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2009年10月28日 (水)

光子の座標について

 今日は,Yahooブログの fkさんの10/24の記事「光子の座標 」に関わるやりとりを若干修正したものを fkさんの許可を得てほぼそのまま転載します。

 以下, fkさんの書かれたブログ記事「光子の座標」の転載です。

 ちょっと手抜きをして私の注釈付きで記事とコメントの全コピーです。

※このページはパイエルスの『Surprises in Theoretical Physics』の議論を参考にしました。また彼のお友達のランダウの遺産『相対論的量子力学1』の該当箇所もです。

 このページでは光子の座標について云々する。

 そのために,まずAμ = Σ[C^kσAμkσ +C^kσμAμ*kσ]という風に4元ポテンシャルの形に書いてやる。生成消滅演算子の係数が光子の波動関数に対応している。

※(私=TOSHIの注):Aμ=Σ[C^kσAμkσ +C^kσμAμ*kσ]は正確には,Aμ(x,t)=Σσ[∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2[a^kσexp(-ikx)Aμkσ +a^kσ+exp(ikx)Aμ*kσ],ただしωk=c(2+m22)1/2で,kx=ωkt-kxです。

 そして,波数,スピンσの1光子の消滅演算子,および生成演算子がそれぞれa^kσ,およびa^kσ+です。 (TOSHIの注終わり)※

 光子の座標について何か言うためには波動関数の確率密度を計算しなければならない。

 ファイン:「そういえば☆で確率密度が連続の式に従う話をしたね。」

 あの時は準古典的な波動関数をシュレディンガー方程式に代入した。

 電子のとき確率密度はΨΨ*という量だったから素朴に考えると光子の確率密度はAA*という量を含むだろう。

 そして相対論的に不変な形でないといけないから確率密度は4次元の流れベクトルの時間成分である必要がある。

 レイン;「古典論では4次元の流れベクトルってどうだったかしら?」

 例えば電荷だったら時間成分は電荷密度と光速の積 cρ で空間成分は j = ρv だった。

 4元ポテンシャルは電磁場テンソルを用いてFμν = ∂μAν - ∂νAμと書けた。ゲージをどう取ろうがこの式は成り立つ。

 微分演算子は運動量演算子で表わせたことを思い出すとFμν = -i(kμAν - kνAμ)と書き直せる。

 ファイン「だからAA*を作るためには FF* の形じゃないといけないんだね。」

 でもここまで来てはたと気づく。そんなふうに作った量はベクトルにはなり得ないということに。

 実はね。ここまで話を引っ張っておいて言うのもあれなんだけど,そもそも上の条件を満たす4元ベクトルは作れないんだよね。

 今やったように電磁場を記述する量にはベクトルと2階のテンソルがある。

 それぞれ4元ポテンシャルと電磁場テンソル,或いはそれらの微分量も含まれる。つまり階数が整数のテンソルと言える。

 そいつらの成分の二乗は階数が偶数のテンソルの一部分であってどう頑張っても1階のテンソル、すなわちベクトルにはなり得ない。

※それでも無理矢理ベクトルを作るとどうなるかはランダウの『相対論的量子力学1』4節を。

 レイン「そんなの気付かないわ~」

 僕も(笑)。でもディラックは気付いた。

 だからやつは電子の波動関数は2分の1階のテンソル,すなわち4元スピノルでなければならないと考えた。

 ディラック方程式は4元スピノルの方程式であることを今のうちに言っておく。

※気付くかどうかよりそもそもの問題設定が普通じゃないです。

 つまり相対論的量子力学においては,光子の座標を云々することは不可能であることが判明した。

 光子が座標 r に存在するという言葉は意味を持たない。

※ただ波数表示にした波動関数の絶対値の二乗はその波数を持つ光子の存在確率を表わします。

 ファイン:「それじゃあ例えば古典論で出てくる幾何光学の光線はどう考えればいいの?光線の中に光子があるんじゃないの?」

 光線の中に光子があることは間違いない。

 今の話は光線の中のどこに光子が存在するかを言うことはできないってこと。

 なかなかショッキングな事実だよね。

 確率密度とか連続の式の話はクライン・ゴルドン方程式をやるときにも出てくる。結論を書くけど確率密度が必ずしも正にはならない。

 だから波動関数の確率解釈をする限りはクライン・ゴルドン方程式を用いるのは不安。

 このこともディラックが自分の方程式を作った動機の一つ。詳しくは後で。

 レイン:「・・・ちょっと待って,仮に電子を4元スピノルで表わせたとしてもランダウさんとパイエルスさんの不確定性関係からどのみち座標の正確な測定はできないんじゃない?」

