂η(1)/∂τ)
+ghη(1)(∂η(1)/∂ξ)+ghη(1)(∂η(1)/∂ξ)=0
です。
したがって,2c0(∂η(1)/∂τ)+(1/3)c02h2(∂3η(1)/∂ξ3)
+3gη(1)(∂η(1)/∂ξ)=0,
つまり,∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)
=(-c0h2/6)(∂3η(1)/∂ξ3) が得られます。
∂Φ(1)/∂ξ=gη(1)/c0なので,η(1の代わりに∂Φ(1)/∂ξ
を代入しても同じ非線形方程式を満たします。(証明終わり)
(注7-1終わり)※
たった今得られた有限振幅の非線形波に対する方程式:
∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)
=(-c0h2/6)(∂3η(1)/∂ξ3)
これは,既に19世紀末(1895)に,KortweigとdeVriesによって
上記とは別の方法で導かれており,これをKortweig-deVries方程式,
または,略してK-dV方程式と呼びます。
K-dV方程式:
∂η(1)/∂τ+{3c0/(2h)}η(1)(∂η(1)/∂ξ)
=(-c0h2/6)(∂3η(1)/∂ξ3)は,適当な尺度(単位)
の取り方によって,
∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0
なる形に書くことができます。
係数μは正,負どちらでもいい形ですが,
変換:u→-u,x→-x,t→tによって,
この方程式におけるμは,μ→ -μと変換されるので,
一般性を失なうことなく.μ>0 とします。
さて,このK-dV方程式:
∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0
の解として,波形を変えず一定速度で伝播する定常波
が存在すると仮定し,以下,それを求めてみます。
そのために,σを速度を表わす定数として
u(x,t)=u(ζ),ζ≡x-σt とします。
こうすると,
∂u/∂t=-σ(du/dζ),∂u/∂x=du/dζ
です。
そこで,∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0
は,次の3階常微分方程式:
-σ(du/dζ)+u(du/dζ)+μ(d3u/dζ3)=0
に帰着します。
これは,ζで1回積分すると,
μ(d2u/dζ2)=-u2/2+σu+2A (Aは積分定数)
となります。
さらに両辺にdu/dζを掛けて,もう1度積分すると,
(μ/2)(du/dζ)2=-u3/6+σu2/2+Au+B
(A,Bは積分定数) です。
そこで,μV(u)≡E-(-u3/6+σu2/2+Au+B)と
置くと,これは,(μ/2)(du/dζ)2+μV(u)=E
となります。
それ故,uを質量μを持つ質点の位置座標,V(u)をそれ
に働く力のポテンシャルと考えることができます。
もしも,uが位相速度一定の線形波の典型的な形である
正弦波であるとしたら,それは,u=Csin(ωt-kx)
=-Csin(kζ),ζ≡x-σt;σ≡ω/k
与えられます。
これについては,du/dζ=-kCcos(kζ),
d2u/dζ2=k2Csin(kζ)なので,
u=u(ζ)が満たす方程式は,よく知られた形:
d2u/dζ2=-k2u,k-2(du/dζ)2=-u2+C2
です。
これは,
(μ/2)(du/dζ)2=-(1/2)μk2u2+(1/2)μk2C2
と変形されますから,V(u)=(1/2)k2u2と置けば,
(μ/2)(du/dζ)2+μV(u)=E (E≡(1/2)μk2C2)
となります。V(u)はよく知られた線形調和振動子の
ポテンシャルですね
一方,非線形なKdV方程式のポテンシャル
(非調和振動子ポテンシャル)は,
μV(u)≡E-(-u3/6+σu2/2+Au+B)
で与えられます。
これが,線形調和振動子のそれ:μV(u)=(1/2)μk2u2
と決定的に違うのは,非線型調和振動子のポテンシャル
は,uの3次以上の項を含むことです。
定数項の差は,エネルギーの基準点の取り方の違いだけだし,
uの1次の項の差は完全平方によって2次の項に含めること
ができるので,これらは本質的な違いではぁりません。
今日はここまでにします。
(参考文献):巽友正著「流体力学」(培風館)
PS:明日は毎年夏恒例の一泊二日の「将棋チェスネット」
主催の「関東お泊りオフ」別名「将棋合宿」に
行ってきます。今年は隔年の湯河原の杉の宿で開催の年
です。
去年,2008年8/11の「将棋合宿」と同じく,何もなければ,
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(15年以上も前から,ときたま日程の都合で行けない場合を
除いて参加していたのですが,最近は2006,2007年病気入院
もあって参加できず,昨年復帰しました。
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http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」
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