 ファイン:「じゃあ光子とか電子とかに関係なく、相対論的な領域になればどんな素粒子にも座標の概念は無いってこと?」

 そういうことになるよね。

 非相対論的な領域だったらエネルギー密度を静止エネルギーで割ればそれがそのまま存在確率になる。

 レイン:「運動エネルギーは静止エネルギーに比べて無視できるものね。」

 ファイン:「光子は常に相対論的だからそこが電子とは違うんだね。」

 実はこの話はパウリやワイスコップもしてる。

 朝永先生の『スピンはめぐる』でも触れられてるけど相対論的な式としてはクライン・ゴルドン方程式でも大丈夫だということを彼らは示した。

 ディラックに一泡吹かせた感じで書かれてるね。

 詳しく知りたいならR.E.Peierls, Reports on Progress in Physics, 18 471 (1955)を参照するといいみたい。でもちょっと古いか。

 彼らも言ってるけど座標が観測量であることは実は全然当たり前のことじゃなかった。

 量子力学を相対論的にすれば今までの常識を少しずつ捨てていかなければならないみたいだね。
 
 (fkさんの書いた記事本文終了)※
 
 次にこれに対する一連のコメントです顔アイコン

 (コメント1)

 どもTOSHIです。久しぶりに来てみてこの話はちょっと目新しかったです。

 確かに開いて見るとランダウにありました。

 買ったのはウン十年前ですが初めの方にサラッと書いてあるので何も考えず見過ごしていました。

 大貫さんの「ポアンカレ群と波動方程式」がすべて粒子の運動量表示の波動関数から定式化を始めているのも位置座標表示の波動関数からでは不可能な場合があるからかな?    

                   TOSHI  2009/10/26(月) 午前 8:01

 (コメント2)

 こんばんは、fkです。

 箱内電子の話の時はありがとうございました。

 実はまだ自分の中で結論が出ていないのですが、
 記事の生産に明け暮れておりました。

 媒質中の電磁気と一緒に相対論的量子力学を中古で入手できたのは幸運でした。

 光子には座標の概念が無いというのは僕には全く驚きでした。

 大貫先生の本はまだ読んだことがありません。

 ちょっと該当箇所を読んでみようと思います。

 よろしければまたご訪問ください。
      

                         fk 2009/10/26(月) 午後 6:52

(コメント3)

>光子には座標の概念が無いというのは僕には全く驚きでした。

 おそらく光子が1個と個数確定では位相の不確定さが無限大というのと同じく,光子は常に運動量が確定した存在であってそれゆえ位置座標は常に不確定さが無限大ということでしょうか。。。

                  TOSHI 2009/10/26(月) 午後 7:27

(コメント4)

 光子の座標の不確定さが無限大ということはないのではないでしょうか。

 というのも、これもランダウ本の第1節の記述ですが不確定性関係が⊿q ~ ℏ/pなので,ドブロイ波長よりも短いスケールにおいてのみ光子の座標に意味がなくなるということだと思います。

 そうでなければレーザー光線が観測されないことになると思います。

                          fk 2009/10/26(月) 午後 8:15

(コメント5)

 どもTOSHIです。

>⊿q ~ ℏ/pなので、ドブロイ波長よりも短いスケールにおいてのみ光子の座標に意味がなくなるということだと思います。

 ド・ブロイ波長というなら,むしろ⊿q ~ ℏ/Δp ~ ℏ/(mc) において光の質量mはゼロなので,これは正に⊿q ~∞ を意味します。

 通常のシュレーディンガーの波動力学やディラックの相対論的量子力学での波動関数というのは1粒子の確率波を示す関数です。

 光の場合の電磁場を第二量子化した個々の調和振動子を光子という粒子と捉え,それを対象として1粒子量子力学を考えたとしたら,光子の運動方程式は常に質量がゼロで光速cで走る自由粒子の方程式=(m=0のKlein-Gordon方程式)=(Maxwellの波動方程式)です。


 光を1光子ごとに分解すれば,それは単色=エネルギーが確定:E=hν=ℏωで,運動量も大きさがp=hk=E/c=hν/cの確定したベクトル量を取り無限に広がった平面波てしか有り得ません。

 そこで確かに位置の不確定さは⊿q ~∞でいいと思います。。

 ただし,スピンが1/2のニュートリノ(実は質量ゼロではないかも知れない)は普通のDirac粒子として波動関数が定義できます。

 そこで,波動関数を場の演算子とみなして第二量子化して位置演算子をも定義可能です。

 ですから,位置演算子が定義できないのは単に質量がゼロで光速cで走る粒子であるというのが理由ではないでしょう。

 位置が定まらないという理由にとっては,やはりランダウに書かれているように光や重力子のようなゲージ粒子のスピンが整数であることが本質的なのでしょうね


>そうでなければレーザー光線が観測されないことになると思います。

 レーザー光線というのは,量子論で位相φと個数nの不確定性関係の可能な限界までΔφを小さくして位相を揃えたコヒーレントな光子の集まりです。

 これは,そもそも運動量が確定:Δp=0 の単色光ではなく,運動量のゆらぎ:Δpがゼロに近い波束状態です。

 位相が揃うということは個数確定では有り得ないので,レーザーで光子たちが狭い領域に局在しても,前の個々の平面波で位置が完全に不確定というのと矛盾はないと思います。

                        TOSHI 2009/10/27(火) 午前 6:10 

(コメント6)

 クラインゴルドンの質量を0に持って行けばマクスウェル方程式と同じになりますね。あんまり考えたことがありませんでした。

 レーザーについてはその通りですね。
記事でのファインのやり取りは幾何光学の話に変えた方がいいですね。

 最後に、TOSHIさんは光子に対して⊿q ~ ℏ/⊿p ~ ℏ/mcの式を使っていますが、この式は静止している粒子についてのもので静止系が存在しない光子に対してそのままの形で適用してもいいのかどうかわかりません。

 しかし,たしかにTOSHIさんの仰るように光子のエネルギーと運動量は確定していますよね。

 あのランダウの式でちょっと変だと思うのが運動量のところが測定値の揺らぎでなく実際の確定している運動量で置き換えているところです。

 幾何光学との整合性がとれなくなるから仕方なく⊿pをpで書いているのでしょうか。

                          fk 2009/10/27(火) 午後 6:28

 (Yahooブログからの記事転載終了)※

 ここからは新しい内容です。

 実は旧ニフティ「物理フォーラム」時代にも「光子ってなんですか」というツリーで似たような議論がありました。スタッフとして私も関係しています。 http://sci.la.coocan.jp/fphys/log/quantum/104.html

 特に,「若林さん」=現在は「わかさん」のコメントは興味深い内容です。

 Re:光子ってなんですか?((117) Re → 104)

 若林  2005年04月25日(月) 03時43分

 こっちには書かないつもりでしたが,判らない人同士の会話になっているように見えたので,一度だけ書きます。私も光子を媒介として電磁気力を表現する流儀の量子力学の勉強はほとんどしていない上,教科書は一万キロ以上離れたところに置き去りなので説明できません。

>1.光子とは物として実在する粒なのかどうか?
>それとも概念、考え方としての仮想的な粒なのか?という点です。


 光子は実在の粒子ですが,普通の日本語で言う粒子とは定義が違う”粒子”です。光子という概念が必要とされるようになった歴史的なきっかけは光電効果を説明するため,と言うのと,プランクが1900年に突然思いついた,黒体輻射の説明のためです。

 どちらが決定的なのかはよく知りませんが,どちらの説明にも,光子という概念が必要になります。具体的には,振動数νの光はエネルギーhνの塊としてしか周囲とエネルギーのやり取りができない,というものです。

 その後の研究の結果として,最初は仮説だった”光は粒子性を持つ”というのが疑いの余地が無くなっていき,今は光子が実在の物とされています。

 で,ここでいう,日本語と違う意味の”粒子”とは何かを説明します。

 光子は光ですから,振動数νと波数ベクトルkを持ちます。νとkの大きさの間にはもちろん光速cを使って関係があります。これだけです。他の属性はありません。

 つまり,無限に広がった平面波というのが一つの光子の実空間での形です。それが何を意味するかというと,場所がまるで決まらないという事を意味します。これを運動量空間で書くと点になります。

 納得しないかもしれないので念を押します。

 hνがエネルギーでhkが運動量ですから光子は運動量とエネルギーがちゃんと決まっている事になります。不確定性はご存じでしょう。運動量が決まると言うことは位置が決まらないと言うことです。

 (これは全然説明になっていません。むしろ先に書いた方が具体的説明になっています。ただし読み物で物理を眺めた人になじみがある言葉なのはきっとこちらでしょう。どちらで納得しても,私の知ったことではありません)

 上記は数学的に正しく取り扱うとどうなる,というような意味合いの事を書いています。

 ちなみに実際には波長に比べて何桁か大きく空間的に広がっていればほとんど平面波として近似できてしまうので,日常生活ではそんなに悩まなくても良いです。

 悩みたければ止めませんが,私はそんな細かいところに興味はないので助言しません。

 以上,本物の光子についての説明です。電磁気力の説明に出てくる”仮想光子”というのは量子力学の知識のない人に説明するのが困難でして,私にはそこまでかみ砕いた説明をする能力がありません。

                              (引用終わり)

 ほとんど引用だけで記事を構成するというズボラな手抜きが明らかな記事になってしまいました。テーマについての興味が共通だったのと,これ以上付け加える必要を感じなかったので,当面の論議ではこれで十分と思います。

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

なるほどToshiさん、そんな簡単なやり方があるんですね。
自分にもなんとかできそうな気がしますので、ちょっとやってみようと思います。
ありがとうございます。

投稿: 物理ファン | 2009年11月 9日 (月) 16時41分

 物理ファンさんご来訪ありがとうございます。TOSHIです。

>数式に出てくる上下の添え字は
どのように入力しているのですか?

 私のは,ワードでそのフォントで上付き,下付き文字で書いた下書き原稿を,ここにバサッとコピーして載せてアップしているだけですけど。。。

 そして,一旦ここにコピーしてしまえば,直接ブログ修正するときには,この上でその文字をそのフォントのまま直接コピーして修正することもできます。

 ただし,以下の別の方法も含めて,どこのブログのどのテンプレートでも可能かどうか?はよく知りません。

 このニフティのココログのこのフォーマットなら,原稿段階でもそれのHTMLとテキスト変換されたものを,互いに切り替えて見たり書き直すことが可能です。

 そしてテキストで上付きの2ならHTMLの原稿で半角で「<sup>2</sup>」とし,テキストで下付きの2ならHTMLで半角で「<sub>2</sub>」とすればいいだけです。

 これは,別にHTMLをまじめに勉強したわけではなく,上のようにコピーしてつくった自分の文章とそのHTMLを比較対照して見て判読?した(というほど大げさでもないけど)だけですが。。。

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2009年11月 9日 (月) 14時02分

Toshiさん、こんばんは。
ひとつ質問があるのですが。
数式に出てくる上下の添え字は
どのように入力しているのですか?
自分もブログで数式を扱ってみたい
と思います。よかったらやり方を
教えてください。お願いします。

投稿: 物理ファン | 2009年11月 9日 (月) 04時46分

こんばんは、fkです。

読みました。ベクトルポテンシャルのところが、添え字の上下も含め修正されてましたね。ありがとうございます。

わかさんのコメントはTOSHIさんと同じ見解ですね。僕の方でも整理されました。

TOSHIさんの専門はQEDなんですね。僕もこれからQEDの記事を書きますが、ふたご姫共々温かく見守っていただければ幸いです。

投稿: fk | 2009年10月29日 (木) 01時08分

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